(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616178
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】光電変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0352 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
H01L31/04 342A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-251763(P2015-251763)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-117933(P2017-117933A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仲山 徹
(72)【発明者】
【氏名】久保 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】二宮 寿一
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−537994(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0211634(US,A1)
【文献】
特開2015−005707(JP,A)
【文献】
特表2009−532851(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/098378(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101411001(CN,A)
【文献】
米国特許第09099663(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の量子ドットが集積された量子ドット集積部内にキャリア収集部を有する光電変換層と、該光電変換層の主面に設けられている電極層とを備えている光電変換装置であって、前記キャリア収集部は、前記量子ドット集積部を厚み方向に延伸する複数の柱状部を備えているとともに、該柱状部は、先端が前記量子ドットに覆われ、前記電極層内に入り込んでいることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記柱状部は、前記光電変換層を縦断面視したときに、立設した状態にあるとともに、2つの前記柱状部間に前記量子ドットが存在していることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記キャリア収集部は、前記電極層と反対側の前記柱状部に基部層を有しているとともに、前記量子ドット集積部は、複数の有機分子を含んでおり、該複数の有機分子のうち、前記電極層側に1,2−エタンジチオール(1,2-Ethanedithiol(EDT))を有し、前記基部層側にヨウ化テトラブチルアンモニウム(Tetra butyl ammonium iodide(TBAI))を有し
ていることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記量子ドット集積部は、n型の量子ドット群とp型の量子ドット群とからなる2つの群を有しており、前記2つの群が、前記キャリア収集部に近い側からその周囲に向けて層状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の光電変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率の新たな光電変換装置として知られている量子ドット太陽電池は、量子ドットに特定波長の太陽光が当たり励起される電子と、その電子が価電子帯から伝導帯まで励起されたときに生じる正孔とをキャリアとして利用する。
【0003】
この場合、量子ドット太陽電池の光電変換効率は、量子ドット集積部内に生成するキャリアの総量に関係することから、例えば、量子ドット集積部の厚みを厚くして量子ドットの集積度を増やすことが発電量の向上につながる。
【0004】
量子ドット内においてキャリアは、理論的には、エネルギー緩和が起こりにくく消滅し難いと考えられている。
【0005】
しかしながら、量子ドットを集積させて量子ドット集積部を形成した場合には、量子ドット内に生成したキャリアは、障壁層を含む量子ドット集積部内に存在する欠陥と結合して消滅しやすく、これにより電極まで到達できる電荷量の低下が起こり、光電変換効率を高められないという問題がある。
【0006】
このような問題に対し、近年、量子ドット集積部内において、キャリアの集電性を高めるための構造が種々提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
図5は、量子ドットを光電変換部材とする従来の光電変換装置の一例を示す断面模式図である。ここで、符号101は量子ドット、103は量子ドット集積部、105はキャリア収集部、105aはキャリア収集部の先端、107は透明導電膜、109はガラス基板、111は電極層を示す。
