特許第6616194号(P6616194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616194
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】載置部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20191125BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H01L21/68 AZNM
   B65G49/07 E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-6145(P2016-6145)
(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2017-126696(P2017-126696A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】増田 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 智昭
(72)【発明者】
【氏名】前野 洋平
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−201638(JP,A)
【文献】 特開2015−135963(JP,A)
【文献】 特開2008−140949(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/152940(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/027601(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面がカーボンナノチューブの集合体から構成される、載置部材であって、
シリコンウエハ上に、カーボンナノチューブ集合体側表面が該シリコンウエハと接するようにして、該載置部材を置き、該載置部材の上から100gの荷重をかけ30秒放置した際に、該シリコンウエハに転写した直径0.2μm以上のパーティクルの数が、9000個/cm以下である、
載置部材。
【請求項2】
基材を含み、
前記カーボンナノチューブの集合体が、該基材に固定されている、
請求項1に記載の載置部材。
【請求項3】
カーボンナノチューブ集合体側表面のガラス表面に対する静摩擦係数が、2.0以上である、請求項1または2に記載の載置部材。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの直径の平均値が、1nm〜800nmである、請求項1から3のいずれかに記載の載置部材。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブの先端を含む部分が、無機材料によって被覆されている、請求項1から4のいずれかに記載の載置部材。
【請求項6】
半導体部品の搬送に用いられる、請求項1から5のいずれかに記載の載置部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の製造工程において、材料、製造中間品、製品等(以下、被加工物ともいう)を搬送する際、該被加工物を移動アームや移動テーブルなどの搬送基材を用いて搬送することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。このような搬送を行う際、被加工物が載置される部材(載置部材)には、被加工物が搬送中にずれないような強いグリップ力が要求される。また、このような要求は、製造工程高速化の要求とあいまって、年々、高まっている。
【0003】
しかしながら、従来の載置部材は、樹脂等の弾性材料から構成されており、被加工物に該弾性材料が付着残存しやすく、被加工物を汚染するという問題がある。また、樹脂等の弾性材料から構成される載置部材は、耐熱性が低く、高熱環境下では、そのグリップ力が低下するという問題がある。
【0004】
セラミックスなどの材料を載置部材として用いると、被加工物の汚染は防止され、また、グリップ力の温度依存性は低くなる。しかしながら、このような材料から構成される載置部材は、本質的にグリップ力が低く、常温下でも十分に被加工物を保持し得ないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−351961号公報
【特許文献2】特開2013−138152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、グリップ力および耐熱性に優れながら、かつ、低発塵性に優れ、被載置物を汚染しがたい載置部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の載置部材は、載置面がカーボンナノチューブの集合体から構成される載置部材であって、シリコンウエハ上に、カーボンナノチューブ集合体側表面が該シリコンウエアと接するようにして、該載置部材を置き、該載置部材の上から100gの荷重をかけ30秒放置した際に、該シリコンウエハに転写した直径0.2μm以上のパーティクルの数が、9000個/cm以下である。
