特許第6616077号(P6616077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616077
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】測定装置及び3次元カメラ
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20191125BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20191125BHJP
   G01S 17/89 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   G01C15/00 103D
   G01C3/06 120Q
   G01S17/89
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-27482(P2015-27482)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-151422(P2016-151422A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年11月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】大友 文夫
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−530712(JP,A)
【文献】 米国特許第05249046(US,A)
【文献】 特開2009−109458(JP,A)
【文献】 特開2013−207415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00− 1/14
G01C 5/00−15/14
G01C 3/06
G01S 17/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を発する発光素子と、測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、反射測距光を受光し、受光信号を発生する受光素子と、該受光素子からの受光結果に基づき測距を行う測距部とを具備し、前記測距光の射出光軸上に配設され、測距光の光軸を所要の偏角で、所要の方向に偏向する第1光軸偏向部と、受光光軸上に配設され、前記第1光軸偏向部と同一の偏角、方向で反射測距光を偏向する第2光軸偏向部と、前記第1光軸偏向部による偏角、偏向方向を検出する射出方向検出部とを更に具備し、
前記第1光軸偏向部は材質が光学ガラスであり、前記第2光軸偏向部は材質が光学プラスチック材料でモールド成形したものであって、前記第2光軸偏向部は前記第1光軸偏向部より大径であり、
前記測距光は前記第1光軸偏向部を通して射出され、前記反射測距光は前記第2光軸偏向部を通して前記受光素子に受光される様構成され、前記測距部の測距結果、前記射出方向検出部の検出結果に基づき測定点の3次元データを取得することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測距光射出部は、前記射出光軸を前記受光光軸に合致させる射出光軸偏向部を有し、前記第1光軸偏向部は前記第2光軸偏向部の中央部に設けられ、前記測距光は前記射出光軸偏向部により偏向され、前記第1光軸偏向部を通して射出される請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第1光軸偏向部は、重なり合う一対の円形の第1の光学プリズムで構成され、前記第2光軸偏向部は第1の光学プリズムと重なり合う一対の第2の光学プリズムで構成され、前記第1の光学プリズムのそれぞれは独立して回転可能であり、前記第2の光学プリズムのそれぞれは独立して回転可能であり、前記第1の光学プリズムの一方と前記第2の光学プリズムの一方とが同期して回転する様構成され、前記第1の光学プリズムの他方と前記第2の光学プリズムの他方とが同期して回転する様構成された請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第2光軸偏向部は重なり合う一対の光学プリズムで構成され、各光学プリズムは独立して回転する様構成された請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第2光軸偏向部を構成する光学プリズムは、フレネルプリズムである請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の測定装置。
