(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定子鉄心の軸方向の一方及び他方の各端部における前記トルク発生区間の軸方向の一方及び他方の各端部からの軸方向外側への延出量は、当該回転電機の磁気ギャップ長以上の長さである、請求項1に記載の工作機械。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態における回転電機について、適宜従来の一般的な回転電機との対比を行いつつ、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の回転電機の一実施形態としての埋込磁石型同期電動機の概略構成を示す図である。
尚、以下に説明する本発明の実施形態に適用される非接触軸受は、流体軸受もこれに該当する。即ち、流体軸受けは、流体という媒体によって支持されるため、厳密には媒体との接触があるが、玉軸受等の機械的な接触がある軸受との対比では、軸が流体によって浮上しており、この観点から非接触軸受の語は流体軸受を包摂する意で用いる。流体軸受に適用される媒体としては、空気、油、その他の粘性流体がある。これらの媒体を適用した流体軸受としては、空気静圧軸受、滑り軸受、或いは、油や空気などを媒体とした動圧軸受等がある。
埋込磁石型同期電動機100は、両端側を図示しない非接触軸受によって支持された回転軸1によって回転子10が支持されている。回転子10を囲むように固定子20が設けられている。この固定子20は、例えば電磁鋼板の薄板を積層してなる固定子鉄心21を有し、ハウジング22に組み込まれている。固定子鉄心21にはコイル23が巻回されている。
図1の視座では固定子鉄心21に巻回されたコイル23は、そのコイルエンド23aが視認される。
【0017】
固定子20からは、コイル23に電気的に接続された配線(不図示)が引き出され、この配線がハウジング22に設けられた貫通孔を介して、埋込磁石型同期電動機100の外部に設置された電源(不図示)に接続される。これにより電源からコイル23に作動用電力が供給される。
【0018】
回転子10は、その回転部材である回転子鉄心11が回転軸1に絞り嵌め等によって十分な保持力を有する程度に嵌め合わされている。回転子鉄心11には、少なくとも周方向に複数に分割された磁石セグメントでなる永久磁石Mが磁石スロット(不図示)に埋め込まれて保持されている。
【0019】
図1の埋込磁石型同期電動機100の場合、回転子10において、永久磁石Mが埋め込まれた軸方向の区間がトルク発生に主として寄与する区間であり、この区間がトルク発生区間S1である。
【0020】
図1より容易に理解される通り、埋込磁石型同期電動機100では、固定子鉄心21は、軸方向の一方の端部211及び他方の端部212が回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111及び他方の端部112から軸方向外側に延出している。
【0021】
この場合、後に図面を参照して説明するように、固定子鉄心21の軸方向の一方の端部211及び他方の端部212における回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111及び他方の端部112からの軸方向外側への延出量は、埋込磁石型同期電動機100の磁気ギャップ長Lg以上の長さである。
【0022】
更に、回転子10は、トルク発生区間S1の軸方向の長さの中間位置(中央位置)が、固定子鉄心21の、軸方向の長さの中間位置(中央位置)に、軸方向位置として一致している。
【0023】
この、埋込磁石型同期電動機100では、回転軸1の両端の非接触軸受は、磁気軸受、流体軸受、又は、磁気軸受と流体軸受とによるハイブリッド型の軸受の何れかであってよい。
また、特に、これらの非接触軸受は受動型の軸受であってよい。
以上、
図1を参照して説明した本発明の回転電機の一実施形態としての埋込磁石型同期電動機100では、後に
図7から
図11を参照して説明するように、回転軸1の軸方向の変位が抑制され、軸方向位置が正規の位置に安定的に維持される。
【0024】
次に、
図2を参照して本発明の回転電機の他の実施形態としての表面磁石貼付型同期電動機について説明する。
図2は、本発明の回転電機の他の実施形態としての表面磁石貼付型同期電動機の概略構成を示す図である。
図2において
図1との対応部は同一の符号を附して示し、これら対応部の個々の説明は省略する。
図2を
