【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記
図7に示す特許文献1の圧着端子100は、電気接触部102が相手方端子と雌雄嵌合する端子(
図7ではメス端子)の場合、相手方端子もアルミニウム層でメッキしている端子であれば同種金属同士の嵌合であるため腐食が発生する恐れはない。
しかしながら、アルミ電線と接続するためにアルミニウム層を設けた端子が、
図8に示すように、電気接触部151にボルト穴152を備え、ボルト160を通して相手方導電材165にボルト160とナット(図示せず)で締結するボルト締め端子150とする場合がある。その場合、ボルト160が銅系金属、または銅系金属の表面に錫メッキがされているため、ボルト表面の銅または錫と端子150のアルミニウム層とが接触し、異種金属の接触となり、ボルトと端子の接触面に腐食が発生しやすくなる問題がある。
【0007】
さらに、アルミ電線の芯線断面積が8mm
2以上の太物アルミ電線の場合、アルミ芯線と端子との電気接続信頼性を高めると共に浸水防止を確実に図るために、アルミ芯線と端子とが超音波溶接で接続される。この場合、アルミ芯線と端子の接触面がいずれもアルミニウムであると、アルミニウムは融点が高いため超音波溶接で溶着しにくい問題がある。
なお、超音波溶接に変えて、抵抗溶接をすると絶縁被覆に熱劣化が発生する恐れがある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、アルミ電線と接続されるボルト締め端子において、アルミ電線のアルミ芯線と端子との異種金属接触およびボルトと端子の異種金属接触の両方を防止して、腐食が発生しにくい端子を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、アルミニウム系金属からなるアルミ芯線を備えた電線に接続するボルト締め端子であって、
銅系金属材からなり、ボルト穴を設けた電気接触部に連続して、前記アルミ芯線を溶接して電気接続する電線接続部を備え、
前記電気接触部および電線接続部の表面を
基材である銅系金属とは異なる第1金属でメッキして被覆すると共に、前記電気接触部のみ前記第1金属の表面を
前記第1金属とも前記基材の銅系金属とも異なる第2金属でメッキして被覆して、前記電気接触部と電線接続部の表面層にメッキした金属を相違させ、
異なる金属からなる前記第1金属と第2金属とは、水素電位を標準として−側電位でイオン化傾向が大きなアルミニウムと前記水素との間の金属から選択され、かつ、第1金属より第2金属は−電位が小さくイオン化傾向が小さい金属としていることを特徴とする端子を提供している。
【0010】
前記第1金属は、Zn、Cr,Fe,Niから選択され、前記第2金属はCr,Fe,Ni,Snから選択される。
前記第1金属および第2金属は選択される金属を主成分とする合金でもよい。主成分とは全質量の50質量%を越える割合が含まれている成分を指す。
【0011】
金属の電位とイオン化傾向の関係は、電位が「−側電位→0→+側電位」になるに従ってイオン化傾向は小さくなる。アルミニウムの電位は−1.662V、ニッケルの電位は
−0.257V、錫の電位は
−0.138V、水素電位が0V、銅の電位は+0.342Vである。
異種金属接触部の腐食は電位差が大きい場合に発生しやすいため、腐食発生防止の観点から、互いに接触する金属は電位
差が小さくなる金属が選択される。
【0012】
端子の電線接続部はアルミ芯線と接触し、電気接触部は銅系金属からなるボルトと接触し、アルミニウムと銅との電位差は大きいため、電線接続部と電気接触部を同じ金属でメッキすると、アルミ電線とボルトのいずれか一方との電位差が大きくなり、電位差が大きくなった側に腐食が発生しやすくなる。
よって、本発明では、前記のように、アルミ芯線と接触する電線接続部にメッキして被覆する第1金属はアルミニウムとの電位
差が小さくなるイオン化傾向が比較的大きい金属としている。ボルトと接触する端子の電気接触部には前記第1金属メッキの表面に第2金属を重ねてメッキして被覆しており、該第2金属を前記第1金属と相違させ、該第2金属はボルトの銅に近いイオン化傾向が小さい金属とし、第1金属よりイオン化傾向が小さい金属としている。
【0013】
具体的には、前記アルミ芯線と接触する電線接続部および電気接触部はニッケルメッキ(以下、ニッケル合金メッキを含む)をして被覆し、錫メッキ(以下、錫合金メッキを含む)を施した前記ボルトと接触する電気接触部は
前記ニッケルメッキの表面に錫メッキして被覆することが好ましい。
このように、ニッケルメッキを端子全体に施して下地メッキを行い、ついで、電気接触部
に錫メッキで上地メッキを行い、電線接続部はニッケル被覆層、ボルト締め電気接触部は錫被覆層で被覆
することが好ましい。
【0014】
銅系金属からなるボルトは、銅系金属からなる端子と同種金属であるため、メッキをしない状態の方が接触部に腐食を発生させない点で好ましいが、ボルトの酸化防止のため通常メッキされており、該メッキは銅系端子との電位差が小さくなる錫メッキがされている。よって、錫メッキがされているボルトが接触する端子の電気接触部は錫メッキとして同種金属の接触とすることが好ましい。
【0015】
なお、端子の全体を錫メッキとして、アルミ芯線と接触する
電線接続部も錫メッキすると、アルミ芯線と端子との溶接時に溶解温度が232℃の錫は溶けてしまうため、アルミ芯線の酸化膜を破壊できない。このように、アルミ芯線の酸化膜
を破壊しないと、端子との電気接続が十分になされない問題がある。よって、錫メッキをアルミ芯線と溶接する電線接続部のメッキとすることは不適となり、錫と電位差が小さく且つ溶解温度(1453℃)が高いニッケルメッキを電線接続部に施している。
一方、端子全体をニッケルメッキ
だけとして、錫メッキをしたボルトと接触する電気接触部もニッケルメッキとすると、錫とニッケルとは異種金属接触となるため腐食の可能性があり、よって、前記のように錫メッキとすることが好ましい。
【0016】
本発明の端子は、前記のように、電気接触部にボルト穴を有するボルト締め端子であり、アルミ芯線と接続する前記電線接続部は、前記電気接触部の基板に連続する電線接続部の基板表面を芯線溶接部とし、該芯線溶接部の後端に前記電線の絶縁被覆に加締め固着する絶縁被覆バレルを設けることが好ましい。
なお、電気接触部の芯線溶接部の幅方向の両側に芯線バレルを突設し、アルミ芯線を芯線溶接部に溶接後に芯線バレルを前記絶縁被覆バレルと共に圧着装置で加締め圧着してもよい。
【0017】
さらに、前記芯線溶接部には幅方向全体に延在するリブを前後方向に間隔をあけて2カ所設け、該2カ所のリブ上にアルミ芯線の素線を隙間なく溶接してもよい。
【0018】
さらに、本発明は、ボルト締め端子を車両に配線するアルミ芯線を備えたアルミ電線と接続しており、
該アルミ電線は、アルミ芯線の断面積が8mm
2以上の太物電線で、前記
電線接続部に超音波溶接で溶接されている端子のアルミ電線接続構造を提供している。
端子と溶接する電線は前記太物電線に限定されず、芯線断面積が8mm
2未満のアルミ電線もアルミ芯線と端子とを溶接してもよいが、太物電線では端子との電気接続信頼性を高めるために、溶接することが求められている。