(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
〔ブロック共重合体組成物〕
本実施形態のブロック共重合体組成物は、
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体100質量部と、
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体0.3〜5質量部と、
を、含有し、前記ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体の重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000である、ブロック共重合体組成物である。
【0018】
以下、前記重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000であるビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体について、重量平均分子量の記載及び「主体とする」旨の記載を省略して、単に「低分子量ビニル芳香族重合体」と記載する場合もある。
【0019】
ここで、本願明細書において、ブロック共重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」といい、重合体の材料として記載する場合は「単位」を省略し、単に「〜単量体」と記載する。
また、本願明細書において、「主体とする」とは、重合体ブロック中、所定の単量体単位の含有量が70質量%以上であることをいう。所定の単量体単位を主体とする重合体ブロックは、所定の単量体単位の含有量が70質量%以上であればよく、好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%以上である。
また、本願明細書において、「共役ジエン単量体」は、水素添加された共役ジエン単量体も包含する。
【0020】
(低分子量ビニル芳香族重合体)
本実施形態のブロック共重合体組成物は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000である重合体を含有する。
重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体、すなわち低分子量ビニル芳香族重合体におけるビニル芳香族単量体単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンからなる群より選択される少なくとも一つの単量体に由来するビニル芳香族単量体単位が挙げられる。
このなかでも、経済性の観点から、スチレンに由来するビニル芳香族単量体単位であることが好ましい。
ビニル芳香族単量体単位は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0021】
低分子量ビニル芳香族重合体は、スチレン及び/又はα−メチルスチレンを主体とする重合体であることが好ましく、スチレンを主体とする重合体であることがより好ましい。
【0022】
低分子量ビニル芳香族重合体は、後述する「ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体」の重合体ブロック(A)に主体として含まれるビニル芳香族単量体単位と同じビニル芳香族単量体単位を主体とすることが好ましい。
【0023】
低分子量ビニル芳香族重合体は、ビニル芳香族単量体単位を主体とすれば、一部に共役ジエン化合物や、その他のビニル芳香族単量体単位と共重合可能な化合物が共重合したものであってもよい。
【0024】
本実施形態において、低分子量ビニル芳香族重合体の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜30,000である。これにより、後述する本実施形態の粘接着組成物においては、高い粘着力、高いタック性、高い保持力、及び粘接着組成物製造時の優れた耐熱変色性が得られ、改質アスファルト組成物においては、高い軟化点、高い低温伸度、高い耐わだち掘れ性、高い耐熱安定性、優れた低温折曲げ性、及び優れた加工性(低い溶融粘度)が得られ、また、舗装用バインダ組成物においては、高い軟化点、高い低温伸度、低い溶融粘度、高い耐わだち掘れ性、高い耐熱安定性、及び高い耐熱変色性が得られる。
【0025】
本実施形態において、低分子量ビニル芳香族重合体の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜30,000であればよく、8,000〜28,000であることが好ましく、10,000〜25,000であることがより好ましく、10,000〜20,000であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態のブロック共重合体組成物において、低分子量ビニル芳香族重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.02〜2.0であることが好ましい。
これにより、後述する粘接着組成物においては、優れた粘接着力、粘着保持力、及び溶解性が得られ、改質アスファルト組成物においては、高い軟化点、加工性、耐わだち掘れ性が得られ、舗装用バインダ組成物では、高い軟化点、加工性、耐わだち掘れ性が得られる。
【0027】
低分子量ビニル芳香族重合体の分子量分布(Mw/n)は、1.02〜1.5であることがより好ましく、1.02〜1.2であることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態のブロック共重合体組成物中、前記低分子量ビニル芳香族重合体の含有量は、ブロック共重合体100質量部に対して、0.3〜5質量部である。これにより、粘接着組成物においては、優れた粘接着力、粘着保持力、及び溶解性が得られ、改質アスファルト組成物においては、高い軟化点、加工性、及び耐わだち掘れ性が得られ、舗装用バインダ組成物では、高い軟化点、加工性、耐わだち掘れ性が得られる。
【0029】
本実施形態のブロック共重合体組成物中、低分子量ビニル芳香族重合体の含有量は、ブロック共重合体100質量部に対して1〜5質量部であることが好ましく、1.5〜4.5質量部であることがより好ましい。
【0030】
(ブロック共重合体)
本実施形態のブロック共重合体組成物は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体(以下、単に、ブロック共重合体と記載する場合がある。)を含有する。
【0031】
共役ジエン単量体単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンからなる群より選択される少なくとも一つの単量体に由来する共役ジエン単量体単位が挙げられる。
これらのなかでも、好ましくは、1,3−ブタジエン、及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも一つの単量体に由来する共役ジエン単量体単位が挙げられ、1,3−ブタジエンに由来する共役ジエン単量体単位がより好ましい。
共役ジエン単量体単位は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ビニル芳香族単量体単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンからなる群より選択される少なくとも一つの単量体に由来するビニル芳香族単量体単位が挙げられる。これらのなかでも経済性の観点から、スチレンに由来するビニル芳香族単量体単位が好ましい。
ビニル芳香族単量体単位は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本実施形態において、ブロック共重合体の構造としては、以下に限定されるものではないが、例えば、以下の式(1)〜(6)で表される構造が挙げられる。
なお、ブロック共重合体が水素添加(以下、「水添」ともいう)されたブロック共重合体である場合、以下の式(1)〜(6)は水添前の構造を示すものとする。
(A−B)
n ・・・(1)
B−(A−B)
n ・・・(2)
A−(B−A)
n ・・・(3)
A−(B−A)
n−X ・・・(4)
[(A−B)
k]
m−X ・・・(5)
[(A−B)
k−A]
m−X ・・・(6)
【0034】
上記式(1)〜(6)中、Aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを表し、Bは、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロックを表し、Xは、カップリング剤の残基、又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表し、m、n及びkは、1以上の整数を表し、好ましくは1〜5の整数を表す。
【0035】
水素添加前のブロック共重合体中に重合体ブロック(A)及び(B)が複数存在している場合には、各々の分子量や組成等の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
ブロック共重合体は、Xがカップリング剤の残基であるカップリング体と、Xを有しない又はXが重合開始剤の残基である非カップリング体との混合物であってもよい。
各ブロックの境界や最端部は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位との共重合体ブロックが存在してもよい。
【0036】
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)中や、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の分布は、特に限定されず、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。
重合体ブロック中に、結晶部が存在していてもよい。
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)中には、ビニル芳香族単量体単位の含有量の異なるセグメントが複数個共存していてもよい。
【0037】
本実施形態のブロック共重合体組成物において、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加率は特に限定されない。
【0038】
本実施形態の粘接着組成物において、高いタック性、及び低い溶融粘度(優れた加工性)を得、改質アスファルト組成物においては、高い低温伸度、低い溶融粘度、及び優れた低温折曲げ性を得、舗装用バインダバインダ組成物においては、高い低温伸度、及び低い溶融粘度等を得る観点から、ブロック共重合体の水素添加率の上限値は、共役ジエン単量体単位の全モル数を基準として97モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましく、93モル%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態の粘接着剤実施形態において、高い軟化点、高い保持力、高い耐熱安定性、及び粘接着組成物製造時の優れた耐熱変色性を得、改質アスファルト組成物においては、高い軟化点、高い耐わだち掘れ性、及び高い耐熱安定性を得、舗装用バインダバインダ組成物においては、高い低温伸度、低い溶融粘度、高い耐熱安定性、及び高い耐熱変色性等を得る観点から、ブロック共重合体の水素添加率の下限値は、共役ジエン単量体単位の全モル数を基準として10モル%以上であることが好ましく、12モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましい。
【0040】
ブロック共重合体の水素添加率は、後述する水添工程における水素添加量や水添反応時間を調整することにより制御することができる。また、水素添加率は後述する実施例に記載する方法により求めることができる。
【0041】
本実施形態の粘接着組成物において、優れた粘着力、タック性、及び保持力の性能バランスを得、改質アスファルト組成物においては、優れた軟化点、低温伸度、耐わだち掘れ性、及び低温折曲げ性の性能バランスを得、舗装用バインダバインダ組成物においては、優れた軟化点、低温伸度、及び耐わだち掘れ性の性能バランス等を得る観点から、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、11質量%以上58質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上56質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
(ブロック共重合体組成物の製造方法)
<ブロック共重合体組成物の第一の製造方法>
本実施形態のブロック共重合体組成物の第一の製造方法は、
ビニル芳香族単量体を重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造し、前記リビング重合体に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するリビングブロック共重合体を製造する、重合工程であって、当該重合工程で用いたビニル芳香族単量体の一部を、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体として残存させる、重合工程と、
前記リビングブロック共重合体、及び残存した前記リビング重合体を失活させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体、及び重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体を製造する、失活工程とを有し、
前記ブロック共重合体100質量部に対し、前記ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体の含有量を0.3〜5質量部とするものである。
【0043】
<ブロック共重合体組成物の第二の製造方法>
本実施形態のブロック共重合体組成物の第二の製造方法は、ビニル芳香族単量体を重合させ、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造する、第一の重合工程と、
前記ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体のうち一部を失活させて、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体を製造する、第一の失活工程と、
前記第一の失活工程において失活せずに残った前記ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体の活性末端に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するリビングブロック共重合体を製造する、第二の重合工程と、
前記リビングブロック共重合体を失活させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する、第二の失活工程とを有し、
前記ブロック共重合体100質量部に対し、前記ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体の含有量を0.3〜5質量部とするものである。
【0044】
<ブロック共重合体組成物の第三の製造方法>
本実施形態のブロック共重合体組成物の第三の製造方法は、ビニル芳香族単量体を重合させ、ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造し、前記リビング重合体に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するリビングブロック共重合体を製造する、重合工程と、
前記リビングブロック共重合体を失活させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する、失活工程と、
前記ブロック共重合体100質量部に対し、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体0.3〜5質量部を混合する混合工程とを有するものである。
【0045】
本実施形態において、後述する粘接着組成物、改質アスファルト組成物、又は舗装用バインダ組成物を製造するにあたり、低分子量ビニル芳香族重合体とブロック共重合体とを、第一の製造方法若しくは第二の製造方法により同時に調製して、又は第三の製造方法により予め混合して、ブロック共重合体組成物を製造した後に、ブロック共重合体組成物と各材料とを混合することが好ましい。
【0046】
<ブロック共重合体組成物の第一の製造方法>
以下、前記ブロック共重合体組成物の製造方法について、詳細に説明する。
前記ブロック共重合体組成物の第一の製造方法における重合工程では、ビニル芳香族単量体を重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造し、前記リビング重合体に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するリビングブロック共重合体を製造する。
この際、前記重合工程で用いたビニル芳香族単量体の一部を、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体として残存させる。
【0047】
第一の製造方法における重合工程において、ビニル芳香族単量体の一部を、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体として残存させる方法としては、重合工程で添加する単量体の量、重合開始剤の量、反応温度、及び反応時間等を制御する方法が挙げられる。
【0048】
第一の製造方法における重合工程では、リビング重合体に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させた後、さらに、ビニル芳香族単量体単位を重合させることにより、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)と、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)とをこの順に有するリビングブロック共重合体を製造することができる。
【0049】
低分子量ビニル芳香族重合体の分子量及び含有量を制御する観点から、重合体ブロック(A)を重合する際の反応開始温度を55℃以上65℃以下とすることが好ましい。
重合体ブロック(A)を重合する際の反応時間としては、重合反応により温度が上昇し、温度が最高値を示してから2分以上、5分30秒以下であることが好ましい。
【0050】
重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体の残存量は、後述する失活工程の後に得られるブロック共重合体100質量部に対し、低分子量ビニル芳香族重合体が0.3〜5質量部となれば特に限定されない。
【0051】
重合工程では、炭化水素溶媒中、リチウム化合物を重合開始剤として、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有する上記リビング重合体を得ることが好ましい。
【0052】
炭化水素溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
重合開始剤であるリチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物等の分子中に一個以上のリチウム原子を結合した化合物が挙げられる。
このような有機リチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ビニル芳香族単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。
これらのなかでも経済性の観点から、スチレンが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
共役ジエン単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の1対の共役二重結合を有するジオレフィンが挙げられる。
これらのなかでも、好ましくは、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
また、機械強度の観点から、1,3−ブタジエンがより好ましい。
これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
ビニル芳香族単量体の他、共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体と共重合可能な他の単量体を用いることもできる。
【0057】
重合工程においては、重合速度の調整、重合した共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランス、及びビニルの比率)の調整、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体との反応比率の調整等を目的として、極性化合物(「ランダム化剤」とも呼ばれる)を使用してもよい。
【0058】
極性化合物(「ランダム化剤」とも呼ばれる)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」ともいう)等のアミン類;チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホルアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
【0059】
重合工程で実施する重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用できる。
公知の方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0060】
重合工程において、重合開始剤、又は単量体として、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物を用いて、得られるブロック共重合体に、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を付加することが好ましい。
【0061】
官能基を含む重合開始剤としては、窒素含有基を含有する重合開始剤が好ましい。
窒素含有基を含有する重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジオクチルアミノリチウム、ジ−2−エチルヘキシルアミノリチウム、エチルベンジルアミノリチウム、(3−(ジブチルアミノ)−プロピル)リチウム、ピペリジノリチウム等が挙げられる。
【0062】
官能基を含む単量体としては、窒素含有基を含有する単量体が好ましい。
窒素含有基を含有する単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、N,N−ジエチルビニルベンジルアミン、N,N−ジプロピルビニルベンジルアミン、N,N−ジブチルビニルベンジルアミン、N,N−ジフェニルビニルベンジルアミン、2−ジメチルアミノエチルスチレン、2−ジエチルアミノエチルスチレン、2−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、N,N−ジメチル−2−(4−ビニルベンジロキシ)エチルアミン、4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、4−(2−モルホリノエチル)スチレン、4−(2−チアジノエチル)スチレン、4−(2−N−メチルピペラジノエチル)スチレン、1−((4−ビニルフェノキシ)メチル)ピロリジン、及び1−(4−ビニルベンジロキシメチル)ピロリジン等が挙げられる。
【0063】
第一の製造方法における失活工程では、重合工程で製造したリビングブロック共重合体、及び重合工程で残存したリビング重合体を失活させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体、及び重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体を製造する。
【0064】
活性水素を有する化合物とリビング重合体とを反応させることで、リビング重合体の活性末端を失活することができる。
当該活性水素を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、経済性の観点から、アルコール、及び水等を挙げることができる。
【0065】
得られたブロック共重合体は、カップリング剤を用いてカップリングしてもよい。
カップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、2官能以上の任意のカップリング剤を用いることができる。
2官能のカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどの2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;ジブロモベンゼン、安息香酸、CO、2―クロロプロペンなどが挙げられる。
【0066】
