(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の空間と第2の空間との間に配置され、前記第2の空間内の分離対象ガスの分圧を前記第1の空間内の前記分離対象ガスの分圧より低くすることにより、前記第1の空間内に存在する前記分離対象ガスを前記第2の空間に透過させるガス分離体において、
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面とを備える多孔質体を具備し、
前記分離対象ガスは水蒸気であり、前記多孔質体は親水性を有するゼオライト粒子の未焼結圧粉体であり、
前記多孔質体は、前記ゼオライト粒子間において前記第1の面から前記第2の面に通じる空孔を備え、
前記ゼオライト粒子の未焼結圧粉体の前記第1の面から前記第2の面への空気透過率が1×10−14m2以上1×10−11m2以下である、ガス分離体。
前記ガス圧調整部は、前記第2の空間に外部の空気を取り込む配管と、前記配管に設けられた弁と、前記第2の空間の圧力を前記第1の空間の圧力より減圧する圧力調整機構とを備える、請求項6に記載のガス分離装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態のガス分離体とそれを用いたガス分離装置について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。説明中の上下等の方向を示す用語は、重力加速度方向を基準とした現実の方向とは異なる場合がある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態によるガス分離装置の構成を示している。
図1に示すガス分離装置1は、処理対象の空間(被処理空間)内に存在する、例えば水蒸気や有機溶剤系ガス(有機溶剤蒸気)等のガス(分離対象ガス)を含む空気等の被処理気体から分離対象ガスを分離し、被処理空間のガス濃度を低下させる装置である。ガス分離装置1は、第1の空間S1を構成する分離室2と、第2の空間S2を構成する減圧室3と、分離室2と減圧室3とが通じるように接続する接続路4と、分離室2と減圧室3との間を仕切るように、接続路4内に配置されたガス分離体5と、分離対象ガスを含む被処理気体を分離室2に送る送風機6と、減圧室4内を減圧する減圧ポンプ7とを備えている。
【0012】
分離室2は吸入口8Aと吐出口9Aとを有し、吸入口8Aは配管10を介して送風機6と接続されている。減圧室3は吸入口8Bと吐出口9Bとを有し、吐出口9Bは配管11を介して減圧ポンプ7と接続されている。分離室2内の第1の空間S1には、送風機6を稼働させることにより、配管10を介して分離対象ガスを含む空気等の被処理気体が送られる。被処理気体は、例えば水蒸気や有機溶剤系ガス等の分離対象ガスの濃度を低減する部屋、装置内部、工場内部(密閉空間等)、保管庫、貯蔵庫等の被処理空間(図示せず)から配管12を介して送風機6に導入される。分離室2内で分離対象ガスが分離され、ガス濃度が低減された被処理気体は、配管13を介して被処理空間に返送される。
【0013】
減圧室3内の第2の空間S2は、減圧ポンプ7を稼働させることにより、分離室2内の圧力(第1の空間S1の圧力)と減圧室3内の圧力(第2の空間S2の圧力)との間に差が生じるように減圧される。被処理気体から分離された水蒸気や有機溶剤系ガス等のガスは、減圧ポンプ7に接続された配管14を介して排出される。分離されたガス(減圧室3に透過したガス)は、大気中に放出されたり、必要に応じて回収される。減圧室3の吸入口8Bには、減圧室3の内部に外部の空気等を取り込みながら減圧するように、配管15が接続されている。配管15には、必要に応じて弁(図示せず)を設けてもよい。また、配管15は場合によって省くことができる。
【0014】
ガス分離体5は、
