(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る加工プログラム編集装置およびこれを備えた工作機械の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
本実施形態の加工プログラム編集装置1は、工作機械10における加工プログラムを編集するためのものであり、数値制御装置等のコンピュータによって構成されている。そして、当該編集した加工プログラムに基づいて工作機械10を制御し、ワーク(加工対象)に対して様々な加工を行うようになっている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0017】
工作機械10は、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、歯切り盤、研削盤等のように、金属、木材、石材、樹脂等のワークに対して、切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、折り曲げ等の各種の加工を施すための機械である。本実施形態において、工作機械10は、加工プログラムによって数値制御可能に構成されている。
【0018】
加工プログラム編集装置1は、工作機械10を制御する数値制御装置等のコンピュータによって構成されており、
図1に示すように、主として、ユーザからの入力を受け付ける入力手段2と、加工プログラム等を表示する表示手段3と、本実施形態の加工プログラム用編集プログラム1aや各種データを記憶する記憶手段4と、各種の演算処理を実行し後述する各構成部として機能する制御手段5とから構成されている。以下、各構成手段について詳細に説明する。
【0019】
入力手段2は、ユーザからのデータや情報の入力を受け付けるためのものである。本実施形態において、入力手段2は、
図2に示すような、加工プログラムを編集するための加工プログラム編集画面6上において指定された位置情報や、後述する編集ウィンドウ7(
図4〜
図8)を介して入力されたデータ等を制御手段5へ出力するようになっている。
【0020】
表示手段3は、加工プログラム編集画面6や編集ウィンドウ7等を表示するためのものである。本実施形態において、表示手段3は、後述する表示制御部51から入力された表示内容を表示させるようになっている。
【0021】
本実施形態において、入力手段2および表示手段3は、タッチパッド等による入力手段2としての位置入力機能と、液晶パネル等による表示手段3としての表示機能とを兼ね備えたタッチパネルによって構成されている。そして、当該タッチパネル上のタッチ位置に基づいて、各種のデータや情報を制御手段5へ受け渡すようになっている。なお、タッチパネルの方式は限定されるものではなく、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式等のように、タッチ位置に基づいてデータ入力可能なものであればよい。
【0022】
また、入力手段2および表示手段3は、タッチパネルに限定されるものではなく、マウス等のポインティングデバイスからなる入力手段2と、液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示手段3とをそれぞれ別体として有していてもよい。この場合、表示手段3にはマウスポインタが表示されるため、左クリック等がされたときのマウスポインタの位置に基づいて、各種のデータや情報を制御手段5へ提供することとなる。
【0023】
記憶手段4は、各種のデータを記憶するとともに、制御手段5が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態において、記憶手段4は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュメモリ等によって構成されており、
図1に示すように、プログラム記憶部41と、加工プログラム記録部42と、GUIデータ記憶部43と、編集ウィンドウ記憶部44とを有している。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
【0024】
プログラム記憶部41には、本実施形態の加工プログラム用編集プログラム1aがインストールされている。そして、制御手段5が、加工プログラム用編集プログラム1aを実行することにより、加工プログラム編集装置1としてのコンピュータを後述する各構成部として機能させるようになっている。
