特許第6616081号(P6616081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6616081-点火励振器放電スイッチ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616081
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】点火励振器放電スイッチ
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/266 20060101AFI20191125BHJP
   H01T 15/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   F02C7/266
   H01T15/00 C
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-47803(P2015-47803)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-176868(P2015-176868A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2018年2月23日
(31)【優先権主張番号】14/215,317
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】309012096
【氏名又は名称】ユニゾン・インダストリーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ブライアン・ライト
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−002771(JP,A)
【文献】 米国特許第05656966(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0162303(US,A1)
【文献】 特開平02−199229(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0312025(US,A1)
【文献】 米国特許第05510952(US,A)
【文献】 特開平04−232340(JP,A)
【文献】 特表2014−512765(JP,A)
【文献】 米国特許第5530617(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0000878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/266
F02C 9/00
H01T 15/00
F02P 1/00 −17/12
DWPI(Derwent Innovation)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(10)内の燃料に点火するための点火励振器システムであって、
再充電可能なエネルギー源(112)と、
前記再充電可能なエネルギー源(112)に接続され、前記再充電可能なエネルギー源(112)の中のエネルギーから貯蔵されたエネルギー波形を生成する少なくとも1つのパルス生成回路(116)と、
前記貯蔵されたエネルギー波形を受信するために前記少なくとも1つのパルス生成回路(116)に接続され、前記受信した貯蔵されたエネルギー波形に応答してスパークを生成する少なくとも1つの点火プラグ(106)と、
ゲート、アノードおよびカソードを更に備えるシリコンカーバイド放電スイッチ(140)と、
正の電気トリガ波形を前記シリコンカーバイド放電スイッチ(140)の前記ゲートに対する前記アノードに加えるスイッチ駆動体(128、138)と
を備え、
前記シリコンカーバイド放電スイッチ(140)の前記アノードおよびカソードが、前記再充電可能なエネルギー源(112)と直列に接続されており、前記正の電気トリガ波形に応答して、前記少なくとも1つのパルス生成回路(116)に前記再充電可能なエネルギー源(112)を選択的に接続して、前記貯蔵されたエネルギー波形の生成に影響を与え、次いで前記貯蔵されたエネルギー波形が、前記点火プラグ(106)によって受信されて前記スパークを生成する、点火励振器システム。
【請求項2】
前記シリコンカーバイド放電スイッチ(140)が、シリコンカーバイドサイリスタ(218)である、請求項1に記載の点火励振器システム。
【請求項3】
前記アノードが、電気的アースに接続されている、請求項2に記載の点火励振器システム。
【請求項4】
前記シリコンカーバイドサイリスタ(218)の前記アノードが、ダイオード(230)のカソードに接続され、前記シリコンカーバイドサイリスタ(218)の前記カソードが、前記ダイオード(230)のアノードに接続されている、請求項2に記載の点火励振器システム。
