特許第6615892号(P6615892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6615892物理システムの経時変化プロファイリングエンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615892
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】物理システムの経時変化プロファイリングエンジン
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/34 20060101AFI20191125BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20191125BHJP
【FI】
   G06F11/34 195
   G06F11/34 152
   G06Q10/04
【請求項の数】20
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-530661(P2017-530661)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公表番号】特表2017-539027(P2017-539027A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】US2015064373
(87)【国際公開番号】WO2016094339
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年10月3日
(31)【優先権主張番号】62/088,840
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/961,519
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 タン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン、 グオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ハイフォン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、 カイ
【審査官】 三坂 敏夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−281342(JP,A)
【文献】 特許第5530020(JP,B2)
【文献】 特開2013−025660(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0078160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
11/28−11/34
11/36
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理システムのコンポーネントを管理する方法であって、
最適化問題の目的関数を使用して、時系列から経時変化傾向および揺らぎ項を抽出することによって、未加工時系列を分解することであって、前記目的関数は、再構築エラーと時間の経過にわたる前記揺らぎ項の平坦性との和を最小化し、
前記最適化問題を、単調制約および非負制約を含む2次計画法(QP)公式化に変換することであって、前記制約は、計算コストを低減するために併合され、
前記物理システムの1つまたは複数のコンポーネントの経時変化の重大性を決定するために、前記抽出された経時変化傾向の経時変化スコアおよび前記未加工時系列が前記抽出された前記経時変化傾向及び前記揺らぎ項の成分から再構築された時系列にどの程度近いかを測定した信頼性スコアを生成することと、
前記コンポーネントの将来の障害を予測するために、前記経時変化スコアおよび前記信頼性スコアを融合させて、前記抽出された経時変化傾向の融合ランク付けを提供することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記制約は、遷移行列を使用して併合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経時変化スコアは、前記経時変化傾向の勾配である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記信頼性スコアは、前記未加工時系列の勾配に対する、前記抽出された経時変化傾向の勾配の近似性に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記経時変化スコアおよび前記信頼性スコアは、特定のアプリケーション要件に従ってシグモイド関数を使用して定量化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記経時変化傾向は、特定の期間にわたる前記時系列の平均値の変化を表す単調列であり、前記揺らぎ項は、前記未加工時系列を特定のセグメントに区分し、前記区分したセグメントの各対の平均値の差を最小化したものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記2次計画法(QP)公式化は、非負QP問題に変換され、反復更新を使用して解決される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コンポーネント劣化の開始ポイントの正確な位置は、前記ランク付けに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
物理システムのコンポーネントを管理する経時変化プロファイリングエンジンであって、
最適化問題の目的関数を使用して、時系列から経時変化傾向および揺らぎ項を抽出することによって、未加工時系列を分解する時系列トランスフォーマであって、前記目的関数は、再構築エラーと時間の経過にわたる前記揺らぎ項の平坦性との和を最小化する、時系列トランスフォーマと、
前記最適化問題を、単調制約および非負制約を含む2次計画法(QP)公式化に変換するオプティマイザであって、前記制約は、計算コストを低減するために併合される、オプティマイザと、
前記物理システムの1つまたは複数のコンポーネントの経時変化の重大性を決定するために、前記抽出された経時変化傾向の経時変化スコアおよび前記未加工時系列が前記抽出された前記経時変化傾向及び前記揺らぎ項の成分から再構築された時系列にどの程度近いかを測定した信頼性スコアを生成する1つまたは複数のスコアジェネレータと、
前記コンポーネントの将来の障害を予測するために、前記経時変化スコアおよび前記信頼性スコアを融合させて、前記抽出された経時変化傾向の融合ランキングを提供するように構成されたランカーと、
を備える、経時変化プロファイリングエンジン。
【請求項10】
前記制約は、遷移行列を使用して併合される、請求項9に記載の経時変化プロファイリングエンジン。
【請求項11】
前記経時変化スコアは、前記経時変化傾向の勾配である、請求項9に記載の経時変化プロファイリングエンジン。
【請求項12】
前記信頼性スコアは、前記未加工時系列の勾配に対する、前記抽出された経時変化傾向の勾配の近似性に基づく、請求項9に記載の経時変化プロファイリングエンジン。