3官能のカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;などが挙げられる。
【0067】
4官能のカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;などが挙げられる。
【0068】
5官能以上のカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,1,1,2,2−ペンタクロロエタン,パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテルなどのポリハロゲン化炭化水素化合物が挙げられる。
その他、エポキシ化大豆油、2〜6官能のエポキシ基含有化合物、カルボン酸エステル、ジビニルベンゼンなどのポリビニル化合物を用いることもできる。
【0069】
カップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
ブロック共重合体に対して水素添加工程を行う場合、得られたブロック共重合体の共役ジエン単量体単位中の二重結合の一部に水素を添加する。
水素添加工程に使用される水素添加触媒(「水添触媒」ともいう)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、Ni、Pt、Pd、Ru等の金属を、カーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた、担持型不均一系触媒;Ni、Co、Fe、Cr等の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機Al等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物等のいわゆる有機錯触媒;及びチタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mg等を用いる均一触媒等が挙げられる。
これらのなかでも、経済性、重合体の着色性あるいは接着力の観点から、チタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mg等を用いる均一触媒系が好ましい。
【0071】
水素添加工程の方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報に記載された方法や、好ましくは特公昭63−4841号公報及び特公昭63−5401号公報に記載された方法が挙げられる。具体的には、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加工程を行い、ブロック共重合体溶液を得ることができる。
水素添加工程は、高い水添活性の観点から、失活工程の後に行うことが好ましい。
水素添加工程は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも行うことができる。
【0072】
水素添加工程において、ビニル芳香族単量体単位の共役結合が水素添加されてもよい。
全ビニル芳香族単量体単位中の共役結合の水素添加率の上限値は、ビニル芳香族中の不飽和基全量を基準として、例えば30mol%以下、10mol%以下、又は3mol%以下とすることができ、下限値は、例えば0.1mol%以上とすることができ、又は0mol%であってもよい。
【0073】
前記カップリング剤、又は停止剤として、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物を用いて、得られるブロック共重合体に、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を付加することが好ましい。
【0074】
官能基を含むカップリング剤及び停止剤としては、前述のカップリング剤及び停止剤の内、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基を含むカップリング剤及び停止剤が挙げられる。
【0075】
これらの中でも、窒素含有基又は酸素含有基を含有するカップリング剤及び停止剤が好ましい。
窒素含有基又は酸素含有基を含有するカップリング剤及び停止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、γ−カプロラクトン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0076】
得られたブロック共重合体から炭化水素溶媒等を除くため、脱溶剤工程を行うことが好ましい。
脱溶剤工程では、ブロック共重合体を含む重合体溶液の溶媒を脱溶剤する。
脱溶剤の方法としては、以下に限定されるものではないが、スチームストリッピング法、及び直接脱溶媒法が挙げられる。
【0077】
脱溶剤工程により得られるブロック共重合体中の残存溶媒量は、少なければ少ないほど好ましく、2質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることがさらにより好ましく、0.01質量%以下であることがよりさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
経済性の観点から、通常、ブロック共重合体中の残存溶媒量は、0.01質量%〜0.1質量%の範囲である。
【0078】
ブロック共重合体の耐熱老化性やゲル化抑制の観点から、ブロック共重合体に酸化防止剤を添加することが好ましい。
酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラジカル補捉剤等のフェノール系酸化防止剤、過酸化物分解剤等のリン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
また、両性能を併せ持つ酸化防止剤を使用してもよい。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、ブロック共重合体の耐熱老化性やゲル化抑制の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0079】
ブロック共重合体の着色防止や機械強度向上の観点から、脱溶剤工程の前に、ブロック共重合体を含む溶液中の金属を除去する脱灰工程、ブロック共重合体を含む溶液のpHを調整する中和工程を行ってもよく、例えば、酸の添加、及び/又は炭酸ガスの添加を行ってもよい。
【0080】
第一の製造方法により重合した低分子量ビニル芳香族重合体は、本実施形態のブロック共重合体組成物の分子量を測定する際に、低分子量成分として検出されるので、その際に低分子量ビニル芳香族重合体の重量平均分子量(Mw)、及びその分子量分布(Mw/Mn)を測定することができる。
【0081】
<ブロック共重合体組成物の第二の製造方法>
以下、ブロック共j空剛体組成物の第二の製造方法について、詳細に説明する。
第二の製造方法においては、「第一の重合工程」において、ビニル芳香族単量体を重合させ、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造する。
【0082】
ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体の重量平均分子量(Mw)は、低分子量ビニル芳香族重合体の重量平均分子量を調整する観点から、5,000〜30,000であればよく、8,000〜28,000であることが好ましく、10,000〜25,000であることがより好ましく、10,000〜20,000であることがさらに好ましい。
【0083】
重合工程で用いる炭化水素溶媒、単量体、極性化合物、及び重合工程で適用する重合方法等については、前記第一の製造方法で説明したものと同様のものを適用することができる。
【0084】
本実施形態のブロック共重合体組成物の第二の製造方法における第一の失活工程では、第一の重合工程で得られたビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体のうち一部を失活させて、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体を製造する。
【0085】
第一の失活工程においては、活性水素を有する化合物とリビング重合体とを反応させることで、リビング重合体の活性末端を失活することができる。
活性水素を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、経済性の観点から、アルコール、及び水等を挙げることができる。
【0086】
第一の失活工程で失活させるリビング重合体の量は、後述する第二の失活工程により得られるブロック共重合体100質量部に対し、低分子量ビニル芳香族重合体の含有量が0.3〜5質量部になるように調整することができれば、特に限定されない。
【0087】
第一の失活工程の後、第二の重合工程を行う前に、失活せずに残ったビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体の活性末端に、さらにビニル芳香族単量体単位を重合させてもよい。
【0088】
第二の製造方法における第二の重合工程では、第一の失活工程において失活せずに残ったリビング重合体の活性末端に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するリビングブロック共重合体を製造する。
【0089】
重合工程で用いる炭化水素溶媒、重合開始剤、ビニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、極性化合物、及び重合工程で適用する重合方法については、第一の重合工程で適用したものと同様のものを適用することができる。
【0090】
第二の重合工程の後、さらにビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)を重合させてもよい。
【0091】
第二の重合工程においては、適宜カップリング工程、水素添加工程、脱溶剤工程、脱灰工程等を実施してもよく、これらの工程については、第一の製造方法と同様に行うことができる。
【0092】
第二の製造方法における第二の失活工程では、第二の重合工程で得られたリビングブロック共重合体を失活させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する。
【0093】
失活剤は、第一の失活工程で使用したものと同様のものを使用することができる。
【0094】
第二の製造方法により重合した低分子量ビニル芳香族重合体は、本実施形態のブロック共重合体組成物の分子量を測定する際に、低分子量成分として検出されるので、その際に低分子量ビニル芳香族重合体の重量平均分子量(Mw)、及びその分子量分布(Mw/Mn)を測定することができる。
【0095】
<ブロック共重合体組成物の第三の製造方法>
第三の製造方法における重合工程では、ビニル芳香族単量体単位を重合させ、ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造し、前記リビング重合体に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するリビングブロック共重合体を製造する。
【0096】
重合工程において用いる炭化水素溶媒、単量体、極性化合物、及び重合工程で適用する重合方法等は、第一の製造方法で適用したものと同様のものを適用することができる。
【0097】
第三の製造方法における失活工程では、重合工程で得られたリビングブロック共重合体を失活させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する。
【0098】
失活剤は、第一の製造方法で使用したものと同様のものを使用することができる。
【0099】
第三の製造方法においては、適宜カップリング工程、水素添加工程、脱溶剤工程、脱灰工程等を実施してもよく、これらの工程については、第一の製造方法と同様に行うことができる。
【0100】
本実施形態のブロック共重合体組成物の第三の製造方法における混合工程においては、前記ブロック共重合体100質量部に対し、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体0.3〜5質量部を混合する。
【0101】
混合工程における混合方法は、特に限定されず、任意の混合機を用いて行うことができる。
混合機としては、以下に限定されるものではないが、例えば、押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練機、垂直インペラ、サイドアーム型インペラ等の攪拌機、乳化機を含めたホモジナイザー、及びポンプが挙げられる。
【0102】
低分子量ビニル芳香族重合体の重合方法としては、特に限定はされず、ラジカル開始剤を用いたラジカル重合法、又はラジカル開始剤を用いない熱によるラジカル重合法、有機リチウム化合物等を用いたアニオン重合法、メタロセン化合物を用いた配位重合法、連鎖移動剤を用いた重合法等、公知の重合法を用いることができる。
重合形態についても特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等、何れの方法であってもよい。
【0103】
低分子量ビニル芳香族重合体の好適な重合方法としては、有機リチウム化合物を用いたアニオン重合法が挙げられる。アニオン重合法によれば、低分子量ビニル芳香族重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn))を1.02〜2.0に制御しやすく、低分子量ビニル芳香族重合体中の、残留スチレンモノマー、スチレンダイマー、トリマーの量の削減が容易となるため、好ましい。
【0104】
第三の製造方法では、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000の市販の低分子量ビニル芳香族重合体を、ブロック共重合体と混合し、本実施形態のブロック共重合体組成物を製造してもよい。
重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000の市販の低分子量ビニル芳香族重合体としては、例えば、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のポリスチレンを使用することができる。
【0105】
〔粘接着組成物、及びこれに用いるブロック共重合体組成物〕
本実施形態のブロック共重合体組成物は、その第一実施形態として、粘接着組成物に用いることができる。
【0106】
本実施形態の粘接着組成物は、例えば、粘接着性テープ、ラベル、及びおむつ等の組み立てに用いられ、高い粘着力、高いタック性、高い粘着保持力、及び優れた耐熱変色性を有している。
【0107】
すなわち第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物を粘接着組成物に用いることにより、粘着力、タック性、粘着保持力、及び耐熱変色性に優れた粘接着組成物を提供することができる。
【0108】
(第一実施形態におけるブロック共重合体組成物)
第一実施形態においては、ブロック共重合体組成物は、粘着力、タック性、粘着保持力、及び耐熱変色性の観点から、ブロック共重合体が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)とを有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0109】
第一実施形態のブロック共重合体組成物において、これに含まれるブロック共重合体の構造としては、以下に限定されないが、例えば、下記の式(7)〜(12)で表される構造のブロック共重合体が挙げられる。
ブロック共重合体は水素添加されたブロック共重合体であってもよい。ブロック共重合体が水素添加されたブロック共重合体である場合は、下記式(7)〜(12)は水添前の構造を表す。
(A−B1)
n ・・・(7)
B1−(A−B1)
n ・・・(8)
A−(B1−A)
n ・・・(9)
A−(B1−A)
n−X ・・・(10)
[(A−B1)
k]
m−X ・・・(11)
[(A−B1)
k−A]
m−X ・・・(12)
【0110】
上記式(7)〜(12)中、Aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを表し、B1は、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックを表し、Xはカップリング剤の残基、又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表し、m、n及びkは1以上の整数を表し、好ましくは1〜5の整数を表す。
【0111】
第一実施形態において、水素添加前のブロック共重合体中に重合体ブロック(A)及び(B1)が複数存在している場合には、各々の分子量や組成等の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(7)〜(12)中、Xは、カップリング剤の残基又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表す。
ブロック共重合体は、Xがカップリング剤の残基であるカップリング体と、Xを有しない又はXが重合開始剤の残基である非カップリング体との混合物であってもよい。
各ブロックの境界や最端部は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
例えば、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位との共重合体ブロックが存在してもよい。
【0112】
第一実施形態において、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)中や、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)中のビニル芳香族単量体単位の分布は、特に限定されず、均一に分布していてもよく、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。
また、重合体ブロック中に、結晶部が存在していてもよい。ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)中には、ビニル芳香族単量体単位の含有量の異なるセグメントが複数個共存していてもよい。
【0113】
第一実施形態において、粘接着組成物の粘着力、タック性、及び粘着保持力、並びに耐熱変色性の観点から、ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする一つの重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする一つの重合体ブロック(B1)とを有するブロック共重合体(d1)を含有することが好ましい。
ここで、ブロック共重合体(d1)は、上記式(7)においてn=1の構造をいう。
【0114】
第一実施形態において、ビニル芳香族単量体単位を主体とする一つの重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする一つの重合体ブロック(B1)とを有するブロック共重合体(d1)のブロック共重合体組成物中の含有量の下限値は、粘接着組成物の高いタック性の観点から、ブロック共重合体100質量%を基準として、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、65質量%以上であることがさらにより好ましく、70質量%以上であることがよりさらに好ましい。
また、ブロック共重合体(d1)のブロック共重合体組成物中の含有量の上限値は、粘接着組成物の高い粘着力の観点から、ブロック共重合体100質量%を基準として、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることがさらにより好ましく、45質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0115】
第一実施形態におけるブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体は、粘接着組成物の低い粘度と高い粘着保持力の観点から、ラジアル構造を有するブロック共重合体(r1)を含有することが好ましい。
ここで、本願明細書中、「ラジアル構造」とは、残基Xに対して重合体が3つ以上結合している構造をいい、例えば、A−(B1−A)
n−X(n≧3)、[(A−B1)
k]
m−X(m≧3)、及び[(A−B1)
k−A]
m−X(m≧3)が挙げられる。
【0116】
第一実施形態において、ラジアル構造を有するブロック共重合体(r1)の構造としては、本実施形態の粘接着組成物の高い粘着力、低い粘度、及び高い粘着保持力の観点から、[(A−B1)
k]
m−X、及び[(A−B1)
k−A]
m−X(各式中、mは3〜6の整数を表し、kは1〜4の整数を表す。より好ましくは、mは3〜4の整数を表す。)からなる群から選択される少なくとも一つの構造であることが好ましい。
【0117】
第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の水素添加率は、共役ジエン単量体単位の全モル数を基準として、10モル%以上97モル%以下であることが好ましく、10モル%以上80モル%以下であることがより好ましく、20モル%以上80モル%以下であることがさらに好ましく、31モル%以上70モル%以下であることがさらにより好ましく、33モル%以上63モル%以下であることがよりさらに好ましく、35モル%以上59モル%以下であることが特に好ましい。
【0118】
第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の水素添加率には分布があってもよい。
ここで、本実施形態において、「水素添加率分布H」とは、ブロック共重合体の水素添加率の分布を表す指標であり、以下のようにして求めることができる。
ブロック共重合体のオゾン分解法により得られる分子量分布(MD1)と、オスミウム酸分解法により得られる分子量分布(MD2)に基づいて、{(MD1)−(MD2)}を行い、分子量分布(MD3)を得る。
得られた分子量分布(MD3)の、分子量200以上〜1000000以下の領域における総面積を1としたときの、最大ピーク高さをHとする。
Hの値は、水素添加率分布の指標であり、Hの値が小さいほど水素添加率分布が広いことを示す。
本実施形態の粘接着組成物の接着力、タック性、及び粘着保持力、並びにこれらの物性と溶解性とのバランスの観点から、水素添加率分布Hの値は、0.001以上0.007以下であることが好ましく、0.001以上0.0055以下であることがより好ましく、0.001以上〜0.004以下であることがさらに好ましい。
【0119】
ブロック共重合体の水素添加率は、水添工程における水素添加量や水添反応時間を制御することにより制御することができる。
また、水素添加率は後述する実施例に記載する方法により求めることができる。
【0120】
第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物に含有されているブロック共重合体のビニル芳香族単量体単位含有量(TS)は、粘接着組成物の粘着力、タック性、及び高い粘着保持力、並びにこれら物性と溶解性とのバランスの観点から、10質量%以上45質量%以下であることが好ましく、13質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0121】
第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体中の、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量(BS)は、粘接着組成物の高い粘着力、高いタック性、及び高い粘着保持力、並びにこれら物性と溶解性とのバランスの観点から、12質量%以上43質量%以下であることが好ましく、13質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、14質量%以上34質量%以下であることがさらに好ましい。
【0122】
なお、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)と、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量(BS)は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0123】
第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体のビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(A)の分子量分布は、本実施形態の粘接着組成物の粘着力、タック性、及び高い粘着保持力、並びにこれら物性と溶解性とのバランスの観点から、1.46以下が好ましく、1.44以下がより好ましく、1.42以下がさらに好ましく、1.40以下がさらにより好ましい。
また、本実施形態の粘接着組成物の粘着力、タック性、及び高い粘着保持力、並びにこれら物性と溶解性とのバランスの観点から、1.1以上が好ましく、1.12以上がより好ましく、1.14以上がさらに好ましく、1.16以上がさらにより好ましい。
