(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る作業支援システム、作業支援方法およびプログラムを詳細に説明する。ただし、図面は模式的なものであるため、具体的な構成は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0010】
図1は、実施形態に係る作業支援システムの全体構成の一例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態に係る作業支援システム1の全体構成の一例について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る作業支援システム1は、作業支援装置10と、利用側PC(Personal Computer)20と、を有する。また、設備21は、ネットワーク2に接続されている。作業支援装置10、利用側PC20、および設備21は、ネットワーク2を介して互いに通信可能となるように構成されている。
【0012】
作業支援装置10は、設備、機械または装置等の保守および点検等を記録したメンテナンスログから、今後、保守および点検等の作業内容を出力する装置である。作業支援装置10は、例えば、PCまたはワークステーション等で構成されるサーバ装置である。作業支援装置10による作業内容の出力動作の詳細は、後述する。
【0013】
利用側PC20は、作業者等によって入力された、設備、機械または装置等(以下、単に「設備等」と称する場合がある)について行った保守および点検等(以下、単に「メンテナンス」と称する場合がある)の実際の作業内容の記録の情報(メンテナンス情報)を、ネットワーク2を介して、作業支援装置10に送信するPCである。なお、利用側PC20は、PCに限定されず、例えば、ワークステーション等であってもよい。また、ネットワーク2に接続された利用側PC20は、1台に限定されるものではなく、複数台が接続されるものとしてもよい。
【0014】
設備21は、作業者等によるメンテナンスの作業の対象となる設備機器である。なお、設備21は、設備機器に限定されるものではなく、その他の機械または装置等であってもよい。また、ネットワーク2に接続された設備21は、1台に限定されるものではなく、複数台が接続されるものとしてもよい。また、設備21は、
図1に示すようにネットワーク2に接続されているが、これに限定されるものではなく、ネットワーク2に接続されていないものとしてもよい。
【0015】
ネットワーク2は、作業支援装置10、利用側PC20および設備21を互いに通信可能とするためのLAN(Local Area Network)、専用線、またはインターネット等である。なお、ネットワーク2は、有線または無線のいずれのネットワークを含んで構成されていてもよい。
【0016】
なお、作業支援装置10と通信する利用側PC20および設備21は、共通のネットワーク2を利用するものとしているが、これに限定されるものではなく、それぞれ異なるネットワークを介して作業支援装置10と通信するものとしてもよい。
【0017】
また、
図1に示す作業支援システム1の構成では、利用側PC20がメンテナンス情報の入力機能を有するものとしたが、これに限定されるものではなく、作業支援装置10自体にメンテナンス情報の入力機能が備えられているものとしてもよい。この場合、作業支援システム1は、作業支援装置10によって実現される。
【0018】
図2は、実施形態に係る作業支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2を参照しながら、本実施形態に係る作業支援装置10のハードウェア構成について説明する。
【0019】
図2に示すように、本実施形態に係る作業支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM(Random Access Memory)503と、補助記憶装置504と、ネットワークI/F505と、メディアドライブ506と、DVD(Digital Versatile Disk)ドライブ508と、を備えている。
【0020】
CPU501は、作業支援装置10全体の動作を制御する演算装置である。ROM502は、CPU501が各機能を制御するために実行するBIOS(Basic Input/Output System)またはファームウェア等のプログラムを記憶する不揮発性記憶装置である。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。
【0021】
補助記憶装置504は、各種データおよびプログラム等を記憶する不揮発性の記憶装置である。補助記憶装置504は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等である。
【0022】
ネットワークI/F505は、外部のネットワークに接続して外部機器と通信するインターフェースである。ネットワークI/F505は、例えば、NIC(Network Interface Card)等の通信装置である。ネットワークI/F505の通信プロトコルとして、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)またはUDP(User Datagram Protocol)/IP等を適用できる。
【0023】
メディアドライブ506は、CPU501の制御に従って、フラッシュメモリ等のメディア507に対するデータの読み出しおよび書き込みを制御する装置である。メディア507は、メディアドライブ506に対して着脱自在の記憶装置である。なお、メディア507は、CPU501の制御に従ってデータの読み出しおよび書き込みを行う不揮発性メモリであれば、フラッシュメモリに限定されるものではなく、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)等であってもよい。
【0024】
DVDドライブ508は、着脱自在な記憶媒体の一例としてのDVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)509に対するデータの読み出しおよび書き込みを制御する装置である。なお、上述の着脱可能な記録媒体の他の例として、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc Recordable)、DVD−R(Digital Versatile Disk Recordable)またはブルーレイディスク等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【0025】
