(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0030】
<ゼオライト>
本発明のゼオライトは、下記特性(1)及び(2)を有し、CHA構造を有することを特徴とする。
(1)粉末X線回折法によるX線回折スペクトルの(211)面、(104)面及び(220)面の積分強度の和をX
0とし、空気雰囲気中において900℃で5時間の熱耐久試験後の上記積分強度の和をX
1としたときに、X
0に対するX
1(X
1/X
0)が0.2〜0.7である。
(2)空気雰囲気中において900℃で5時間の熱耐久試験後の
27Al−NMR法により測定される、Alの4配位のピーク強度をP
4とし、Alの6配位のピーク強度をP
6としたときに、P
4に対するP
6(P
6/P
4)が0.1以下である。
【0031】
本発明のゼオライトは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association:IZA)において、CHAという構造コードで命名され、分類されており、天然に産出するチャバサイト(chabazite)と同等の結晶構造を有するゼオライトである。
【0032】
ゼオライトの結晶構造の解析は、X線回折(XRD)装置を用いて行うことができる。CHA型ゼオライトは、粉末X線回折法によるX線回折スペクトルで、2θ=20.7°付近、25.1°付近、26.1°付近にそれぞれ、CHA型ゼオライト結晶の(211)面、(104)面及び(220)面に相当するピークが現れる。
【0033】
XRD測定は、X線回折装置(リガク社製 UltimaIV)を用いて行う。なお、測定条件は、次の通りとする。
線源:CuKα(λ=0.154nm)、測定法:FT法、回折角:2θ=5〜48°、ステップ幅:0.02°、積算時間:1秒、発散スリット、散乱スリット:2/3°、発散縦制限スリット:10mm、加速電圧:40kV、加速電流:40mA。
XRD測定前後でサンプル重量が0.1%以上の変化がないようにする。得られたXRDデータは、粉末X線回折パターン総合解析ソフトJADE6.0を用いてピークサーチを行い、さらに各ピークの半値幅と積分強度を算出する。なお、ピークサーチの条件は次の通りとする。
フィルタータイプ:放物線フィルター、Kα2ピークの消去:あり、ピーク位置定義:ピークトップ、閾値σ:3、ピーク強度%カットオフ:0.1、BG決定の範囲:1、BG平均化のポイント数:7。
得られたデータから、ゼオライトの(211)面(2θ=20.7°付近)、(104)面(2θ=25.1°付近)、(220)面(2θ=26.1°付近)の積分強度の和X
0を求めることができる。
なお、ゼオライトの(211)面、(104)面、(220)面のピークの積分強度を用いるのは、サンプルの吸水の影響が小さいためである。
【0034】
次に、ゼオライトを空気雰囲気中において900℃で5時間の熱耐久試験に施す。
熱耐久試験の条件は次の通りとする。
ゼオライト10gを磁性皿(5.8cm×9.1cm)に入れて、マッフル炉(デンケン・ハイデンタル製 KDF−S100)に投入し、空気雰囲気で昇温速度0.5℃/minで900℃まで昇温し、900℃で5時間保持する。
【0035】
熱耐久試験後のゼオライトに対し、上記と同一の条件でXRD測定を行うことにより、熱耐久試験後の上記積分強度の和X
1を得ることができる。
【0036】
本発明において、このような熱耐久試験後のゼオライトは、X
0に対するX
1(X
1/X
0)が0.2〜0.7であり、その結晶構造がある程度まで破壊されてしまう。しかし、本発明のゼオライトは、ゼオライトの結晶構造が上記範囲で崩壊していたとしても、Alが4配位の構造をできる限り保持している。すなわち、本発明のゼオライトは、熱耐久試験後期の状態において、
27Al−NMR法により測定される、Alの4配位のピーク強度をP
4とし、Alの6配位のピーク強度をP
6としたときに、P
4に対するP
6(P
6/P
4)が0.1以下であり、好ましくは0.08以下である。X
1/X
0が0.2〜0.4まで、結晶構造が初期から破壊されても、P
6/P
4が0.1以下であることがより好ましい。熱耐久試験後でも、ゼオライトがAlが4配位である構造を多く保持していることにより、NOx浄化性能に優れ、特に排ガスの高温度域でのNOx浄化性能に優れるゼオライトを提供することができる。
【0037】
27Al−NMR法の条件は次の通りとする。
核磁気共鳴分光計(AVANCE III 400 ブルカー・バイオスピン社製)を用いて、7mmプローブを使用し、大気中、室温にて、サンプル回転数を5kHzとし、その他は表1の設定値にて測定を行う。
得られたNMRデータは、FFT(高速フーリエ変換)とベースライン補正を行う。
【0039】
本発明のゼオライトの平均粒子径は、0.5μm以下であることが望ましく、0.1〜0.4μmであることがより望ましい。このような小さな平均粒子径を有するゼオライトを用いてハニカム触媒を製造した場合、吸水変位量が小さくなる。そのため、製造時および触媒としての使用時にクラックが生じにくく、耐熱性、耐久性に優れている。一方、平均粒子径が0.5μmを超えると、ハニカム触媒とした時の吸水変位量が大きくなり、ハニカム触媒にクラックが生じるおそれがある。
【0040】
ゼオライトの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)を用いて、SEM写真を撮影し、10個の粒子の全対角線の長さを測定し、その平均値から求める。なお、測定条件は、加速電圧:1kV、エミッション:10μA、WD:2.2mm以下とする。一般にCHA型ゼオライトの粒子は立方体であり、SEM写真で二次元に撮像した時には正方形となる。そのため粒子の対角線は2本である。
【0041】
本発明のゼオライトは、SiO
2/Al
2O
3組成比(SAR)が15未満であることが好ましい。上記SiO
2/Al
2O
3組成比とは、ゼオライト中のAl
2O
3に対するSiO
2のモル比(SAR)を意味している。その組成比SiO
2/Al
2O
3が15未満であることにより、ゼオライトの酸点を充分な数とすることができ、その酸点を利用して金属イオンとイオン交換することができ、Cuを多く担持することができるので、NOxの浄化性能に優れている。