1つの実施形態においては、本発明の載置部材は、基材を含み、上記カーボンナノチューブの集合体が、該基材に固定されている。
1つの実施形態においては、上記カーボンナノチューブの直径の平均値が、1nm〜800nmである。
1つの実施形態においては、上記カーボンナノチューブの先端を含む部分が、無機材料によって被覆されている。
1つの実施形態においては、本発明の載置部材は、半導体部品の搬送に用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グリップ力および耐熱性に優れながら、かつ、低発塵性に優れ、被載置物を汚染しがたい載置部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施形態による載置部材の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による載置部材の概略断面図である。
図3】本発明の1つの実施形態におけるカーボンナノチューブ集合体の製造装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の載置部材は、カーボンナノチューブ集合体を含む。カーボンナノチューブ集合体は、載置部材の載置面を構成する。カーボンナノチューブ集合体は良好な粘着性(摩擦性)を有し、載置部材上に置かれた被載置物を良好に保持することができる。
【0011】
A.載置部材
図1は、本発明の1つの実施形態による載置部材の概略断面図である。載置部材100は、カーボンナノチューブ集合体10から構成される。
【0012】
1つの実施形態においては、図1に示すように、載置部材100は、基材20をさらに備える。なお、図1(および後述の図2)においては、基材20の片側にカーボンナノチューブ集合体10が配置される形態を示しているが、カーボンナノチューブ集合体10は、基材20の両側に配置されていてもよい。
【0013】
カーボンナノチューブ集合体10は複数のカーボンナノチューブ11から構成される。カーボンナノチューブ11の片端は、基材20に固定されている。カーボンナノチューブ11は、長さLの方向に配向しており、カーボンナノチューブ集合体10は、繊維状柱状構造体として構成される。カーボンナノチューブ11は、基材20に対して略垂直方向に配向していることが好ましい。ここで、「略垂直方向」とは、基材20の面に対する角度が、好ましくは90°±20°であり、より好ましくは90°±15°であり、さらに好ましくは90°±10°であり、特に好ましくは90°±5°である。
【0014】
別の実施形態においては、図2に示すように、載置部材200は、基材20と、バインダー30とをさらに備える。この実施形態において、カーボンナノチューブ11の片端は、バインダー30に固定されている。バインダー30にカーボンナノチューブ11を固定することにより、低発塵性に優れる載置部材を得ることができる。
【0015】
本発明の載置部材は低発塵性に優れる。このような載置部材を用いれば、被載置物の汚染を顕著に防止することができる。本発明の載置部材は、その低発塵性から、高いクリーン性が求められる被載置物に好適に用いられる。例えば、本発明の載置部材は、半導体素子の製造工程、光学部材の製造工程等において、被加工物(例えば、半導体ウエハ、半導体素子等の半導体部品、ガラス基板等)の搬送に好適に用いられ、該載置部材上に被加工物を載置して該被加工物を搬送すれば、被加工物のクリーン性を維持したまま工程を進めることができる。また、本発明の載置部材は、分析装置に用いられる載置部材としても、好適に用いられ得る。また、カーボンナノチューブ集合体から構成される載置部材は、耐熱性に優れるため、高温環境下(例えば、400℃以上、好ましくは500℃〜1000℃、より好ましくは500℃〜700℃)においても、優れた摩擦特性を示す。本発明の載置部材は、低発塵性および耐熱性に優れるため、例えば、半導体素子の製造工程におけるウエハ処理工程(いわゆる、前工程)において、特に有用である。本発明の載置部材は、例えば、カーボンナノチューブの均一性、具体的には、複数あるカーボンナノチューブの直径の均一性、多層構造を有する該カーボンナノチューブの層数の均一性等を高めることにより得ることができる。
【0016】
シリコンウエハ上に、カーボンナノチューブ集合体側表面が該シリコンウエアと接するようにして、上記載置部材を置き、載置部材の上から100gの荷重をかけ30秒放置した際に、該シリコンウエハに転写した直径0.2μm以上のパーティクル(転写パーティクル)の数は、9000個/cm以下であり、好ましくは8500個/cm以下であり、より好ましくは1000個/cm以下であり、さらに好ましくは200個/cm以下である。該パーティクルの数は少なければ少ないほど好ましいが、その下限は、例えば、10個/cm(好ましくは5個/cm)である。「カーボンナノチューブ集合体側表面」とは、載置部材の載置面であり、図1および図2においては、カーボンナノチューブ集合体10の基材20とは反対側の表面10aのことである。