図1と対照して容易に理解されるとおり、固定子20については
図1の埋込磁石型同期電動機100と変わりがない。
図2の表面磁石貼付型同期電動機200における、
図1を参照して既述の埋込磁石型同期電動機100との相違は、埋込磁石型同期電動機100の回転子10が永久磁石Mを回転子鉄心11に埋設固定していたのに対し、表面磁石貼付型同期電動機200では永久磁石Mをロータリースリーブ12によって回転軸1に固定している点である。
即ち、
図2の表面磁石貼付型同期電動機200では、磁性体の金属材料でなる筒状のロータリースリーブ12を環状の永久磁石Mと回転軸1との間に圧入して永久磁石Mを回転軸1の外周に強固に保持している。但し、図示のような筒状のロータリースリーブ12を用いることは必須ではなく、このようなロータリースリーブ12を用いずに永久磁石Mを回転軸1の外周に貼着してもよい。
【0025】
図2の表面磁石貼付型同期電動機200の場合、回転子10aにおいて、永久磁石Mが設けられた軸方向の区間がトルク発生に主として寄与する区間であり、この区間がトルク発生区間S2である。
【0026】
図2より容易に理解される通り、表面磁石貼付型同期電動機200では、固定子鉄心21は、軸方向の一方の端部211及び他方の端部212が回転子10a側のトルク発生区間S2の軸方向の一方の端部113及び他方の端部114から軸方向外側に延出している。
【0027】
この場合、後に図面を参照して説明するように、固定子鉄心21の軸方向の一方の端部211及び他方の端部212における回転子10a側のトルク発生区間S2の軸方向の一方の端部113及び他方の端部114から軸方向への延出量は、表面磁石貼付型同期電動機200の磁気ギャップ長Lg以上の長さである。
【0028】
更に、回転子10aは、トルク発生区間S2の軸方向の長さの中間位置(中央位置)が、固定子鉄心21の、軸方向の長さの中間位置(中央位置)に、軸方向位置として一致している。
【0029】
この、表面磁石貼付型同期電動機200では、回転軸1の両端の非接触軸受は、磁気軸受、流体軸受、又は、磁気軸受と流体軸受とによるハイブリッド型の軸受の何れかであってよい。
また、特に、これらの非接触軸受は受動型の軸受であってよい。
以上、
図2を参照して説明した本発明の回転電機の一実施形態としての表面磁石貼付型同期電動機200では、後に
図7から
図11を参照して説明するように、回転軸1の軸方向の変位が抑制され、軸方向位置が正規の位置に安定的に維持される。
【0030】
次に、
図3を参照して本発明の回転電機の他の実施形態としての誘導電動機について説明する。
図3は、本発明の回転電機の他の実施形態としての誘導電動機の概略構成を示す図である。
図3において
図1及び
図2との対応部は同一の符号を附して示し、これら対応部の個々の説明は省略する。
図3を
図1及び
図2と対照して容易に理解されるとおり、誘導電動機300の場合も、固定子20については
図1の埋込磁石型同期電動機100や
図2の表面磁石貼付型同期電動機200の場合と変わりがない。
図3の誘導電動機300における、既述の
図1の埋込磁石型同期電動機100や
図2の表面磁石貼付型同期電動機200との相違は、回転子10bが軸方向両端部にエンドリング(短絡環)14を有する回転子鉄心13である点である。
【0031】
図3の誘導電動機300の場合、回転子10bにおいて、回転子鉄心13が設けられた軸方向の区間がトルク発生に主として寄与する区間であり、この区間がトルク発生区間S3である。
【0032】
図3より容易に理解される通り、誘導電動機300では、固定子鉄心21は、軸方向の一方の端部211及び他方の端部212が回転子10b側のトルク発生区間S3の軸方向の一方の端部115及び他方の端部116から軸方向外側に延出している。
【0033】
この場合、後に図面を参照して説明するように、固定子鉄心21の軸方向の一方の端部211及び他方の端部212における回転子10b側のトルク発生区間S3の軸方向の一方の端部115及び他方の端部116から軸方向外側への延出量は、誘導電動機300の磁気ギャップ長Lg以上の長さである。
【0034】
更に、回転子10bは、トルク発生区間S3の軸方向の長さの中間位置(中央位置)が、固定子鉄心21の、軸方向の長さの中間位置(中央位置)に、軸方向位置として一致している。
【0035】
この、誘導電動機300では、回転軸1の両端の非接触軸受は、磁気軸受、流体軸受、又は、磁気軸受と流体軸受とによるハイブリッド型の軸受の何れかであってよい。