より好ましいSiO
2/Al
2O
3組成比は、10〜14.9である。
なおゼオライトのモル比(SiO
2/Al
2O
3)は、蛍光X線分析(XRF)を用いて測定することができる。
【0042】
本発明において、Cuが担持されたゼオライトは、Cu/Al(モル比)が0.2〜0.5であることが好ましい。
上記のCuの担持量の範囲によれば、少量のゼオライトで、高いNOx浄化性能が得られる。なお、上記モル比が0.5を超えると高温でアンモニア酸化が促進され、NOxの浄化性能が低下する場合がある。
【0043】
Cuイオン交換方法としては、酢酸銅水溶液、硝酸銅水溶液、硫酸銅水溶液および塩化銅水溶液から選ばれる1種の水溶液にゼオライトを浸漬することで、行うことができる。これらのうち、酢酸銅水溶液が好ましい。一度で多量のCuを担持することができるためである。例えば、銅濃度が0.1〜2.5質量%の酢酸銅(II)水溶液を溶液温度が室温〜50℃、大気圧にてイオン交換を行うことで、ゼオライトに銅を担持できる。
【0044】
<製造方法>
次に、本発明のゼオライトの製造方法について説明する。
本発明のゼオライトの製造方法は、Si源、Al源、アルカリ源、水及び構造規定剤からなる原料組成物を反応させることにより、ゼオライトを合成する合成工程を有する。
【0045】
本発明のゼオライトの製造方法においては、まず、Si源、Al源、アルカリ源、水及び構造規定剤からなる原料組成物を準備する。
【0046】
Si源とは、ゼオライトのシリコン成分の原料となる化合物、塩及び組成物をいう。
Si源としては、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲル等を用いることができ、これらを二種以上併用してもよい。これらの中では、コロイダルシリカが望ましい。
【0047】
Al源としては、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノ−シリケートゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル等が挙げられる。これらのなかでは、乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。
【0048】
本発明のゼオライトの製造方法においては、目的とするCHA型ゼオライトを製造するためには、ほぼ製造されるゼオライトのモル比(SiO
2/Al
2O
3)と同じモル比のSi源、Al源を用いることが望ましく、原料組成物中のモル比(SiO
2/Al
2O
3)を、5〜30とすることが望ましく、10〜15とすることがより望ましい。
【0049】
本発明のゼオライトの製造方法においては、アルカリ源としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることができ、ナトリウム(Na)とカリウム(K)の合計量に対するナトリウムの量のモル比(Na/(Na+K))が0.7〜0.95であることが望ましく、0.75〜0.95にすることがより望ましい。こうすることで、合成されるCHA構造のゼオライトの結晶性を高くすることができる。Naの比率が0.7未満であると、イオン半径が大きいKが多すぎるため、異相が出やすく、0.95を超えると、ゼオライトが結晶化せずアモルファスとして残る部分が存在しやすくなる。このようにアルカリ源を選択し、その量の比を決めることで、本発明のゼオライトを得ることができる。
【0050】
本発明のゼオライトの製造方法においては、水の量は、特に限定されるものではないが、Si源のSi及びAl源のAlの合計モル数に対する水のモル数の比(H
2Oモル数/Si及びAlの合計モル数)が12〜30であることが望ましく、Si源のSi及びAl源のAlの合計モル数に対する水のモル数の比(H
2Oモル数/Si及びAlの合計モル数)が15〜25であることがより望ましい。
【0051】
構造規定剤(以下、SDAとも記載する)とは、ゼオライトの細孔径や結晶構造を規定する有機分子を示す。構造規定剤の種類等によって、得られるゼオライトの構造等を制御することができる。
構造規定剤としては、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩、硫酸塩及び硝酸塩;及びN,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムイオン、N−アルキル−3−キヌクリジノールイオン、またはN,N,N−トリアルキルエキソアミノノルボルナンをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩、硫酸塩及び硝酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。これらの中では、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(以下、TMAAOHとも記載する)、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩及びN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが望ましく、TMAAOHを用いることがより望ましい。
【0052】
本発明のゼオライトの製造方法においては、原料組成物に、さらにゼオライトの種結晶を加えてもよい。種結晶を用いることにより、ゼオライトの結晶化速度が速くなり、ゼオライト製造における時間が短縮でき、収率が向上する。
【0053】
ゼオライトの種結晶としては、CHA構造を有するゼオライトを用いることが望ましい。
【0054】
ゼオライトの種結晶の添加量は、少ない方が望ましいが、反応速度や不純物の抑制効果等を考慮すると、原料組成物に含まれるシリカ成分に対して、0.1〜20質量%であることが望ましく、0.5〜15質量%であることがより望ましい。0.1質量%未満であると、ゼオライトの結晶化速度を向上する寄与が小さく、20質量%を超えると、合成して得られるゼオライトに不純物が入りやすくなる。
【0055】