ここで、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(A)の分子量分布は、以下の式により求めることができる。
分子量分布=(重合体ブロック(A)のピーク分子量の半値全幅時の高分子量側の分子量)/(重合体ブロック(A)のピーク分子量の半値全幅時の低分子量側の分子量)
【0124】
第一実施形態におけるブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の水素添加前の共役ジエン単量体単位中の平均ビニル含有量は、15モル%以上75モル%以下であることが好ましく、25モル%以上55モル%以下であることがより好ましく、35モル%以上45モル%以下であることがさらに好ましい。
第一実施形態におけるブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の、水素添加前の共役ジエン単量体単位中の平均ビニル含有量が15モル%以上であることにより、本実施形態の粘接着組成物のタック性、粘着力、及び粘着保持力がより向上する傾向にある。
また、第一実施形態におけるブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の、水素添加前の共役ジエン単量体単位中の平均ビニル含有量が75モル%以下であることにより、本実施形態の粘接着組成物のタック性及び耐熱老化性がより向上する傾向にある。
ここで、本願明細書において、「平均ビニル含有量」とは、水素添加前の共役ジエン単量体の1,2−結合、3,4−結合、及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総モル量に対し、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の割合とする。
【0125】
第一実施形態において、ブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位を主体とする共重合体ブロック(B1)内において、ビニル含有量に分布があってもよい。
共役ジエン単量体単位を主体とする共重合体ブロック(B1)中のビニル含有量の高低の差(以下、「Δビニル含有量」ともいう)の下限値は、本実施形態の粘接着組成物の高い粘着力、高いタック性、高い保持力、及び粘接着組成物の製造時の短い溶解時間のバランスの観点から、5mol%以上が好ましく、8mol%以上がより好ましく、15mol%以上がさらに好ましく、20mol%以上がさらにより好ましい。
また、本実施形態の粘接着組成物の高い粘着力、高いタック性、高い保持力、及び粘接着組成物の製造時の短い溶解時間のバランスの観点から、Δビニル含有量の上限値は、30mol%以下が好ましく、25mol%以下がより好ましく、20mol%以下がさらに好ましく、17mol%以下がさらにより好ましい。
【0126】
第一実施形態、及び後述する第二、第三実施形態において用いる本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体中の、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B)内においては、重合開始末端側から順に等質量となるよう第一領域〜第6領域とし、第一領域〜第6領域の水素添加前のビニル含有量を、それぞれV
1〜V
6としたとき、ビニル含有量の分布は、特に限定されず、一定でもよく、テーパー状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。
テーパー状の分布とは、V
6>V
5>V
4>V
3>V
2>V
1、もしくはV
6<V
5<V
4<V
3<V
2<V
1を満たす分布をいう。凸状の分布とは、V
6及びV
1がV
5及びV
2よりも小さく、V
5及びV
2がV
4及びV
3よりも小さくなる分布をいう。凹状の分布とは、V
6及びV
1がV
5及びV
2よりも大きく、V
5及びV
2がV
4及びV
3よりも大きくなる分布をいう。
【0127】
第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、高い粘着力や粘着保持力の観点から、10万以上が好ましく、18万以上がより好ましく、20万以上がさらに好ましい。
また、高い製造性の観点から、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、35万以下が好ましく、30万以下がより好ましく、25万以下がさらに好ましい。
【0128】
第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)の下限値は、高い製造性の観点から、1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.3以上がさらに好ましく、1.4以上がさらにより好ましい。
また、第一実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の分子量分布は、高い粘着力や粘着保持力の観点から、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の上限値は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.7以下がさらに好ましく、1.6以下がさらにより好ましい。
重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載する方法により求めることができる。
【0129】
第一実施形態において、粘接着組成物の高い粘着力、高いタック、高い粘着保持力の観点から、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体が、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。
これらの中でも、ブロック共重合体が、アミノ基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することがより好ましく、アミノ基を有することがさらに好ましい。
【0130】
第一実施形態において、温水浸漬後の高い粘着力の観点から、本実施形態のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体が、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、アルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。
第一実施形態において、ブロック共重合体は、その分子1モルに対して、アミノ基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を2モル以上含有することがより好ましい。
【0131】
第一実施形態におけるブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体は、メルトフローレート(MFR、200℃、5kgf)が、0.1g/10分〜50g/10分であることが好ましく、0.2g/10分〜20g/10分であることがより好ましく、0.3g/10分〜10g/10分であることがさらに好ましく、0.4g/10分〜5g/10分であることがよりさらに好ましい。
第一実施形態において、ブロック共重合体のMFRが0.1g/10分以上であることにより、本実施形態の粘接着組成物のタック性、粘着力、及び粘着保持力、並びにテープ積層時の端部からの耐染み出し性がより向上する傾向にある。
また、第一実施形態において、ブロック共重合体のMFRが50g/10分以下であることにより、本実施形態の粘接着組成物の塗工性、及び耐変色性がより向上する傾向にある。
【0132】
(第一実施形態のブロック共重合体組成物の製造方法)
<第一実施形態のブロック共重合体組成物の第一の製造方法>
第一実施形態のブロック共重合体組成物は、下記第一の製造方法、及び第二の製造方法によって製造することができる。
第一実施形態のブロック共重合体組成物の第一の製造方法は、ビニル芳香族単量体単位を重合させ、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造する、第一の重合工程と、
前記ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体のうち一部を失活させて、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体を製造する、失活工程と、
失活せずに残った前記ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体の活性末端に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)とを有するブロック共重合体を製造する、第二の重合工程とを有し、
前記ブロック共重合体100質量部に対し、前記ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体の含有量を0.3〜5質量部とする。
【0133】
<第一実施形態のブロック共重合体組成物の第二の製造方法>
第一実施形態のブロック共重合体組成物の第二の製造方法は、ビニル芳香族単量体単位を重合させ、ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造する、第一の重合工程と、
前記ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)とを有するブロック共重合体を製造する、第二の重合工程と、
前記ブロック共重合体100質量部に対し、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体を0.3〜5質量部、混合する、混合工程とを有する。
【0134】
第一実施形態のブロック共重合体組成物の第一及び第二の製造方法においては、適宜、炭化水素溶媒、重合開始剤を用いることができ、第一の重合工程、失活工程、第二の重合工程、水素添加工程、カップリング工程、脱溶剤工程等については、上述したブロック共重合体組成物の製造方法と同様に実施することができる。
【0135】
(粘接着組成物)
第一実施形態である粘接着組成物は、本実施形態のブロック共重合体組成物100質量部に対し、粘着付与樹脂20質量部〜400質量部を含有する。
【0136】
第一実施形態において、「粘着付与樹脂」とは、粘接着組成物に粘着性を付与することができる、数平均分子量100〜1万未満の樹脂(オリゴマー)をいう。
粘着付与樹脂の数平均分子量は、後述する実施例に記載する数平均分子量の測定方法により測定することができる。
【0137】
粘着付与樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ロジン誘導体(桐油樹脂を含む)、トール油、トール油の誘導体、ロジンエステル樹脂、天然及び合成のテルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、混合脂肪族−芳香族炭化水素樹脂、クマリン−インデン樹脂、フェノール樹脂、p−tert−ブチルフェノール−アセチレン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、モノオレフィンのオリゴマー、ジオレフィンのオリゴマー、芳香族炭化水素樹脂、水素化芳香族炭化水素樹脂、環式脂肪族炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、炭化水素樹脂、水素化脂環族系炭化水素樹脂、水素化変性脂環族系炭化水素樹脂と単官能又は多官能アルコールとのエステル等が挙げられる。
これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水素化したものを用いる場合、不飽和基を全て水添してもよいし、一部、残してもよい。
【0138】
粘着付与樹脂は、接着力、粘着保持力、及びテープ積層時の端部からの高い耐染み出し性の観点から、軟化点が80℃以上であることが好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点の下限値は、より好ましくは85℃以上であり、さらに好ましくは95℃以上であり、さらにより好ましくは100℃以上である。
また、粘着付与樹脂の軟化点の上限値は、特に限定されないが、145℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、135℃以下であることがさらに好ましく、130℃以下であることがさらにより好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点は、JISK2207環球式で測定することができる。
【0139】
第一実施形態において、本実施形態の粘接着組成物の高い接着性、接着強度の経時変化の低減、及びクリープ性能等の観点から、粘接着組成物中に、ブロック共重合体の非ガラス相のブロック(通常は中間ブロック)と親和性のある粘着付与樹脂を20〜75質量%と、ブロック共重合体のガラス相のブロック(通常は外側ブロック)に親和性のある粘着付与剤を3〜30質量%とを含有することが好ましい。
【0140】
上述したブロック共重合体のガラス相のブロックと親和性のある粘着付与樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、末端ブロックの粘着付与樹脂が好ましい。
このような粘着付与樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、クマロン又はインデンを含有する、ホモポリマー又はコポリマー等の芳香族基を有する樹脂が挙げられる。
これらの中で、α−メチルスチレンを有するKristalexやPlastolyn(イーストマンケミカル社製、商品名)が好ましい。
ブロック共重合体のガラス相のブロックと親和性のある粘着付与樹脂の含有量は、粘接着組成物の総量(100質量%)に対し、好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは5〜20質量%であり、さらに好ましくは6〜12質量%である。
【0141】
第一実施形態において、粘接着組成物の高い初期接着力、高い濡れ性、低い溶融粘度、及び高い塗工性等の観点から、前記粘着付与樹脂としては、アロマ含有量が3〜12質量%である石油樹脂が好ましく、アロマ含有量が3〜12質量%であり、かつ水素添加した石油樹脂がより好ましい。
粘着付与樹脂中のアロマ含有量は、好ましくは3〜12質量%であり、より好ましくは4〜10質量%である。
本明細書中「アロマ」とは、非水添の芳香族成分をいう。
【0142】
第一実施形態において、粘接着組成物のより高い耐候性(UV照射後の低い粘着力変化)や低臭気の観点から、粘着付与樹脂としては、水添した粘着付与樹脂であることが好ましい。
「水添した粘着付与樹脂」とは、不飽和結合を含む脂肪族系粘着付与樹脂、又は不飽和結合を含む芳香族系粘着付与樹脂を、任意の水素添加率となるよう水素添加した粘着付与樹脂をいう。水添した粘着付与樹脂の水添率は、高い方が好ましい。
【0143】
水添した粘着付与樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルコンMやアスコンP(荒川化学工業株社製、商品名)、クリアロンP(ヤスハラケミカル株社製、商品名)、アイマーブP(出光興産株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0144】
第一実施形態において、粘接着組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、ブロック共重合体100質量部に対して、20質量部以上400質量部以下であればよく、好ましくは70質量部以上350質量部以下であり、より好ましくは120質量部以上300質量部以下であり、さらに好ましくは140質量部以上250質量部以下である。
粘着付与樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、タック性、粘着力、粘着保持力、塗工性、耐変色性がより向上する傾向にある。
【0145】
第一実施形態において、粘接着組成物は、本実施形態のブロック共重合体組成物、及び粘着付与樹脂以外に、必要に応じて、オイル、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤、ワックス類等の種々の添加剤を含んでもよい。
【0146】
オイルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、パラフィン系炭化水素を主成分としたパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素を主成分としたナフテン系オイル、芳香族系炭化水素を主成分とした芳香族系オイルが挙げられる。
これらのなかでも、無色であり、かつ、実質的に無臭であるオイルが好ましい。
オイルは、1種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0147】
パラフィン系オイルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ダイアナプロセスオイルPW−32、PW−90、PW−150、PS−430(出光興産製)、シンタックPA−95、PA−100、PA−140(神戸油化学製)、JOMOプロセスP200、P300、P500、750(ジャパンエナジー製)、サンパー110、115、120、130、150、2100、2280(日本サン石油製)、フッコールプロセスP−100、P−200、P−300、P−400、P−500(富士興産製)等が挙げられる。
【0148】
ナフテン系オイルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ダイアナプロセスオイルNP−24、NR−26、NR−68、NS−90S、NS−100、NM−280(出光興産製)、シンタックN−40、N−60、N−70、N−75、N−80(神戸油化学製)、シェルフレックス371JY(シェルジャパン製)、JOMOプロセスR25、R50、R200、R1000(ジャパンエナジー製)、サンセンオイル310、410、415、420、430、450、380、480、3125、4130、4240(日本サン石油製)、フッコールニューフレックス1060W、1060E、1150W、1150E、1400W、1400E、2040E、2050N(富士興産製)、ペトレックスプロセスオイルPN−3、PN−3M、PN−3N−H(山文油化製)等が挙げられる。
【0149】
芳香族系オイルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ダイアナプロセスオイルAC−12、AC−640、AH−16、AH−24、AH−58(出光興産製)、シンタックHA−10、HA−15、HA−30、HA−35(神戸油化学製)、コスモプロセス40、40A、40C、200A、100、1000(コスモ石油ルブリカンツ製)、JOMOプロセスX50、X100E、X140(ジャパンエナジー製)、JSOアロマ790、ニトプレン720L(日本サン石油製)、フッコールアロマックス1、3、5、EXP1(富士興産製)、ペトレックスプロセスオイルLPO−R、LPO−V、PF−2(山文油化製)等が挙げられる。
粘接着組成物のより高い耐候性が必要な場合には、パラフィン系オイルを用いることが好ましい。
【0150】
第一実施形態において、粘接着組成物の高い粘着保持力、粘着力、耐糊残り性のバランスの観点から、オイルの含有量は、ブロック共重合体組成物100質量部に対して、10質量部以上150質量部以下であることが好ましく、30質量部以上130質量部以下であることがより好ましく、50質量%以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
【0151】
酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0152】
粘接着組成物の高い耐候性(UV照射後の低い粘着力変化)の観点から、耐候剤を添加することが好ましい。
【0153】
耐候剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、微粒子酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤等が挙げられる。
粘接着組成物のより高い耐候性の観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を併用することがより好ましい。
【0154】
第一実施形態において、粘接着組成物中の耐候剤の含有量の下限値としては、粘接着組成物の高い耐候性の観点から、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.07質量%以上がさらに好ましい。
第一実施形態の粘接着組成物中の耐候剤含有量の上限値としては、耐候剤のブリードの抑制や経済性の観点から、粘接着組成物の1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
【0155】
粘接着組成物のより高い耐候性の観点から、上記の耐候剤にさらに上記の酸化防止剤を併用することが好ましい。
耐候剤と酸化防止剤とを併用する場合、酸化防止剤の中でも、より高い耐候性の観点から、上記耐候剤に加えて、少なくともリン系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0156】
第一実施形態の粘接着組成物中の酸化防止剤の含有量の下限値としては、高い耐候性の観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.04質量%以上がより好ましく、0.06質量%以上がさらに好ましい。
第一実施形態の粘接着組成物中の酸化防止剤含有量の上限値としては、酸化防止剤のブリードの抑制や経済性の観点から、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下がさらに好ましい。
【0157】
第一実施形態において、粘着付与樹脂の静電気の発生を防止する観点から、本実施形態の粘接着組成物は帯電防止剤を含むことが好ましい。
【0158】
帯電防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤、導電性樹脂、及び導電性フィラー等が挙げられる。
【0159】
第一実施形態において、プラスチックの成型加工時及び成型加工後の製品表面の滑り性を向上させる観点から、粘接着組成物は滑剤を含んでもよい。
【0160】
滑剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0161】
第一実施形態において、粘接着組成物は、充填剤を含んでもよい。
充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等が挙げられる。これら充填剤の形状は、球状であることが好ましい。
【0162】
第一実施形態において、粘接着組成物は、ワックス類を含んでもよい。ワックス類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0163】
第一実施形態において、本実施形態の粘接着組成物の溶融粘度を130℃以下にする観点から、粘接着組成物は、50℃〜110℃の融点を有するワックス、例えば、パラフィンワックス、微晶質ワックス、及びフィッシャー−トロプシュワックスからなる群より選択される少なくとも一種のワックスを2〜10質量%含有することが好ましい。
これらの50℃〜110℃の融点を有するワックスの含有量は、粘接着組成物の総質量に対し、好ましくは5〜10質量%である。
また、これらワックスの融点は、好ましくは65℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、さらに好ましくは75℃以上である。
また、このときに併用する粘着付与樹脂の軟化点は、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。
このとき、得られる粘接着組成物の複素弾性率G’(測定条件:25℃、10rad/s)が1Mpa以下であり、さらに、7℃以下の結晶化温度を有することが好ましい。
【0164】
第一実施形態において、粘接着組成物は、上述したブロック共重合体及びビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体以外のポリマーを含有してもよい(以下、単に「その他のポリマー」ともいう)。
その他のポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマー;クロロプレンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
これらは室温で液状や固体状であっても構わない。
【0165】
第一実施形態において、粘接着組成物の高い粘着力、高いタック性、及び高い粘着保持力のバランスの観点から、その他のポリマーの含有量は、本実施形態のブロック共重合体組成物100質量部に対して、80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であることがさらにより好ましく、10質量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0166】
