特許第6616103号(P6616103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6616103車両用バッテリパックにおけるバッテリモジュール支持構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616103
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】車両用バッテリパックにおけるバッテリモジュール支持構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20191125BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20191125BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20191125BHJP
   H01M 10/6565 20140101ALI20191125BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20191125BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H01M2/10 K
   H01M2/10 S
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/6565
   B60K1/04 Z
   B60K11/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-103339(P2015-103339)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-219262(P2016-219262A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 泰央
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/069278(WO,A1)
【文献】 特開2012−190611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
B60K 1/04
B60K 11/06
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6565
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるパックケースの内部に、ラミネートフィルム外装型二次電池をモジュールケース内に収容してなるバッテリモジュールが、平積み形式で複数段重ねたスタックとして配置された車両用バッテリパックにおいて、
上記スタックの車両前後方向に向かう2つの端面の一方に、パックケースの底面に支持されて上方へ立ち上がった第1のブラケットが車両幅方向に離れた少なくとも2つの固定点で固定されており、
他方に、パックケースの底面に支持されて上方へ立ち上がった第2のブラケットが車両幅方向に離れた少なくとも2つの固定点で固定されており、
上記第1のブラケットの上記スタックに対する固定点は、車両幅方向に沿った位置としてスタックの両側部寄りに設定されており、
上記第2のブラケットの上記スタックに対する固定点は、車両幅方向に沿った位置として、上記第1のブラケットの固定点よりもスタックの中央寄りに設定されている、ことを特徴とする車両用バッテリパックにおけるバッテリモジュール支持構造。
【請求項2】
上記第1のブラケットは、車両幅方向に離れて位置する一対のブラケットとして構成されており、
上記第2のブラケットは、車両幅方向に離れた複数の固定点を含む一つのブラケットとして構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリパックにおけるバッテリモジュール支持構造。
【請求項3】
複数段重なった第1のバッテリモジュールの組と、同じ段数重なった第2のバッテリモジュールの組と、が車両幅方向に隣接して配置され、両者が一体化されて一つのスタックを構成しており、
上記第2のブラケットの固定点は、各組のバッテリモジュールの車両幅方向の中央にそれぞれ設定されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用バッテリパックにおけるバッテリモジュール支持構造。
【請求項4】