本発明のゼオライトの製造方法においては、準備した原料組成物を反応させることにより、ゼオライトを合成する。具体的には、原料組成物を水熱合成することによりゼオライトを合成することが望ましい。
【0056】
水熱合成に用いられる反応容器は、既知の水熱合成に用いられるものであれば特に限定されず、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器であればよい。反応容器に原料組成物を投入して密閉して加熱することにより、ゼオライトを結晶化させることができる。
【0057】
ゼオライトを合成する際、原料混合物は静置した状態でもよいが、攪拌混合した状態であることが望ましい。
【0058】
ゼオライトを合成する際の加熱温度は、100〜200℃であることが望ましく、120〜180℃であることがより望ましい。加熱温度が100℃未満であると、結晶化速度が遅くなり、収率が低下しやすくなる。一方、加熱温度が200℃を超えると、不純物が発生しやすくなる。
【0059】
ゼオライトを合成する際の加熱時間は、10〜200時間であることが望ましい。加熱時間が10時間未満であると、未反応の原料が残存し、収率が低下しやすくなる。一方、加熱時間が200時間を超えても、収率や結晶性の向上がほとんど見られない。
【0060】
ゼオライトを合成する際の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた原料組成物を上記温度範囲に加熱したときに生じる圧力で充分であるが、必要に応じて、窒素ガスなどの不活性ガスを加えて昇圧してもよい。
【0061】
本発明のゼオライトの製造方法においては、上記方法によりゼオライトを合成した後、充分に放冷し、固液分離し、充分量の水で洗浄することが望ましい。
【0062】
合成されたゼオライトは、細孔内にSDAを含有しているため、必要に応じてこれを除去してもよい。例えば、酸性溶液又はSDA分解成分を含む薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、熱分解処理などにより、SDAを除去することができる。
【0063】
<ハニカム触媒>
次に、本発明のハニカム触媒について説明する。
本発明のハニカム触媒は、複数の長手方向に延びる貫通孔が隔壁を隔てて並設されたハニカムユニットを備えたハニカム触媒であって、上記ハニカムユニットは、ゼオライトと無機バインダとを含み、上記ゼオライトとして、上記した本発明のゼオライトが用いられていることを特徴とする。
【0064】
図1に、本発明のハニカム触媒の一例を示す。
図1に示すハニカム触媒10は、複数の長手方向に延びる貫通孔11aが隔壁11bを隔てて並設された単一のハニカムユニット11を備えており、ハニカムユニット11の外周面には外周コート層12が形成されている。また、ハニカムユニット11は、ゼオライトと無機バインダとを含んでいる。
【0065】
本発明のハニカム触媒では、ハニカムユニットの隔壁の最大ピーク気孔径(以下、ハニカムユニットの最大ピーク気孔径と記載する場合がある)は、0.03〜0.15μmであることが望ましく、0.05〜0.10μmであることがより望ましい。ハニカムユニットの最大ピーク気孔径が0.03μm未満であると、排ガスを隔壁中に十分に拡散できず、NOx浄化性能が低下することがあり、0.15μmを超えると、気孔の数が少なくなるため、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなることがある。
【0066】
なお、ハニカムユニットの気孔径は、水銀圧入法を用いて測定することができる。この時の水銀の接触角を130°、表面張力を485mN/mとして、気孔径が0.01〜100μmの範囲で測定する。この範囲での最大ピークとなる時の気孔径の値を最大ピーク気孔径という。
【0067】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットの気孔率は、40〜70%であることが望ましい。ハニカムユニットの気孔率が40%未満であると、ハニカムユニットの隔壁の内部まで排ガスが侵入しにくくなって、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニットの気孔率が70%を超えると、ハニカムユニットの強度が不十分となる。
【0068】
なお、ハニカムユニットの気孔率は、重量法により測定することができる。
重量法での気孔率の測定方法は下記の通りである。
ハニカムユニットを7セル×7セル×10mmの大きさに切断して測定試料とし、この試料をイオン交換水およびアセトンを用いて超音波洗浄した後、オーブンにて100℃で乾燥する。次いで、測定顕微鏡(Nikon製 Measuring Microscope MM−40 倍率100倍)を用いて、試料の断面形状の寸法を計測し、幾何学的な計算から体積を求める。なお、幾何学的な計算から体積を求めることができない場合は、断面写真の画像処理により体積を計算する。
その後、計算上求められた体積およびピクノメーターで測定した試料の真密度から、試料が完全な緻密体であったと仮定した場合の重量を計算する。
なお、ピクノメーターでの測定手順は、以下の通りとする。ハニカムユニットを粉砕し、23.6ccの粉末を調整し、得られた粉末を200℃で8時間乾燥させる。その後、Auto Pycnometer 1320(Micromeritics社製)を用いて、JIS−R−1620(1995)に準拠し真密度を測定する。なお、この時の排気時間は40minとする。
次に、試料の実際の重量を電子天秤(島津製作所製 HR202i)にて測定し、気孔率を以下の計算式にて計算する。
気孔率(%)=100−(実際の重量/緻密体としての重量)×100
【0069】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットに含まれるゼオライトは、上記した本発明のCHA構造を有するゼオライトである。該ゼオライトは、本発明のゼオライトの説明において詳しく説明したので、ここでは詳しい説明を省略することとする。
【0070】