【請求項6】
演算処理部と、姿勢検出装置を更に具備し、該姿勢検出装置は前記射出光軸の水平に対する傾斜角、傾斜方向を検出可能であり、前記演算処理部は前記姿勢検出装置の検出結果に基づき前記測距部の測定値を補正する様構成された請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の測定装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1つの測定装置と、演算処理部と、前記射出光軸と平行で既知の関係を有する撮像光軸を有する撮像装置とを具備し、前記演算処理部は前記測定装置で取得した測距結果と撮像装置で取得した画像とを関連付けて3次元データ付き画像を取得する様構成されたことを特徴とする3次元カメラ。
【請求項8】
姿勢検出装置を更に具備し、該姿勢検出装置は前記射出光軸の水平に対する傾斜角、傾斜方向を検出可能であり、前記演算処理部は前記姿勢検出装置の検出結果に基づき前記測距部の測定値を補正する様構成された請求項7に記載の3次元カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に点群データを取得可能な測定装置及び画像と共に3次元データ付きの画像を取得可能な3次元カメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
点群データを取得可能な測定装置としてレーザスキャナがあり、該レーザスキャナでは鉛直方向に回転可能な偏向ミラー、水平方向に回転可能な偏向ミラーにより、射出される測距光を鉛直方向、水平方向に走査し、点群データを取得する。
【0003】
斯かるレーザスキャナは、構造が複雑で高価である。又、レーザスキャナと共に画像取得装置を具備し、点群データの取得と共に画像を取得し、3次元データ付きの画像を取得可能とした測定装置がある。然し、斯かる測定装置もやはり構造が複雑で大型であり、高価なものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は斯かる実情に鑑み、点群データを取得可能な簡便で安価な測定装置を提供するものであり、又3次元データ付きの画像を取得可能な簡便で安価な3次元カメラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、測距光を発する発光素子と、測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、反射測距光を受光し、受光信号を発生する受光素子と、該受光素子からの受光結果に基づき測距を行う測距部とを具備し、前記測距光の射出光軸上に配設され、測距光の光軸を所要の偏角で、所要の方向に偏向する第1光軸偏向部と、受光光軸上に配設され、前記第1光軸偏向部と同一の偏角、方向で反射測距光を偏向する第2光軸偏向部と、前記第1光軸偏向部による偏角、偏向方向を検出する射出方向検出部とを更に具備し、前記測距光は前記第1光軸偏向部を通して射出され、前記反射測距光は前記第2光軸偏向部を通して前記受光素子に受光される様構成され、前記測距部の測距結果、前記射出方向検出部の検出結果に基づき測定点の3次元データを取得する測定装置に係るものである。
【0006】
又本発明は、前記測距光射出部は、前記射出光軸を前記受光光軸に合致させる射出光軸偏向部を有し、前記第1光軸偏向部は前記第2光軸偏向部の中央部に設けられ、前記測距光は前記射出光軸偏向部により偏向され、前記第1光軸偏向部を通して射出される測定装置に係るものである。
【0007】
又本発明は、前記第1光軸偏向部は、重なり合う一対の円形の第1の光学プリズムで構成され、前記第2光軸偏向部は第1の光学プリズムと重なり合う一対の第2の光学プリズムで構成され、前記第1の光学プリズムのそれぞれは独立して回転可能であり、前記第2の光学プリズムのそれぞれは独立して回転可能であり、前記第1の光学プリズムの一方と前記第2の光学プリズムの一方とが同期して回転する様構成され、前記第1の光学プリズムの他方と前記第2の光学プリズムの他方とが同期して回転する様構成された測定装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記第2光軸偏向部は重なり合う一対の光学プリズムで構成され、各光学プリズムは独立して回転する様構成された測定装