特許第6616058号(P6616058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616058
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】端子及び該端子のアルミ電線接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/62 20060101AFI20191125BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20191125BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20191125BHJP
   H01R 11/12 20060101ALI20191125BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H01R4/62 A
   H01R4/02 C
   H01R4/34
   H01R11/12 D
   H01R13/03 D
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-13136(P2014-13136)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-141784(P2015-141784A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年5月20日
【審判番号】不服2017-17933(P2017-17933/J1)
【審判請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大庭 卓也
【合議体】
【審判長】 平田 信勝
【審判官】 大町 真義
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−165618(JP,A)
【文献】 特開2009−277674(JP,A)
【文献】 特開2000−150039(JP,A)
【文献】 特開2004−6070(JP,A)
【文献】 特公昭58−3349(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/62
H01R 4/02
H01R 4/34
H01R 11/12
H01R 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム系金属からなるアルミ芯線を備えた電線に接続するボルト締め端子であって、
銅系金属材からなり、ボルト穴を設けた電気接触部に連続して、前記アルミ芯線を溶接して電気接続する電線接続部を備え、
前記電気接触部および電線接続部の表面を基材である銅系金属とは異なる第1金属でメッキして被覆すると共に、前記電気接触部のみ前記第1金属の表面を前記第1金属とも前記基材の銅系金属とも異なる第2金属でメッキして被覆して、前記電気接触部と電線接続部の表面層にメッキした金属を相違させ、
異なる金属からなる前記第1金属と第2金属とは、水素電位を標準として−側電位でイオン化傾向が大きなアルミニウムと前記水素との間の金属から選択され、かつ、第1金属より第2金属は−電位が小さくイオン化傾向が小さい金属としていることを特徴とする端子。
【請求項2】
前記第1金属は、Zn、Cr,Fe,Niから選択され、前記第2金属はCr,Fe,Ni,Snから選択される請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記アルミ芯線と接触する電線接続部の表面層はニッケルメッキの被覆層であり、錫メッキを施したボルトと接触する電気接触部の表面層は錫メッキの被覆層である請求項1または請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記電気接触部にボルト穴を有するボルト締め端子であり、アルミ芯線と接続する前記電線接続部は、前記電気接触部の基板に連続する電線接続部の基板表面を芯線溶接部とし、該芯線溶接部の後端に前記電線の絶縁被覆に加締め固着する絶縁被覆バレルを設けている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の端子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の端子を車両に配線するアルミ芯線を備えたアルミ電線と接続しており、
該アルミ電線は、アルミ芯線の断面積が8mm以上の太物電線で、前記電線接続部に超音波溶接で溶接されている端子のアルミ電線接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は端子および該端子のアルミ電線接続構造に関し、特に、銅系金属板を加工して形成する端子にアルミニウム系金属からなる芯線を備えたアルミ電線を接続すると共に、相手方導電材にボルト締め結合する端子として好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に配線する電線として、汎用されている銅電線に代えて、軽量と低コストの利点があるアルミ電線が用いられる傾向がある。アルミ電線はアルミニウム系金属からなる素線を撚って芯線を設け、該芯線を絶縁樹脂からなる絶縁被覆で被覆している。