上記第2のブラケットの基部は、各組のバッテリモジュールに対する上記の固定点の位置に比較して、2つの組の境界となるスタックの中央部寄りの位置でパックケースに対し固定されている、ことを特徴とする請求項3に記載の車両用バッテリパックにおけるバッテリモジュール支持構造。
【請求項5】
上記スタックの上記の一方の端面に隣接して、パックケースの左右の側壁を連結する車両幅方向に延びたクロスビームがパックケースの底面に設けられており、
上記バッテリモジュールが並べられるパックケースの底面よりも上方に位置する上記クロスビームの頂面に、上記第1のブラケットが支持されている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用バッテリパックにおけるバッテリモジュール支持構造。
【請求項6】
上記パックケースは、長辺が車両進行方向に沿った姿勢で車両に搭載される略長方形状をなし、
個々のバッテリモジュールの短辺側に設けられた端子がパックケースの長手方向を向くように各バッテリモジュールが配置されており、
上記パックケースの長手方向の一方の端部に、パックケース内で冷却風を循環させる冷却ユニットと、複数のリレーを格納したジャンクションボックスと、がパックケースの幅方向に並んで配置されており、
上記冷却ユニットは、パックケースの外周に沿って冷却風を送るように構成され、この冷却風の最下流にジャンクションボックスが位置している、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用バッテリパックにおけるバッテリモジュール支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気自動車やハイブリッド自動車などにおける車両用バッテリパックに関し、特に、パックケース内部でのバッテリモジュール支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動には大容量の二次電池が必要であることから、車両用バッテリパックとして、特許文献1や特許文献2に開示されているように、偏平な箱形をなすバッテリモジュールをパックケース内に複数収容した構成のものが知られている。
【0003】
ここで、特許文献1には、一部のバッテリモジュールが平積み形式(バッテリモジュールの主面がパックケースの底面に実質的に平行となる配置形式。横置き形式ともいう。)でパックケース内に配置される一方で、残りの多数のバッテリモジュールが、縦置き形式(バッテリモジュールの主面がパックケースの底面に実質的に垂直となる配置形式)でもって一列のスタックとして配列された構成が開示され、また特許文献2には、全てのバッテリモジュールが縦置き形式でもってパックケース内に配置された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−171662号公報
【特許文献2】特開2015−26428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように縦置き形式としたバッテリモジュールを含む構成では、縦置き形式に配置されたバッテリモジュールの高さ寸法によってバッテリパックの上下方向寸法が実質的に定まることから、設計の自由度が少ない。そのため、例えば小型の車両などでは、バッテリモジュールを平積み形式でパックケース内に並べたバッテリパックの方が設計の自由度が高く、好適である。
【0006】
しかしながら、その反面、平積み形式で多数のバッテリモジュールを収容しようとすると、上下方向に重ねるバッテリモジュールの段数が多くなる。つまり比較的高さの高いスタックがパックケースの底面で固定支持された構成となる。そのため、車両衝突時などに大きな加速度が作用すると、スタックの底部を支点としてスタック全体が大きく揺動し、バッテリモジュール内部の単電池が損傷するおそれがある。特に、単電池としてラミネートフィルム外装型二次電池を用いた場合には、単電池の損傷が生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るバッテリモジュール支持構造は、
車両に搭載されるパックケースの内部に、ラミネートフィルム外装型二次電池をモジュールケース内に収容してなるバッテリモジュールが、平積み形式で複数段重ねたスタックとして配置された車両用バッテリパックにおいて、
上記スタックの車両前後方向に向かう2つの端面の一方に、パックケースの底面に支持されて上方へ立ち上がった第1のブラケットが車両幅方向に離れた少なくとも2つの固定点で固定されており、
他方に、パックケースの底面に支持されて上方へ立ち上がった第2のブラケットが車両幅方向に離れた少なくとも2つの固定点で固定されており、