その他のポリマーとしては、上述したブロック共重合体以外のブロック共重合体(以下、単に「その他のブロック共重合体」ともいう)であってもよい。
その他のブロック共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、本実施形態で用いているブロック共重合体以外のポリマーであり、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体(SEBS)、水素化スチレン−イソプレン系ブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。
その他のブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位含有量が異なる2種以上のブロック共重合体や、ビニル芳香族単量体単位を主体とする非水添ブロック共重合体又は完全水添ブロック共重合体であってもよい。
【0167】
第一実施形態において、その他のブロック共重合体は、本実施形態の粘接着組成物の高いタック性と高い粘着力のバランスの観点から、ビニル芳香族単量体単位を主体とする一つの重合体ブロックと、共役ジエン単量体単位を主体とする一つの重合体ブロックとを有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0168】
第一実施形態において、その他のブロック共重合体は、高い保持力や粘接着組成物の低い溶融粘度の観点から、ラジアル構造であることが好ましい。
【0169】
第一実施形態において、その他のブロック共重合体の水素添加率は特に限定されない。
【0170】
第一実施形態において、本実施形態の粘接着組成物がその他のポリマーとして完全水添ブロック共重合体を含有する場合、粘接着組成物の柔らかさの観点から、水素添加前のその他のポリマー中の共役ジエン単量体単位中の平均ビニル含有量は、35モル%以上80モル%以下であることが好ましく、40モル%以上75モル%以下であることがより好ましく、50モル%以上75モル%以下であることがさらに好ましい。
【0171】
第一実施形態において、高い低温塗工性(低粘度)、クリープ性能(値が小さい方が良好)、高強度あるいは高伸度等が必要な場合には、粘接着組成物中にアイオノマーを5質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0172】
第一実施形態において、湿潤状態の親水性多孔質基材に対して優れた接着強度を発現するためには、粘接着組成物中に、カルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を分子内に有する液状ゴム及び/又はカルボン酸無水物によって酸変性された酸変性ポリエチレンを0.5以上8質量%以下の範囲で添加することが好ましい。
【0173】
第一実施形態において、高温貯蔵安定性、高伸度の観点、及び粘接着組成物中の粘着付与樹脂の含有量を低減する観点から、α−オレフィンを用いたコポリマー、あるいはプロピレンホモポリマーを、粘接着組成物中の20質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
これらのコポリマー及びホモポリマーの融点(条件:DSC測定、5℃/分)は、110℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以下であり、さらに好ましくは60℃〜90℃である。
これらのコポリマー及びホモポリマーは、樹脂であってもエラストマーであってもよい。
【0174】
第一実施形態において、粘接着組成物の伸度等の観点から、粘接着組成物はオレフィン系エラストマー含有することが好ましい。
オレフィン系エラストマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、少なくとも−10℃以下にTgを有するものが好ましい。また、クリープ性能の観点から、ブロックを有するオレフィン系エラストマーがより好ましい。
【0175】
第一実施形態において、粘接着組成物を高温環境下で用いる場合には、特開2015−28130号公報、特開2007−56119号公報、特開2014−534303号公報、特開2015−30854号公報に記載されているように、粘接着組成物に、ラジカル架橋やエポキシ架橋やウレタン架橋が可能な添加剤を用い、耐熱性を向上させることが好ましい。
【0176】
(粘接着性テープ及びラベル)
第一実施形態において、粘接着組成物は、粘接着性テープ、及びラベルに用いることができる。
粘接着性テープは、上記で説明した粘接着組成物を含有する。
ラベルは、上記で説明した粘接着組成物を含有する。
【0177】
粘接着性テープ及びラベルにおいて、粘接着組成物は、任意の基材に積層した構成とすることができる。
基材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルム、紙、金属、織布、不織布等の非熱可塑性樹脂膜等が挙げられる。
基材の材料には剥離剤を添加してもよい。
剥離剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、長鎖アルキル系剥離剤、シリコン系剥離剤等が挙げられる。
また、より高い耐候性(UV照射後の粘着力変化が少ない)が必要な場合には、紫外線透過率が低い基材を用いることがより好ましく、基材の紫外線透過率は1%以下であることがさらに好ましい。
【0178】
(粘接着組成物の製造方法)
第一実施形態において、粘接着組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、本実施形態のブロック共重合体組成物100質量部に対し、粘着付与樹脂20質量部以上400質量部以下を混合することにより製造することができる。
混合方法としては特に制限されず、ブロック共重合体組成物、及び粘着付与樹脂、並びに必要に応じて他のブロック共重合体、及びオイル等の各成分を、公知の混合機、ニーダー、1軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー等で、加熱しながら、所定の配合比で均一に混合する方法が挙げられる。
【0179】
(粘接着性テープ、及びラベルの製造方法)
第一実施形態において、粘接着性テープ及びラベルは、粘接着組成物を任意の基材上に塗工することにより製造することができる。
粘接着組成物を基材上に塗工する方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、Tダイ塗工法、ロール塗工法、マルチビード塗工法、及びスプレー塗工法等が挙げられる。
また、第一実施形態の粘接着組成物は、押出し塗工(熱溶融塗工)法、又は溶展塗工法のどちらでもよく、高い耐熱老化性、経済性観点から、押出し塗工法が好ましい。
【0180】
第一実施形態において、粘接着組成物は、各種粘接着性テープ、ラベル類の他、感圧性薄板、感圧性シート、表面保護シート・フィルム、各種軽量プラスチック成型品固定用裏糊、カーペット固定用裏糊、タイル固定用裏糊、接着剤、シーリング剤、塗料の塗り替え作業時のマスキング剤、及び衛生用品等に好適に用いることができる。特に、粘接着性テープが好ましい。
【0181】
〔改質アスファルト組成物、舗装用バインダ組成物、及びこれに用いるブロック共重合体組成物〕
第二実施形態として、本実施形態のブロック共重合体組成物は、改質アスファルト組成物及び改質アスファルト混合物に用いることができる。
また、第三実施形態として、本実施形態のブロック共重合体組成物は、舗装用バインダ組成物に用いることができる。
【0182】
本実施形態のブロック共重合体組成物を改質アスファルト組成物に用いることにより、軟化点、低温伸度、溶融粘度、耐わだち掘れ性、及び貯蔵時の耐熱安定性に優れた改質アスファルト組成物を提供することができる。
また、本実施形態のブロック共重合体組成物を舗装用バインダ組成物に用いることにより、軟化点、低温伸度、溶融粘度、耐わだち掘れ性、耐熱安定性、及び耐熱変色性に優れた舗装用バインダ組成物を提供することができる。
【0183】
(ブロック共重合体組成物)
第二及び第三実施形態におけるブロック共重合体組成物は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体100質量部と、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体0.3〜5質量部とを含有するものとし、前記ブロック共重合体が、特に、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを含む共重合体ブロック(B2)とを有するブロック共重合体であることが好ましい。
ブロック共重合体が上記構造を有することは、改質アスファルト組成物の貯蔵時の軟化点、低温伸度、溶融粘度、耐わだち掘れ性、及び貯蔵時の耐熱安定性の観点から好ましく、また、舗装用バインダ組成物の軟化点、低温伸度、溶融粘度、耐わだち掘れ性、耐熱安定性、及び耐熱変色性の観点においても好ましい。
【0184】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の構造としては、以下に限定されないが、例えば、下記の式(13)〜(18)で表される構造が挙げられる。
ブロック共重合体が水素添加されたブロック共重合体である場合、下記式(13)〜(18)は、水添前の構造を表す。
(A−B2)
n ・・・(13)
B2−(A−B2)
n ・・・(14)
A−(B2−A)
n ・・・(15)
A−(B2−A)
n−X ・・・(16)
[(A−B2)
k]
m−X ・・・(17)
[(A−B2)
k−A]
m−X ・・・(18)
【0185】
上記式(13)〜(18)中、Aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを表し、B2は、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位を含む共重合体ブロックを表し、Xは、カップリング剤の残基、又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表し、m、n及びkは、1以上の整数を表し、好ましくは1〜5の整数を表す。
【0186】
第二及び第三実施形態において、水素添加前のブロック共重合体中に重合体ブロック(A)及び(B2)が複数存在している場合には、各々の分子量や組成等の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(13)〜(18)中、Xは、カップリング剤の残基又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表す。ブロック共重合体は、Xがカップリング剤の残基であるカップリング体と、Xを有しない又はXが重合開始剤の残基である非カップリング体との混合物であってもよい。各ブロックの境界や最端部は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
【0187】
第二及び第三実施形態において、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)中や、共役ジエン単量体単位及びビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位の分布は、特に限定されず、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。
また、重合体ブロック中に、結晶部が存在していてもよい。ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)中には、ビニル芳香族単量体単位の含有量の異なるセグメントが複数個共存していてもよい。
【0188】
第二及び第三実施形態において、改質アスファルト組成物の低い溶融粘度の観点、及び舗装用バインダ組成物の低い溶融粘度の観点から、ブロック共重合体が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする一つの重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体単位を含む一つの水添重合体ブロック(B2)を有するブロック共重合体(d2)を含有することが好ましい。なお、ブロック共重合体(d2)は、上記式(13)においてn=1の構造をいう。
【0189】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体(d2)の含有量の下限値は、改質アスファルト組成物の低い溶融粘度の観点、及び舗装用バインダ組成物の低い溶融粘度の観点から、ブロック共重合体100質量%を基準として、15質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、65質量%以上であることがさらにより好ましく、70質量%以上であることがよりさらに好ましい。
また、第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体(d2)の含有量の上限値は、改質アスファルト組成物の、高い軟化点、及び高い低温伸度の観点、並びに舗装用バインダ組成物の高い軟化点、及び高い低温伸度の観点から、ブロック共重合体100質量%を基準として、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることがさらにより好ましく、75質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0190】
第二及び第三実施形態において、改質アスファルト組成物の低い溶融粘度の観点、及び舗装用バインダ組成物の低い溶融粘度の観点から、ブロック共重合体が、ラジアル構造を有するブロック共重合体(r2)を含有することが好ましい。
ここで、本願明細書中、「ラジアル構造」とは、残基Xに対して重合体が3つ以上結合している構造をいい、例えばA−(B2−A)
n−X(n≧3)、[(A−B2)
k]
m−X(m≧3)、及び[(A−B2)
k−A]
m−X(m≧3)が挙げられる。
【0191】
ラジアル構造を有するブロック共重合体(r2)の構造としては、改質アスファルト組成物の低い溶融粘度の観点、及び舗装用バインダ組成物の低い溶融粘度の観点から、[(A−B2)
k]
m−X、及び[(A−B2)
k−A]
m−X(各式中、mは3〜6の整数を表し、kは1〜4の整数を表す。より好ましくは、mは3〜4の整数を表す。)からなる群から選択される少なくとも一つの構造であることが好ましい。
【0192】
第二及び第三実施形態において、改質アスファルト組成物の高い低温伸度、低い溶融粘度、低温折曲げ性、及び相容性の観点、及び舗装用バインダ組成物の高い低温伸度、及び低い溶融粘度の観点から、ブロック共重合体の水素添加率の上限値は、共役ジエン単量体単位の全モル数を基準として、97モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましく、90モル%以下であることがさらに好ましく、85モル%以下であることがさらにより好ましく、80モル%以下であることがよりさらに好ましい。
また、改質アスファルト組成物の高い軟化点、高い耐わだち掘性、貯蔵時の耐熱安定性、及び耐流動性の観点、並びに舗装用バインダ組成物の高い低温伸度、低い溶融粘度、高い耐熱安定性、及び高い耐熱変色性の観点から、ブロック共重合体の水素添加率の下限値は、1モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましく、30モル%以上であることがさらにより好ましく、40モル%以上であることがよりさらに好ましい。
【0193】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体の水素添加率に分布があってもよい。
水素添加率分布の指標としては、上記第一実施形態において示したHを用いることができ、当該水素添加率分布の指標Hの求め方は第一実施形態において記載した方法と同様の方法を適用できる。
改質アスファルト組成物の低温伸度、貯蔵時の耐熱老化性、及び耐流動性の観点、並びに舗装用バインダ組成物の低温伸度、耐熱安定性、及び耐熱変色性の観点から、水素添加率分布Hの値は、0.001以上0.007以下であることが好ましく、0.001以上0.0055以下であることがより好ましく、0.001以上〜0.004以下であることがさらに好ましい。
【0194】
ブロック共重合体の水素添加率は、後述する水添工程における水素添加量や水添反応時間を調整することにより制御することができる。また、水素添加率は後述する実施例に記載する方法により求めることができる。
【0195】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体中に含まれるビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は、30以上60質量%以下であることが好ましい。
改質アスファルト組成物の優れた相容性、高い軟化点、及び高い耐熱安定性、改質アスファルト組成物と骨材との混合物にした時の高い耐骨材剥離性の観点、並びに舗装用バインダ組成物の高い軟化点、及び高い耐わだち掘れ性の観点から、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)の下限値は、30質量%以上であることが好ましく、33質量%以上がより好ましく、36質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上がさらにより好ましい。
また、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)の上限値は、改質アスファルト組成物の相容性、低い溶融粘度、及び柔軟性の観点、並びに舗装用バインダ組成物の低温伸度、及び低い溶融粘度の観点から、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、45質量%以下がさらにより好ましい。
【0196】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体中の、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量(BS)の下限値は、改質アスファルト組成物の高い軟化点、及び高いわだち掘れ性の観点、及び舗装用バインダ組成物の高い軟化点、及び高いわだち掘れ性の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましく、19質量%以上がさらにより好ましい。
また、第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体中の、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量(BS)の上限値は、改質アスファルト組成物の相容性、及び柔軟性の観点、並びに舗装用バインダ組成物の高い低温伸度の観点から、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、28質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がさらにより好ましい。
【0197】
なお、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)と、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量(BS)は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0198】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体におけるビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(A)の分子量分布は、改質アスファルト組成物の耐流動性の観点、及び舗装用バインダ組成物の高い軟化点、及び高い耐わだち掘れ性の観点から、1.46以下が好ましく、1.44以下がより好ましく、1.42以下がさらに好ましく、1.40以下がさらにより好ましい。
また、改質アスファルト組成物の引張後の回復性の観点、及び舗装用バインダ組成物の引張後の回復性の観点から、1.1以上が好ましく、1.12以上がより好ましく、1.14以上がさらに好ましく、1.16以上がさらにより好ましい。
ここで、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(A)の分子量分布は、以下の式により求めることができる。
分子量分布=(重合体ブロック(A)のピーク分子量の半値全幅時の高分子量側の分子量)/(重合体ブロック(A)のピーク分子量の半値全幅時の低分子量側の分子量)
【0199】
第二及び第三実施形態において、共役ジエン単量体単位及びビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)の下限値は、改質アスファルト組成物の分離安定性、貯蔵時の耐熱老化性、引張後の回復性の観点、及び舗装用バインダ組成物の高い耐熱安定性、及び高い耐熱変色性の観点で、共重合体ブロック(B2)の全質量を基準として5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。
【0200】
第二及び第三実施形態において、改質アスファルト組成物の高い軟化点の観点、及び舗装用バインダ組成物の高い軟化点の観点から、共役ジエン単量体単位及びビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)の上限値は、共重合体ブロック(B2)の全質量を基準として50質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0201】
共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)は、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)から、上記ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)の含有量(BS)を減じた値(TS−BS)の、共重合体ブロック(B2)中の割合(質量%)である。
共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)は、以下の式により求めることができる。
RS(質量%)=(TS−BS)/(100−BS)×100
【0202】
第二及び第三実施形態において、共重合体ブロック(B2)の重合開始時から重合終了時までの重合反応時間を三等分して、順に前段、中段、及び後段とし、前段終了時の共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位含有量をS1(質量%)、中段終了時の共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位含有量をS2(質量%)、後段終了時の共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位含有量をS3(質量%)としたとき、改質アスファルト組成物の相容性の観点、及び舗装用バインダ組成物の相容性の観点から、S2/S1>1、かつS3/S2>1の関係が成り立つ構造であることが好ましい。
なお、共重合体ブロック(B2)の「重合開始時」とは、共重合体ブロック(B2)の原料モノマーを反応器に投入した時とし、共重合体ブロック(B2)の「重合終了時」とは、共重合体ブロック(A2)の原料モノマーを反応器に投入する直前とする。
ビニル芳香族単量体単位含有量S1〜S3は、前段終了時、中段終了時、及び後段終了時の各時点における重合体溶液をサンプリングして測定することができる。
【0203】
第二及び第三実施形態において、共重合体ブロック(B2)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、50質量%以上であることが好ましい。
共重合体ブロック(B2)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が上記範囲内であることにより、ブロック共重合体とアスファルトとの相容性が高くなり、改質アスファルト組成物の引張後の回復性、耐熱老化性、耐骨材剥性が向上する傾向にあり、また、舗装用バインダ組成物の耐熱安定性、耐骨材剥離性が向上する傾向にある。
共重合体ブロック(B2)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量の下限値は、70質量%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは80質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上である。
共重合体ブロック(B2)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量の上限値は、特に制限はないが、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることがさらに好ましく、96質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0204】
