特許第6616013号(P6616013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レイセオン カンパニーの特許一覧

特許6616013同時の送信及び受信のための離散時間アナログ信号処理
<>
  • 特許6616013-同時の送信及び受信のための離散時間アナログ信号処理 図000002
  • 特許6616013-同時の送信及び受信のための離散時間アナログ信号処理 図000003
  • 特許6616013-同時の送信及び受信のための離散時間アナログ信号処理 図000004
  • 特許6616013-同時の送信及び受信のための離散時間アナログ信号処理 図000005
  • 特許6616013-同時の送信及び受信のための離散時間アナログ信号処理 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616013
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】同時の送信及び受信のための離散時間アナログ信号処理
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/525 20150101AFI20191125BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H04B1/525
   H04B1/10 N
   H04B1/10 L
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-545337(P2018-545337)
(86)(22)【出願日】2017年1月4日
(65)【公表番号】特表2019-510411(P2019-510411A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】US2017012150
(87)【国際公開番号】WO2017151220
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年8月28日
(31)【優先権主張番号】15/062,025
(32)【優先日】2016年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ジアンヴィットリオ,ジョン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】クルトラン,デンポル
(72)【発明者】
【氏名】マール,ハリー,ビー.
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0078226(US,A1)
【文献】 米国特許第05931898(US,A)
【文献】 米国特許第06035320(US,A)
【文献】 米国特許第05479363(US,A)
【文献】 国際公開第2015/026130(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0310936(US,A1)
【文献】 米国特許第05682165(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/525
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時送受信システムにおいて送信漏れを減らすよう構成される再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサであって、
RF送信信号の一部分を受信し且つ有限インパルス応答(FIR)係数を受け取って、前記RF送信信号の前記部分及び前記FIR係数に基づき漏れ相殺信号を生成するよう構成されるFIRフィルタを有し、
前記FIRフィルタは、
前記RF送信信号の前記部分を同時に受信し、サンプルクロックに従って連続的なサンプル時点で前記RF送信信号の前記部分をサンプリングし、複数のサンプリングされたアナログ電圧信号を生成するよう構成され、前記RF送信信号の前記部分が電圧信号である、複数のサンプル及びホールド(SH)回路と、
前記複数のSH回路へ結合され、前記複数のサンプリングされたアナログ電圧信号に複数のバイナリ乗率を乗じて前記漏れ相殺信号を生成するよう構成される複数のプログラム可能なアナログ乗算器と
を有し、
前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器の夫々は、電圧−電流乗算器である
再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項2】
前記FIRフィルタは、
前記FIR係数を受け取り、該受け取られたFIR係数に基づき前記複数のバイナリ乗率を生成することによって当該再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサを再構成するよう構成される負荷コントローラ
を更に有する、
請求項1に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項3】
前記RF送信信号の前記部分、RF受信信号の一部分、及び前記漏れ相殺信号の一部分に基づき前記FIR係数を生成するよう構成される係数計算器を更に有する、
請求項1に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項4】
前記係数計算器は、適応フィルタリングアルゴリズムを用いて前記FIR係数を生成するよう構成される、
請求項3に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項5】
前記複数のサンプリングされたアナログ電圧信号の夫々1つが同じ存続期間を有し、時間的にずらされる、
請求項1に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項6】
前記FIRフィルタは、
前記複数のバイナリ乗率を前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器へ供給するよう構成される複数の係数レジスタ
を更に有し、
前記複数の係数レジスタは、同じ複数の係数を有する、
請求項1に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項7】
前記複数の係数レジスタの夫々1つは、