上述のCPU501、ROM502、RAM503、補助記憶装置504、ネットワークI/F505、メディアドライブ506およびDVDドライブ508は、アドレスバスおよびデータバス等のバス510によって互いに通信可能に接続されている。
【0026】
なお、
図2に示す作業支援装置10の構成は、一例であり、すべての構成機器を備えている必要はなく、また、他の構成機器を備えているものとしてもよい。例えば、DVDドライブ508により機能が代替できるのであれば、メディアドライブ506は備えられていなくてもよい。また、作業支援装置10に対して管理者等が直接、操作入力を行う場合であれば、マウスおよびキーボード等の操作装置、および、操作装置による入力結果を表示するための表示装置(ディスプレイ)が備えられているものとしてもよい。
【0027】
図3は、実施形態に係る利用側PCのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3を参照しながら、本実施形態の利用側PC20のハードウェア構成について説明する。
【0028】
図3に示すように、本実施形態に係る利用側PC20は、CPU601と、ROM602と、RAM603と、補助記憶装置604と、表示装置605と、ネットワークI/F606と、操作装置607と、DVDドライブ608と、を備えている。
【0029】
CPU601は、利用側PC20全体の動作を制御する演算装置である。ROM602は、CPU601が各機能を制御するために実行するBIOSまたはファームウェア等のプログラムを記憶する不揮発性記憶装置である。RAM603は、CPU601のワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。
【0030】
補助記憶装置604は、各種データおよびプログラム等を記憶する不揮発性の記憶装置である。補助記憶装置604は、例えば、HDDまたはSSD等である。
【0031】
表示装置605は、CPU601により実行されているアプリケーションの画面等を表示する装置である。表示装置605は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。
【0032】
ネットワークI/F606は、外部のネットワークに接続して外部機器と通信するインターフェースである。ネットワークI/F606は、例えば、NIC等の通信装置である。ネットワークI/F606の通信プロトコルとして、例えば、TCP/IPまたはUDP/IP等を適用できる。
【0033】
操作装置607は、ユーザによってCPU601に対して所定の処理を実行させるための操作入力を行う装置である。操作入力とは、例えば、文字および数字等の入力、各種指示の選択操作の入力、およびカーソルの移動操作の入力等である。操作装置607は、例えば、マウス、キーボード、テンキー、タッチパッド、またはタッチパネル等の入力装置である。
【0034】
DVDドライブ608は、着脱自在な記憶媒体であるDVD−ROM609に対するデータの読み出しまたは書き込み等の動作を制御する装置である。なお、上述の着脱可能な記録媒体の他の例として、例えば、CD−ROM、CD−R、DVDーRまたはブルーレイディスク等のコンピュータで読み出しまたは書き込み可能な記録媒体であってもよい。
【0035】
上述のCPU601、ROM602、RAM603、補助記憶装置604、表示装置605、ネットワークI/F606、操作装置607およびDVDドライブ608は、アドレスバスおよびデータバス等のバス610によって互いに通信可能に接続されている。なお、
図3に示す利用側PC20の構成は、一例であり、すべての構成機器を備えている必要はなく、また、他の構成機器を備えているものとしてもよい。例えば、DVDドライブ608以外に、フラッシュメモリ等の読み書きの制御を行うメディアドライブ等を備えていてもよい。
【0036】
図4は、実施形態に係る作業支援システムの機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図5は、メンテナンスログの一例を示す図である。
図6は、言語解析辞書の一例を示す図である。
図7は、形態素解析の結果の一例を示す図である。
図8は、過去・現在・未来を示す手掛かり表現の一例を示す図である。
図9は、前後関係を示す手掛かり表現の一例を示す図である。
図10は、特定した作業項目を過去・現在・未来に設定した結果の一例を示す図である。
図11は、特定した作業項目に時間的な前後関係を設定した結果の一例を示す図である。
図12は、作業状況データベースの一例を示す図である。
図4〜
図12を参照しながら、本実施形態に係る作業支援システム1の機能ブロックの構成および動作について説明する。
【0037】
図4に示すように、本実施形態に係る作業支援システム1の作業支援装置10は、通信部101と、取得部102と、書込部103と、解析部104と、特定部105と、設定部106と、カウント部107と、決定部108と、出力部109と、ログ記憶部111と、辞書記憶部112と、手掛かり表現記憶部113と、作業状況記憶部114と、を有する。
【0038】
通信部101は、ネットワーク2を介して、利用側PC20等の外部の装置とデータ通信を行う機能部である。通信部101は、
図2に示すネットワークI/F505によって実現される。
【0039】
取得部102は、ネットワーク2および通信部101を介して、利用側PC20で入力されたメンテナンス情報、および、作業内容の出力指令等を取得する機能部である。
【0040】
書込部103は、取得部102によって取得されたメンテナンス情報を、ログ記憶部111のメンテナンスログに書き込む機能部である。ここで、ログ記憶部111に記録されるメンテナンスログの例を、
図5に示す。
図5に示すメンテナンスログの例は、例えば、各メンテナンス情報を一意に識別する「ID」と、メンテナンスを行った日時である「日時」と、メンテナンスの対象となる設備等のトラブル発生個所または発生系統を示す「トラブル」と、メンテナンスの対象となる設備等を識別する情報を示す「装置」と、実際のメンテナンスの作業内容を示す「対応内容」と、が関連付けられた情報である。例えば、IDが「0002」であるメンテナンス情報は、日時が「2016/12/01 11:00:00」、トラブルが「電気系」、装置が「AAA」、対応内容が「YY確認の後でZZエラーが発生しました。VVは問題無し。」であることを示す。
