(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持体の他方主面側であって幅方向の端部側において前記長さ方向に延びており、前記固体電解質層よりも強度が高く、前記第1層よりも幅が狭い第3層が設けられており、
該第3層は、前記側面まで延びており、前記第2層と前記支持体を介して対向している
請求項3に記載のセル。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜7を用いて、セル、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収納装置について説明する。
【0014】
以下において、セルスタックを構成するセルとして固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。なお、同一構成については同一の符号を用いるものとする。
【0015】
図1は、中空平板型のセル1の一例を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は酸素極側から見た側面図である。
【0016】
図1に示すセル1は、中空平板型で、断面が扁平状で、全体的に見て楕円筒状体(言い換えれば楕円柱状)をした導電性の支持体2を備えている。支持体2の内部には、適当な間隔で複数のガス通路2aがセル1の長手方向Lに貫通しており、セル1は、この支持体2上に各種の部材が設けられた構造を有している。
【0017】
図1に示すセル1においては、
図1(a)に示されている形状から理解されるように、支持体2は、互いに対向している一対の主面nと、一方主面と他方主面とを接続する一対の側面mとで構成されている。一方主面n(下面)と両側の側面mを覆うように多孔質な燃料極(第1電極)3が配置されており、さらに、この燃料極3を覆うように、固体電解質層4が配置されている。固体電解質層4はガス遮断性を有するセラミックスからなり厚みは、40μm以下、特には20μm以下、さらには15μm以下であることが発電性能向上という点から望ましい。
【0018】
図1に示すセル1においては、一方主面n側であって固体電解質層4上に酸素極6が設けられている。酸素極6は燃料極3と固体電解質層4を介して対向している。
【0019】
酸素極6が積層されていない他方主面(上面)には、ガス遮断性を有する導電性セラミックスからなるインターコネクタ8が設けられている。
【0020】
すなわち、セル1においては、燃料極3、固体電解質層4は、一方主面(下面)から両端の弧状面mを経由して他方主面n(上面)まで設けられており、固体電解質層4の左右両端部上に、インターコネクタ8の左右両端部が積層されて接合されている。
【0021】
また、ガス遮断性を有する固体電解質層4とインターコネクタ8とで支持体2を取り囲
み、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。言い換えれば、固体電解質層4とインターコネクタ8とで、ガス遮断性を有する楕円筒状体を形成し、この楕円筒状体の内部が燃料ガス流路とされ、燃料極3に供給される燃料ガスと、酸素極6に供給される酸素含有ガスとが、楕円筒状体で遮断されている。
【0022】
具体的に説明すると、図示しないがインターコネクタ8が、支持体2の上端側から下端側に向けて延びるように設けられている。また、
図1(b)に示すように、平面形状が矩形状の酸素極6が、支持体2の上下端部を除いて支持体2の一方主面nに設けられている。
【0023】
ここで、セル1は、燃料極3と酸素極6とが固体電解質層4を介して対面している部分が発電の素子部として機能する。即ち、酸素極6の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ支持体2内のガス通路2aに燃料ガス(水素含有ガス)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。そして、かかる発電によって生成した電流は、支持体2に設けられているインターコネクタ8を介して集電される。
【0024】
以下に、本実施形態のセルを構成する各部材について説明する。
【0025】
支持体2は、燃料ガスを燃料極3まで透過させるためにガス透過性であること、インターコネクタ8を介して集電を行うために導電性であることが要求されることから、例えば、Niおよび/またはNiOと、無機酸化物、例えば特定の希土類元素酸化物とから成ることが好ましい。
【0026】
特定の希土類元素酸化物とは、支持体2の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近づけるために使用されるものであり、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類元素酸化物を、Niおよび/またはNiOとの組み合わせで使用することができる。このような希土類元素酸化物の具体例としては、Y
2O
3、Lu
2O
3、Yb
2O
3、Tm
2O
3、Er
2O
3、Ho
2O
3、Dy
2O
3、Gd
2O
3、Sm
2O
3、Pr
2O
3を例示することができ、Niおよび/またはNiOとの固溶、反応が殆どなく、また、熱膨張係数が固体電解質層4と同程度であり、かつ安価であるという点から、Y
2O
3、Yb
2O
3が好ましい。
【0027】
