特許第6615751号(P6615751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6615751外縁を最適化した中空コアを有する導波路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615751
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】外縁を最適化した中空コアを有する導波路
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/032 20060101AFI20191125BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20191125BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   G02B6/032 Z
   G02B6/02 451
   H01S3/10 Z
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-517660(P2016-517660)
(86)(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公表番号】特表2016-526693(P2016-526693A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】FR2014051326
(87)【国際公開番号】WO2014199048
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】1355314
(32)【優先日】2013年6月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506309102
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デュ・リモージュ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LIMOGES
(73)【特許権者】
【識別番号】503337254
【氏名又は名称】セーエヌエールエス
(73)【特許権者】
【識別番号】515323124
【氏名又は名称】グロフォトニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ベナビッド,フェタ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ドゥボール,ブノワ
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−517793(JP,A)
【文献】 特表2008−527425(JP,A)
【文献】 特表2002−541507(JP,A)
【文献】 特表2010−541011(JP,A)
【文献】 特開2011−257589(JP,A)
【文献】 特表2008−529049(JP,A)
【文献】 米国特許第07821704(US,B1)
【文献】 WANG et al.,Low loss broadband transmission in hypocycloid-core Kagome hollow-core photonic crystal fiber,OPTICS LETTERS,米国,Optical Society of America,2011年 2月23日,Vol.36, No.5,pp.669-671
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02− 6/036
G02B 6/26− 6/27
G02B 6/30− 6/34
G02B 6/42− 6/44
C03B 37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖した外縁で画成された中空コア(16)を有し、前記外縁が、曲率が負である一連の弧部(20)を備え、各弧部が弦(24)を備える導波路であって、前記中空コア(16)の前記外縁は、交互に配置された小弧部(PA)および大弧部(GA)を備え、各弧部(20)は、前記中空コア(16)の中心(18)および前記弧部の弦(24)の中央を通る直線に対して左右対称であり、前記大弧部の比率b=2Ra/Cは、前記大弧部(GA)の場合は0.9よりも大きく、Raは前記弦(24)と前記弧部(20)との間の最大距離に相当し、Cは前記弦(24)の長さに相当し、前記弧部(20)は厚み(t)を有し、前記大弧部の比率b=2Ra/Cと前記小弧部(PA)の比率b’ =2Ra/Cとは異なることを特徴とする、導波路。
【請求項2】
前記中空コア(16)の前記外縁は、少なくとも3つの小弧部(PA)および少なくとも3つの大弧部(GA)からなることを特徴とする、請求項1に記載の導波路。
【請求項3】
すべての前記大弧部(GA)は、すべて同じ比率bを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の導波路。
【請求項4】
前記小弧部(PA)の比率b’ =2Ra/Cは、0.8以下であることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の導波路。
【請求項5】
前記弧部(20)の厚みは、誘導される最大波長の半分以下であることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の導波路。