図2に示すように、分離対象ガスに親和性を有する無機材料粒子15の多孔質集合体16を備えている。多孔質集合体16は、無機材料粒子15間に設けられた空孔17を有している。多孔質集合体16は、例えば直方体形状を有し、除湿室2内(第1の空間S1)に露出される第1の面16aと、減圧室3内(第2の空間S2)に露出される第2の面16bとを有している。多孔質集合体16内に設けられた空孔17の少なくとも一部は、第1の面16aから第2の面16bに通じている。ガス分離体5は、多孔質集合体16の空孔17内に分離対象ガスの液化物、例えば水蒸気であれば水、また有機溶剤系ガスであれば有機溶剤を保持してウエットシールを形成する。ガス分離体5は、当初より分離対象ガスの液化物を含んでいてもよいし、ガス分離体5の使用時に液化物を含ませるようにしてもよい。ガス分離体5の具体的な構成については、後に詳述する。
【0015】
ガス分離装置1に用いられるガス分離体5は、
図3に示すように、気体を透過する支持体18により支持されていてもよい。
図3は一対の支持体18をガス分離体5の両面に沿って配置した状態を示しているが、支持体18はガス分離体5の一方の面のみに沿って配置してもよい。支持体18には、例えば紙、パンチングメタル、ポリイミド多孔体等が用いられ、これら以外のメッシュ状物質であってもよい。支持体18は、数μm径以上の貫通孔を有していることが好ましいが、これに限定されるものではない。ガス分離体5は、支持体18上に直接形成してもよい。例えば、支持体18を型内に配置し、その上に無機材料粒子15を充填して加圧成形して多孔質集合体5を作製してもよい。
【0016】
分離対象ガスを含む空気等の被処理気体は、上述したように送風機6を稼働させることにより除湿室2内に送られる。送風機3と同時に減圧ポンプ7を稼働させ、減圧室3内を減圧することによって、除湿室2内の圧力と減圧室3内の圧力との間に差を生じさせる。この圧力差によって、減圧室3内の水蒸気圧等の分離対象ガスの分圧(第2の空間S2の分離対象ガスの分圧(以下、単にガス分圧ともいう))が除湿室2内の水蒸気圧等のガス分圧(第2の空間S2のガス分圧)より小さくなる。ガス分離体5は空孔17内に保持された分離対象ガスの液化物によりウエットシールを形成しているため、除湿室2内と減圧室3内との間にガス分圧差を生じさせることで、ガス分離体5を介して配置された除湿室2と減圧室3との間で分離対象ガス(その液化物)の移動が起こる。
【0017】
ガス分離体5を介して分離対象ガス(その液化物)の移動を生じさせるにあたって、減圧室3内の圧力が除湿室2内の圧力に対して−50kPa以下となるように、減圧ポンプ7で減圧室3内を減圧することが好ましい。言い換えると、除湿室2内の圧力と減圧室3内の圧力との差が50kPa以上となるように、減圧室3内を減圧することが好ましい。この圧力差が50kPa未満であると、除湿室2内から減圧室3内への分離対象ガス(その液化物)の移動を十分に促進できないおそれがある。さらに、除湿室2と減圧室3との圧力差は100kPa未満であることが好ましい。圧力差が大きすぎると、ガス分離体5を構成する多孔質集合体16が破損するおそれが生じる。除湿室2と減圧室3との圧力差は80〜90kPaの範囲であることがより好ましい、
【0018】
図1に示すガス分離装置1においては、減圧室3内を減圧する減圧ポンプ7で除湿室2と減圧室3との間にガス分圧差を生じさせているが、ガス分圧の調整部はこれに限られるものではない。例えば、減圧室3(第2の空間S2)に乾燥空気や加熱空気を導入するようにしてもよい。これによっても、除湿室2と減圧室3との間に水蒸気圧差等のガス分圧差を生じさせることができる。
図1に示すガス分離装置1において、除湿室2と減圧室3との間にガス分圧差を生じさせるガス圧調整部は、特に限定されるものではなく、ガス分圧差を生じさせることが可能な各種の機構を適用することができる。
【0019】