ハニカムユニット中のゼオライトの含有量は、40〜90体積%であることが望ましく、50〜80体積%であることがより望ましい。ゼオライトの含有量が40体積%未満であると、NOxの浄化性能が低下する。一方、ゼオライトの含有量が90体積%を超えると、その他に含有する材料の量が少なすぎて、強度が低下しやすくなる。
【0071】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットは、本発明の効果を損なわない範囲内で、CHA型ゼオライト以外のゼオライトおよびシリコアルミノリン酸塩(SAPO)を含んでいてもよい。
【0072】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットは、本発明のゼオライトをハニカムユニットの見掛けの体積当たり100〜320g/L含有することが望ましく、120〜300g/L含有することがより望ましい。100g/L未満であると、NOx浄化性能が低くなり、320g/Lを超えると、ハニカムユニットの強度が低下することがある。
【0073】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットに含まれる無機バインダとしては、特に限定されないが、ハニカム触媒としての強度を保つという観点から、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等に含まれる固形分が好適なものとして挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0074】
ハニカムユニット中の無機バインダの含有量は、3〜20体積%であることが望ましく、5〜15体積%であることがより望ましい。無機バインダの含有量が3体積%未満であると、ハニカムユニットの強度が低下する。
一方、無機バインダの含有量が20体積%を超えると、ハニカムユニット中のゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0075】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットは、ハニカムユニットの気孔径を調整するために、無機粒子をさらに含んでいてもよい。
【0076】
ハニカムユニットに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、セリア、マグネシア等の粒子が挙げられる。これらは二種以上併用してもよい。無機粒子は、アルミナ、チタニア及びジルコニアからなる群より選択される一種以上の粒子であることが望ましく、アルミナ、チタニア及びジルコニアのいずれか一種の粒子であることがより望ましい。
【0077】
無機粒子の平均粒子径は、0.01〜1.0μmであることが望ましく、0.03〜0.5μmであることがより望ましい。無機粒子の平均粒子径が0.01〜1.0μmであると、ハニカムユニットの気孔径を調整することが可能となる。
なお、無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒径(Dv50)である。
【0078】
ハニカムユニット中の無機粒子の含有量は、10〜40体積%であることが望ましく、15〜35体積%であることがより望ましい。無機粒子の含有量が10体積%未満であると、無機粒子の添加によるハニカムユニットの線膨張係数の絶対値を下げる効果が小さく、熱応力によってハニカムユニットが破損しやすくなる。一方、無機粒子の含有量が40体積%を超えると、本発明のゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0079】
本発明のゼオライト及び無機粒子の体積比(CHA型ゼオライト:無機粒子)は、望ましくは50:50〜90:10であり、より望ましくは60:40〜80:20である。本発明のゼオライト及び無機粒子の体積比が上記の範囲にあると、NOxの浄化性能を保ちつつ、ハニカムユニットの気孔径の調整することが可能となる。
【0080】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットは、強度を向上させるために、無機繊維、鱗片状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含んでいてもよい。
【0081】
ハニカムユニットに含まれる無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上からなることが望ましい。ハニカムユニットに含まれる鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上からなることが望ましい。いずれも耐熱性が高く、SCRシステムにおける触媒担体として使用した時でも、溶損などがなく、補強材としての効果を持続することができるためである。
【0082】
ハニカムユニット中の無機繊維及び/又は鱗片状物質の含有量は、3〜30体積%であることが望ましく、5〜20体積%であることがより望ましい。上記含有量が3体積%未満であると、ハニカムユニットの強度を向上させる効果が小さくなる。一方、上記含有量が30体積%を超えると、ハニカムユニット中のゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0083】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットの長手方向に垂直な断面の開口率は、50〜75%であることが望ましい。ハニカムユニットの長手方向に垂直な断面の開口率が50%未満であると、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニットの長手方向に垂直な断面の開口率が75%を超えると、ハニカムユニットの強度が不十分となる。
【0084】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットの長手方向に垂直な断面の貫通孔の密度は、31〜155個/cm
2であることが望ましい。ハニカムユニットの長手方向に垂直な断面の貫通孔の密度が31個/cm