前記「短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分」とは、共役ジエン単量体単位及びビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B2)中、ビニル芳香族単量体単位が2〜6個連続する部分をいう。
短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)を100質量%としたときの、2〜6個連続したビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)として求められる。
2〜6個連続したビニル芳香族単量体単位含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本願明細書中、「短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分」とは、共重合体ブロック(B2)中、ビニル芳香族単量体単位が2〜6個連続する部分をいう。
短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、共重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)を100質量%とし、その中で2〜6個連続したビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)として求められる。
2〜6個連続したビニル芳香族単量体単位含有量は、下記に記載する方法により測定することができる。
<短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量(短連鎖スチレン含有量)>
重合体のジクロロメタン溶液に(O
3)濃度1.5%の酸素を150mL/分で通過させて酸化分解し、得られたオゾニドを、水素化アルミニウムリチウムを混合したジエチルエーテル中に滴下して還元する。
次に、純水を滴下して加水分解し、炭酸カリウムを添加し塩析、濾過を行うことによりビニル芳香族炭化水素成分を得る。
このビニル芳香族炭化水素成分をGPCにより測定する。
ここで得られたピークの面積比(短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分に相当するピーク面積/ピークの総面積)を算出することにより重合体中の2〜6個連続した短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が得られる。
このとき、得られるピークの分子量から、2個連続したビニル芳香族単量体単位の含有量、及び3個連続したビニル芳香族単量体単位の含有量を測定することができる。
なお、オゾン発生機は日本オゾン(株)製OT−31R−2型を用い、GPC測定は、ウォーターズ製の2487を用い、クロロホルムを溶媒とし、流量1.0mL/分、カラムオーブン35℃で、カラムはShodexカラム−K803Lを2本接続して測定できる。
【0205】
第二及び第三実施形態における共重合体ブロック(B2)中、ビニル芳香族単量体単位が2個連続した短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、10質量%以上45質量%以下であることが好ましく、13質量%以上42質量%以下であることがより好ましく、19質量%以上36質量%以下であることがさらに好ましい。
2個連続したビニル芳香族単量体単位含有量は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0206】
第二及び第三実施形態における共重合体ブロック(B2)中、ビニル芳香族単量体単位が3個連続した短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、45質量%以上80質量%以下であることが好ましく、45質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましい。
3個連続したビニル芳香族単量体単位含有量は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0207】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体の水素添加前の共役ジエン単量体単位中の平均ビニル含有量は、好ましくは15モル%以上75モル%未満であり、より好ましくは20モル%以上55モル%以下であり、さらに好ましくは25モル%以上45モル%以下である。
第二及び第三実施形態において、水素添加前のブロック共重合体における共役ジエン単量体単位中の平均ビニル含有量が15モル%以上であることにより、改質アスファルト組成物に添加する水添ブロック共重合体の添加量が低くなる傾向にあり、また、舗装用バインダ組成物に添加する水添ブロック共重合体の添加量が低くなるため好ましい。
また、水素添加前のブロック共重合体の共役ジエン単量体単位中の平均ビニル含有量が75モル%未満であることにより、改質アスファルト組成物の低温伸度及び貯蔵時の耐熱老化性が高くなる傾向にあり、また、舗装用バインダ組成物の高い低温伸度、優れた耐熱安定性及び耐熱変色性の観点から好ましい。
ここで、「平均ビニル含有量」とは、水素添加前の共役ジエン単量体単位の1,2−結合、3,4−結合、及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総モル量に対し、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の割合とする。
なお、平均ビニル含有量は、NMRにより測定でき、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0208】
第二及び第三実施形態において、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B2)内において、ビニル含有量に分布があってもよい。
ブロック共重合体の共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む(B2)中のビニル含有量の高低の差、すなわち、前記分布のあるビニル含有量における、ビニル含有量の最大値と最小値との差(以下、「Δビニル含有量」ともいう)の下限値は、改質アスファルト組成物の低温伸度及び低温折曲げ性の観点、及び舗装用バインダ組成物の低温伸度の観点で、5mol%以上が好ましく、8mol%以上がより好ましく、15mol%以上がさらに好ましく、20mol%以上がさらにより好ましい。
また、改質アスファルト組成物の相容性の観点、及び舗装用バインダ組成物の相容性の観点で、Δビニル含有量の上限値は、30mol%以下が好ましく、25mol%以下がより好ましく、20mol%以下がさらに好ましく、17mol%以下がさらにより好ましい。
【0209】
共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B2)において、重合開始末端側から順に等質量となるよう第1領域〜第6領域に分けたとき、第1領域〜第6領域の水素添加前のビニル含有量を、それぞれV
1〜V
6とした場合、ビニル含有量の分布は、特に限定されず、一定でもよく、テーパー状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。
【0210】
テーパー状の分布とは、V
6>V
5>V
4>V
3>V
2>V
1、もしくはV
6<V
5<V
4<V
3<V
2<V
1を満たす分布をいう。凸状の分布とは、V
6及びV
1がV
5及びV
2よりも小さく、V
5及びV
2がV
4及びV
3よりも小さくなる分布をいう。凹状の分布とは、V
6及びV
1がV
5及びV
2よりも大きく、V
5及びV
2がV
4及びV
3よりも大きくなる分布をいう。
【0211】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、100,000〜500,000であることが好ましく、100,000〜300,000であることがより好ましく、120,000〜280,000であることがさらに好ましく、140,000〜260,000であることがさらにより好ましく、160,000〜240,000であることがよりさらに好ましい。
ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が100,000以上であることにより、改質アスファルト組成物の軟化点及び耐わだち掘れ性がより向上する傾向にあり、また、舗装用バインダ組成物の高い軟化点及び高い耐わだち掘れ性の観点から好ましい。
また、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が500,000以下であることにより、改質アスファルト組成物の低温伸度、耐変色性がより向上し、溶融粘度がより低くなり、加工性がより向上する傾向にあり、また、舗装用バインダ組成物の溶融粘度の観点から好ましい。
【0212】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)の下限値は、改質アスファルト組成物に添加するブロック共重合体の添加量を低減する観点、並びに舗装用バインダ組成物に添加するブロック共重合体の添加量を低減する観点から、1.03以上が好ましく、1.05以上がより好ましく、1.11以上がさらに好ましく、1.20以上がさらにより好ましい。また、改質アスファルト組成物の製造性の観点、及び舗装用バインダ組成物の製造性の観点から、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の上限値は、2.0以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましく、1.3以下がさらにより好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載する方法により求めることができる。
【0213】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体の動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)のピーク温度の下限値は、アスファルトとの高い相容性、改質アスファルト組成物の短い製造時間の点、及び舗装用バインダ組成物の製造時間の観点から、−50℃以上が好ましく、−47℃以上がより好ましく、−44℃以上がさらに好ましく、−42℃以上がさらにより好ましい。
また、改質アスファルト組成物の低温伸度、低温折曲げ性、相容性、及び柔軟性の観点、並びに舗装用バインダ組成物の低温伸度の観点から、ブロック共重合体の損失正接(tanδ)のピーク温度の上限値は、−5℃以下であることが好ましく、−10℃以下がより好ましく、−15℃以下がさらに好ましく、−25℃以下がさらにより好ましい。
【0214】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体の動的粘弾性測定による−50℃以上−5℃以下の範囲における損失正接(tanδ)のピーク高さは、改質アスファルト組成物の相容性、高い引張後の回復性、及び貯蔵時の耐熱老化性の観点、並びに舗装用バインダ組成物の耐熱安定性、及び耐熱変色性の観点から、0.7を超えて1.6以下であることが好ましく、0.8以上1.8以下がより好ましく、0.9以上1.7以下がさらに好ましく、1.0以上1.5以下がさらにより好ましい。
【0215】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体は、改質アスファルト組成物の相容性、貯蔵時の耐熱老化性、改質アスファルト混合物の機械物性の観点、及び舗装用バインダ組成物の相容性、及び骨材との耐はく離性の観点で、ブロック共重合体が、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。
これらの中でも、ブロック共重合体が、アミノ基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することがより好ましく、アミノ基を有することがさらに好ましい。
ブロック共重合体は、その分子1モルに対して、アミノ基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を2モル以上含有することがより好ましい。
【0216】
第二及び第三実施形態において、ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR、200℃、5kgf)の下限値は、改質アスファルト組成物の短い製造時間の観点、及び舗装用バインダ組成物の溶融粘度の観点から0.1g/10分以上が好ましく、1g/10分以上がより好ましく、2g/10分以上がさらに好ましい。
また、ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR、200℃、5kgf)の上限値は、アスファルトに添加するブロック共重合体の添加量が少なくなることや、改質アスファルト組成物の引張後の回復性の点、及び舗装用バインダ組成物の軟化点及び耐わだち掘れ性の観点で、50g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましく、8g/10分以下がさらに好ましい。
【0217】
(第二及び第三実施形態のブロック共重合体組成物の製造方法)
上述した第二及び第三実施形態のブロック共重合体組成物は、下記のようにして製造することができる。
<第二及び第三実施形態のブロック共重合体組成物の第一の製造方法>
まず、第二及び第三実施形態のブロック共重合体組成物の第一の製造方法は、ビニル芳香族単量体単位を重合させ、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造する、第一の重合工程と、
前記ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体のうち一部を失活させて、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体を製造する、失活工程と、
失活せずに残った前記ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体の活性末端に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B2)とを有するブロック共重合体を製造する、第二の重合工程とを有し、
前記ブロック共重合体100質量部に対し、前記ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体の含有量を0.3〜5質量部とするものである。
【0218】
<第二及び第三実施形態のブロック共重合体組成物の第二の製造方法>
第二及び第三実施形態のブロック共重合体組成物の第二の製造方法は、ビニル芳香族単量体単位を重合させ、ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体を製造する、第一の重合工程と、
前記ビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体に、共役ジエン単量体を重合させ、又は共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B2)とを有するブロック共重合体を製造する、第二の重合工程と、
前記ブロック共重合体100質量部に対し、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体0.3〜5質量部を混合する、混合工程とを有する。
【0219】
上記第一及び第二の製造方法においては、適宜炭化水素溶媒、重合開始剤を使用し、第一の重合工程、失活工程、第二の重合工程、水素添加工程、カップリング工程、脱溶剤工程等を実施するが、これらの使用材料、実施方法については、上述した第一実施形態のブロック共重合体組成物の製造方法と同様のものを適用することができる。
【0220】
(改質アスファルト組成物)
第二実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物は、改質アスファルト組成物に使用することができる。
第二実施形態の改質アスファルト組成物は、アスファルト100質量部に対し、上記で説明したブロック共重合体組成物を0.5質量部以上20質量部以下含有する。好ましくは1質量部以上20重量部以下を含有する。
改質アスファルト組成物中のブロック共重合体の含有量は、より好ましくはアスファルト100質量部に対し2〜13質量部であり、さらに好ましくは3〜10質量部である。
【0221】
アスファルトとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、又は天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したもの等が挙げられる。
アスファルトの主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものが一般的である。
【0222】
アスファルトとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、溶剤脱瀝アスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤等が挙げられる。
入手性の観点から、アスファルトとしては、ストレートアスファルトを用いることが好ましい。これらは1種のみを単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
また、各種アスファルトには、所定の石油系溶剤抽出油、アロマ系炭化水素系プロセスオイルあるいはエキストラクト等の芳香族系重質鉱油等を添加してもよい。
【0223】
アスファルトは、針入度(JIS−K2207によって測定)が30以上300以下であることが好ましく、より好ましくは50以上250以下、さらに好ましくは60以上200以下である。
アスファルトの針入度が上記範囲内であることにより、改質アスファルト組成物の軟化点、伸度、溶融粘度、耐わだち掘れ性、及び貯蔵時の耐熱安定性のバランスが優れる傾向にある。
【0224】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物の製造時間短縮や、改質アスファルト組成物の相容性や、耐骨材剥離性を改良する観点から、改質アスファルト組成物は粘着付与樹脂を含むことが好ましい。
第二実施形態において、「粘着付与樹脂」とは、改質アスファルト組成物に粘着性を付与することができる、数平均分子量100〜1万未満の樹脂(オリゴマー)をいう。
粘着付与樹脂の数平均分子量は、後述する実施例に記載する数平均分子量の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0225】
粘着付与樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、及び脂肪族炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0226】
粘着付与樹脂は、1種のみを単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
粘着付与樹脂としては、例えば、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。
改質アスファルト組成物の高い相容性や、耐骨材剥離性改良の観点で、芳香族炭化水素樹脂が好ましい。
【0227】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物中における粘着付与樹脂の含有量は、ブロック共重合体を100質量部としたとき、0質量部より多く200質量部以下であることが好ましく、3質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
上記範囲の含有量とすることにより、相容性と耐骨材剥離性の改良効果をより確実に得ることができる。
【0228】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物の低い粘度や、高い相容性を得る観点から、改質アスファルト組成物はオイルを含むことが好ましい。
オイルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、鉱物油系軟化剤、又は合成樹脂系軟化剤のいずれも使用できる。
鉱物油系軟化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。
【0229】
なお、一般的に、パラフィン系炭化水素の炭素原子数が、オイルに含まれる全炭素原子中の50%以上を占めるものが「パラフィン系オイル」と呼ばれ、ナフテン系炭化水素の炭素原子数が30%以上〜45%以下のものが「ナフテン系オイル」と呼ばれ、また、芳香族系炭化水素の炭素原子数が35%以上を占めるものが「芳香族系オイル」と呼ばれている。
【0230】
鉱物油系軟化剤を含有させることにより、改質アスファルト組成物の施工性の改良が図られる。
鉱物油系軟化剤としては、改質アスファルト組成物の低い粘度や、低温性能の観点から、パラフィン系オイルが好ましく、改質アスファルト組成物の低い粘度や、高い相容性の観点からは、ナフテン系オイルが好ましい。
【0231】
また、合成樹脂系軟化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が好ましい。
【0232】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物中のオイルの含有量は、オイルのブリード抑制や、改質アスファルト組成物の実用上十分な機械強度を確保する観点から、上述したブロック共重合体組成物100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、15質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0233】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物の高い軟化点、相容性、高温貯蔵安定性を改良する観点から、アスファルト組成物は架橋剤を含むことが好ましい。
架橋剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、硫黄、硫黄化合物、硫黄以外の無機加硫剤、オキシム類、ニトロソ化合物、ポリアミン、有機過酸化物、樹脂架橋剤、イソシアネート化合物、ポリリン酸、及び架橋助剤が挙げられる。
【0234】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物の高い軟化点、相容性、貯蔵時の耐熱老化性の点で、架橋剤としては、硫黄、硫黄化合物、ポリリン酸が好ましい。
【0235】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物中の架橋剤の添加量の下限値は、共役ジエン共重合体とアスファルトとの高い相容性、及び改質アスファルト混合物の油付着時の高い耐質量損失や高い耐強度低下の観点で、改質アスファルト組成物の全質量を基準として0.02質量%以上が好ましく、0.04質量%以上がより好ましく、0.06質量%以上がさらに好ましい。
また、改質アスファルト組成物中の架橋剤の添加量は、高い針入度の改質アスファルト組成物を得るという観点からは、特表2013−520543号公報に記載されているように、改質アスファルト組成物の全質量を基準として約20〜60質量%を用いてもよい。
改質アスファルト組成物中の架橋剤の添加量の上限値は、高い針入度の改質アスファルト組成物を得る観点や経済性の観点で、改質アスファルト組成物の全質量を基準として1.0質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。
【0236】
第二実施形態において、共役ジエン共重合体と架橋剤とを十分反応させる観点から、改質アスファルト組成物に架橋剤を添加した後の混合時間を20分以上にすることが好ましく、40分以上がより好ましく、60分以上がさらに好ましく、90分以上がさらにより好ましい。
また、共役ジエン共重合体の熱劣化抑制の観点で、改質アスファルト組成物に架橋剤を添加した後の混合時間は、5時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましく、150分以下がさらに好ましく、120分以下がさらにより好ましい。
【0237】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物の粘度を低下させる観点、及び改質アスファルト組成物の製造時間をより短縮する観点から、改質アスファルト製造時は発泡剤を配合してもよい。
【0238】
第二実施形態において、発泡剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、ジアゾアミノベンゼン、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等が挙げられる。改質アスファルトとの相容性の観点から、発泡剤としては、ジアゾアミノベンゼン、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が好ましい。