上記第1のブラケットの上記スタックに対する固定点は、車両幅方向に沿った位置としてスタックの両側部寄りに設定されており、
上記第2のブラケットの上記スタックに対する固定点は、車両幅方向に沿った位置として、上記第1のブラケットの固定点よりもスタックの中央寄りに設定されている、ことを特徴としている。
【0008】
このような構成では、衝突などによりスタックが車両前後方向に沿って大きな加速度を受けたときに、前後に位置する第1および第2のブラケットによってスタックが拘束され、その揺動が抑制される。特に、第1のブラケットと第2のブラケットとで、車両幅方向の間隔が異なる複数の固定点でスタックが支持されるため、スタックに加わった加速度が効果的に分散され、確実に固定支持される。また、車両側面衝突などによりスタックが車両幅方向に沿って加速度を受けたときには、第1のブラケットがスタックの両側部を支持しているので、やはりスタックの揺動が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、平積み形式で複数段積層したバッテリモジュールをパックケースの底面に確実に支持することができ、衝突時などにバッテリモジュール内部のラミネートフィルム外装型二次電池の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明のバッテリモジュール支持構造が適用されたバッテリパックの一例を示す斜視図。
図2】パックケースロアの平面図。
図3図1の要部を拡大して示す斜視図。
図4図2とは反対側から見た要部の斜視図。
図5】前側ブラケットの基端を支持する前側ブラケット固定金具の斜視図。
図6】前側ブラケットの取付状態を拡大して示す斜視図。
図7】前側部分における要部の断面図。
図8】後側ブラケットの斜視図。
図9】後側部分における要部の断面図。
図10】後側ブラケットの基端を支持する後側ブラケット固定金具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明に係るバッテリモジュール支持構造を備えたバッテリパック1の全体的な構成を示している。このバッテリパック1は、比較的小型の電気自動車に適用されるもので、略長方形状をなすパックケース2内に複数のバッテリモジュール3が収容されて構成されている。
【0013】
パックケース2は、図1に示すように、下半部を構成するパックケースロア2Aと、上半部を構成するパックケースアッパ2Bと、に2分割して構成されており、それぞれ、十分な剛性を有するように例えばアルミニウム合金などの金属材料を用いて皿状に一体に鋳造されている。これらのパックケースロア2Aおよびパックケースアッパ2Bは、周囲のフランジ4,5を互いに突き合わせた上で図示せぬボルトを締結することによって、一体に組み立てられる。
【0014】
パックケース2は、平面視において細長い長方形をなすが、その長辺が車両進行方向に沿った姿勢で図示せぬ車両に搭載される。例えば、車体フロアの中央部に車両前後方向に沿って設けられるフロアトンネル部に沿った形でもって、車両フロアの下面側に取り付けられる。
【0015】
ここで、以下の説明の便宜のために、図1に付記したように、細長いパックケース2の長辺に沿った方向を「前後方向L」と、細長いパックケース2の短辺に沿った方向を「幅方向W」と、これらと直交する方向を「上下方向H」と、それぞれ定義し、以下の説明では、極力これらの用語を用いることとする。「前後方向L」は、「車両進行方向」、「車両の前後方向」、「パックケース2の長手方向」と実質的に同義であり、「幅方向W」は、「車両の幅方向」、「パックケース2の幅方向」と実質的に同義である。「上下方向H」は、「高さ方向」と同義である。また、図1の左側が車両の前方、図1の右側が車両の後方、となるので、パックケース2の前・後についても、図1の左側を「前」、図1の右側を「後」とする。
【0016】
従って、パックケース2は、前後方向Lの寸法が幅方向Wの寸法よりも小さく、かつ上下方向Hの寸法が幅方向Wの寸法よりも小さな、偏平な略長方形状をなしている。
【0017】
バッテリモジュール3は、一対の主面(最も面積の大きな面)が長方形をなす偏平な箱形に構成されており、平積み形式(バッテリモジュール3の主面がパックケース2の底面に実質的に平行となる配置形式。横置き形式ともいう。)でもってパックケース2内に並べられている。詳しくは、幅方向Wに2個のバッテリモジュール3が並べられているとともに、前後方向Lに3個のバッテリモジュール3が並べられており、かつ上下方向Hには、複数段にバッテリモジュール3が積層されている。つまり、複数段に積層されたバッテリモジュール3が、平面視では、2×3の形で計6箇所に配置されている。