また、特に、これらの非接触軸受は受動型の軸受であってよい。
以上、
図3を参照して説明した本発明の回転電機の一実施形態としての誘導電動機300では、後に
図7から
図11を参照して説明するように、回転軸1の軸方向の変位が抑制され、軸方向位置が正規の位置に安定的に維持される。
また、
図1の埋込磁石型同期電動機100、
図2の表面磁石貼付型同期電動機200、
図3の誘導電動機300の何れの回転電機も、工作機械の駆動用に適用して、全体として、高精度で安価な工作機械を構成することができる。
【0036】
以上、
図1から
図3を参照して説明した本発明の回転電機の作用について説明するに先立って、
図8を参照して、本発明の回転電機と対比される一般的な回転電機について説明する。
図8は、一般的な回転電機としての電動機の概略構成を示す図である。
ここでは、一般的な回転電機として表面磁石貼付型同期電動機を代表的に示すが、注目する箇所については、埋込磁石型同期電動機である場合や誘導電動機である場合においても同様な現象を呈する。
表面磁石貼付型同期電動機800は、両端側を図示しない非接触軸受によって支持された回転軸1によって回転子10aが支持されている。回転子10aを囲むように固定子20が設けられている。この固定子20は、例えば電磁鋼板の薄板を積層してなる固定子鉄心21を有し、ハウジング22に組み込まれている。固定子鉄心21にはコイル23が巻回されている。
図1の視座では固定子鉄心21に巻回されたコイル23は、そのコイルエンド23aが視認される。
【0037】
図8の表面磁石貼付型同期電動機800では、磁性体の金属材料でなる筒状のロータリースリーブ12を環状の永久磁石Mと回転軸1との間に圧入して永久磁石Mを回転軸1の外周に強固に保持している。
【0038】
図8の表面磁石貼付型同期電動機800の場合、回転子10aにおいて、永久磁石Mが設けられた軸方向の区間がトルク発生に主として寄与する区間であり、この区間がトルク発生区間S8である。
【0039】
図8より容易に理解される通り、表面磁石貼付型同期電動機800では、固定子鉄心21は、軸方向の一方の端部211及び他方の端部212が、回転子10a側のトルク発生区間S2の軸方向の一方の端部113a及び他方の端部114aと軸方向位置が略一致している。
【0040】
図8の表面磁石貼付型同期電動機800を代表として示す一般的な回転電機の場合、既に簡単に説明したような問題が発生するおそれがある。これらの問題について
図8を参照して更に具体的に説明する。
【0041】
一般に、回転電機の固定子鉄心の軸方向の長さと、回転子のトルク発生区間の軸方向の長さは、
図8の表面磁石貼付型同期電動機800の如く同じ長さで設計されている。
尚、敢えて細目に触れるなら、上述のように同じ長さで設計するとはいえ、製造時の全長の誤差(寸法公差)を吸収する程度の長さの違いを設ける場合はあり得る。この場合には、回転子又は固定子化の何れかについて、全長の誤差(寸法公差)を吸収する程度に長く作られるが、あくまでも寸法公差を吸収する限度内のものである。これは、本発明の技術思想における上述のような固定子鉄心とトルク発生区間との軸方向の長さの相違とは、構成(相違の程度)・作用・効果の何れの点でも根本的に別異のものである。
【0042】
図8の表面磁石貼付型同期電動機800の場合、回転子には鉄心を有さず、トルク発生区間S8とは、回転子表面上の、磁石が配置された軸方向区間である。磁石を有する同期電動機の場合には、常時磁束が生じているため、固定子鉄心と回転子鉄心との両鉄心の端部においては、常に、軸方向にも力が発生している。
【0043】
ここで
図9、
図10及び
図11を参照して、固定子鉄心と回転子鉄心との両鉄心の端部において作用する軸方向の力について説明する。
図9は、
図8の表面磁石貼付型同期電動機800をその一例とする一般的な回転電機を回転軸を通る断面で見た端部の磁束線の様子を象徴的に表す模式図であり、特に、固定子鉄心の端部と回転子側のトルク発生区間の端部が揃っている場合を示す図である。
図10は、
図8の表面磁石貼付型同期電動機800をその一例とする一般的な回転電機を回転軸を通る断面で見た端部の磁束線の様子を象徴的に表す模式図であり、特に、固定子鉄心の長さと回転子側のトルク発生区間の長さが等しく、固定子鉄心の軸方向の中間位置が、回転子側のトルク発生区間の軸方向の中間位置に軸方向位置として一致している場合を示す図である。
図11は、
