【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。但し、これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【0052】
[実施例1]変異型Fタンパク質を規定する遺伝子の作製
実施例1では、麻疹ウイルスAIK-CのFタンパク質のウイルス粒子の内側の領域のアミノ酸配列及びエンベロープ膜貫通領域のアミノ酸配列と、パラミクソウイルスであるRSV(RSV/Nao/1998株、1998年臨床分離株)のFタンパク質のウイルス粒子の外側の領域のアミノ酸配列とを有する変異型Fタンパク質である変異型Fタンパク質を規定する遺伝子を作製した。
図1に、変異型Fタンパク質の構築に用いた領域を示す。
【0053】
まず、非特許文献18で作製した、RSV Fタンパク質の全長をコードする塩基配列(配列番号28)が組み込まれたプラスミド(pMVAIK/RSV/F)を鋳型にして、プライマーMV/RSF ATG+(5’- ATCAAGACTCATCCAATGGAGTTGCCAATC -3’(配列番号8))と、プライマーRSF−AIK F TM−(5’- CAGGATGTAGACTATATTTGTGGTGGATTT -3’ (配列番号9))を用いてPCRによってターゲット配列を増幅した。これをフラグメントAとした。フラグメントAは、RSV Fタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域をコードする塩基配列(配列番号10)である。
【0054】
非特許文献12で作製した、AIK-C株の全長をコードする塩基配列(配列番号27)が組み込まれたプラスミドを鋳型にして、麻疹ワクチン株AIK−Cの全長cDNA(配列番号27)の4922位のNar I制限酵素切断部位を含む領域をターゲットにするプライマーMV4866(5’- ACAAAACTTAGGGCCAAGGAACATACACAC -3’ (配列番号11))と、プライマーMV RS F ATG−(5’- GATTGGCAACTCCATTGGATGAGTCTTGAT -3’ (配列番号12))を用いてPCRによってターゲット配列を増幅した。得られたフラグメントをフラグメントB(配列番号13)とした。
【0055】
また、AIK-Cのウイルス粒子の内側の領域とエンベロープ膜貫通領域からPac I 制限酵素領域までのフラグメントCの作製は以下のPCR産物を結合させた。AIK-C株の全長をコードする塩基配列(配列番号27)が組み込まれたプラスミドを鋳型にして、プライマーRSF−AIK F TM+(5’-AAATCAACCACAAATATAGTCTACATCCTG-3’(配列番号30))と、プライマーAIK F TGATAG NotI−(5’-TTATATGCGGCCGCCTATCAGAGCGACCTTA -3’ (配列番号31))を用いて、PCRにより作製したフラグメントをBluescript SK II-に組み込む。この組換えRSVF/MVFタンパクの遺伝子にAIK-Cの非翻訳領域を付加するためにAIK-C cDNAを鋳型としてプライマーAIK F stop-UTR(5' -GAGAGTTGTAGAGGACTATCAGAGCGACCT- 3’(配列番号32))とプライマーAIK Pac- (5’- TTGCACCCTAAGTTTTAATTAACTACCGAT -3’ (配列番号33))で PCRを行い結合することでフラグメントCを作成した。AIK−C Fタンパク質のエンベロープ膜貫通領域とウイルス粒子の内側に位置する領域をコードする塩基配列(配列番号14)である。
【0056】
次に、フラグメントA,B及びCを混合し、ライゲーションし、得られた構築物の塩基配列を確認した。Nar I制限酵素切断部位を5’末端に、Pac I制限酵素切断部位を3’末端に含み、両制限酵素切断部位の間に、RSV Fタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域と、AIK−C Fタンパク質のエンベロープ膜貫通領域と、AIK−C Fタンパク質のウイルス粒子の内側に位置する領域と、を含む、変異型Fタンパク質の遺伝子(配列番号7)が含まれるポリヌクレオチドが得られた。
【0057】
そして、得られた変異型Fタンパク質を規定する遺伝子が含まれるポリヌクレオチドを、Nar I及び Pac Iで処理した、特許文献18で作製したpMVAIK/20-77プラスミドに挿入した。大腸菌への形質転換後、2YTプレート培地にて37℃で一晩培養した。翌日、生えたコロニーから数クローンを選んで2YT培地にて培養後、プラスミドの抽出を行った。
【0058】