【0018】
バッテリモジュール3は、金属製のモジュールケース内に複数の単電池を収容したものであり、偏平な長方形をなすモジュールケースの短辺側の側面に正負の端子6がそれぞれ矩形の突起状に突出して設けられている。モジュール3に収容される単電池としては、図示しないが、シート状の正極および負極をセパレータを介して交互に多数積層してなる電極積層体を、ラミネートフィルムからなる可撓性を有する外装体の内部に電解液とともに収容した偏平なラミネートフィルム外装型リチウムイオン電池が用いられている。複数の偏平なラミネートフィルム外装型リチウムイオン電池は、バッテリモジュール3の厚さ方向つまり図1では上下方向Hに積層されている。
【0019】
図2にも示すように、パックケース2内において、各バッテリモジュール3は、いずれもバッテリモジュール3の長辺が前後方向Lに沿った向きでもって配置されており、幅方向Wに隣り合う2つのバッテリモジュール3は、殆ど隙間のない形に互いに近接している。つまり、幅方向Wに隣り合う2つのバッテリモジュール3は長辺となる側面同士が互いに隣接している。
【0020】
各バッテリモジュール3の端子6は、上述したようにバッテリモジュール3の短辺側の側面に設けられているので、各バッテリモジュール3は、いずれも、端子6がパックケース2の前後方向Lを向いた姿勢となっている。
【0021】
前後方向Lに隣り合うバッテリモジュール3の間には、それぞれ、端子6に対するバスバーやハーネス(いずれも図示せず)の接続作業に必要な適宜な間隔が設けられている。
【0022】
また、パックケース2の前端部には、パックケース2内で冷却風を循環させる冷却ユニット8と、複数のリレーやフューズを内部に格納したジャンクションボックス9と、が収容されている。これらの冷却ユニット8およびジャンクションボックス9は、パックケース2の幅方向Wに並んで配置されている。
【0023】
冷却ユニット8は、いわゆるシロッコファン形式のものであり、その吸入口は、幅方向Wの一方、詳しくは、ジャンクションボックス9の側へ向かって開口しており、特に、冷却ユニット8の高い位置に設けられている。この吸入口の背部には、外部から冷媒が供給される図示せぬエバポレータが設けられており、パックケース2内で循環する冷却風の冷却を行っている。
【0024】
ジャンクションボックス9は、偏平な箱形のケース内に多数のリレーやフューズを格納したものであり、その上下方向Hの寸法は冷却ユニット8の上下方向Hの寸法に比較して小さい。従って、冷却ユニット8の吸入口は、ジャンクションボックス9に比較して相対的に高い位置に開口しており、ジャンクションボックス9に向かって開口しているものの、ジャンクションボックス9に覆われることはない。一実施例では、ジャンクションボックス9の上面よりも吸入口の下縁が高い位置にある。
【0025】
冷却ユニット8によって供給される冷却風は、基本的にパックケース2の外周に沿って流れる(図2で時計回り方向)とともに、前後方向Lに隣り合うバッテリモジュール3の間に設けられた間隙を通って幅方向Wに流れる。なお、パックケースロア2Aの側壁7とバッテリモジュール3との間には、図示せぬハーネス類の配置のために適宜な間隙が保たれており、これによって前後方向Lに直線的に連続した流路が構成されている。従って、パックケース2内での冷却風の流れが単純であり、流れに伴う圧力損失が比較的小さくなることから、小型つまり小容量の冷却ユニット8でもって十分な冷却が可能となる。これにより、例えば、冷却に伴う騒音の低減、消費電力の抑制、などが図れる。
【0026】
幅方向Wに沿った流路を構成するバッテリモジュール3間の前後方向Lの間隙は、上述したように、端子6の接続作業に必要な空間を兼ねており、従って、バッテリパック1の小型化と冷却風流路の確保との両立の上で有利である。
【0027】
ここで、バッテリモジュール3とともに発熱部位であるジャンクションボックス9は、パックケース2内での冷却風の流れの最下流、換言すれば、冷却ユニット8の吸入口の直前に位置している。ジャンクションボックス9は、一般にバッテリモジュール3よりも高温となるので、バッテリモジュール3周囲を通過してある程度温度上昇した冷却風であっても、バッテリモジュール3との温度差を比較的大きく確保できることから、冷却風による効果的な冷却作用が得られる。従って、ジャンクションボックス9を冷却風の流れの最下流に配置することで、限られた容量の冷却風によりバッテリモジュール3とジャンクションボックス9との双方を効果的に冷却することができる。また、冷却ユニット8の吸入口は、ジャンクションボックス9よりも相対的に高い位置に開口しており、ファンによる冷却ユニット8への吸入を阻害しない。冷却風は、ジャンクションボックス9の上面に沿って流れ、ジャンクションボックス9を冷却する。冷却ユニット8に戻ってきた高温の空気は、内部のエバポレータにおける冷媒との熱交換により冷却された上で、再度、バッテリモジュール3へ向けて送り出される。