ガス分圧が相対的に高い除湿室2内の被処理気体中に含まれる分離対象ガスは、ガス分離体5が形成するウエットシール、具体的には空孔17内に保持された分離対象ガスの液化物に吸収される。ガス分離体5内の分離対象ガスの液化物は、ガス分圧が相対的に低い減圧室3内に透過する。除湿室2内のガス分圧と減圧室3内のガス分圧とガス分離体5内の分離対象ガスの液化物量等のバランスによって、除湿室2内の被処理気体中に含まれる分離対象ガスのガス分離体5による吸収とガス分離体5内の分離対象ガス(その液化物)の減圧室3内への放出とが連続して起こる。
【0020】
従って、除湿室2内(第1の空間S1)の分離対象ガスの濃度、さらには除湿室2と送風機6を介して接続された被処理空間の分離対象ガスの濃度を低下させることができる。分離対象ガスが水蒸気である場合、除湿室2内および被処理空間の水蒸気量を減少させて除湿することができる。ガス濃度を低下させた空気等の被処理気体は、除湿室2から被処理空間に返送される。減圧室3内に透過した水分等の分離対象ガスは、配管11、減圧ポンプ7、および配管14を介して外部に排出される。分離対象ガスが水蒸気である場合、減圧室3内に透過した水分を加湿が必要な部屋等の第3の空間に送るようにしてもよい。
【0021】
実施形態のガス分離装置1においては、ガス分離体5がウエットシールを形成しているため、除湿室2内の空気等の被処理気体中に含まれる分離対象ガス(その液化物)のみを減圧室3内に移動させることができる。例えば、ガス分離装置1を除湿装置として使用する場合、除湿室2と減圧室3との間で、基本的には空気中の水分のみが移動し、空気中の乾燥空気はほとんど移動しない。従って、除湿対象の被処理空間の温度をほとんど変動させることがない。被処理空間の温度をほとんど変動させることなく、空間内を除湿することによって、例えば空間の冷房と併用する場合においても、熱効率を低下させるおそれがない。除湿装置を冷房と併用する際の熱効率を高めることができる。
【0022】
次に、ガス分離体5について詳述する。ガス分離体5を構成する多孔質集合体16は、無機材料粒子15の未焼結圧粉体や焼結体等の粒子集合体である。集合体は未焼結圧粉体や焼結体に限らず、無機材料粒子15間に適度な空孔17を形成し得る各種の粒子集合体構造を適用することができる。多孔質集合体16の作製方法については、後述する。多孔質集合体16を構成する無機材料粒子15には、分離対象ガスに親和性を有する材料が用いられる。無機材料粒子15は、単結晶粒子および多結晶粒子のいずれでもよく、また水熱合成で形成した粒子等であってもよい。分離対象ガスに親和性を有する無機材料粒子15で多孔質集合体16を構成することによって、多孔質集合体16の空孔17内に分離対象ガスの液化物を保持して、ガス分離体5内にウエットシールを形成することができる。
【0023】
無機材料粒子15は分離対象ガスに応じて選択される。分離対象ガスとしては、水蒸気や有機溶剤系ガスが挙げられる。これら分離対象ガスを含む被処理気体としては、分離対象ガスを含む空気が挙げられるが、必ずしもこれに限定されない。有機溶剤系ガスとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、酢酸エチル、酢酸n−エチル、ギ酸i−ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロパノール、トリクロロエチレン、n−ヘキサン等の蒸気が挙げられる。
【0024】
分離対象ガスが水蒸気である場合、無機材料粒子15には親水性材料が用いられる。無機材料粒子15を構成する親水性材料としては、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(T)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)等の酸化物、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含むアルミノケイ酸塩、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の炭酸塩、Mg、Ca、Sr等のリン酸塩、およびMg、Ca、Sr、Al等のチタン酸塩のような化合物、もしくはこれらの複合物や混合物等が挙げられる。親水性材料の具体例としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、フェライト、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、チタン酸バリウム等挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