【請求項6】
厚みを有する前記弧部(20)の材料は、目標の波長範囲内で1.2よりも大きい屈折率を有することを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の導波路。
【請求項7】
前記中空コア(16)は、前記導波路の機能に適応したガスを充填されることを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の導波路。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の中空コアフォトニック結晶ファイバ。
【請求項9】
カップリングを抑制した誘導を実現できる構造であるクラッドを備えることを特徴とする、請求項8に記載のファイバ。
【請求項10】
前記クラッドの構造は、導波の波長の5倍以上であるピッチの大きいカゴメタイプのものであることを特徴とする、請求項9に記載のファイバ。
【請求項11】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の導波路または請求項8〜10のうちいずれか一項に記載のファイバを備える、レーザ出力を伝達できる装置。
【請求項12】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の導波路または請求項8〜10のうちいずれか一項に記載のファイバを備える、レーザパルスの圧縮装置。
【請求項13】
中空コアにガスを充填された、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の導波路または請求項8〜10のうちいずれか一項に記載のファイバを備えるレーザガス。
【請求項14】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の導波路または請求項8〜10のうちいずれか一項に記載のファイバを備えるイメージング装置。
【請求項15】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の導波路または請求項8〜10のうちいずれか一項に記載のファイバを備える周波数校正装置。
【請求項16】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の導波路または請求項8〜10のうちいずれか一項に記載のファイバを備える導波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ伝送損失を低減できるように外縁を最適化した中空コアを有する導波路に関する。本発明は、さらに詳細には、単位長さあたりの損失を少なくして伝送するように外縁が最適化され、モード内容が単一モード方式に近く、これと同等であり、最後に、導波モードのフィールドと中空コアの外縁を構成する材料との重なりが極めてわずかである中空コアフォトニック結晶ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶ファイバ(FCPまたはPCF、英語の「photonic crystal fiber」の略)は、ファイバの全長にわたって広がる介在物の2次元の周期格子で形成された導波路である。その構造により、これらのファイバは、電磁波をファイバのコア内に確実に閉じ込める。
【0003】
これらのフォトニック結晶ファイバは、その幾何光学パラメータ、例えば介在物の直径、介在物の分布、周期性(2つの介在物の間のピッチ)、層数、使用材料の屈折率などを調整することで、極めて多様な導波の可能性を提供する。これらのフォトニック結晶ファイバを作製するために複数の技術を用いてよい。
【0004】
スタックアンドドロー(英語で「stack and draw(積み重ねと線引き)」、と称する第1の動作モードでは、直径1から2mmの中空チューブの形態であるキャピラリを束状に合わせる。次にこの束は、キャピラリを保持するためにチューブに挿入される。その後、チューブおよびキャピラリの束は線引きされる。
【0005】
中空コアフォトニック結晶ファイバの場合、中空コアを形成するためにコアにはキャピラリが含まれていない。
【0006】
もう1つの動作モードでは、介在物を生成してから線引きするようにシリンダを加工できる。
【0007】
フォトニック結晶ファイバには、中実コアフォトニック結晶ファイバおよび中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC−PCFファイバ)がある。
【0008】
本発明は、さらに詳細には、中空コアフォトニック結晶ファイバに関する。
【0009】
例として、(特許文献1)には、中空コアフォトニック結晶ファイバ形態の導波路であって、三角構造のクラッドを備え、中空コアを形成する中心部にキャピラリがない導波路が記載されている。線引き段階の前に、中空コアは一連の円弧部で画成され、この円弧部は、中空コアを画成するキャピラリの壁に相当する。この発明の特徴点によれば、線引き段階の前に、中空コアは、横断面が円形で、この円の第1の方向に沿った第1の寸法は、第2の方向に沿った第2の寸法よりも大きい。線引き段階では、中空コアの外縁を形成する円弧部は平らになろうとするが、中空コアの断面は、線引き段階後はほぼ円形である。この文献によれば、記載されているファイバによって、1mmから1.5μmの波長範囲に対して約1dB/mという低損失を実現することが可能になり、その誘導は、「テラヘルツ」のスペクトル範囲には最適である。
【0010】