図5に示すように、複数の量子ドット101が集積された量子ドット集積部103内に、ナノロッドと呼ばれるキャリア収集部105(ここでは、柱状部のことを指す。)を配置させた例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009−536790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、これまで開示されたキャリア収集部105は、その先端105aが量子ドット集積部103の厚み方向の途中に止まった構造であるため、量子ドット集積部103の中でキャリア収集部105が届いていない領域(破線で囲った符号113の領域)は、量子ドット101からのキャリアの収集効率が低く、未だ光電変換効率が低いという問題がある。
【0010】
従って本発明は、キャリアの収集効率が高く、光電変換効率を向上することのできる光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光電変換装置は、複数の量子ドットが集積された量子ドット集積部内にキャリア収集部を有する光電変換層と、該光電変換層の主面に設けられている電極層とを備えている光電変換装置であって、前記キャリア収集部は、前記量子ドット集積部を厚み方向に延伸する複数の柱状部を備えているとともに、該柱状部は
、先端
が前記量子ドットに覆われ、前記電極層内に入り込んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャリアの収集効率が高く、光電変換効率を高めることできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に示す断面斜視図である。
【
図2】分子量の異なる有機分子が結合した量子ドットを積層した量子ドット集積部によって構成されている状態を示す断面模式図である。
【
図3】(a)は、量子ドット集積部がn型の量子ドット群とp型の量子ドット群とから構成されており、柱状部側にn型の量子ドット群が配置され、n型の量子ドット群の周囲にp型の量子ドット群が配置された状態を示す断面模式図、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【
図4】本実施形態の光電変換装置の製造方法を示す工程図である。
【
図5】従来の光電変換装置の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に示す断面斜視図である。ここでは、光電変換層1が1層の量子ドット太陽電池を例として示しているが、本発明はこれに限られるものではなく、光電変換層1が2層以上となったものにも適用される。
【0015】
本実施形態の光電変換装置は、光電変換層1の下側に透明導電膜3およびガラス基板5がこの順に設けられ、一方、光電変換層1の上側に電極層7が設けられている。
【0016】
この場合、ガラス基板5の下側が光の入射面9aとなり、電極層7の上側が光の出射面9bとなる。なお、光の入射面9a側であるガラス基板5の表面や光の出射面9bである電極層7の表面には保護層や反射防止材などが設けられる場合がある。 なお、量子ドッ
ト集積部11内で柱状部13a の方を向いた矢印はキャリアCの動きを表したものであ
る。
【0017】
光電変換層1は、複数の量子ドット11aが集積された量子ドット集積部11内にキャリア収集部13を有する。キャリア収集部13は、量子ドット集積部11を厚み方向に延伸するように設けられている複数の柱状部13aを有している。そして、柱状部13aは、その先端13aaが電極層7内に入り込んだ状態にある。なお、
図1には、柱状部13aが、これもキャリアの収集機能を有する基部層13b上に立設した構造のキャリア収集部13を示しているが、本発明の光電変換装置では、光電変換層1内に柱状部13aの部分のみ備えられている構造でも良い。また、光電変換層1として、量子ドット集積部11の上側の電極層7との間に量子ドット集積部11よりもバンドギャップの小さい半導体基板(例えば、シリコン基板)を設けても良い。
【0018】
ここで、本実施形態の光電変換装置と
図5に示した従来の光電変換装置とを比較すると、従来の光電変換装置は、上述したように、キャリア収集部(柱状部)105の先端105aが量子ドット集積部103の厚み方向の途中に止まった構造であり、
図5において、その領域を符号113として示しているように、キャリア収集部(柱状部)105の先端105aと電極層111との間にキャリア収集部105に接していない量子ドット101が多く存在している。
【0019】
これに対し、本実施形態の光電変換装置では、キャリア収集部13を構成している柱状部13aの先端13aaが電極層7内に入り込んだ状態にあるため、量子ドット11aは、そのほとんどが柱状部13aの先端13aaよりも低い位置(基部層103b側)に存在しており、柱状部13aの先端13aaを覆うように付着している量子ドット11aを含めて、基部層13bまたは柱状部13aに接する確率が高くなっている。
【0020】
通常、量子ドット101内に生成したキャリアCは、量子ドット集積部103内に欠陥が存在すると、その欠陥と結びついて消滅してしまうことがある。その確率は、量子ドット集積部103内の移動距離が長いほど高くなる。このため、キャリアCの生存率を高めるためには、キャリアCが消滅する前にキャリア収集部13(または柱状部13a)に到達させる必要がある。
【0021】
この点で、
図1に示した本実施形態の光電変換装置は、上述のように、
図5に示した従来の光電変換装置よりも、量子ドット11aのキャリア収集部13(基部層13bまたは柱状部13a)に接する確率が高いため、キャリアCの収集効率が高く、光電変換効率を向上させることができる。
【0022】