図8の表面磁石貼付型同期電動機800をその一例とする一般的な回転電機を回転軸を通る断面で見た端部の磁束線の様子を象徴的に表す模式図であり、特に、固定子鉄心の長さと回転子側のトルク発生区間の長さが等しく、固定子鉄心の軸方向の中間位置と回転子側のトルク発生区間の軸方向の中間位置とがずれている場合を示す図である。
【0044】
図9、
図10及び
図11において、既述の
図8との対応部は同一の符号によって示されている。
図9、
図10及び
図11では、
図8の表面磁石貼付型同期電動機800における符号を便宜的に用い、
図9では、固定子鉄心の軸方向の一方の端部211及び回転子10aの一方の端部113a(従って、磁石Mの一方の端部)を図示しているが、軸方向の他方の端部については、
図10及び
図11に示されている。
また、
図10及び
図11における回転子側のトルク発生区間S10は、
図8におけるトルク発生区間S8に相応するが、ここでは、表面磁石貼付型同期電動機800における場合のみならず、図示しない一般的な埋込磁石型同期電動機である場合や誘導電動機である場合についても同様の現象を説明する便宜上、トルク発生区間を代表的にS10と表記している。
【0045】
図9、
図10及び
図11において、固定子鉄心21の内周面に磁気ギャップ長Lgの磁気ギャップを隔てて回転子10aの外周面が近接対向している。磁気ギャップにおいて磁束線が破線図示されている。
【0046】
磁束線は、同方向に向かうもの同士は相互に反発し合い、間隔を空けようとする斥力を及ぼす性質を持つ。従って、磁石Mの片方から発せられた磁束線は、空間に向かって相互の間隔を拡大しながら発散してゆく。
【0047】
一方で、磁束線は、磁束線を発する磁性体と、行き着く先の磁性体との根本同士を、常時最短距離に縮めようとする吸引力を及ぼす性質を持つ。
【0048】
磁束線を発生及び収容する磁性体の磁気抵抗等の磁気的性質が一様で、磁界の強さも一様な場合には、磁性体の表面に現れる磁束線の根元は等間隔に並ぶ性質を持つ。即ち、磁性体の表面での磁束密度が一様になる。
【0049】
磁束線に関する以上の性質を踏まえて
図9、
図10及び
図11を参照すると、磁気ギャップ内では、軸方向の両端よりも内部において、軸方向の両端からの作用が及ばず、磁束線は等間隔で並んでいる。
一方、上述の吸引力が作用するが、固定子鉄心21と回転子10a(
図8の例では磁石M)とは吸引力の方向には動かないように支持されているため、両者が当接することはない。
コイル23に通電されると、磁束線が紙面に垂直な方向にねじれることにより、上述の吸引力によるトルクが発生する。
この場合、固定子鉄心の軸方向の一方の端部211及び回転子10aの一方の端部113aでは磁束線が相互の斥力によって外側に膨らむ傾向を呈する。この傾向は他方の端部についても同様であるため(
図10参照)、両端部間での磁束線の均衡は破られず、軸方向に力が生じない。従って、上述の吸引力によるラジアル方向の力のみが生じている。
【0050】
ここで、仮に、
図11のように、両鉄心の端部の軸方向位置が互いにずれている場合、そのずれを解消し端部位置が揃う方向に、軸方向に力が発生している。
即ち、両鉄心の軸方向全長が同じで、軸方向に互いにずれている場合には、両者の軸方向位置が揃う方向に、軸方向には常時力が作用している。
【0051】
また、埋込磁石型同期電動機の場合にも、誘導電動機と同様に、回転子にも鉄心を有し、この回転子におけるトルク発生区間は、回転子鉄心の全長にわたる区間に等しい。
既述のように、磁石を有する同期電動機の場合には、常時磁束が生じているため、固定子鉄心と回転子鉄心との両鉄心の端部においては、常に、軸方向にも力が発生している。
このため、仮に、両鉄心の端部の軸方向位置が互いにずれている場合、そのずれを解消し端部位置が揃う方向に、軸方向に力が発生している。
即ち、両鉄心の軸方向全長が同じで、軸方向に互いにずれている場合には、両者の軸方向位置が揃う向きに、軸方向には常時力が作用している。
【0052】
更に、誘導電動機の場合、回転子にも鉄心を有し、既述のトルク発生区間は即ち回転子鉄心の軸方向の長さに等しい。トルク発生時には、固定子鉄心と回転子鉄心との間で、回転方向に磁気吸引力が発生することで、トルクが発生している。
このとき同時に、両鉄心の端部においては、仮に、端部の軸方向位置が互いにずれている場合、そのずれを解消し端部位置が揃う方向に、軸方向にも力が発生している。