【請求項13】
前記経時変化スコアおよび前記信頼性スコアは、特定のアプリケーション要件に従ってシグモイド関数を使用して定量化される、請求項9に記載の経時変化プロファイリングエンジン。
【請求項14】
前記経時変化傾向は、特定の期間にわたる前記時系列の平均値の変化を表す単調列であり、前記揺らぎ項は、前記未加工時系列を特定のセグメントに区分し、前記区分したセグメントの各対の平均値の差を最小化したものである、請求項9に記載の経時変化プロファイリングエンジン。
【請求項15】
前記2次計画法(QP)公式化は、非負QP問題に変換され、反復更新を使用して解決される、請求項9に記載の経時変化プロファイリングエンジン。
【請求項16】
コンポーネント劣化の開始ポイントの正確な位置は、前記ランク付けに基づいて決定される、請求項9に記載の経時変化プロファイリングエンジン。
【請求項17】
コンピュータで読み取り可能なプログラムを含む、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータで読み取り可能なプログラムは、コンピュータ上で実行されるとき、前記コンピュータに、
最適化問題の目的関数を使用して、時系列から経時変化傾向および揺らぎ項を抽出することによって、未加工時系列を分解するステップであって、前記目的関数は、再構築エラーと時間の経過にわたる前記揺らぎ項の平坦性との和を最小化する、ステップと、
前記最適化問題を、単調制約および非負制約を含む2次計画法(QP)公式化に変換するステップであって、前記制約は、計算コストを低減するために併合される、ステップと、
物理システムの1つまたは複数のコンポーネントの経時変化の重大性を決定するために、前記抽出された経時変化傾向の経時変化スコアおよび前記未加工時系列が前記抽出された前記経時変化傾向及び前記揺らぎ項の成分から再構築された時系列にどの程度近いかを測定した信頼性スコアを生成するステップと、
前記コンポーネントの将来の障害を予測するために、前記経時変化スコアおよび前記信頼性スコアを融合させて、前記抽出された経時変化傾向の融合ランキングを提供するステップと、
を実行させる、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【請求項18】
前記制約は、遷移行列を使用して併合される、請求項17に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記経時変化スコアは、前記経時変化傾向の勾配である、請求項17に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記信頼性スコアは、前記未加工時系列の勾配に対する、前記抽出された経時変化傾向の勾配の近似性に基づく、請求項17に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2014年12月8日に出願した仮出願第62/088,840号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、物理システムの管理に関し、さらに詳細には、時系列に経時変化するプロファイリングエンジンを使用する物理システムのコンポーネントの管理に関する。
【背景技術】
【0003】
物理システムの長期にわたる運用は、それら物理システムのコンポーネントの劣化をもたらし、たとえば、全体的なシステムパフォーマンスの低下、コンポーネントの誤動作、または、システム全体の障害さえも引き起こすことがある。劣化(たとえば、経時変化)は、システムの感知信号における平均値、振幅、および/または周波数の状態変化につながる場合があり、どのシステムでも避けられない特性である。しかし、経時変化の傾向の適切なタイミングでの検出およびプロファイリングは、劣化経時変化が引き起こすかもしれない結果および問題を回避する手助けとなることもあり、システムの1つのコンポーネントが故障した場合に、全システムの停止につながることもあるので、最新の機械装置を使用する場合には極めて重要な作業である。さらに、(たとえば、コンポーネントの劣化/故障に起因する)生産工程の短い中断であっても、たとえば膨大な金銭的損失および深刻な事業関連の問題を結果としてもたらすことがある。
【0004】
経時変化傾向は、物理システムにおけるコンポーネントの故障を回避するために重要であるので、時系列に対する従来の傾向分析および抽出の問題は、近年大きな注目を集めている。しかし、従来のシステムおよび方法は、時系列から一般的な傾向の振る舞いを抽出することに重点を置くことができるのみで、それらのシステムおよび方法はいずれも、時系列特性(たとえば、季節性、ノイズのレベルなど)の予備的知識を有することなく、経時変化の検出およびプロファイリングに具体的に対処することはできない。
【0005】
経時変化傾向の抽出は、物理システム(たとえば、機械装置)を監視するセンサーから得られる時系列における経時変化現象および/または劣化の振る舞いを検出して分析するために採用されてもよい。しかし、システムが一般に、何らかの固有パターンに従って操作されているので、そのような問題は複雑であり、多大な計算を要する。さらに、経時変化の振る舞いは、たとえば高ノイズおよび操作信号により、概して不可視であり(たとえば、人間には検知できない)、したがって従来のシステムおよび方法を使用して検出されるには一般に小さすぎる。
【発明の概要】
【0006】
物理システムのコンポーネントの管理方法であって、最適化問題の目的関数を使用して、時系列から経時変化傾向および揺らぎ項を抽出することによって、未加工時系列を分解することを含み、この目的関数は、再構築エラーと時間の経過にわたる揺らぎ項の平坦性との和を最小化する、物理システムのコンポーネントを管理する方法。最適化問題は、単調制約および非負制約を含む2次計画法(QP:Quadratic Programming)公式化に変換され、これらの制約は、計算コストを低減するために併合されている。経時変化スコアおよび未加工時系列が抽出された経時変化傾向及び揺らぎ項の成分から再構築された時系列にどの程度近いかを測定した信頼性スコアは、物理システムの1つまたは複数のコンポーネントの経時変化の重大性を決定するために、抽出された経時変化傾向について生成され、経時変化スコアおよび信頼性スコアは、コンポーネントの将来の障害を予測するために、融合されて、抽出された経時変化傾向の融合ランク付けを提供する。
【0007】
物理システムのコンポーネントの管理のための経時変化プロファイリングエンジンであって、最適化問題の目的関数を使用して、時系列から経時変化傾向および揺らぎ項を抽出することによって、未加工時系列を分解する時系列トランスフォーマを含み、この目的関数は、再構築エラーと時間の経過にわたる揺らぎ項の平坦性との和を最小化する、時系列トランスフォーマを含む、物理システムのコンポーネントを管理する経時変化プロファイルエンジン。オプティマイザは、最適化問題を、単調制約および非負制約を含む2次計画法(QP)公式化に変換し、これらの制約は、計算コストを低減するために併合される。1つまたは複数のスコアジェネレータは、物理システムの1つまたは複数のコンポーネントの経時変化の重大性を決定するために、抽出された経時変化傾向の経時変化スコアおよび未加工時系列が抽出された経時変化傾向及び揺らぎ項の成分から再構築された時系列にどの程度近いかを測定した信頼性スコアを生成し、ランカーは、コンポーネントの将来の障害を予測するために、経時変化スコアと信頼性スコアを融合させて、抽出された経時変化傾向の融合ランキングを提供するように構成される。