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記第2光軸偏向部を構成する光学プリズムは、フレネルプリズムである測定装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、演算処理部と、姿勢検出装置を更に具備し、該姿勢検出装置は前記射出光軸の水平に対する傾斜角、傾斜方向を検出可能であり、前記演算処理部は前記姿勢検出装置の検出結果に基づき前記測距部の測距結果を補正する様構成された測定装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記測定装置と、演算処理部と、前記射出光軸と平行で既知の関係を有する撮像光軸を有する撮像装置とを具備し、前記演算処理部は前記測定装置で取得した測距結果と撮像装置で取得した画像とを関連付けて3次元データ付き画像を取得する様構成された3次元カメラに係るものである。
【0012】
更に又本発明は、姿勢検出装置を更に具備し、該姿勢検出装置は前記射出光軸の水平に対する傾斜角、傾斜方向を検出可能であり、前記演算処理部は前記姿勢検出装置の検出結果に基づき前記測距部の測距結果を補正する様構成された3次元カメラに係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測距光を発する発光素子と、測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、反射測距光を受光し、受光信号を発生する受光素子と、該受光素子からの受光結果に基づき測距を行う測距部とを具備し、前記測距光の射出光軸上に配設され、測距光の光軸を所要の偏角で、所要の方向に偏向する第1光軸偏向部と、受光光軸上に配設され、前記第1光軸偏向部と同一の偏角、方向で反射測距光を偏向する第2光軸偏向部と、前記第1光軸偏向部による偏角、偏向方向を検出する射出方向検出部とを更に具備し、前記測距光は前記第1光軸偏向部を通して射出され、前記反射測距光は前記第2光軸偏向部を通して前記受光素子に受光される様構成され、前記測距部の測距結果、前記射出方向検出部の検出結果に基づき測定点の3次元データを取得するので、簡単な構成で任意の位置の測定点の3次元データを取得することができる。
【0014】
又本発明によれば、前記測距光射出部は、前記射出光軸を前記受光光軸に合致させる射出光軸偏向部を有し、前記第1光軸偏向部は前記第2光軸偏向部の中央部に設けられ、前記測距光は前記射出光軸偏向部により偏向され、前記第1光軸偏向部を通して射出されるので、前記第1光軸偏向部と前記第2光軸偏向部とを一体化でき、構造を簡単にすることができる。
【0015】
又本発明によれば、前記第1光軸偏向部は、重なり合う一対の円形の第1の光学プリズムで構成され、前記第2光軸偏向部は第1の光学プリズムと重なり合う一対の第2の光学プリズムで構成され、前記第1の光学プリズムのそれぞれは独立して回転可能であり、前記第2の光学プリズムのそれぞれは独立して回転可能であり、前記第1の光学プリズムの一方と前記第2の光学プリズムの一方とが同期して回転する様構成され、前記第1の光学プリズムの他方と前記第2の光学プリズムの他方とが同期して回転する様構成されたので、簡単な構成で測距光を任意の態様で走査することができ、簡便に点群データを取得することが可能である。
【0016】
又本発明によれば、前記第2光軸偏向部は重なり合う一対の光学プリズムで構成され、各光学プリズムは独立して回転する様構成されたので、簡単な構成で測距光を任意の態様で走査することができ、簡便に点群データを取得することが可能であり、更に前記第2光軸偏向部の駆動系、制御系を簡単にすることができる。
【0017】
又本発明によれば、前記第2光軸偏向部を構成する光学プリズムは、フレネルプリズムであるので、光学プリズムの厚みを薄くでき、小型軽量化を図ることができる。
【0018】
又本発明によれば、演算処理部と、姿勢検出装置を更に具備し、該姿勢検出装置は前記射出光軸の水平に対する傾斜角、傾斜方向を検出可能であり、前記演算処理部は前記姿勢検出装置の検出結果に基づき前記測距部の測距結果を補正する様構成されたので、測定装置を携帯した状態で測定を行った場合でも、高精度に測定を行うことができる。
【0019】
又本発明によれば、前記測定装置と、演算処理部と、前記射出光軸と平行で既知の関係を有する撮像光軸を有する撮像装置とを具備し、前記演算処理部は前記測定装置で取得した測距結果と撮像装置で取得した画像とを関連付けて3次元データ付き画像を取得する様構成されたので、簡単な構成とすることができる。
【0020】