2未満であると、ゼオライトと排ガスが接触しにくくなって、NOxの浄化性能が低下する。一方、ハニカムユニットの長手方向に垂直な断面の貫通孔の密度が155個/cm
2を超えると、ハニカム触媒の圧力損失が増大する。
【0085】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットの隔壁の厚さは、0.1〜0.4mmであることが望ましく、0.1〜0.3mmであることがより望ましい。ハニカムユニットの隔壁の厚さが0.1mm未満であると、ハニカムユニットの強度が低下する。一方、ハニカムユニットの隔壁の厚さが0.4mmを超えると、ハニカムユニットの隔壁の内部まで排ガスが侵入しにくくなって、ゼオライトがNOxの浄化に有効に利用されなくなる。
【0086】
本発明のハニカム触媒において、ハニカムユニットに外周コート層が形成されている場合、外周コート層の厚さは、0.1〜2.0mmであることが望ましい。外周コート層の厚さが0.1mm未満であると、ハニカム触媒の強度を向上させる効果が不十分になる。一方、外周コート層の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム触媒の単位体積当たりのゼオライトの含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0087】
本発明のハニカム触媒の形状としては、円柱状に限定されず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0088】
本発明のハニカム触媒において、貫通孔の形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
【0089】
次に、
図1に示すハニカム触媒10の製造方法の一例について説明する。
まず、ゼオライトと無機バインダとを含み、必要に応じて、無機繊維及び鱗片状物質からなる群より選択される一種以上や無機粒子をさらに含む原料ペーストを用いて押出成形し、複数の長手方向に延びる貫通孔が隔壁を隔てて並設されている円柱状のハニカム成形体を作製する。
【0090】
原料ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等として添加されており、二種以上併用してもよい。
【0091】
また、原料ペーストには、有機バインダ、分散媒、成形助剤等を、必要に応じて適宜添加してもよい。
【0092】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。なお、有機バインダの添加量は、ゼオライト、無機粒子、無機バインダ、無機繊維、鱗片状物質の総質量に対して、1〜10%であることが望ましい。
【0093】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0094】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0095】
さらに、原料ペーストには、必要に応じて造孔材を添加してもよい。
造孔材としては、特に限定されないが、ポリスチレン粒子、アクリル粒子、澱粉等が挙げられ、二種以上併用してもよい。これらの中では、ポリスチレン粒子が望ましい。
【0096】
ゼオライト及び造孔材の粒子径を制御することにより、隔壁の気孔径分布を所定の範囲に制御することができる。
【0097】
また、造孔材を添加しない場合であっても、ゼオライト及び無機粒子の粒子径を制御することにより、隔壁の気孔径分布を所定の範囲に制御することができる。
【0098】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが望ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0099】
次に、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する。
【0100】
さらに、ハニカム乾燥体を脱脂してハニカム脱脂体を作製する。脱脂条件は、ハニカム乾燥体に含まれる有機物の種類及び量によって適宜選択することができるが、200〜500℃で2〜6時間であることが望ましい。
【0101】
次に、ハニカム脱脂体を焼成することにより、円柱状のハニカムユニット11を作製する。焼成温度は、600〜1000℃であることが望ましく、600〜800℃であることがより望ましい。焼成温度が600℃未満であると、焼結が進行せず、ハニカムユニット11の強度が低くなる。一方、焼成温度が1000℃を超えると、ゼオライトの反応サイトが減少する。
【0102】
次に、円柱状のハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0103】
外周コート層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0104】
外周コート層用ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等として添加されており、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが望ましい。
【0105】
外周コート層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、ゼオライト、ユークリプタイト、アルミナ、シリカ等の酸化物粒子、炭化ケイ素等の炭化物粒子、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ハニカムユニットとの熱膨張係数が近いユークリプタイトの粒子が望ましい。
【0106】
外周コート層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、シリカアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナ繊維が望ましい。
【0107】
外周コート層用ペーストは、有機バインダをさらに含んでいてもよい。
外周コート層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0108】