【0025】
なお、加工プログラム用編集プログラム1aの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、USBメモリ等のように、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に加工プログラム用編集プログラム1aを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、外部サーバ等からASP(Application Service Provider)方式やクラウドコンピューティング方式で利用してもよい。
【0026】
加工プログラム記憶部42は、編集対象となる加工プログラムを記憶するためのものである。本実施形態において、加工プログラム記憶部42内の加工プログラムは、編集されるたびに、後述する加工プログラム更新部54によって更新されるようになっている。
【0027】
なお、本発明において、加工プログラムは、工作機械10を数値制御するためのNCコードによって記述されている。また、当該NCコードは、アルファベットと数値とからなる文字列で構成されており、例えば、以下に示すようなコードが用意されている。
Gコード:加工を行うための準備機能を指定するコード(例:G54等)
Mコード:Gコードの補助的役割を果たすコード(例:M08等)
Tコード:切削工具および補正量等を指定するコード(例:T0202等)
Sコード:工作機械の主軸回転数等を指定するコード
Fコード:切削工具の送り速度等を指定するコード
X,Y,Z,U,V,W,A,B,C:座標値を指定するコード
【0028】
GUIデータ記憶部43は、表示手段3上で入力手段2による直感的な操作を可能にするグラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface)を表示するためのGUIデータを記憶するものである。具体的には、
図2に示すような加工プログラム編集画面6等を表示するためのデータが記憶されている。
【0029】
編集ウィンドウ記憶部44は、NCコードの種類に応じて編集内容を入力するための編集ウィンドウ7を表示するためのデータを記憶するものである。本実施形態では、上述したNCコードのうち、編集ウィンドウ7の表示対象となるNCコードが予め設定されており、当該NCコードのそれぞれに対応付けて編集ウィンドウ7を表示するためのデータが記憶されている。また、本実施形態において、編集ウィンドウ7は、タッチ入力の場合は編集内容を直接的に入力し、マウス入力の場合は編集内容を間接的に入力するためのグラフィカルユーザインタフェースとして機能し、加工プログラム編集画面6上に独立して表示されるものである。
【0030】
本実施形態において、編集ウィンドウ記憶部44には、
図3に示すように、予め設定されたNCコードとして、ワーク座標系を設定するためのG54〜G59と、切削工具および補正量等を指定するTコードと、切削工具の補正量等を指定するDコードおよびHコードと、G54〜G59以外でパラメータのあるGコード(G487等)と、工作機械の主軸回転数を指定するSコードおよび切削工具の送り速度を指定するFコードと、各制御軸における座標値を指定する座標値コード(X,Y,Z,U,V,W,A,B,C)とが登録されている。そして、各コードに応じて編集内容を入力するための編集ウィンドウ7が記憶されている。以下、各コードに対応する編集ウィンドウ7について説明する。
【0031】
G54〜G59に対しては、
図3に示すように、他に選択可能なワーク座標系を修正候補データとしてリスト表示するワークオフセット設定ウィンドウ71が編集ウィンドウ7として記憶されている。このワークオフセット設定ウィンドウ71には、
図4に示すように、選択可能なワーク座標系ごとに、各制御軸の座標値がリスト表示される。また、ワークオフセット設定ウィンドウ71のタイトルバーには、編集内容を示す「ワークオフセットの選択」という文言が表示される。
【0032】
Tコードに対しては、
図3に示すように、他に選択可能な工具を修正候補データとしてリスト表示する工具選択ウィンドウ72が編集ウィンドウ7として記憶されている。この工具選択ウィンドウ72には、