【0008】
コンピュータに読み取り可能なプログラムを含む、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体であって、このコンピュータに読み取りプログラムは、コンピュータ上で実行されるとき、このコンピュータに、最適化問題の目的関数を使用して、時系列から経時変化傾向および揺らぎ項を抽出することによって、未加工時系列を分解するステップであって、この目的関数は、再構築エラーと時間の経過にわたる揺らぎ項の平坦性との和を最小化するステップを実行させる。最適化問題は、単調制約および非負制約を含む2次計画法(QP)公式化に変換され、これらの制約は、計算コストを低減するために併合される。経時変化スコアおよび未加工時系列が抽出された経時変化傾向及び揺らぎ項の成分から再構築された時系列にどの程度近いかを測定した信頼性スコアは、物理システムの1つまたは複数のコンポーネントの経時変化の重大性を決定するために、抽出された経時変化傾向について生成され、経時変化スコアおよび信頼性スコアは、コンポーネントの将来の障害を予測するために、融合されて、抽出された経時変化傾向の融合ランク付けを提供する。
【0009】
これらおよびその他の特徴ならびに利点は、添付の図面と合わせて読むべき、その例示的な実施態様の以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0010】
本開示は、以下の図を参照して、以下の説明において好ましい実施形態の詳細を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の原理の実施形態による、本発明の原理が適用され得る例示的な処理システムを示す。
図2】本発明の原理の実施形態による、経時変化プロファイリングエンジンを含む例示的な物理システムの高レベル図を示す。
図3】本発明の原理の実施形態による、分解および変換される例示的な時系列グラフを示す。
図4】本発明の原理の実施形態による、経時変化プロファイリングエンジンを使用するシステムのコンポーネントの経時変化プロファイルの例示的な高レベル方法を示す。
図5】本発明の原理の実施形態による、経時変化プロファイリングエンジンを使用するシステムのコンポーネントの経時変化プロファイルの例示的な方法を示す。
図6】本発明の原理の実施形態による、経時変化プロファイリングエンジンを使用する物理システムの経時変化プロファイリングの例示的なシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
物理システムの長期にわたる運用は、必然的に、コンポーネントの経時変化をもたらし、パフォーマンスの低下、コンポーネントの誤動作、または全システムの障害さえも引き起こすことがある。システムの予期せぬ破損を回避するため、システムは、起こり得る経時変化の徴候の正確な検出およびプロファイリングを確実にするように、常時監視下に置かれてもよい。本発明の原理は、さまざまな実施形態により、所与の時系列の経時変化形状を正確に抽出し、経時変化の振る舞いを分析して、その重大度をランク付けする時系列分析技法を提供する。
【0013】
特に有用な実施形態において、時系列は、経時変化および揺らぎ成分に分解/変換されてもよく、潜在的な分解の問題は、最適化問題として公式化されて、既存のソルバーによって解決され得る2次計画法(QP)公式化に変換されてもよい。解決プロセス中に速度を高めて、処理要件を低減させるため、問題の公式化は、反復更新を使用してさらに一層効率的に解決され得る非負QP問題にさらに最適化され変換される。本発明の原理による経時変化プロファイリングは、合成および/または現実世界のデータセットに適用されてもよく、データは、たとえば、本発明の原理のさまざまな実施形態により、劣化の形状を正確にプロファイリングして劣化プロセスの開始ポイントを精密に突き止めるためのセンサーまたはその他の測定デバイスを使用して取得され得る。
【0014】
1つの実施形態において、本発明の原理は、所与の時系列の経時変化現象を正確に抽出し、経時変化の振る舞いを分析して、その重大度をランク付けする時系列分析技法を採用してもよい。より具体的には、本発明の原理により、所与の時系列を2つの主要成分(たとえば、単調経時変化傾向および揺らぎ項)を分解する経時変化プロファイリングエンジンが採用されてもよい。この手法の背後にある一般概念は、長時間にわたり平均変化を有していない(たとえば、長期的に勾配を有していない)定常揺らぎ項との経時変化傾向の明確な区別をもたらすことである。所与の時系列をこれらの2つの成分に分解した後、本発明の原理により、経時変化傾向は、劣化の開始ポイントを指示する勾配および形状を含むその変化を発見するために分析されてもよい。
【0015】
1つの実施形態において、経時変化抽出は、最適化問題として公式化されてもよい。その目的関数は、(1)元の時系列と、抽出された傾向および揺らぎ項の和との差として再構築エラーを最小化すること、ならびに(2)時間の経過に伴う揺らぎ項の平坦性を確保すること、という2つの部分を含んでもよい。そのような目的の下、解決策はまた、(1)経時変化傾向の単調性、および抽出された2つの成分の非負、という2つの制約を満たしてもよい。公式化された目的関数は分析され、この問題記述は、既存の知られている方法で解決され得る2次計画法(QP)公式化にさらに変形/変換される。
【0016】
1つの実施形態において、問題解決をさらに加速するため、行列変換技法が採用されて、制約を簡略化し、制約の数を低減してもよい(たとえば、2つから1つ−非負制約のみ)。我々は、問題を、反復更新を使用してさらに一層効率的に解決され得る非負QP問題に変換する。本発明の原理は、再公式化された非負QP問題を反復して解決し、解決時間を大幅に低減するために採用されてもよい。さらに、本明細書において提案される最適化技法を使用することで、問題の解決は扱いやすく、ひいては任意のサイズの(たとえば、小さいか、または極めて大きい)時系列に適用可能である。
【0017】
1つの実施形態において、経時変化スコアおよび信頼性スコアは、時系列の抽出された経時変化成分を分析するために決定/生成されてもよい。基本的に、経時変化スコアは、経時変化がどの程度知覚可能に時系列で表現されるかを示し、信頼性スコアは、元の時系列が、抽出された2つの成分から再構築された時系列にどの程度近いかを測定する。そのようなスコアに基づいて、経時変化プロファイリングエンジンは、本発明の原理のさまざまな実施形態により、経時変化レベルおよび対応する抽出の信頼性レベルのランク付けで分解の結果をレポートする。
【0018】
経時変化プロファイリングエンジンは、さまざまな特性を備えている合成のデータセットおよび任意の現実世界のデータセット(たとえば、為替レート、株価、製造プラントなど)に適用されてもよい。本発明の原理は、さまざまな実施形態により、劣化の形状を正確にプロファイリングし、劣化プロセスの開始ポイントを精密に突き止めるために適用されてもよい。一部の実施形態において、本発明の原理は、傾向および揺らぎ項を抽出するため、および経時変化プロファイリング要件を伝達する数学的モデルをコンポーネント/システムを制御する数学的公式化に組み込むための目的関数を公式化するために適用されてもよい。問題は、QP公式化に変換されてもよい凸型問題であってもよく、最適化方法は、さまざまな実施形態により、非負QP公式化で問題を解決するために採用されてもよい。