即ち、両鉄心の軸方向の全長が同じで、軸方向に互いにずれている場合には、両者の軸方向位置が揃う方向に、軸方向に力が作用する。ただし、誘導電動機の場合、この力は、誘導電動機がトルクを発生しているときのみに発生する。
【0053】
上述のように、表面磁石貼付型同期電動機、埋込磁石型同期電動機、及び、誘導電動機の何れにおいても、固定子の端部やトルク発生区間の端部が、製造時の組立誤差などによって回転軸に対して多少の傾きを持つ場合、既述のように軸方向のずれを戻そうとする力は、回転時に強弱を繰り返し変動することになる。従って、この力の変動が回転軸の軸方向の微小な振動を生じさせる。
【0054】
既述のように、精密加工の用途に適用される工作機械の主軸では、この主軸に接続される回転電機の回転軸に上述のような軸方向の振動が伝播すると、その程度が微小であっても加工精度を悪化させ、無視できない状況が生じる。
即ち、このような軸方向の軸の動きが、加工精度に影響を与えるため好ましくない。また特に、非接触軸受、磁気軸受や流体軸受けなどでは、支持剛性が低いため問題が特に顕著に現れやすい。更に、回転軸の軸受として、軸方向位置に関する位置決め機能を有しない受動的な軸受を適用した場合では、問題は顕著になる。
【0055】
一般的な回転電機では上述のような問題を生じるおそれがあるが、これに対して、本発明の回転電機では、これらの問題に対して十全な解決がはかられている。
次に、
図1、
図2及び
図3の、本発明の実施形態としての回転電機の作用について、
図4、
図5、
図6及び
図7を参照して逐次説明する。
【0056】
図4は、
図1から
図3の回転電機を回転軸を通る断面で見た端部の磁束線の様子を象徴的に表す模式図であり、特に、固定子鉄心の端部に対し回転子側のトルク発生区間の端部が固定子鉄心側にずれている場合を示す図である。
図5は、
図1から
図3の回転電機を回転軸を通る断面で見た端部の磁束線の様子を象徴的に表す模式図であり、特に、固定子鉄心の端部に対し回転子側のトルク発生区間の端部が固定子外側にずれている場合を示す図である。
【0057】
図4及び
図5において、既述の
図1、
図2及び
図3との対応部は同一の符号によって示されている。但し、
図4及び
図5では、
図1の埋込磁石型同期電動機、
図2の表面磁石貼付型同期電動機、及び、
図3の誘導電動機について共通に説明するために、便宜上、細部の形状等を適宜省略し或いは敢えて象徴的な描き方を採り、且つ、大部分の符号については
図1に対応するものを附している。
【0058】
図4は、固定子鉄心21の他方の端部212に対し回転子10側のトルク発生区間の端部(この例では、回転子鉄心11他方の他端部112)、が固定子鉄心21側にずれている場合を示している。このとき、固定子鉄心21とこれに対向する回転子10側のトルク発生区間(回転子鉄心11、磁石M)との間の磁気ギャップ長Lgの磁気ギャップ内では、軸方向の両端よりも内部において、軸方向の両端からの作用が及ばず、磁束線は等間隔で並んでいる。
一方、磁束線には既述の吸引力を及ぼすが、固定子鉄心21と回転子10(
図1の例では回転子鉄心11、
図2の例では永久磁石M)とは吸引力の方向には動かないように支持されているため、両者が当接することはない。
コイル23に通電されると、磁束線が紙面に垂直な方向にねじれることにより、既述の吸引力によるトルクが発生する。
ここで、固定子鉄心21の軸方向の一方の端部211及び他方の端部212における、回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111及び他方の端部112からの軸方向外側への延出量と磁気ギャップ長Lgとの関係について説明する。
即ち、
図1の埋込磁石型同期電動機100の場合、既述のように、固定子鉄心21の軸方向の一方の端部211及び他方の端部212における、回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111及び他方の端部112からの軸方向外側への延出量は、埋込磁石型同期電動機100の磁気ギャップ長Lg以上の長さである。固定子鉄心21の軸方向の一方の端部211及び他方の端部212におけるこのような軸方向外側への延出量は、
図2の表面磁石貼付型同期電動機200及び
図3の誘導電動機300の何れの場合についても同様である。
【0059】
本実施形態の回転電機100では、固定子鉄心21は、軸方向の一方の端部211及び他方の端部212が回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111及び他方の端部112から軸方向外側に延出している。従って、