図5に示すように、選択可能な工具の管理番号に対応付けて、当該工具の方向、アンダーカット、用途、Tコード、ノーズR、ポケット角、刃先角およびコメントが記憶されている。また、工具選択ウィンドウ72のタイトルバーには、編集内容を示す「工具の選択」という文言が表示される。
【0033】
DコードおよびHコードに対しては、
図3に示すように、他に選択可能な工具オフセットを修正候補データとしてリスト表示する工具補正選択ウィンドウ73が編集ウィンドウ7として記憶されている。この工具補正選択ウィンドウ73には、
図6に示すように、工具の使用目的ごとに付与されたオフセット番号に対応付けて、各制御軸における形状補正量と摩耗補正量とが記憶されている。
【0034】
また、工具補正選択ウィンドウ73のタイトルバーには、編集内容を示す「工具オフセットの選択 形状摩耗補正一覧」という文言が表示される。なお、本実施形態において、Dコードが示す補正番号(D番号)には、工具の制御軸に対する工具径の補正量が登録されている。一方、Hコードが示す補正番号(H番号)には、工具の制御軸に対する工具長の補正量が登録されている。
【0035】
なお、本実施形態では、上述したとおり、G54〜G59、Tコード、DコードおよびHコードが、他に選択可能な修正候補データを有するNCコードに相当する。しかしながら、これらのNCコードに限定されるものではなく、他に選択可能な修正候補を提示できるようなNCコードに対して、修正候補データを用意してもよい。
【0036】
つぎに、G54〜G59以外でパラメータのあるGコードに対しては、
図3に示すように、ガイダンス入力ウィンドウ74が編集ウィンドウ7として記憶されている。このガイダンス入力ウィンドウ74には、
図7に示すように、編集しようとするGコードの説明74aと、編集内容を説明するガイダンス74bと、当該機能に係るパラメータの入力エリア74cとが表示されるようになっている。なお、本実施形態において、パラメータのあるGコードとは、例えば、G487のように、工作機械に各種固定サイクル等を指令するためのNCコードであって、パラメータ(加工位置、工具の移動距離等)を必要とする全てのGコードを含む。
【0037】
SコードおよびFコードに対しては、
図3に示すように、択一的に表示可能な数値入力パッドタブ75と、加工条件算出タブ76とを備えた編集ウィンドウ7が記憶されている。数値入力パッドタブ75は、
図8(a)に示すように、各種パラメータの数値を入力するための数値ボタンの他、一般的な電卓と同様のボタンを備えた数値入力パッドによって構成されている。
【0038】
一方、加工条件算出タブ76には、工作機械の主軸回転数(Sコード)、または切削工具の送り速度(Fコード)を算出するために必要なパラメータの入力エリア76aと、算出された結果を表示する算出結果表示エリア76bとが設けられている。なお、Sコードによって指定される主軸回転数Sは、下記式(1)にて算出されるものである。
S=1000V(切削速度)/π・D(工具径) …式(1)
よって、Sコードに対する加工条件算出タブ76においては、
図8(b)に示すように、切削速度Vおよび工具径Dの入力エリア76aが表示され、算出された主軸回転数Sを表示する算出結果表示エリア76bが表示される。
【0039】
また、Fコードによって指定される送り速度Fは、下記式(2)にて算出されるものである。
F=f(1刃あたりの送り量)×Z(刃数)×N(主軸回転速度) …式(2)
よって、Fコードに対する加工条件算出タブ76においては、1刃あたりの送り量f、刃数Zおよび主軸回転速度Nの入力エリア76aが表示され、算出された送り速度Fを表示する算出結果表示エリア76bが表示されることとなる。
【0040】
座標値コードに対しては、
図3に示すように、座標値を入力するための数値入力パッドが編集ウィンドウ7として記憶されている。数値入力パッドは、
図8(a)に示した数値入力パッドタブ75を独立した単一ウィンドウで表示するものであり、数値ボタンによって座標値を入力するようになっている。
【0041】
つぎに、制御手段5は、上述した入力手段2、表示手段3、および記憶手段4を制御するとともに、各種の演算処理を実行することにより、加工プログラムに含まれるNCコードのうち、予め設定されたNCコードが表示手段3上で選択された場合、当該NCコードの表示位置近傍に当該NCコードの種類に応じて編集内容を入力するための編集ウィンドウ7を表示するものである。
【0042】