【0028】
次に、本発明の要部であるバッテリモジュール3の支持構造を図3図10を参照して説明する。図3は、図1の部分Aの拡大斜視図であり、図4は、図3と反対側つまり後側から見た斜視図である。ここでは、3段に積層した3つのバッテリモジュール3の組(第1の組BM1)と、同じく3段に積層した3つのバッテリモジュール3の組(第2の組BM2)と、が前述したように実質的に隙間なく隣接して配置され、これら2つの組つまり6個のバッテリモジュール3が一つのスタックSTとして纏められている。具体的には、スタックSTの上面と下面とに、それぞれエンドプレート11,12(図7図9参照)が配置されており、各バッテリモジュール3の四隅を貫通する計8本の通しボルト13でもって両エンドプレート11,12を互いに締め付けることにより、3段に積層したバッテリモジュール3が両者間に挟まれた形に一体化されている。
【0029】
このように一体化されたスタックSTは、パックケース2(パックケースロア2A)の底面上に載置され、かつ下端のエンドプレート12が図示せぬボルト等によってパックケースロア2Aの底面に固定されている。そして、加速度が加わったときのスタックSTの揺動を抑制するために、図3に示す一対の前側ブラケット21と、図4に示す単一の後側ブラケット22と、によって前後から支持されている。なお、この実施例では、前側ブラケット21が「第1のブラケット」に、後側ブラケット22が「第2のブラケット」に、それぞれ相当する。
【0030】
前側ブラケット21は、図6図7に示すように、一対の側壁21aを有する断面略U字形のチャンネル材を略L字形に曲げた構成であり、相対的に短い取付基部21bと、相対的に長く延びた支持部21cと、を備えている。取付基部21bは、後述する態様でパックケース2(パックケースロア2A)の底面に固定支持されており、支持部21cは、この取付基部21bから上下方向Hに沿って上方へ延びて、スタックSTの上面と略等しい高さ位置に達している。
【0031】
一対の前側ブラケット21は、スタックSTの幅方向Wの両側部に沿って互いに平行に配設されており、各々の支持部21cが、上下の2箇所でボルト24,ナット25を介してスタックSTの前端面に固定されている。詳しくは、図7に示すように、スタックSTの上面に位置するエンドプレート11と最上段のバッテリモジュール3との間ならびに最上段のバッテリモジュール3と中間段のバッテリモジュール3との間に、それぞれ、前述した通しボルト13を利用して前側中間フレーム26が挟持されており、その前端縁がL字形に折り曲げられた上で、ボルト24がスタッドボルトとして固定されている。これらの上下2本のボルト24に、ナット25を介して前側ブラケット21の支持部21cが固定されている。つまり、各々の前側ブラケット21は、上下方向Hについて、最下段のバッテリモジュール3の上部付近と、中間段のバッテリモジュール3の上部付近と、の2箇所に固定点を備えている。そして、一方の前側ブラケット21の固定点と他方の前側ブラケット21の固定点とは、幅方向Wに互いに大きく離れており、それぞれ、スタックSTの幅方向Wの両側部に位置する。スタックSTは、前述したように3個のバッテリモジュール3を積層した第1の組BM1と同じく3個のバッテリモジュール3を積層した第2の組BM2とを含み、全体が一体化されているが、より詳しくは、一方の前側ブラケット21が第1の組BM1に連結され、他方の前側ブラケット21が第2の組BM2に連結されている。
【0032】
前側ブラケット21の取付基部21bは、スタックSTの前方に沿って設けられたクロスビーム27の頂面27aに、前側ブラケット固定金具28およびボルト29,ナット30を介して固定されている。クロスビーム27は、図3に示すように、パックケースロア2Aの左右の側壁10を互いに連結するように幅方向Wに沿って延びており、かつ、図6に示すように、パックケースロア2Aの底面から台形状に立ち上がった断面形状を有する。このクロスビーム27は、例えば鋼板から構成され、パックケースロア2Aの底面および側壁10の内側面に例えば溶接等で取り付けられている。前側ブラケット固定金具28は、図5にも示すように、帯状の鋼板をいわゆるハット型に折り曲げ形成したものであり、一対の取付片28aがそれぞれクロスビーム27の頂面27aに溶接されている。この前側ブラケット固定金具28の中央の支持片28bにおける取付孔28cに、ボルト29がスタッドボルトとして固定されており、ナット30を締め付けることにより、前側ブラケット21の取付基部21bが支持片28b上に固定されている。