図4に表された端部で見ると、回転子10の他方の端部112では磁束線に傾きが生じる。この傾きが生じると、磁束線による既述の吸引力を及ぼす性質から、回転子10に軸方向の力が作用する。この力は、上記の傾きの方向の力Fdがその軸方向成分Faと軸方向に直交する方向の成分Fpに分解されるときの、軸方向成分Faに相当する。この現象は、
図4では表されていない一端部211において同様に生じる。
従って、固定子鉄心21の、軸方向の一方の端部211及び他方の端部212と、これに対応する回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111及び他方の端部112との間に、上述の力Fdの軸方向成分Fa(−Fa)が作用する。このため、力の成分Faと−Faとの力平衡により回転子10と相対位置が固定された回転軸1の軸方向位置が正規の位置に安定的に維持される。換言すれば、軸1及び回転子10の端部の軸方向位置に関する位置ずれが解消される方向の力が常時作用する。
【0060】
図5は、固定子鉄心21の一方の端部211に対し回転子10側のトルク発生区間の端部(この例では、回転子鉄心11の一端部111)が固定子外側にずれている場合を想定して示す図である。このとき、固定子鉄心21とこれに対向する回転子10側のトルク発生区間(回転子鉄心11、磁石M)との間の磁気ギャップ長Lgの磁気ギャップ内では、軸方向の両端よりも内部において、軸方向の両端からの作用が及ばず、磁束線は等間隔で並んでいる。
一方、磁束線には既述の吸引力が作用するが、固定子鉄心21と回転子10(
図1の例では回転子鉄心11、
図2の例では永久磁石M)とは吸引力の方向には動かないように支持されているため、両者が当接することはない。
コイル23に通電されると、磁束線が紙面に垂直な方向にねじれることにより、既述の吸引力によるトルクが発生する。
【0061】
図5における想定では、固定子鉄心21は、軸方向の一方の端部211が回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111から軸方向に後退している。従って、
図5に表された端部で見ると、回転子10の一方の端部111では磁束線に傾きが生じる。この傾きが生じると、磁束線による既述の吸引力を及ぼす性質から、回転子10に軸方向の力が作用する。この力は、上記の傾きの方向の力Fdがその軸方向成分Faと軸方向に直交する方向の成分Fpに分解されるときの、軸方向成分Faに相当する。この現象は、
図5では表されていない他端部212において、固定子鉄心21が回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の他方の端部112から軸方向に一方の端部211と同様に後退している場合には、同様に生じる。
従って、固定子鉄心21の、軸方向の一方の端部211及び他方の端部212と、これに対応する回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111及び他方の端部112との間に、上述の力Fdの軸方向成分Fa(−Fa)が作用する。このため、力の成分Faと−Faとの力平衡により回転子10と相対位置が固定された回転軸1の軸方向位置が正規の位置に安定的に維持される。
【0062】
しかしながら、固定子鉄心21が、軸方向の一方の端部211が回転子10側のトルク発生区間S1の軸方向の一方の端部111から軸方向に後退している一方、他方の端部112側が上述のように後退していない場合には、既述の力Fdの軸方向成分Faが回転子10に、従って、これと相対位置が固定されている回転軸1に常時作用することになる。
即ち、回転軸1及び回転子10には、固定子鉄心21側に常時引き込まれる力が作用することになる。
【0063】
次に、
図6及び
図7を参照して、
図1及び
図2の回転電機の回転子側のトルク発生区間について説明する。
図6は、
図1及び
図2の回転電機の回転子側のトルク発生区間を説明する図であり、特に、固定子鉄心が十分に長く、トルク発生区間の軸方向の長さの中間位置が、固定子鉄心の軸方向の長さの中間位置に軸方向位置として一致している場合を示す図である。
図7は、
図1及び
図2の回転電機の回転子側のトルク発生区間を説明する図であり、特に、固定子鉄心が十分に長く、トルク発生区間の軸方向の長さの中間位置が、固定子鉄心の軸方向の長さの中間位置に一致していない場合を示す図である。
図6及び