更に又本発明によれば、姿勢検出装置を更に具備し、該姿勢検出装置は前記射出光軸の水平に対する傾斜角、傾斜方向を検出可能であり、前記演算処理部は前記姿勢検出装置の検出結果に基づき前記測距部の測距結果を補正する様構成されたので、携帯した状態で測定、撮影を行った場合でも、高精度の3次元データ付き画像を取得することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例に係る3次元カメラの概略図である。
図2図1のA矢視図である。
図3】(A)(B)(C)は、第1、第2光軸偏向部の作用を示す説明図である。
図4】取得画像と走査軌跡の関係を示す説明図である。
図5】他の実施例の要部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0023】
図1は本発明の実施例に係る測定装置及び該測定装置を具備した3次元カメラを示す概略構成図である。
【0024】
図1中、1は測定装置、2は撮像装置、3は前記測定装置1と前記撮像装置2を収納するケースである。前記測定装置1、前記撮像装置2が一体となって3次元カメラ4を構成する。前記ケース3は、三脚に設置可能としてもよく、或は携帯(ハンドヘルド)可能としてもよい。
【0025】
先ず、前記測定装置1について説明する。
【0026】
該測定装置1は、測距光射出部5、受光部6、測距部7、演算処理部8、射出方向検出部9、表示部10、姿勢検出装置19を有する。
【0027】
前記測距光射出部5は、射出光軸11を有し、該射出光軸11上に発光素子、例えばレーザダイオード(LD)12が設けられ、更に、前記射出光軸11上に投光レンズ13、第1光軸偏向部14が配設されている。
【0028】
更に、該第1光軸偏向部14について説明する。
【0029】
前記射出光軸11には、2個の第1光学プリズム15a,15bが設けられ、該第1光学プリズム15a,15bはそれぞれ前記射出光軸11を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。該第1光学プリズム15a,15bは、後述する様に、前記第1光学プリズム15a,15bの回転方向、回転量、回転速度を制御することで、前記投光レンズ13から射出された測距光の光軸を任意の方向に偏向する。
【0030】
前記第1光学プリズム15a,15bの材質は、好ましくは光学ガラスであり、該第1光学プリズム15a,15bは同一の且つ既知の屈折率を有する様高精度に製作される。前記第1光学プリズム15a,15bが高精度に製作されることで、測距光が拡散することなく、所定方向に光束を偏向でき、更に光束断面の歪みの発生等を防止でき、精度の高い測距が可能となり、又遠距離測定が可能となる。
【0031】
前記第1光学プリズム15a,15bの外形形状は、それぞれ前記射出光軸11を中心とする円形であり、前記第1光学プリズム15aの外周には第1リングギア16aが嵌設され、前記第1光学プリズム15bの外周には第1リングギア16bが嵌設されている。
【0032】
前記第1リングギア16aには第1駆動ギア17aが噛合している。該第1駆動ギア17aは、第1モータ18aの出力軸に固着されている。同様に、前記第1リングギア16bには第1駆動ギア17bが噛合し、該第1駆動ギア17bは、第1モータ18bの出力軸に固着されている。前記第1モータ18a,18bは前記演算処理部8に電気的に接続されている。
【0033】
前記第1モータ18a,18bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量を検出する回転検出器、例えばエンコーダ等を用いて、モータの回転量を検出してもよい。
【0034】
前記射出方向検出部9は、前記第1モータ18a,18bに入力する駆動パルスをカウントすることで前記第1モータ18a,18bの回転角を検出し、或はエンコーダからの信号に基づき前記第1モータ18a,18bの回転角を検出する。更に、前記射出方向検出部9は、前記第1モータ18a,18bの回転角に基づき、前記第1光学プリズム15a,15bの回転位置を演算し、前記第1光学プリズム15a,15bの屈折率と回転位置に基づき測距光の偏角、射出方向を演算し、演算結果は前記演算処理部8に入力される。
【0035】
図1では前記第1駆動ギア17a、前記第1モータ18aは、前記第1リングギア16aの上側に示されているが、実際には、後述する撮像装置2の視野と干渉しない位置、例えば図2に示される様に、前記第1駆動ギア17a,17bは前記第1リングギア16a,16bの側方に設けられる。