導波の性質に応じて、フォトニック結晶ファイバには、フォトニックバンドギャップファイバ(BIPファイバまたはPBGファイバ、英語の「Photonic Band Gap fiber」の略)のほか、大ピッチファイバ(英語でlarge−pitch HC−PCF)またはカゴメタイプのファイバとも呼ばれるカップリング抑制導波ファイバ(英語でInhibited coupling guiding HC−PCF)がある。
【0011】
先行技術による中空コアフォトニックバンドギャップファイバには、以下の欠点がある。
【0012】
約1.5μmの特定の波長に対して約1dB/kmの伝送損失を実現することが可能であるとしても、これよりも短い波長の場合、この値は極めてすぐに大きくなる。そのため、可視波長の場合、伝送損失は1000dB/kmに達することがある。
【0013】
もう1つの問題によれば、これらのフォトニックバンドギャップファイバは約70THzの通過周波数帯を有するが、この通過周波数帯は、非線形光学や、極めて短いパルスの誘導などの特定の用途には狭すぎることは明らかと言ってよい。
【0014】
もう1つの問題によれば、先行技術の中空コアフォトニックバンドギャップファイバは、高分解能分光法または極めて短いパルスの誘導のような特定の用途には分散があまりにも多く構造化している。
【0015】
最後に、もう1つの問題によれば、先行技術の中空コアフォトニックバンドギャップファイバは、コア中の導波モードと低レーザの損傷閾値を生成する外縁との間では、出力の重なりが多い。
【0016】
カップリング抑制導波ファイバの利点は、中空コアフォトニックバンドギャップファイバとは逆に、極端に広い通過周波数帯が得られるということである。その代わりに、これらのファイバは、中空コアフォトニックバンドギャップファイバよりも伝送損失が大きく、0.5dB/mを上回る。
【0017】
カップリング抑制導波ファイバは、クラッドに関しては様々な構造を有することができる。
【0018】
いわゆる三角である第1の構造によれば、介在物の格子は、断面が環状のキャピラリ形態であり、このキャピラリは六角形の表面上に分布し、キャピラリの中心は、正三角形を形成するように配置される。
【0019】
いわゆるカゴメタイプの構造である第2の構造によれば、介在物の格子は壁で画成され、この壁は、ファイバの伝播方向に平行で、断面が六角形のチャネルと断面が三角形の残りのチャネルとに分かれるように、3つの方向に沿って60°に配置される。この構成によれば、3つの壁は同じ一点に集中しない。
【0020】
例を挙げると、(特許文献2)には、カゴメタイプの構造を有するカップリング抑制導波結晶ファイバが記載されている。
【0021】
この種の導波を実現するには、線引き段階後に、介在物の壁ができる限り薄く、2つの連続する節の間ができる限り長くなければならず、これがピッチの大きい構造に相当する。
【0022】
(非特許文献1)には、カゴメタイプの構造および中空コアを有するカップリング抑制導波ファイバが提案されている。さらに詳細には、この文献には2つのファイバが記載され、第1のファイバはコアがほぼ環状であり、第2のファイバのコアは、一連の円弧部を含む外縁で画成されている。この文献によれば、これらの円弧部は、内サイクロイドの外縁を形成している。
【0023】
約1.4dB/mの伝送損失を生じる第1のファイバとは逆に、第2のファイバは約0.4dB/mの伝送損失を生じる。
【0024】
この文献によれば、通過周波数帯が約200THzで約180dB/Kmの伝送損失を生じるファイバを得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第7.315.678号明細書
【特許文献2】国際特許第2009/044100号明細書
【特許文献3】国際特許第2006077437号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Low loss broadband transmission in hypocycloid−core Kagome hollow−core photonic crystal fiber” March 1,2011/Vol.36,No.5/OPTLCS LETTERS
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、とりわけ最短のUVまたはEUV領域から最長のIR領域まで及ぶ短い波長の場合に、前記ファイバの性能、とりわけ伝送損失に関して改良できるよう最適化した外縁を備える、中空コアを有する導波路を提供して、先行技術の欠点を改善することをねらいとする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
このようにするために、本発明は、閉鎖した外縁で画成された中空コアを有し、外縁が、負の曲率を有する一連の円弧部を備え、各円弧部が弦を備える導波路であって、中空コアの外縁は、交互に配置された小円弧部および大円弧部を備え、各円弧部は、中空コアの中心および円弧部の弦の中央を通る直線に対して左右対称であり、大円弧部の比率b=2Ra/Cは、大円弧部の場合は0.9よりも大きく、Raは弦と円弧部との間の最大距離に相当し、Cは弦の長さに相当することを特徴とする、導波路を目的とする。
【0029】
好ましくは、円弧部の厚みは、誘導された最大波長の半分以下である。
【0030】
本発明は、中空コアの外縁が前述した立体形状と一致する中空コアフォトニック結晶ファイバも提供する。好ましくは、本発明による中空コアフォトニック結晶ファイバはクラッドを備え、このクラッドの構造により、カップリングを抑制した誘導を実現できる。有利な実施形態によれば、クラッドの構造はカゴメタイプのものである。
