(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0023】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0024】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0025】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
【0026】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である記憶装置の一例について
図1乃至
図3を用いて説明を行う。
【0028】
メモリのデータは、例えば、メモリに保持された電荷のリークが原因で劣化する。そのため、メモリのデータを定期的にリフレッシュすることで、データの劣化によるメモリの誤動作を防ぐことができる。
【0029】
なお、リフレッシュとは、メモリに格納されたデータを読み出し、再びメモリに書き戻すことをいう。
【0030】
使用環境にもよるが、通常の使用法であれば、使用者は、数秒、数分、数時間、数日に一度は、記憶装置の電源を投入することがある。本発明の一態様である記憶装置は、電源投入時にメモリをリフレッシュする機能を有する。
【0031】
図1は、本発明の一態様である記憶装置100を構成する回路を、ブロック図で示している。記憶装置100は、コントローラ101と、アドレスバッファ102と、ローデコーダ103と、カラムデコーダ104と、読み出し回路105と、メモリ106と、データインバッファ107と、データアウトバッファ108を有している。
【0032】
メモリ106は、マトリックス状(m行n列、m及びnは2以上の自然数)に配置された複数のメモリセル109を有している。各メモリセル109は、固有番号(アドレス)を有している。メモリセル109が電荷を保持することで、メモリ106はデータを記憶することができる。
【0033】
アドレスバッファ102は、指定されたアドレスを選択するために、アドレスの情報を、カラムデコーダ104及びローデコーダ103に出力する機能を有する。
【0034】
ローデコーダ103は、アドレスバッファ102から出力されるアドレスの情報に対応した行を選択する機能を有する。
【0035】
カラムデコーダ104は、アドレスバッファ102から出力されるアドレスの情報に対応した列を選択する機能を有する。
【0036】
読み出し回路105は、メモリ106内のデータを読み出す機能を有する。読み出し回路105は、センスアンプ回路を含んでも良いし、アナログデジタル変換回路(A/Dコンバータ)を含んでもよい。また、読み出し回路105は、ページバッファを設けて、メモリ106内のデータを一時保存する機能を有してもよい。記憶装置100は、ページバッファに保存されたデータをもとにメモリ106をリフレッシュすることが可能となる。
【0037】
データインバッファ107は、外部回路から入力されたデータをメモリ106に入力するためのバッファである。
【0038】
データアウトバッファ108は、メモリ106のデータを外部回路へ出力するためのバッファである。先述のページバッファは、データアウトバッファ108に設けてもよい。また、読み出し回路105とデータアウトバッファ108の間に、先述のページバッファを設けてもよい。
【0039】
図2は、コントローラ101の回路構成を説明したブロック図である。コントローラ101は、電源ON検出回路111と、カウンタ回路112と、モード選択回路113と、I/O制御回路114と、リフレッシュプログラム回路115と、アドレス指定回路116を含む。
【0040】
電源ON検出回路111は、記憶装置100の電源が投入されたことを検出する機能を有する。
【0041】
カウンタ回路112は、リフレッシュを行うメモリセル109のアドレスを順次選択する機能を有する。
【0042】
モード選択回路113は、例えば、リフレッシュ、スタンバイ、メモリ106の読み出し、メモリ106への書き込み、電源OFFなど、記憶装置100がとり得る状態を選択する機能を有する。
【0043】
I/O制御回路114は、記憶装置100のデータの入出力を切り替える機能を有する。
【0044】
リフレッシュプログラム回路115は、電源ON検出回路111が電源ONを検出したら、カウンタ回路112が指定したアドレスのメモリセル109に対して、リフレッシュを行う機能を有する。なお、リフレッシュプログラム回路115は、コントローラ101の外に設けてもよい。
【0045】
アドレス指定回路116は、メモリセル109のアドレスを選択する機能を有する。
【0046】
記憶装置100の電源が投入されたとき、電源ON検出回路111は、電源ONを検出し、モード選択回路113はリフレッシュモードを選択する。リフレッシュモードが選択されると、リフレッシュプログラム回路115に含まれるプログラムが実行される。リフレッシュモードでは、カウンタ回路112がメモリセル109のアドレスを順次選択し、全て又は一部のメモリセル109のデータがリフレッシュされる。
【0047】
なお、リフレッシュは、メモリ106内のデータを一度読み出す必要がある。読み出したデータは、前述のページバッファに一時保存してもよい。
【0048】
図3は、記憶装置100の動作を表す状態遷移図である。
【0049】
まず、電源をONにしたあと、記憶装置100はリフレッシュ動作に移行する。
【0050】
次に、記憶装置100はスタンバイ状態に移行する。記憶装置100は、新たな命令が入力されるまで、スタンバイ状態を繰り返す。
【0051】
書き込みの命令が与えられた場合は、記憶装置100はメモリ106にデータを書き込む。
【0052】
読み出しの命令が与えられた場合は、記憶装置100はメモリ106のデータを読み出す。
【0053】
書き込み動作から読み出し動作への移行、またその逆は、スタンバイ状態を経由してもよいし、経由しなくてもよい。
【0054】
電源OFFの命令が与えられた場合は、記憶装置100は電源をOFFにする。電源OFFの動作は、スタンバイ状態から移行してもよいし、書き込み動作から移行してもよいし、また、読み出し動作から移行してもよい。
【0055】
例えば、メモリ106にフラッシュメモリを用いた場合、電源投入の度にフラッシュメモリ内の全て又は一部のメモリセル109をリフレッシュすることになるが、フラッシュメモリは書き込み回数に制限があるため、メモリセル109の劣化を早めてしまう。また、フラッシュメモリは、書き込みに長時間を要するため、リフレッシュに長時間を要する。
【0056】
酸化物半導体トランジスタを用いたメモリセル109は、書き込み回数に制限がなく、書き込みに要する時間が短いため、メモリ106に好適である。
【0057】
また、酸化物半導体トランジスタを用いたメモリセル109は、書き込みに要する消費電力が小さいため、メモリ106に好適である。
【0058】
特に、メモリ106は、2値以上のデータを格納できる多値メモリであることが好ましい。多値メモリをメモリ106に適用することで、記憶容量が大きい記憶装置を提供することが可能になる。
【0059】
記憶装置100が上記の形態をとることで、データの劣化が少なく信頼性に優れた記憶装置を提供することができる。また、書き込み回数に制限がなく、書き込み時間が短い記憶装置を提供することができる。また、消費電力が少ない記憶装置を提供することができる。また、記憶容量が大きい記憶装置を提供することができる。
【0060】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様であるトランジスタの一例について説明する。
【0062】
〈〈トランジスタの構成例1〉〉
図4(A)乃至
図4(D)は、トランジスタ600の上面図および断面図である。
図4(A)は上面図であり、
図4(A)に示す一点鎖線Y1−Y2方向の断面が
図4(B)に相当し、
図4(A)に示す一点鎖線X1−X2方向の断面が
図4(C)に相当し、
図4(A)に示す一点鎖線X3−X4方向の断面が
図4(D)に相当する。なお、
図4(A)乃至
図4(D)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示している。また、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル長方向、一点鎖線X1−X2方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0063】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0064】
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0065】
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)と、が異なる場合がある。例えば、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の上面に形成されるチャネル領域の割合に対して、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0066】
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0067】
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体とゲート電極とが重なる領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって、値を決定することができる。
【0068】
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
【0069】
トランジスタ600は、基板640と、基板640上の絶縁膜652と、絶縁膜652上に、半導体661、半導体662の順で形成された積層と、半導体662の上面と接する導電膜671および導電膜672と、半導体661、半導体662、導電膜671および導電膜672と接する半導体663と、半導体663上の絶縁膜653および導電膜673と、導電膜673および絶縁膜653上の絶縁膜654と、絶縁膜654上の絶縁膜655を有する。なお、半導体661、半導体662および半導体663をまとめて、半導体660と呼称する。