【0036】
前記投光レンズ13、前記第1光学プリズム15a,15b等は射出光学系20を構成する。
【0037】
前記受光部6について説明する。該受光部6は、対象物からの反射測距光を受光する。前記受光部6は、受光光軸21を有し、該受光光軸21は前記射出光軸11と平行となっている。
【0038】
前記受光光軸21上に受光素子22、例えばフォトダイオード(PD)が設けられ、該受光素子22は反射測距光を受光し、受光信号を発生する。更に、前記受光光軸21の対物側には、受光レンズ23、第2光軸偏向部24が配設されている。
【0039】
該第2光軸偏向部24は、前記受光光軸21上に重なり合い、平行に配置された一対の第2光学プリズム25a,25bを有する。該第2光学プリズム25a,25bとしては、それぞれフレネルプリズムが用いられることが、装置を小型化する為に好ましい。
【0040】
前記第2光学プリズム25a,25bとして用いられるフレネルプリズムは、平行に形成された多数のプリズム要素26によって構成され、板形状を有する。各プリズム要素26は同一の光学特性を有し、各プリズム要素26は前記第1光学プリズム15a,15bと同一の屈折率及び偏角を有する。
【0041】
前記フレネルプリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なフレネルプリズムを製作できる。
【0042】
前記第2光学プリズム25a,25bはそれぞれ前記受光光軸21を中心に個別に回転可能に配設されている。前記第2光学プリズム25a,25bは、前記第1光学プリズム15a,15bと同様に前記第2光学プリズム25a,25bの回転方向、回転量、回転速度を制御することで、入射される反射測距光の光軸を任意の方向に偏向する。
【0043】
前記第2光学プリズム25a,25bの外形形状は、それぞれ前記受光光軸21を中心とする円形であり、反射測距光の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記第2光学プリズム25a,25bの直径は前記第1光学プリズム15a,15bの直径より大きくなっている。
【0044】
前記第2光学プリズム25aの外周には第2リングギア27aが嵌設され、前記第2光学プリズム25bの外周には第2リングギア27bが嵌設されている。
【0045】
前記第2リングギア27aには第2駆動ギア28aが噛合し、該第2駆動ギア28aは第2モータ29aの出力軸に固着されている。前記第2リングギア27bには第2駆動ギア28bが噛合し、該第2駆動ギア28bは第2モータ29bの出力軸に固着されている。前記第2モータ29a,29bは前記演算処理部8に電気的に接続されている。
【0046】
前記第2モータ29a,29bは、前記第1モータ18a,18bと同様、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転検出器、例えばエンコーダ等を用いて、モータの回転量を検出してもよい。前記第2モータ29a,29bの回転量が検出され、前記演算処理部8により前記第1モータ18a,18bとの同期制御が行われる。
【0047】
前記第2駆動ギア28a,28b、前記第2モータ29a,29bは前記測距光射出部5と干渉しない位置、例えば前記第2リングギア27a,27bの下側に設けられている。
【0048】
前記第2光学プリズム25a,25b、前記受光レンズ23等は受光光学系30を構成する。
【0049】
前記測距部7は、前記発光素子12を制御し、測距光としてレーザ光線を発光させる。測定対象物から反射された反射測距光は前記第2光学プリズム25a,25b、前記受光レンズ23を介して入射し、前記受光素子22に受光される。該受光素子22は受光信号を前記測距部7に送出し、該測距部7は、前記受光素子22からの受光信号に基づき測定点(測距光が照射された点)の測距を行う。
【0050】
前記演算処理部8は、入出力制御部、演算器(CPU)、記憶部等から構成され、該記憶部には測距作動を制御する測距プログラム、前記第1モータ18a,18b、前記第2モータ29a,29bの駆動を制御する制御プログラム、前記表示部10に画像データ、測距データ等を表示させる為の画像表示プログラム等のプログラムが格納され、更に前記記憶部には測距データ、画像データ等の測定結果が格納される。
【0051】
前記姿勢検出装置19は、前記3次元カメラ4の水平に対する姿勢(傾斜角、傾斜方向)を検知する。検出結果は、前記演算処理部8に入力される。
【0052】