一方、導電金属材からなるバスバー、端子、アース接続用の車体パネル等に電気接続するために、前記電線に端子を接続している。該端子は導電性が良く電気接続信頼性が高い点より銅系金属で形成されている。
【0003】
よって、アルミ電線のアルミニウム系金属からなる芯線(以下、アルミ芯線と称す)は銅系金属からなる端子と接触して接続される。しかしながら、アルミ芯線と銅系端子とを接触させると、Al−Cuの異種金属の接触となる。この異種金属の接触により腐食が発生しやすく、特に、異種金属接触部に融雪剤、バッテリの電解液、雨水、洗浄水がかかると、腐食が進行しやすくなる。
【0004】
前記問題に対して、特開2013−20862号公報に図7に示すアルミ電線用端子100が提供されている。該端子100は銅系金属からなる端子の表面をアルミニウム層で被覆し、アルミ電線のアルミ芯線に端子100の芯線バレル101を加締め圧着してアルミ電線と端子100とを接触させた際に、同種金属の接触として腐食発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−20862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記図7に示す特許文献1の圧着端子100は、電気接触部102が相手方端子と雌雄嵌合する端子(図7ではメス端子)の場合、相手方端子もアルミニウム層でメッキしている端子であれば同種金属同士の嵌合であるため腐食が発生する恐れはない。
しかしながら、アルミ電線と接続するためにアルミニウム層を設けた端子が、図8に示すように、電気接触部151にボルト穴152を備え、ボルト160を通して相手方導電材165にボルト160とナット(図示せず)で締結するボルト締め端子150とする場合がある。その場合、ボルト160が銅系金属、または銅系金属の表面に錫メッキがされているため、ボルト表面の銅または錫と端子150のアルミニウム層とが接触し、異種金属の接触となり、ボルトと端子の接触面に腐食が発生しやすくなる問題がある。
【0007】
さらに、アルミ電線の芯線断面積が8mm以上の太物アルミ電線の場合、アルミ芯線と端子との電気接続信頼性を高めると共に浸水防止を確実に図るために、アルミ芯線と端子とが超音波溶接で接続される。この場合、アルミ芯線と端子の接触面がいずれもアルミニウムであると、アルミニウムは融点が高いため超音波溶接で溶着しにくい問題がある。
なお、超音波溶接に変えて、抵抗溶接をすると絶縁被覆に熱劣化が発生する恐れがある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、アルミ電線と接続されるボルト締め端子において、アルミ電線のアルミ芯線と端子との異種金属接触およびボルトと端子の異種金属接触の両方を防止して、腐食が発生しにくい端子を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、アルミニウム系金属からなるアルミ芯線を備えた電線に接続するボルト締め端子であって、
銅系金属材からなり、ボルト穴を設けた電気接触部に連続して、前記アルミ芯線を溶接して電気接続する電線接続部を備え、
前記電気接触部および電線接続部の表面を基材である銅系金属とは異なる第1金属でメッキして被覆すると共に、前記電気接触部のみ前記第1金属の表面を前記第1金属とも前記基材の銅系金属とも異なる第2金属でメッキして被覆して、前記電気接触部と電線接続部の表面層にメッキした金属を相違させ、
異なる金属からなる前記第1金属と第2金属とは、水素電位を標準として−側電位でイオン化傾向が大きなアルミニウムと前記水素との間の金属から選択され、かつ、第1金属より第2金属は−電位が小さくイオン化傾向が小さい金属としていることを特徴とする端子を提供している。
【0010】
前記第1金属は、Zn、Cr,Fe,Niから選択され、前記第2金属はCr,Fe,Ni,Snから選択される。
前記第1金属および第2金属は選択される金属を主成分とする合金でもよい。主成分とは全質量の50質量%を越える割合が含まれている成分を指す。
【0011】
金属の電位とイオン化傾向の関係は、電位が「−側電位→0→+側電位」になるに従ってイオン化傾向は小さくなる。アルミニウムの電位は−1.662V、ニッケルの電位は0.257V、錫の電位は0.138V、水素電位が0V、銅の電位は+0.342Vである。
異種金属接触部の腐食は電位差が大きい場合に発生しやすいため、腐食発生防止の観点から、互いに接触する金属は電位が小さくなる金属が選択される。
【0012】
端子の電線接続部はアルミ芯線と接触し、電気接触部は銅系金属からなるボルトと接触し、アルミニウムと銅との電位差は大きいため、電線接続部と電気接触部を同じ金属でメッキすると、アルミ電線とボルトのいずれか一方との電位差が大きくなり、電位差が大きくなった側に腐食が発生しやすくなる。
よって、本発明では、前記のように、アルミ芯線と接触する電線接続部にメッキして被覆する第1金属はアルミニウムとの電位が小さくなるイオン化傾向が比較的大きい金属としている。ボルトと接触する端子の電気接触部には前記第1金属メッキの表面に第2金属を重ねてメッキして被覆しており、該第2金属を前記第1金属と相違させ、該第2金属はボルトの銅に近いイオン化傾向が小さい金属とし、第1金属よりイオン化傾向が小さい金属としている。