【0041】
なお、メンテナンスログは、
図5に示すようなテーブル形式の情報に限定されるものではなく、上述の関連付けがなされた情報であれば、どのような形式の情報であってもよい。ただし、以下では、メンテナンスログは、
図5に示すようなテーブル形式の情報であるものとして説明し、このテーブル形式の「行」の情報(メンテナンス情報)を、「レコード」という場合があるものとする。
【0042】
解析部104は、ログ記憶部111に記憶されたメンテナンスログの各レコードを読み出し、そのレコードに含まれるテキスト(例えば、「対応内容」の情報)を、辞書記憶部112に記憶された言語解析辞書を用いて形態素解析を行う(形態素に分解する)機能部である。
【0043】
ここで、言語解析辞書の例を、
図6に示す。
図6に示す言語解析辞書の例は、例えば、テキストの形態素を示す「見出し」と、見出しの品詞を示す「品詞」と、見出しの読み方を示す「読み」と、が関連付けられた情報である。例えば、見出しが「超え」の場合、品詞としては「動詞連用形」および「接尾語」がそれぞれ関連付けられ、「動詞連用形」に対応する読みは「こえ」、「接尾語」に対応する読みは「ごえ」がそれぞれ関連付けられている。なお、言語解析辞書は、
図6に示すようなテーブル形式の情報に限定されるものではなく、上述の関連付けがなされた情報であれば、どのような形式の情報であってもよい。
【0044】
また、解析部104による形態素解析の結果の例を、
図7に示す。
図7に示す例は、
図5に示すメンテナンスログにおいて、IDが「0001」に対応する対応内容「VVが上限値超え。WW交換を完了。現在はXXをしながら様子見。YYを依頼済み。」に対する形態素解析の結果を示す。
図7に示す形態素解析の結果の例は、例えば、解析した形態素を一意に示す「インデクス」と、形態素の「見出し」と、形態素の「品詞」と、形態素の「読み」と、が関連付けられた情報である。例えば、インデクスが「6」の場合、見出しが「WW」であるが、この「WW」は言語解析辞書に登録されていないため、品詞を「未知語」としている。
【0045】
ここで、解析部104による形態素解析の対象となるテキストは、メンテナンスを行った作業者等によって利用側PC20から操作入力された自然文等で書き表されたテキストである。ここで、自然文とは、人間が普段用いる書き言葉または話し言葉を示す。ただし、形態素解析の対象となるテキストは、必ずしも自然文、または明確に文章になっている必要はなく、例えば、「KK>30」のような数式を示すテキストであっても、「KKが30より大きい」というような意味を有するテキストであれば、形態素解析の対象となり得る。また、利用側PC20において入力されるテキストは作業者に応じて、表記ゆれを含み得る。
【0046】
なお、形態素解析の対象となるテキストとして、利用側PC20から作業者等によって入力されたテキストに限定されるものではなく、例えば、設備21が、備えているセンサの値、または、演算装置の演算結果等から異常等を示す状態となったときに、その内容を示すテキストを自動で出力可能となっている仕様の場合、ネットワーク2を介して、受信されたテキスト(この場合のテキストが示す情報も、広く「メンテナンス情報」と称するものとする)であってもよい。この場合においても、設備21の仕様によって、または、異なる設備21から出力されることによって、受信されたテキストには表記ゆれを含み得る。また、本実施形態では、形態素解析の対象となるテキストは、日本語を対象としているが、これに限定されるものではなく、形態素解析が可能なテキストであれば、英語等の外国語のテキストであってもよい。
【0047】
また、解析部104による形態素解析が行われるタイミングとしては、例えば、書込部103によってメンテナンス情報が、ログ記憶部111のメンテナンスログの新たなレコードとして書き込まれたときとすればよい。
【0048】
特定部105は、解析部104により形態素解析が行われたテキストから、所定の方式でキーワード候補を抽出し、抽出したキーワード候補から作業項目として特定する機能部である。特定部105は、
図4に示すように、抽出部105aと、集計部105bと、算出部105cと、判定部105dと、を含む。
【0049】
抽出部105aは、解析部104により形態素解析が行われたテキストから、特定のパターンに合致する単語列をキーワード候補として抽出する機能部である。例えば、抽出部105aは、特定パターンとして名詞類(名詞、接頭語、接尾語および未知語の並び)が与えられた場合、形態素解析が行われたテキストから、名詞、接頭語、接尾語および未知語の並びとして、「VV」、「上限」、「上限値超え」、「YY」、「YY依頼」等の名詞句を、キーワード候補として抽出する。
【0050】
なお、抽出部105aによるキーワード候補の抽出処理は、例えば、種キーワードを用いて機械学習により行われるものとしてもよい。
【0051】
集計部105bは、抽出部105aにより抽出されたキーワード候補の統計量を集計する機能部である。例えば、集計部105bは、キーワード候補の頻度を統計量として集計したり、または、言語処理分野で一般的なC−valueを計算するためのキーワード候補を含む長い単語列の個数を集計する。
【0052】
算出部105cは、集計部105bにより集計された統計量から、そのキーワード候補に対応するC−valueを算出し、算出したC−valueを用いてキーワード候補の尤もらしさを算出する機能部である。なお、算出部105cによる各キーワード候補の尤もらしさを算出する際に、そのキーワード候補の頻度、または、そのキーワード候補に対応するC−valueが所定の閾値以下である場合、そのキーワード候補は尤もらしさの算出対象から除外するものとしてもよい。
【0053】
判定部105dは、算出部105cにより算出されたそれぞれのキーワード候補の尤もらしさが所定の閾値以上であるか否かを判定する機能部である。特定部105は、判定部105dにより尤もらしさが所定の閾値以上であると判定されたキーワード候補を、最終的な作業項目として特定する。特定部105による作業項目特定処理は、
図13において後述する。
【0054】
設定部106は、メンテナンスログのレコードの含まれるテキストにおいて、特定部105により特定された作業項目が含まれているか判定し、その作業項目が含まれている場合、テキストにおけるその作業項目の箇所の周辺で、予め与えられている手掛かり表現が含まれているか否かを検索し、その作業項目の過去・現在・未来、および、作業項目同士の時間的な前後関係を設定する機能部である。なお、上述の過去・現在・未来は、上述の作業項目が含まれているメンテナンスログのレコードの「日時」を基準としたものである。設定部106は、