複数の係数を記憶し、前記連続的なサンプル時点の夫々1つで回転シフトレジスタのメモリ位置を通って前記複数の係数を巡回的に回転させるよう構成される前記回転シフトレジスタ
を有する、
請求項6に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項8】
前記RF送信信号の前記受信された部分は差動アナログ信号を有する、
請求項1に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項9】
前記生成された漏れ相殺信号は差動アナログ信号を有する、
請求項1に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項10】
前記FIRフィルタは、
前記複数のSH回路のサンプル時間をトリガする複数の制御信号を生成するよう構成されるタイミングコントローラ
を更に有し、
前記複数の制御信号のうちの連続するものは、サンプリング周期によって時間においてオフセットされる、
請求項1に記載の再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサ。
【請求項11】
送信漏れを減らすよう構成される、無線周波数(RF)信号の同時の送信及び受信のためのシステムであって、
RF送信信号を生成するよう構成される送信信号発生器と、
前記RF信号をワイヤレスで送信し、RF受信信号を受信するよう構成されるアパーチャと、
前記RF送信信号の一部分を受信し且つ有限インパルス応答(FIR)係数を受け取って、前記RF送信信号の前記部分及び前記FIR係数に基づき漏れ相殺信号を生成するよう構成されるアナログ漏れ消去器と、
前記RF受信信号と前記漏れ相殺信号とを結合して、低ノイズRF受信信号を生成するよう構成される結合器と
を有し、
前記漏れ消去器は、
前記RF送信信号の前記部分を同時に受信し、サンプルクロックに従って連続的なサンプル時点で前記RF送信信号の前記部分をサンプリングし、複数のサンプリングされたアナログ電圧信号を生成するよう構成され、前記RF送信信号の前記部分が電圧信号である、複数のサンプル及びホールド(SH)回路と、
前記複数のSH回路へ結合され、前記複数のサンプリングされたアナログ電圧信号に複数のバイナリ乗率を乗じて前記漏れ相殺信号を生成するよう構成される複数のプログラム可能なアナログ乗算器と
を有し、
前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器の夫々は、電圧−電流乗算器である
システム。
【請求項12】
適応フィルタリングアルゴリズムを用いて、前記RF送信信号の一部分、前記RF受信信号の前記部分、及び前記漏れ相殺信号の一部分に基づき前記FIR係数を生成するよう構成される係数計算器を更に有する、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記漏れ消去器は、
前記FIR係数を受け取り、該受け取られたFIR係数に基づき前記複数のバイナリ乗率を生成することによって前記漏れ消去器を再構成するよう構成される負荷コントローラ
を更に有する、
請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記送信信号発生器は、送信されるよう入力データ信号に基づきRF信号を供給し、該RF信号の位相角度を調整し、可変ゲインを用いて前記RF信号を増幅して前記RF送信信号を生成するよう構成される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記漏れ消去器は、
前記複数のSH回路のサンプル時間をトリガする複数の制御信号を生成するよう構成されるタイミングコントローラ
を更に有し、
前記複数の制御信号のうちの連続するものは、サンプリング周期によって時間においてオフセットされる、
請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記漏れ消去器は、
前記複数のバイナリ乗率を前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器へ供給するよう構成される複数の係数レジスタ
を更に有し、
前記複数の係数レジスタは、同じ複数の係数を有し、
前記複数の係数レジスタの夫々1つは、
複数の係数を記憶し、前記連続的なサンプル時点の夫々1つで回転シフトレジスタのメモリ位置を通って前記複数の係数を巡回的に回転させるよう構成される前記回転シフトレジスタ
を有する、
請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記漏れ消去器は、
前記RF送信信号の前記部分を受信し、該RF送信信号の前記部分を平衡差動信号へ、該信号を前記複数のSH回路へ供給するより前に変換するよう構成される1入力2出力変換器
を更に有し、
前記複数のSH回路及び前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器は、差動信号モードで動作する、
請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記漏れ消去器は、
前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器の平衡差動出力電流信号を前記漏れ相殺信号へ変換するよう構成される2入力単出力変換器
を更に有し、
前記漏れ相殺信号は、不平衡非差動信号である、
請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記漏れ消去器は、前記複数のSH回路の入力部でトラック及びホールド回路を更に有し、該トラック及びホールド回路は、前記漏れ消去器の差動帯域幅を広げるよう構成され、
前記トラック及びホールド回路は、前記複数のSH回路の動作周波数の最大100倍高い周波数で動作する、
請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自己干渉及びノイズ相殺のための信号の処理の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システム、特にワイヤレス通信システムは、トランシーバ信号及びノイズを減らすための漏れ抑制システムをしばしば用いる。斯様なシステムは、送信経路から受信帯域で導入された漏れに起因する受信経路での信号及びノイズを抑制するために利用される。アンテナ素子が送信経路及び受信経路の両方ともによって共有される場合に、受信経路での斯様な干渉は、送信された信号がアンテナ素子によって受信経路に反射されることを生じさせることがある。