【0017】
上記載置部材のカーボンナノチューブ集合体側表面に生じる凹部の平面視面積の割合は、カーボンナノチューブ集合体側表面の全面積に対して、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0%である。このような範囲であれば、低発塵性に優れる載置部材を得ることができる。なお、「凹部の平面視面積」とは、カーボンナノチューブ集合体側表面における凹部の開口部の面積の総和を意味し、SEM等の顕微鏡を用いてカーボンナノチューブ集合体側表面を観察し、測定され得る。また、「凹部」は、その開口部の直径が10μm以上のものを意味する。「凹部」は、代表的にはカーボンナノチューブ集合体の欠損により生じ得る。
【0018】
上記凹部の開口部の直径は、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。
【0019】
上記凹部の数は、好ましくは80個/cm以下であり、より好ましくは50個/cm以下であり、さらに好ましくは20個/cm以下であり、さらに好ましくは10個/cm以下であり、特に好ましくは5個/cm以下であり、最も好ましくは0個/cmである。
【0020】
上記載置部材のカーボンナノチューブ集合体側表面の、ガラス表面に対する静摩擦係数は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは2.0以上である。上記静摩擦係数の上限値は、好ましくは20である。上記のように転写パーティクルの少ない本願発明の載置部材によれば、静摩擦係数が高く、グリップ性に優れる載置部材を得ることができる。なお、ガラス表面に対する摩擦係数の大きい上記載置部材が、ガラス以外の材料から構成される被載置物(例えば、半導体ウエハ)に対しても、強いグリップ性を発現し得ることは言うまでもない。
【0021】
A−1.カーボンナノチューブ集合体
カーボンナノチューブ集合体は、複数のカーボンナノチューブから構成される。
【0022】
上記カーボンナノチューブの直径(個々値)は、好ましくは0.3nm〜1000nmであり、より好ましくは1nm〜500nmであり、さらに好ましくは2nm〜200nmであり、特に好ましくは2nm〜100nmである。カーボンナノチューブの長さを上記範囲内に調整することにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた摩擦特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0023】
上記カーボンナノチューブの直径の平均値は、好ましくは1nm〜800nmであり、より好ましくは2nm〜100nmであり、さらに好ましくは5nm〜50nmであり、特に好ましくは5nm〜40nmであり、最も好ましくは5nm以上10nm未満である。このような範囲であれば、低発塵性に優れる載置部材を得ることができる。カーボンナノチューブの直径の平均値は、カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察して、不作為に抽出された30本のカーボンナノチューブの直径を測定し、当該測定値から算出された平均値(個数基準)を意味する。なお、TEM観察用試料は、測定するカーボンナノチューブとエタノール約5mLとを10mLのガラス瓶に入れ、約10分間の超音波処理を行い、カーボンナノチューブ分散液を調製し、その後、マイクロピペットを用いて分取した該分散液を、TEM観察用のマイクログリッド(試料保持メッシュ)に数滴滴下した後、風乾させて、作製することができる。
【0024】
上記カーボンナノチューブの直径の標準偏差は、好ましくは3nm以下であり、より好ましくは2.5nm以下であり、さらに好ましくは2nm以下であり、特に好ましくは1.8nm以下であり、最も好ましくは1nm以下である。カーボンナノチューブの直径の標準偏差を小さくすること、すなわち、直径についてバラツキの少ないカーボンナノチューブ集合体を形成することにより、低発塵性に優れる載置部材を得ることができる。カーボンナノチューブの直径の標準偏差は小さければ小さいほど好ましいが、その下限値は、例えば、0.1nmである。カーボンナノチューブの直径の標準偏差は、カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察して、不作為に抽出された30本のカーボンナノチューブの直径を測定し、当該測定値および当該測定値の平均値(個数基準)をもとにした標準偏差を意味する。
【0025】
カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0026】