【0019】
本明細書の提示を容易にするために、このセクションにおいて、以下の2つの定義を行う。時系列の経時変化傾向は、時間の経過に伴う平均値の時系列な変化を表す単調列である。時系列の揺らぎ項は、定常成分である、つまり時間の経過に伴って平均値が変化しない成分である。説明を簡単にするために、値が非減少または非増加のいずれかでなければならない単調経時変化傾向のみが提示されており、実質的にシステムコンポーネントの経時変化が単調であるため、この特徴が強調されてもよい。しかし、本発明の原理が、さまざまな実施形態により、任意の経時変化傾向に適用されてもよいことに留意されたい。
【0020】
これ以降、類似する番号が同じまたは同様の要素を表す図面を参照するが、最初は図1を参照して、本発明の原理が適用されてもよい例示的な処理システム100が、本発明の原理の実施形態により、例示的に説明される。処理システム100は、システムバス102を介してその他のコンポーネントに動作可能に結合されている少なくとも1つのプロセッサ(CPU)104を含む。キャッシュ106、リードオンリメモリ(ROM)108、ランダムアクセスメモリ(RAM)110、入出力(I/O)アダプタ120、サウンドアダプタ130、ネットワークアダプタ140、ユーザインターフェイスアダプタ150、およびディスプレイアダプタ160は、システムバス102に動作可能に結合されている。
【0021】
第1のストレージデバイス122および第2のストレージデバイス124は、I/Oアダプタ120によってシステムバス102に動作可能に結合されている。ストレージデバイス122および124は、ディスクストレージデバイス(たとえば、磁気または光ディスクストレージデバイス)、ソリッドステート磁気デバイスなどのいずれかであってよい。ストレージデバイス122および124は、同じタイプのディスクストレージデバイスまたは異なるタイプのストレージデバイスであってよい。
【0022】
スピーカー132は、サウンドアダプタ130によってシステムバス102に動作可能に結合されている。送受信機142は、ネットワークアダプタ140によってシステムバス102に動作可能に結合されている。ディスプレイデバイス162は、ディスプレイアダプタ160によってシステムバス102に動作可能に結合されている。
【0023】
第1のユーザ入力デバイス152、第2のユーザ入力デバイス154、および、第3のユーザ入力デバイス156は、ユーザインターフェイスアダプタ150によってシステムバス102に動作可能に結合されている。ユーザ入力デバイス152、154、および156は、キーボード、マウス、キーパッド、イメージキャプチャデバイス、動き感知デバイス、マイクロフォン、前述のデバイスの少なくとも2つの機能を組み入れているデバイスなどのいずれかであってよい。いうまでもなく、本発明の原理の精神を保持しつつ、その他のタイプの入力デバイスもまた使用されてよい。ユーザ入力デバイス152、154、および156は、同じタイプのユーザ入力デバイス、または異なるタイプのユーザ入力デバイスであってよい。ユーザ入力デバイス152、154、および156は、システム100との間で情報を入力および出力するために使用される。
【0024】
いうまでもなく、処理システム100は、当業者により容易に企図されるように、その他の要素(図示せず)を含んでもよく、特定の要素を省略してもよい。たとえば、さまざまな他の入力デバイスおよび/または出力デバイスは、当業者によって容易に理解されるように、処理システム100の特定の実施態様に応じて、処理システム100に含まれてよい。たとえば、さまざまなタイプの無線および/または有線の入力および/または出力デバイスが使用され得る。さらに、さまざまな構成の追加のプロセッサ、コントローラ、メモリなどもまた、当業者によって容易に理解されるように利用され得る。処理システム100のこれらのおよびその他の変形は、本明細書において提供される本発明の原理の教示を所与として当業者により容易に企図される。
【0025】
さらに、図2および図6に関連して後段において説明されている回路/システム/ネットワーク200および600が、本発明の原理のそれぞれの実施形態を実施するための回路/システム/ネットワークであることを理解されたい。処理システム100の一部または全部が、図2および図6に関してシステム200および600の要素の1つまたは複数において実施されてもよい。
【0026】
さらに、処理システム100が、たとえば図4の方法400の少なくとも一部を含む、本明細書において説明されている方法の少なくとも一部を実行してもよい。同様に、図2および図6の回路/システム/ネットワーク200および600の一部または全部が、たとえば図4の方法400の少なくとも一部を含む、本明細書において説明されている方法の少なくとも一部を実行するために使用されてもよい。
【0027】
これ以降、図2を参照すると、本発明の原理の実施形態による、経時変化プロファイリングエンジン212を含む例示的な物理システムの高レベル概念図200が例示的に示されている。1つの実施形態において、物理システム202の1つまたは複数のコンポーネントは、本発明の原理による経時変化プロファイリングエンジン212を使用して制御および/または監視されてもよい。物理システムは、さまざまなシステムプロセスを実行するための、複数のコンポーネント204、206、208、210(たとえば、コンポーネント1、2、3、...n)を含んでもよいが、これらのコンポーネントはまた、たとえば、さまざまな実施形態により、金融取引などに関するデータを含んでもよい。
【0028】
1つの実施形態において、コンポーネント204、206、208、210は、物理(または仮想)システムにおいて操作を実行するための現在知られているかまたは将来知られる任意のコンポーネント(たとえば、温度センサー、蒸着デバイス、キーパフォーマンスインジケータ(KPI)、pHセンサー、金融データなど)を含んでもよく、さまざまなコンポーネントから収集される(または受信される(たとえば、時系列として))データは、本発明の原理による経時変化プロファイリングエンジン212への入力として採用されてもよい。経時変化プロファイリングエンジン/コントローラ212は、物理システムに直接接続されてもよいが、または本発明の原理のさまざまな実施形態によりシステムの品質および/またはコンポーネントをリモートに監視および/または制御するために採用されてもよい。経時変化プロファイリングエンジン212は、本明細書において後段でさらに詳細に説明される。
【0029】
これ以降、図3を参照すると、本発明の原理の実施形態による、分解および変換される例示的な時系列グラフ300が例示的に説明される。1つの実施形態において、本発明の原理の目的は、所与の時系列302(たとえば、未加工の時系列)を、本発明の原理により、単調経時変化傾向304および揺らぎ成分306に分解することである。
【0030】