【請求項5】
前記シリコンカーバイド放電スイッチ(140)が、非導通状態から導通状態に移行することによって、前記再充電可能なエネルギー源(112)を前記少なくとも1つのパルス生成回路(116)に選択的に接続する、請求項1に記載の点火励振器システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのパルス生成回路(116)が、貯蔵されたエネルギー波形の形状およびタイミングを制御するように構成されている、請求項1に記載の点火励振器システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパルス生成回路(116)が、電気的に並列に接続された少なくとも2つのパルス生成回路(116)を備える、請求項1に記載の点火励振器システム。
【請求項8】
前記再充電可能なエネルギー源(112)の中の前記貯蔵されたエネルギーが、前記シリコンカーバイド放電スイッチ(140)を通って前記少なくとも1つの点火プラグ(106)へ導かれる、請求項1に記載の点火励振器システム。
【請求項9】
前記再充電可能なエネルギー源(112)が、コンデンサ(210、212、214)を備える、請求項1に記載の点火励振器システム。
【請求項10】
前記再充電可能なエネルギー源(112)が、並列またな直列のコンデンサ(210、212、214)の列を備える、請求項1に記載の点火励振器システム。
【請求項11】
前記シリコンカーバイド放電スイッチ(140)および前記再充電可能なエネルギー源(112)の直列の組合せの間に電気的に並列に接続されたクランプ回路(220)を更に備える、請求項1に記載の点火励振器システム。
【請求項12】
前記シリコンカーバイド放電スイッチ(140)が、直列に接続された少なくとも2つのシリコンカーバイドサイリスタ(218)である、請求項1に記載の点火励振器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火励振器放電スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用ガスタービンエンジンは、通常、エンジンの始動を助けるために点火システムを含む。エンジン点火システムは、エネルギーを貯蔵し、高エネルギーのスパークを放出して、自動車の点火コイルに類似した方法でエンジン内に燃料の燃焼を生成する点火励振器を含むことができる。点火励振器は、地上での最初のエンジン始動中に、または環境の状態に依存して、航空機が離陸中に、燃焼が衰えることを防止するためにスパークを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8359869号明細書
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明の実施形態は、ガスタービンエンジン内で燃料に点火するための点火励振器システムに関する。点火励振器システムが、再充電可能なエネルギー源と、再充電可能なエネルギー源に接続され、再充電可能なエネルギー源の中のエネルギーから貯蔵されたエネルギー波形を生成する少なくとも1つのパルス生成回路と、貯蔵されたエネルギー波形を受信するために少なくとも1つのパルス生成回路に接続され、受信した貯蔵されたエネルギー波形に応答してスパークを生成する少なくとも1つの点火プラグと、ゲート、アノードおよびカソードを更に備えるシリコンカーバイド放電スイッチと、正の電気トリガ波形をシリコンカーバイド放電スイッチのゲートに対するアノードに加えるスイッチ駆動体とを備える。シリコンカーバイド放電スイッチのアノードおよびカソードが、再充電可能なエネルギー源と直列に接続されており、正の電気トリガ波形に応答して、少なくとも1つのパルス生成回路に再充電可能なエネルギー源を選択的に接続して、貯蔵されたエネルギー波形の生成に影響を与え、次いで貯蔵されたエネルギー波形が、点火プラグによって受信されてスパークを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】長手方向軸線に沿ってファン区分から軸方向下流に配置されたコアエンジン区分、および本発明の実施形態によるエンジン点火システムを含む例示的なガスタービンエンジンの概略図である。
図2】本発明の実施形態による点火励振器充電を備えるエンジン点火システムの概略ブロック図である。