【0070】
導電膜671は、トランジスタ600のソース電極としての機能を有する。導電膜672は、トランジスタ600のドレイン電極としての機能を有する。なお、トランジスタの「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0071】
導電膜673は、トランジスタ600のゲート電極としての機能を有する。
【0072】
絶縁膜653は、トランジスタ600のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0073】
図4(C)に示すように、半導体662の側面は、導電膜673に囲まれている。上記構成をとることで、導電膜673の電界によって、半導体662を電気的に取り囲むことができる(導電膜(ゲート電極)の電界によって、半導体を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。)。そのため、半導体662の全体(バルク)にチャネルが形成される場合がある。s−channel構造は、トランジスタのソース−ドレイン間に大電流を流すことができ、導通時の電流(オン電流)を高くすることができる。また、s−channel構造は、高周波でも動作可能なトランジスタを提供することができる。
【0074】
s−channel構造は、高いオン電流が得られるため、微細化されたトランジスタに適した構造といえる。トランジスタを微細化できるため、該トランジスタを有する半導体装置は、集積度の高い、高密度化された半導体装置とすることが可能となる。例えば、トランジスタは、チャネル長が好ましくは100nm以下、さらに好ましくは60nm以下、より好ましくは30nm以下の領域を有し、かつ、トランジスタは、チャネル幅が好ましくは100nm以下、さらに好ましくは60nm以下、より好ましくは30nm以下の領域を有する。
【0075】
s−channel構造は、高いオン電流が得られるため、高周波での動作が要求されるトランジスタに適した構造といえる。該トランジスタを有する半導体装置は、高周波で動作可能な半導体装置とすることが可能となる。
【0076】
以下に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0077】
〈基板〉
基板640としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
【0078】
また、基板640として、可とう性基板を用いてもよい。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板640に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。なお、基板640として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。また、基板640が伸縮性を有してもよい。また、基板640は、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板640の厚さは、例えば、5μm以上700μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは15μm以上300μm以下とする。基板640を薄くすると、半導体装置を軽量化することができる。また、基板640を薄くすることで、ガラスなどを用いた場合にも伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板640上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。即ち、丈夫な半導体装置を提供することができる。
【0079】
可とう性基板である基板640としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。可とう性基板である基板640は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可とう性基板である基板640としては、例えば、線膨張率が1×10
−3/K以下、5×10
−5/K以下、または1×10
−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可とう性基板である基板640として好適である。
【0080】
〈下地絶縁膜〉
絶縁膜652の上面はCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていることが好ましい。
【0081】
絶縁膜652は、酸化物を含むことが好ましい。特に加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を含むことが好ましい。好適には、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を用いることが好ましい。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物膜は、加熱により一部の酸素が脱離する。絶縁膜652から脱離した酸素は酸化物半導体である半導体660に供給され、酸化物半導体中の酸素欠損を低減することが可能となる。その結果、トランジスタの電気特性の変動を抑制し、信頼性を高めることができる。
【0082】
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物膜は、例えば、昇温脱離ガス分光法(TDS(Thermal Desorption Spectroscopy))分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×10
18atoms/cm
3以上、好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0083】
例えばこのような材料として、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む材料を用いることが好ましい。または、金属酸化物を用いることもできる。金属酸化物として、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等を用いる事ができる。なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0084】
また絶縁膜652に酸素を過剰に含有させるために、絶縁膜652に酸素を導入して酸素を過剰に含有する領域を形成してもよい。例えば、成膜後の絶縁膜652に酸素(少なくとも酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)を導入して酸素を過剰に含有する領域を形成する。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0085】
〈半導体〉
次に、半導体661乃至663に適用可能な半導体について説明する。
【0086】
トランジスタ600は、非導通状態においてソースとドレインとの間を流れる電流(オフ電流)が低いことが好適である。ここでは、オフ電流が低いとは、室温において、ソースとドレインとの間の電圧を10Vとし、チャネル幅が1μmあたりの規格化されたオフ電流が10×10
−21A以下であることをいう。このようにオフ電流が低いトランジスタとしては、半導体に酸化物半導体を有するトランジスタが挙げられる。
【0087】
半導体662は、例えば、インジウム(In)を含む酸化物半導体である。半導体662は、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、半導体662は、元素Mを含むと好ましい。元素Mは、好ましくは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)またはスズ(Sn)などとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素(B)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い元素である。または、元素Mは、例えば、酸化物半導体のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、半導体662は、亜鉛(Zn)を含むと好ましい。酸化物半導体は、亜鉛を含むと結晶化しやすくなる場合がある。
【0088】
ただし、半導体662は、インジウムを含む酸化物半導体に限定されない。半導体662は、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物などの、インジウムを含まず、亜鉛を含む酸化物半導体、ガリウムを含む酸化物半導体、スズを含む酸化物半導体などであっても構わない。
【0089】
半導体662は、例えば、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。半導体662のエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。
【0090】
半導体662は、後述するCAAC−OS膜を用いることが好ましい。
【0091】
例えば、半導体661および半導体663は、半導体662を構成する酸素以外の元素一種以上から構成される酸化物半導体である。半導体662を構成する酸素以外の元素一種以上から半導体661および半導体663が構成されるため、半導体661と半導体662との界面、および半導体662と半導体663との界面において、界面準位が形成されにくい。
【0092】