図2には、変異型Fタンパク質のRSV Fタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域と、AIK−C Fタンパク質のエンベロープ膜貫通領域と、AIK−C Fタンパク質のウイルス粒子の内側に位置する領域と、をコードする領域の塩基配列(配列番号7)を示す。大文字で示す塩基はRSV Fタンパク質のウイルス粒子の外側の領域をコードする部分の塩基、小文字で示す塩基はAIK−C Fタンパク質のエンベロープ膜貫通領域とウイルス粒子の内側の領域をコードする部分の塩基である。ウイルス粒子の外側の領域を規定する領域は1位から1572位の領域であり、ウイルス粒子の内側の領域と膜貫通領域を規定する領域は1573位から1743位の領域である。
【0059】
[実施例2]変異型Hタンパク質を規定する遺伝子の作製
実施例2では、麻疹ウイルスであるAIK−CのHタンパク質のウイルス粒子の内側の領域とエンベロープ膜貫通領域とパラミクソウイルスであるRSV(RS/Ohta/1998株)のGタンパク質のウイルス粒子の外側の領域とを有する変異型Hタンパク質を規定する遺伝子を作製した。
【0060】
図3は、AIK−CのHタンパク質のウイルス粒子の内側の領域及びエンベロープ膜貫通領域と、RSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側の領域とを結合する手順を示す。AIK−Cの全長ゲノムのcDNA(配列番号27)が組み込まれた、非特許文献18で作製したプラスミドpMVAIKをSalIで制限酵素処理し、セルフライゲーションさせたプラスミドを鋳型として用いて、プライマーMV TM RSG−(5’- TGTGACTTTGTGAATGCCTGCAAT -3’ (配列番号15)とプライマーMV3071+(5’- TGACAAATGGACGGACCAGT-3’ (配列番号16))を用いてPCRによってターゲット配列を増幅した。得られたフラグメントをフラグメントAとした。フラグメントAは、AIK−C Hタンパク質の、エンベロープ膜貫通領域をコードする塩基配列からSal I制限酵素切断部位を含む塩基配列(配列番号17)である。
【0061】
AIK−Cの全長ゲノムのcDNA(配列番号27)が組み込まれた、非特許文献18で作製したプラスミドをSalIで制限酵素処理し、セルフライゲーションさせたプラスミドを鋳型として用いて、プライマーRSV G stop +(5’- AACGAGTAGTGAGGCTGCTAGTGA -3’ (配列番号18))と、プライマーMV9175−(5’- ATTAACTAGTGGGTATGCCTGATG -3’ (配列番号19))を用いて、PCRによってターゲット配列を増幅した。得られたフラグメントをフラグメントBとした。フラグメントBは、AIK−C HAタンパク質の、終始コドン及びSpe I制限酵素切断部位を含む塩基配列(配列番号20)である。
【0062】
RSV Gタンパク質の全長をコードする塩基配列(配列番号29)が組み込まれた、先行文献18に記載のプラスミド(pMVAIK/RSV/G)を鋳型として用いて、RSVのGタンパク質の領域は、プライマーMV TM RSG +(5’- ATTGCAGGCATTCACAAAGTCACA -3’ (配列番号21))及びプライマーRSV G stop −(5’- TCACTAGCAGCCTCACTACTCGTT -3’(配列番号22)を用いて、PCRによってターゲット配列を増幅した。得られたフラグメントをフラグメントCとした。フラグメントCは、RSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域をコードする塩基配列(配列番号23)である。
【0063】
次に、フラグメントA、B及びCを混合してライゲーションし、得られた構築物の塩基配列を確認した。Sal I制限酵素切断部位を5’末端に、Spe I制限酵素切断部位を3’末端に含み、両制限酵素切断部位の間に、AIK−C HAタンパク質のウイルス粒子の内側に位置する領域と、AIK−C HAタンパク質のエンベロープ膜貫通領域と、RSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域と、を含む、変異型Hタンパク質を規定する遺伝子が含まれるポリヌクレオチドが得られた(配列番号24)。
【0064】
そして、得られた変異型Hタンパク質を規定する遺伝子が含まれるポリヌクレオチドを、AIK−Cの全長ゲノムのcDNA(配列番号27)が組み込まれた、非特許文献18で作製したプラスミド(pMVAIK)をSalIで制限酵素処理し、セルフライゲーションさせたプラスミドに挿入した。大腸菌への形質転換後、2YT寒天プレート培地にて37℃で一晩培養した。翌日、生えたコロニーから数クローンを選んで2YT培地にて培養後、プラスミドの抽出を行った。
【0065】