1つの実施形態においては、カーボンナノチューブは多層構造を有する。多層構造を有するカーボンナノチューブの層数の標準偏差は、好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.7以下であり、特に好ましくは1以下である。カーボンナノチューブの層数の標準偏差を小さくすること、すなわち、層数についてバラツキの少ないカーボンナノチューブ集合体を形成することにより、低発塵性に優れる載置部材を得ることができる。カーボンナノチューブの層数の標準偏差は小さければ小さいほど好ましいが、その下限値は、例えば、0.1である。カーボンナノチューブの層数の標準偏差は、カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察して、不作為に抽出された30本のカーボンナノチューブの層数を測定し、当該測定値および当該測定値の平均値(個数基準)をもとにした標準偏差を意味する。
【0027】
1つの実施形態においては、カーボンナノチューブの層数分布の最頻値が層数10層以下に存在し、該最頻値の相対頻度が30%以上である。カーボンナノチューブ集合体がこのような構成を採ることにより、グリップ力が高く、かつ、低発塵性に優れる載置部材を得ることができる。
【0028】
カーボンナノチューブの層数分布の分布幅は、好ましくは9層以下であり、より好ましくは1層〜9層であり、さらに好ましくは2層〜8層であり、特に好ましくは3層〜8層である。カーボンナノチューブの層数分布の分布幅をこのような範囲内に調整することにより、グリップ力が高く、かつ、低発塵性に優れる載置部材を形成することができる。
【0029】
カーボンナノチューブの層数の最大層数は、好ましくは1層〜20層であり、より好ましくは2層〜15層であり、さらに好ましくは3層〜10層である。カーボンナノチューブの層数の最大層数をこのような範囲内に調整することにより、グリップ力が高く、かつ、低発塵性に優れる載置部材を形成することができる。
【0030】
カーボンナノチューブの層数の最小層数は、好ましくは1層〜10層であり、より好ましくは1層〜5層である。カーボンナノチューブの層数の最小層数をこのような範囲内に調整することにより、グリップ力が高く、かつ、低発塵性に優れる載置部材を形成することができる。
【0031】
カーボンナノチューブの層数分布の最頻値の相対頻度は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは30%〜100%であり、さらに好ましくは30%〜90%であり、特に好ましくは30%〜80%であり、最も好ましくは30%〜70%である。カーボンナノチューブの層数分布の最頻値の相対頻度を上記範囲内に調整することにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた摩擦特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を有する載置部材は、グリップ力および低発塵性に優れる。
【0032】
カーボンナノチューブの層数分布の最頻値は、好ましくは層数10層以下に存在し、より好ましくは層数1層から層数10層に存在し、さらに好ましくは層数2層から層数8層に存在し、特に好ましくは層数2層から層数6層に存在する。カーボンナノチューブの層数分布の最頻値を上記範囲内に調整することにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた摩擦特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を有する載置部材は、グリップ力および低発塵性に優れる。
【0033】
カーボンナノチューブの長さは、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm〜3000μmであり、さらに好ましくは300μm〜1500μmであり、さらに好ましくは400μm〜1000μmであり、特に好ましくは500μm〜900μmである。カーボンナノチューブの長さを上記範囲内に調整することにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた摩擦特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を有する載置部材は、グリップ力および低発塵性に優れる。
【0034】
カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0035】
1つの実施形態においては、上記カーボンナノチューブは、先端を含む部分が無機材料によって被覆されている。ここでいう「先端を含む部分」とは、カーボンナノチューブの先端(カーボンナノチューブの基材とは反対側の先端)を少なくとも含む部分を意味する。
【0036】