【0033】
スタックSTがパックケースロア2Aの底面上に載置されているのに対し、クロスビーム27は、パックケースロア2Aの底面から上方に立ち上がっているので、前側ブラケット21の取付基部21bは、スタックSTの下面位置に比較して相対的に高い位置で固定支持されている。例えば図7に示すように、最下段のバッテリモジュール3と中間段のバッテリモジュール3との境界付近の高さ位置に、取付基部21bの下端面が位置している。
【0034】
次に、後側ブラケット22の構成について説明する。後側ブラケット22は、比較的厚い鋼板をプレス加工したものであり、図4および図8に示すように、上半部が矩形で下半部が二等辺三角形の五角形に近似した形状をなしており、矩形部分の四隅に、後述するボルト32,ナット33を介した固定点となる取付孔31(図8)が配置されている。この矩形部分の上端縁は、スタックSTの上面の高さとほぼ一致しており、両側の側縁は、各バッテリモジュール3の幅方向Wの中心よりも僅かに外側となる位置にある。そして、下半部は、下方へ向かうに従って幅方向Wの寸法が小さくなっていき、下端に、90°折り曲げられた略矩形の取付基部35を備えている。また、曲げ等に対する剛性を高めるために、リブ36がプレス加工されている。このリブ36は、取付基部35から上端縁まで上下方向Hに沿って直線的に延びる中央リブ36aと、この中央リブ36aから固定点(取付孔31)の各々へ向かって斜めに延びた4本の傾斜リブ36bと、を含み、これらのリブ36を介して各固定点から取付基部35への力の伝達を図っている。なお、二等辺三角形に近似した形状をなす下半部の側縁は、下側の傾斜リブ36bに沿った形状をなしている。
【0035】
後側ブラケット22は、その4箇所に設けられた取付孔31において、それぞれボルト32,ナット33を介してスタックSTの後端面に固定されている。詳しくは、図9に示すように、スタックSTの上面に位置するエンドプレート11と最上段のバッテリモジュール3との間ならびに最上段のバッテリモジュール3と中間段のバッテリモジュール3との間に、それぞれ、前述した通しボルト13を利用して後側中間フレーム38が挟持されており、その後端縁がL字形に折り曲げられた上で、ボルト32がスタッドボルトとして固定されている。これらの上下2本(計4本)のボルト32に、ナット33を介して後側ブラケット22が固定されている。つまり、上下方向Hについては、最下段のバッテリモジュール3の上部付近と、中間段のバッテリモジュール3の上部付近と、の2箇所に固定点を備えている。そして、左側の上下2つの固定点と右側の上下2つの固定点とは、幅方向Wに互いに離れており、前者がスタックSTの中の第1の組BM1に連結され、後者が第2の組BM2に連結されている。この後側ブラケット22における左右の固定点の幅方向Wの間隔は、一対の前側ブラケット21における左右の固定点の幅方向Wの間隔よりも小さい。換言すれば、後側ブラケット22における左右の固定点は、前側ブラケット21の左右の固定点に比較して、スタックSTの中央寄りに設定されている。より詳しくは、左側の上下2つの固定点は、スタックSTの第1の組BM1における各バッテリモジュール3の幅方向Wの中央に位置しており、右側の上下2つの固定点は、第2の組BM2における各バッテリモジュール3の幅方向Wの中央に位置している。
【0036】
後側ブラケット22の下端の取付基部35は、パックケースロア2Aの底面に、後側ブラケット固定金具41およびボルト42,ナット43を介して固定されている。後側ブラケット固定金具41は、図10に示すように、ハット型断面をなすように鋼板の3辺を折り曲げ形成したものであり、3箇所の取付片41aがそれぞれパックケースロア2Aの底面上に溶接されている。この後側ブラケット固定金具41の中央の支持片41bにおける一対の取付孔41cに、それぞれボルト42がスタッドボルトとして固定されており、ナット43を締め付けることにより、後側ブラケット22の取付基部35が支持片41b上に固定されている。
【0037】
後側ブラケット22は、基本的に左右対称に構成されており、下端の取付基部35は、スタックSTの幅方向Wの中央つまりバッテリモジュール3の第1の組BM1と第2の組BM2との境界となる位置にある。換言すれば、スタックSTの幅方向Wの中央部において、後側ブラケット22はパックケースロア2Aの底面に支持されている。