【0031】
本発明は、本発明による導波路またはフォトニック結晶ファイバを備える装置にも関し、これは、レーザ出力を伝達できる装置、レーザパルスの圧縮装置、中空コアにガスが充填されているガスレーザ、イメージング装置、周波数校正装置、導波装置などだが、このリストは全てを網羅するものではない。
【0032】
その他の特徴および利点は、本発明に関する以下の説明文から明らかになり、この説明文は、付属の図面を対象に例として挙げているにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1のクラッド構造を有する本発明を示す中空コアフォトニック結晶ファイバの第1の変形例の断面図である。
図2】もう1つのクラッド構造を有する本発明を示す中空コアフォトニック結晶ファイバのもう1つの変形例の断面図である。
図3図2に示したファイバの中空コアの外縁を詳細に示している断面図である。
図4】本発明のもう1つの変形例によるファイバの中空コアの外縁を詳細に示している断面図である。
図5A】本発明の第1の実施形態によるファイバの断面図であり、該ファイバの波長に応じた伝送損失の曲率を示すグラフと関連している図である。
図5B】本発明のもう1つの実施形態によるファイバの断面図であり、該ファイバの波長に応じた伝送損失の曲率を示すグラフと関連している図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から図4には、フォトニック結晶ファイバ形態の導波路を10通りで示した。
【0035】
フォトニック結晶ファイバ10は、外側から内側へ向かって、保護カバー12、クラッド14、および外縁で画成された中空コア16を備えている。中空コアは、空気またはファイバの機能に適応したガスを含んでいてよい。
【0036】
クラッド14は、複数の介在物を備え、この介在物は、フォトニック結晶ファイバ10の全長にわたって広がっている。
【0037】
ファイバのコアの中心を符号18で表記している。
【0038】
クラッド14の構造(つまり分散、介在物の形状および使用材料)により、電磁波を中空コア16に閉じ込めることができる。
【0039】
図1に示した第1の変形例によれば、クラッド14はカゴメタイプの構造である。図2に示したもう1つの変形例によれば、クラッド14は三角構造である。当然ながら、本発明はこれらの変形例に限定されない。
【0040】
そのため、構造の模様は、クラッドの断面全体にわたって一様でなくてよい。そのため、クラッドは、ファイバの中心18に対して同心の複数の模様を有していてよい。
【0041】
有利な実施形態によれば、クラッドは、カップリングを抑制した導波を実現できる構造である。このようにするために、クラッドの構造は、いわゆる大ピッチ(英語の「large pitch」)である。好ましくは、クラッドは、カゴメタイプの大ピッチの構造を有する。
【0042】
そのため、クラッドの構造は、クラッドの屈折率を導波モードの実効屈折率に合わせるように選定される。
【0043】
大ピッチとは、構造のピッチが導波の波長の5倍以上であるということを指す。
【0044】
クラッドには多様な構成があってよいため、クラッドについてはこれ以上記載しない。変形例によれば、クラッドは、一様であってよく、規則的、ほぼ規則的、または不規則な構造を備えていてよい。
【0045】
中空コア16は、曲率が負である一連の円弧部20(中心18に向かって凸状になった部分)からなる閉鎖した外縁で画成される。各円弧部20は、2つの端部22.1および22.2を備え、隣り合う2つの円弧部は1つの共通端部を有する。クラッド14は、円弧部20を保護して保持する役割を果たす。
【0046】
重要な点によれば、以下の説明では、中空コアの立体形状は、完成したファイバとして記載されている。つまり、線引き段階を組み入れた実施工程の場合に線引き段階後にできたファイバであり、線引き段階前のファイバではない。
【0047】
各円弧部20は、円弧部の端部22.1および22.2を通る直線に相当する弦24を備える。
【0048】
好ましくは、各円弧部20は、中心18および弦24の中央を通る直線に対して左右対称である。そのため、全円弧部20の端部22.1および22.2は、ファイバの中空コアの中心18を中心とする符号26で示した円上に配置される。各円弧部は、ほぼ内サイクロイドであり、その準円は、円弧部の端部の円26である。
【0049】
各円弧部20に関して、弦は長さがCであり、Raは、弦24と円弧部20との間の最大距離に相当する。
【0050】
本発明の重要な特徴によれば、中空コアの外縁は、小円弧部PAおよび大円弧部GAからなり、両円弧部は交互に配置される。そのため、各小円弧部PAは2つの大円弧部GAの間に配置され、各大円弧部GAは2つの小円弧部PAの間に配置される。外縁は、同数の小円弧部PAおよび大円弧部GAからなる。
【0051】
本発明によれば、大円弧部GAは、比率b=2Ra/Cが0.9以上である。
【0052】
好ましくは、大円弧部GAはすべて、同じ比率bを有する。
【0053】
好ましくは、小円弧部PAはすべて、同じ比率b’=2Ra/Cを有する。有利には、小円弧部PAの比率b’は、0.8以下である。図3に示した有利な実施形態によれば、中空コアの外縁は、6つの大円弧部GAおよび6つの小円弧部PAからなる。
【0054】
図4に示したもう1つの実施形態によれば、中空コアの外縁は、3つの大円弧部GAおよび3つの小円弧部PAからなる。