1つの実施形態において、本発明の原理は、経時変化期間304および揺らぎ項306を元の時系列から分解/分離することによって、元の時系列302を単調関数308とゼロ平均シフトの非単調関数310に変換する。そのような要件の下で、問題定義は次のように指定する:長さTの入力時系列を所与として、s∈RT×1、我々は、これを次の項に分解しようと考える。
s=x+x (1)
ここで、xは経時変化項であり、xは揺らぎ項である。
【0031】
1つの実施形態において、経時変化信号/項304を抽出するために、経時変化抽出問題は、最適化問題として公式化されてもよい。抽出された経時変化信号304は、単調であってもよく、背景の信号および/またはノイズとは明確な区別があってもよい。したがって、目的関数は、(1)元の時系列302と、抽出された経時変化傾向304および揺らぎ項306の和との差として再構築エラーを最小化すること、ならびに、(2)さまざまな実施形態による時間の経過に伴う揺らぎ項306の平坦性を確保すること、という2つの部分を含むように設計されてもよい。経時変化プロファイルエンジンによって実行される分解/変換は、本発明の原理のさまざまな実施形態により、本明細書において後段でさらに詳細に説明される。
【0032】
これ以降、図4を参照すると、本発明の原理の実施形態による、経時変化プロファイリングエンジンを使用する経時変化プロファイルの(たとえば、物理システム、仮想システムなどのコンポーネントの)高レベル方法400が例示的に説明される。1つの実施形態において、入力は、ブロック402において受信されてもよく、たとえば、未加工の時系列データを含んでもよい。時系列データは、ブロック404において、経時変化プロファイリングエンジンを使用してプロファイリングされてもよく、プロファイリングは、本発明の原理により、ブロック405において時系列データを分解/変換することを含んでもよい。ブロック405における分解/変換は、さまざまな実施形態により、経時変化項/傾向406、揺らぎ項/傾向408を抽出すること、およびエラー率410を決定することを含んでもよい。
【0033】
1つの実施形態において、経時変化信号/項406を抽出するために、経時変化抽出問題は、最適化問題として公式化されてもよい。抽出された経時変化信号/項406は、単調であってもよく、背景の信号および/またはノイズとは明確な区別があってもよい。したがって、目的関数は、(1)ブロック402における元の時系列の入力と、抽出された経時変化傾向406および揺らぎ項408の和との差として再構築エラー410を最小化すること、ならびに、(2)本発明の原理により時間の経過に伴う揺らぎ項406の平坦性を確保すること、という2つの部分を含むように設計されてもよい。
【0034】
1つの実施形態において、経時変化傾向成分406は、(たとえば、非増加または非減少の)単調であってもよく、揺らぎ項成分408は、揺らぎ項408が確実に経時変化傾向406を干渉することがないように平坦(たとえば、定常)であってもよい。この問題記述を行うことで、問題は、図5を参照して本明細書において後段でさらに詳細に説明されるように、本発明の原理により、目的関数に公式化されてもよい。
【0035】
1つの実施形態において、ブロック405における時系列の分解/変換の方法は、以下のように実行されてもよい。
【数1】
【0036】
1つの実施形態において、ブロック405における方法1の第1のステップは、入力時系列の勾配を検査して、ΔまたはΔが使用されるべきであるかを決定することであってもよい。次いで、方法1の第7行において、Qおよびcは、式(16)(後段において示される)に従って計算されてもよい。第8行において、
【数2】

の初期値は、|Q−1c|に代入されてもよい。その後、反復更新は、本発明の原理により、目的関数値間の差がε(たとえば、0.001)よりも小さくなるまで、実行されてもよい。第16行において、我々は、
【数3】

を2つの成分(たとえば、経時変化差分値と揺らぎ項)に分割し、第17行において、Δに
【数4】

を乗算することによって経時変化傾向を回復する。次いで、方法は、本発明の原理のさまざまな実施形態により、物理システムの経時変化したコンポーネントの検出および/または管理(たとえば、制御)のためにコントローラによって使用されるべき抽出された経時変化傾向および揺らぎ項を戻してもよい。
【0037】
1つの実施形態において、目的関数に関して、解決策はまた、(1)経時変化傾向の単調性、および、(2)抽出された2つの成分406、408の非負、という2つの制約を満たしてもよい。公式化された目的関数は分析されてもよく、この問題記述は、グローバル最適解決策が取得されてもよい2次計画法(QP)公式化にさらに変形/変換されてもよく、ブロック412においてスコアを生成してもよい。スコアは、経時変化スコア414および信頼性スコア414を含んでもよい。問題解決を加速するため、本発明の原理による行列変換技法が採用されて、制約を簡略化し、制約の数を2つから1つに低減してもよい(たとえば、非負制約のみ)。我々は、問題を、反復更新を使用してさらに一層効率的に解決され得る非負QP問題に変換する。ブロック412において、我々は、再公式化された非負QP問題を反復して解決し、解決時間(ひいてはスコア生成時間)を大幅に短縮する方法を採用する。
【0038】
1つの実施形態において、経時変化スコア414および信頼性スコア416は、時系列の抽出された経時変化成分(たとえば、物理システムの物理コンポーネント)を分析するために採用されてもよい。経時変化スコア414は、経時変化傾向406の勾配によって説明され得るが、信頼性スコア416は、ブロック402における元の時系列入力の勾配に対する、抽出された経時変化傾向406の勾配の近似性に依存する。
【0039】
1つの実施形態において、2つのシグモイド関数は、2つのスコア(たとえば、経時変化スコア414および信頼性スコア416)を定量化するように調整されてもよい。経時変化スコア414の場合、抽出された経時変化傾向406の勾配は、たとえば0(経時変化は提示されず)から1(重度の経時変化)までの値をもたらすシグモイド関数の入力として採用されてもよい。信頼性スコア416の決定の場合、本発明の原理により、ブロック402における元の時系列入力の勾配と、抽出された経時変化傾向406の勾配との差の比率が採用されてもよい。比率が高くなれば、それに応じて信頼性スコアが低くなってもよい。
【0040】
一部の実施形態において、2つのスコアリング関数414、416は、さまざまなアプリケーション要件に従って柔軟に調整され得る。そのようなスコアに基づいて、経時変化プロファイリングエンジンは、ブロック418において、個々の成分(または複数の成分)ランク付けを生成するために、分解/変換の結果を採用してもよい。ブロック418におけるランク付けは、本発明の原理により、2つのスコア414、416を結合して、経時変化レベルおよび対応する抽出の信頼性レベルを含む融合されたスコアでランク付けを生成することによって決定されてもよい。システム操作は、ブロック420における融合されたスコアランク付けに基づいて制御されてもよく、たとえば、さまざまな実施形態による、経時変化成分の使用不可および/または交換、非経時変化成分へのタスクの再ルーティングタスクなどを含んでもよい。
【0041】