【0003】
斯様な漏れ抑制システムに伴う更なる問題は、それらが干渉信号の有効な取り消しを提供し得る一方で、必要とされる回路がしばしば複雑、大規模、高価であり、比較的に高い挿入損失を伴う点である。タップ付き遅延線ノイズキャンセラのような、いくつかの漏れ抑制システムの相対的な大きいサイズは、アンテナシステムの隣接するアンテナ素子どうしの間の間隔が小さい高周波数で斯様な解決法がフェーズドアレイアンテナにおいて利用されることを妨げる。
【0004】
この背景技術の項で開示されている上記の情報は、本発明の背景の理解の増進のためだけであり、従って、当業者に既に知られている先行技術を形作らない情報を含むことがある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態の態様は、無線周波数(radio frequency)(RF)信号の同時の送信及び受信のためのシステム(以降、TX/RXシステム)における離散時間アナログ信号処理を対象とする。TX/RXシステムは、TX/RXシステムの受信経路における漏れの広帯域抑制が可能なチップスケールの、プログラム可能な、離散時間アナログ漏れ消去器を含む。
【0006】
本発明の実施形態の態様は、TX/RXシステムにおけるフィードフォワード相殺のためにタップ付き遅延線となるよう有限インパルス応答(finite impulse response)(FIR)フィルタに配置される、多相離散時間サンプルを使用する消去器を対象とする。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態に従って、同時送受信システムにおいて送信漏れを減らすよう構成される再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサが提供される。当該再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサは、RF送信信号の一部分を受信し且つ有限インパルス応答(FIR)係数を受け取って、前記RF送信信号の前記部分及び前記FIR係数に基づき漏れ相殺信号を生成するよう構成されるFIRフィルタを含む。前記FIRフィルタは、前記RF送信信号の前記部分を同時に受信し、サンプルクロックに従って連続的なサンプル時点で前記RF送信信号の前記部分をサンプリングし、複数のサンプリングされたアナログ電圧信号を生成するよう構成される複数のサンプル及びホールド(SH)回路と、前記複数のSH回路へ結合され、前記複数のサンプリングされたアナログ電圧信号に複数のバイナリ乗率を乗じて前記漏れ相殺信号を生成するよう構成される複数のプログラム可能なアナログ乗算器と、前記複数のSH回路のサンプル時間をトリガする複数の制御信号を生成するよう構成されるタイミングコントローラとを含む。前記複数の制御信号のうちの連続するものは、サンプリング周期によって時間においてオフセットされている。
【0008】
実施形態において、前記FIRフィルタは、FIR係数を受け取り、該受け取られたFIR係数に基づき前記複数のバイナリ乗率を生成することによって当該再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサを再構成するよう構成される負荷コントローラを更に含む。
【0009】
実施形態において、当該再構成可能な離散時間アナログ信号プロセッサは、RF送信信号の部分、RF受信信号の前記部分、及び漏れ相殺信号の部分に基づきFIR係数を生成するよう構成される係数計算器を更に含む。
【0010】
実施形態において、前記係数計算器は、適応フィルタリングアルゴリズムを用いて前記FIR係数を生成するよう構成される。
【0011】
実施形態において、前記漏れ消去器は、前記複数のバイナリ乗率を前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器へ供給するよう構成される複数の係数レジスタを更に含み、前記複数の係数レジスタは、同じ複数の係数を含む。
【0012】
実施形態において、前記複数の係数レジスタの夫々1つは、複数の係数を記憶し、前記連続的なサンプル時点の夫々1つで回転シフトレジスタのメモリ位置を通って前記複数の係数を巡回的に回転させるよう構成される前記回転シフトレジスタを含む。
【0013】
実施形態において、前記RF送信信号の受信された部分は差動アナログ信号を含む。
【0014】
実施形態において、生成された前記漏れ相殺信号は差動アナログ信号を含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、送信漏れを減らすよう構成される、無線周波数(RF)信号の同時の送信及び受信のためのシステムが提供される。当該システムは、RF送信信号を生成するよう構成される送信信号発生器と、前記RF信号をワイヤレスで送信し、RF受信信号を受信するよう構成されるアパーチャと、前記RF送信信号の一部分を受信し且つ有限インパルス応答(FIR)係数を受け取って、前記RF送信信号の前記部分及び前記FIR係数に基づき漏れ相殺信号を生成するよう構成されるアナログ漏れ消去器と、前記RF受信信号と前記漏れ相殺信号とを結合して、低ノイズRF受信信号を生成するよう構成される結合器とを含む。前記漏れ消去器は、前記RF送信信号の前記部分を同時に受信し、サンプルクロックに従って連続的なサンプル時点で前記RF送信信号の前記部分をサンプリングし、複数のサンプリングされたアナログ電圧信号を生成するよう構成される複数のサンプル及びホールド(SH)回路と、前記複数のSH回路へ結合され、前記複数のサンプリングされたアナログ電圧信号に複数のバイナリ乗率を乗じて前記漏れ相殺信号を生成するよう構成される複数のプログラム可能なアナログ乗算器とを含む。
【0016】
実施形態において、当該システムは、適応フィルタリングアルゴリズムを用いて、RF送信信号の部分、RF受信信号の部分、及び漏れ相殺信号の部分に基づきFIR係数を生成するよう構成される係数計算器を更に含む。
【0017】
実施形態において、前記漏れ消去器は、前記FIR係数を受け取り、該受け取られたFIR係数に基づき前記複数のバイナリ乗率を生成することによって前記漏れ消去器を再構成するよう構成される負荷コントローラを更に含む。
【0018】
実施形態において、前記送信信号発生器は、送信されるよう入力データ信号に基づきRF信号を供給し、該RF信号の位相角度を調整し、可変ゲインを用いて前記RF信号を増幅して前記RF送信信号を生成するよう構成される。