図4に示すように、判定部106aと、検索部106bと、を含む。設定部106による前後関係設定処理は、
図14において後述する。
【0055】
判定部106aは、メンテナンスログにおいて、特定部105による作業項目特定処理によって特定された作業項目について、設定部106による前後関係設定処理が行われていない作業項目が存在するか否かを判定する機能部である。
【0056】
検索部106bは、注目する作業項目が含まれるレコードのテキストの中で、当該作業項目の周辺に、手掛かり表現記憶部113に記憶された過去・現在・未来を示す手掛かり表現、および、作業項目同士の時間的な前後関係を示す手掛かり表現が含まれるか否かを検索する機能部である。ここで、手掛かり表現を検索する範囲となる作業項目の周辺とは、例えば、メンテナンスログの対象となるレコードの対応内容のテキストにおける、注目する作業項目の前後の所定文字数または所定単語数の範囲とすればよい。この場合、厳密に作業項目の前後の所定文字数または所定単語数とすると、隣接する異なる文にまで検索が及ぶので、所定文字数または所定単語数までに、文の区切りを示す句点もしくは改行コード等、または、対応内容のテキストの先頭もしくは最後が検出された場合は検索を打ち切るものとすればよい。または、例えば、注目する作業項目の1つ前の作業項目までとしてもよく、この場合において、1つ前の作業項目までに、文の区切りを示す句点もしくは改行コード等、または、対応内容のテキストの先頭が検出された場合は検索を打ち切るものとすればよい。または、例えば、注目する作業項目の1つ後の作業項目までとしてもよく、この場合において、1つ後の作業項目までに、文の区切りを示す句点もしくは改行コード等、または、対応内容のテキストの最後が検出された場合は検索を打ち切るものとすればよい。
【0057】
ここで、過去・現在・未来を示す手掛かり表現の例を、
図8に示す。
図8に示す過去・現在・未来を示す手掛かり表現の例は、過去・現在・未来をそれぞれ示す、「時制」の表現、「時間」の表現、「動作」の表現、および「状況」の表現を示している。例えば、過去を示す「時制」の表現は、「〜した」および「〜してある」等であり、「時間」の表現は、「昨日」、「以前」および「さっき」等であり、「動作」の表現は、「確認」、「調査」、「OK」および「NG」等であり、「状況」の表現は、「完了」、「済み」および「後」等であることが示されている。
【0058】
また、作業項目同士の時間的な前後関係を示す手掛かり表現の例を、
図9に示す。
図9に示す作業項目同士の時間的な前後関係を示す手掛かり表現の例は、「時間的に前」を示す表現、「時間的に同時」を示す表現、および、「時間的に後」を示す表現を示している。例えば、「時間的に同時」を示す表現として、「〜と同時に」、「〜と一緒に」および「〜しながら」が例示として示されている。
【0059】
また、検索部106bにより過去・現在・未来を示す手掛かり表現の有無が検索され、設定部106によって、特定された作業項目を過去・現在・未来に設定した結果の例を、
図10に示す。
図10に示す例では、
図5に示したメンテナンスログの対応内容のテキストから特定部105によって特定された作業項目に対して、過去・現在・未来をそれぞれ設定した結果を示す。例えば、メンテナンスログにおいてIDが「0001」に対応する対応内容のテキストから特定部105によって特定された作業項目のうち、「VV上限値超え」および「WW交換」は過去に設定され、「XX様子見」は現在に設定され、「YY依頼」は未来に設定されていることが示されている。
【0060】
また、検索部106bにより作業項目同士の時間的な前後関係を示す手掛かり表現の有無が検索され、設定部106によって過去・現在・未来が設定された作業項目に対して作業項目間の時間的な前後関係が設定された結果の例を、
図11に示す。
図11に示す例では、
図10に示したような設定部106によって過去・現在・未来がそれぞれ設定された作業項目に対して、作業項目同士の時間的な前後関係を設定した結果を示す。例えば、メンテナンスログにおいてIDが「0002」に対応する対応内容のテキストから設定部106によって過去・現在・未来が設定された作業項目において、同じ過去に設定された「YY確認」および「ZZエラー」の時間的な前後関係として、「YY確認」の後に「ZZエラー」が発生したことが示されている。これは、メンテナンスログのIDが「0002」に対応する対応内容のテキストにおいて、検索部106bによって、作業項目「YY確認」と「ZZエラー」との間に、「〜の後で」という「時間的に後」を示す手掛かり表現が検索されたことに基づく。
【0061】
なお、検索部106bによって、過去・現在・未来を示す手掛かり表現が検索されなかった場合、例えば、現在として割り当てるものとしてもよく、不明として無視するものとしてもよい。また、検索部106bによって、時間的な前後関係を示す手掛かり表現が検索されなかった場合、例えば、「時間的に同時」として割り当てるものとしてもよく、時間的な前後関係は不明として扱うものとしてもよい。
【0062】
また、1つの作業項目に対して、互いに矛盾する手掛かり表現が2つ以上検索された場合は、例えば、手掛かり表現に予め優先度を与えておいたり、または、検索された手掛かり表現の数が多い方を選択することによって、1つの手掛かり表現に決めるものとすればよい。または、1つの手掛かり表現に決めることはせずに、矛盾した状態(過去・現在・未来のうち2以上に当てはまったり、2以上の前後関係が規定される等)のまま、後述するカウント部107によって作業項目間の関係がカウントされるものとしてもよい。
【0063】
カウント部107は、設定部106によって設定された作業項目間の時間的な前後関係(「時間的に前」、「時間的に同時」および「時間的に後」)を、当該作業項目間ごとにカウントする機能部である。すなわち、設定部106によって、特定部105により特定された作業項目に対して、過去・現在・未来、および、時間的な前後関係が設定された場合、カウント部107は、その都度、設定された2つの作業項目間の時間的な前後関係をカウントする。
【0064】
ここで、設定された作業項目間の時間的な前後関係のカウント数(頻度)を記憶する作業状況データベースの例を、
図12に示す。この作業状況データベースは、
図4に示す作業状況記憶部114に格納されている。
図12の作業状況データベースが示すように、設定部106によって設定された2つの作業項目間で時間的な前後関係が設定される度に、当該2つの作業項目の、設定された時間的な前後関係の数をカウントしていく。なお、