外周コート層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔材等をさらに含んでいてもよい。
【0109】
外周コート層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが望ましい。
【0110】
外周コート層用ペーストに含まれる造孔材としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0111】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11を乾燥固化し、円柱状のハニカム触媒10を作製する。このとき、外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが望ましい。脱脂条件は、有機物の種類及び量によって適宜選択することができるが、500℃で1時間であることが望ましい。
【0112】
本発明の排ガス浄化装置は、上記したハニカム触媒を備えている。
図2に、本発明の排ガス浄化装置の一例を示す。
図2に示す排ガス浄化装置100は、ハニカム触媒10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属容器(シェル)30にキャニングすることにより作製することができる。また、排ガス浄化装置100には、排ガス(
図2中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)が流れる方向に対して、ハニカム触媒10の上流側の配管(不図示)内に、アンモニア又は分解してアンモニアを発生させる化合物を噴射する噴射ノズル等の噴射手段(図示せず)が設けられている。これにより、配管を流れる排ガス中にアンモニアが添加されるため、ハニカムユニット11に含まれるゼオライトにより、排ガス中に含まれるNOxが還元される。
【0113】
分解してアンモニアを発生させる化合物としては、配管内で加水分解されて、アンモニアを発生させることが可能であれば、特に限定されないが、貯蔵安定性に優れるため、尿素水が望ましい。
【0114】
図3に、本発明のハニカム触媒の別の一例を示す。
図3に示すハニカム触媒10´は、複数の長手方向に延びる貫通孔11aが隔壁11bを隔てて並設されているハニカムユニット11´(
図4参照)が接着層13を介して複数個接着されている以外は、ハニカム触媒10と同一の構成である。
【0115】
ハニカムユニット11´の長手方向に垂直な断面の断面積は、10〜200cm
2であることが望ましい。上記断面積が10cm
2未満であると、ハニカム触媒10´の圧力損失が増大する。一方、上記断面積が200cm
2を超えると、ハニカムユニット11´同士を接着することが困難である。
【0116】
ハニカムユニット11´は、長手方向に垂直な断面の断面積以外は、ハニカムユニット11と同一の構成である。
【0117】
接着層13の厚さは、0.1〜3.0mmであることが望ましい。接着層13の厚さが0.1mm未満であると、ハニカムユニット11´の接着強度が不十分になる。一方、接着層13の厚さが3.0mmを超えると、ハニカム触媒10´の圧力損失が増大したり、接着層内でのクラックが発生したりする。
【0118】
次に、
図3に示すハニカム触媒10´の製造方法の一例について説明する。
まず、ハニカム触媒10を構成するハニカムユニット11と同様にして、扇柱状のハニカムユニット11´を作製する。次に、ハニカムユニット11´の円弧側を除く外周面に接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11´を接着させ、乾燥固化することにより、ハニカムユニット11´の集合体を作製する。
【0119】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0120】
接着層用ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等として添加されており、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが望ましい。
【0121】
接着層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、ゼオライト、ユークリプタイト、アルミナ、シリカ等の酸化物粒子、炭化ケイ素等の炭化物粒子、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ハニカムユニットとの熱膨張係数が近いユークリプタイトの粒子が望ましい。
【0122】
接着層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、シリカアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナ繊維が望ましい。
【0123】
また、接着層用ペーストは、有機バインダを含んでいてもよい。
接着層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0124】
接着層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔材等をさらに含んでいてもよい。
【0125】
接着層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが望ましい。
【0126】
接着層用ペーストに含まれる造孔材としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0127】
次に、真円度を上げるために必要に応じて、ハニカムユニット11´の集合体に切削加工および研磨を施し、円柱状のハニカムユニット11´の集合体を作製する。
【0128】
次に、円柱状のハニカムユニット11´の集合体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0129】
外周コート層用ペーストは、接着層用ペーストと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0130】