前記撮像装置2は、広角カメラ35、狭角カメラ36を有しており、前記広角カメラ35は広画角、例えば30゜を有し、前記狭角カメラ36は前記広角カメラ35より狭い画角、例えば5゜を有している。又、前記狭角カメラ36の画角は、前記測距光射出部5による点群データ取得範囲(後述)と同等、又は若干大きいことが好ましい。
【0053】
又、前記広角カメラ35、前記狭角カメラ36の撮像素子は、画素の集合体である、CCD、CMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、各カメラの光軸を原点とした座標系で位置が特定される。
【0054】
前記広角カメラ35の光軸、前記狭角カメラ36の光軸は共に前記射出光軸11と平行であり、更に前記広角カメラ35の光軸、前記狭角カメラ36の光軸と前記射出光軸11とは既知の関係となっている。
【0055】
先ず、前記測定装置1による測定作動について、図3(A)、図3(B)を参照して説明する。尚、図3(A)では説明を簡略化する為、前記第2光学プリズム25a,25bについて、それぞれ単一のプリズムとして示している。又、図3(A)で示される前記第1光学プリズム15a,15b、前記第2光学プリズム25a,25bは最大の偏角が得られる状態となっている。又、最小の偏角は、前記第1光学プリズム15a,15bのいずれか一方、前記第2光学プリズム25a,25bのいずれか一方が180゜回転した位置であり、偏角は0゜となり、射出されるレーザ光線の光軸は前記射出光軸11と平行となる。
【0056】
前記発光素子12から測距光が発せられ、測距光は前記投光レンズ13で平行光束とされ、前記第1光軸偏向部14(前記第1光学プリズム15a,15b)を透して測定対象物或は測定対象エリアに向けて射出される。ここで、前記第1光軸偏向部14を通過することで、測距光は前記第1光学プリズム15a,15bによって所要の方向に偏向されて射出される。
【0057】
測定対象物或は測定対象エリアで反射された反射測距光は、前記第2光軸偏向部24を透して入射され、前記受光レンズ23により前記受光素子22に集光される。
【0058】
前記反射測距光が前記第2光軸偏向部24を通過することで、反射測距光の光軸は、前記受光光軸21と合致する様に前記第2光学プリズム25a,25bによって偏向される(図3(A))。
【0059】
即ち、前記第1光軸偏向部14と前記第2光軸偏向部24が常に同じ偏角となる様に、前記第1光学プリズム15a,15bと前記第2光学プリズム25a,25bの回転位置、回転方向、回転速度が同期制御される。
【0060】
具体的には、前記第1光学プリズム15aと前記第2光学プリズム25aとが常に同一方向に偏向する様に、前記第1モータ18aと前記第2モータ29aとが前記演算処理部8によって同期制御され、更に前記第1光学プリズム15bと前記第2光学プリズム25bとが常に同一方向に偏向する様に、前記第1モータ18bと前記第2モータ29bとが前記演算処理部8によって同期制御される。
【0061】
更に、前記第1光学プリズム15aと前記第1光学プリズム15bとの回転位置の組合わせにより、射出する測距光の偏向方向、偏向角を任意に偏向することができる。
【0062】
又、前記第1光学プリズム15aと前記第1光学プリズム15bとの位置関係を固定した状態で(前記第1光学プリズム15aと前記第1光学プリズム15bとで得られる偏角を固定した状態で)、前記第1光学プリズム15aと前記第1光学プリズム15bとを一体に回転することで、前記第1光軸偏向部14を透過した測距光が描く軌跡は前記射出光軸11を中心とした円となる。
【0063】
従って、前記発光素子12よりレーザ光線を発光させつつ、前記第1光軸偏向部14を回転させれば、測距光を円の軌跡で走査させることができる。
【0064】
尚、この場合も、前記第2光軸偏向部24は、前記第1光軸偏向部14と同期して同方向に同速度で回転させることは言う迄もない。
【0065】
次に、図3(B)は前記第1光学プリズム15aと前記第1光学プリズム15bとを相対回転させた場合を示している。前記第1光学プリズム15aにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記第1光学プリズム15bにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記第1光学プリズム15a,15bによる光軸の偏向は、第1光学プリズム15a,15b間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
【0066】