【0038】
次に、上記のように構成されたバッテリモジュール3の支持構造における作用ならびに利点について説明する。
【0039】
上記のようにパックケース2内に偏平な箱形をなすバッテリモジュール3を平積み形式で収容することにより、例えば上下方向Hに沿った積層段数の調整などによりバッテリパック1の上下方向Hの設計の自由度が高くなり、パックケースアッパ2Bの上面形状やこれに対応する車体フロアの形状などについても設計の自由度が高くなる。その反面、バッテリパック1の容量の確保のためにバッテリモジュール3の積層段数が多くなると、スタックSTが高くなり、急加速時や急減速時さらには車両の衝突時などに大きな加速度が作用したときに、スタックSTの底部を支点としてスタックST全体が大きく揺動する懸念が生じる。特に、バッテリモジュール3内の単電池としてラミネートフィルム外装型二次電池を用いた場合には、スタックSTの揺動によって、単電池の端子などの損傷が生じやすい。
【0040】
上記の実施例では、スタックSTの前方および後方に配置した前側ブラケット21および後側ブラケット22がスタックSTの上部寄りの位置を前後で支承しており、これらの前側ブラケット21および後側ブラケット22によってスタックSTの上部とパックケースロア2Aとが連結されているので、前後方向Lおよび幅方向WのいずれについてもスタックSTの揺動が抑制される。
【0041】
特に、一対の前側ブラケット21は、幅方向Wに拡がった左右の固定点でスタックSTに連結され、後側ブラケット22は、相対的に幅方向Wの間隔が狭い左右の固定点でスタックSTに連結されており、スタックSTを上面から見た平面視(図2参照)において、4箇所の固定点が台形を呈するような態様となるので、前後方向Lおよび幅方向Wの双方に対し高い支持剛性が得られる。換言すれば、スタックSTの前側と後側とで幅方向Wの間隔が異なる複数の固定点でスタックSTが支持されるため、例えば前後方向Lに沿ってスタックSTに加わった加速度が効果的に分散される。そして、車両側面衝突などによりスタックSTが幅方向Wに沿って加速度を受けたときには、前側ブラケット21がスタックSTの両側部を支持しているので、幅方向WへのスタックSTの揺動が効果的に抑制される。
【0042】
ここで、前側ブラケット21の下端は、スタックSTの下面位置よりも高い位置となるクロスビーム27の頂面27aの上に支持されている。そのため、前側ブラケット21は、支持構造体となるクロスビーム27とスタックSTの上部との間をスタックSTの全高よりも短い距離で連結することとなり、これにより、前側ブラケット21自体の強度確保が容易になるとともに、スタックSTに対する支持剛性が高く得られる。なお、クロスビーム27は、前後方向Lに隣り合う隣りのスタックの間に設けられるので、クロスビーム27の付加によるパックケース2の大型化は実質的に生じない。
【0043】
一方、後側ブラケット22は、各々の固定点が、第1の組BM1および第2の組BM2の各々のバッテリモジュール3の中央に位置している。つまり、個々のバッテリモジュール3の重心を通る中心線上に固定点が配置されており、例えば前後方向Lに沿った加速度が各バッテリモジュール3の重心に作用したときに、個々のバッテリモジュール3を重心を通る中心線上で効果的に支持することができる。この結果、通しボルト13でもって一体化されている6個のバッテリモジュール3からなるスタックSTの歪みや変形を回避しつつスタックST全体を効果的に支持することができる。
【0044】
また、後側ブラケット22は、下端がスタックSTの中央寄りの位置でパックケースロア2Aに固定されている。そのため、例えばスタックSTに幅方向Wに沿って加速度が作用したときに、傾斜リブ36bに沿って斜めに直線的に荷重を支承することができる。従って、幅方向Wの間隔が広い一対の前側ブラケット21による支持と相俟って、幅方向Wに沿った加速度によるスタックSTの揺動が効果的に抑制される。
【0045】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、パックケース内に平積み形式で多段に積層されるバッテリモジュールの支持に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…バッテリパック
2…パックケース
2A…パックケースロア
2B…パックケースアッパ
3…バッテリモジュール
21…前側ブラケット
22…後側ブラケット
27…クロスビーム
ST…スタック
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