上記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの全てにおいて、先端を含む部分が無機材料によって被覆されていてもよく、カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの一部において、先端を含む部分が無機材料によって被覆されていてもよい。先端を含む部分が無機材料によって被覆されているカーボンナノチューブの含有割合は、カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの全量に対して、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは60重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは80重量%〜100重量%であり、特に好ましくは90重量%〜100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。このような範囲であれば、グリップ力が高く、かつ、低発塵性に優れる載置部材が形成され得る。
【0037】
上記被覆層の厚みは、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは3nm以上であり、さらに好ましくは5nm以上であり、さらに好ましくは7nm以上であり、特に好ましくは9nm以上であり、最も好ましくは10nm以上である。上記被覆層の厚みの上限値は、好ましくは50nmであり、より好ましくは40nmであり、さらに好ましくは30nmであり、特に好ましくは20nmであり、最も好ましくは15nmである。このような範囲であれば、グリップ力が高く、かつ、低発塵性に優れる載置部材を形成することができる。
【0038】
上記被覆層の長さは、好ましくは1nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜700nmであり、さらに好ましくは10nm〜500nmであり、特に好ましくは30nm〜300nmであり、最も好ましくは50nm〜100nmである。このような範囲であれば、グリップ力が高く、かつ、低発塵性に優れる載置部材が形成され得る。
【0039】
上記無機材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な無機材料を採用し得る。このような無機材料としては、例えば、SiO、Al、Fe、TiO、MgO、Cu、Ag、Auなどが挙げられる。
【0040】
A−2.基材
基材としては、目的に応じて、任意の適切な基材を採用し得る。例えば、石英ガラス、シリコン(シリコンウエハなど)、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、アルミニウム等の金属などが挙げられる。エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックの具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドなどが挙げられる。これらの基材の分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。
【0041】
基材の厚みは、目的に応じて、任意の適切な値に設定され得る。例えば、シリコン基材を用いる場合、該シリコン基材の厚みは、好ましくは100μm〜10000μmであり、より好ましくは100μm〜5000μmであり、さらに好ましくは100μm〜2000μmである。
【0042】
基材の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理、下塗剤(例えば、上記粘着性物質)によるコーティング処理が施されていてもよい。
【0043】
基材は単層であってもよいし、多層であってもよい。
【0044】
A−3.バインダー
上記バインダーとしては、基材とカーボンナノチューブ集合体とを接合できる効果を有するものであれば、任意の適切なバインダーを採用し得る。このようなバインダーとしては、例えば、カーボンペースト、アルミナペースト、銀ペースト、ニッケルペースト、金ペースト、アルミペースト、酸化チタンペースト、酸化鉄ペースト、クロムペースト、アルミニウム、ニッケル、クロム、銅、金、銀などが挙げられる。また、任意の適切な接着剤によりバインダーを形成してもよい。
【0045】
B.載置部材の製造方法
本発明の載置部材は、例えば、平滑板上に形成されたカーボンナノチューブ集合体を上記基材に転写する方法(好ましくは、バインダーを介して基材に固定する方法)、基材として用いられ得る平滑板に直接カーボンナノチューブ集合体を形成する方法等が挙げられる。また、カーボンナノチューブ集合体が形成された平滑板と基材とを貼り合せて、載置部材を製造してもよい。
【0046】
1つの実施形態においては、上記載置部材の製造方法は、
(工程a)所定の形状の平滑板A1を準備する工程と、
(工程b)該平滑板A1に、触媒層を形成する工程と、
(工程c)触媒層が形成された平滑板A2に、カーボンナノチューブ集合体を形成する工程とを含む。
【0047】
上記平滑板としては、任意の適切な平滑板を採用し得る。例えば、平滑性を有し、カーボンナノチューブの製造に耐え得る高温耐熱性を有する材料が挙げられる。このような材料としては、例えば、石英ガラス、シリコン(シリコンウエハなど)、アルミニウムなどの金属板などが挙げられる。