また、本実施形態においては、支持体2を導電性の支持体2とするにあたっては、良好な導電率を維持し、かつ熱膨張係数を固体電解質層4と近似させるという点で、Niおよび/またはNiO:希土類元素酸化物=35:65〜65:35の体積比で存在することが好ましい。
【0028】
なお、支持体2中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で、他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
【0029】
また、支持体2は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、多孔質であり、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好ましい。また、支持体2の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
【0030】
なお、支持体2の平坦面nの長さ(支持体2の幅方向Wの長さ)は、例えば、15〜35mm、弧状面mの長さ(弧の長さ)は、2〜8mmであり、支持体2の厚み(平坦面n間の厚み)は1.5〜5mmである。支持体2の長さは、例えば、100〜300mmとされている。
【0031】
燃料極3は、電極反応を生じさせるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスにより形成することができる。例えば、希土類元素酸化物が固溶したZrO
2または希土類元素酸化物が固溶したCeO
2と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。なお、希土類元素としては、支持体2において例示した希土類元素を用いることができ、例えばY
2O
3が固溶したZrO
2(YSZ)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
【0032】
燃料極3中の希土類元素酸化物が固溶したZrO
2または希土類元素酸化物が固溶しているCeO
2の含有量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNiあるいはNiOの含有量は、65〜35体積%であるのが好ましい。さらに、この燃料極3の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのが好ましく、その厚みは、1〜30μmであるのが好ましい。
【0033】
また、燃料極3は、酸素極6に対面する位置に設けられていればよいため、例えば酸素極6が設けられている支持体2の下側の平坦面nにのみ燃料極3が設けられていてもよい。すなわち、燃料極3は支持体2の下側の平坦面nにのみ設けられ、固体電解質層4が燃料極3表面、支持体2の両弧状面m表面および燃料極3が設けられていない支持体2の上側の平坦面n上に設けられた構造をしたものであってもよい。
【0034】
固体電解質層4は、上述したように、3〜15モル%のY、Sc、Yb等の希土類元素酸化物が固溶した部分安定化あるいは安定化ZrO
2を主成分として含有することが好ましい。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが好ましい。固体電解質層4は、部分安定化あるいは安定化ZrO
2からなるセラミックスに限定されるものではなく、従来、公知の、例えば、Gd、Sm等の希土類元素が固溶したセリア系や、ランタンガレード系の固体電解質層であっても良いことは勿論である。
【0035】
酸素極6としては、いわゆるABO
3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスにより形成することが好ましい。かかるペロブスカイト型酸化物としては、Laを含有する遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにSrとLaが共存するLaMnO
3系酸化物、LaFeO
3系酸化物、LaCoO
3系酸化物の少なくとも1種が好ましく、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaCoO
3系酸化物が特に好ましい。なお、上記ペロブスカイト型酸化物においては、Bサイトに、CoとともにFeやMnが存在しても良い。
【0036】
また、酸素極6は、ガス透過性を有する必要があり、従って、酸素極6を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。さらに、酸素極6の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが好ましい。
【0037】
インターコネクタ8としては導電性セラミックスにより形成されている。燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、耐還元性、耐酸化性を有する導電性セラミックスとしては、例えば、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO
3系酸化物)が使用され、特に支持体2および固体電解質層4の熱膨張係数に近づける目的から、BサイトにMgが存在するLaCrMgO
3系酸化物が用いられる。インターコネクタ8材料は導電性セラミックスであればよく、特に限定されるものではない。
【0038】