【0019】
実施形態において、前記漏れ消去器は、前記複数のSH回路のサンプル時間をトリガする複数の制御信号を生成するよう構成されるタイミングコントローラを更に含み、前記複数の制御信号のうちの連続するものは、サンプリング周期によって時間においてオフセットされる。
【0020】
実施形態において、前記漏れ消去器は、
前記複数のバイナリ乗率を前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器へ供給するよう構成される複数の係数レジスタを更に含み、前記複数の係数レジスタは、同じ複数の係数を含み、前記複数の係数レジスタの夫々1つは、複数の係数を記憶し、前記連続的なサンプル時点の夫々1つで回転シフトレジスタのメモリ位置を通って前記複数の係数を巡回的に回転させるよう構成される前記回転シフトレジスタを含む。
【0021】
実施形態において、前記漏れ消去器は、前記RF送信信号の前記部分を受信し、該RF送信信号の前記部分を平衡差動信号へ、該信号を前記複数のSH回路へ供給するより前に変換するよう構成される1入力2出力(single-input to dual-output)(S2D)変換器を更に含み、前記複数のSH回路及び前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器は、差動信号モードで動作する。
【0022】
実施形態において、前記漏れ消去器は、前記複数のプログラム可能なアナログ乗算器の平衡差動出力電流信号を前記漏れ相殺信号へ変換するよう構成される2入力単出力(dual-input to single-output)変換器を更に含み、前記漏れ相殺信号は、不平衡非差動信号である。
【0023】
実施形態において、前記漏れ消去器は、前記複数のSH回路の入力部でトラック及びホールド回路を更に含み、該トラック及びホールド回路は、前記漏れ消去器の差動帯域幅を広げるよう構成され、前記トラック及びホールド回路は、前記複数のSH回路の動作周波数の最大100倍高い周波数で動作する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付の図面は、明細書とともに、本発明の例となる実施形態を例証し、明細書とともに、本発明の原理を説明する役目を果たす。
図1】本発明のいくつかの例となる実施形態に従って、無線周波数(RF)動作でフィードフォワード漏れを減らすよう構成される、同時の送信及び受信のためのシステムを表す概略図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態に従って、漏れ消去器のアナログ有限インパルス応答フィルタのブロック図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態に従って、アナログFIRフィルタを含む漏れ消去器の動作を例証するブロック図である。
図4】A〜Cは、本発明のいくつかの例となる実施形態に従って、図1のシステムにおけるアナログFIR漏れ消去器の性能特性のグラフ図解である。
図5】本発明のいくつかの例となる実施形態に従って、Mこのアンテナ素子を備え、漏れ消去器を利用するフェーズドアレイアンテナを例証するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の詳細な説明において、本発明の単なる特定の例となる実施形態は、実例として、図示及び記載されている。当業者に明らかなように、本発明は、多種多様な形態において具現されてよく、ここで説明されている実施形態に限られると解釈されるべきではない。夫々の例となる実施形態による特徴又は態様の説明は、通常は、他の例となる実施形態における他の同様の特徴又は態様に適用可能であると考えられるべきである。同じ参照符号は、本明細書の全体を通して同じ要素を示す。
【0026】
本発明の実施形態の態様は、無線周波数(RF)信号の同時の送信及び受信のためのシステム(以降、TX/RXシステム)における離散時間アナログ信号処理を対象とする。TX/RXシステムは、TX/RXシステムの受信経路におけるフィードフォワード信号及びノイズの広帯域抑制が可能なチップスケールの、プログラム可能な、離散時間アナログ漏れ消去器(以降、“漏れ消去器”と呼ばれる。)を含む。受信器内で中間周波数でではなく動作送信周波数で、又はシステム受信器の低ノイズ増幅器(low noise amplifier)(LNA)で高電力送信信号のデジタル化されたバージョンで抑制することは、アレイが送信しているときでさえ、受信器LNAが常に線形モードのままであることを可能にする。
【0027】
本発明の実施形態の態様は、TX/RXシステムにおけるフィードフォワード相殺のためにタップ付き遅延線となるよう有限インパルス応答(FIR)フィルタに配置される、多相離散時間サンプルを使用する消去器を対象とする。いくつかの実施形態において、FIRタップ間隔は時間サンプルレートによって設定される。それはまた、相殺が作動する帯域幅のナイキスト(Nyquist)レートを時間サンプルレートが上回る必要があるので、達成可能な相殺を設定する。クロックド離散時間サンプルを使用することは、FIRフィルタがタップ間で長い遅延を有することを可能にする。これは、関連技術の物理的なタップ付き遅延線により達成されるものよりも長くなり得る。更には、固定数のタップ間のより長い遅延は、干渉信号の到来が許される時間の長さを増やす。これは、送信信号のより多くの散乱がTX/RXシステムの受信経路からキャンセルされ得ることを意味する。本発明の実施形態に従うFIRフィルタは、漏れ消去器がX及びKu周波数帯域までのアンテナラティスに収まることを可能にするオンチップのパッケージングを可能にする。
【0028】
図1は、本発明のいくつかの例となる実施形態に従って、フィードフォワード漏れを減らすよう構成される、同時の送信及び受信のためのシステム(TX/RXシステム)100を表す概略図である。
【0029】
図1を参照すると、送信信号発生器102はRF送信信号を生成する。送信信号発生器102は、入力データ信号に基づく、送信されるべきである無線周波数(RF)信号を供給する励振器を含んでよい。送信信号発生器102は、RF信号の位相角度及び振幅を夫々調整する可変位相シフタ及び可変減衰コントローラを更に含んでよい。それらは、TX/RXシステムを、例えば、フェーズドアレイとして、動作させるために利用されてよい。よって、送信信号発生器102は、例えば、TX/RXシステム100がフェーズドアレイにおける要素として利用される場合に、RF送信信号を生成してビームステアリングする。