【0048】
上記平滑板A1は、目的に応じて、任意の適切な形状であり得る。代表的には矩形状である。1つの実施形態においては、工程aは、大面積の平滑板A0を、任意の適切な方法で個片化して、所定の形状の平滑板A1を得ることを含む。
【0049】
好ましくは、工程aで準備された平滑板A1と、工程c後の平滑板A3とは略同形状かつ略同サイズである。すなわち、工程a後においては、平滑板A1、触媒層が形成された平滑板A2、およびカーボンナノチューブ集合体が形成された平滑板A3を個片化する工程を含まないことが好ましい。なお、カーボンナノチューブ集合体を形成した後(工程c後)は、得られた載置部材を個片化してもよい。
【0050】
カーボンナノチューブ集合体は、工程bにおいて平滑板A1上に触媒層を形成させ、工程cにおいて該触媒層を活性化させた状態で炭素源を充填し、カーボンナノチューブを成長させる方法、すなわち、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)によって、形成され得る。
【0051】
カーボンナノチューブ集合体を形成するための装置としては、任意の適切な装置を採用し得る。例えば、熱CVD装置としては、図3に示すような、筒型の反応容器を抵抗加熱式の電気管状炉で囲んで構成されたホットウォール型などが挙げられる。その場合、反応容器としては、例えば、耐熱性の石英管などが好ましく用いられる。
【0052】
カーボンナノチューブ集合体の形成に用い得る触媒(触媒層の材料)としては、任意の適切な触媒を用い得る。例えば、鉄、コバルト、ニッケル、金、白金、銀、銅などの金属触媒が挙げられる。
【0053】
カーボンナノチューブ集合体を形成する際、必要に応じて、平滑板と触媒層との間にアルミナ/親水性膜を設けても良い。
【0054】
アルミナ/親水性膜の作製方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、平滑板の上にSiO膜を作製し、Alを蒸着後、450℃まで昇温して酸化させることにより得られる。このような作製方法によれば、Alが親水性のSiO膜と相互作用し、Alを直接蒸着したものよりも粒子径の異なるAl面が形成される。平滑板の上に、親水性膜を作製することを行わずに、Alを蒸着後に450℃まで昇温して酸化させても、粒子径の異なるAl面が形成され難いおそれがある。また、平滑板の上に、親水性膜を作製し、Alを直接蒸着しても、粒子径の異なるAl面が形成され難いおそれがある。
【0055】
上記触媒層の形成方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、金属触媒をEB(電子ビーム)、スパッタなどにより蒸着する方法、金属触媒微粒子の懸濁液を平滑板上に塗布する方法などが挙げられる。
【0056】
1つの実施形態においては、スパッタ処理により、触媒層を形成する。スパッタ処理の条件としては、任意の適切な条件が採用され得る。詳細は後述する。
【0057】
好ましくは、スパッタ処理を行う前に、平滑板A1に前処理を施す。前処理としては、平滑板A1を加温する処理が挙げられる。加温処理により、平滑板A1は、25℃〜80℃にまで加温されていることが好ましく、25℃〜40℃にまで加温されていることがより好ましい。前処理を行うことにより、カーボンナノチューブ集合体の欠損が少なく、低発塵性に優れる載置部材を得ることができる。
【0058】
上記触媒層の厚みは、微粒子を形成させるため、好ましくは0.01nm〜20nmであり、より好ましくは0.1nm〜10nmであり、さらに好ましくは0.1nm以上3nm未満であり、特に好ましくは0.5nm〜2nmである。このような範囲であれば、均一性に優れるカーボンナノチューブ集合体、すなわち、カーボンナノチューブの直径および/または層数の標準偏差が小さいカーボンナノチューブ集合体を形成することができる。また、優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備え、さらには、優れた摩擦特性を示すカーボンナノチューブ集合体を得ることができる。
【0059】
工程cにおいて充填する炭素源としては、任意の適切な炭素源を用い得る。例えば、メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素;メタノール、エタノールなどのアルコール;などが挙げられる。
【0060】
カーボンナノチューブ集合体の形成における製造温度(工程cにおける製造温度)としては、任意の適切な温度を採用し得る。たとえば、本発明の効果を十分に発現し得る触媒粒子を形成させるため、好ましくは400℃〜1000℃であり、より好ましくは500℃〜900℃であり、さらに好ましくは600℃〜800℃である。
【0061】