図4には、この遺伝子のAIK−C Hタンパク質のウイルス粒子の内側に位置する領域と、AIK−C Hタンパク質のエンベロープ膜貫通領域と、RSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側に位置する領域と、をコードする領域の塩基配列を示す。小文字で示す塩基はAIK−C Hタンパク質の、エンベロープ膜貫通領域とウイルス粒子の内側の領域、大文字で示す塩基はRSV Gタンパク質のウイルス粒子の外側の領域をコードする部分の塩基である。ウイルス粒子の内側の領域を規定する領域は1位から174位の領域であり、ウイルス粒子の外側の領域と膜貫通領域を規定する領域は175位から876位の領域である。
【0066】
[実施例3]GFP遺伝子を組み込んだ、組換えウイルス全長遺伝子の作成
実施例3では、GFP遺伝子を組み込んだ、組換えウイルス全長遺伝子を作製した。作製手順を
図5に示す。
【0067】
まず、非特許文献18に記載の、P/C/V遺伝子、GFP、Mタンパク質、Fタンパク質、Hタンパク質の入ったプラスミド(pMVAIK/20-77)を以下のように作製した。
【0068】
AIK−Cの全長ゲノムのcDNA(配列番号27)をSac II(2040位)、EcoT22I(7761位)で切断しpBluescript SK-のmulti-cloning situe(SacII, Pst I)に挿入しpMVAIK/20-77を作成した。麻疹ウイルスAIK−CのP/M junction のgenome position3433位のCの前にggcgcgを挿入しAscI部位を導入しatgの上流にR1配列GGCGCGCCGGTCGCCACCatgg(配列番号34)(ccatggはNcoI siteで、この中のATGを開始コドンとして用いる)、終止コドンの下流にNot I配列(GCGGCCGC) 及びAscI(GGCGCGCC)を含むR2配列(TAGCGGCCGCACCCTCCATCATTGTTATAAAAAACTTAGGAACCAGGTCCACACAGCGGCGCGCC(配列番号35))を付加した。GFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子はNcoI NotI部位を使って挿入した。(
図5)
そして、このプラスミドと、実施例1で得た、変異型Fタンパク質が挿入されたプラスミドを、制限酵素Nar Iと制限酵素Pac Iで処理し、回収した変異型Fタンパク質の遺伝子を含む断片を、塩基配列(MVAIK/20-77)のNar I制限酵素切断部位とPac I制限酵素切断部位との間に挿入し、塩基配列(MVAIK/20-77/F chimera)を有するプラスミドを作製した。
【0069】
塩基配列(MVAIK/20-77/F chimera)を有するプラスミドと、実施例2で得た、変異型Hタンパク質が挿入されたプラスミドを、制限酵素Sac II及び制限酵素Pac Iで処理した。回収した変異型Hタンパク質の遺伝子を含む断片を、塩基配列(MVAIK/20-77/F chimera)のSac II制限酵素切断部位とPac I制限酵素切断部位との間に挿入し、塩基配列(MVAIK/RSV FG GFP chimera)を有するプラスミドを作製した。塩基配列(MVAIK/RSV FG GFP chimera)は、GFP遺伝子を有する組換えAIK−Cのゲノム全長配列である。
【0070】
[実施例4]組換えAIK−Cのウイルス粒子の回収
実施例4では、実施例3で作製した組換えAIK-Cのゲノムを用いて、組換えAIK−Cのウイルス粒子の回収を行った。
【0071】
塩基配列(MVAIK/RSV FG GFP chimera)はP/M junctionにGFP遺伝子が挿入されており制限酵素Asc Iで処理後、セルフライゲーションさせることでGFPを欠失した塩基配列(MVAIK/RSV FG chimera)を得た。感染性ウイルスを回収するために必要なAIK−CのN,P,Lタンパク質発現プラスミド(pAIK−N,pAIK−P,pAIK−L)(非特許文献12、13、18、19)を使用した。これらのプラスミドでは、pAIK−N,pAIK−P,pAIK−LがT7 RNA promoterの下流に挿入してある。
【0072】
T7 RNA polymeraseを発現させる組換えワクシニアウイルスを293T細胞に感染させた。pAIK−N,pAIK−P,pAIK−Lのヘルパープラスミドと共に組換えAIK−Cのゲノム全長が挿入されたプラスミドを、TransIT−LT1 Reagent(Mirus Bio Corporation, US))と共に混和し、ワクシニアウイルスを感染させた293T細胞へのトランスフェクションを行った。混和後3時間後に上清を捨てて、5%胎児血清を含んだMEM培養液を加えた。
【0073】