また、インターコネクタ8の厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜60μmであることが好ましい。この範囲ならばガスのリークを防止できるとともに、
電気抵抗を小さくできる。
【0039】
そして、
図1に示す本実施形態のセル1では、支持体2における長さ方向の一端部(下端部)における一方主面側に第1層7aが設けられており、固体電解質層4よりも強度が高い。セル1の一端部は、後述するように、ガスタンクに接合される根元部となる。よって、セル1の根元部を第1層7によって強化することで、ガスタンクに接合された場合において、クラック等の発生を抑制できる。
【0040】
また、
図1に示すように、第2層7bは、支持体2の一方主面n側であって幅方向の端部側において長さ方向に延びており、固体電解質層4よりも強度が高く、第1層7aよりも幅が狭い。この第2層7bにより、セル1に反りの変形が生じることを抑制することができる。また、
図1に示す例においては、第2層7bは支持体2の幅方向の両側に設けられているが、これに限らず、幅方向のいずれか一方に設けられていてもよい。また、
図1に示す例においては、第2層7bは幅方向の端部側に単数で設けられているが、長さ方向において複数に分割されていてもよい。
【0041】
また、
図1に示すように、第1層7aおよび第2層7bは、双方とも固体電解質層4上に設けられている。
【0042】
第1層7a、第2層7bは、固体電解質層4の主成分と同じ酸化物であって希土類元素酸化物の含有量が異なる主成分を含んでいる。第1層7a、第2層7bを構成する材料は、例えば、希土類元素酸化物を含有するジルコニア系酸化物、希土類元素酸化物を含有するセリア系酸化物、ランタンガレード系酸化物等を用いることができる。
【0043】
ここで、例えば固体電解質層4を構成する材料が、希土類元素酸化物を含有するZrO
2を主成分とする場合には、第1層7a、第2層7bは固体電解質層4よりも希土類元素酸化物の含有量が少ないことが好ましい。一方、例えば、固体電解質層4を構成する材料が、希土類元素酸化物を含有するCeO
2を主成分とする場合には、第1層7a、第2層7bは固体電解質層4よりも希土類元素酸化物の含有量が多いことが好ましい。このような構成とすることにより、第1層7a、第2層7bの強度を、固体電解質層4よりも高くすることができる。ここで、主成分とは固体電解質層4や第1層7aを構成する元素のうち、90体積%以上を占める成分をいう。
【0044】
特には、固体電解質層4は部分安定化ジルコニア、例えば、7〜9モル%のY
2O
3が固溶したZrO
2を主成分とすることが、発電性能を向上させる点で望ましい。また、第1層7、第2の層7bとしては、希土類元素酸化物の含有量が、例えば、3〜5モル%のY
2O
3が固溶したZrO
2を主成分とすることが望ましい。
【0045】
なお、固体電解質層4と、第1層7aおよび第2層7bとで、いずれの強度が高いかは、例えば、超微小硬度計を用いて、破断して鏡面出しをしたセル1において、固体電解質層4、第1層7aおよび第2層7bが露出している部分に、圧子を同じ荷重で押し込み、その際の最大押し込み深さを測定して判別することができる。 ここで、第1層7aの幅(セル1の幅方向Wの長さ)は、適宜設定することができるが、支持体2の一方主面nの幅と同じか、それより狭くてもよい。第1層7aの長さは、セル1の長さによるが、発電領域を確保しつつ、セル1の強度を向上する観点で、例えば、支持体2の長さに対して3〜10%程度とすることができる。
【0046】
また、第2層7bの幅は、第1層7aよりも狭い。第2層7bの幅は、セル1の幅にもよるが、発電領域を確保しつつ、セル1の強度を向上する観点で、例えば、支持体2の幅に対して5〜15%程度とすることができる。第2層7bの長さは、酸素極6の長さと同
程度であればよい。
【0047】
また、第1層7aおよび第2層7bの厚みは、さらに強度を向上する観点で、固体電解質層4の厚みよりも厚くすることが好ましい。それゆえ、例えば、第1層7aおよび第2層7bの厚みは、固体電解質層4の厚みが30μmより薄いのに対して、30〜100μmとすることができる。
【0048】
ところで、第2層7bの下端部が、第1層7aの上端部と接続されている場合、特には第1層7aと第2層7bとが一体化されている場合には、第1層7aまたは第2層7b自体が熱膨張・熱収縮することにより、第2層7bの下端部における幅方向の内側の角部に応力が集中しやすくなっていた。よって、第2層7bの下端部において破断が生じやすかった。第2層7bが破断すると、固体電解質層4にも破断が伝播しやすくなるので、長期信頼性が低下するおそれがあった。
【0049】
それゆえ、本実施形態においては、第2層7bは、第1層7aと離間している。この構成により、第1層7aまたは第2層7b自体が熱膨張・熱収縮した場合であっても、第2層7bの下端部における幅方向の内側の角部に応力が集中することを抑制できる。従って、第2層7bの下端部に破断が生じにくくなる。それゆえ、長期信頼性を向上させることができる。
【0050】
図2、
図3を用いて、セルの他の実施形態について説明する。
図2は、他の実施形態に係るセルの酸素極側から見た側面図である。
【0051】
図2に示す例においては、第2層7bは、第1層7aよりも幅方向における外側に位置している。この構成により、第2層7bは、幅方向の外側に寄っているので、固体電解質層4上における酸素極6の形成面積を広く確保することができる。従って、セル1の発電性能を向上させることができる。