この場合、キャリアCの収集効率を高めるという点で、キャリア収集部13(柱状部13a)は、その先端13aaが電極層7に入り込んでいる割合が多い程良いが、その場合、先端13aaが電極層7に入り込んでいるキャリア収集部13(柱状部13a)が光電変換層1内に分散している方が良い。先端13aaが電極層7に入り込んでいるキャリア収集部13(柱状部13a)が光電変換層1内に分散している状態であると、キャリア収集部13(柱状部13a)に接していない量子ドット11aにキャリアCが生成したときにも、近くにキャリア収集部13(柱状部13a)が存在する確率が高くなるため、キャリアCがキャリア収集部13(柱状部13a)に到達しやすくなり、これによりキャリアCが消滅するのを抑えることが可能となり、光電変換効率を向上させることができる。
【0023】
ここで、先端13aaが電極層7に入り込んでいるキャリア収集部13(柱状部13a)が光電変換層1内に分散している状態としては、光電変換層1を縦断面視したときに、立設している2つの柱状部13a間に存在する量子ドット11aの個数が、光電変換層1の全体にわたって、同様の領域に存在している量子ドット11aの個数と相互に比較したときに2倍以内となるように、キャリア収集部13(柱状部13a)が配置されていることが望ましい。
【0024】
図2は、分子量の異なる有機分子が結合した量子ドットを積層した量子ドット集積部によって構成されている状態を示す断面模式図である。ここで、
図2において、符号15Aは1,2−エタンジチオール(1,2-Ethanedithiol(EDT))を有する量子ドット集積部、15Bはヨウ化テトラブチルアンモニウム(Tetrabutylammonium iodide(TBAI))を有する
量子ドット集積部の例である。
【0025】
この光電変換装置では、量子ドット11aにおけるキャリアCの閉じ込め効果を高められるという理由から、その表面に有機分子が結合していることが望ましい。この場合、量子ドット集積部11は分子量の異なる複数の有機分子を含んでおり、複数の有機分子のうち、分子量の大きい有機分子を基部層13b側の量子ドット11aに付着させ、これよりも分子量の小さい有機分子を電極層7側の量子ドット11aに付着させるのが良い。例えば、
図2に示すように、電極層7側にEDTを有する量子ドット11aを配置し、一方の基部層13b側にTBAIを有する量子ドット11aを配置するようにすると、ガラス基板5側である光の入射面9a側から電極層7側である光の出射面9b側に向けてエネルギー準位が高くなるようにエネルギーバンドの傾きを形成することができる。これにより、光電変換層1内に生成した極性の異なるキャリアC(電子e、ホールh)が、透明導電膜
3および電極層7のそれぞれの方向へ移動しやすくなり、透明導電膜3および電極層7におけるキャリアCの収集効率が向上し、光電変換効率をさらに高めることができる。なお、製造された光電変換装置では、TBAIから有機成分(TBA)の部分が分離し、ヨウ素(I)が量子ドット11aに結合した状態となっている。
【0026】
また、EDTを有する量子ドット11aとTBAIを有する量子ドット11aとが上記した配置の場合には、TBAI(I:ヨウ素)よりもEDTの方が絶縁性が高いことから、キャリアCがもっともリークしやすい柱状部13aと電極層7の間の絶縁性を高めるこ
とができる。
【0027】
また、本実施形態の光電変換装置では、量子ドット集積部11が、n型の量子ドット群11anとp型の量子ドット群11apとからなる2つの群を有しており、2つの群が、キャリア収集部(柱状部13a)13に近い側からその周囲に向けて層状に配置されていることが望ましい。
【0028】
例えば、
図3(a)(b)には、一例として、柱状部13a側にn型の量子ドット群11anが配置され、n型の量子ドット群11anの周囲にp型の量子ドット群11pが配置された状態を示している。
【0029】
通常、量子ドット11aは、光のエネルギーを受けることによって、量子ドット11a内に存在していた電子が伝導帯まで励起されると同時に、正孔が形成されて、これらがキャリアCとなって光電変換が起こる。このとき、
図3に示すように、量子ドット集積部11内を、柱状部13側からn型の量子ドット群11anにより構成される層とp型の量子ドット群11apにより構成される層とを積層した構成にすると、n型の量子ドット群11anおよびp型の量子ドット群11apのそれぞれに移動できる電子および正孔が生成したときに、電子および正孔はそれぞれn型の量子ドット群11anおよびp型の量子ドット群11apの方により移動しやすくなり、これによりキャリアCの集電性をさらに高めることができる。
【0030】
なお、
図3(a)(b)では、柱状部13a側にn型の量子ドット群11anを配置した構成を示しているが、この場合、柱状部13a側にp型の量子ドット群11apを配置した構成でも同様の光電変換特性を得ることができる。
【0031】
上記した量子ドット集積部11を構成する量子ドット11a、n型の量子ドット群11an、p型の量子ドット群11ap、柱状部13aおよび基部層13bの材料としては、種々の半導体材料が適用されるが、そのエネルギーギャップ(Eg)としては、0.15〜4.50evを有するものが好適である。具体的な半導体材料としては、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、鉛(Pb)、テルル(Te)およびセレン(Se)から選ばれるいずれか1種またはこれらの化合物もしくは酸化物を用いることが望ましい。
【0032】