【0239】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物に対する発泡剤の添加量は、改質アスファルト組成物の低い粘度や短い製造時間の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、改質アスファルト組成物に対するの発泡剤の添加量は、経済性の観点で、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0240】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるその他の添加剤を含んでもよい。
その他の添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無機充填剤、滑剤、離型剤、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、顔料、粘度調整剤、剥離防止剤、及び顔料分散剤等が挙げられる。
その他の添加剤の含有量は、特に限定されず、アスファルト100質量部に対して、50質量部以下とすることが好ましい。
【0241】
第二実施形態において、前記無機充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、スラッグウール、及びガラス繊維等が挙げられる。
【0242】
第二実施形態において、前記滑剤及び離型剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、及びエチレンビスステアロアミド等が挙げられる。
【0243】
第二実施形態において、前記安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、及び光安定剤等の各種安定剤が挙げられる。
【0244】
第二実施形態において、前記酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラジカル補捉剤等のフェノール系酸化防止剤、過酸化物分解剤等のリン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
また、両性能を併せ持つ酸化防止剤を使用してもよい。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、ブロック共重合体の耐熱老化性やゲル化抑制の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0245】
第二実施形態において、前記光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0246】
第二実施形態においては、上述したように剥離防止剤を使用してもよい。
剥離防止剤を使用することにより、改質アスファルト組成物を骨材と混合したときの改質アスファルト組成物と骨材との剥離を防止することができる。
前記剥離防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、樹脂酸が好適であり、カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンであって、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸のうち何れか1種以上を含有するロジンが挙げられる。
また、脂肪酸又は脂肪酸アミドは、剥離防止剤及び滑剤として機能することができる。
【0247】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物は、ブロック共重合体以外のゴム成分(以下、単に「ゴム成分」ともいう。)を含有してもよい。
ブロック共重合体以外のゴム成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、及び合成ゴムが挙げられる。
合成ゴムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBBS)、エチレンプロピレン共重合体(EPDM)等のオレフィン系エラストマー;クロロプレンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0248】
ブロック共重合体以外のゴム成分としては、改質アスファルト組成物の高い相容性や、耐骨材剥離性を改良する観点から、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレン−ブタジン−スチレンブロック共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体がより好ましい。
【0249】
ブロック共重合体以外のゴム成分は官能基を有していてもよい。
耐流動性を改良する観点から、その他のゴム成分としては、オレフィン系エラストマー、又は官能基を有するオレフィン系エラストマーを使用することが好ましい。
【0250】
ブロック共重合体以外のゴム成分が官能基を有する場合、官能基としては、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。
ブロック共重合体以外のゴム成分は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0251】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物中における、ブロック共重合体以外のゴム成分の含有量は、上述したブロック共重合体組成物を100質量部としたとき、0.5〜400質量部であることが好ましく、0.5〜300質量部であることがより好ましく、1〜200質量部であることがさらに好ましく、5〜150質量部であることがさらにより好ましい。
ブロック共重合体以外のゴム成分の含有量を上記範囲とすることにより、改質アスファルト組成物の相容性と耐骨材剥離性の改良効果がより確実に得られる。
【0252】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物は、本実施形態のブロック共重合体組成物以外の樹脂成分を含有してもよい。
本実施形態のブロック共重合体組成物以外の樹脂成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(低密度PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0253】
本実施形態のブロック共重合体組成物以外の樹脂成分としては、改質アスファルト組成物の高い相容性や、耐骨材剥離性を改良する観点から、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(低密度PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)が好ましい。
【0254】
ブロック共重合体組成物以外の樹脂成分は官能基を有していてもよい。
樹脂成分が官能基を有する場合、官能基としては、例えば、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基であることが好ましい。ブロック共重合体以外の樹脂成分は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0255】
第二実施形態において、改質アスファルト組成物中における、ブロック共重合体組成物以外の樹脂成分の含有量は、上述したブロック共重合体組成物を100質量部としたとき、0.5〜400質量部であることが好ましく、0.5〜300質量部であることがより好ましく、1〜200質量部であることがさらに好ましく、5〜150質量部であることがさらにより好ましい。
ブロック共重合体組成物以外の樹脂成分の含有量を上記範囲とすることにより、改質アスファルト組成物の相容性と耐骨材剥離性の改良効果がより確実に得られる。
【0256】
(改質アスファルト組成物の製造方法)
第二実施形態において、改質アスファルト組成物は、アスファルト100質量部に対し、上述したブロック共重合体組成物を、0.5質量部以上20重量部以下、混合することにより製造することができる。
【0257】
アスファルトとブロック共重合体組成物の混合方法は特に限定されず、任意の混合機を用いて行うことができる。
混合機としては、以下に限定されるものではないが、例えば、押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練機、垂直インペラ、サイドアーム型インペラ等の攪拌機、乳化機を含めたホモジナイザー、及びポンプ等が挙げられる。
【0258】
改質アスファルト組成物の製造工程においては、アスファルト、ブロック共重合体組成物、及び必要に応じて任意に添加剤を、140℃から220℃の範囲で、撹拌タンク等を用いて混合することが好ましい。
【0259】
〔改質アスファルト混合物〕
本実施形態の改質アスファルト混合物は、上記で説明した改質アスファルト組成物と骨材とを含む。
【0260】
骨材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、社団法人日本道路協会発行の「アスファルト舗装要綱」に記載されている舗装用の骨材を使用できる。
骨材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、砕石、玉石、砂利、鉄鋼スラグ等が挙げられる。
また、これらの骨材にアスファルトを被覆したアスファルト被覆骨材及び再生骨材等も、骨材として使用できる。
その他、これに類似する粒状材料、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量骨材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラスチック粒、セラミックス、エメリー、建設廃材、繊維等も、骨材として使用することができる。
【0261】
上述した各種骨材は、一般に、粗骨材、細骨材、及びフィラーに大別される。
【0262】
粗骨材とは、2.36mmふるいに留まる骨材であって、一般には粒径範囲2.5〜5mmの7号砕石、粒径範囲5〜13mmの6号砕石、粒径範囲13〜20mmの5号砕石、更には、粒径範囲20〜30mmの4号砕石等が挙げられる。
本実施形態の改質アスファルト混合物においては、これら種々の粒径範囲の粗骨材の1種又は2種以上を混合した骨材、あるいは、合成された骨材等を使用することが好ましい。
これらの粗骨材は、骨材に対して0.3〜1質量%程度のストレートアスファルトを被覆したものであってもよい。
【0263】
細骨材とは、2.36mmふるいを通過し、かつ、0.075mmふるいに止まる骨材をいい、以下に限定されるものではないが、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂、再生骨材破砕砂等が挙げられる。
【0264】
フィラーとは、0.075mmふるいを通過する骨材であって、以下に限定されるものではないが、例えば、スクリーニングスのフィラー分、石粉、消石灰、セメント、焼却炉灰、クレー、タルク、フライアッシュ、カーボンブラック等が挙げられる。
これらの他、フィラーとしては、ゴム粉粒、コルク粉粒、木質粉粒、樹脂粉粒、繊維粉粒、パルプ、人工骨材等であっても、0.075mmふるいを通過するものであれば使用することができる。
【0265】
粗骨材、細骨材、又はフィラーは、1種のみを単独で用いてもよいが、一般的には、2種以上を混合して用いられる。
【0266】
本実施形態の改質アスファルト混合物は、少なくとも、上述した本実施形態の改質アスファルト組成物と骨材とを混合することにより製造することができる。
混合方法は特に限定されず、従来公知の混合方法を適用することができる。
【0267】
改質アスファルト組成物と骨材との混合温度は、120℃以上200℃以下の範囲とすることが好ましい。
【0268】
改質アスファルト混合物中の骨材の含有量は、油付着時の高い耐質量損失や高い耐強度低下を有する改質アスファルト混合物を得るという観点から、85質量%以上98質量%以下の範囲が好ましく、90質量%以上97質量%以下がより好ましい。
【0269】
また、改質アスファルト混合物を製造する方法としては、アスファルトと骨材とを混合する際に、直接、本実施形態のブロック共重合体組成物を混合してアスファルトを改質する、いわゆるプラントミックス方式を使用することもできる。
【0270】
(改質アスファルト組成物、及び改質アスファルト混合物の利用方法)
本実施形態の改質アスファルト混合物は、D.Whiteoakによって編集され、Shell Bitumen U.K.によって英国で1990年に発行されたThe Shell Bitumen Handbookに記載されている様々な用途に使用できる。
また、他の用途としては、防水シート、屋根のコーティング、防水シート用のプライマー接着剤、舗装用封止結合剤、再利用アスファルト舗装における接着剤、低温調製アスファルトコンクリート(cold prepared asphaltic concrete)用の結合剤、ファイバーグラスマット結合剤、コンクリート用のスリップコート、コンクリート用の保護コート、パイプライン、及び鉄製部品のクラックの封着等が含まれる。
【0271】
本実施形態の改質アスファルト混合物を用いる舗装形態としては、以下に限定されないが、密粒度舗装、排水性舗装、透水性舗装、密粒度ギャップアスファルト舗装、砕石マスチックアスファルト舗装、カラー舗装、半たわみ性舗装、保水性舗装、薄層舗装が挙げられる。
【0272】
また、各舗装形態を得るための改質アスファルト混合物製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、熱工法、中温化工法、常温工法等が挙げられる。
【0273】
耐流動性、滑り抵抗性の改善の観点から、密粒度舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量%として、粗骨材40〜55質量%、細骨材40〜55質量%、フィラー3〜10質量%を含有することが好ましい。密粒度舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、改質アスファルト組成物が5〜7質量部であり、アスファルト100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体が3〜5.5質量部であることが好ましい。
【0274】
排水性、視認性、騒音性の改善の観点から、排水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材合計量を100質量%として、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜20質量%を含有することが好ましい。排水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、改質アスファルト組成物が4〜6質量部であり、アスファルト100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体が5〜10質量部であることが好ましい。
【0275】
透水性の改善の観点から、透水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量%として、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜20質量%を含有することが好ましい。
透水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、改質アスファルト組成物が4〜6質量部であることが好ましい。また、アスファルト100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体組成物の含有量が0超〜6質量部であることが好ましい。
【0276】
摩耗性、耐流動、耐久性、滑り抵抗性の改善の観点から、密粒度ギャップ舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量%として、粗骨材50〜60質量%、細骨材30〜40質量%、フィラー3〜10質量%を含有することが好ましい。
密粒度ギャップ舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、改質アスファルト組成物が4.5〜6質量部であることが好ましい。また、アスファルト100質量部に対して、本実施形態のブロック共重合体組成物が5〜12質量部であることが好ましい。
【0277】
摩耗性、不透水性、応力緩和性、耐流動、騒音性の観点から、砕石マスチックアスファルト舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量%として、粗骨材55〜70質量%、細骨材15〜30質量%、フィラー5〜15質量%を含有することが好ましい。
砕石マスチックアスファルト舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、改質アスファルト組成物が5.5〜8質量部であり、アスファルト100質量部に対して、本実施形態のブロック共重合体組成物が4〜10質量部であることが好ましい。
【0278】
視認性、耐油性、耐流動の観点から、半たわみ性舗装に用いられるアスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量%として、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜20質量%を含有することが好ましい。
半たわみ性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、改質アスファルト組成物が4〜6質量部であり、アスファルト100質量部に対して、本実施形態のブロック共重合体組成物が4〜10質量部であることが好ましい。
また、半たわみ性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、空隙率が15〜20%程度であることが好ましく、空隙にセメント系モルタルが充填されていることがより好ましい。
【0279】
舗装温度上昇の抑制、保水性の改善の観点から、保水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量%として、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜20質量%を含有することが好ましい。
保水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、改質アスファルト組成物が4〜6質量部であり、アスファルト100質量部に対して、本実施形態のブロック共重合体組成物が4〜10質量部であることが好ましい。
保水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、空隙率が15〜20%程度であることが好ましく、空隙にセメント系や石膏系等の保水材が充填されていることがより好ましい。
【0280】
経済性、工期短縮、施工性の観点から、薄層舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量%として、粗骨材60〜85質量%、細骨材5〜20質量%、フィラー3〜20質量%を含有することが好ましい。
薄層舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、改質アスファルト組成物が4〜6.5質量部であることが好ましい。アスファルト100質量部に対して、本実施形態のブロック共重合体組成物が4〜8質量部であることが好ましい。
薄層舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、粗骨材が粒径範囲2.5〜5mmの7号砕石であることが好ましい。
【0281】
第二実施形態の改質アスファルト組成物は、アスファルト防水シート用組成物としても好適に使用できる。
【0282】
第二実施形態の改質アスファルト組成物を用いることによって、アスファルト防水シートの軟化点、低温折り曲げ特性を改善することができる。
【0283】
アスファルト防水シート組成物中の、本実施形態のブロック共重合体組成物の含有量は、高い軟化点、より低温での耐ひび割れ性の観点から、アスファルトとブロック共重合体組成物との合計を100質量%としたとき、ブロック共重合体組成物の割合が5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、9質量%以上であることがさらに好ましい。
一方、アスファルト防水シート用組成物の製造性や経済性の観点から、アスファルトとブロック共重合体組成物との合計を100質量%としたとき、ブロック共重合体組成物の割合が20質量%以下であることが好ましく、17質量%以下であることがより好ましく、14質量%以下であることがさらに好ましい。
【0284】
アスファルト防水シート用組成物には、本実施形態のブロック共重合体組成物以外に、必要に応じて、種々のポリマー、粘着付与剤、軟化剤、酸化防止剤、耐候剤、無機充填剤、滑材、離型剤、架橋剤等を含有することができる。
【0285】
アスファルト防水シートを常温で施工する場合には、アスファルト防水シートの高い低温使用性、アスファルト防水シート用組成物の低い溶融粘度、高い施工性の観点から、針入度が針入度80以上のアスファルトを用いることが好ましく、針入度100以上のアスファルトを用いることがより好ましく、針入度130以上のアスファルトを用いることがさらに好ましく、針入度160以上のアスファルトを用いることがさらにより好ましい。
【0286】
アスファルト防水シートをトーチ工法等の高温で施工する場合には、アスファルト防水シート用組成物の粘度が低くなり過ぎないように、針入度30以上150以下のアスファルトを用いることが好ましく、針入度60以上120以下のアスファルトを用いることがより好ましく、針入度80以上100以下のアスファルトを用いることがさらに好ましい。
【0287】
アスファルト防水シートの高い低温使用性、アスファルト防水シート用組成物の低い溶融粘度、及び高い施工性の観点から、アスファルト防水シート組成物は、軟化剤を含有することが好ましい。
効果の大きさの観点から、前記軟化剤としてはオイルが好ましく、プロセスオイルがより好ましい。
また、アスファルト防水シートの高い軟化点の観点から、必要に応じて無機充填剤を使用してもよい。
【0288】
アスファルト防水シートの施工方法としては、熱工法、トーチ工法、自着工法、複合工法が挙げられる。
本実施形態のブロック共重合体組成物を用いたアスファルト防水シート用組成物は、高い耐熱老化性を有するため、熱工法やトーチ工法にも好適に使用できる。
【0289】
(舗装用バインダ組成物)
第三実施形態において、本実施形態のブロック共重合体組成物は、舗装用バインダ組成物に用いることができる。
第三実施形態の舗装用バインダ組成物は、粘着付与樹脂20質量%以上70質量%以下と、オイル20質量%以上70質量%以下と、本実施形態のブロック共重合体組成物2質量%以上15質量%以下とを含有する。
【0290】
第三実施形態の舗装用バインダ組成物は、本実施形態のブロック共重合体組成物を特定量含有することにより、透明性に優れたものとすることができ、黒色のアスファルトを含有する改質アスファルト組成物と対比すると、顔料等の着色剤を配合せずとも、材料の自然の色による発色が顕著である、という効果を有する。
このため、第三実施形態の舗装用バインダ組成物は、顔料等の着色剤を配合する場合の他、顔料等の着色剤を配合せずに材料そのものの色を発現させるような舗装にも用いることができる。
なお、発色性の観点から、第三実施形態の舗装用バインダ組成物は、顔料等の着色剤を含有して、積極的に色彩が施されていることが好ましい。
【0291】
舗装用バインダ組成物中の本実施形態のブロック共重合体組成物の含有量の下限値は、軟化点、及び耐わだち掘れ性の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、2質量%以上であればよく、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。
また、舗装用バインダ組成物中の本実施形態のブロック共重合体組成物の含有量の上限値は、舗装用バインダ組成物の溶融粘度の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、15質量%以下であればよく、13質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましい。
【0292】
第三実施形態において、粘着付与樹脂としては、第二実施形態において挙げた粘着付与樹脂と同様の粘着付与樹脂を使用することができる。
【0293】
舗装用バインダ組成物中の粘着付与樹脂の含有量の下限値は、溶融粘度の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、20質量%以上であればよく、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