図12においては、作業項目を「WW」〜「ZZ」のように簡略に示している。例えば、
図12に示す例では、作業項目「YY」と作業項目「ZZ」との前後関係では、「時間的に前」(「<」)の前後関係が100だけカウントされており、その他の前後関係(「時間的に同時」(「=」)および「時間的に後」(「>」))のカウントはそれぞれ0である。この場合、作業項目「YY」と作業項目「ZZ」との前後関係は、「YY」<「ZZ」(YYの後にZZ)であることが一意に定まることになる。一方、作業項目「XX」と作業項目「YY」との前後関係では、「時間的に前」の前後関係が30だけカウントされ、「時間的に同時」の前後関係が20だけカウントされている。この場合、作業項目「XX」と作業項目「YY」との前後関係は、一意に定まることができない。そこで、後述する決定部108によって、最終的な前後関係を決定する。
【0065】
決定部108は、取得部102によって利用側PC20から作業内容の出力指令が取得された場合、カウント部107による各作業項目間の時間的な前後関係のカウント数(頻度)によって、作業項目全体の順序関係を最終的に決定する機能部である。具体的には、決定部108は、作業状況記憶部114の作業状況データベースを参照して、各作業項目間の前後関係ごとのカウント数(頻度)に基づいて、作業項目全体の順序関係を決定する。決定部108は、
図4に示すように、第1整理部108aと、判定部108bと、第2整理部108cと、算出部108dと、分解部108eと、を含む。決定部108による順序関係決定処理は、
図15において後述する。
【0066】
第1整理部108aは、作業状況記憶部114の作業状況データベースを参照し、作業項目間の時間的な前後関係のカウント数(頻度)から、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意であるか否かを整理する記憶部である。
【0067】
判定部108bは、第1整理部108aおよび第2整理部108cによる整理の結果、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意であるか否かを判定する機能部である。
【0068】
第2整理部108cは、全作業項目において、ある作業項目間に2つ以上の前後関係がある場合、所定の方式によって、1つの前後関係となるように整理する機能部である。所定の方式としては、例えば、最も頻度が多かった前後関係を選択する方法、頻度が所定の閾値よりも少ない前後関係を消去する方法、または、2つ以上の前後関係があるということはどのような順序で実施しても問題ないことを示していると考えられるので、頻度のばらつき(分散)が所定の閾値より大きい前後関係を消去、もしくは、当該2つの作業項目を「時間的に同時」であるものとみなす方法等が挙げられる。ただし、所定の方式として、例えば、頻度が所定の閾値(ここでは、「10」とする)よりも少ない前後関係を消去する方法が採用された場合、
図12に示す作業項目「XX」と作業項目「YY」との前後関係について、「時間的に前」のカウント数「30」、および「時間的に同時」のカウント数「20」は、いずれも所定の閾値よりも多いので消去されず、1つ前後関係に整理されない場合もあり得る。
【0069】
算出部108dは、判定部108bによって、第2整理部108cによる整理の結果、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意とならないと判定された場合、すべての作業項目の順列を生成し、各順列に対して作業項目間の前後関係に関する頻度の合計をスコアとして算出する機能部である。そして、算出部108dは、算出したスコアが最適となる作業項目の順列を、作業項目全体の最終的な順序関係に決定する。例えば、算出部108dは、各順列における作業項目間の前後関係と合致する作業状況データベース上の前後関係の頻度の合計を当該順列に対応するスコアとして算出し、算出したスコアが最大である順列を、作業項目全体の最終的な順序関係に決定するものとしてもよい。または、算出部108dは、各順列における作業項目間の前後関係と合致しない作業状況データベース上の前後関係の頻度の合計を当該順列に対応するスコアとして算出し、算出したスコアが最小である順列を、作業項目全体の最終的な順序関係に決定するものとしてもよい。
【0070】
なお、スコアを用いたいずれの方法でも、最適な作業項目全体の順序関係を求めることは可能であるが、作業項目数の増大等に伴う組み合わせ爆発によって算出部108dによる算出処理が現実的な時間で終了しない場合もあり得るので、第1整理部108aおよび判定部108bによる前後関係の整理の結果、明らかに前後関係が明確な作業項目を除く等により、できるだけ作業項目を消去してからスコアを算出することが望ましい。
【0071】
分解部108eは、第1整理部108aまたは第2整理部108cの整理の結果、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意となった場合、各作業項目に対して強連結成分分解を行い、作業項目全体の最終的な順序関係を決定する機能部である。具体的には、分解部108eは、それぞれの作業項目をノードとし、「時間的に同時」(「=」)の前後関係しかない2つの作業項目(ノード)を1つにまとめ、「時間的に前」(「<」)または「時間的に後」(「>」)の前後関係しかない2つの作業項目(ノード)を、その順序を示すように有向枝で接続する。そして、分解部108eは、有向枝で接続されたグラフである有向グラフを得、この有向グラフに対する強連結成分分解によって強連結成分に分解する。この結果、分解された強連結成分に含まれるノードである作業項目が、同時に行ってもよい作業項目であることを示し、強連結成分同士を接続する有向枝の方向が、各強連結成分に含まれるノードである作業項目群の作業順序を示すことになる。
【0072】
なお、第1整理部108aまたは第2整理部108cの整理の結果、例えば、3つの作業項目「LL」、「MM」および「NN」について、「LL」<「MM」(「LL」をして「MM」をする)、「MM」<「NN」(「MM」をして「NN」をする)、および、「NN」<「LL」(「NN」をして「LL」をする)の前後関係に整理された場合、当該3つの作業項目が繰り返されることになる。このとき、作業項目「LL」、「MM」および「NN」の有向グラフは閉ループを形成し、強連結成分分解では当該3つの作業項目が同一の強連結成分に分解されることになる。この場合は、分解部108eは、例えば、同一の強連結成分に含まれる作業項目であるとして、同時に行ってもよい作業項目として取り扱うものとしてもよく、どのような順番で行ってもよい作業項目として取り扱うものとしてもよい。