また、上記した量子ドット11aにおいては、電子の閉じ込め効果を高められるという理由から、量子ドット11aの表面に障壁層(バリア層)を有していてもよい。障壁層は量子ドット11aとなる半導体材料に比較して2〜15倍のエネルギーギャップを有している材料が好ましく、エネルギーギャップ(Eg)が1.0〜10.0evを有するものが好ましい。なお、量子ドット11aが表面に障壁層を有する場合には、障壁層の材料としては、Si、C、Ti、Cu、Ga、S、InおよびSeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物(半導体、炭化物、酸化物、窒化物)が好ましい。
【0033】
上述のように、本実施形態の光電変換装置について、
図1〜
図4を基に説明したが、本発明の光電変換装置は、光電変換層1を構成する量子ドット集積部11の厚みや量子ドット11aのバンドギャップを変化させた構成にした場合には、吸収できる光の波長領域をより広くすることができ、さらに高い光電変換効率を示す量子ドット太陽電池を得ることができる。
【0034】
次に、本実施形態の光電変換装置の製造方法について説明する。
図4は、本実施形態の光電変換装置の製造方法を示す工程図である。
【0035】
図4(a)に示すように、まず、ガラス基板5の一方の主面に透明導電膜3とキャリア収集部13とを形成した基台21を準備する。この場合、キャリア収集部13は、透明導電膜3上にキャリア収集部13となる半導体膜を形成し、所定のマスクを設置した後、エッチング処理(反応性イオンエッチング(RIE))を行って半導体膜から柱状部13aを形成するようにする。このとき、柱状部13aとともに、半導体膜の下層側を残すことにより基部層13bを形成する。
【0036】
次に、
図4(b)に示すように、キャリア収集部13の周囲に量子ドット11aを充填する。このとき、量子ドット11aは、柱状部13aの先端13aaを除いた領域が柱状部13aの先端13aaよりも低くなるように充填する。
【0037】
最後に、
図4(c)に示すように、量子ドット集積部11の上面に金(Au)などの金属材料を蒸着して電極層7を形成する。また、ガラス基板5側の入射面9aや電極層7側の出射面9bに、必要に応じて保護層や反射防止材など形成する。
【0038】
以上より得られる光電変換装置は、キャリア収集部13を構成している柱状部13aの先端13aaが電極層7内に入り込んだ状態にあるため、量子ドット11aは、そのほとんどが柱状部13aの先端13aaよりも低い位置(基部層103b側)に存在しており、柱状部13aの先端13aaを覆うように付着している量子ドット11aを含めて、基部層13bまたは柱状部13aに接する確率が高くなり、これによりキャリアCの収集効率が高まり、光電変換効率を高めることができる。
【実施例】
【0039】
以下、上記した光電変換層を1層備えた光電変換装置を
図4に示した方法により作製し、Vocを評価した。このとき、透明導電膜にはインジウム錫酸化物(ITO)を用い、電極層には金(Au)を用いた。量子ドットにはPbS粒子(平均粒径:5nm)を用いた。
【0040】
図2に示す光電変換層を作製する際には、量子ドット集積部にリガンドとしてEDTとTBAIとを用いた。作製した量子ドット集積部のうちTBAIを用いた方は量子ドットにヨウ素(I)が結合した状態となっていることを透過電子顕微鏡およびこれに付設の分析器(EPMA)の観察、ならびに光電子分光分析器(XPS)によって確認した。
【0041】
図3に示す光電変換装置を作製する際には、p型、n型に変成させたPbS粒子を用いた。キャリア収集部および基部層には酸化亜鉛を用いた。
【0042】
作製した光電変換装置は、ガラス基板の厚みが0.2mm、量子ドット集積膜の平均厚みが1.2μm、基部層の平均厚みが0.05μm、キャリア収集部の厚み方向の平均長さ(基部層の表面からキャリア収集部の開放端までの長さ)が1.0μm、電極層の平均厚みが0.1μm、透明導電膜の平均厚みが0.3μmであった。
【0043】
次に、作製した光電変換装置の電極層付近の横断面および縦断面を走査電子顕微鏡によって観察し、柱状部の突出した状態を確認した。作製した試料はいずれも柱状部がこの部分を除いた領域の上面から量子ドット1〜5個分ほど突出した状態であった。
【0044】
次に、得られた光電変換装置の透明導電膜と電極層間にリード線を接続し、I−V特性を測定した。
【0045】
【表1】
【0046】
開放電圧(Voc)は、従来構造の試料No.4が0.34Vであったのに対し、
図1の構造の試料No.1は0.37V、
図2の構造の試料No.2は0.41V および図
3の構造の試料No.3は0.40Vであり、柱状部の先端が電極層内に入り込んだ状態にした試料は、柱状部の先端と電極層との間に柱状部に接していない量子ドットが多く存在している試料より高い開放電圧を示し、電荷の収集効率が高かった 。
【符号の説明】
【0047】
1・・・・・・・・・・・光電変換層
3・・・・・・・・・・・透明導電膜
5・・・・・・・・・・・ガラス基板
7・・・・・・・・・・・電極層
9a・・・・・・・・・・入射面
9b・・・・・・・・・・出射面
11・・・・・・・・・・量子ドット集積部
11a・・・・・・・・・量子ドット
13・・・・・・・・・・キャリア収集部
13a・・・・・・・・・柱状部
13aa・・・・・・・・(柱状部の)先端
13b・・・・・・・・・基部層
15・・・・・・・・・・キャリア収集部
15a・・・・・・・・・(キャリア収集部の)開放端
15s・・・・・・・・・(キャリア収集部の)側面
15A・・・・・・・・・EDTを有する量子ドット集積部
15B・・・・・・・・・TBAIを有する量子ドット集積部
21・・・・・・・・・・基台
C・・・・・・・・・・・キャリア