図3】点火励振器のシリコンカーバイド放電スイッチおよび再充電可能なエネルギー源を図示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、長手方向軸線15に沿ってファン区分14から軸方向上流に配置されたコアエンジン区分12を含む例示的なガスタービンエンジン10の概略図である。コアエンジン区分12は、環状コアエンジン入口18を画定し、コアエンジン区分12に入る空気の圧力を第1の圧力レベルに上昇させる際に使用するための増圧器20を支持する略管状外側ケーシング16を含む。高圧、多段軸方向流圧縮機22は、増圧器20から圧縮空気を受け取り、空気の圧力を更に上昇させる。圧縮空気は燃焼器24へ流れ、燃焼器24で燃料が圧縮空気流の中に噴射されて、圧縮空気の温度およびエネルギーレベルを上昇させる。導線27Aおよび27Bを経て点火励振器回路29に接続されている1つまたは複数の点火プラグ25Aおよび25Bが、燃焼器24内の混合気の燃焼の開始を促進することができる。加えて、点火励振器回路29が、電源コネクタ31を経て直流(DC)電源に結合されている。高エネルギーの燃焼生成物が、第1の駆動シャフト28を通って圧縮機22を駆動する際に使用するために第1のタービン26まで流れ、次いで、第1の駆動シャフト28と同軸である第2の駆動シャフト32を通って増圧器20を駆動する際に使用するために第2のタービン30まで流れる。各タービン26および30の駆動後、燃焼生成物はコアエンジン区分12から排気ノズル34を通って導かれることによって、推進ジェットスラストを提供する。
【0007】
環状ファンケーシング38によって取り囲まれているファン区分14は、回転可能な軸流ファンロータ36を含む。ファンケーシング38は、略半径方向に延在し、円周方向に離隔配置された複数の支持ストラット40によってコアエンジン区分12の周りに支持されている。ファンケーシング38は、半径方向に延在する出口案内羽根42によって支持され、ファンロータ36および複数のファンロータブレード44を取り囲む。ファンケーシング38の下流区分39は、コアエンジン区分12の外側部分上方に延在して、追加の推進ジェットスラストを提供する二次、またはバイパス気流通路46を画定する。
【0008】
本明細書に説明するエンジン点火システムを図1に示し、事業用ジェットエンジンの文脈で上記に説明するが、一般性を失わずに産業用タービンを動力とする用途に等しく適用可能である。例えば、ガスタービンエンジンは、電気を生成するための発電機を駆動することができる。同様に、ガスタービンエンジンは、幅広い範囲の用途向け産業用機械に動力を供給することができる。このように、エンジン点火システムは、特定のガスタービンエンジンおよび相当する事業上または適宜に産業上用途のために構成され、実施されることが可能である。例えば、事業用航空機は、導線27Aを経て点火励振器回路29に接続されている単一の点火プラグ25Aを使用することができ、一方、発電機に結合されているガスタービンエンジンは、導線27Aおよび27Bを経て点火励振器回路29に接続されている2つの点火プラグ25Aおよび25Bを使用することができる。
【0009】
図2は、本発明の実施形態による点火励振器充電を備えるエンジン点火システム100の概略ブロック図である。エンジン点火システム100は、点火励振器回路102、点火導線104および点火プラグ106を含む。点火励振器回路102は、EMIフィルタモジュール108、電力コンバータ110、再充電可能なエネルギー源112、電圧監視回路および放電スイッチモジュール114、ならびに1つまたは複数のパルス生成回路(PFN)116AおよびBを備える。EMIフィルタモジュール108は、例えば直流で28ボルトなど、相対的に低い直流(DC)電圧を直流電源117から受け取るように構成されている。直流電源は、限定しないが、バッテリ、DCバスラインまたは補助電源ユニット(APU)を含む航空機電源システムの要素を含むことができる。電源は、直流で28ボルトから直流で270ボルトまでの範囲の直流電圧を送達することができる。別法として、電源は、周波数400ヘルツ(Hz)で交流(AC)の115ボルトなど、交流(AC)を提供することができる。
【0010】
EMIフィルタモジュール108は、点火励振器回路102によって生成される高周波数ノイズがDC電源入力を通って漏出することを防止し、DC電源117上に存在する一時的な電圧サージから電力コンバータ110を保護するように構成されているEMIフィルタ118および平滑コンデンサ119を含む。電力コンバータ110は、フライバック型コンバータを含むことができ、EMIフィルタモジュール108から受信した入力電圧をエネルギー貯蔵用に最適なレベルに上げるように構成されている。電力コンバータ110は、いくつかの充電回路に亘って再充電可能なエネルギー源112で電圧を高めるためにチャージポンプ技術を利用する。充電回路が、再充電可能なエネルギー源112での電圧を所定のレベルに高めた場合、チャージポンプが中断され、再充電可能なエネルギー源112が放電するように制御される。別法として、電力コンバータ110は、フライバック型コンバータではなく、DC−DCコンバータである。
【0011】