【0030】
第1カプラ104は、RF送信信号の一部分(例えば、90%)を送信(例えば、ワイヤレス送信)のためにアパーチャ106へ供給する。アパーチャ106は、サーキュレータ107及びアンテナ素子108(フェーズアレイアンテナの部分であってよい。)を含んでよい。アンテナ素子108は、RF送信信号に対応する無線波を放射し、RF受信信号に対応する無線波をインターセプトする。サーキュレータ107は、第1ポートTXOUTにあるRF送信信号をアンテナ素子108へ転送し、アンテナ素子108からのRF受信信号を第2ポートRXINへ転送する。いくつかの例では、RF信号の送信及び受信は同時に起こってよく、あるいは、送信及び受信は時間及び/又は周波数において分離される。いくつかの実施形態において、RF送信信号及びRF受信信号の夫々は、約300MHzから18GHzの周波数範囲にあってよい(例えば、周波数スペクトルのUHF帯、L帯、S帯、X帯、及び/又はKu帯を占有する。)。
【0031】
第1カプラ104はまた、RF送信信号の一部分(例えば、約10%)を漏れ消去器110へ供給する。漏れ消去器110は、RF送信信号のその部分と、係数計算器112から受け取られた多数の有限インパルス応答(FIR)係数とに基づき、時間遅延された、振幅及び/又は位相変調された信号である漏れ相殺信号(例えば、フィードフォワード相殺信号)を生成するよう構成される。結合器114でRF受信信号と結合される場合に、相殺信号は、RF受信信号に含まれるフィードフォワード漏れを相殺又は実質的に低減し、そのようにして、漏れを低減されたRF受信信号を生成する。このことは、システムの送信と受信との分離を強める。
【0032】
フィードフォワード相殺信号は、例えば、サーキュレータ107を通って誤った方向において進んで受信経路に(例えば、トランシーバ106の第2ポートRXINを通って)挿入されるRF送信信号のエネルギの一部を含む多数の漏出源によって影響を及ぼされ得る。RF送信信号のエネルギの一部は、アンテナ素子から反射され、受信経路を通って戻り(例えば、跳ね返り)、そして、エネルギ漏れは、フェーズアレイアンテナ(例えば、アクティブ電子走査アレイ)の隣接するアンテナ素子間の相互結合から起こる。
【0033】
いくつかの実施形態に従って、漏れ消去器110は、実際に、RF送信信号のコピーを反転させ、それを適切に遅延させて受信経路における漏れと時間的に整列させ、そして、それをTX/RXシステム100の受信経路に挿入して、アパーチャ106で受信経路に漏れ出たフィードフォワード漏れを相殺又は実質的に低減する。
【0034】
漏れ消去器110の動作の結果として、受信信号発生器116の入力部にある低雑音増幅器は、TX/RXシステム100がRF送信信号を送信しているときでさえ、線形モードで動作することができ、よって、受信信号発生器116によって取り出された出力RF信号内のひずみを大いに減らし、且つ、その信号対雑音比を改善する。
【0035】
係数計算器112は、RF送信信号の部分(例えば、第1カプラ104及び第2カプラ118から受信された部分)、アナログ漏れ相殺信号、漏れを低減されたRF受信信号、及び出力RF信号を、例えば、第2カプラ118、第3カプラ120、及び第4カプラ122を介してサンプリングし、それらの信号に基づき、最小平均二乗アルゴリズム又は再帰的最小平方アルゴリズムのような、周波数又は時間のいずれかの領域における適応フィルタアルゴリズムを用いて、RF係数を生成する。
【0036】
いくつかの例では、第1、第2、第3、及び第4カプラ104、108、120、及び122の夫々は、各々の入力信号の約10%を分割してよいが、本発明の実施形態はそれに限られない。すなわち、第1乃至第4カプラの夫々は、分割された信号が更なる増幅(更なるノイズ及び信号ひずみを導入しうる。)なしで漏れ消去器110及び係数計算器112の各々の1つによって利用され得るほど十分な、それらの各々の入力信号の部分のみを分割してよい。
【0037】
いくつかの実施形態に従って、漏れ消去器110は、TX/RXシステム100の受信経路に存在する漏れをフィルタ処理(例えば、相殺)するチップスケールの、広帯域幅の、プログラム可能な、離散時間アナログ有限インパルス応答(FIR)フィルタ(以降、FアナログFIR漏れ消去器と呼ばれる。)を含む。
【0038】
図2は、本発明のいくつかの実施形態に従って、プログラム可能な離散時間アナログFIR漏れ消去器200のチップスケール回路の機能ブロック図である。
【0039】
図示されるように、アナログFIR漏れ消去器200は、N個のタップ(Nは1よりも大きい整数である。)を備え、入力電圧信号(例えば、図1の第1カプラ104及び第2カプラ118から受信されたRF送信信号の部分)を一定期間サンプリング及びホールドする複数のサンプル及びホールド(sample and hold)(S/H)回路SH〜SNと、S/H回路SH〜SNによってサンプリングされた各々の電圧を増幅された電流信号へ変換する複数のプログラム可能なアナログ乗算器ML〜MLと、適切な乗率(例えば、バイナリ乗率/係数A〜A)をアナログ乗算器ML〜MLへ供給する複数の係数レジスタREG〜REGとを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、S/H回路SH〜SHのサンプル及びホールド動作のタイミングは、タイミングコントローラ(又はクロック信号発生器)によって制御されてよい。それは、S/H回路SH〜SHのうちのただ1つがいつでも入力電圧信号VINをサンプリングするように、複数の互い違いにされた制御(又はイネーブル/クロック)信号(例えば、時間において遅延/シフトされているイネーブル/クロック信号)を生成する。よって、S/H回路SH〜SHによってアナログ乗算器ML〜MLのうちの連続するものへ供給されるサンプリングされた電圧信号は、1サンプリング周期(例えば、サンプリング周波数の逆数)によって時間において遅延される。更には、S/H回路SHが入力電圧信号VINをサンプリングするとき、サンプリングされた電圧信号は、N個のクロック周期の期間S/H回路SHの出力部で保持され、その後に、S/H回路ユニットSHkは入力電圧信号VINを再サンプリングする。いくつかの例では、入力電圧信号VINは、連続時間アナログ信号であってよく、あるいは、離散時間アナログ信号(例えば、図3を参照して以下で記載される、サンプリングされた連続時間信号)であってよい。アナログFIR漏れ消去器200は、関連する技術の信号ひずみよりも小さい信号ひずみを示す。更には、アナログ乗算器ML〜MLは(電圧信号よりむしろ)電流信号を出力するので、それらの出力は、アナログ乗算器ML〜MLの出力ポートを一緒に接続することによって、簡単に足し合わされ得る。