次に、外周コート層用ペーストが塗布された円柱状のハニカムユニット11´の集合体を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム触媒10´を作製する。このとき、接着層用ペースト及び/又は外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが望ましい。脱脂条件は、有機物の種類及び量によって適宜選択することができるが、500℃で1時間であることが望ましい。
【0131】
ハニカム触媒10´は、4個のハニカムユニット11´が接着層13を介して接着されることにより構成されているが、ハニカム触媒を構成するハニカムユニットの個数は特に限定されない。例えば、16個の四角柱状のハニカムユニットが接着層を介して接着されることにより円柱状のハニカム触媒が構成されていてもよい。
【0132】
なお、ハニカム触媒10,10´は、外周コート層12が形成されていなくてもよい。
【0133】
上述のとおり、本発明のハニカム触媒においては、ゼオライトとして本発明のゼオライトを用いてハニカムユニットを形成することによって、NOxの浄化性能を向上させることができる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0135】
(実施例1)
Si源としてコロイダルシリカ(日産化学工業社製、スノーテックス30)、Al源として乾燥水酸化アルミニウムゲル(富田製薬社製、AD200P)、アルカリ源として水酸化ナトリウム(トクヤマ社製)と水酸化カリウム(東亜合成社製)、構造規定剤(SDA)としてN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(TMAAOH)25%水溶液(Sachem社製)、種結晶としてSSZ−13、及び脱イオン水を混合し、原料組成物を準備した。原料組成物のモル比は、SiO
2:15mol、Al
2O
3:1mol、NaOH:2.6mol、KOH:0.9mol、TMAAOH:1.1mol、H
2O:300molの割合とした。また原料組成物中のSiO
2、Al
2O
3に5.0質量%の種結晶を加えた。原料組成物を500Lオートクレーブに装填し、加熱温度160℃、加熱時間48時間で水熱合成を行い、ゼオライトを合成した。
次に、硫酸アンモニウム1molを1Lの水に溶かした後、溶液4gに対してゼオライトを1gの割合で添加し、1時間撹拌を行い、ゼオライト中のNa、Kを調整した。
次いで、合成したゼオライトを、1回目のイオン交換は銅濃度が2.34質量%の酢酸銅(II)水溶液を用い、2回目のイオン交換は銅濃度が0.88質量%の酢酸銅(II)水溶液を用い、溶液温度50℃、大気圧にて1時間、イオン交換を行い、ゼオライトに4.43質量%の銅を担持した。
【0136】
(実施例2)
原料組成物のモル比を、SiO
2:30mol、Al
2O
3:1mol、KOH:6mol、TMAAOH:3mol、H
2O:360molの割合とした以外は実施例1と同様にして合成した。イオン交換は銅濃度が1.24質量%の酢酸銅(II)水容積を用い、溶液温度50℃、大気圧にて1時間、イオン交換を行い、ゼオライトに3.62質量%の銅を担持した。
【0137】
(実施例3)
原料組成物のモル比を、SiO
2:36mol、Al
2O
3:1mol、KOH:5.8mol、TMAAOH:3.6mol、H
2O:468molの割合とした以外は実施例1と同様にして合成した。イオン交換は銅濃度が1.24質量%の酢酸銅(II)水容積を用い、溶液温度50℃、大気圧にて1時間、イオン交換を行い、ゼオライトに3.46質量%の銅を担持した。
【0138】
(比較例1)
原料組成物のモル比を、SiO
2:6mol、Al
2O
3:1mol、NaOH:2.6mol、TMAAOH:0.32mol、H
2O:150molの割合とした以外は実施例1と同様にして合成した。イオン交換は銅濃度が1.50質量%の酢酸銅(II)水容積を用い、溶液温度50℃、大気圧にて1時間、イオン交換を行い、ゼオライトに3.75質量%の銅を担持した。
【0139】
<熱耐久試験>
実施例1〜3および比較例1で合成したゼオライトを空気雰囲気中において900℃で5時間の熱耐久試験に施した。
熱耐久試験の条件は以下の通りである。
ゼオライト10gを磁性皿(5.8cm×9.1cm)に入れて、マッフル炉(デンケン・ハイデンタル製 KDF−S100)に投入し、空気雰囲気で昇温速度0.5℃/minで900℃まで昇温し、900℃で5時間保持した。
【0140】
<ゼオライトの結晶構造の解析>
X線回折装置(リガク社製、Ultima IV)を用い、実施例1〜3および比較例1で合成したゼオライトおよび熱耐久試験後のゼオライトのそれぞれについて、XRD測定を行い、X線回折スペクトルの(211)面、(104)面及び(220)面の積分強度の和であるX
0と、空気雰囲気中で900℃、5時間で試験した熱耐久試験後の上記積分強度の和であるX
1とをそれぞれ求め、X
1/X
0を算出した。
測定条件は、線源:CuKα(λ=0.154nm)、測定法:FT法、回折角:2θ=5〜48°、ステップ幅:0.02°、積算時間:1秒、発散スリット、散乱スリット:2/3°、発散縦制限スリット:10mm、加速電圧:40kV、加速電流:40mAとした。
得られたXRDデータの解析は、粉末X線回折パターン総合解析ソフトJADE6.0を用いて行った。なお、解析条件は、フィルタータイプ:放物線フィルター、Kα2ピークの消去:あり、ピーク位置定義:ピークトップ、閾値σ:3、ピーク強度%カットオフ:0.1、BG決定の範囲:1、BG平均化のポイント数:7とした。
【0141】
図5〜8に、実施例1〜3及び比較例1で合成したゼオライトの熱耐久前後のXRDパターンを示す。なお、
図5が実施例1のXRDパターン、
図6が実施例2のXRDパターン、
図7が実施例3のXRDパターン、
図8が比較例1のXRDパターンを示している。
図5〜8より、実施例1〜3及び比較例1で合成したすべてのゼオライトについて、CHA構造を有するゼオライトが合成されていることが確認された。
【0142】
<
27Al−NMR法によるゼオライトの解析>