従って、角度差θを変化させる度に、前記第1光軸偏向部14を1回転させれば、直線状に測距光を走査させることができる。
【0067】
更に、図3(C)に示される様に、前記第1光学プリズム15aの回転速度に対して遅い回転速度で前記第1光学プリズム15bを回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ測距光が回転されるので、測距光の走査軌跡は、スパイラル状となる。
【0068】
更に又、前記第1光学プリズム15a、前記第1光学プリズム15bの回転方向、回転速度を個々に制御することで、測距光の走査軌跡を前記射出光軸11を中心とした放射方向(半径方向の走査)とし、或は水平、垂直方向とする等、種々の走査状態が得られる。
【0069】
測定の態様としては、前記第1光軸偏向部14、前記第2光軸偏向部24を所要偏角毎に固定して測距を行うことで、特定の測定点についての測距を行うことができる。更に、前記第1光軸偏向部14、前記第2光軸偏向部24の偏角を偏向しつつ、測距を実行することで、即ち測距光を走査しつつ測距を実行することで点群データを取得することができる。
【0070】
又、各測距光の射出方向角は、前記第1モータ18a,18bの回転角により検知でき、射出方向角と測距データとを関連付けることで、3次元の点群データを取得することができる。
【0071】
次に、3次元データを取得すると共に画像データを取得することもできる。
【0072】
上記した様に、前記撮像装置2は前記広角カメラ35と前記狭角カメラ36とを具備している。
【0073】
前記広角カメラ35は、主に観察用として使用され、前記広角カメラ35で取得された広角画像は、前記表示部10に表示される。
【0074】
測定者は、前記表示部10に表示された画像から、測定対象を探し、或は測定対象を選択する。
【0075】
測定対象が選択されると、測定対象が前記狭角カメラ36によって捕捉される様、前記3次元カメラ4を向ける。前記狭角カメラ36で取得された狭角画像は、前記表示部10に表示される。表示方法としては、前記広角カメラ35による広角画像の表示と前記狭角カメラ36による狭角画像の表示とを切替えてもよく、或は前記表示部10を分割し分割部分に前記狭角カメラ36による狭角画像を表示し、或はウインドウを設け該ウインドウに表示してもよい。
【0076】
前記狭角カメラ36で取得された狭角画像は、前記測定装置1の測定範囲と一致、又は略一致しているので、測定者は視覚によって容易に測定範囲を特定できる。
【0077】
又、前記射出光軸11と前記狭角カメラ36の光軸は、平行であり、且つ両光軸は既知の関係であるので、前記演算処理部8は狭角カメラ36による狭角画像上で画像中心と前記射出光軸11とを一致させることができる。更に、前記演算処理部8は、測距光の射出角を検出することで、射出角に基づき画像上に測定点を特定できる。従って、測定点の3次元データと狭角画像の関連付けは容易に行え、前記狭角カメラ36で取得した狭角画像を3次元データ付きの画像とすることができる。
【0078】
図4(A)、図4(B)は、前記狭角カメラ36で取得した画像と、点群データ取得との関係を示している。尚、図4(A)では、測距光が同心多重円状に走査された場合を示しており、図4(B)では、測距光が直線状に往復走査された場合を示している。図中、37は走査軌跡を示しており、測定点は走査軌跡上に位置する。
【0079】
更に、広範囲の測定を実行する場合は、前記広角カメラ35で取得した広角画像を測定範囲とし、該広角画像に前記狭角カメラ36により取得した狭角画像をパッチワークの様に填め込んでいくことで、無駄なく、或は未測定部分を残すことなく測定を実行することができる。
【0080】
又、本実施例の前記3次元カメラ4は、前記姿勢検出装置19を具備している。
【0081】
該姿勢検出装置19は、水平に対する前記3次元カメラ4の姿勢、即ち前記射出光軸11の傾斜角、傾斜方向を検出するものである。前記3次元カメラ4が、三脚を介して設置される場合は、前記姿勢検出装置19の検出結果に基づき、前記3次元カメラ4が水平に設置され、該3次元カメラ4が水平の状態で測定が行える。従って、前記3次元カメラ4の傾斜を考慮して測定値を補正する等の補正作業が必要がなくなる。
【0082】
前記3次元カメラ4を携帯した状態(ハンドヘルドの状態)で使用する場合は、測定時の前記3次元カメラ4の姿勢を前記姿勢検出装置19により検出し、前記演算処理部8が検出された傾斜角、傾斜方向に基づき測定値を補正することで、手振れに近い状態でも、高精度に補正された測定が可能となる。
【0083】