分離対象ガスが有機溶剤ガスである場合、無機材料粒子15には上述した親水性の化合物粒子の格子内にチャージバランスを崩す添加元素を導入した複合材料粒子や、親水性の化合物粒子の格子内に酸素空孔のような原子空孔を導入した欠陥導入材料粒子が用いられる。親水性化合物は上述した通りであり、そのような化合物粒子の格子内に導入する添加元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)等が挙げられる。ただし、化合物粒子を構成する陽イオン元素と重複する元素は除かれる。これらの元素を格子内に導入したり、あるいは格子内に酸素空孔等を導入することで、有機溶剤に対する親和性が得られる。
【0026】
多孔質集合体16を構成する無機材料粒子15の平均一次粒子径は10nm〜10μmであることが好ましい。このような平均一次粒子径を有する無機材料粒子15を用いることで、適度な大きさを有する空孔17を適度な量で存在させた多孔質集合体16が得られやすくなる。無機材料粒子15の平均一次粒子径が10μmを超えると、多孔質集合体16内の空孔17の大きさが大きくなりやすいため、ウエットシールの形成性が低下するおそれがある。無機材料粒子15の平均一次粒子径が10nm未満であると、多孔質集合体16内の空孔17の量が減少したり、空孔17の大きさが小さくなりやすいため、分離対象ガスの透過流量が低下するおそれがある。無機材料粒子15の平均一次粒子径は50〜1000nmであることがより好ましい。さらに、多孔質集合体16内の空孔17の大きさや量を制御するために、平均一次粒子径が異なる2種類以上の無機材料粒子15を用いてもよい。これによって、分離対象ガスの分離率と透過流量とを両立させやすくなる。
【0027】
上述したような無機材料粒子15を用いた多孔質集合体16としては、無機材料粒子15の圧粉体(未焼結圧粉体)や焼結体等が例示される。無機材料粒子15の未焼結圧粉体は、例えば無機材料粒子15を型内に充填して圧縮成形することにより得られる。無機材料粒子15の焼結体は、圧粉体を焼結することにより得られる。無機材料粒子15の圧縮成形条件や焼結条件を調整することによって、適度な多孔質状態を有する圧粉体や焼結体を得ることができる。また、無機材料粒子15としてゼオライトを用いる場合、水熱合成した多孔体等であってもよい。さらに、無機材料粒子15をバインダ樹脂と混合し、この混合物を成形して多孔質集合体16を作製してもよい。この場合、適度な空孔17が得られるように樹脂量を調整したり、予め多孔体になる樹脂を用いることが好ましい。混合物の成形方法としては、圧縮成形法に限らず、ドクターブレードのようなシート成形法や押し出し成形法等を適用してもよい。混合物の成形体は、そのまま多孔質集合体16として用いてもよいし、適当な温度で熱処理して脱脂した状態で用いてもよい。
【0028】
実施形態のガス分離体5において、無機材料粒子15間に存在させる空孔17の平均孔径は50nm〜5μmの範囲であることが好ましい。空孔17の平均孔径を50nm〜5μmの範囲とすることによって、分離対象ガスの通り道である空孔17内に分離対象ガスの液化物を保持しやすくなり、ガス分離体5にウエットシールが形成されやすくなると同時に、分離対象ガスの液化物の適度な透過流量を確保することができる。空孔17の平均孔径が5μmを超えると、ウエットシール性が低下したり、また除湿室2内からの分離対象ガスの吸収と減圧室3への分離対象ガスの放出のバランスが低下し、ガス分離性能が低下しやすくなる。空孔17の平均孔径が50nm未満であると、水蒸気や有機溶剤系ガス等の分離対象ガス(その液化物)の透過流量が低下しやすくなる。空孔17の平均孔径は50〜500nmの範囲であるであることがより好ましい。