上記のようにして、平滑板上に、カーボンナノチューブ集合体を形成させることができる。1つの実施形態においては、カーボンナノチューブ集合体および平滑板を含む構成体を載置部材とする。この場合、上記平滑板A3が基材(図1の基材20)に相当する。別の実施形態においては、カーボンナノチューブ集合体を、平滑板から基材に転写して載置部材を得る。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各種評価や測定は、以下の方法により行った。
【0063】
(1)ウエハ転写パーティクルの評価
クリーンルーム内で、シリコン製8インチウエハ(バルカー・エフティ社製、厚み700μm)を設置し、該ウエハ上に、カーボンナノチューブ集合体側表面が該ウエハと接するようにして、1cm角にカットされた載置部材を置き、載置部材の上から100gの荷重をかけ、30秒放置した。その後、載置部材に接していたウエハ表面に残存するパーティクル(直径:0.2μm以上)の数を、ウエハ評価装置(KLA−Tencor社製、商品名「Surfscan SP1」)で測定した。
【0064】
(2)ガラス表面に対する静摩擦係数の測定
JIS K7125に準じて測定した。
載置部材のカーボンナノチューブ集合体側をスライドガラス(松浪硝子工業社製)におき、その上からすべり片(底面:フェルト、63mm×63mm)と、さらにそのすべり片の上におもり(すべり片の全質量が200gとなる重さのおもり)を載せた状態で、試験片を試験速度100mm/minで引張り、試験片が動き始めるときの最大荷重から静摩擦係数を算出した。なお、評価点を4点として、静摩擦係数の平均、および、該4点における最大値と最小値との差を求め、載置部材の特性を評価した。
【0065】
〔実施例1〕
シリコン基材(シリコンテクノロジー社製、厚み700μm、サイズ:200mmφ(8インチウエハそのまま))を準備した(工程a)。その後、該シリコン基材上に、スパッタ装置(芝浦メカトロニクス社製、商品名「CFS−4ES」)により、Al薄膜(到達真空度:8.0×10−4Pa、スパッタガス:Ar、ガス圧:0.50Pa、成長レート:0.12nm/sec、厚み:20nm)を形成した。このAl薄膜上に、さらにスパッタ装置(芝浦メカトロニクス社製、商品名「CFS−4ES」)にてFe薄膜を触媒層(厚み:1.0nm)として形成した(工程b)。
次いで、触媒層が形成されたシリコン基材を、10mm×10mmのサイズに裁断した。
次いで、裁断して得られた基材を30mmφの石英管内に載置し、水分率700ppmに保ったヘリウム/水素(105/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率700ppm)混合ガスを管内に充填させ、60分間放置してカーボンナノチューブを基材上に垂直方向に配向させて(工程c)、載置部材を得た。
得られた載置部材を上記評価(1)および(2)に供した。本実施例の載置部材のウエハ転写パーティクル数(評価1)は、189個/cmであった。また、該載置部材の静摩擦係数の平均値(n4)は2.6であり、4点の評価における最大値と最小値との差は0.2であった。
【0066】
〔実施例2〕
触媒層の厚みを2.0nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして載置部材を得た。
得られた載置部材を上記評価(1)および(2)に供した。本実施例の載置部材のウエハ転写パーティクル数(評価1)は、8127個/cmであった。また、該載置部材の静摩擦係数の平均値(n4)は2.5であり、4点の評価における最大値と最小値との差は0.6であった。
【0067】
〔比較例1〕
触媒層の厚みを3.0nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして載置部材を得た。
得られた載置部材を上記評価(1)および(2)に供した。本実施例の載置部材のウエハ転写パーティクル数(評価1)は、9250個/cmであった。また、該載置部材の静摩擦係数の平均値(n4)は1.7であり、4点の評価における最大値と最小値との差は2.0であった。
【0068】
〔比較例2〕
触媒層の厚みを4.0nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして載置部材を得た。
得られた載置部材を上記評価(1)および(2)に供した。本実施例の載置部材のウエハ転写パーティクル数(評価1)は、9587個/cmであった。また、該載置部材の静摩擦係数の平均値(n4)は1.4であり、4点の評価における最大値と最小値との差は2.4であった。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例および比較例の結果から明らかなように、転写パーティクルの少ない本願発明の載置部材は、静摩擦係数が高く、また、静摩擦係数のバラツキが小さい。このような本願発明の載置部材は、電子部品等の搬送部材として好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0071】
10 カーボンナノチューブ集合体
11 カーボンナノチューブ
20 基材
100、200 載置部材
図1
図2
図3