細胞にワクシニアウイルスが感染すると、細胞内でT7 RNA polymeraseが発現してヘルパープラスミドのT7 プロモーターに結合し、麻疹ウイルスのNタンパク質,Pタンパク質,及びLタンパク質を発現させる。実施例3で作製した組換えAIK-Cのゲノムを含むプラスミドにT7 RNA polymerase、N−P−L複合体が結合し、ウイルスゲノム複製が始まる。
【0074】
培養3日後に293T細胞を剥離した。新鮮Vero細胞と混合培養を行い、3日毎に培地交換を行った。AIK−Cに特異的な細胞変性効果の有るものを回収し、組換えウイルス(F/F H/G MV P/M GFP)を得た(
図6)。
【0075】
図7は、得られた組換えAIK−Cを模式的に説明する図である。
図7の上部には、上から、変異型Fタンパク質の模式図、変異型Hタンパク質の模式図、及び、組換えAIK−Cのゲノムを含むプラスミドの模式図が記載されている。変異型Fタンパク質は、N末端側にRS/Nao/1998株のFタンパク質のウイルス粒子の外側の領域を有し、C末端側にAIK-Cの膜貫通領域からFタンパク質のウイルス粒子の内側の領域を有している。変異型Hタンパク質は、N末端側にAIK-CのHタンパク質のウイルス粒子の内側から膜貫通領域の領域を有し、C末端側にRS/Ohta/1998株のGタンパク質のウイルス粒子の外側の領域を有している。組換えAIK−Cのゲノムは、AIK−CのNタンパク質、Pタンパク質、Vタンパク質、Cタンパク質、Mタンパク質及びLタンパク質の遺伝子と、変異型Fタンパク質及び変異型Hタンパク質の遺伝子と、GFPタンパク質の遺伝子と、を有する。
図7中、下部左図は、AIK−Cのウイルス粒子断面図及びAIK−Cのエンベロープの模式図であり、下部右図は、組換えAIK−Cのウイルス粒子断面図及び組換えAIK−Cのエンベロープの模式図である。AIK−Cのエンベロープでは、Fタンパク質及びHタンパク質がMタンパク質にウイルス粒子の内側で結合している。組換えAIK−Cの変異型Fタンパク質及びHタンパク質は、AIK−CのFタンパク質及びHタンパク質のウイルス粒子の内側の領域を有している。このため、組換えAIK−Cも、変異型Fタンパク質及びHタンパク質がMタンパク質に結合する。
【0076】
[実施例5]組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)の性状および増殖性の検討
実施例5では、組換えAIK−Cの性状及び増殖性を、MVAIK及びRSV−Longと比較した。
【0077】
麻疹ウイルスは、Vero細胞及びリンパ球系細胞のいずれの細胞にも感染し増殖することが知れられている。一方、RSVは、Vero細胞やヒト気道上皮細胞のA549細胞には感染するが、リンパ球系の細胞には感染しないことが知られている。
【0078】
Vero細胞、A549細胞を、24穴プレートに培養し、実施例4で回収した組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)、麻疹ワクチンAIK−C、及び、RSVであるRSV−Longを感染させ、1,3,5,7日後の培養上清を採取しTCID
50法により細胞への感染価を測定した。即ち、サンプル液を10倍段階希釈し、各希釈液の一定量と、細胞の一定数を、96穴の細胞培養プレートで培養し、50%細胞感染を示すウイルス希釈倍数の逆数をTCID
50値とした。Vero細胞についての結果を
図8の左図に示し、A549細胞についての結果を
図8の右図に示す。
図8の横軸は培養後の日数を表し、縦軸はTCID50法によるウイルス感染価の測定値に基づく値を表す。
【0079】
麻疹ウイルスMVAIKは、Vero細胞にはRSV−Longと同様に感染し、培養5日後に増殖ピークが認められた。組換えAIK−Cは、麻疹ウイルスMVAIK及びRSV−Longよりも早期に増殖が認められた。
【0080】
A549細胞に対する感染価については、麻疹ウイルスMVAIKは増殖しなかった。RSV−Longは培養5日後に増殖のピークが認められた。組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)も感染が認められ、増殖パターンはRSV−Longと同様であった。
【0081】
次に、B95a細胞(マーモセットのBリンパ球をEBVでトランスフォーメーションした株化細胞)、Jurkat細胞(ヒトリンパ腫細胞)、U937細胞(ヒト単球株化細胞)に対するMVAIK及び組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)の感染価を調べた。リンパ球系細胞には麻疹ウイルスは感染するが、RSVは感染しないことが知られている。
【0082】
B95a細胞、Jurkat細胞、U937細胞を24穴プレートに培養し各ウイルスを接種し1,3,5,7日後の培養上清を採取し上記と同様に感染価を測定した。結果を
図9に示す。
図9の右図はMVAIKについての結果を示し、左図は、組換えAIK−C及びRSV−Longについての結果を示す。各図の横軸は培養後の日数を表し、縦軸はTCID50法によるウイルス感染価の測定値に基づく値を表す。