【0029】
多孔質集合体16の体積気孔率(多孔質集合体16内の空孔17の体積率)は20〜60%の範囲であることが好ましい。多孔質集合体16の体積気孔率が20%未満であると、空孔17を通過できる分離対象ガスの液化物量が減少するため、除湿室2内からの分離対象ガスの吸収量および減圧室3への分離対象ガスの放出量が不十分になるおそれがある。多孔質集合体16の体積気孔率が60%を超えると、多孔質集合体16の強度が低下して、ガス分離装置1の連続運転を妨げたり、またガス分離体5のウエットシール性が低下するおそれがある。多孔質集合体16の体積気孔率は30〜50%の範囲であることがより好ましい。なお、多孔質集合体16の体積気孔率や空孔17の形状(平均孔径等)は、水銀圧入法により測定した値を示すものである。
【0030】
ガス分離体5を構成する多孔質集合体16においては、上述した無機材料粒子15の平均一次粒子径、無機材料粒子15の成形条件、空孔17の平均孔径、体積気孔率等に基づいて、第1の面16aから第2の面16bへの空気透過率が1×10
−14〜1×10
−11m
2の範囲に調整されている。これらによって、分離対象ガスの実用的な分離率α、例えば3〜100程度の分離率αを維持しつつ、分離対象ガス(その液化物)の透過流量を向上させることができる。多孔質集合体16の空気透過率が1×10
−14m
2未満であると、分離対象ガス(その液化物)の透過流量が減少する。空気透過率が1×10
−11m
2を超えると、ウエットシール性が低下して分離対象ガスの分離率αが低下しやすくなる。多孔質集合体16の空気透過率は1×10
−14〜1×10
−13m
2の範囲であることが好ましい。このような分離対象ガスの分離率αと透過流量とを両立させたガス分離体5を用いることによって、再生処理を伴わないガスの連続分離性能を高めることできる。従って、実用的でかつ効率的なガス分離装置1を提供することが可能となる。
【0031】
空気透過率Kは、一定容量の空気を試料の垂直方向に通過させ、その際の流入と流出の圧力差ΔP[単位:kPa]と流速Q
air[単位:cm
3/min]から、下記の(1)式に基づいて求められる。(1)式において、δは試料の厚さ、Aは試料の面積、μ
airは空気の粘性(18.57μPa・s)である。
K=(Q
air/ΔP)・(μ
air/A)・δ …(1)
【0032】
ガスの分離率αは、例えば水のようなガスの液化物と被処理気体を構成する乾燥空気の透過量の割合であり、下記の(2)式で定義される。
α=(N4
liquid/N4
air)/(N3
liquid/N3
air) …(2)
式(1)において、(N3
liquid/N3
air)は除湿室2(第1の空間S1)に供給させる被処理気体(空気)に含まれるガスの液化物と乾燥空気のモル比、(N4
water/N4
air)は減圧室3(第2の空間S2)から排出される被処理気体(空気)に含まれるガスの液化物と乾燥空気のモル比である。αが1であれば、除湿側空間S1から減圧側空間S2にガスの液化物(水等)と乾燥空気が同じ割合で流れることを意味する。αが100であれば、除湿側空間S1から減圧側空間S2へのガスの液化物(水等)の透過に対して乾燥空気の透過が1/100に低減されることを意味する。
【0033】
ガス(液化物)の透過速度Vは、下記の(3)式で定義される。
V=ΔM
liquid/A/Δt …(3)
式(2)において、ΔM
liquidは減圧側空間S2で回収されるガス液化物の量であり、Aはガス分離体5の面積、Δtは時間である。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第1の実施形態によるガス分離装置1を除湿装置として用いた構成例について、
図4および