【0073】
出力部109は、決定部108により決定された作業項目全体の順序関係を出力する機能部である。例えば、出力部109は、作業項目全体の順序関係を、チェックシート、シーケンス図、またはフローチャート等に表して出力する。そして、出力部109は、上述のチェックシート、シーケンス図、またはフローチャート等のような作業項目全体の順序関係を示す情報を、通信部101およびネットワーク2を介して、利用側PC20へ送信する。
【0074】
取得部102、書込部103、解析部104、特定部105、設定部106、カウント部107、決定部108、および出力部109は、ソフトウェアであるプログラムが
図2に示すCPU501により実行されることによって実現される。なお、取得部102、書込部103、解析部104、特定部105、設定部106、カウント部107、決定部108、および出力部109の一部または全部は、プログラムの実行ではなく、FPGA(Field−Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア回路によって実現されるものとしてもよい。
【0075】
ログ記憶部111は、メンテナンスログを記憶する機能部である。辞書記憶部112は、形態素解析を行うための言語解析辞書を記憶する機能部である。手掛かり表現記憶部113は、過去・現在・未来を示す手掛かり表現情報、および、時間的な前後関係を示す手掛かり表現情報を記憶する機能部である。作業状況記憶部114は、作業状況データベースを記憶する機能部である。ログ記憶部111、辞書記憶部112、手掛かり表現記憶部113および作業状況記憶部114は、それぞれ
図2に示す補助記憶装置504によって実現される。なお、ログ記憶部111、辞書記憶部112、手掛かり表現記憶部113および作業状況記憶部114は、それぞれ作業支援装置10が内蔵する補助記憶装置504によって実現されるものとしたが、作業支援装置10の外部の記憶装置によって実現されるものとしてもよい。また、ログ記憶部111、辞書記憶部112、手掛かり表現記憶部113および作業状況記憶部114は、同一の記憶装置である補助記憶装置504によって実現されることに限定されるものではなく、一部または全部がそれぞれ別の記憶装置によって実現されるものとしてもよい。
【0076】
なお、
図4に示す作業支援装置10の通信部101、取得部102、書込部103、解析部104、特定部105.設定部106、カウント部107、決定部108、出力部109、ログ記憶部111、辞書記憶部112および手掛かり表現記憶部113は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、
図4に示す作業支援装置10で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、
図4に示す作業支援装置10で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0077】
図4に示すように、本実施形態に係る作業支援システム1の利用側PC20は、通信部201と、入力部202と、処理指令部203と、表示制御部204と、出力部205と、を有する。
【0078】
通信部201は、ネットワーク2を介して、作業支援装置10等の外部の装置とデータ通信を行う機能部である。通信部201は、
図3に示すネットワークI/F606によって実現される。
【0079】
入力部202は、ユーザ(作業者等)から操作入力を受け付ける機能部である。入力部202は、
図3に示す操作装置607によって実現される。
【0080】
処理指令部203は、ユーザ(作業者等)からの入力部202を介した操作入力に応じて、作業内容の出力指令を、通信部201およびネットワーク2を介して、作業支援装置10に送信する機能部である。また、処理指令部203は、作業支援装置10から、ネットワーク2および通信部201を介して、作業内容の情報(具体的には、作業項目全体の順序関係を示す情報)を受信する。処理指令部203は、ソフトウェアであるプログラムが
図3に示すCPU601により実行されることによって実現される。
【0081】
表示制御部204は、出力部205の出力動作(表示動作)を制御する機能部である。表示制御部204は、ソフトウェアであるプログラムが
図3に示すCPU601により実行されることによって実現される。
【0082】
出力部205は、表示制御部204の制御に基づいて、処理指令部203により受信された作業内容の情報を出力(表示)する機能部である。出力部205は、例えば、
図3に示す表示装置605によって実現される。なお、出力部205は、表示装置605によって実現されることに限定されるものではなく、印刷装置等の他の出力形態により作業内容の情報を出力するものとしてもよい。この場合、表示制御部204は、プリンタドライバがCPU601により実行されることによって実現されるものとすればよい。
【0083】
なお、処理指令部203および表示制御部204の一部または全部は、プログラムの実行ではなく、FPGAまたはASIC等のハードウェア回路によって実現されるものとしてもよい。
【0084】
また、
図4に示す利用側PC20通信部201、入力部202、処理指令部203、表示制御部204および出力部205は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、
図4に示す利用側PC20で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、
図4に示す利用側PC20で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0085】
図13は、実施形態に係る作業支援装置の作業項目特定処理の一例を示すフローチャートである。
図13を参照しながら、本実施形態に係る作業支援装置10の作業項目特定処理の流れを説明する。
【0086】
<ステップS11>
特定部105の抽出部105aは、解析部104により形態素解析が行われたテキストから、特定のパターンに合致する単語列をキーワード候補Kとして抽出する。そして、ステップS12へ移行する。
【0087】
<ステップS12>