【0052】
なお、「第2層7bが、第1層7aよりも幅方向における外側に位置する」とは、第2層7bの外側の辺が、第1層7aの外側の辺よりも幅方向における外側に位置する、ことを意味している。
【0053】
図3(a)〜(d)のそれぞれは、セルの幅方向における端部側の拡大断面図である。
図3(a)に示す例においては、支持体2は、一方主面nと他方主面nとを接続する一対の側面mを有しており、第2層7bは、側面m側まで延びている。この構成により、強度の高い第2層7bによって、破損しやすい固体電解質層4の側面m側を部分的に覆うことができる。従って、固体電解質層4の破断を抑制することができる。
【0054】
図3(b)に示す例においては、第2層7bは、側面mを経て他方主面n側まで延びている。この例においては、第2層7bが、固体電解質層4の側面m側全体を覆っている。この構成により、固体電解質層4の破断を更に抑制することができる。
【0055】
図3(c)に示す例においては、支持体2の他方主面n側であって幅方向の端部側において長さ方向に延びており、固体電解質層4よりも強度が高く、第1層7aよりも幅が狭い第3層7cが設けられており、第3層7cは、側面m側まで延びており、第2層7bと支持体2を介して対向している。この構成により、第3層7cによっても固体電解質層4の側面m側を覆うことができるので、固体電解質層4の破断を抑制することができる。なお、第3層7cの材料は、第1層7a、第2層7bと同様とすればよい。
【0056】
図3(d)に示す例においては、第2層7bおよび第3層7cは、側面m側に向かうに
従って厚みが薄くなっている。この構成により、第2層7bおよび第3層7cが製造工程において焼成収縮する際に、厚みが薄くなっている部分に向かって、第2層7bおよび第3層7cから固体電解質層4に応力が加えられる。従って、側面m上における固体電解質層4に、圧縮応力が加えられる。よって、固体電解質層4の強度が向上し、破断しにくくなる。
【0057】
以上説明した本実施形態のセル1の作製方法の一例について説明する。
【0058】
先ず、例えば、Niおよび/またはNiO粉末と、Y
2O
3などの希土類元素酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いて押出成形により支持体成形体を作製し、これを乾燥する。なお、支持体成形体として、支持体成形体を900〜1000℃にて2〜6時間仮焼した仮焼体を用いてもよい。
【0059】
次に、例えば所定の調合組成に従い、NiOと、Y
2O
3が固溶したZrO
2(YSZ)との素原料を秤量、混合する。この後、混合した粉体に、有機バインダーおよび溶媒を混合して燃料極用スラリーを調製する。
【0060】
そして、希土類元素酸化物が固溶したZrO
2粉末に、トルエン、バインダー粉末(下記、ZrO
2粉末に付着させるバインダー粉末よりも高分子、例えばアクリル系樹脂)、市販の分散剤等を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、成形してシート状の固体電解質層成形体を作製する。
【0061】
得られたシート状の固体電解質層成形体上に燃料極用スラリーを塗布し乾燥して燃料極成形体を形成し、シート状の積層成形体を形成する。この燃料極成形体および固体電解質層成形体が積層したシート状の積層成形体の燃料極成形体側の面を支持体成形体に積層し、成形体を形成する。
【0062】
続いて、上記の積層成形体を800〜1200℃で2〜6時間仮焼する。
【0063】
続いて、上述の固体電解質層成形体用のスラリーよりも希土類元素酸化物の固溶量が少ないZrO
2粉末とバインダー粉末等を用いて第1層および第2層用のスラリーを作製し、固体電解質層成形体(仮焼体)に、これらのスラリーを
図1で示すような形状で塗布し、乾燥させる。
【0064】
続いて、インターコネクタ材料(例えば、LaCrMgO
3系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを作製し、固体電解質成形体(仮焼体)の両端部上に、インターコネクタ用成形体の両端部が積層されるように、インターコネクタ用スラリーを塗布し、積層成形体を作製する。
【0065】
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1400〜1450℃にて2〜6時間、同時焼結(同時焼成)する。
【0066】
さらに、酸素極用材料(例えば、LaCoO
3系酸化物粉末)、溶媒および増孔剤を含有するスラリーをディッピング等により固体電解質層上に塗布し、1000〜1300℃で、2〜6時間焼き付けることにより、
図1に示す構造の本実施形態のセル1を製造できる。
【0067】
図4は、上述したセル1の複数個を、導電部材13を介して電気的に直列に接続して構成されたセルスタック装置の一例を示したものであり、(a)はセルスタック装置を概略的に示す側面図、(b)は(a)のセルスタック装置の一部拡大断面図であり、(a)で
示した破線で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した破線で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示している。
【0068】