半導体661乃至663は、少なくともインジウムを含むと好ましい。なお、半導体661がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高いとする。また、半導体662がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25atomic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%より高く、Mが66atomic%未満とする。また、半導体663がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高くする。なお、半導体663は、半導体661と同種の酸化物を用いても構わない。ただし、半導体661または/および半導体663がインジウムを含まなくても構わない場合がある。例えば、半導体661または/および半導体663が酸化ガリウムであっても構わない。
【0093】
半導体662がスパッタリング法で作製されたIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるターゲットの金属元素の原子数比は、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1が好ましい。なお、上記のスパッタリングターゲットを用いて成膜された半導体膜に含まれる金属元素の原子数比は、ターゲットのそれとは異なる。例えば、In:M:Zn=4:2:4.1のターゲットを用いて成膜された半導体膜に含まれる金属元素の原子数比は、およそIn:M:Zn=4:2:3である。
【0094】
半導体661及び半導体663がスパッタリング法で作製されたIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるターゲットの金属元素の原子数比は、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4が好ましい。なお、上記のスパッタリングターゲットを用いて成膜された半導体膜に含まれる金属元素の原子数比は、ターゲットのそれとは異なる。
【0095】
次に、半導体661乃至663の積層により構成される半導体660の機能およびその効果について、
図5(B)に示すエネルギーバンド構造図を用いて説明する。
図5(A)は、
図4(B)に示すトランジスタ600のチャネル部分を拡大した図で、
図5(B)は、
図5(A)にC1−C2の鎖線で示した部位のエネルギーバンド構造を示している。また、
図5(B)は、トランジスタ600のチャネル形成領域のエネルギーバンド構造を示している。
【0096】
図5(B)中、Ec652、Ec661、Ec662、Ec663、Ec653は、それぞれ、絶縁膜652、半導体661、半導体662、半導体663、絶縁膜653の伝導帯下端のエネルギーを示している。
【0097】
ここで、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差(「電子親和力」ともいう。)は、真空準位と価電子帯上端のエネルギーとの差(イオン化ポテンシャルともいう。)からエネルギーギャップを引いた値となる。なお、エネルギーギャップは、分光エリプソメータを用いて測定できる。また、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)装置を用いて測定できる。
【0098】
絶縁膜652と絶縁膜653は絶縁体であるため、Ec653とEc652は、Ec661、Ec662、およびEc663よりも真空準位に近い(電子親和力が小さい)。
【0099】
半導体662は、半導体661および半導体663よりも電子親和力の大きい酸化物を用いる。例えば、半導体662として、半導体661および半導体663よりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
【0100】
なお、インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有する。そのため、半導体663がインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウム原子割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とする。
【0101】
このとき、ゲート電圧を印加すると、半導体661、半導体662、半導体663のうち、電子親和力の大きい半導体662にチャネルが形成される。
【0102】
ここで、半導体661と半導体662との間には、半導体661と半導体662との混合領域を有する場合がある。また、半導体662と半導体663との間には、半導体662と半導体663との混合領域を有する場合がある。混合領域は、界面準位密度が低くなる。そのため、半導体661、半導体662および半導体663の積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続接合ともいう。)バンド構造となる。
【0103】
このとき、電子は、半導体661中および半導体663中ではなく、半導体662中を主として移動する。上述したように、半導体661および半導体662の界面における界面準位密度、半導体662と半導体663との界面における界面準位密度を低くすることによって、半導体662中で電子の移動が阻害されることが少なく、トランジスタのオン電流を高くすることができる。
【0104】
トランジスタのオン電流は、電子の移動を阻害する要因を低減するほど、高くすることができる。例えば、電子の移動を阻害する要因のない場合、効率よく電子が移動すると推定される。電子の移動は、例えば、チャネル形成領域の物理的な凹凸が大きい場合にも阻害される。
【0105】
トランジスタのオン電流を高くするためには、例えば、半導体662の上面または下面(被形成面、ここでは半導体661)の、1μm×1μmの範囲における二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)粗さが1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における平均面粗さ(Raともいう。)が1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における最大高低差(P−Vともいう。)が10nm未満、好ましくは9nm未満、さらに好ましくは8nm未満、より好ましくは7nm未満とすればよい。RMS粗さ、RaおよびP−Vは、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製走査型プローブ顕微鏡システムSPA−500などを用いて測定することができる。
【0106】
または、例えば、チャネルの形成される領域中の欠陥準位密度が高い場合にも、電子の移動は阻害される。
【0107】
例えば、半導体662が酸素欠損(V
Oとも表記。)を有する場合、酸素欠損のサイトに水素が入り込むことでドナー準位を形成することがある。以下では酸素欠損のサイトに水素が入り込んだ状態をV
OHと表記する場合がある。V
OHは電子を散乱するため、トランジスタのオン電流を低下させる要因となる。なお、酸素欠損のサイトは、水素が入るよりも酸素が入る方が安定する。したがって、半導体662中の酸素欠損を低減することで、トランジスタのオン電流を高くすることができる場合がある。
【0108】
例えば、半導体662のある深さにおいて、または、半導体662のある領域において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定される水素濃度は、2×10
20atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
19atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
19atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下とする。
【0109】
半導体662の酸素欠損を低減するために、例えば、絶縁膜652に含まれる過剰酸素を、半導体661を介して半導体662まで移動させる方法などがある。この場合、半導体661は、酸素透過性を有する層(酸素を透過させる層)であることが好ましい。
【0110】
なお、トランジスタがs−channel構造を有する場合、半導体662の全体にチャネルが形成される。したがって、半導体662が厚いほどチャネル領域は大きくなる。即ち、半導体662が厚いほど、トランジスタのオン電流を高くすることができる。例えば、20nm以上、好ましくは40nm以上、さらに好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上の厚さの領域を有する半導体662とすればよい。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、例えば、300nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下の厚さの領域を有する半導体662とすればよい。
【0111】
また、トランジスタのオン電流を高くするためには、半導体663の厚さは小さいほど好ましい。例えば、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下の領域を有する半導体663とすればよい。一方、半導体663は、チャネルの形成される半導体662へ、隣接する絶縁体を構成する酸素以外の元素(水素、シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、半導体663は、ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上の厚さの領域を有する半導体663とすればよい。また、半導体663は、絶縁膜652などから放出される酸素の外方拡散を抑制するために、酸素をブロックする性質を有すると好ましい。
【0112】
また、信頼性を高くするためには、半導体661は厚く、半導体663は薄いことが好ましい。例えば、10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上の厚さの領域を有する半導体661とすればよい。半導体661の厚さを、厚くすることで、隣接する絶縁体と半導体661との界面からチャネルの形成される半導体662までの距離を離すことができる。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、例えば、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下の厚さの領域を有する半導体661とすればよい。