特定部105の集計部105bは、抽出部105aにより抽出されたキーワード候補Kの統計量を集計する。例えば、集計部105bは、キーワード候補Kの頻度を統計量として集計したり、または、言語処理分野で一般的なC−valueを計算するためのキーワード候補Kを含む長い単語列の個数を集計する。そして、ステップS13へ移行する。
【0088】
<ステップS13>
特定部105の算出部105cは、集計部105bにより集計された統計量から、そのキーワード候補Kに対応するC−valueを算出し、算出したC−valueを用いてキーワード候補Kの尤もらしさVを算出する。そして、ステップS14へ移行する。
【0089】
<ステップS14>
特定部105の判定部105dは、算出部105cにより算出されたそれぞれのキーワード候補Kの尤もらしさVが所定の閾値以上であるか否かを判定する。特定部105は、判定部105dにより尤もらしさVが所定の閾値以上であると判定されたキーワード候補Kを、最終的な作業項目として特定する。以上で、作業項目特定処理が終了する。
【0090】
以上のステップS11〜S14によって、作業支援装置10の作業項目特定処理が行われる。
【0091】
図14は、実施形態に係る作業支援装置の前後関係設定処理の一例を示すフローチャートである。
図14を参照しながら、本実施形態に係る作業支援装置10の前後関係設定処理の流れを説明する。
【0092】
<ステップS21>
設定部106の判定部106aは、ログ記憶部111に記憶されたメンテナンスログにおいて、特定部105による作業項目特定処理によって特定された作業項目について、設定部106による前後関係設定処理が行われていないレコード(行)が存在するか否かを判定する。前後関係設定処理が行われていないレコードが存在する場合(ステップS21:Yes)、ステップS22へ移行し、存在しない場合(ステップS21:No)、前後関係設定処理を終了する。
【0093】
<ステップS22>
設定部106は、前後関係設定処理が行われていないレコード(行)(注目レコード)に出現する作業項目群(特定部105によって特定された作業項目の群)を特定する。そして、ステップS23へ移行する。
【0094】
<ステップS23>
判定部106aは、注目レコード(行)において、前後関係設定処理のうち過去・現在・未来の設定処理が行われていない作業項目(未処理の作業項目)が存在するか否かを判定する。当該設定処理が行われていない作業項目(未処理の作業項目)が存在する場合(ステップS23:Yes)、ステップS24へ移行し、存在しない場合(ステップS23:No)、ステップS26へ移行する。
【0095】
<ステップS24>
設定部106の検索部106bは、注目レコードのテキストの中で、未処理の作業項目の周辺に、手掛かり表現記憶部113に記憶された過去・現在・未来を示す手掛かり表現が含まれるか否かを検索する。ここで、手掛かり表現を検索する範囲である作業項目の周辺については、上述した通りである。そして、ステップS25へ移行する。
【0096】
<ステップS25>
設定部106は、検索部106bにより検索された過去・現在・未来を示す手掛かり表現に基づいて、未処理の作業項目に対して過去・現在・未来を設定する。そして、ステップS23へ戻る。
【0097】
<ステップS26>
検索部106bは、注目レコードのテキストの中で、過去・現在・未来の設定処理が行われた作業項目(処理済みの作業項目)の周辺に、手掛かり表現記憶部113に記憶された作業項目同士の時間的な前後関係を示す手掛かり表現が含まれるか否かを検索する。ここで、手掛かり表現を検索する範囲である作業項目の周辺については、上述した通りである。そして、ステップS27へ移行する。
【0098】
<ステップS27>
設定部106は、検索部106bにより検索された作業項目同士の時間的な前後関係を示す手掛かり表現に基づいて、処理済の作業項目に対して時間的な前後関係を設定する。そして、ステップS21へ戻る。
【0099】
以上のステップS21〜S27によって、作業支援装置10の前後関係設定処理が行われる。
【0100】
図15は、実施形態に係る作業支援装置の順序関係決定処理の一例を示すフローチャートである。
図16は、決定した作業項目の順序関係の出力例を示す図である。
図15および
図16を参照しながら、本実施形態に係る作業支援装置10の順序関係決定処理の流れを説明する。なお、
図15に示す順序関係決定処理の前に、メンテナンスログに対して、カウント部107によって作業項目間の前後関係のカウント動作が、当該処理を行うに足る程度に既に実行されているものとする。
【0101】
<ステップS31>
決定部108の第1整理部108aは、作業状況記憶部114の作業状況データベースを参照し、作業項目間の時間的な前後関係のカウント数(頻度)から、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意であるか否かを整理する。そして、ステップS32へ移行する。
【0102】
<ステップS32>
決定部108の判定部108bは、第1整理部108aによる整理の結果、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意であるか否かを判定する。前後関係が一意でない場合(ステップS32:No)、ステップS33へ移行し、一意である場合(ステップS32:Yes)、ステップS36へ移行する。
【0103】
<ステップS33>
決定部108の第2整理部108cは、全作業項目において、ある作業項目間に2つ以上の前後関係がある場合、所定の方式によって、1つの前後関係となるように整理する。ただし、上述のように、所定の方式によって1つの前後関係となるような整理を試みても、1つの前後関係に整理されない場合もあり得る。そして、ステップS34へ移行する。
【0104】
<ステップS34>
判定部108bは、第2整理部108cによる整理の結果、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意であるか否かを判定する。前後関係が一意でない場合(ステップS34:No)、ステップS35へ移行し、一意である場合(ステップS34:Yes)、ステップS36へ移行する。
【0105】
<ステップS35>
決定部108の算出部108dは、判定部108bによって、第2整理部108cによる整理の結果、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意とならないと判定された場合、すべての作業項目の順列を生成し、各順列に対して作業項目間の前後関係に関する頻度の合計をスコアとして算出する。そして、算出部108dは、算出したスコアが最適となる作業項目の順列を、作業項目全体の最終的な順序関係に決定する。そして、出力部109は、決定部108(算出部108d)により決定された作業項目全体の順序関係を、チェックシート、シーケンス図、またはフローチャート等に表して出力する。以上で、順序関係決定処理が終了する。