なお、セルスタック装置においては、各セル1を、導電部材13を介して配列することでセルスタック12を構成しており、各セル1の下端部が、セル1に燃料ガスを供給するためのガスタンク16に、ガラスシール材等の絶縁性の接合材17により固定されている。また、ガスタンク16に下端部が固定された弾性変形可能な端部導電部材14により、セル1の配列方向の両端から、セルスタック12を挟持している。
【0069】
また、
図4に示す端部導電部材14においては、セル1の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、セルスタック12(セル1)の発電により生じる電流を引出すための電流引出し部15が設けられている。
【0070】
図5は、セルスタック装置を収納容器内に収納してなるモジュールである燃料電池モジュール18の一例を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器19の内部に、
図4に示したセルスタック装置を収納して構成されている。
【0071】
なお、セル1にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器20をセルスタック12の上方に配置している。そして、改質器20で生成された燃料ガスは、ガス流通管21を介してガスタンク16に供給され、ガスタンク16を介してセル1の内部に設けられたガス通路2aに供給される。
【0072】
なお、
図5においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されているセルスタック装置および改質器20を後方に取り出した状態を示している。
図5に示したモジュール18においては、セルスタック装置を、収納容器19内にスライドして収納することが可能である。なお、セルスタック装置は、改質器20を含むものとしても良い。
【0073】
また収納容器19の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材22は、
図5においてはガスタンク16に並置された一対のセルスタック12の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、セル1の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、セル1の下端部に酸素含有ガスを供給する。そして、セル1のガス通路2aより排出される燃料ガスを酸素含有ガスと反応させてセル1の上端部側で燃焼させることにより、セル1の温度を上昇させることができ、セルスタック装置の起動を早めることができる。また、セル1の上端部側にて、セル1のガス通路2aから排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、セル1(セルスタック12)の上方に配置された改質器20を温めることができる。それにより、改質器20で効率よく改質反応を行うことができる。
【0074】
さらに、本実施形態のモジュール18では、上述したセル1を用いたセルスタック装置を収納容器19内に収納してなることから、長期信頼性が向上したモジュール18とすることができる。
【0075】
図6は、外装ケース内に
図5で示したモジュール18と、セルスタック装置を動作させるための補機とを収納してなるモジュール収納装置である燃料電池装置の一例を示す斜視図である。なお、
図6においては一部構成を省略して示している。
【0076】
図6に示すモジュール収納装置23は、支柱24と外装板25とから構成される外装ケース内を仕切板26により上下に区画し、その上方側を上述したモジュール18を収納するモジュール収納室27とし、下方側をモジュール18を動作させるための補機類を収納
する補機収納室28として構成されている。なお、補機収納室28に収納する補機類は省略して示している。
【0077】
また、仕切板26には、補機収納室28の空気をモジュール収納室27側に流すための空気流通口29が設けられており、モジュール収納室27を構成する外装板25の一部に、モジュール収納室27内の空気を排気するための排気口30が設けられている。
【0078】
このようなモジュール収納装置23においては、上述したように、長期信頼性を向上することができるモジュール18をモジュール収納室27に収納して構成されることにより、長期信頼性の向上したモジュール収納装置23とできる。
【0079】
なお、上述の例のほか、例えば、支持体上に酸素極6、固体電解質層4、燃料極3を配置したセルであっても良い。
【0080】
さらに、上記形態では燃料電池セル、セルスタック装置、燃料電池モジュールならびに燃料電池装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、セルに水蒸気と電圧とを付与して水蒸気(水)を電気分解することにより、水素と酸素(O
2)を生成するセル(電解セル、SOEC)およびこのセルを備えるセルスタック装置、モジュールならびにモジュール収納装置にも適用することができる。
【0081】
図7は、本実施形態のセルの他の例を示すもので、酸素極側から見た側面図である。
図7において、支持体2における長さ方向の他端部の一方主面側に第4層7dが設けられている。なお、第2層7bは第4層7bとも離間していることで、第2層7bの他端部(上端部)が破断することを抑制できる。ここで、第4層7dの材料は第1層7aと同様である。この構成によれば、セル100の他端部側においても、一端部側と同様に、固体電解質層4を保護し長期信頼性を向上させることができる。