【0041】
アナログFIRフィルタはプログラム可能である。いくつかの実施形態に従って、複数の係数レジスタ(例えば、係数ルックアップテーブル)REG〜REGの夫々は、係数計算器112によって計算された複数の係数を格納する。それらは、出力信号IOUT(例えば、アナログ漏れ相殺信号)を生成するようアナログ乗算器ML〜MLによって適用される乗率を表す。いくつかの例では、係数レジスタREG〜REGの夫々は、同じN個の係数(例えば、較正されていない係数)M〜Mを格納するが、係数は互い違いにされてよい。すなわち、係数M(iは1からNまでの整数である。)は、REG内の第1メモリ位置、REGi+1内の第2メモリ位置、等を占有してよい。同様に、係数Mi+1は、REG内の第2メモリ位置、REGi+1内の第3メモリ位置、等を占有してよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、係数レジスタの夫々は回転シフトレジスタとして実装されてよい。それにおいて、係数は、夫々のサンプル時点でシフトレジスタメモリ位置を通って、すなわち、残り全ての入力を次の位置へシフトしながら、最終入力を最初のポジションへ動かすことによって、又は反対の動作を行うことによって、回転(例えば、巡回的に回転)される。係数の巡回シフトは、S/H回路SH〜SHと同期して起こってよい。いくつかの例では、係数レジスタREG〜REGの夫々は、タイミングコントローラ202によって制御されてよい。係数レジスタREG〜REGの夫々で最初のメモリ位置を占有する係数は、乗率(例えば、A〜Aのうちの1つ)としてアナログ乗算器ML〜MLの各々1つへ適用されてよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、アナログ乗算器ML〜MLの全ての出力は、

Iout=Σk=0 to NAk×VIN(n−k)=M1×VIN(n)+M2×VIN(n−1)・・・+MN×VIN(n−N+1) (式1)

と表される単出力電流信号IOUT(例えば、アナログ漏れ相殺信号)を生成するよう足し合わされてよい(例えば、対応する出力が物理的に及び/又は電気的につなぎ合わされてよい。)上記の式において、VIN(n)、VIN(n−1)、及びVIN(n−N+1)は、連続的なサンプル時点t乃至tでのサンプリングされた入力電圧を夫々表す。
【0044】
アナログ乗算器ML〜MLの夫々の出力は電流であるから、式1の加算動作は、各々の出力(例えば、出力配線)を接続することによって達成され得る。よって、アナログFIR漏れ消去器200での加算は、本質的に線形な動作である。これは、本質的に非線形である、電圧加算器を利用する関連する技術のFIRフィルタに対して、性能を大いに改善する。
【0045】
タップの数(N)と、係数レジスタREG〜REGによって格納/生成される、アナログFIR漏れ消去器200のタップに適用される係数とは、アナログFIR漏れ消去器200のタップ付き遅延線出力プロファイル(例えば、中心周波数、帯域幅、及び形状)を決定する。更に、係数レジスタREG〜REGの夫々によって格納/生成される係数は、デジタルビットの形をとるということで、アナログFIR漏れ消去器200のタップ付き遅延線プロファイルは、望まれるように(例えば、アナログFIR漏れ消去器200の動作中に)プログラムされてよい(例えば、係数計算器112によって、又はソフトウェア/ハードウェアを通じて再構成される。)。
【0046】
いくつかの例では、係数M〜Mの夫々は10ビットの数であってよいが、本発明の実施形態はそれに限られず、係数M〜Mは如何なる適切な数のビットも有してよい。
【0047】
いくつかの実施形態に従って、係数M〜Mは、負荷コントローラ204によって複数の係数レジスタREG〜REGにロードされてよい。負荷コントローラ204は、係数計算器112から入力DATA(例えば、FIR係数)を受け取る。負荷コントローラ204はまた、アナログFIR漏れ消去器200の係数レジスタREG〜REGをいつ再プログラムすべきかを示すイネーブル信号ENを係数計算器112から受信してよい。いくつかの例では、タイミングコントローラ202及び負荷コントローラ204は同じクロック信号CLK(例えば、約3.25GHzで発振する。)を受信してよいが、本発明の実施形態はそれに限られず、タイミングコントローラ202及び負荷コントローラ204は、如何なる適切な周波数でも発振する異なるクロック信号を受信してよい。いくつかの例では、係数は、FIRフィルタの時間の長さに応じて約10MHzから約4GHzまでの周波数でクロック制御されてよい。FIRフィルタの時間の長さは、相殺される必要がある信号の長さによって決定される。
【0048】
いくつかの実施形態において、アナログFIR漏れ消去器200は、単入力2出力(S2D)変換器206を含む。S2D変換器206は、入力電圧信号VIN図1の第1カプラ104及び第2カプラ108から受信されるRF送信信号の部分)を受信し、入力電圧信号を平衡差動信号へ、その信号を複数のSH回路SH〜SHへ供給する前に、変換する。複数のアナログ乗算器ML〜MLは差動信号モードで動作すると言うことで、いくつかの実施形態において、アナログFIR漏れ消去器200は2入力単出力(D2S)変換器208を更に含む。D2S変換器208は、複数のアナログ乗算器ML〜MLの平衡差動出力電流信号IOUTを不平衡非差動ノイズ相殺信号へ変換する。他の実施形態では、S2D変換器206及びD2S変換器208は、アナログFIR漏れ消去器200の外部にあってよい。
【0049】
いくつかの例では、アナログFIR漏れ消去器200は16タップフィルタ(ここで、N=16)であってよいが、本発明の実施形態はそれに限られず、如何なる適切な数のタップも利用されてよい。
【0050】
プログラム可能なアナログFIRフィルタのより完全な記載は、“Discrete Time Current Multiplier Circuit”と題されて2015年9月9日付けで出願された共同所有の係属中の米国特許出願第14/849529号において、及び“Discrete Time Polyphase Channelizer”と題されて2015年9月9日付けで出願された共同所有の係属中の米国特許出願第14/849524号において与えられている。