これ以降、引き続き図4を参照しながら、図5を参照し、本発明の原理の実施形態による、経時変化プロファイリングエンジンを使用する経時変化プロファイルの(たとえば、物理システム、仮想システムなどのコンポーネントの)例示的な方法500が説明される。1つの実施形態において、入力は、ブロック501において受信されてもよく、たとえば、未加工の時系列データを含んでもよい。ブロック501におけるデータ(たとえば、時系列)入力は、本発明の原理のさまざまな実施形態により、ブロック502において経時変化プロファイリングエンジンを使用して(たとえば、経時変化したシステムコンポーネントを検出する、為替レートに影響する出来事を検出する、長期株価をプロファイルするなどのために)プロファイルされてもよい。
【0042】
1つの実施形態において、図4を参照して上記で説明されているように、経時変化傾向成分406は、(たとえば、非増加または非減少の)単調であってもよく、揺らぎ項成分408は、揺らぎ項408が確実に経時変化傾向406を干渉することがないように平坦(たとえば、定常)であってもよい。1つの実施形態において、この問題提示を1つの例として、本発明の原理により、問題は、ブロック504において目的関数に公式化されてもよい。
【0043】
1つの実施形態において、本発明の原理により、ブロック510で、(たとえば、未加工の時系列から)抽出された経時変化傾向への単調制約は、生成されてもよく、1つまたは複数の物理システムの実際的な経時変化現象(たとえば、コンポーネントの耐用年数)を反映してもよい。ブロック510において、単調傾向xaを生成/確保するため、目的関数の制約は、以下のように表されてもよい。
(t)≦(or≧)x(t+1) (2)
【0044】
1つの実施形態において、本発明の原理により、ブロック512で、抽出された動作/ノイズ成分への平坦制約は、生成および/または適用されてもよく、混合信号から(たとえば、物理システムのコンポーネントの)経時変化の振る舞いの明確な抽出を確保してもよい。1つの実施形態において、平坦項を定常にし、時間の経過に伴って平均値を変化させないために、時系列はセグメント化されてもよく、各セグメントの平均値差が確実に可能な限り小さくなるようにしてもよい。
【0045】
たとえば、例示的な実施形態において、時系列を所与として、時系列をK個のセグメントに区分し、各セグメントが平均値、たとえば、m(ただし、k=1、2、...、K)を有するようにしてもよい。次いで、ブロック512において、セグメントの各ペアの平均値の間の差を最小化して、時間の経過に伴う揺らぎ項の平坦性を以下のように確保してもよい。
【数5】

この実施形態において、Wは重み行列を表し、その各エントリWijはセグメントペアmおよびm間の平均差を最小化するために我々が加えようとする重みを指定する。Wがすべて1に設定される場合、すべてのセグメントは均等の重みを有する。実際には、長期的な平均の変化が最小化されるようにするため、本発明の原理は、セグメントペアの距離が増大するときに重みを増すように採用されてもよい(たとえば、セグメントmおよびm間の距離に応じた重みの線形増加)。このようにして、本発明の原理により、2つのセグメントが相互に遠く離れれば、それに応じてその平均差を最小化するようにさらなる重みが与えられるようになる。
【0046】
1つの実施形態において、ブロック514で、本発明の原理により、非負制約は、抽出された成分に追加されてもよく、物理システムからの信号(たとえば、受信データ)の実態を反映してもよい。
【0047】
1つの実施形態において、ブロック516で、本発明の原理により、すべての制約に関する潜在的な問題は、2次計画法(QP)問題として形成されてもよい。
【0048】
ブロック518において、本発明の原理の1つの実施形態により、目的関数のコストは、成分再構築エラーおよび動作ノイズ成分の平坦性として設計され、または、公式化されてもよい。最適化問題の目的関数は、再構築エラー||s−x−x||を最小化して、時間の経過に伴う揺らぎ項の平坦性を確保する(たとえば、式(3)として公式化されてもよく、ブロック510からの単調制約およびブロック514からの非負制約に従ってもよい)。
【0049】
1つの実施形態において、ブロック514からの非負制約は、抽出された経時変化傾向および揺らぎ項が、非負値のみを有してもよいことを意味する。ブロック501における元の時系列入力も非負値のみを有するが、そうではない場合、元の値を、時系列の最小(負)値の絶対値で合計することによってシフトアップされ得ることを仮定してもよい。本発明の原理により、これを式(2)と式(3)と組み合わせることで、目的関数全体は次のように表されてもよい。
【数6】

しかし、式(4)は、提示されている形式では効果的に解決され得ないので、そのようなものとして、本発明の原理は、この式を、最適化解決策がさまざまな実施形態により取得、および/または、適用されてもよい2次計画法公式化に変換するために採用されてもよい。
【0050】
1つの実施形態において、遷移行列が設計されてもよく、行列変換は、ブロック510からの制約/制限(たとえば、単調制約)を、ブロック520においてQPによる形式に変換/表現するために実行されてもよい。ブロック522において、ブロック512からの制約/制限(たとえば、平坦性制約)は、たとえば、ラプラス固有写像(Laplacian Eigenmap)を使用して表されてもよく、平坦性制約は、本発明の原理のさまざまな実施形態により、2次計画法に従う形式に変換されてもよい。
【0051】
ブロック522において、式(3)(たとえば、平坦性目的)は、本発明の原理により、変換されて書き換えられてもよい。例示的な実施形態において、セグメントmの各々について、指標ベクトルeが定義され、以下のように表されてもよい。
【数7】

ここで、lはセグメントの長さである。仮にE=[e、e、...、eとすると、式(3)からの平坦性目的は、以下のように表されてもよい。
【数8】

ここで、本発明の原理により、式(3)からの平坦性目的の変換済みの表現を生成するために、L=D−WおよびD=diag(W*1)である。
【0052】
1つの実施形態において、ブロック522における平坦性目的(たとえば、制約/制限)の変換後、式(4)の平坦性目的の元の形式は、その新しい、式(6)からの変換済みの形式で置き換えられて、以下の公式化された式を生成してもよい。
【数9】
【0053】
ブロック520において、式(2)(たとえば、単調制約)は、本発明の原理により、変換されて書き換えられてもよい。例示的な実施形態において、我々は
【数10】
を定義してもよく、ここでIは、ブロックのT×T単位行列(たとえば、遷移/変換行列)である。一部の実施形態において、行列BおよびCは、本発明の原理により、以下のように定義されてもよい。
【数11】
【0054】
1つの実施形態において、上記で説明されている定義の下で、単調制約は、以下のように表されてもよく、
≧0 (8)
非負制約は、以下のように表されてもよい。
x≧0 (9)
式(7)における目的関数の形式は、ブロック516において以下の式公式化を生成するためにさらに変換されてもよい。
【数12】
上記のことから明らかであるように、式(10)は、2次計画法(QP)最適化問題の形式であり、本発明の原理のさまざまな実施形態による、この問題を解決するための効率的な最適化方法は、本明細書において後段で詳細に説明される。
【0055】