また、舗装用バインダ組成物中の粘着付与樹脂の含有量の上限値は、舗装用バインダ組成物の低温伸度の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、70質量%以下であればよく、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0294】
第三実施形態において、オイルとしては、第二実施形態において挙げたオイルと同様のオイルを使用することができる。
【0295】
舗装用バインダ組成物中のオイルの含有量の下限値は、低温伸度、及び溶融粘度の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、20質量%以上であればよく、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましい。
また、舗装用バインダ組成物中のオイルの含有量の上限値は、舗装用バインダ組成物の軟化点、耐わだち掘れ性の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、70質量%以下であればよく、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましい。
【0296】
舗装用バインダ組成物に用いる顔料としては、例えば無機顔料が挙げられ、具体的には、酸化鉄、酸化クロム、水酸化鉄、及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも一つの顔料が挙げられる。
【0297】
舗装用バインダ組成物中の顔料の含有量は、発色性の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。
また、舗装用バインダ組成物の相容性や経済性の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0298】
第三実施形態の舗装用バインダ組成物は、骨材との接着性(「耐骨材剥離性」とのいう)を改良する観点から、剥離防止剤を含有することが好ましい。
【0299】
剥離防止剤としては、消石灰等の無機系化合物、酸性有機リン化合物、無水マレイン酸、マレイン化有機化合物等に代表される、高級脂肪酸又は高級脂肪酸の金属塩等のアニオン系化合物;アミン系有機化合物等に代表される、カチオン系化合物;脂肪族アミンの脂肪酸塩等に代表される、一分子中にカチオンとアニオンの両方を有する両極性型高分子化合物等が挙げられる。
これらの中で、剥離防止剤としては、舗装用バインダ組成物の骨材の耐はく離性の観点から、両極性型高分子化合物が好ましい。
市販品としては、ネオガードS−100(東邦化学製、商品名)等が挙げられる。
【0300】
舗装用バインダ組成物中の剥離防止剤の含有量は、耐骨材剥離性の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。
また、舗装用バインダ組成物の相容性や経済性の観点から、舗装用バインダ組成物100質量%中、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0301】
第三実施形態において、舗装用バインダ組成物は添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、無機充填剤、染料、滑剤、離型剤、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、粘度調整剤、及び顔料分散剤等が挙げられる。
舗装用バインダ組成物中の添加剤の含有量は特に限定されるものではなく、適宜選択することができるが、舗装用バインダ組成物100質量部に対して、通常、50質量部以下である。
【0302】
(舗装用バインダ組成物の製造方法)
舗装用バインダ組成物は、粘着付与樹脂20質量%以上70質量%以下と、オイル20質量%以上70質量%以下と、本実施形態のブロック共重合体組成物2質量%以上15質量%以下とを混合することにより製造することができる。
【0303】
混合方法は特に限定されず、例えば、撹拌タンク(撹拌方法は、垂直インペラ、サイドアーム型インペラ等の攪拌機、乳化機を含めたホモジナイザー、あるいはポンプによる撹拌が挙げられる)、押出機、ニーダー、バンベリーミキサー等の溶融混練機等で混合することができる。
混合温度は、140℃〜220℃の範囲が一般的である。
【0304】
(舗装用バインダ混合物)
第三実施形態において、舗装用バインダ混合物は、上記で説明した舗装用バインダ組成物と、骨材とを含む。
【0305】
骨材としては、特に限定されるものではなく、上述した第二実施形態の改質アスファルト混合物において用いられる骨材と同様のものを使用することができる。
【0306】
第三実施形態において、舗装用バインダ混合物は、舗装用バインダ組成物と、骨材とを混合することにより製造することができる。
【0307】
混合方法は特に限定されるものではなく、上述した舗装用バインダ組成物の製造方法と同様の方法を適用できる。
舗装用バインダ組成物と骨材との混合温度は、通常、120℃以上200℃以下の範囲とすることができる。
【0308】
舗装用バインダ混合物中の骨材の含有量は、特に限定されないが、油付着時の高い耐質量損失や、高い耐強度低下を有するアスファルト組成物を得るという観点からは、85質量%以上98質量%以下の範囲が好ましく、97質量%以上90質量%以下の範囲がより好ましい。
【0309】
(舗装用バインダ組成物及び舗装用バインダ混合物の利用方法)
第三実施形態において、舗装用バインダ組成物、及び舗装用バインダ混合物は、例えば、カラー舗装に使用することができる。
カラー舗装の形態としては、以下に限定されないが、密粒度舗装、排水性舗装、透水性舗装、密粒度ギャップアスファルト舗装、砕石マスチックアスファルト舗装、半たわみ性舗装、保水性舗装、薄層舗装が挙げられる。
【0310】
また、各舗装形態を得る為の製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、熱工法、中温化工法、常温工法等が挙げられる。
【実施例】
【0311】
以下、実施例と比較例を挙げて本実施形態について具体的に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0312】
〔測定方法〕
ブロック共重合体及びブロック共重合体組成物の測定方法を以下に示す。
(ブロック共重合体のビニル含有量、及び共役ジエン単量体単位の水素添加率の測定)
ブロック共重合体中のビニル含有率、及び共役ジエン単量体単位中の不飽和基の水素添加率は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。
【0313】
水素添加反応前のブロック共重合体を含む反応液に、大量のメタノールを添加することで、ブロック共重合体を沈殿させて回収した。次いで、このブロック共重合体をアセトンで抽出し、ブロック共重合体を真空乾燥した。これを、
1H−NMR測定のサンプルとして用いて、ブロック共重合体のビニル含有量を測定した。
【0314】
水素添加反応後の水添ブロック共重合体を含む反応液に、大量のメタノールを添加することで、水添ブロック共重合体を沈殿させて回収した。次いで、水添ブロック共重合体をアセトンで抽出し、水添ブロック共重合体を真空乾燥した。これを、
1H−NMR測定のサンプルとして用いて、水素添加率を測定した。
【0315】
1H−NMR測定の条件を以下に記す。
測定機器 :JNM−LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0316】
(ブロック共重合体中の、ビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量(TS)の測定)
一定量のブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて、溶解液中のビニル芳香族化合物成分(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度を測定した。得られたピーク強度から、検量線を用いて、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有率(TS)を算出した。
【0317】
(ブロック共重合体中の、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(スチレンブロック)の含有量(BS)の測定)
I.M.Kolthoff,et al., J.Polym.Sci.,1946,Vol.1,p.429に記載の四酸化オスミウム酸法で、下記ポリマー分解用溶液を用いて、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BS)を測定した。
測定サンプル :ブロック共重合体を水素添加する前の抜き取り品
ポリマー分解用溶液:四酸化オスミウム0.1gを第3級ブタノ−ル125mLに溶解した溶液
【0318】
(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定)
ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して、クロマトグラムのピークの分子量に基づいて求めた。
測定ソフトは、HLC−8320EcoSEC収集を用い、解析ソフトは、HLC−8320解析を用いた。
また、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
測定条件を下記に示す。
GPC ;HLC−8320GPC(東ソー株式会社製)
検出器 ;RI
検出感度 ;3mV/分
サンプリングピッチ;600msec
カラム ;TSKgel superHZM−N(6mmI.D×15cm)4本(東ソー株式会社製)
溶媒 ;THF
流量 ;0.6mm/分
濃度 ;0.5mg/mL
カラム温度 ;40℃
注入量 ;20μL
【0319】
(ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体(低分子量ビニル芳香族重合体)の重量平均分子量(Mw)、及びブロック共重合体組成物中の含有量の測定)
ブロック共重合体の重合の際に同時に調製したビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体(低分子量ビニル芳香族重合体:低分子量ポリスチレン)の重量平均分子量(Mw)は、上記の「(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定)」において測定したクロマトグラムの、低分子量成分のピーク分子量に基づいて求めた。
測定ソフトは、HLC−8320EcoSEC収集を用い、解析ソフトは、HLC−8320解析を用いた。
具体的には、分子量が5,000〜30,000の領域のピークを解析し、重量平均分子量(Mw)を求めた。
ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から、低分子量ビニル芳香族重合体の分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0320】
また、ブロック共重合体組成物中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体(低分子量ビニル芳香族重合体:低分子量ポリスチレン)の含有量は、下記の式より求めた。
含有量(%)={(全体のピーク面積)/(分子量が5,000〜30,000のピーク面積)}×100
ブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体を100質量部としたとき、低分子量ビニル芳香族重合体(低分子量ポリスチレン)の含有量は、ピーク面積比により求められる。
【0321】
〔粘接着組成物及び粘接着性テープ製造用のブロック共重合体組成物の製造〕
粘接着組成物及び粘接着性テープ製造用のブロック共重合体組成物(P−1)〜(P−4)を下記のようにして製造した。
(水素添加触媒の製造)
水素添加触媒を下記のようにして製造した。
窒素置換した反応容器内に、乾燥及び精製したシクロヘキサン1Lを入れ、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100mmolを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200mmolを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させることにより、水素添加触媒を製造した。
【0322】
ブロック共重合体組成物(P−1)〜(P−4)に含まれるブロック共重合体(p−1)〜(p−4)を下記のようにして製造した。
(ブロック共重合体(p−1))
ジャケット付き槽型反応器内に、所定量のシクロヘキサンを入れ、反応器内の温度を60℃に調整した。
その後、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)100質量部に対して、n−ブチルリチウムが0.11質量部となるように、n−ブチルリチウムを反応器の底部から添加した。
さらに、n−ブチルリチウム1molに対して、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」ともいう)が0.35molとなるように、TMEDAのシクロヘキサン溶液を添加した。
【0323】
その後、第一の重合工程として、スチレンモノマー15質量部を含有するシクロヘキサン溶液(スチレンモノマー濃度15質量%)を約10分間かけて供給した。
スチレンモノマーを供給する間、反応器内の温度を60℃に調整した。
スチレンモノマーの供給を停止後、15分間、反応器内の温度を70℃に調整しながら反応を継続させた。
【0324】
次に、第二の重合工程として、ブタジエンモノマー85質量部を含有するシクロヘキサン溶液(ブタジエンモノマー濃度15質量%)を50分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。
ブタジエンモノマーを供給する間、反応器内の温度を70℃になるように調整した。
ブタジエンモノマーの供給を停止した後、10分間、反応器内の温度を70℃に調整しながら反応を継続させて、ポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体を得た。
【0325】
得られたポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位(スチレン単量体単位)の含有量(TS)、及びビニル芳香族単量体単位を主体とするブロック(ポリスチレンブロック)の含有量(BS)が、共に15質量%であり、共役ジエン単量体単位のビニル含有量(ブタジエン中のビニル含有量)は34mol%であり、重量平均分子量(以下、単に「Mw」ともいう。)が90000であった。
【0326】
得られたポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体を一部抜出し、カップリング剤としてテトラエトキシシランをn−ブチルリチウムの総mol数に対するmol比が0.1となるように添加し、10分間カップリング反応させ、カップリング重合体を得た。
【0327】
その後、上記水素添加触媒を用いて、得られたカップリング重合体を80℃で水素添加し、ブロック共重合体(p−1)を得た。
反応終了後に、ブロック共重合体(p−1)100質量部に対して、安定剤(オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.25質量部を添加した。
水素添加後のブロック共重合体(p−1)の水素添加率は40mol%であり、MFR(200℃、5kgf)は、2.0g/10分であった。
【0328】
ブロック共重合体(p−1)の構造及び組成は、
(S−B):65質量%、Mw90000
(S−B)
2−X:4質量%、Mw180000
(S−B)
3−X:8質量%、Mw270000
(S−B)
4−X:23質量%、Mw360000
(式中、Sは、スチレンブロックを示し、Bはブタジエンブロックを示し、Xは、カップリング剤の残基を示す。以下、同様とする。)であった。
【0329】
(低分子量ビニル芳香族重合体(ps−1))
ブロック共重合体組成物(P−1)〜(P−4)に含まれる低分子量ビニル芳香族重合体(ps−1)を下記のようにして製造した。
ジャケット付き槽型反応器内に、所定量のシクロヘキサンを入れ、反応器内の温度を70℃に調整した。
その後、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)100質量部に対して、n−ブチルリチウムが0.5質量部となるように、n−ブチルリチウムを反応器の底部から添加した。さらに、n−ブチルリチウム1molに対して、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンが0.35molとなるように、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液を添加した。スチレンモノマー100質量部を含有するシクロヘキサン溶液(スチレンモノマー濃度15質量%)を、約60分間かけて供給し、低分子量ビニル芳香族重合体(ps−1)としてのポリスチレンを作製した。スチレンモノマーを供給する間、反応器内の温度を70℃に調整した。スチレンモノマーの供給を停止後、15分間、反応器内の温度を70℃に調整しながら反応を継続させた。
【0330】
得られたポリスチレンの重量平均分子量(以下、単に「Mw」ともいう。)は、15000であった。得られたポリスチレン100質量部に対して、安定剤(オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.25質量部を添加した。
【0331】
(ブロック共重合体組成物(P−1、P−2、P−3、P−4)の製造例)
上記で得られたブロック共重合体(p−1)と、低分子量ビニル芳香族重合体(ps−1)とを、下記の割合で、溶液状態で混合し、その後溶媒を乾燥し、ブロック共重合体組成物(P−1)、(P−2)、(P−3)及び(P−4)を得た。
P−1:(p−1)/(ps−1)=97質量部/3質量部
P−2:(p−1)/(ps−1)=95質量部/5質量部
P−3:(p−1)/(ps−1)=100質量部/0質量部
P−4:(p−1)/(ps−1)=90質量部/10質量部
【0332】
(その他の材料)
上記ブロック共重合体組成物(P−1)〜(P−4)のほか、下記のブロック共重合体(SBS)及び(SIS)、粘着付与樹脂(b−1)及び(b−2)、オイル(c−1)及び(c−2)、並びに酸化防止剤を用いた。
【0333】
ブロック共重合体(SBS):D1102(非水添ブロック共重合体、Kraton社製、ポリスチレンブロックの含有率29質量%、ジブロック含有率17質量%)
ブロック共重合体(SIS):Quintac3433N(日本ゼオン社製、ポリスチレンブロックの含有率16質量%、ジブロック含有率56質量%)
粘着付与樹脂(b−1):Quintone R100(日本ゼオン株式会社製、C4〜C5の炭化水素留分の重合物99%以上、軟化点96℃、脂肪族系粘着付与剤)
粘着付与樹脂(b−2):アルコンM100(荒川化学工業社製、軟化点100℃、部分水添芳香族系粘着付与剤
オイル(c−1):ダイアナプロセスオイルPW−90(出光興産株式会社製、パラフィン系オイル)
オイル(c−2):ダイアナプロセスオイルNS−90S(出光興産株式会社製、ナフテン系オイル)
酸化防止剤:Irganox1010(BASF社製、フェノール系酸化防止剤)
【0334】
〔粘接着組成物の製造例〕
下記表1に示す組成で、ブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂と、オイルと、酸化
防止剤とを、170℃に加熱しつつ、アズワン製「オイルバススターラー(型番OBS−
200M)」を用いてプロペラで混合して、
参考例1〜5、及び比較例1及び2の粘接着組成物を製造した。
【0335】
〔粘接着性テープの製造例〕
参考例1〜5、及び比較例1及び2の粘接着組成物を用いて、下記方法で粘接着性テープを作製した。
溶融させた粘接着組成物を室温まで冷却し、これをトルエンに溶かし、アプリケーター
で、基材としての厚さ50μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに
コーティングした。
その後、室温で30分間、70℃のオーブンで7分間、トルエンを完全に蒸発させ、粘
接着剤組成物層として厚さ30μmの粘接着剤組成物層が積層された透明PETフィルム
を有する、粘接着性テープを製造した。
【0336】
〔評価方法〕
参考例1〜5、及び比較例1及び2の粘接着組成物及び粘接着性テープについて、下記方法により評価した。
【0337】
(粘接着組成物の耐熱変色性)
上記「(粘接着剤組成物の製造例)」で得られた粘接着組成物を圧縮成型して厚さ2mmのシートを作製し、ギヤオーブンにより180℃で30分間加熱を行った。
加熱前及び加熱後の該シートのb値を色差計(日本電色工業株式会社製 ZE−2000)を用いて測定した。
加熱前のb値と加熱後のb値の差(Δb値)が大きいほど、重合体は黄色味が強く耐熱変色性に劣ることを示す。
下記評価基準により、加熱後の色調に優れる方から○、△、×と評価した。
<評価基準>
Δb値が3未満 :○
Δb値が3以上15未満 :△
Δb値が15以上 :×
【0338】
(タック性)
タック性は、J.Dow[Proc.Inst.Rub.Ind.,1.105(1954)]のボールタック試験に準じて評価した。傾斜30度のガラス板上の斜面に、長さ10cmにカットした粘接着性テープを、粘接着層面を上側にして貼り付けた。
粘接着性テープの上端から斜面に沿って上方10cmの位置より直径1/32インチから1インチまでの32種類の大きさのステンレス製ボールを初速度0で転がして、粘接着性テープ上で停止する最大径の球の大きさを測定した。
球の大きさに基づいて下記評価基準によりボールタックを評価した。
評価は、粘着テープ上で停止する最大径の球の大きさが7/32インチより大きければ、粘接着組成物として実用上問題なく使用できると判断し、○とした。
粘着テープ上で停止する最大径の球の大きさが4/32インチより大きく7/32インチ未満の場合、△とした。
粘着テープ上で停止する最大径の球の大きさが4/32インチ以下の場合、×とした。
7/32インチ<ボールサイズ :○
4/32インチ<ボールサイズ≦7/32インチ :△
ボールサイズ≦5/32インチ :×
【0339】
(粘接着組成物の粘着力の評価)
JIS Z0237の引きはがし粘着力の測定の方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力の測定方法に準じて測定した。
まず、上記「〔粘接着性テープの製造例〕」のようにして製造した粘接着性テープを25mm幅にカットして、25mm幅の粘接着性テープ試料を作製した。
粘接着性テープ試料をステンレス板に貼り付け、引き剥がし速度300mm/minで180°剥離力を測定した。
得られた剥離力に基づいて下記の基準により粘接着組成物の粘着力を評価した。
評価は、良い順から○、△、×とした。
△以上であれば粘接着組成物として実用上問題なく使用できる。
剥離力(N/10mm)6以上 :○
5以上6未満 :△
5未満 :×
【0340】
(粘接着組成物の粘着性保持力の評価)
上記「〔粘接着性テープの製造例〕」のようにして製造した粘接着性テープをカットして、25mm長×15mm幅の粘接着性テープ試料を作製した。
ステンレス板に粘着テープサンプルを貼り付け、ステンレス板を垂直にし、50℃において、垂直下方向に1kgの荷重を与えて粘着テープがずれ落ちるまでの時間を測定した。下記の基準により粘接着組成物の粘着性保持力を評価した。
評価は、良い順から○、△、×とした。
△以上であれば粘接着組成物として実用上問題なく使用できる。
粘着性保持力(分)10分以上 :〇
5分以上10分未満 :△
5分未満 :×
【0341】
【表1】
【0342】
〔改質アスファルト組成物、舗装用バインダ組成物、及びアスファルト防水シート用組成物の製造〕
改質アスファルト組成物、舗装用バインダ組成物、及びアスファルト防水シート用組成物製造用のブロック共重合体組成物(P−5)〜(P−13)を下記のようにして製造した。
(水素添加触媒の製造)
水素添加触媒を下記のようにして製造した。
窒素置換した反応容器内に、乾燥及び精製したシクロヘキサン1Lを入れ、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100mmolを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200mmolを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させることにより、水素添加触媒を製造した。
【0343】
(ブロック共重合体組成物(P−5))
内容積が100Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法で行った。
【0344】
<第一の重合工程>
シクロヘキサン43.6kgを反応器に仕込んで温度60℃に調整した後、モノマーとしてスチレン990gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約3分間かけて添加し、その後n−ブチルリチウムを38.5mL、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」ともいう)を8.17mL添加し、反応を開始させた。