【0083】
MVAIKは、B95a細胞,Jurkat細胞ではよく増殖しているがU937細胞では5日後に増殖が認められたが7日後には減少した。一方、RSV−Long及び組換えAIK−Cは、いずれの細胞に対しても感染せずウイルス増殖は認められなかった。
【0084】
[実施例6]上皮細胞系に対する細胞変性効果
実施例6では、組換えAIK−Cの上皮細胞系に対する細胞変性効果を、MVAIK及びRSV−Longと比較した。
【0085】
A549細胞及びVero細胞に感染させ、その細胞変性効果を観察した。細胞の顕微鏡撮影画像を
図10に示す。RSV−Longを感染させたA549細胞及びVero細胞には細胞変性効果が観察され、RSV−LongはA549細胞及びVero細胞のいずれに対しても細胞融合効果が認められた。一方、MVAIKはVero細胞に細胞融合を示し巨細胞を形成したが、A549細胞に対する細胞変性効果は顕著ではなかった。組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)は、RSV−Longと同様に、A549細胞及びVero細胞に感染し細胞変性効果を示した。
【0086】
[実施例7]リンパ球系細胞に対する細胞変性効果
実施例7では、組換えAIK−Cのリンパ球系細胞に対する細胞変性効果を調べた。
【0087】
リンパ球系細胞である、B95a細胞,Jurkat細胞,U937細胞に対する、組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)の細胞変性効果を検討した。細胞の顕微鏡撮影画像を
図11に示す。B95a細胞,Jurkat細胞、又はU937細胞にMVAIKを感染させた場合、細胞融合が生じ、巨細胞が認められた。一方、RSV−Long及び組換えAIK−Cについては、どのリンパ球系細胞においても細胞変性効果が観察されなかった(
図11)。
【0088】
[実施例8]A549細胞感染時に発現するタンパク質の解析
実施例8では、組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)がA549細胞に感染した場合に発現するタンパク質を解析した。
【0089】
まず、組換えAIK−C(F/F H/G MV P/M GFP)をA549細胞に感染させた。そして、RSVのGタンパク質に対するモノクローナル抗体(HyTest;3ReS21)、RSVのFタンパク質に対するモノクローナル抗体(abcam;ab43812)、麻疹ウイルスのNタンパク質に対するモノクローナル抗体(Novus Biologicals;NB100−1856)、及び麻疹ウイルスのHタンパク質に対するモノクローナル抗体(国立感染症研究所 ウイルス3部 佐藤先生から分与)を使用した。また、抗RSVポリクローナル抗体(abcam;ab20745)を用いた。各一次抗体を反応させて洗浄した後、二次抗体(Alexa Fluor(R) 488 Goat Anti-Mouse IgG (H+L) Antibody; Molecular Probes)を反応させた。GFPの発現は、細胞を固定せずに観察した。
【0090】
蛍光顕微鏡で撮影した画像を
図12に示す。Nタンパク質は二次抗体にローダミンでラベルした二次抗体(Alexa Fluor(R) 568 Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) Antibody;Molecular Probes)を用いた。抗RSVポリクローナル抗体にはCF488A Donkey Anti-Goat IgG (H+L)を用いた。GFPと麻疹ウイルスのNタンパク質は同じレベルで発現していた。また、RSV−LongのGタンパク質及びFタンパク質のウイルス粒子の外側の領域が発現していた。そして、AIK−CのHタンパク質に由来する領域は、組換えAIK−Cのウイルス粒子の外側に存在しなかった。
【0091】
麻疹ウイルスはゲノムオーダーで発現量が少なくなることが知られておりNタンパク質発現量が多く、ついでP/M junctionに挿入されたGFP、次いでFタンパク質及び、Gタンパク質の順に発現量は減少する。組換えAIK−Cのタンパク質は、麻疹ウイルスの構成タンパク質の転写・翻訳の原則通りに発現していることが確認された。
(結果)
以上より、本発明の組換え麻疹ウイルスは、ウイルス粒子の外側にパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスのエンベロープ貫通型タンパク質のウイルス粒子の外側の領域を発現していれば、そのパラミクソウイルス科の麻疹ウイルス以外のウイルスと同様の細胞親和性を示し、麻疹ウイルスと同様の特徴を持って増殖することがわかった。