図5を参照して説明する。
図4において、Rは除湿の対象空間Rxを構成する部屋を示しており、部屋Rは吸気口Raを有している。除湿装置1は、除湿対象の空間Rxの空気から水蒸気(水分)を除去するために、部屋Rに設けられている。
図4に示す除湿装置1は、減圧室3(第2の空間S2)に外部の空気を取り込む配管15が接続された構造を有している。除湿装置1では、減圧室3内に外部の空気を取り込みながら減圧室3内が減圧される。配管15は弁21を有している。
【0035】
空間Rx内の空気は、基本的に水蒸気(水分)と乾燥空気とにより構成されている。除湿装置1の除湿室2内には、送風機6を稼働させることにより配管12、10を介して空間Rx内の空気が送られる。除湿室2内で除湿された空気は、配管13を介して空間Rxに返送される。ガス分離体5を用いた除湿動作(ガス分離動作)は、第1の実施形態で詳述した通りである。すなわち、ウエットシールが形成されたガス分離体5を介して、除湿室2から減圧室3に水分のみが透過する。このような空気中の水分のガス分離体5による吸収とガス分離体5内の水分の減圧室3への放出とが連続して起こるため、再生処理を伴わない連続除湿による除湿性能を高めることできる。従って、実用的でかつ効率的な除湿装置1を提供することが可能となる。
【0036】
実施形態の除湿装置1の適用構造は、
図4に示す構造に限定されるものではない。実施形態の除湿装置1は、種々に変形することができる。
図4では第1の空間S1を除湿装置1の除湿室2に設定したが、第1の空間S1はこれに限定されるものではない。
図5に示すように、第1の空間S1は除湿の対象空間Rxそのものであってもよい。すなわち、第2の空間S2となる減圧室3を、第1の空間S1となる対象空間Rxとガス分離体5を介して配置してもよい。この場合、減圧室3を減圧することによって、除湿の対象空間Rx(第1の空間S1)の空気から水蒸気(水分)が直接除去される。第1の空間S1および第2の空間S2の設定は、種々に変更することができる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例とその評価結果について述べる。
【0038】
(実施例1)
平均粒子径が3μmの4Aゼオライト粒子(LTA型、細孔径:0.3〜0.4nm)を金型内に充填し、1t/cm
2の圧力で圧縮成形することによって、厚さ2mmの圧粉体(多孔質集合体)を作製した。圧粉体の空孔形状等を水銀圧入法により測定したところ、空孔の平均孔径は170nm、体積気孔率は40%であった。圧粉体の空気透過率は3×10
−14m
2であった。この圧粉体をガス分離体として用いた場合の水蒸気分離率αおよび水蒸気透過速度Vを測定したところ、除湿(吸着)側への供給空気の温度が40℃、飽和蒸気の条件において、水蒸気分離率α=3、水蒸気透過速度V=300g/h/m
2であった。数時間試験を行っても、水蒸気分離率αおよび水蒸気透過速度Vの低下は認められなかった。さらに、1カ月後に同様の測定をしても変化は認められなかった。
【0039】
(実施例2)
平均粒子径が3μmの4Aゼオライト粒子と、この4Aゼオライト粒子をビーズミルで粉砕して平均粒子径を300nmに調整した小径粒子とを用意した。平均粒子径が3μmの4Aゼオライト粒子と平均粒子径が300nmの4Aゼオライト粒子(小径粒子)とを、体積比で100:7の割合となるように混合した。混合粉を金型内に充填し、1t/cm
2の圧力で圧縮成形することによって、厚さ2mmの圧粉体(多孔質集合体)を作製した。圧粉体の空孔形状等を水銀圧入法により測定したところ、空孔の平均孔径は180nm、体積気孔率は30%であった。圧粉体の空気透過率は5×10
−14m
2であった。この圧粉体をガス分離体として用いた場合の水蒸気分離率αおよび水蒸気透過速度Vを測定したところ、除湿(吸着)側への供給空気の温度が40℃、飽和蒸気の条件において、水蒸気分離率α=6、水蒸気透過速度V=500g/h/m