【0051】
図3は、本発明のいくつかの実施形態に従って、アナログFIR漏れ消去器200を含む漏れ消去器110−1の動作を説明するブロック図300である。
【0052】
図3を参照すると、漏れ消去器110−1は、アナログFIR漏れ消去器200の入力部でトラック及びホールド(track and hold)(T/H)回路(例えば、広帯域完全差動T/H回路)302を含む。T/H回路302は、アナログFIR漏れ消去器200の入力帯域幅及び高周波線形性を拡張するために利用されてよい。よって、T/H回路は入力信号(すなわち、RF送信信号)のナイキストレートで動作し、一方、(Nタップ)アナログFIR漏れ消去器200のS/H回路SH〜SHの夫々は、ナイキストレートのN分の1(1/N)で動作することができ、そして、T/H回路302を使用しないときと比べて、アナログFIR漏れ消去器200におけるS/H回路のためのセトリング時間要件を有意に緩和し得る。結果として、T/H回路302は、アナログFIR漏れ消去器200の設計を簡素化し、漏れ消去器110−1がより高い帯域幅で動作することを可能にする。単一T/H回路302は、関心のある周波数帯域まで(例えば、最高でKu帯域までであってよい。)非常に高い線形性を有し得る。そのようなものとして、T/H回路302に含まれるトランジスタは、窒化ガリウム若しくはリン化インジウム、又は他の適切な物質のような物質により作られてよい。アナログFIR漏れ消去器200における複数のS/H回路は、他方で、CMOS又はSiGeのような商業的シリコンプロセスにおいて作られてよい。いくつかの例において、アナログFIR漏れ消去器200のタップの数Nは16であってよく、よって、夫々のS/H回路はナイキストレートの16分の1(1/16)で動作し得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、クロック発生器303によって生成されるクロック信号は、クロック分配回路網304へ分配される。クロック分配回路網304は、T/H回路302とアナログFIR漏れ消去器200との間でクロック信号のエネルギを分ける電力スプリッタ306と、アナログFIR漏れ消去器200を駆動するクロック信号の時間アライメントを実行する減衰器308及び位相シフタ310とを含む。いくつかの例において、クロック分配回路網304は、差動クロック信号をT/H回路302及びアナログFIR漏れ消去器200へ供給する。
【0054】
いくつかの例において、S2D変換器206及びD2S変換器208が、シングルエンドRF送信信号に対する差動動作を可能にするよう、夫々、T/H回路302の入力部及びアナログFIR漏れ消去器200の出力部へ結合される。
【0055】
結合器114は、アナログFIR漏れ消去器200によって出力される漏れ相殺信号と、入力信号VIN(すなわち、RF送信信号)に対する漏れブロック312の動作によって概念的に表されている受信経路における漏れとを破壊的に足し合わせる。
【0056】
いくつかの例において、漏れ消去器110−1は、アナログFIR漏れ消去器200によって受信された信号にフィルタをかけるためにその入力部でバンドパスフィルタを更に含んでよい。バンドパスフィルタは、信号エイリアス並びに他の不要な信号及び刺激(spurs)を拒絶するために使用されてよい。漏れ消去器110−1は、離散時間漏れ相殺信号を連続時間信号へと平滑化するようその出力部でアナログフィルタを更に含んでよい。
【0057】
図4A〜4Cは、FIRフィルタとして動作する本発明の例となる実施形態に従って、TX/RXシステム100におけるアナログFIR漏れ消去器200の性能特性のグラフ図解である。
【0058】
図4Aは、16タップ・アナログFIR漏れ消去器200の周波数応答400を表すダイアグラムであり、図4Bは、図4AのアナログFIR漏れ消去器200の16個のタップへ適用される係数のアナログ値を表す曲線402を示す。図4Bに表されている係数値に基づきアナログFIR漏れ消去器200の出力から示されるこの帯域阻止フィルタ応答は、それだけでアナログFIR漏れ消去器200のFIR出力の一例である。アナログ消去器として使用される場合に、アナログFIR漏れ消去器200の出力は、結合器114で測定される漏れの応答に一致する。
【0059】
図4Cは、本発明のいくつかの実施形態に従って、漏れ消去器110(又は110−1)の動作の有り無し両方でTX/RXシステム100の受信経路における漏れのスペクトルの比較を表す。図4Cを参照すると、曲線404は、漏れ消去器がないときのTX/RXシステム100の受信経路における漏れの周波数スペクトルを表し、曲線406は、漏れ消去器110(又は110−1)があるときに受信経路に残っている漏れの周波数スペクトルを表す。図4Cに示されるように、いくつかの例において、漏れ消去器110(110−1)は、約30dBから約60dBだけTX/RXシステム100の受信経路における漏れを低減し得る。RFでのこの程度のアナログ相殺は、受信器LNAを飽和から線形モードでの動作に戻す。これは、例えば、最高で約60dBまでの、更なる相殺が、信号をデジタル化し、デジタル化された受信信号から漏れ信号を更に除去するためにデジタル処理技術を使用することによって、デジタルで実装されることを可能にする。
【0060】
図5は、本発明のいくつかの例となる実施形態に従って、M(1よりも大きい整数)個のアンテナ素子を備え、漏れ消去器110/110−1を利用するフェーズドアレイアンテナ500を表すブロック図である。
【0061】
図5を参照すると、フェーズドアレイアンテナ500の各アンテナ素子108は、隣接するアンテナ素子108間の間隔に収まる対応するTX/RXシステム100を具備する。例えば、約2〜18GHzの周波数で動作するとき、TX/RXシステム100は、約1cmの面積に収まるようパッケージ化されてよい。アンテナ要素ごとにチップスケールのアナログ相殺(アンテナ素子ごとの高い電力伝送信号漏れに起因して受信器LNAが飽和することを阻止し得る。)を備えたTX/RXシステム100のスモールフォームファクタは、サンプルクロックレートによりタップ間の遅延を生成するチップスケールの遅延回路によって、部分的に可能にされる。これは、隣接するタップ間の必要な遅延を達成するために長い遅延線(例えば、同軸ケーブル)を使用する従来のタップ付き遅延線消去器とは対照的である。例えば、連続するタップ間の遅延は、およそ数ナノ秒であって、およそメートル長さでありうる遅延線(例えば、同軸ケーブル)を使用することに変わる。斯様な遅延線によって占有される空間は、従来のタップ付き遅延線消去器を法外に大きくし、それが、本発明のいくつかの実施形態に従うTX/RXシステム100により容易に可能であるように、フェーズドアレイでの使用に必要とされる単一チップフォームファクタにおいてパッケージされることを妨げる。