【0013】
具体的には、前記アルミ芯線と接触する電線接続部および電気接触部はニッケルメッキ(以下、ニッケル合金メッキを含む)をして被覆し、錫メッキ(以下、錫合金メッキを含む)を施した前記ボルトと接触する電気接触部は前記ニッケルメッキの表面に錫メッキして被覆することが好ましい。
このように、ニッケルメッキを端子全体に施して下地メッキを行い、ついで、電気接触部錫メッキで上地メッキを行い、電線接続部はニッケル被覆層、ボルト締め電気接触部は錫被覆層で被覆することが好ましい。
【0014】
銅系金属からなるボルトは、銅系金属からなる端子と同種金属であるため、メッキをしない状態の方が接触部に腐食を発生させない点で好ましいが、ボルトの酸化防止のため通常メッキされており、該メッキは銅系端子との電位差が小さくなる錫メッキがされている。よって、錫メッキがされているボルトが接触する端子の電気接触部は錫メッキとして同種金属の接触とすることが好ましい。
【0015】
なお、端子の全体を錫メッキとして、アルミ芯線と接触する電線接続部も錫メッキすると、アルミ芯線と端子との溶接時に溶解温度が232℃の錫は溶けてしまうため、アルミ芯線の酸化膜を破壊できない。このように、アルミ芯線の酸化膜破壊しないと、端子との電気接続が十分になされない問題がある。よって、錫メッキをアルミ芯線と溶接する電線接続部のメッキとすることは不適となり、錫と電位差が小さく且つ溶解温度(1453℃)が高いニッケルメッキを電線接続部に施している。
一方、端子全体をニッケルメッキだけとして、錫メッキをしたボルトと接触する電気接触部もニッケルメッキとすると、錫とニッケルとは異種金属接触となるため腐食の可能性があり、よって、前記のように錫メッキとすることが好ましい。
【0016】
本発明の端子は、前記のように、電気接触部にボルト穴を有するボルト締め端子であり、アルミ芯線と接続する前記電線接続部は、前記電気接触部の基板に連続する電線接続部の基板表面を芯線溶接部とし、該芯線溶接部の後端に前記電線の絶縁被覆に加締め固着する絶縁被覆バレルを設けることが好ましい。
なお、電気接触部の芯線溶接部の幅方向の両側に芯線バレルを突設し、アルミ芯線を芯線溶接部に溶接後に芯線バレルを前記絶縁被覆バレルと共に圧着装置で加締め圧着してもよい。
【0017】
さらに、前記芯線溶接部には幅方向全体に延在するリブを前後方向に間隔をあけて2カ所設け、該2カ所のリブ上にアルミ芯線の素線を隙間なく溶接してもよい。
【0018】
さらに、本発明は、ボルト締め端子を車両に配線するアルミ芯線を備えたアルミ電線と接続しており、
該アルミ電線は、アルミ芯線の断面積が8mm以上の太物電線で、前記電線接続部に超音波溶接で溶接されている端子のアルミ電線接続構造を提供している。
端子と溶接する電線は前記太物電線に限定されず、芯線断面積が8mm未満のアルミ電線もアルミ芯線と端子とを溶接してもよいが、太物電線では端子との電気接続信頼性を高めるために、溶接することが求められている。
【発明の効果】
【0019】
前記のように、本発明にかかるアルミ電線と接続するボルト締め端子は、電線のアルミ芯線と溶接する電線接続部をアルミニウムと電位差の小さいニッケル等の第1金属でメッキして被覆層を設け、銅または錫メッキしたボルトと接触する電気接触部は第1金属による下地メッキの表面を前記銅または錫と電位差が小さい錫等の第2金属でメッキして被覆層を形成している。これにより、異種金属接触で電位差が大きいと発生しやすい腐食の発生を防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の参考実施形態の端子を示す斜視図である。
図2】前記端子の正面図である。
図3】前記端子の変形例を示す正面図である。
図4】前記端子にアルミ電線を接続した平面図である。
図5本発明の実施形態の端子の断面図である。
図6他の参考実施形態の端子の概略断面図である。
図7】従来例の端子の斜視図である。
図8】他の従来例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4参考実施形態の端子を示す。
該端子はボルト締め端子1からなり、図1に示すように、アルミニウム系金属製の素線3sを撚ったアルミ芯線3を絶縁樹脂からなる絶縁被覆4で被覆したアルミ電線2の端末に接続するものである。本参考実施形態の前記アルミ電線2は、アルミ芯線3の断面積が8mm以上の太物電線で、電源線又はアース線として自動車に配線している。
【0022】
ボルト締め端子1は前部に電気接触部5を設けると共に、後部に電線接続部6を設けている。詳しくは、前後方向に延在する基板7の前部を幅広としてボルト穴8を設けた電気接触部5としている。電線接続部6は連続させた基板7の長方形状の平板部からなる芯線溶接部10と、該芯線溶接部10より後方に突出する基板7の幅方向両側から一対の絶縁被覆バレル11を突設した絶縁被覆加締め部12とを備えている。
【0023】
前記形状からなるボルト締め端子1は、銅系金属板(黄銅板)を打ち抜いた後に曲げ加工して形成している。