なお、本発明において、NCコードの表示位置近傍とは、当該NCコードの表示位置のみならず、当該表示位置からユーザが目線をほとんど動かすことなく視認しうる範囲で表示位置に近い位置を含む概念である。
【0043】
本実施形態において、制御手段5は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成されており、記憶手段4にインストールされた加工プログラム用編集プログラム1aを実行することにより、
図1に示すように、表示制御部51、ユーザ入力検出部52、選択コード判定部53、加工プログラム更新部54、加工条件算出部55として機能するようになっている。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
【0044】
表示制御部51は、表示手段3の表示内容を制御するためのものである。本実施形態において、表示制御部51は、ユーザが編集したい加工プログラムを選択すると、当該加工プログラムを加工プログラム記憶部42から読み出すとともに、GUIデータ記憶部43からGUIデータを読み出し、
図2に示すような加工プログラム編集画面6を表示手段3に表示させる。
【0045】
また、表示制御部51は、加工プログラムに含まれるNCコードのうち、予め設定されたNCコードが入力手段2を介して表示手段3上で選択された場合、当該NCコードに対応する編集ウィンドウ7を編集ウィンドウ記憶部44から取得する。そして、当該編集ウィンドウ7を選択されたNCコードの表示位置近傍に表示させるようになっている。
【0046】
具体的には、表示制御部51は、選択されたNCコードが、上述したG54〜G59、Tコード、DコードまたはHコードのように、他に選択可能な修正候補データを有するNCコードの場合、編集ウィンドウ7に修正候補データをリスト表示する。
【0047】
また、表示制御部51は、選択されたNCコードが、上述したSコードまたはFコードのように、工作機械の主軸回転数または切削工具の送り速度を指定するNCコードの場合、数値ボタンを有する数値入力パッドタブ75と、主軸回転数または切削工具の送り速度の算出に必要なパラメータの入力エリア76aを有する加工条件算出タブ76とを編集ウィンドウ7に表示する。そして、表示制御部51は、加工条件算出部55によって算出された工作機械の主軸回転数や切削工具の送り速度等の加工条件を取得すると、当該加工条件を加工条件算出タブ76の算出結果表示エリア76bに表示させるようになっている。
【0048】
さらに、表示制御部51は、選択されたNCコードが、上述した座標値コードのように、座標値を指定するNCコードの場合、編集ウィンドウ7に数値ボタンを有する数値入力パッドを表示するようになっている。
【0049】
ユーザ入力検出部52は、入力手段2を介してユーザから入力された表示手段3上のタッチ位置を検出するものである。本実施形態において、ユーザ入力検出部52は、加工プログラム編集画面6上でのタッチ位置を常時監視する。そして、加工プログラムに含まれるNCコードがタッチ(選択)されたとき、当該選択されたNCコード(選択コード)を選択コード判定部53に提供するようになっている。
【0050】
また、ユーザ入力検出部52は、編集ウィンドウ7が表示されている状態では、当該編集ウィンドウ7上でのタッチ位置を監視する。そして、当該タッチ位置に基づいて編集内容を特定し、加工プログラム更新部54または加工条件算出部55に提供するようになっている。
【0051】
選択コード判定部53は、ユーザによって選択されたNCコードが、予め設定されたNCコードか否かを判定するものである。本実施形態において、選択コード判定部53は、選択されたNCコードが編集ウィンドウ記憶部44に予め設定されているNCコードであるか否かを判定する。そして、予め設定されたNCコードである場合には、当該NCコードを表示制御部51に提供するようになっている。
【0052】
加工プログラム更新部54は、ユーザから入力された編集内容に基づいて、加工プログラムを更新するものである。本実施形態において、加工プログラム更新部54は、ユーザ入力検出部52から編集内容が提供されると、当該編集内容に基づいて、加工プログラム記憶部42に記憶されている加工プログラムを更新するようになっている。
【0053】