再充電可能なエネルギー源112は、スパーク発生の間にエネルギーを貯蔵するように構成されている。電圧監視回路および放電スイッチモジュール114は、再充電可能なエネルギー源112内に貯蔵されたエネルギーを放出するように構成されている。各PFN116Aおよび116Bは、再充電可能なエネルギー源112に接続され、再充電可能なエネルギー源112の中のエネルギーから貯蔵されたエネルギー波形を生成する。各PFN116Aおよび116Bは、点火プラグ106Aおよび106Bの各着火先端120Aおよび120Bでスパークを生成するために、貯蔵されたエネルギー波形の形状およびタイミングを最適化するように構成されている。各PFN116Aおよび116Bは、誘導子であることができ、更に、出力電圧をより高くし、または結果として生じるスパークの持続時間がより長くなるよう促進するために、変圧器および/または高周波コンデンサを含むことができる。点火励振器102が複数の出力PFN116Aおよび116Bと共に構成される場合、PFN116Aおよび116Bは電気的に並列に接続される。
【0012】
点火導線104Aおよび104Bは、PFN116Aおよび116Bに接続された1つまたは複数の点火プラグ106Aおよび106Bに点火励振器回路102の出力を伝送する。各点火プラグ106Aおよび106Bは、各点火導線104Aおよび104Bからエンジン燃焼器24(図1参照)内部に存在する着火先端120Aおよび120Bに貯蔵されたエネルギー波形を伝導して、スパークを生成する。着火先端120Aおよび120Bの形状は、エンジン燃焼器24の内部に所定のスパークプルームを提供して、混合気に点火するように構成されており、それによって燃焼を開始する。点火着火先端120Aおよび120Bに送達される実際のエネルギーは、励振器内に貯蔵されたエネルギーの百分率(通常は25〜35%)である。スパークプルーム内に含まれるエネルギー、ならびにスパークが燃焼器に送達される比率は、点火パラメータである。例えば、4〜20ジュール(J)のエネルギー範囲およびスパーク比率は、一般に約1〜3ヘルツ(Hz)である。
【0013】
電力コンバータ110は、変圧器122および変圧器122の一次巻線126に電気的に接続されている電源スイッチ124を含む。電力コンバータ110は、更に、電源スイッチ124に電気的に接続されている第1のスイッチ駆動体128を含む。クロックコンバータ130および放電フィードバック回路132は、スイッチ駆動体128に電気的に接続されている。電流センサ134は、電源スイッチ124および電圧比較器136に電気的に接続されている。
【0014】
電圧監視回路および放電スイッチモジュール114は、シリコンカーバイド放電スイッチ140、電圧比較器142、ならびに整流器およびトリガコンデンサモジュール144に電気的に接続されている第2のスイッチ駆動体138を含む。第2のスイッチ駆動体138は、電力コンバータ110内の放電フィードバック回路132に接続されている。
【0015】
図3は、点火励振器回路102のシリコンカーバイド放電スイッチ140および再充電可能なエネルギー源112を図示する回路図である。整流ダイオード226に直列の再充電可能なエネルギー源112は、電力コンバータ110の変圧器122の出力に跨って電気的に接続されている。シリコンカーバイド放電スイッチ140は、再充電可能なエネルギー源112の一方の側に電気的に接続されている。シリコンカーバイド放電スイッチ140の他方の側は、クランプ回路220に電気的に接続されている。クランプ回路220は、1つまたは複数の出力PFN116Aおよび116Bの平行な組合せを跨いで電気的に接続されている。
【0016】
再充電可能なエネルギー源112は、1つまたは複数のエネルギー貯蔵または「タンク」コンデンサ210、212、214を含むことができる。再充電可能なエネルギー源112は、更に、直列に接続され得る貯蔵コンデンサ210、212、214の列を含むことができる。このように、再充電可能なエネルギー源112を跨ぐ電圧は、直列のコンデンサ210、212、214の列を跨ぐ電圧の付加的組み合わせを含む。別法として、コンデンサは平行に組み合わせることができて、再充電可能なエネルギー源を提供することができ、その場合全体の静電容量が、コンデンサの列の静電容量の付加的な組合せである。
【0017】
クランプ回路220は、還流ダイオード222を含む。抵抗器224に平行に接続されることが多い還流ダイオード222は、再充電可能なエネルギー源112から供給電圧が急に減少し、または除去される場合、誘導負荷を跨ぐ急な電圧ノイズをなくす。加えて、一旦エネルギーが充電可能なエネルギー源112から切り替えられると、放電スイッチ140を通り、PFN116Aおよび116B、点火導線104Aおよび104B、ならびに点火プラグ106Aおよび106Bによって形成される循環経路内に入り、最適な点火を促進するために時限エネルギー放電の一部として還流ダイオード222を通って戻る、効率的なエネルギー送達経路を還流ダイオード222は提供する。