前記電線接続部6の芯線溶接部10の表面のA領域は、第1金属とするニッケルまたはニッケル合金で銅系金属板にメッキしてニッケル被覆層15(図1中でクロス斜線で示す)を設けている。なお、図3に示すように、電線接続部6の上面、下面および両側面を含めた銅系金属板の外面全体をニッケルメッキしてニッケル被覆層15を設けてもよい。
また、ボルト20が締結される前記電気接触部5の図中B領域は、第2金属とする錫または錫合金で銅系金属板をメッキして錫被覆層16(図1中で一点鎖線で示す)を設けている。なお、図3に示すように、電気接触部5の上面、下面および側面を含めた銅系金属板の外面全体を錫メッキして錫被覆層16を設けてもよい。
【0024】
図4に示すように、前記ボルト締め端子1に対して、アルミ芯線3を絶縁被覆4の皮剥端4sから露出して突出させたアルミ電線2の接続は、アルミ芯線3をボルト締め端子1の電線接続部6の芯線溶接部10上にセットし、皮剥端4sを絶縁被覆バレル11の僅か前方に位置させ、この状態で、アルミ芯線3を芯線溶接部10に超音波溶接で溶接し、溶接後に絶縁被覆バレル11を絶縁被覆4の外周面に加締めて圧着している。
【0025】
前記ボルト締め端子1とアルミ電線2との接続状態において、アルミ芯線3は芯線溶接部10の表面のニッケル被覆層15と接触する。アルミニウムの電位は1.662V、ニッケルの電子は0.257Vで、電位差が小さいため腐食の発生を抑制防止できる。しかも、アルミ芯線3とニッケル被覆層15とは超音波溶接で溶着できる。
【0026】
図1に示すように、アルミ電線2と接続したボルト締め端子1を電源バスバー30等の導電材とボルト20で締結固定している。ボルト20は銅系金属で形成し、腐食防止の観点から表面に錫メッキを施している。
前記錫メッキしたボルト20と接触するボルト締め端子1の電気接触部5は錫被覆層16を設けているため、ボルト20と錫被覆層16との接触部は同種金属の接触となるため、腐食の発生を防止できる。
【0027】
なお、ボルト締め端子1の電線接続部6にメッキする第1金属、電気接触部5にメッキする第2金属は、前記ニッケルと錫に限定されない。
前記第1金属は、Zn、Cr,Fe,Niから選択され、前記第2金属はCr,Fe,Ni,Snから選択され、かつ、第2金属は第1金属として選択された金属より−電位が小さく且つイオン化傾向が小さい金属が選択される。
【0028】
前記第1金属において電位が大きくイオン化傾向が大きい側から−電位が小さくなり且つイオン化傾向が小さい側への順序は、Zn→Cr→Fe→Niである。
同様に、前記第金属において、−電位が大きくイオン化傾向が大きい側から電位が小さくイオン化傾向が小さい側への順序は、Cr→Fe→Ni→Snである。
芯線溶接部10にメッキする第1金属より電接触部5にメッキする第2金属は電位が小さい金属としているため、第1金属としてZnを選択すると、第2金属としてCr、Fe、Ni、Snのいずれでも良いが、銅に錫メッキしたボルト20との接触する電気接触部5は前記実施形態のように錫メッキすることが好ましい。
逆に、電気接触部5にメッキする第2金属を電位が最も低い錫を選択すると、芯線溶接部10にメッキする第1金属は前記Zn、Cr、Fe、Niのいずれの金属でもよく、Niに限定されない。
【0029】
図5に示す本発明の実施形態では、ボルト締め端子12の全体にニッケルメッキ22を下地メッキとして施した後に、電線接続部6を除く電気接触部5に錫メッキ23を上地メッキとして施し、電気接触部5は銅系金属板の表面の下地メッキのニッケルメッキ22の表面に錫メッキ23を上地メッキした錫被覆層16Bを設けている。一方、電線接続部6の芯線溶接部10は下地メッキのニッケルメッキ22が表面層のニッケル被覆層15Bを形成している。他の構成は前記参考実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0030】
基材を銅系金属板とするボルト締め端子の前記第1金属からなるメッキと第2金属からなるメッキは、銅系金属板を打ち抜き加工する前にメッキをしておいても良いし、打ち抜き加工後の屈曲前の展開状態でメッキしてもよく、さらに曲げ加工して製品形状とした後にメッキしてもよい。メッキはメッキ槽に浸漬するドブ浸けメッキ、メッキ液を噴流させてメッキする方法のいずれでも良い。さらに、2色メッキは先メッキ部分をマスキングしてメッキすることが好ましい。
【0031】
図6に他の参考実施形態を示す。
該参考実施形態のボルト締め端子13は、電線接続部6の芯線溶接部10にニッケル被覆層15を設け、電気接触部5に錫被覆層16を設けている構成は前記参考実施形態と同様である。
前記電線接続部6の芯線溶接部10の幅方向の両側から一対の芯線バレル18を突設し、該芯線バレル18のアルミ芯線3と接触する内面にもニッケル被覆層15Cを設けている。この芯線バレル18は超音波溶接後に、絶縁被覆バレル11と一括で加締め圧着している。
【符号の説明】
【0032】
1 ボルト締め端子
2 アルミ電線
3 アルミ芯線
4 絶縁被覆
5 電気接触部
6 電線接続部
7 基板
8 ボルト穴
10 芯線溶接部
11 絶縁被覆バレル
15 ニッケル被覆層
16 錫被覆層
20 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8