図7において、既述の
図1及び
図2との対応部は同一の符号によって示されている。但し、
図6及び
図7では、
図1の埋込磁石型同期電動機、及び、
図2の表面磁石貼付型同期電動機について共通に説明するために、便宜上、形状等を適宜省略し或いは敢えて象徴的な描き方を採り、且つ、大部分の符号については
図1に対応するものを附している。
【0064】
図6における回転電機は、
図1を参照して既述の埋込磁石型同期電動機100や
図2を参照して既述の表面磁石貼付型同期電動機200がこれに相当する。
図6における回転電機のトルク発生区間S6は、埋込磁石型同期電動機100の場合は
図1を参照して既述のトルク発生区間S1がこれに相当し、表面磁石貼付型同期電動機200の場合は
図2を参照して既述のトルク発生区間S2がこれに相当する。
即ち、
図6における回転電機のトルク発生区間S6は、軸方向の長さの中間位置(中央位置)が、固定子鉄心21の、軸方向の長さの中間位置(中央位置)に軸方向位置として一致している。
【0065】
このため、既述の磁束線による吸引力が回転子10側の両端部で、大きさが等しく向きが反対になるように作用する。従って、回転子10及びこれと相対位置が固定されている回転軸1には、これに作用する軸方向の力の大きさが均衡し、逆方向に作用することから相殺されて、結果的に作用しなくなる。
併せて、固定子鉄心21の端部211、212や、回転子10側の端部111、112の組立精度による傾きや、磁石Mの凹凸があっても、これらに起因する既述のような軸方向の微小振動も抑制される。これは、固定子20(その固定子鉄心21)が十分に長い場合には、既述の吸引力を生ぜしめる磁束線の長さが長くなって、微小変位に起因する軸方向に作用する力の変動率が小さくなるためである。
【0066】
図7の回転電機は、
図6を参照して説明した回転電機のようには軸方向の微小振動等が抑制できない場合について説明するために仮定したものである。
図7の回転電機のトルク発生区間S7は、軸方向の長さの中間位置(中央位置)が、固定子鉄心21の、軸方向の長さの中間位置(中央位置)に一致せず、
図7の視座で左側に偏っている。
【0067】
このため、既述の磁束線による吸引力が回転子10側の左側端部に作用する力の大きさが、回転子10側の右側端部に作用する力のきさよりも小さくなる。これは、回転子10側の左側端部に作用する磁束線の方が、回転子10側の右側端部に作用する磁束線よりも本数が少なく、長さも短かくなるためである。
従って、回転子10及びこれと相対位置が固定されている回転軸1には、これに作用する軸方向の力の大きさは、右側の方が相対的に大きくなり、回転子10及び回転軸1には常時右側に変位させようとする力が作用することになる。
併せて、固定子鉄心21の端部211、212や、回転子10側の端部111、112の組立精度による傾きや、磁石Mの凹凸があると、これらに起因する既述のような軸方向の微小振動が発生してしまう。この振動の振幅は回転子(そのトルク発生区間S7)の軸方向の長さの中間位置(中央位置)が、固定子鉄心21の、軸方向の長さの中間位置(中央位置)に対してずれている程度に依存する。
【0068】
本発明の実施形態としての回転電機は、上述のような構成を有し、既述の作用・効果を奏する。即ち、磁束線により常時作用する力によって、回転軸はその軸方向位置が常時維持される。このため、これらの回転電機には非接触軸受が適用されても、回転軸の軸方向の振動が生じ難い。従って、軸受部分の摩擦が極小となり、起動の応答性が高く高速回転にも適し、摩耗もないため耐久性に優れるといった非接触軸受の利点が十全に活きる。
尚、この非接触軸受は、磁気軸受、流体軸受、又は、磁気軸受と流体軸受とによるハイブリッド型の軸受等であってよい。
更に、これら磁気軸受、流体軸受、又は、磁気軸受と流体軸受とによるハイブリッド型の軸受は受動型の軸受であってよい。
本発明の回転電機を適用して工作機械を構成すれば、回転電機に関する既述のような利点が十分に活かされて、加工精度に関する能力の高い工作機械が具現される。
以上を総じて、本発明の回転電機は構成が極めて簡単であり、既述の利点を有しながら、製作が容易で安価である。
【0069】
尚、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、種々、変形変更して実施可能であり、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良も本発明に包摂される。