【0113】
例えば、半導体662と半導体661との間に、例えば、SIMS分析において、1×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは2×10
18atoms/cm
3未満のシリコン濃度となる領域を有する。また、半導体662と半導体663との間に、SIMSにおいて、1×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは2×10
18atoms/cm
3未満のシリコン濃度となる領域を有する。
【0114】
また、半導体662の水素濃度を低減するために、半導体661および半導体663の水素濃度を低減すると好ましい。半導体661および半導体663は、SIMSにおいて、2×10
20atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
19atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
19atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下の水素濃度となる領域を有する。また、半導体662の窒素濃度を低減するために、半導体661および半導体663の窒素濃度を低減すると好ましい。半導体661および半導体663は、SIMSにおいて、5×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
17atoms/cm
3以下の窒素濃度となる領域を有する。
【0115】
上述の3層構造は一例である。例えば、半導体661または半導体663のない2層構造としても構わない。または、半導体661の上もしくは下、または半導体663上もしくは下に、半導体661、半導体662および半導体663として例示した半導体のいずれか一を有する4層構造としても構わない。または、半導体661の上、半導体661の下、半導体663の上、半導体663の下のいずれか二箇所以上に、半導体661、半導体662および半導体663として例示した半導体のいずれか一を有するn層構造(nは5以上の整数)としても構わない。
【0116】
以上、半導体661乃至663を上述の構成にすることで、トランジスタ600は高いオン電流が得られ、高周波での動作が可能になる。
【0117】
〈導電膜〉
導電膜671、672、673は、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ストロンチウム(Sr)の低抵抗材料からなる単体、もしくは合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とすることが好ましい。特に、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。また、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。さらに、Cu−Mn合金を用いると、酸素を含む絶縁体との界面に酸化マンガンを形成し、酸化マンガンがCuの拡散を抑制する機能を持つので好ましい。
【0118】
また、導電膜671、672、673には、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0119】
また、導電膜671、672、673には、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、ストロンチウムルテナイトなど、貴金属を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。これらの導電性酸化物は、酸化物半導体と接しても酸化物半導体から酸素を奪うことが少なく、酸化物半導体の酸素欠損を作りにくい。
【0120】
〈ゲート絶縁膜〉
絶縁膜653には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、絶縁膜653は上記材料の積層であってもよい。なお、絶縁膜653に、ランタン(La)、窒素、ジルコニウム(Zr)などを、不純物として含んでいてもよい。
【0121】
また、絶縁膜653の積層構造の一例について説明する。絶縁膜653は、例えば、酸素、窒素、シリコン、ハフニウムなどを有する。具体的には、酸化ハフニウム、および酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含むと好ましい。
【0122】
酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、酸化シリコンに対して膜厚を大きくできるため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。即ち、オフ電流の小さいトランジスタを実現することができる。
【0123】
〈保護絶縁膜〉
絶縁膜654は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜654を設けることで、半導体660からの酸素の外部への拡散と、外部から半導体660への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。絶縁膜654としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。なお、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
【0124】
酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、および酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高いので絶縁膜654に適用するのに好ましい。したがって、酸化アルミニウム膜は、トランジスタの作製工程中および作製後において、トランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物の半導体660への混入防止、半導体660を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体からの放出防止、絶縁膜652からの酸素の不必要な放出防止の効果を有する保護膜として用いることに適している。また、酸化アルミニウム膜に含まれる酸素を酸化物半導体中に拡散させることもできる。
【0125】
〈層間絶縁膜〉
また、絶縁膜654上には絶縁膜655が形成されていることが好ましい。絶縁膜655には、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上含む絶縁体を用いることができる。また、絶縁膜655には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂を用いることもできる。また、絶縁膜655は上記材料の積層であってもよい。
【0126】
〈酸化物半導体膜の構造〉
以下では、半導体662に適用可能な、酸化物半導体の構造について説明する。
【0127】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0128】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
【0129】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
【0130】
まずは、CAAC−OS膜について説明する。
【0131】
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
【0132】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0133】
試料面と概略平行な方向から、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0134】
一方、試料面と概略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0135】
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0136】
なお、InGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0137】
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0138】
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
【0139】
CAAC−OS膜のように、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0140】
なお、本明細書等において実質的に真性という場合、酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×10
17/cm
3未満、1×10
15/cm
3未満、または1×10
13/cm
3未満である。酸化物半導体膜を高純度真性化することで、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
【0141】
酸化物半導体膜を真性または実質的に真性とするためには、SIMS分析において、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、または、酸化物半導体膜のある領域において、シリコン濃度を1×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
18atoms/cm
3未満とする。また、水素濃度は、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、または、酸化物半導体膜のある領域において、2×10
20atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
19atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
19atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下とする。また、窒素濃度は、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、または、酸化物半導体膜のある領域において、5×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0142】
また、酸化物半導体膜が結晶を含む場合、シリコンや炭素が高濃度で含まれると、酸化物半導体膜の結晶性を低下させることがある。酸化物半導体膜の結晶性を低下させないためには、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、または、酸化物半導体膜のある領域において、シリコン濃度を1×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
18atoms/cm
3未満とする部分を有していればよい。また、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、または、酸化物半導体膜のある領域において、炭素濃度を1×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
18atoms/cm
3未満とする部分を有していればよい。
【0143】
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
【0144】
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0145】
微結晶酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc−OS膜は、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0146】
nc−OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OS膜に対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0147】
nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そのため、nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0148】
酸化物半導体膜がCAAC−OS膜であったとしても、部分的にnc構造などと同様の回折パターンが観測される場合がある。したがって、CAAC−OS膜の良否は、一定の範囲におけるCAAC構造の回折パターンが観測される領域の割合(CAAC比率、またはCAAC化率ともいう。)で表すことができる場合がある。ここで、CAAC比率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上100%以下である。
【0149】
次に、非晶質酸化物半導体膜について説明する。
【0150】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶部を有さない酸化物半導体膜である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体膜が一例である。
【0151】
非晶質酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において結晶部を確認することができない。
【0152】
非晶質酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物半導体膜に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物半導体膜に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターンが観測される。
【0153】
なお、酸化物半導体膜は、nc−OS膜と非晶質酸化物半導体膜との間の物性を示す構造を有する場合がある。そのような構造を有する酸化物半導体膜を、特に非晶質ライク酸化物半導体(amorphous−like OS:amorphous−like Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。
【0154】
amorphous−like OS膜は、高分解能TEM像において鬆(ボイドともいう。)が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。amorphous−like OS膜は、TEMによる観察程度の微量な電子照射によって、結晶化が起こり、結晶部の成長が見られる場合がある。一方、良質なnc−OS膜であれば、TEMによる観察程度の微量な電子照射による結晶化はほとんど見られない。
【0155】
なお、amorphous−like OS膜およびnc−OS膜の結晶部の大きさの計測は、高分解能TEM像を用いて行うことができる。例えば、InGaZnO
4の結晶は層状構造を有し、In−O層の間に、Ga−Zn−O層を2層有する。InGaZnO
4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有する。よって、これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。そのため、高分解能TEM像における格子縞に着目し、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所においては、それぞれの格子縞がInGaZnO
4の結晶のa−b面に対応する。
【0156】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、amorphous−like OS膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0157】
以下では、CAAC−OSの組成について説明する。なお、組成の説明には、CAAC−OSとなる酸化物半導体であるIn−M−Zn酸化物の場合を例示する。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステンなどがある。
【0158】
図15は、各頂点にIn、MまたはZnを配置した三角図である。また、図中の[In]はInの原子濃度を示し、[M]は元素Mの原子濃度を示し、[Zn]はZnの原子濃度を示す。
【0159】
In−M−Zn酸化物の結晶はホモロガス構造を有することが知られており、InMO
3(ZnO)
m(mは自然数。)で示される。また、InとMとを置き換えることが可能であるため、In
1+αM
1−αO
3(ZnO)
mで示すこともできる。これは、
図15において、[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:1、[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:2、[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:3、[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:4、および[In]:[M]:[Zn]=1+α:1−α:5と表記した破線で示される組成である。
【0160】
図15の破線上の太線は、例えば、原料となる酸化物を混合し、1350℃で焼成した場合に単一相の固溶域をとり得ることが知られている組成である。また、
図15に四角のシンボルで示す座標は、スピネル型の結晶構造が混在しやすいことが知られている組成である。
【0161】
例えば、スピネル型の結晶構造を有する化合物として、ZnGa
2O
4などのZnM
2O
4で表される化合物が知られている。
図15に示すようにZnM
2O
4の近傍の組成、つまり(In,Zn,M)=(0,1,2)に近い値を有する場合には、スピネル型の結晶構造が形成、あるいは混在しやすい。CAAC−OS膜は、特にスピネル型の結晶構造が含まれないことが好ましい。
【0162】
また、キャリア移動度を高めるためにはInの含有率を高めることが好ましい。インジウム、元素M及び亜鉛を有する酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、インジウムの含有率を多くすることにより、より多くのs軌道が重なるため、インジウムの含有率が多い酸化物はインジウムの含有率が少ない酸化物と比較して移動度が高くなる。そのため、酸化物半導体膜にインジウムの含有量が多い酸化物を用いることで、キャリア移動度を高めることができる。
【0163】
よって、
図4の半導体662の組成は、
図15に示した太線の組成の近傍であることが好ましい。こうすることで、トランジスタのチャネル形成領域を、CAAC化率の高い領域とすることができる。さらに、半導体662のInの含有率を高めることで、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。上記の条件を満たす組成のうち、半導体662として、In:M:Zn=4:2:3(金属原子数比)が特に好ましい。
【0164】
以上、トランジスタのチャネル形成領域をCAAC−OSとすることで、信頼性が高く、オン電流の高いトランジスタを提供することが可能になる。また、高周波でも動作可能なトランジスタを提供することができる。
【0165】
ところで、CAAC−OSをスパッタリング法で成膜する際には、被成膜面である基板表面の加熱、または空間加熱などの影響で、ソースとなるターゲットなどの組成と膜の組成とが異なる場合がある。例えば、酸化亜鉛は、酸化インジウムや酸化ガリウムなどと比べて昇華しやすいため、ソースと膜との組成のずれが生じやすい。したがって、あらかじめ組成の変化を考慮したソースを選択することが好ましい。なお、ソースと膜との組成のずれ量は、温度以外にも圧力や成膜に用いるガスなどの影響でも変化する。