【0055】
本発明は、これらの実施形態に限定されない。どのような実施形態であっても、中空部の外縁は、少なくとも3つの大円弧部GAおよび少なくとも3つの小円弧部PAからなる。
【0056】
図に示したように、小円弧部PAは下層円Routを画成し、大円弧部は、下層円Rintよりも直径が短い下層円Rintを画成し、2つの下層円RintおよびRoutは、ファイバの中空コアと同じ中心18を有する。
【0057】
図1および図2に示した実施形態によれば、中空コア16は、中心が円26上に配置されたキャピラリによって画成され、キャピラリは、円形と楕円形が交互になって隣接するようになっている。
【0058】
前述した中空コアの外縁の立体形状により、中空コア内の導波モードのフィールドと外縁との間が空間的に重なるのを回避できるとともに、外縁の長さを長くでき、その結果、コアの基本モードと外縁によってもたらされたフィールドとの間のカップリングの抑制を高められる。この立体形状により、コアの中心18の端部22.1、22.2をできる限り引き離すことも可能になる。
【0059】
本発明のもう1つの特徴によれば、tと表記した円弧部20の厚みは、誘導された最大波長の半分以下である。例を挙げると、誘導された最大波長が2μmであれば、円弧部の厚みは1μm未満でなければならない。
【0060】
使用材料に関して、円弧部20の材料は、目標の波長範囲内で1.2よりも大きい屈折率を得られるように選定される。
【0061】
約1mから1mmである電磁波タイプの波長範囲内で波を誘導するのに適した実施形態によれば、円弧部の厚みtは約0.5mmである。選定される材料は、例えば銅などの反射性金属のように反射性が高いか、石英のように吸収率が低いものである。この波長範囲内では、円弧部20は、金属製、ガラス製、ホウケイ酸ガラス製、石英製、セラミック材料製、ポリテトラフルオロエチレン製などであってよい。
【0062】
約100μmから1mmであるTHzタイプの波長範囲内で波を誘導するのに適した実施形態によれば、円弧部の厚みtは約50μmである。選定される材料は、テフロン(登録商標)製または吸収率が低く屈折率が1.2よりも大きい材料製であり、例えばポリテトラフルオロエチレン製である。
【0063】
約2mから10nmである波長範囲内で波を誘導するのに適した実施形態によれば、円弧部の厚みtは、約1μmである。選定される材料は、例えば純シリカまたは軟質ガラスのようなできる限り透明なものであろう。
【0064】
これらの全波長範囲に関して、ファイバは、積み重ねと線引きまたは加工と線引きによって得られてよい。
【0065】
図5Aおよび図5Bには、6つの小円弧部PAおよび6つの大円弧部GAからなる外縁を有する中空コアフォトニック結晶ファイバを示した。これらのファイバは、カゴメタイプの構造を備えている。この構造は、(特許文献3)および(特許文献2)の教示を用いて実現できるものである。
【0066】
これらのファイバは、断面が環状のキャピラリを積み重ね、線引きして作製される。コアの外縁の輪郭は、材料のレオロジーパラメータ、温度、および線引き段階を実施した際のキャピラリどうしの差圧を最適にすることで得られる。
【0067】
図5Aでは、ファイバは、b=0.9でt=800nmの外縁を有する。
【0068】
図5Bでは、ファイバは、b=1でt=1400nmの外縁を有する。
【0069】
800nmから1200nmまでのスペクトル範囲で実施した測定から、ファイバは誘導の弱い帯域を示した状態で誘導することがわかり、この帯域は、コアでの導波モードと円弧部での導波モードとの間で共鳴する相互作用が原因である。グラフを見ればわかるように、伝送損失は、800nmから1200nmまでの波長に対して20dB/kmのレベルに下がる。比較すると、(非特許文献1)で説明されているファイバは、最大の円弧部に対して0.75以下の曲率bを有し、最高でおよそ180dB/kmの伝送損失が生じる。
【0070】
したがって、コアの外縁を最適化し、かつ、さらに詳細には大円弧部の値bを最適化することで、伝送損失の確実な低減が起こる。
【0071】
中空コア18の外縁の曲率bのパラメータを最適化することで、カップリングの抑制を高めることができ、その結果、導波路の伝送損失を低減できる。曲率bのパラメータを最適化することで、とりわけレーザ出力を伝達できるクラッド内の屈折力の重なりを抜本的に低減することを実現できる。
【0072】
本発明によるフォトニック結晶ファイバにより、低伝送損失、単一モードでの導波、および極めて高いレーザによる損傷閾値を合わせた導波を実現できる。
【0073】
優先的にフォトニック結晶ファイバに適用したことを記載したが、本発明は、全体的に導波路に適用できるものである。ただし本発明は、さらに詳細には、カップリングを抑制してクラッドの構造と中空コアの外縁とを同時に最適にすることによって導波ファイバに適応される。
【0074】
本発明に従って外縁を最適化した中空コアを有する、カップリングを抑制した導波路または導波ファイバは、以下の用途(全てを網羅していない)で使用できる:
− レーザによる微細加工の分野、外科分野、細胞(がん細胞)治療の分野でのレーザ出力の伝達。
− レーザパルス、特に多量のパルスの非線形効果による圧縮。
− テラヘルツイメージング。
− 活性ガスを充填したコアを増幅媒質として使用するガスレーザ。
− マイクロ波またはTHzの範囲で行う単一モードかつ低伝送損失での導波。
− コアにガスを充填した周波数校正。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B