加工条件算出部55は、工作機械の主軸回転数や切削工具の送り速度等の加工条件を算出するものである。本実施形態において、加工条件算出部55は、加工条件算出タブ76の入力エリア76aに入力されたパラメータを取得すると、上記式(1)または上記式(2)に基づいて、工作機械の主軸回転数または切削工具の送り速度を算出する。そして、当該算出結果を表示制御部51に提供することにより、算出結果表示エリア76bに表示させるようになっている。
【0054】
つぎに、本実施形態の加工プログラム編集装置1、およびこれを備えた工作機械10による作用について説明する。
【0055】
以下、本実施形態の加工プログラム編集装置1を用いて加工プログラムを編集する処理について、加工プログラム編集装置1に表示されたグラフィカルユーザインターフェースを操作する際の処理に沿って説明する。ここで説明する処理とは、加工プログラム編集装置1の表示手段3に表示された加工プログラムのソースコードをユーザからの指示に従って編集入力するための処理である。
【0056】
図9に示すように、本実施形態の加工プログラム編集装置1を用いて加工プログラムを編集する場合、まず、表示制御部51が、加工プログラム編集画面6を表示手段3上に表示する(ステップS1)。これにより、表示手段3には、
図2に示すように、複数のNCコードを含む加工プログラムが加工プログラム編集画面6に表示される。
【0057】
つぎに、ユーザが加工プログラム編集画面6上の所定位置をタッチすると、ユーザ入力検出部52が、当該タッチ位置に基づいて、NCコードが選択されたか否かを判定する(ステップS2)。当該判定の結果、選択された位置がNCコードでなければ(ステップS2:NO)、後述するステップS7の処理へと進む。
【0058】
一方、NCコードが選択された場合(ステップS2:YES)、選択コード判定部53は、当該選択されたNCコードが、予め設定されたNCコードか否かを判定する(ステップS3)。当該判定の結果、予め設定されたNCコードでなければ(ステップS3:NO)、後述するステップS7へと進む。
【0059】
一方、選択されたNCコードが予め設定されたNCコードの場合(ステップS3:YES)、表示制御部51が、当該NCコードの表示位置近傍に当該NCコードの種類に応じた編集ウィンドウ7を表示する(ステップS4)。この編集ウィンドウ7は、編集内容を入力可能なユーザインターフェースであるため、ユーザは、タッチ位置から目線をほとんど動かすことなく迅速に編集作業へ移行する。また、当該編集ウィンドウ7は、NCコードの種類に応じた編集内容のみを入力可能に構成されるため、誤った編集内容の入力を防止する。なお、上記ステップS4において、NCコードに応じた編集ウィンドウ7を表示する処理の詳細については後述する。
【0060】
編集ウィンドウ7上でユーザが編集内容をタッチ入力すると(ステップS5:YES)、ユーザ入力検出部52が、当該タッチ位置に基づいて編集内容を取得する。そして、加工プログラム更新部54が、当該編集内容に基づいて加工プログラム記憶部42に記憶されている加工プログラムを更新する(ステップS6)。これにより、ユーザは、加工プログラム編集画面6から目線を外すことなく編集することが可能となるため、編集時間が短縮される。なお、編集内容が入力されない場合には(ステップS5:NO)、ステップS7の処理に進む。
【0061】
ステップS7では、加工プログラムの編集作業を終了するか否かが判定される。そして、編集作業を終了しない限り(ステップS7:NO)、ステップS2へと戻り、加工プログラム編集画面6上でのNCコードの選択を待ち受ける。一方、編集作業の終了が指示されると(ステップS7:YES)、加工プログラム編集装置1が、本処理を終了する。なお、編集作業の終了は、例えば、加工プログラム編集画面6上の編集終了を指示するアイコンの選択等によって判定される。
【0062】
つづいて、上記ステップS4において、ユーザによって選択されたNCコードに応じた編集ウィンドウ7を表示する際の具体的な処理について、
図10を用いて詳細に説明する。
【0063】
まず、上記ステップS3で予め設定されたNCコードが選択されたと判定されると、表示制御部51は、当該NCコードが、他に選択可能な修正候補データを有するNCコードであるか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、本実施形態では、選択されたNCコードが、G54〜G59、Tコード、DコードまたはHコードのいずれかであるか否かが判定される。
【0064】