第一の重合工程の反応時間は、反応器内の温度が最高値を示してから3分間とした。
【0345】
<第二の重合工程>
次に、スチレン2700gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を2分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その後ブタジエン5360gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、0.5分間経過後、さらにブタジエン5360gを22分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、反応させた。
第二の重合工程の反応時間は、反応器の温度が最高値を示してから5分間とした。
【0346】
<第三の重合工程>
その後、更にモノマーとしてスチレン810gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約1分間かけて添加し、その後、反応器内の温度が最高値を示してから、さらに5分間反応させた。反応終了後にメタノールを3.5mL添加し、ブロック共重合体を得た。
【0347】
<失活工程>
上記の通り、各重合工程で添加したモノマー量及び開始剤の量で、第一の重合工程の重合開始温度を60℃とし、第一の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから3分間とし、第二の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから5分間とし、第三の重合工程の反応時間を、スチレンモノマー添加後、その後、反応器の温度を最高値を示してから、さらに5分間とすることにより、第一の重合工程で添加したスチレン及び第三の重合工程で添加したスチレンの一部が完全に重合されずに残るよう制御した。
第三の重合工程で重合したブロック共重合体、及び完全に重合せず残った低分子量ポリスチレンを含む重合体溶液にメタノールを添加して失活させた。
【0348】
<水素添加工程>
得られたブロック共重合体に、上記水添触媒を、ブロック共重合体の質量に対してチタン換算で30質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行い、ブロック共重合体(p−5)を作製した。次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体(p−5)の質量に対して0.3質量%添加し、ブロック共重合体組成物(P−5)を得た。ブロック共重合体組成物(P−5)は、重量平均分子量(Mw)15600の低分子量ポリスチレンを、1.3質量%含有するものであった。
【0349】
(ブロック共重合体組成物(P−6))
ブロック共重合体組成物(P−5)と同様の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法で行った。
【0350】
<第一の重合工程>
シクロヘキサン43.4kgを反応器に仕込んで温度60℃に調整した後、モノマーとしてスチレン900gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約3分間かけて添加し、その後n−ブチルリチウムを36.7mL、TMEDAを6.49mL添加し、反応を開始させた。
【0351】
<第二の重合工程>
次に、反応器内の温度が最高値を示してから3分間後に、スチレン1980g部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を2分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その後ブタジエン4600gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、0.5分間経過後、さらにブタジエン7550gを22分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、反応させた。
【0352】
<第三の重合工程>
その後、反応器の温度が最高温度に到達した後、5分後、更にモノマーとしてスチレン900gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約1分間かけて添加し、その後5分間反応させた。反応終了後にメタノールを3.34mL添加し、ブロック共重合体を得た。
【0353】
<失活工程>
上記の通り、各重合工程で添加したモノマー量及び開始剤の量で、第一の重合工程の重合開始温度を60℃とし、第一の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから3分間とし、第二の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから5分間とし、第三の重合工程の反応時間を、スチレンモノマー添加後5分間とすることにより、第一の重合工程で添加したスチレン及び第三の重合工程で添加したスチレンの一部が完全に重合されずに残るよう制御した。第三の重合工程で重合したブロック共重合体、及び完全に重合せず残った低分子量ポリスチレンを含む重合体溶液にメタノールを添加して失活させた。
【0354】
<水素添加工程>
得られたブロック共重合体に、上記水添触媒を、ブロック共重合体の質量に対してチタン換算で30質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行い、ブロック共重合体(P−6)を作製した。
次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体(P−6)の質量に対して0.3質量%添加し、ブロック共重合体組成物(P−6)を得た。
ブロック共重合体組成物(P−6)は、重量平均分子量(Mw)13500の低分子量ポリスチレンを、2.4質量%含有するものであった。
【0355】
(ブロック共重合体組成物(P−7))
ブロック共重合体組成物(P−5)と同様の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法で行った。
【0356】
<第一の重合工程>
シクロヘキサン45.5kgを反応器に仕込んで温度60℃に調整した後、モノマーとしてスチレン1660gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約3分間かけて添加し、その後n−ブチルリチウムを37.9mL、TMEDAを6.7mL添加し、反応を開始させた。
【0357】
<第二の重合工程>
次に、反応器内の温度が最高値を示してから3分間後に、スチレン1620g部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を2分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その後ブタジエン3720gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、0.5分間経過後、さらにブタジエン5480gを22分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、反応させた。
【0358】
<第三の重合工程>
その後、反応器の温度が最高温度に到達した後、5分後、更にモノマーとしてスチレン1490gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約1分間かけて添加し、その後5分間反応させた。
反応終了後にメタノールを3.45mL添加し、ブロック共重合体を得た。
【0359】
<失活工程>
上記の通り、各重合工程で添加したモノマー量及び開始剤の量で第一の重合工程の重合開始温度を60℃とし、第一の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから3分間とし、第二の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから5分間とし、第三の重合工程の反応時間を、スチレンモノマーを添加してから5分間とすることにより、第一の重合工程で添加したスチレン及び第三の重合工程で添加したスチレンの一部が完全に重合されずに残るよう制御した。第三の重合工程で重合したブロック共重合体、及び完全に重合せず残った低分子量ポリスチレンを含む重合体溶液にメタノールを添加して失活させた。
【0360】
<水素添加工程>
得られたブロック共重合体に、上記水添触媒を、ブロック共重合体の質量に対してチタンとして30質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行い、ブロック共重合体(p−7)を作製した。次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体(p−7)の質量に対して0.3質量%添加し、ブロック共重合体組成物(P−7)を得た。ブロック共重合体組成物(P−7)は、重量平均分子量(Mw)18400の低分子量ポリスチレンを、4.2質量%含有するものであった。
【0361】
(ブロック共重合体組成物(P−8))
ブロック共重合体組成物(P−5)と同様の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合を以下の方法で行った。
【0362】
<第一の重合工程>
シクロヘキサン43.1kgを反応器に仕込んで温度60℃に調整した後、モノマーとしてスチレン990gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約3分間かけて添加し、その後n−ブチルリチウムを38.3mL、TMEDAを5.8mL添加し、反応を開始させた。
【0363】
<第二の重合工程>
次に、反応器内の温度が最高値を示してから3分間後に、スチレン1800g部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を2分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その後ブタジエン4240gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を6分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、0.5分間経過後、さらにブタジエン8470gを22分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、反応させた。
【0364】
<第三の重合工程>
その後、反応器の温度が最高温度に到達した後、5分後、更にモノマーとしてスチレン810gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約1分間かけて添加し、その後5分間反応させた。
【0365】
<失活工程>
上記の通り、各重合工程で添加したモノマー量及び開始剤の量で第一の重合工程の重合開始温度を60℃とし、第一の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから3分間とし、第二の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから5分間とし、第三の重合工程の反応時間を、スチレンモノマーを添加後5分間とすることにより、第一の重合工程で添加したスチレン及び第三の重合工程で添加したスチレンの一部が完全に重合されずに残るよう制御した。
【0366】
<変性工程>
次に、反応終了後に得られたブロック共重合体に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、「DMI」と称する)を6.98mL添加し、10分間末端変性反応を行なった。さらに、反応終了後にメタノールを3.45mL添加し、ブロック共重合体を得た。
【0367】
<水素添加工程>
得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体の質量に対してチタン換算で30質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行い、ブロック共重合体(p−8)を作製した。次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体(p−8)の質量に対して0.3質量%添加し、ブロック共重合体組成物(P−8)を得た。ブロック共重合体組成物(P−8)は、重量平均分子量(Mw)12000の低分子量ポリスチレンを、1.2質量%含有するものであった。
【0368】
(ブロック共重合体組成物(p−9))
第一の重合工程において温度を55℃に調整し、第二の重合工程において最初にモノマーを供給するタイミングを、反応器の温度が最高値を示してから5分後とし、第三の重合工程において最初にモノマーを供給するタイミングを反応器の温度が最高値を示してから7分間後とした。
上記以外はブロック共重合体組成物(P−5)と同様にして、ブロック共重合体組成物(P−9)を得た。
【0369】
上記の通り、各重合工程で添加したモノマー量及び開始剤の量で第一の重合工程の重合開始温度を55℃とし、第一の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから5分間とし、第二の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから7分間とし、第三の重合工程の反応時間を、スチレンモノマーを添加後5分間とすることにより、第一の重合工程で添加したスチレン及び第三の重合工程で添加したスチレンの一部が完全に重合されずに残るよう制御した。第三の重合工程で重合したブロック共重合体、及び完全に重合せず残った低分子量ポリスチレンを含む重合体溶液にメタノールを添加して失活させた。
【0370】
ブロック共重合体組成物(P−9)は、重量平均分子量(Mw)15000の低分子量ポリスチレンを、0.25質量%含有するものであった。
【0371】
(ブロック共重合体組成物(P−10)〜(P−13))
ブロック共重合体組成物(P−10)〜(P−13)においては、先ず、ブロック共重合体(p−10)を製造し、続いて、当該ブロック共重合体(p−10)と、後述する低分子量ビニル芳香族重合体(ps−2)〜(ps−4)とを混合した。
<ブロック共重合体(p−10)の製造>
第一の重合工程において温度を50℃に調整し、第二の重合工程において最初にモノマーを供給するタイミングを、反応器の温度が最高値を示してから6分後とし、第三の重合工程において最初にモノマーを供給するタイミングを、反応器の温度が最高値を示してから8分間後とした。
上記以外はブロック共重合体組成物(P−5)と同様にして、ブロック共重合体(p−10)を得た。
【0372】
ブロック共重合体(p−10)は、各重合工程で添加したモノマー量及び開始剤の量で、第一の重合工程の重合開始温度を50℃とし、第一の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから6分間とし、第二の重合工程の反応時間を、反応器内の温度が最高値を示してから8分間とすることにより、低分子量ポリスチレンは生成されなかった。
【0373】
低分子量ビニル芳香族重合体として、下記(ps−2)、(ps−3)、及び(ps−4)を使用した。
(ps−2):ポリスチレン(重量平均分子量:10,000、ハイマーST−120:三洋化成工業(株)製)
(ps−3):ポリスチレン(重量平均分子量:4,000、ハイマーST−95:三洋化成工業(株)製)
(ps−4):ポリスチレン(重量平均分子量:53,200、ピコラスチックD125:理化ハーキュレス(株)製)
【0374】
得られたブロック共重合体(p−10)100質量部に対して、低分子量ビニル芳香族重合体(ps−2)2.5質量部を溶液様態で混合し、その後溶媒を乾燥して、ブロック共重合体組成物(P−10)を作製した。
【0375】
得られたブロック共重合体(p−10)100質量部に対して、低分子量ビニル芳香族重合体(ps−2)7.5質量部を溶液状態で混合し、その後溶媒を乾燥して、ブロック共重合体組成物(P−11)を作製した。
【0376】
得られたブロック共重合体(p−10)100質量部に対して、低分子量ビニル芳香族重合体(ps−3)2.0質量部を溶液状態で混合し、その後溶媒を乾燥して、ブロック共重合体組成物(P−12)を作製した。
【0377】
得られたブロック共重合体(p−10)100質量部に対して、低分子量ビニル芳香族重合体(ps−4)2.5質量部を溶液状態で混合し、その後溶媒を乾燥して、ブロック共重合体組成物(P−13)を作製した。
【0378】
得られたブロック共重合体(p−5)〜(p−10)、及びブロック共重合体組成物(P−5)〜(P−13)の分析結果を表2及び表3に示す。
【0379】
【表2】
【0380】
【表3】
【0381】
〔実施例6〜10、及び比較例3〜6〕
(改質アスファルト組成物の調整)
750mLの金属缶に、アスファルト(ストレートアスファルト60−80(新日本石油(株)製))を500g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸した。
次に、溶融状態のアスファルトに、表4に示す割合で、各ブロック共重合体組成物、SBS、SISを攪拌しながら少量ずつ投入した。
各材料を完全に投入した後、3000rpmの回転速度で60分間攪拌して、改質アスファルト組成物を調製した。
これらの各配合組成及び各改質アスファルト組成物の評価結果を表4に示す。
【0382】
なお、SBS、SISとしては、以下のものを使用した。
ブロック共重合体(SBS):D1102(非水添ブロック共重合体、Kraton社製、ポリスチレンブロックの含有率29質量%、ジブロック含有率17質量%)
ブロック共重合体(SIS):Quintac3433N(日本ゼオン社製、ポリスチレンブロックの含有率16質量%、ジブロック含有率56質量%)
【0383】
〔
参考例11、12、及び比較例7〜10〕
(舗装用バインダ組成物の調製)
750mLの金属缶に粘着付与樹脂(商品名:アイマーブP−125(出光興産(株)
製、軟化点125℃、DCPD/芳香族共重合系の水添石油樹脂))を160gと、オイ
ル(多環芳香族炭化水素の含有量:1.9質量%、芳香族分:9%、40℃の動粘度が4
80mm
2/s、引火点:310℃の鉱物系重質油)を208g投入し、180℃のオイ
ルバスに金属缶を充分に浸した。
次に、溶融状態の粘着付与樹脂とオイルとの混合物中に、下記表5に示す割合で、各ブ
ロック共重合体組成物を攪拌しながら少量ずつ投入した。
各材料を完全に投入した後、3000rpmの回転速度で60分間攪拌して、舗装用バ
インダ組成物を調製した。
これらの各配合組成、及び各舗装用バインダ組成物の評価結果を表5に示す。
【0384】
〔実施例13、14、及び比較例11〜14〕
(アスファルト防水シート用組成物の調製)
750mLの金属缶に、ストレートアスファルト100−150〔新日本石油(株)製〕を400g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸した。
次に、溶融状態のアスファルトに、表6に示す比率で、各ブロック共重合体組成物、及びオイル(c−2)を、攪拌しながら少量ずつ投入した。
各材料を完全に投入した後、3000rpmの回転速度で90分間攪拌して、アスファルト防水シート用組成物を調製した。これらの各配合組成、及び各アスファルト防水シート用組成物の評価結果を表6に示す。
【0385】
〔評価方法〕
改質アスファルト組成物、及び舗装用バインダ組成物の評価は、以下のようにして行った。
(改質アスファルト組成物、及び舗装用バインダ組成物の軟化点(リング&ボール法))
JIS−K2207に準じて、改質アスファルト組成物、及び舗装用バインダ組成物の軟化点を測定した。
規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。
80℃以上 :◎
70℃以上80℃未満 :○
60℃以上70℃未満 :△
60℃未満 :×
測定値が60℃以上(△以上)であれば、改質アスファルト組成物及び舗装用バインダ組成物として実用上問題なく使用できる。
【0386】
(改質アスファルト組成物、及び舗装用バインダ組成物の低温伸度)
JIS−K2207に準じ、試料を形枠に流し込み、規定の形状にした後、恒温水浴内で15℃に保ち、次に試料を5cm/minの速度で引っ張ったとき、試料が切れるまでに伸びた距離を測定した。
100cm以上 :◎
75cm以上100cm未満 :○
50cm以上75cm未満 :△
50cm未満 :×
測定値が50cm以上(△以上)であれば、改質アスファルト組成物及び舗装用バインダ組成物として実用上問題なく使用できる。
【0387】
(改質アスファルト組成物、及び舗装用バインダ組成物の溶融粘度)
測定温度180℃で、ブルックフィールド型粘度計により測定した。
200mPa・s未満 :◎
200mPa・s以上300mPa・s以下 :○
300mPa・s以上400mPa・s未満 :△
400mPa・s以上 :×
測定値が400mPa・s未満(△以上)であれば、改質アスファルト組成物及び舗装用バインダ組成物として実用上問題なく使用できる。
【0388】
(改質アスファルト組成物、及び舗装用バインダ組成物の耐わだち掘れ性:G*/sinδ)
ダイナミックシェアレオメーターによる動的粘弾性を測定し、得られた複素弾性率(G*)とsinδから、改質アスファルト組成物、及び舗装用バインダ組成物の耐わだち掘れに対する評価指標として、G*/sinδを求めた。
なお、測定装置、測定条件は以下の通りとした。
・測定装置:Rheometric Scientific社製 ARES
・測定条件
測定温度:60℃
角速度:10rad/sec
測定モード:パラレルプレート(直径50mmφ)
サンプル量:2g
・評価基準
G*/sinδが5,000Pa以上 :◎
4,000Pa以上5,000Pa未満 :○
3,000Pa以上4,000Pa未満 :△
3,000未満 :×
G*/sinδが3,000mPa・s以上(△以上)であれば、改質アスファルト組成物及び舗装用バインダ組成物として実用上問題なく使用できる。
【0389】
(改質アスファルト組成物、及び舗装用バインダ組成物の貯蔵時の耐熱安定性:分離特性)
改質アスファルト組成物の製造直後、内径50mm、高さ130mmのアルミ缶に、改質アスファルト組成物をアルミ缶の上限まで流し込み、180℃のオーブン中で、24時間加熱した。
その後、アルミ缶を取り出して自然冷却させた。
次に室温まで下がった改質アスファルト組成物の下端から4cm、上端から4cmを採取し、それぞれ上層部と下層部の軟化点を測定し、その軟化点差を高温貯蔵安定性の尺度とした。上層部と下層部の軟化点の差が小さいほど、貯蔵時の耐熱安定性が良好であることを示す。舗装用バインダ組成物も同様にして評価した。
上層部と下層部の軟化点の差が2℃未満 :◎
2℃以上5℃未満 :○
5℃以上10℃未満 :△
10℃以上 :×
上層部と下層部の軟化点の差が10℃未満(△以上)であれば、改質アスファルト組成物及び舗装用バインダ組成物として実用上問題なく使用できる。
【0390】
(舗装用バインダ組成物の耐熱変色性)
粘接着組成物混合後の色を日本電色工業(株)製EZ2000で測定し、以下のように評価した。
色差計によるb値差(粘接着組成物混合後のb値−顔料のb値)が
2以内 :◎
2以上5未満 :○
5以上8未満 :△
8以上 :×
b値差が5未満(○以上)であれば、舗装用バインダ組成物として実用上問題なく使用できる。
【0391】
(アスファルト防水シート用組成物の軟化点(リング&ボール法))
JIS−K2207に準じて、組成物の軟化点を測定した。規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。
120℃以上 :○
110℃以上120℃未満 :△
110℃未満 :×
測定値が110℃以上(△以上)であれば、アスファルト防水シート用組成物として実用上問題なく使用できる。
【0392】
(アスファルト防水シート用組成物の溶融粘度)
測定温度180℃で、ブルックフィールド型粘度計により測定した。
1500mPa・s未満:○
1500mPa・s以上2000mPa・s未満:△
2000mPa・s以上 :×
測定値が2000mPa・s未満(△以上)であれば、アスファルト防水シート用組成物として実用上問題なく使用できる。
【0393】
(アスファルト防水シート用組成物の低温折り曲げ性)
アスファルト防水シート用組成物を、150℃でプレスして、厚み2mmのシートを作成した。シートの大きさを20mm×100mmの大きさに切出し、温度調整されたドライアイス−エタノール液に10分間以上浸漬後、シートを取出した直後に、直径20mmの金属棒にシートの長手方向を曲げるように巻き付けたときの、シートのひびや割れを目視で観察した。シートのひびや割れが発生しない、ドライアイス−エタノール液の最低温度を測定した。
【0394】
−20℃以下 :〇
−15℃以下−20℃を超える :△
−15℃を超える :×
シートのひびや割れが発生しない温度が−15℃以下(△以上)であれば、アスファルト防水シート用組成物として実用上問題なく使用できる。
【0395】
【表4】
【0396】
【表5】
【0397】
【表6】