図4および図5に関して上記で説明されているように、1つの実施形態において、所与の時系列は、経時変化部分(傾向)と揺らぎ部分に分解(たとえば、変換)されてもよい。分解中に、再構築エラーが導入されてもよく、したがって、そのような分解の信頼性は、エラーの値に左右されることがある。ブロック508において、スコアリングおよび/またはランク付けは、本発明の原理がもたらしてもよい経時変化の重大性および信頼性レベルを評価するために採用されてもよい。基本的に、経時変化スコアは、経時変化傾向の勾配によって説明され得るが、信頼性スコアは、元の時系列の勾配に対する、抽出された経時変化傾向の勾配の近似性に依存することがある。
【0056】
ブロック528において、2つのシグモイド関数は、2つのスコアを定量化するために採用されてもよい。1つの実施形態において、本発明の原理により、経時変化の振る舞いおよび抽出の信頼性をスコアリングするための2つのシグモイド関数は、決定および/または適用されてもよい。たとえば、経時変化スコアの場合、抽出された経時変化傾向の勾配は、たとえば0(経時変化は提示されず)から1(重度の経時変化)までの値をもたらすシグモイド関数の入力として採用されてもよい。信頼性スコアの場合、元の時系列の勾配と、抽出された経時変化傾向の勾配との差の比率(たとえば、(ori.slope−ext.slope)/ori.slopeを、入力として使用する。比率が高くなれば、それに応じて信頼性スコアが低くなる。
【0057】
一部の実施形態において、2つのスコアリング関数は、さまざまなアプリケーション要件に従って柔軟に調整され得る。たとえば、例示的な実施形態において、経時変化スコアは、ゼロ勾配の経時変化傾向に対して0を与え、勾配が0.015に近い場合には1を与えるように事前調整されてもよい。1つの実施形態において、信頼性スコア関数は、比率が0の場合に1とスコアリングし、比率が1に近い場合に0とスコアリングするように調整され得る。ブロック530において、本発明の原理により、2つのスコアは、融合されて、抽出された経時変化現象のランク付けをもたらすことができる。
【0058】
ブロック504において、本発明の原理の1つの実施形態により、潜在的な経時変化プロファイリング問題は、QP問題に変換されてもよい。しかし、幅広い目的のために採用されてもよい一般的(たとえば、従来の)QPソルバーは、特に大きい時系列(たとえば、千を超えるデータポイント)の場合には、処理が遅くなる。基本的に、千個のデータポイントの時系列に解決策を見出すことは、千個の変数を持つ連立方程式を解くことと同等であり、計算コストの観点から極めて高価であるため、拡張可能ではない。
【0059】
ブロック506において、本発明の原理のさまざまな実施形態により、計算コストは低減されてもよく、任意のサイズの時系列が効率的に採用されてもよい。ブロック506における目標は、単調制約を除去して非負制約のみを保持するように式(10)のQP公式化をさらに変換して(たとえば、書き換えて)、問題解決をさらに容易にすること(たとえば、より計算する上で効率的な、より高速の処理など)である。1つの実施形態において、2つの隣接する要素の間の差が非負の場合もあることを、単調制約が表現することが観察されてもよい。
【0060】
ブロック524において、本発明の原理により、ブロック510からの単調制約の表現と、たとえば512または514からの非負制約を1つの形式に併合するために、遷移行列が採用されてもよい。1つの実施形態において、上記の観察に基づいて、遷移変数
【数13】
が導入されてもよく、問題記述は、xを変数の一部として使用するのではなく、等式を満たす以下のサロゲート
【数14】
を変数として使用してもよい、というように変更されてもよい。
【数15】
【0061】
言い換えれば、上記の例における
【数16】
の第1の要素は、xの第1の要素と等しくてもよく、
【数17】
の残りの要素は、xの2つの隣接する要素の間の差を表してもよい。1つの実施形態において、傾向xと差分値
【数18】
との関係は、以下のように表されてもよく、
【数19】
ここで、傾向が非増加である場合Δ=Δであり、傾向が非減少である場合Δ=Δであり、以下のように表されてもよい。
【数20】
【0062】
1つの実施形態において、仮に
【数21】
とする。ブロック524において、この変換を使用することにより、式(8)の単調制約Cx≧0と、式(9)の非負制約x≧0を1つの制約に併合してもよく、これは以下のように表されてもよい。
【数22】
【0063】
1つの実施形態において、ブロック526で、併合された目的関数は、本発明の原理により、反復的および非常に効率的に解決されてもよい形式に変換されてもよい。仮に
【数23】
としてもよく、式(10)からの元のQP問題は、以下のように1つの制約のみで変換されて表されてもよい。
【数24】
さらに以下のように定義してもよく、
【数25】
次いで、変換された問題は、以下のように、単純な非負QP問題として表されてもよい。
【数26】
【0064】
式(10)が式(17)と同等であることに留意されたい。式(17)を解決した後、得られた経時変化傾向xは、式(11)に示されているように、
【数27】
で簡単に回復されてもよい。一部の実施形態において、本発明の原理による、非負QP問題の採用が一般的なQP問題よりもはるかに効率的に解決されてもよいので、ブロック526で、併合された目的関数は、より効率的に解決されるようにさらに変換されてもよい。
【0065】
1つの実施形態において、ブロック506で、非負QP定式化を使用して2次計画法問題を解決する利点は、非負制約が1次不等式制約よりも処理(たとえば、プロセス)がはるかに容易であるので、非負QP定式化が構造をより単純にすることである。通常、非負制約は、本発明の原理により、非常に効率的に計算されてもよい閉形式の反復につながる。たとえば、乗算型更新は、さまざまな実施形態により、解決の効率性を得るために採用されてもよい。仮にQおよびQを以下のように定義されるものとする。
【数28】
次いで、更新/変換は、以下のように表されてもよく、
【数29】
ここで、xは、本発明の原理により、i回の反復後に得られるベクトルxである。
【0066】
1つの実施形態において、良好な初期化は収束を改善することができ、たとえば、本発明の原理により、|Q−1c|を開始解決策として使用してもよい。1つの実施形態において、良好な初期化値は、最適な解決策を見出すためのアルゴリズムのステップ数を低減することができる。つまり、良好な初期化値は、最適ポイントまでの距離が短い(たとえば、ランダムに選択されたポイントよりも短い)ポイントであってもよい。その理由から、本発明の原理により、良好な開始ポイントによる最適ポイントを見出すために使用される取り組み(たとえば、計算の強度)は、ランダムに選択された初期化ポイントによる場合よりも少ないことがある。
【0067】
−1を計算するために、たとえば線形複雑性を含む低ランク近似技法が採用されてもよい。1つの実施形態において、この技法により、通常は線形および非線形の制約による汎用公式化向けに設計されている一般的なQPソルバーを使用することを回避するので、本発明の原理により、ブロック506の解決プロセスを、従来の解決のシステムおよび方法を使用する場合よりもはるかに効率的にする。
【0068】
これ以降、図6を参照して、本発明の原理の実施形態による、経時変化プロファイリングエンジンを使用する物理システムの経時変化プロファイルの例示的なシステムが例示的に説明される。
【0069】