当該判定の結果、他に選択可能な修正候補データを有するNCコードであれば(ステップS11:YES)、表示制御部51が、当該NCコードの表示位置近傍に編集ウィンドウ7を表示し、他に選択可能な修正候補データをリスト表示する(ステップS12)。
【0065】
例えば、
図11に示すように、加工プログラム編集画面6において、「G54」がタッチ選択された場合、表示制御部51は、
図12に示すように、当該「G54」の表示位置近傍に、現在設定されているワーク座標系に加えて、他の修正候補となるワーク座標系「G55」〜「G59」をリスト化したワークオフセット設定ウィンドウ71を表示する。
【0066】
これにより、ユーザは、加工プログラム編集画面6上のタッチ位置からほとんど目線を動かすことなく、現在のワーク座標系と、他に選択可能なワーク座標系とを比較し、速やかに適切なワークオフセットを特定する。また、編集ウィンドウ7には、選択可能な候補のみが表示されるため、経験の浅いユーザであっても誤った編集内容の入力が抑制される。
【0067】
なお、他に選択可能な修正候補データを有するNCコードとして、Tコードが選択された場合には、
図5に示すような工具選択ウィンドウ72がTコードの表示位置近傍に表示される。このため、ユーザは、タッチ位置から目線をほとんど動かすことなく、選択可能な工具のスペック条件を確認し、正確かつ迅速に所望の工具を適宜選択することが可能となる。
【0068】
さらに、他に選択可能な修正候補データを有するNCコードとして、DコードまたはHコードが選択された場合には、
図6に示すような工具補正選択ウィンドウ73がDコードまたはHコードの表示位置近傍に表示される。このため、ユーザは、タッチ位置から目線をほとんど動かすことなく、正確かつ迅速に所望の工具オフセットを選択することが可能となる。
【0069】
一方、選択されたNCコードが他に選択可能な修正候補データを有するNCコードでない場合(ステップS11:NO)、表示制御部51は、当該NCコードが、パラメータのあるGコードであるか否かを判定する(ステップS13)。当該判定の結果、パラメータのあるGコードであれば(ステップS13:YES)、表示制御部51が、当該Gコードの表示位置近傍に編集ウィンドウ7としてのガイダンス入力ウィンドウ74を表示する(ステップS14)。
【0070】
例えば、パラメータのあるGコードとして「G487」がタッチ選択された場合、表示制御部51は、当該「G487」の表示位置近傍に、
図7に示すようなガイダンス入力ウィンドウ74を表示する。これにより、ユーザは「G487」の説明74aを確認でき、ガイダンス74bに従って入力するだけでよいため、編集ミスが低減する。
【0071】
また、ガイダンス入力ウィンドウ74には、パラメータの入力エリア74cが表示されるため、いずれかの入力エリア74cがタッチ選択されると、数値入力パッドが表示される。このため、ユーザは加工プログラム編集画面6から目線を外すことなくパラメータを入力することが可能となり、編集作業が迅速化する。
【0072】
つぎに、ステップS13における判定の結果、選択されたNCコードがパラメータのあるGコードでない場合(ステップS13:NO)、表示制御部51は、当該NCコードが工作機械の主軸回転数を指定するNCコード(Sコード)、または切削工具の送り速度を指定するNCコード(Fコード)であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0073】
当該判定の結果、SコードまたはFコードであれば(ステップS15:YES)、表示制御部51が、当該SコードまたはFコードの表示位置近傍に、数値入力パッドタブ75と加工条件算出タブ76とを備え、いずれか一方を択一的に表示可能な編集ウィンドウ7を表示する(ステップS16)。
【0074】
例えば、Sコードがタッチ選択された場合、表示制御部51は、当該Sコードの表示位置近傍に、
図8(a)に示すような数値入力パッドタブ75と、
図8(b)に示すような加工条件算出タブ76とを表示する。そして、ユーザがいずれかのタブをタッチ選択すると、当該タブに表示が切り替わる。また、加工条件算出タブ76において、パラメータの入力エリア76aを選択した場合には、数値入力パッドが表示され必要な数値を入力しうるようになっている。
【0075】