尚、上記実施例に於いて、前記第2光学プリズム25a,25bをフレネルプリズムとしたが、スペース的に余裕のある場合は、前記第2光学プリズム25a,25bをそれぞれ単一のプリズムによって構成してもよい。
【0084】
図5は、他の実施例を示している。
【0085】
該他の実施例では、前述の実施例に於ける前記第1光軸偏向部14、前記第2光軸偏向部24を光軸偏向部40として一体化したものである。尚、図5中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0086】
測距光射出部5の射出光軸11上に偏向光学部材としての第1反射鏡41を設ける。更に、該第1反射鏡41に対峙させ、且つ受光光軸21上に偏向光学部材としての第2反射鏡42を配設する。又、前記第1反射鏡41、前記第2反射鏡42は前記第1反射鏡41、該第2反射鏡42によって偏向された前記射出光軸11が受光部6の受光光軸21と合致する様に位置関係が設定されている。前記第1反射鏡41、前記第2反射鏡42は、射出光軸偏向部を構成する。
【0087】
尚、前記第2反射鏡42の大きさは、測距光を反射するに充分な大きさであればよく、測距光の光束径は小さいので、前記第2反射鏡42によって遮断される反射測距光の光量は少なく、測距に影響を及すことはない。
【0088】
前記光軸偏向部40は、前記受光光軸21上に平行に配設された円形状の組合わせ光学プリズム43a,43bを有する。
【0089】
該組合わせ光学プリズム43a,43bは同様な構成であるので、以下は前記組合わせ光学プリズム43aについて説明する。
【0090】
該組合わせ光学プリズム43aは第2光学プリズム25aと第1光学プリズム15aによって構成されている。
【0091】
前記第2光学プリズム25aは多数のプリズム要素26が形成されたフレネルプリズムであり、該フレネルプリズムの中央部は、前記プリズム要素26が円状に欠けており該中央部には前記第1光学プリズム15aが設けられ、前記第2光学プリズム25aと前記第1光学プリズム15aとは一体化されている。又、前記第1光学プリズム15aと前記第2光学プリズム25aの前記プリズム要素26の向きは合致されている。
【0092】
前記第1光学プリズム15aと前記第2光学プリズム25aとは光学プラスチック材料とし、モールド成形により一体に成形してもよく、或は前記第2光学プリズム25aをモールド成形し、該第2光学プリズム25aに光学ガラスで製作したプリズム(第1光学プリズム15a)を貼付けてもよい。
【0093】
発光素子12から発せられた測距光は、投光レンズ13で平行光束とされ、前記第1反射鏡41、前記第2反射鏡42によって前記受光光軸21に沿って照射される様に偏向される。
【0094】
測距光が、前記組合わせ光学プリズム43a,43bの中央部、即ち第1光学プリズム15a,15bを通過することで、測距光は所要の方向、所要の角度に偏向され射出される。
【0095】
又、測定対象物によって反射された反射測距光は、前記組合わせ光学プリズム43a,43bの第2光学プリズム25a,25b部分を通過し、前記受光光軸21と平行となる様に偏向され、受光素子22に受光され、該受光素子22の受光結果に基づき測距が行われる。
【0096】
本他の実施例では、第1光軸偏向部14が省略されるので、構造が更に簡略化される。
【0097】
又、偏向部に用いられるモータは第2モータ29a,29bのみでよく、モータの制御も簡単になる。
【0098】
如上の如く、本発明によれば、簡単な構成で点群データを容易に取得することができ、又、画像を同時に取得する場合は、撮像装置の光軸と測距光軸とは一致(又は平行で既知の関係)であるので、画像と点群データとの関連付けが容易に行え、簡便に3次元データ付き画像を取得することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 測定装置
2 撮像装置
3 ケース
4 3次元カメラ
5 測距光射出部
6 受光部
7 測距部
8 演算処理部
9 射出方向検出部
10 表示部
11 射出光軸
12 発光素子
14 第1光軸偏向部
15a,15b 第1光学プリズム
18a,18b 第1モータ
19 姿勢検出装置
20 射出光学系
21 受光光軸
22 受光素子
24 第2光軸偏向部
25a,25b 第2光学プリズム
26 プリズム要素
29a,29b 第2モータ
30 受光光学系
35 広角カメラ
36 狭角カメラ
40 光軸偏向部
41 第1反射鏡
42 第2反射鏡
43a,43b 組合わせ光学プリズム
図1
図2
図3
図4
図5