【0166】
また、CAAC−OSをスパッタリング法で成膜する際は、多結晶構造を含むターゲットを用いることが好ましい。
【0167】
〈〈トランジスタの構成例2〉〉
図4において、トランジスタに1つのゲート電極が設けられている場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。トランジスタに複数のゲート電極が設けられていてもよい。一例として、
図4に示したトランジスタ600に、第2のゲート電極として導電膜681が設けられている例を、
図6(A)乃至
図6(D)に示す。
図6(A)は上面図であり、
図6(A)に示す一点鎖線Y1−Y2方向の断面が
図6(B)に相当し、
図6(A)に示す一点鎖線X1−X2方向の断面が
図6(C)に相当し、
図6(A)に示す一点鎖線X3−X4方向の断面が
図6(D)に相当する。なお、
図6(A)乃至
図6(D)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示している。
【0168】
図6は、基板640と絶縁膜652との間に、絶縁膜651、導電膜681及び絶縁膜682を有している点で、
図4と異なる。
【0169】
絶縁膜651は、基板640と導電膜681を電気的に分離させる機能を有する。絶縁膜651には、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上含む絶縁体を用いてもよい。また、絶縁膜651には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂を用いてもよい。また、絶縁膜651は上記材料の積層であってもよい。
【0170】
導電膜681は、導電膜673の説明で記載された材料を用いることができる。導電膜681は、第2のゲート電極としての機能を有する。導電膜681は、一定の電位が供給されていてもよいし、導電膜673と同じ電位や、同じ信号が供給されていてもよい。
【0171】
絶縁膜682は、絶縁膜652に含まれる酸素が、導電膜681に含まれる金属と結びつき、絶縁膜652に含まれる酸素が減少することを防ぐ機能を有する。絶縁膜682は、絶縁膜654の説明で記載された材料を用いることができる。
【0172】
〈〈トランジスタの構成例3〉〉
図4に示すトランジスタ600は、半導体663及び絶縁膜653を、導電膜673と同時にエッチングしてもよい。一例として、
図7(A)乃至
図7(D)に示す。
図7(A)は上面図であり、
図7(A)に示す一点鎖線Y1−Y2方向の断面が
図7(B)に相当し、
図7(A)に示す一点鎖線X1−X2方向の断面が
図7(C)に相当し、
図7(A)に示す一点鎖線X3−X4方向の断面が
図7(D)に相当する。なお、
図7(A)乃至
図7(D)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示している。
【0173】
図7では、半導体663及び絶縁膜653が、導電膜673の下のみに存在し、それ以外の場所では除去されているようすがわかる。
【0174】
〈〈トランジスタの構成例4〉〉
図4に示すトランジスタ600は、導電膜671及び導電膜672が、半導体661の側面及び半導体662の側面と接していてもよい。一例として、
図8(A)乃至
図8(D)に示す。
図8(A)は上面図であり、
図8(A)に示す一点鎖線Y1−Y2方向の断面が
図8(B)に相当し、
図8(A)に示す一点鎖線X1−X2方向の断面が
図8(C)に相当し、
図8(A)に示す一点鎖線X3−X4方向の断面が
図8(D)に相当する。なお、
図8(A)乃至
図8(D)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示している。
【0175】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0176】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に適用可能な、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い記憶装置の一例を、図面を参照して説明する。
【0177】
図9(A)に示す回路はメモリセルとして機能することができる。
図9(A)に示すメモリセルは、第1の半導体材料を用いたトランジスタ701と第2の半導体材料を用いたトランジスタ700、および容量素子705を有している。なお、トランジスタ700としては、実施の形態2で説明したトランジスタを用いることができる。
【0178】
トランジスタ700は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるnチャネル型トランジスタである。トランジスタ700は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0179】
図9(A)では、トランジスタ701をnチャネル型トランジスタとして説明を行う。
【0180】
図9(A)において、配線SLはトランジスタ701のソース及びドレインの一方に電気的に接続され、配線BLはトランジスタ701のソース及びドレインの他方に電気的に接続されている。また、配線BLはトランジスタ700のソース及びドレインの一方に電気的に接続され、配線GLはトランジスタ700のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ701のゲート、トランジスタ700のソース及びドレインの他方及び容量素子705の第1の端子は、ノードFGに電気的に接続されている。配線CLは容量素子705の第2の端子に電気的に接続されている。
【0181】
図9(A)に示すメモリセルでは、トランジスタ701のゲートの電位が保持可能という特徴を活かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0182】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、配線GLの電位を、トランジスタ700がオン状態となる電位にして、トランジスタ700をオン状態とする。これにより、配線BLの電位が、ノードFGに与えられる。すなわち、ノードFGには、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、配線GLの電位を、トランジスタ700がオフ状態となる電位にして、トランジスタ700をオフ状態とすることにより、ノードFGに与えられた電荷が保持される(保持)。
【0183】
トランジスタ700のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ701のゲートの電荷は長時間にわたって保持される。
【0184】
次に、情報の読み出しについて説明する。配線SLに所定の電位(定電位)を与え、配線BLを電気的に浮遊状態にした後、配線CLに適切な電位(読み出し電位)を与えると、ノードFGに保持された電荷量に応じて、配線SLから配線BLへ電流が流れ込み、配線BLの電位は変化する。一般に、トランジスタ701をnチャネル型とすると、ノードFGにHighレベル電荷が与えられている場合のトランジスタ701の見かけのしきい値V
th_Hは、ノードFGにLowレベル電荷が与えられている場合のトランジスタ701の見かけのしきい値V
th_Lより低くなる。見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ701を「オン状態」とするために必要な配線CLの電位をいうものとする。したがって、配線CLの電位をV
th_HとV
th_Lの間の電位V
0とすることにより、トランジスタ701のゲートに与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、配線CLの電位がV
0(>V
th_H)となれば、トランジスタ701は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、配線CLの電位がV
0(<V
th_L)となっても、トランジスタ701は「オフ状態」のままである。このため、配線BLの電位を判別することで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0185】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲートの状態にかかわらずトランジスタ701が「オフ状態」となるような電位、つまり、V
th_Hより小さい電位を配線CLに与えればよい。または、ゲートの状態にかかわらずトランジスタ701が「オン状態」となるような電位、つまり、V
th_Lより大きい電位を配線CLに与えればよい。
【0186】
図9(B)に示すように、トランジスタ701はpチャネル型トランジスタでもよい。
【0187】
図9(C)に示すメモリセルは、トランジスタ701を設けていない点で
図9(A)及び
図9(B)と相違している。この場合も上記と同様の動作により情報の書き込み及び保持動作が可能である。
【0188】
次に、
図9(C)に示すメモリセルの情報の読み出しについて説明する。トランジスタ700がオン状態となると、浮遊状態である配線BLと容量素子705とが導通し、配線BLと容量素子705の間で電荷が再分配される。その結果、配線BLの電位が変化する。配線BLの電位の変化量は、容量素子705の第1の端子の電位(または容量素子705に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0189】
例えば、容量素子705の第1の端子の電位をV、容量素子705の容量をC、配線BLが有する容量成分をC
B、電荷が再分配される前の配線BLの電位をV
B0とすると、電荷が再分配された後の配線BLの電位は、(C
B×V
B0+C×V)/(C
B+C)となる。従って、メモリセルの状態として、容量素子705の第1の端子の電位がV
1とV
0(V
1>V
0)の2状態をとるとすると、電位V
1を保持している場合の配線BLの電位(=(C
B×V
B0+C×V
1)/(C
B+C))は、電位V
0を保持している場合の配線BLの電位(=(C
B×V
B0+C×V
0)/(C