【0018】
シリコンカーバイド放電スイッチ140は、高いスタンドオフ電圧およびパルス電流容量を含むシリコンカーバイドサイリスタ218を備えることができる半導体スイッチである。好適には、固体シリコンカーバイド放電スイッチ140は、単一のシリコンカーバイドサイリスタ218を含むが、しかし、点火励振器回路102の要求電圧およびスイッチ用の定格電圧に依存して、複数の半導体スイッチを直列で組み入れることができる。加えて、放電スイッチ140は、シリコンカーバイドサイリスタ218を跨いで直接接続されるクランプダイオード227を含むことができる。クランプダイオード227のカソードは、シリコンカーバイドサイリスタ218のアノードに接続され、クランプダイオード227のアノードは、シリコンカーバイドサイリスタ218のカソードに接続されている。電気的にシリコンカーバイドサイリスタ218を保護するために、クランプダイオード227が、エネルギー送達中に励振器回路を逆流することができる振動電流用の電流経路を提供し、それによって、高い電流がシリコンカーバイドサイリスタ218のゲートに流れ込み、シリコンカーバイドサイリスタ218のカソードから流出することを可能にする。
【0019】
シリコンカーバイドサイリスタ218のカソードは、再充電可能なエネルギー源112に接続され、シリコンカーバイドサイリスタのアノードは電気的アースに接続されている。抵抗器228と並列に還流ダイオード230を備える第2のクランプ回路が、シリコンカーバイドサイリスタ218のゲートおよびアノードに並列に接続されている。
【0020】
シリコンカーバイドサイリスタ218は、第2のクランプ回路、ならびにシリコンカーバイドサイリスタ218のゲートおよびアノードの両方に並列に接続されているパルス変圧器216によって誘導的に点火される。すなわち、スイッチ駆動体138は、貯蔵コンデンサ112内の電圧がエネルギー貯蔵のための所定のレベルに達する場合、非導通状態から導通状態に移行するように放電スイッチ140を誘導的に切り替えるゲートに対するアノードに正の電気波形をトリガする。対照的に、シリコン半導体構成要素は、カソードに対するゲートに加えられる正の電気トリガ波形を必要とする。シリコンサイリスタは、パルス変圧器216の周りに広範囲な電圧隔離を必要とするが、シリコンカーバイドサイリスタ218のアノードをアースすることによって、アノード‐ゲートトリガ回路の高電圧を隔離する必要を取り除く。カソードノードに対するゲートをトリガするために2500ボルト以上が印加される従来型のシリコンサイリスタ回路と比較すると、ゲートノードに対するアノードに印加される同相電圧は、20ボルト未満であることができる。
【0021】
導通状態では、シリコンカーバイド放電スイッチ140のアノードおよびカソードは、再充電可能なエネルギー源112と直列に接続されている。スイッチ駆動体138によって起動される正の電気トリガ波形に応答して、放電スイッチ140は、再充電可能なエネルギー源112をPFN116Aおよび116Bに接続して、貯蔵されたエネルギー波形の生成に影響を与える。貯蔵されたエネルギー波形は再充電可能なエネルギー源112から出力PFN116Aおよび116Bに伝送し、次いで、点火プラグ106Aおよび106Bによって受信されて、各点火プラグ106Aおよび106Bに対してスパークを生成する。
【0022】
点火励振器回路102の代替構成では、放電スイッチ140は、点火励振器回路102のハイサイドを跨いで、整流ダイオード226のカソードから還流ダイオード222のカソードに接続可能である。
【0023】
エンジン点火システム100のすべての要求は、始動状態の範囲に対して、点火プラグ106Aおよび106Bの着火先端120Aおよび120Bでスパークを生成するために十分なエネルギーを送達することを保証するように特定される。点火励振器は、−55℃〜150℃の最大温度範囲に耐えることができる。高温(例えば121℃を超える)に曝されることによって、過度の電流漏出に起因する電力スイッチングおよび変換のためにシリコン半導体構成要素の使用が制限される可能性がある。すなわち、漏出電流、または理想的に非導通性である場合(すなわち、「オフ」に切り替えられる)に半導体スイッチを通過する電流が、温度作用のために半導体スイッチ内で増加する。半導体スイッチと同様に半導体デバイスの中で、漏出電流は量子現象であり、その場合、移動電荷キャリア(電子または正孔)が半導体内の絶縁領域を通り抜ける。その現象は、温度と共に増加する。低いレベルの漏出電流では、半導体スイッチが非導通性であると考えることができるが、固体デバイスを通って流れる過度な漏出電流は、スイッチとしてデバイスを不十分または作動不能なものにする。シリコン半導体については、漏出電流のレベルが、約121℃以上で過度になる。シリコンカーバイドサイリスタを半導体スイッチデバイスとして組み込むことによって、シリコンカーバイド材料の固有の高温能力に起因して、放電スイッチの高温能力が向上する。向上した能力は、従来のシリコン材料能力の漏出電流の10分の1程度である漏出電流による。