2であった。数時間試験を行っても、水蒸気分離率αおよび水蒸気透過速度Vの低下は認められなかった。さらに、1カ月後に同様の測定をしても変化は認められなかった。
【0040】
(実施例3)
水熱合成法により4Aゼオライトを作製し、この4Aゼオライトを成型した後、90℃で熱処理して多孔体を得た。多孔体の空孔形状等を水銀圧入法により測定したところ、空孔の平均孔径は100nm、体積気孔率は30%であった。多孔体の空気透過率は1.5×10
−14m
2であった。この多孔体をガス分離体として用いた場合の水蒸気分離率αおよび水蒸気透過速度Vを測定したところ、除湿(吸着)側への供給空気の温度が40℃、飽和蒸気の条件において、水蒸気分離率α=50、水蒸気透過速度V=250g/h/m
2であった。数時間試験を行っても、水蒸気分離率αおよび水蒸気透過速度Vの低下は認められなかった。さらに、1カ月後に同様の測定をしても変化は認められなかった。
【0041】
(実施例4)
実施例2で作製したガス分離体を用いて、
図4に示したガス分離装置を構成した。第2の空間を減圧することによって、第1の空間に供給される空気中の水分量を減少させる。これによって、部屋内の対象空間が除湿される。除湿対象空間は、当初温度が40℃、相対湿度が70%であったが、ガス分離装置を1時間運転することによって、相対湿度が60%にまで低下した。ガス分離装置は、第1の空間に対する第2の空間の圧力を−80kPaに設定して運転した。この際、対象空間の温度は40℃±1℃の範囲で安定していた。また、実施例1で作製したガス分離体を用いて、同様な除湿試験を実施したところ、同様な結果が得られた。実施例3で作製したガス分離体を用いた場合も同様であった。
【0042】
(比較例1)
アルミナ基材の表面に4Aゼオライトを擦りつけ、これを水熱合成用の溶液(90℃)に1時間浸漬して反応させることによって、アルミナ基材の表面に厚さ5μmの4Aゼオライト膜を形成した。得られたゼオライト膜の体積気孔率は25%、空気透過率は1×10
−15m
2であった。ゼオライト膜をガス分離体として用いた場合の水蒸気分離率αおよび水蒸気透過速度Vを測定したところ、除湿(吸着)側への供給空気の温度が40℃、飽和蒸気の条件において、水蒸気分離率α>100、水蒸気透過速度V=100g/h/m
2であったが、その後に基材ごと破損した。
【0043】
(比較例2)
平均粒子径が0.4μmのアルミナ粒子に、濃度5%のポリビニルブチラール(PVB)のアセトン溶液を添加し、乳鉢で混合した後に、金型に充填して1t/cm
2の圧力で成型し、さらに1000℃で焼結することで、厚さ2mmの多孔質焼結体を作製した。多孔質焼結体の空孔形状等を水銀圧入法により測定したところ、空孔の平均孔径は480nm、体積気孔率は40%であった。多孔質焼結体の空気透過率は4×10
−10m
2であった。多孔質焼結体をガス分離体として用いた場合の水蒸気分離率αおよび水蒸気透過速度Vを測定したところ、除湿(吸着)側への供給空気の温度が40℃、飽和蒸気の条件において、水蒸気分離率α=1、水蒸気透過速度V=4000g/h/m
2であった。
【0044】
(比較例3)
比較例1および比較例2で作製したガス分離体を用いて、実施例4と同様にして除湿試験を実施したところ、ガス分離装置を1時間運転して湿度は低下しなかった。
【0045】
(実施例5)
平均粒子径が5μmのZSM−5ゼオライト粒子を硝酸鉄溶液に含浸させた後に乾燥させ、これを金型内に充填して1t/cm
2の圧力で圧縮成形することによって、厚さ2mmの圧粉体(多孔質集合体)を作製した。圧粉体の空孔形状等を水銀圧入法により測定したところ、空孔の平均孔径は3μm、体積気孔率は40%であった。圧粉体の空気透過率は9×10
−12m
2であった。この圧粉体をガス分離体として用いて、エタノール水溶液の蒸気の分離試験を実施したところ、5質量%のエタノール溶液が80質量%程度まで濃縮された。
【0046】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。