B+C))よりも高くなることがわかる。
【0190】
そして、配線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0191】
この場合、メモリセルを駆動させるための駆動回路に上記第1の半導体材料が適用されたトランジスタを用い、トランジスタ700として第2の半導体材料が適用されたトランジスタを駆動回路上に積層して設ける構成とすればよい。
【0192】
本実施の形態に示すメモリセルでは、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0193】
また、本実施の形態に示すメモリセルでは、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0194】
図10は、
図9(A)に示す半導体装置の構成の一例を示す断面図である。また、
図10は、各トランジスタのチャネル長方向の断面構造を示している。
【0195】
図10に示す半導体装置は、トランジスタ700と、トランジスタ701と、容量素子705と、基板730と、素子分離層731と、絶縁膜732と、絶縁膜733と、プラグ711と、プラグ712と、プラグ713と、プラグ714と、プラグ715と、配線721と、配線722と、配線723と、配線724と、配線741とを有している。なお、
図10のある一つの構成要素に符号を与えた場合、該構成要素と同一の層に形成されている同じ構成要素は、煩雑さを避けるために符号の記載を省略している。
【0196】
トランジスタ700は、実施の形態2に記載のトランジスタを適用することができる。
【0197】
トランジスタ701は、ソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域751及び不純物領域755と、ゲート電極752と、ゲート絶縁膜753と、側壁絶縁層754と、を有している。
【0198】
トランジスタ701は第1の半導体材料を有し、トランジスタ700は第2の半導体材料を有している。第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが好ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコン(歪シリコン含む)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、アルミニウムガリウムヒ素、インジウムリン、窒化ガリウム、有機半導体など)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料として単結晶シリコンなどを用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、実施の形態2で例示したトランジスタを適用することで、優れたサブスレッショルド特性が得られ、微細なトランジスタとすることが可能である。また、スイッチ速度が速いため高速動作が可能であり、オフ電流が低いためリーク電流が小さい。
【0199】
トランジスタ701は、nチャネル型のトランジスタまたはpチャネル型のトランジスタのいずれであってもよく、回路によって適切なトランジスタを用いればよい。
【0200】
また、トランジスタ701は、側壁絶縁層754の下に、LDD(Lightly Doped Drain)領域やエクステンション領域として機能する不純物領域を設けてもよい。特に、トランジスタ701をnチャネル型とする場合は、ホットキャリアによる劣化を抑制するため、LDD領域やエクステンション領域を設けることが好ましい。
【0201】
また、トランジスタ701としてシリサイド(サリサイド)を有するトランジスタや、側壁絶縁層754を有さないトランジスタを用いてもよい。シリサイド(サリサイド)を有する構造であると、ソース領域およびドレイン領域がより低抵抗化でき、半導体装置の高速化が可能である。また、低電圧で動作できるため、半導体装置の消費電力を低減することが可能である。
【0202】
配線741は、トランジスタ700の第2のゲートとして機能するが、場合によっては、配線741を省略してもよい。
【0203】
容量素子705は、第1の電極725と、第2の電極726と、絶縁膜734を含む。
【0204】
基板730としては、シリコンや炭化シリコンから成る単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムから成る化合物半導体基板や、SOI(Silicon on Insulator)基板などを用いることができる。半導体基板を用いて形成されたトランジスタは、高速動作が容易である。なお、基板730としてp型の単結晶シリコン基板を用いた場合、基板730の一部にn型を付与する不純物元素を添加してn型のウェルを形成し、n型のウェルが形成された領域にp型のトランジスタを形成することも可能である。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)、砒素(As)等を用いることができる。p型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)等を用いることができる。
【0205】
また、基板730として、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルム、などを用いてもよい。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。金属基板の一例としては、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板などがある。可撓性基板の一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチック、又はアクリル等の可撓性を有する合成樹脂などがある。貼り合わせフィルムの一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。基材フィルムの一例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0206】
なお、ある基板を用いて半導体素子を形成し、その後、別の基板に半導体素子を転置してもよい。半導体素子が転置される基板の一例としては、上述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、又は薄型化を図ることができる。
【0207】
トランジスタ701は、素子分離層731により、基板730に形成される他のトランジスタと分離されている。素子分離層731は、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上含む絶縁体を用いることができる。
【0208】
配線741は、配線741は、配線721乃至723に用いることができる材料で形成してもよい。なお、場合によっては、配線741を省略してもよい。配線724は、トランジスタ700のソースまたはドレインと、同一の材料で形成することができる。
【0209】
ここで、下層に設けられるトランジスタ701にシリコン系半導体材料を用いた場合、トランジスタ701の半導体膜の近傍に設けられる絶縁膜中の水素はシリコンのダングリングボンドを終端し、トランジスタ701の信頼性を向上させる効果がある。一方、上層に設けられるトランジスタ700に酸化物半導体を用いた場合、トランジスタ700の半導体膜の近傍に設けられる絶縁膜中の水素は、酸化物半導体中にキャリアを生成する要因の一つとなるため、トランジスタ700の信頼性を低下させる要因となる場合がある。したがって、シリコン系半導体材料を用いたトランジスタ701の上層に酸化物半導体を用いたトランジスタ700を積層して設ける場合、これらの間に水素の拡散を防止する機能を有する絶縁膜732を設けることは特に効果的である。絶縁膜732により、下層に水素を閉じ込めることでトランジスタ701の信頼性が向上することに加え、下層から上層に水素が拡散することが抑制されることでトランジスタ700の信頼性も同時に向上させることができる。
【0210】
絶縁膜732としては、例えば酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いることができる。
【0211】
また、酸化物半導体膜を含んで構成されるトランジスタ700を覆うように、トランジスタ700上に水素の拡散を防止する機能を有する絶縁膜733を形成することが好ましい。絶縁膜733としては、絶縁膜732と同様の材料を用いることができ、特に酸化アルミニウムを適用することが好ましい。酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物および酸素の双方に対して膜を透過させない遮断(ブロッキング)効果が高い。したがって、トランジスタ700を覆う絶縁膜733として酸化アルミニウム膜を用いることで、トランジスタ700に含まれる酸化物半導体膜からの酸素の脱離を防止するとともに、酸化物半導体膜への水および水素の混入を防止することができる。
【0212】
プラグ711乃至715は、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)の低抵抗材料からなる単体、もしくは合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とすることが好ましい。特に、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。また、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。さらに、Cu−Mn合金を用いると、酸素を含む絶縁体との界面に酸化マンガンを形成し、酸化マンガンがCuの拡散を抑制する機能を持つので好ましい。
【0213】
配線721乃至723、配線741及び電極725、726は、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)の低抵抗材料からなる単体、もしくは合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とすることが好ましい。特に、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。また、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。さらに、Cu−Mn合金を用いると、酸素を含む絶縁体との界面に酸化マンガンを形成し、酸化マンガンがCuの拡散を抑制する機能を持つので好ましい。