実施例1〜3および比較例1で合成した、熱耐久試験前後のゼオライトをそれぞれ、
27Al−NMR法により解析し、Alの4配位のピーク強度であるP
4と、Alの6配位のピーク強度であるP
6とをそれぞれ求め、P
6/P
4を算出した。
27Al−NMR法の条件は以下の通りである。核磁気共鳴分光計(AVANCE III 400 ブルカー・バイオスピン社製)を用いて、7mmプローブを使用し、大気中、室温にて、サンプル回転数を5kHzとし、その他は上記表1の設定値にて測定を行った。
得られたNMRデータは、FFT(高速フーリエ変換)とベースライン補正を行った。
【0143】
図9〜12に、実施例1〜3及び比較例1で合成したゼオライトのNMRスペクトルを示す。なお、
図9が実施例1のNMRスペクトル、
図10が実施例2のNMRスペクトル、
図11が実施例3のNMRスペクトル、
図12が比較例1のNMRスペクトルを示している。また、得られたNMRスペクトルおよび上記のNMRデータの解析方法に基づいて、実施例1〜3及び比較例1で合成したゼオライトのAlの4配位ピークおよび6配位ピークの半値幅を求めた。なおゼオライトのAlの4配位ピークは68ppm付近に、ゼオライトのAlの6配位ピークは7ppm付近に出現する。結果を表2に示す。表2において、半値幅が未記入の箇所は、ピークが小さいため求められないことを示す。
【0144】
<ゼオライトの平均粒子径の測定>
走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)を用いて、実施例1〜3及び比較例1で合成したゼオライトのSEM写真を撮影し、それらの粒子径を測定した。測定条件は、加速電圧:1kV、エミッション:10μA、WD:2.2mm以下とした。測定倍率は、20000倍とした。10個の粒子の2つの対角線から粒子径を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0145】
<ゼオライトのモル比(SAR:SiO
2/Al
2O
3)の測定>
蛍光X線分析装置(XRF、リガク社製 ZSX Primus2)を用いて、実施例1〜3及び比較例1で合成したゼオライトのモル比(SAR:SiO
2/Al
2O
3)を測定した。測定条件は、X線管:Rh、定格最大出力:4kW、検出元素範囲:F〜U、定量法:SQX法、分析領域:10mmφとした。結果を表2に示す。
【0146】
<Cu担持量の測定>
蛍光X線分析装置(XRF、リガク社製 ZSX Primus2)を用いて、実施例1〜3及び比較例1で合成したゼオライトに担持されたCu量を測定した。測定条件は、X線管:Rh、定格最大出力:4kW、検出元素範囲:F〜U、定量法:SQX法、分析領域:10mmφとした。Cu/Al(モル比)を算出し、結果を表2に示す。
【0147】
<ハニカム触媒の作製>
実施例1〜3及び比較例1で得られたゼオライトを40質量%、無機バインダとして擬ベーマイトを8質量%、平均繊維長が100μmのガラス繊維を7質量%、メチルセルロースを6.5質量%、界面活性剤を3.5質量%及びイオン交換水を35質量%混合混練して、原料ペーストを作成した。なお、ゼオライトは銅イオン交換後のものを用いた。
【0148】
次に、押出成形機を用いて、原料ペーストを押出成形して、ハニカム成形体を作製した。そして減圧マイクロ波乾燥機を用いて、ハニカム成形体を出力4.5kW、減圧6.7kPaで7分間乾燥させた後、酸素濃度1%、700℃で5時間脱脂焼成して、ハニカム触媒(ハニカムユニット)を作製した。ハニカムユニットは、一辺が35mm、長さが150mmの正四角柱状であり、貫通孔の密度が124個/cm
2、隔壁の厚さが0.20mmであった。
【0149】
次に得られたハニカムユニットを、酸素:21vol%、水:10vol%、窒素:Baranceの雰囲気で、650℃、100時間の熱耐久処理を行った。
【0150】
<NOxの浄化率の測定>
熱耐久後のハニカムユニットからダイヤモンドカッターを用いて、直径25.4mm、長さ38.1mmの円柱状試験片を切り出した。この試験片に、200℃の模擬ガスを空間速度(SV)を40000hr
−1で流しながら、触媒評価装置(堀場製作所製、SIGU−2000/MEXA−6000FT)を用いて、試験片から流出するNOx流出量を測定し、下記の式(1)で表されるNOxの浄化率(%)を算出した。なお、模擬ガスの構成成分は、一酸化窒素262.5ppm、二酸化窒素87.5ppm、アンモニア350ppm、酸素10%、二酸化炭素5%、水5%、窒素(balance)とした。
浄化率(%)=(NOxの流入量−NOxの流出量)/(NOxの流入量)×100・・・(1)
同様に、525℃の模擬ガスをSV:100000hr
−1で流しながら、NOxの浄化率(%)を算出した。この時の模擬ガスの構成成分は、一酸化窒素315ppm、二酸化窒素35ppm、アンモニア385ppm、酸素10%、二酸化炭素5%、水5%、窒素(balance)とした。結果を表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
表2の結果より、実施例1〜3で得られたゼオライトは、本発明で定義したX
1/X
0およびP
6/P
4の範囲を満たしている、すなわち、熱処理によってゼオライトの構造は破壊されるが、Alは4配位を保っているため、これを用いて作製したハニカム触媒は、200℃および525℃におけるNOx浄化率がともに高い値を示している。
一方、比較例1で得られたゼオライトは、本発明で定義したX
1/X
0およびP
6/P
4の範囲を満たしていない、すなわち、熱処理によって6配位のAlが大きく増加しているため、NOx浄化率が低い値を示した。
このことは、実施例1〜3で得られたゼオライトが、初期(熱耐久前)のNMRで得られたAlの6配位の半値幅が狭いため、すなわちAlの状態が均一であるために得られた結果である。
また、実施例1〜3で得られたゼオライトは、耐久後のP
6/P
4が小さく、Alの6配位の半値幅が狭い。このことは、Alが元素単位でゼオライトの骨格から脱離したのではなく、周囲のSi元素とともに、まとまった単位で脱離したことを示している。そのため、上記したような結果が得られたのである。