以上において、ユーザが、加工条件算出タブ76において、切削速度および工具径の入力エリア76aに数値を入力すると(ステップS17:YES)、加工条件算出部55が上記式(1)に従って主軸回転数を算出する。そして、表示制御部51が当該算出された主軸回転数を算出結果表示エリア76bに表示する(ステップS18)。
【0076】
これにより、主軸回転数がパラメータから自動的に算出されるとともに、その結果が目視確認される。また、当該主軸回転数に問題がなければ、上記ステップS5において、
図8(b)に示す「OK」ボタンをタッチ選択するだけで、当該主軸回転数がパラメータとして入力される。したがって、複雑な計算を要するパラメータの編集作業についても正確性および迅速性が向上する。
【0077】
一方、加工条件算出タブ76からパラメータの入力がない場合(ステップS17:NO)、または算出結果が表示された後(ステップS18)、ユーザ入力検出部52は数値入力パッドタブ75が選択されたか否かを監視する(ステップS19)。そして、数値入力パッドタブ75がタッチ選択された場合には(ステップS19:YES)、表示制御部51が、数値入力パッドを表示する(ステップS20)。これにより、ユーザは数値入力パッドを介して所望の主軸回転数または送り速度を直接入力することも可能となる。
【0078】
なお、Fコードの場合も、上述したとおり、入力するパラメータと、算出される結果が異なる以外は、上述したSコードの場合と同様に動作し、同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
一方、上記ステップS15の判定処理の結果、選択されたNCコードがSコード、またはFコードでないと判定された場合(ステップS15:NO)、
図3に示すように、予め設定されたNCコードとして残るのは、座標値を指定するNCコードである。このため、表示制御部51が、数値入力パッドを当該座標値コードの表示位置近傍に表示する(ステップS20)。
【0080】
例えば、加工プログラム編集画面6において、「Z2.5」が選択された場合、表示制御部51は、当該「Z2.5」の表示位置近傍に、数値入力パッド63を表示する。これにより、ユーザは、タッチ位置からほぼ目線を動かすことなく、数値ボタンを介して座標値をタッチ入力することが可能となる。
【0081】
なお、上記ステップS12、上記ステップS14、上記ステップS18、および上記ステップS20のいずれかにおいて、編集ウィンドウ7が表示された後は、上記ステップS5の処理へと戻り、編集入力を待ち受けることとなる。
【0082】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.編集しようとするNCコードの表示位置から目線をほとんど動かすことなく迅速に編集作業へ移行し、短時間で編集することができる。
2.編集ウィンドウ7は、NCコードの種類に応じた編集内容のみを入力可能に構成されるため、誤った編集内容の入力を防止し、正確に編集することができる。
3.編集ウィンドウ7には、選択可能な修正候補のみが表示されるため、経験の浅いユーザであっても誤った編集内容の入力が抑制される。
4.複雑な計算を要するパラメータの編集作業についても正確性および迅速性を向上することができ、当該パラメータの数値を直接入力することもできる。
5.数値入力が必要な場合は、数値入力パッドが表示されるため、直ちに数値を入力することができる。
【0083】
なお、本発明に係る加工プログラム編集装置1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、上述した本実施形態では、数値制御装置の一機能として加工プログラム編集装置1を機能させているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、加工プログラム編集装置1を数値制御装置とは別々に構成し、数値制御装置は加工プログラム編集装置1から加工プログラムを取得し、工作機械10を数値制御する構成であってもよい。
【0084】
また、上述した本実施形態において、加工条件算出タブ76によって主軸回転数または送り速度を算出させた際、当該算出結果が工作機械10で設定可能な数値範囲内であるか否かをチェックする機能を追加してもよい。この機能によれば、算出された主軸回転数または送り速度が上記数値範囲に入っていない場合、再入力等を促すダイアログを表示させることにより、不適切な加工条件が入力されるのを抑制することが可能となる。