【0106】
<ステップS36>
決定部108の分解部108eは、第1整理部108aまたは第2整理部108cの整理の結果、全作業項目におけるすべての作業項目間において前後関係が一意となった場合、各作業項目に対して強連結成分分解を行い、作業項目全体の最終的な順序関係を決定する。強連結成分分解を行って、作業項目全体の最終的な順序関係を決定する動作の詳細は、上述した通りである。そして、出力部109は、決定部108(分解部108e)により決定された作業項目全体の順序関係を、チェックシート、シーケンス図、またはフローチャート等に表して出力する。以上で、順序関係決定処理が終了する。
【0107】
ここで、
図16に、決定部108により決定された作業項目全体の順序関係を、出力部109によりフローチャートとして出力された例を示す。このうち、
図16(a)は、
図5に示すメンテナンスログにおけるIDが「0001」の対応内容に対して、設定部106によって過去・現在・未来の設定、および、作業項目間の時間的な前後関係の設定がなされた作業項目だけに着目し、決定部108により決定された作業項目全体の順序関係が、出力部109によりフローチャートとして出力された例を示す。また、
図16(b)は、
図5に示すメンテナンスログにおけるIDが「0002」の対応内容に対して、設定部106によって過去・現在・未来の設定、および、作業項目間の時間的な前後関係の設定がなされた作業項目だけに着目し、決定部108により決定された作業項目全体の順序関係が、出力部109によりフローチャートとして出力された例を示す。
【0108】
なお、上述のステップS35におけるスコアを用いた作業項目全体の順序関係の決定の処理は、カウント部107によって作業状況データベースへの前後関係のカウントがなされていれば、例えば、ステップS31〜S34の処理を行わずに直接実行することも可能である。
【0109】
以上のような作業支援システム1の作業支援装置10による各処理によって、作業者等またはメンテナンスの対象機等によって表記ゆれを含み得るテキストが書き込まれたメンテナンスログから作業項目を特定し、特定された全作業項目のうち、一度にまとめて実施できる作業項目、および、どちらかを先に実施しなければならない作業項目を切り分け、全体として最適な作業項目の順序関係を決定することができる。
【0110】
また、決定した最適な作業項目の順序関係をチェックシート、シーケンス図、またはフローチャート等に表して出力(画像表示出力または印刷出力等)することによって、作業者はメンテナンスの対象機(例えば、
図1に示す設備21)に対するメンテナンスの作業に際し、予め、作業項目の順序を確認しておくことができ、かつ、出力された情報が示す作業項目の順序に従って作業を行うことができる。
【0111】
また、保守または点検等では常に解決に至るとは限らないので、発生した作業の頻度および分野といった履歴情報のみで、作業項目間の順序等を変化させるのは、必ずしも最適ではない。しかし、本実施形態では、特定した全作業項目のうち、作業項目間ごとに時間的な前後関係をカウントし、そのカウント数に基づいて、作業項目全体の順序関係を最終的に決定しているので、得られた作業項目の順序関係の信頼性は高い。
【0112】
なお、上述した
図7、
図10、
図11および
図16等では、
図5に示すメンテナンスログのIDが「0001」および「0002」それぞれの対応内容のテキストに対して、形態素解析、作業項目特定処理、前後関係設定処理および順序関係決定処理が行われる例を説明した。しかし、
図5のメンテナンスログが示すように、対応内容は、トラブルごと、かつ、装置ごとに書き込まれるものであり、通常の対応内容は、トラブル間、および装置間で関連性がない場合が多い。したがって、上述の形態素解析、作業項目特定処理、前後関係設定処理、作業状況データベースへのカウント処理、および順序関係決定処理は、トラブルごと、かつ、装置ごとに行われることが望ましい。これによって、トラブルごと、かつ、装置ごとに適した作業項目の順序を出力することが可能となる。
【0113】
また、本実施形態では、メンテナンスログにメンテナンス情報を書き込んだ日時を基準にした過去・現在・未来の設定しかしていないものとしているが、メンテナンスログの各レコードの前後関係を比較することによって、それぞれの作業項目が、単なる過去ではなく何時間前に終わったのか、そして、単なる未来ではなく何時間後に行ったのかを設定することも可能である。この場合、作業状況データベースには、作業項目同士の時間的な前後関係のカウントだけでなく、作業項目の時間間隔も記憶しておき、後段の順序関係設定処理に反映させるものとしてもよい。例えば、作業項目間の前後関係に関するスコアに加えて、作業項目間の待ち時間もスコアとして考慮することもできる。これによって、作業項目全体の順序関係が決定されるだけではなく、作業項目間の待ち時間についても決定することができ、より詳細な作業手順を示すことができる。
【0114】
また、上述の実施形態の作業支援装置10および利用側PC20で実行されるプログラムは、例えば、ROM等に予め組み込まれて提供されるものとしてもよい。
【0115】
また、上述の実施形態の作業支援装置10および利用側PC20で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるように構成してもよい。
【0116】
また、上述の実施形態の作業支援装置10および利用側PC20で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態の作業支援装置10および利用側PC20で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0117】
また、上述の実施形態の作業支援装置10および利用側PC20で実行されるプログラムは、コンピュータを上述した各機能部として機能させ得る。このコンピュータは、CPUがコンピュータ読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0118】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、および変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。