【0024】
技術的効果は、半導体スイッチの漏出電流が温度と共に増加する高温作動中のスパーク比率を維持することである。したがって、シリコンカーバイドサイリスタは、高いスパークエネルギー要求を伴う点火システムに所望される点火励振器のために使用可能である。加えて、前述のアースされたアノードトリガ回路は、単一の放電回路(すなわち、1つの出力PFN)または前述の並列二重放電構成(すなわち、複数の並列PFN)のいずれかの実施を可能にする。シリコンカーバイドサイリスタの向上したピーク電流能力(従来のシリコンデバイスの能力の約3倍)は、点火プラグ着火先端でのスパーク発生中に、より高いピーク電力を送達することを促進する。より高いピーク電力は、大きいタービン燃焼器内部の燃料の点火に要求されるスパークプルームに対して好適な物理的態様である。点火発生のためのピーク電力のレベルは、複数の並列PFNに関して説明するように、2つ以上の出力に対して電力送達を分割することを可能にする。そういうわけで、固体放電スイッチは、大きな航空機のガスタービンエンジン、および発電所に関連する産業用途を含む広範囲の用途向けの点火システム内で使用可能である。
【0025】
既に説明しなかった範囲まで、様々な実施形態の異なる形態および構造を所望に応じて互いに組み合わせて使用することができる。1つの形態がすべての実施形態の中で説明されない場合、それが実施形態ではないと解釈されるように意図するものではなく、説明を簡潔にするためになされるのである。したがって、異なる実施形態の様々な形態は、所望に応じて混合され、組み合わされて、新しい実施形態が明確に説明されるかどうかに関わらず、新しい実施形態を形成することができる。本明細書に説明する形態のすべての組合せまたは置換は、本開示によって包含される。
【0026】
ここに記載する説明は、最良の形態を含む本発明を開示するための実施例を使用しており、更に当業者が、任意の装置またはシステムを作製し、使用し、かつ任意の組み込まれた方法を実施することを可能にする実施例を使用する。本発明の特許請求性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に思い当たる他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例が特許請求の範囲の文言とは異ならない構造的要素を含む場合、またはそれらが特許請求の範囲とは実質的に異ならない均等な構造的要素を含む場合、そのような他の実施例は特許請求の範囲内にあると意図するものである。
【符号の説明】
【0027】
10 ガスタービンエンジン
12 コアエンジン区分
14 ファン区分
15 長手方向軸線
16 管状外側ケーシング
18 環状コアエンジン入口
20 増圧器
22 圧縮機
24 燃焼器
25 点火プラグ
25A 点火プラグ
25B 点火プラグ
26 タービン
27 導線
27A 導線
27B 導線
28 駆動シャフト
29 励振器(点火励振器回路)
30 タービン
31 電源コネクタ
32 駆動シャフト
34 排気ノズル
36 ファンロータ
38 ファンケーシング
39 下流区分
40 支持ストラット
42 案内羽根
44 ファンロータブレード
46 気流通路
100 エンジン点火システム
102 点火励振器回路
104 点火導線
104A 点火導線
104B 点火導線
106 点火プラグ
106A 点火プラグ
106B 点火プラグ
108 EMIフィルタモジュール
110 電力コンバータ
112 再充電可能なエネルギー源
114 放電スイッチモジュール
116 パルス生成回路(PFN)
116A パルス生成回路(PFN)
116B パルス生成回路(PFN)
117 直流電源(DC電源)
118 EMIフィルタ
119 平滑コンデンサ
120 着火先端
120A 着火先端
120B 着火先端
122 変圧器
124 電源スイッチ
126 一次巻線
128 スイッチ駆動体
130 クロックコンバータ
132 放電フィードバック回路
134 電流センサ
136 電圧比較器
138 スイッチ駆動体
140 シリコンカーバイド放電スイッチ(SiC放電スイッチ)
142 電圧比較器
144 整流器およびエネルギー貯蔵コンデンサ(トリガコンデンサモジュール)
210 コンデンサ
212 コンデンサ
214 コンデンサ
216 パルス変圧器
218 シリコンカーバイドサイリスタ(SiCサイリスタ)
220 クランプ回路
222 還流ダイオード
224 抵抗器
226 整流ダイオード
227 クランプダイオード
228 抵抗器
230 還流ダイオード
図1
図2
図3