システム600の多数の態様は例示および明確さのために単数形で説明されているが、これらの態様は、システム600の説明に関して言及される項目の複数形に適用され得る。たとえば、単一のコントローラ680が例示的に示されているが、本発明の原理の精神を保持しつつ、本発明の原理の教示に従って、2つ以上のコントローラ680が使用されてもよい。さらに、コントローラ680が、本発明の原理の精神を保持しつつ複数の形式に拡張可能であるよりも、システム600に関与する1つの態様に過ぎないことが理解される。
【0070】
本発明の原理のさまざまな実施形態により、システム600は、バス601、データコレクタ610、経時変化プロファイラ620、経時変化傾向ジェネレータ622、揺らぎ項ジェネレータ624、エラー検出器/ジェネレータ626、オプティマイザ/QP問題ソルバー630、経時変化スコアジェネレータ640、信頼性スコアジェネレータ、ランカー660、ストレージデバイス670、および/またはコントローラ680を含んでもよい。
【0071】
1つの実施形態において、データコレクタ610は、未加工データ(たとえば、コンポーネント経時変化データ、時系列、システム動作状況など)を収集するために採用されてもよく、未加工データは、経時変化プロファイラ/時系列トランスフォーマ620(たとえば、経時変化プロファイリングエンジン)への入力として受信されてもよい。経時変化プロファイラ620は、さまざまな実施形態により、それぞれ、経時変化傾向ジェネレータ622、揺らぎ項ジェネレータ624、および/またはエラー検出器/ジェネレータ626を使用して、未加工時系列を経時変化傾向、揺らぎ項および/またはエラーに分解(たとえば、変換)してもよい。分解された/変換されたデータ(たとえば、未加工時系列)は、本発明の原理により、後のアクセス(たとえば、処理、問題解決の間など)のためにストレージデバイス670に格納されてもよい。
【0072】
ブロック630において、オプティマイザ/QP問題ソルバーは、単調制約および非負制約の表現を1つの形式に併合するために採用されてもよい。併合された目的関数は、本発明の原理のさまざまな実施形態による、たとえば、2次計画法問題解決を使用して、反復的および効率的に解決されてもよい形式に変換されてもよい。経時変化スコアは、経時変化スコアジェネレータ640を使用して生成されてもよく、経時変化スコアは、所与の時系列における経時変化傾向の勾配として説明されてもよい。信頼性スコアジェネレータ650は、信頼性スコアを決定するために採用されてもよく、信頼性スコアは、元の時系列の勾配に対する、抽出された経時変化傾向の勾配の近似性に依存することがある。1つの実施形態において、本発明の原理により、信頼性スコアジェネレータ650は、信頼性スコアを生成するために揺らぎ項および再構築エラーデータを採用してもよい。
【0073】
そのようなスコアに基づいて、ランカー660は、個々の成分(または複数の成分)ランク付けを生成するために、分解/変換の結果を採用してもよい。ランク付けは、本発明の原理により、スコアジェネレータ640および650からの2つのスコアを結合して、抽出の経時変化レベルおよび対応する信頼性レベルを含む融合されたスコアでランク付けを生成することによって決定されてもよい。システム操作は、本発明の原理のさまざまな実施形態により、コントローラ680を使用して融合されたスコアランク付けに基づいて制御されてもよく、たとえば、経時変化成分の使用不可および/または交換、非経時変化成分へのタスクの再ルーティングタスクなどを含んでもよい。
【0074】
本明細書において説明されている実施形態は、全体がハードウェアであってもよく、または、ハードウェアと、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなど(ただしこれらに限定されない)を含むソフトウェア要素との両方を含んでもよいことを理解されたい。好ましい実施形態において、本発明は、ハードウェアにおいて実施される。
【0075】
実施形態は、コンピュータもしくは任意の命令実行システムによる使用、または関連する使用のためのプログラムコードを提供するコンピュータで使用可能、または、コンピュータで読み取り可能な媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品を含んでもよい。コンピュータで使用可能、または、コンピュータで読み取り可能な媒体は、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによる使用、または関連する使用のためのプログラムを格納、通信、伝搬、または転送する任意の装置を含んでもよい。媒体は、磁気、光学、電子、電磁気、赤外線、もしくは半導体システム(または装置、またはデバイス)、または伝搬媒体があり得る。媒体は、半導体またはソリッドステートメモリ、磁気テープ、取り外し可能コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、固定磁気ディスク、および光ディスクなどのような、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体を含んでもよい。
【0076】
プログラムコードを格納および/または実行するための適切なデータ処理システムは、システムバスを通じてメモリ素子に直接または間接的に結合された少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。メモリ素子は、プログラムコードの実際の実行中に採用されたローカルメモリ、大容量ストレージ、および実行中にコードが大容量ストレージから取り出される回数を減らすために少なくとも一部のプログラムコードの一時ストレージを提供するキャッシュメモリを含むことができる。入出力またはI/Oデバイス(キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイスなどを含む、ただしこれらに限定されない)は、直接または介在するI/Oコントローラを通じてシステムに結合されてもよい。
【0077】
ネットワークアダプタはまた、データ処理システムが、介在するプライベートネットワークまたはパブリックネットワークを通じて他のデータ処理システムまたはリモートプリンタまたはストレージデバイスに結合されるようにするためにシステムに結合されてもよい。モデム、ケーブルモデム、およびイーサネットカードは、現在使用可能なタイプのネットワークアダプタのほんの数例に過ぎない。
【0078】
前述の説明は、あらゆる点で説明的かつ例示的であるが、限定的なものではないと理解されるべきであり、本明細書において開示されている本発明の範囲は、詳細な説明からではなく、特許法によって認められている完全な範囲に従って解釈される特許請求の範囲から決定されるべきである。本明細書において示され、説明される実施形態は、本発明の原理を例示するものに過ぎず、当業者が、本発明の範囲および精神を逸脱することなくさまざまな変更を実施してもよいことを理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲および精神を逸脱することなくさまざまなその他の特徴の組み合わせを実施することができるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6