【0062】
更には、TX/RXシステム100のアナログFIR漏れ消去器200は、複素乗算器及び回転係数を利用するので、本発明のいくつかの実施形態に従う漏れ消去器110(又は110−1)は、そのタップの夫々で損失のある減衰器及び位相シフタ又はベクトル変調器を利用する従来のタップ付き遅延線消去器よりも、受信信号に加えられる追加ノイズがより低く且つ帯域幅が有意により高いことを達成可能である。従来の損失のあるタップ付き遅延線は、タップ付き遅延線のチェーンにおいて増幅を必要とする。この増幅は、結合器114で漏れとともに加えられる場合に受信信号に加えられる相殺信号にノイズを加える。アナログFIR漏れ消去器200は、いくつかの例において、回路の前で、残りの回路のために雑音指数を設定する単一のT/H回路を使用する。この単一のT/H回路は、従来のタップ付き遅延線により実装される同じシステムに対して、アナログ漏れ消去器を組み込まれた受信器システムの全体のノイズ指数を改善するように、追加のノイズを回路にほとんど加えないよう設計され得る。
【0063】
1つ以上の例となる実施形態が図面を参照して記載されてきたが、当業者には当然ながら、形態及び詳細における様々な適切な変更が、続く特許請求の範囲及びその均等によって定義される発明概念の精神及び適用範囲から逸脱することなしに、それらの実施形態に対して行われてよい。
【0064】
語“第1(first)”、“第2(second)”、“第3(third)”等が、様々な要素又はコンポーネントを記載するためにここで使用されることがあるが、それらの要素又はコンポーネントは、それらの語によって制限されるべきではないことが理解されるだろう。それらの語は、1つの要素又はコンポーネントを他の要素又はコンポーネントと区別するために使用される。よって、上述された第1の要素又はコンポーネントは、発明概念の精神及び適用範囲から逸脱することなしに、第2の要素又はコンポーネントと称されてよい。
【0065】
ここで使用される用語は、特定の実施形態を記載することを目的とし、発明概念の限定であるよう意図されない。ここで使用されるように、単称形“1つの(a及びan)”は、文脈が特段明示しない限りは、複数の形も含むよう意図される。語“含む(include)”、“含む(including)”、“有する(comprises)”、及び/又は“有する(comprising)”は、本明細書で使用される場合に、述べられている特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を除外しない。ここで使用されるように、語“及び/又は(and/or)”は、関連するリストアップされた項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。更に、発明概念の実施形態を記載するときの“〜してよい(may)”の使用は、“発明概念の1つ以上の実施形態”に言及する。また、語“例となる(exemplary)”は、例又は実例に言及するよう意図される。
【0066】
要素又はコンポーネントが他の要素又はコンポーネント“へ接続される(connected to)”又は“へ結合される(coupled to)”と呼ばれるときに、それは他の要素又はコンポーネントへ直接に接続又は結合され得るか、あるいは、1つ以上の介在する要素又はコンポーネントが存在してよいことが理解されるだろう。要素又はレイヤが他の要素又はコンポーネント“に直接ある”、“へ直接接続される”、又は“へ直接結合される”と呼ばれるときに、介在する要素又はコンポーネントは存在しない。
【0067】
ここで使用されるように、“実質的に(substantially)”、“約(about)”及び同様の語は、程度の語としてではなく近似の語として使用され、当業者によって認識される計測又は計算された値における固有の変動を考慮に入れるよう意図される。
【0068】
ここで使用されるように、語“使用する(use)”、“使用して(using)”、及び“使用される(used)”は、語“利用する(utilize)”、“利用して(utilizing)”、及び“利用される(utilized)”と夫々同義とみなされてよい。
【0069】
ここで記載される本発明の実施形態に従う係数計算器112及びアナログFIR漏れ消去器200、並びに/又は何らかの他の関連する装置若しくはコンポーネント(以降集合的に“プロセッシング装置”と呼ばれる。)は、如何なる適切なハードウェア、ファームウェア(例えば、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、及び/又は同様のもの)、ソフトウェア、又はソフトウェア、ファームウェア、及びハードウェアの適切な組み合わせを用いても実装されてよい。例えば、プロセッシング装置の夫々の様々なコンポーネントは、1つの集積回路(integrated circuit)(IC)チップにおいて又は別個のICチップにおいて形成されてよい。更に、プロセッシング装置の夫々の様々なコンポーネントは、フレキシブルな印刷回路フィルム、テープキャリアパッケージ(tape carrier package)(TCP)、印刷回路基板(printed circuit board)(PCB)において実装されるか、あるいは、同じ基板上に形成されてよい。更に、プロセッシング装置の夫々の様々なコンポーネントは、ここで記載される様々な機能性を実行する他のシステムコンポーネントと相互に作用し且つコンピュータプログラム命令を実行する1つ以上のコンピュータ装置において1つ以上のプロセッサで実行されるプロセス若しくはスレッドであってよい。また、当業者に当然ながら、様々なプロセッシング装置の機能性は、単一のプロセッシング装置にまとめられるか又は一体化されてよく、あるいは、特定のコンピュータ装置の機能性は、本発明の例となる実施形態の適用範囲から逸脱することなしに、1つ以上の他のプロセッシング装置にわたって分配されてよい。
【0070】
[合衆国政府の助成による研究又は開発に関する陳述]
本発明は、契約番号HR0011−14−C−0002の下で合衆国政府の支援により行われたものである。合衆国政府は、本発明について一定の権利を有している。
図1
図2
図3
図4
図5