【0214】
配線724は、トランジスタ700のソースまたはドレインと同じ製造工程で形成することができる。
【0215】
図10において、容量素子705は、トランジスタ701及びトランジスタ700の上に形成されているが、容量素子705は、トランジスタ701よりも上、且つトランジスタ700よりも下に形成してもよい。
【0216】
また、必要に応じて、トランジスタ700の上に、実施の形態2で示したトランジスタをさらに形成してもよい。
【0217】
図10において、符号及びハッチングパターンが与えられていない領域は絶縁体で構成された領域を表している。これらの領域には、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上含む絶縁体を用いることができる。また、当該領域には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂を用いることもできる。
【0218】
ここで、トランジスタ701に換えて
図11(A)及び
図11(B)に示すようなトランジスタ703を用いてもよい。
図11(B)は、
図11(A)に示す一点鎖線A−Bを通り、
図11(A)と垂直な面の断面を示す。トランジスタ703はチャネルが形成される半導体層756(半導体基板の一部)が凸形状を有し、その側面及び上面に沿ってゲート絶縁膜753及びゲート電極752が設けられている。またトランジスタの間には素子分離層731が設けられている。このようなトランジスタ703は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁膜を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体層を形成してもよい。
【0219】
また、我々の研究では、OSトランジスタにおける電子移動度のチャネル長依存性は、Siトランジスタにおける電子移動度のチャネル長依存性ほど影響が大きくないことが分かっている。OSトランジスタは、チャネル長を10μmから100nmまで微細化しても、電界効果移動度の明確な低下がみられない。
【0220】
そのためOSトランジスタを10μm以下のチャネル長のトランジスタに用いる場合、Siトランジスタとの電界効果移動度の差はトランジスタのチャネル長を10μm以上としたときよりも小さくなる。OSトランジスタを100nm以下のチャネル長のトランジスタに用いる場合、Siトランジスタの30分の1程度、好ましくは10分の1程度、より好ましくは3分の1程度の電界効果移動度まで差を縮めることが可能である。
【0221】
そのため、OSトランジスタを100nm世代のトランジスタに用いる場合、Siトランジスタと同程度の電界効果移動度を実現することが可能である。そのため、微細加工されたOSトランジスタでは、Siトランジスタと同等のスイッチング速度、周波数特性を実現することが可能である。
【0222】
また、OSトランジスタは、オフ電流が低い特性を有する。OSトランジスタを用いた回路においては、オフ電流が低いことで電荷を保持するための容量を小さくすることができる。そのため、微細加工されたOSトランジスタでは、Siトランジスタと同等のスイッチング速度、周波数特性を実現することが可能である。
【0223】
本実施の形態の構成は、他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせることができる。
【0224】
(実施の形態4)
本発明の一態様に係る記憶装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る記憶装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を
図12に示す。
【0225】
図12(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体901、筐体902、表示部903、表示部904、マイクロフォン905、スピーカ906、操作キー907、スタイラス908等を有する。なお、
図12(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部903と表示部904とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
【0226】
図12(B)は、携帯電話機であり、筐体911、表示部916、操作ボタン914、外部接続ポート913、スピーカ917、マイク912などを備えている。
図12(B)に示す携帯電話機は、指などで表示部916に触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指などで表示部916に触れることにより行うことができる。また、操作ボタン914の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部916に表示される画像の種類を切り替えることができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
【0227】
図12(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体921、表示部922、キーボード923、ポインティングデバイス924等を有する。
【0228】
図12(D)は電気冷凍冷蔵庫であり、筐体931、冷蔵室用扉932、冷凍室用扉933等を有する。
【0229】
図12(E)はビデオカメラであり、第1筐体941、第2筐体942、表示部943、操作キー944、レンズ945、接続部946等を有する。操作キー944およびレンズ945は第1筐体941に設けられており、表示部943は第2筐体942に設けられている。そして、第1筐体941と第2筐体942とは、接続部946により接続されており、第1筐体941と第2筐体942の間の角度は、接続部946により変更が可能である。表示部943における映像を、接続部946における第1筐体941と第2筐体942との間の角度に従って切り替える構成としても良い。
【0230】
図12(F)は自動車であり、車体951、車輪952、ダッシュボード953、ライト954等を有する。
【0231】
また、本発明の一態様に係る記憶装置は、メモリカード等の記録媒体に用いることができる。
図13に示すのは、USBコネクタを有するメモリカード(通称、USBメモリ、あるいはUSB Stick、Pen Drive等とも言う)1730である。メモリカード1730は主たる筐体1731とキャップ1732を有する。筐体1731には、基板1733とUSBコネクタ1737が設けられる。基板1733には、本発明の一態様である記憶装置1735を設ける。また、基板1733上には必要に応じて制御回路等を設けてもよい。メモリカード1730は、必要に応じて、バッテリーなどの電源を備えてもよい。
【0232】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態または実施例と適宜組み合わせることができる。
【0233】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る記憶装置が用いられるRFタグの使用例について
図14を用いながら説明する。RFタグの用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、
図14(A)参照)、記録媒体(DVDやビデオテープ等、
図14(B)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、
図14(C)参照)、乗り物類(自転車等、
図14(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等)、食品類、植物類、動物類、人体、衣類、生活用品類、薬品や薬剤を含む医療品、または電子機器(液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置、または携帯電話)等の物品、若しくは各物品に取り付ける荷札(
図14(E)、
図14(F)参照)等に設けて使用することができる。
【0234】
本発明の一態様に係るRFタグ4000は、表面に貼る、または埋め込むことにより、物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込み、有機樹脂からなるパッケージであれば当該有機樹脂の内部に埋め込み、各物品に固定される。本発明の一態様に係るRFタグ4000は、小型、薄型、軽量を実現するため、物品に固定した後もその物品自体のデザイン性を損なうことがない。また、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、または証書類等に本発明の一態様に係るRFタグ4000を設けることにより、認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、または電子機器等に本発明の一態様に係るRFタグを取り付けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図ることができる。また、乗り物類であっても、本発明の一態様に係るRFタグを取り付けることにより、盗難などに対するセキュリティ性を高めることができる。
【0235】
以上のように、本発明の一態様に係わるRFタグを本実施の形態に挙げた各用途に用いることにより、情報の書込みや読み出しを含む動作電力を低減できるため、最大通信距離を長くとることが可能となる。また、電力が遮断された状態であっても情報を極めて長い期間保持可能であるため、書き込みや読み出しの頻度が低い用途にも好適に用いることができる。
【0236】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせることができる。