特許第6616251号(P6616251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許6616251無線センサ端末、無線センサシステムおよびセンサデータ収集方法
<>
  • 特許6616251-無線センサ端末、無線センサシステムおよびセンサデータ収集方法 図000002
  • 特許6616251-無線センサ端末、無線センサシステムおよびセンサデータ収集方法 図000003
  • 特許6616251-無線センサ端末、無線センサシステムおよびセンサデータ収集方法 図000004
  • 特許6616251-無線センサ端末、無線センサシステムおよびセンサデータ収集方法 図000005
  • 特許6616251-無線センサ端末、無線センサシステムおよびセンサデータ収集方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616251
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】無線センサ端末、無線センサシステムおよびセンサデータ収集方法
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/02 20060101AFI20191125BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20191125BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   G08C17/02
   H04Q9/00 311J
   H04M11/00 301
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-126557(P2016-126557)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-5269(P2018-5269A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤森 司
(72)【発明者】
【氏名】栗山 哲
(72)【発明者】
【氏名】深町 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】大島 俊
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−241583(JP,A)
【文献】 特開2016−38275(JP,A)
【文献】 特開2002−10983(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/190973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00 − 25/04
G01M 7/00 − 08
H04M 11/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を電気信号に変換して測定するセンサと、
前記電気信号から所定の周波数の信号を抽出するフィルタと、
前記フィルタで抽出された周波数の信号に基づくデータを無線送信する送信機と、
外部から無線送信されてくるコマンドを受信する受信機と、
前記コマンドに基づいて、前記フィルタで抽出する周波数を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、
初期状態においては、前記フィルタで抽出する周波数を制限せずに全帯域を通過させ、
前記コマンドを受信した後に前記フィルタで抽出する周波数を制限して、定常状態に移行させる、
無線センサ端末。
【請求項2】
前記制御部は、
前記送信機による、前記定常状態における1回の送信での前記データの量が、前記初期状態における1回の送信での前記データの量よりも小さくなるように制御し、
前記送信機による、前記定常状態における送信頻度が、前記初期状態における送信頻度よりも大きくなるように制御する、
請求項記載の無線センサ端末。
【請求項3】
すくなくとも前記送信機に電力を供給する自立電源システムを備え、
前記自立電源システムは、環境発電あるいは電池で動作する、
請求項1記載の無線センサ端末。
【請求項4】
前記フィルタの出力を入力とする振幅検出回路と、前記振幅検出回路の出力を入力とする積分回路と、前記積分回路の出力をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器を備え、
前記振幅検出回路と前記積分回路は、前記コマンドに基づいて動作を制御される、
請求項記載の無線センサ端末。
【請求項5】
前記コマンドは、前記積分回路の積分時間を設定するための情報を含む、
請求項記載の無線センサ端末。
【請求項6】
前記振幅検出回路と前記積分回路は、前記コマンドに基づいて、前記定常状態のみ動作するように制御される、
請求項記載の無線センサ端末。
【請求項7】
無線センサ端末およびデータ収集・分析装置を備える無線センサシステムであって、
前記無線センサ端末は、
物理量を電気信号に変換して測定するセンサと、
前記電気信号から所定の周波数の信号を抽出するフィルタと、
前記フィルタで抽出された周波数の信号に基づくデータを前記データ収集・分析装置に無線送信する送信機と、
前記データ収集・分析装置から無線送信されてくるコマンドを受信する受信機と、
前記コマンドに基づいて、前記フィルタで抽出する周波数を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、
初期状態においては、前記フィルタで抽出する周波数を制限せずに全帯域を通過させ、
前記コマンドを受信した後に前記フィルタで抽出する周波数を制限して、定常状態に移行させる、
無線センサシステム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記送信機による、前記定常状態における1回の送信での前記データの量が、前記初期状態における1回の送信での前記データの量よりも小さくなるように制御し、
前記送信機による、前記定常状態における送信頻度が、前記初期状態における送信頻度よりも大きくなるように制御する、
請求項記載の無線センサシステム。
【請求項9】
すくなくとも前記送信機に電力を供給する自立電源システムを備え、
前記自立電源システムは、環境発電あるいは電池で動作する、
請求項記載の無線センサシステム。
【請求項10】
前記フィルタの出力を入力とする振幅検出回路と、前記振幅検出回路の出力を入力とする積分回路と、前記積分回路の出力をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器を備え、
前記振幅検出回路と前記積分回路は、前記コマンドに基づいて動作を制御される、
請求項記載の無線センサシステム。
【請求項11】
前記コマンドは、前記積分回路の積分時間を設定するための情報を含む、
請求項10記載の無線センサシステム。
【請求項12】
前記振幅検出回路と前記積分回路は、前記コマンドに基づいて、前記定常状態のみ動作するように制御される、
請求項10記載の無線センサシステム。
【請求項13】
無線センサ端末およびデータ収集・分析装置を備える無線センサシステムにおける、センサデータ収集方法であって、
前記無線センサ端末は、
物理量を電気信号に変換して測定するセンサと、
前記電気信号から所定の周波数の信号を抽出するフィルタと、
前記フィルタで抽出された周波数の信号に基づくデータを前記データ収集・分析装置に無線送信する送信機と、
前記データ収集・分析装置から無線送信されてくるコマンドを受信する受信機と、
前記コマンドに基づいて、前記フィルタで抽出する周波数を制御する制御部と、
を備え、
前記無線センサ端末は、
初期モードにおいては、
前記センサで得られた電気信号を、前記フィルタでフィルタリングせずに、全帯域の周波数の信号に基づくデータを前記データ収集・分析装置に無線送信する第1のステップと、
前記データ収集・分析装置から無線送信されてくるコマンドを受信する第2のステップと、
前記コマンドに基づいて、前記フィルタで抽出する周波数を制御して定常モードに移行させる第3のステップを実行し、
前記定常モードにおいては、
前記センサで得られた電気信号を、前記フィルタでフィルタリングして、限定された周波数の信号に基づくデータを前記データ収集・分析装置に無線送信する第4のステップを実行し、
前記第1のステップにおける無線送信頻度は、前記第4のステップにおける無線送信頻度よりも小さい、センサデータ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2014−81860公報(特許文献1)がある。この文献には、センサネットワークシステムにおいて、環境情報を収集するセンサ端末の無線通信に必要な消費電力を削減し、自立電源を用いてセンサ端末を動作させるための方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−81860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、自立電源を用いて無線センサ端末を動作できる程度に低消費電力化するため、無線通信の消費電力を削減しようとする。このため、できるだけ短電文でセンサ測定結果を通信し、そのデータを時系列に蓄積するための方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、無線通信量を減らすために短いデータ量しか送信することができず、温度、湿度、照度など、利用可能なセンサ種類が、1回の測定で数バイト程度のデータ量で済む物理量に限定されていた。そのため、例えば振動スペクトルの測定のような、比較的短時間で多数回測定が必要なセンサではデータ量が多くなるため、適用できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の一側面は、物理量を電気信号に変換して測定するセンサと、電気信号から所定の周波数の信号を抽出するフィルタと、フィルタで抽出された周波数の信号に基づくデータを無線送信する送信機と、外部から無線送信されてくるコマンドを受信する受信機と、コマンドに基づいて、フィルタで抽出する周波数を制御する制御部と、を備える無線センサ端末である。
【0007】
本発明の他の一側面は、無線センサ端末およびデータ収集・分析装置を備える無線センサシステムである。ここで、無線センサ端末は、物理量を電気信号に変換して測定するセンサと、電気信号から所定の周波数の信号を抽出するフィルタと、フィルタで抽出された周波数の信号に基づくデータをデータ収集・分析装置に無線送信する送信機と、データ収集・分析装置から無線送信されてくるコマンドを受信する受信機と、コマンドに基づいて、フィルタで抽出する周波数を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の他の一側面は、無線センサ端末およびデータ収集・分析装置を備える無線センサシステムにおける、センサデータ収集方法である。この方法では、無線センサ端末は、物理量を電気信号に変換して測定するセンサと、電気信号から所定の周波数の信号を抽出するフィルタと、フィルタで抽出された周波数の信号に基づくデータをデータ収集・分析装置に無線送信する送信機と、データ収集・分析装置から無線送信されてくるコマンドを受信する受信機と、コマンドに基づいて、フィルタで抽出する周波数を制御する制御部と、を備える。
【0009】
そして、無線センサ端末は、初期モードにおいては、センサで得られた電気信号を、フィルタでフィルタリングせずに、全帯域の周波数の信号に基づくデータをデータ収集・分析装置に無線送信する第1のステップと、データ収集・分析装置から無線送信されてくるコマンドを受信する第2のステップと、コマンドに基づいて、フィルタで抽出する周波数を制御して定常モードに移行させる第3のステップを実行する。また、定常モードにおいては、センサで得られた電気信号を、フィルタでフィルタリングして、限定された周波数の信号に基づくデータをデータ収集・分析装置に無線送信する第4のステップを実行する。そして、第1のステップにおける無線送信頻度は、第4のステップにおける無線送信頻度よりも小さくなるように制御される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的短時間で多数回測定が必要とされていたセンサを用いた場合の、無線センサ端末の消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】センシングシステムの一例の構成を示すブロック図である。
図2】センサ信号を処理するフローの例を説明した流れ図である。
図3A】センサ信号処理の具体例を説明する模式図である。
図3B】センサ信号処理の具体例を説明する模式図である。
図3C】センサ信号処理の具体例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0013】
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【0014】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0015】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0016】
以下の実施例の概要を説明すると、無線センサ端末に、センサおよび、センサからのアナログ信号から特定周波数のみを取り出すフィルタ回路を設ける。さらに、必要に応じてフィルタ回路からの信号出力の強度を、一定時間積分して取得する積分強度取得回路を設ける。また、積分強度取得回路等の出力をデジタルデータに変換するアナログデジタル変換回路、を設けるものである。さらに、フィルタ回路の通過帯域と積分強度取得回路の積分時間を、無線センサ端末の外部より指示された値に可変な構成とするものである。
【0017】
<1.システム構成>
図1は、本実施例のセンシングシステムの構成例を示す図である。無線センサ端末101は自立電源システム1を備え、その発電電力で振動センサ2および測定回路部3を動作させてセンサ機能を実現する端末である。センサ機能は、周囲の各種物理量を測定し、測定した結果を無線でデータ収集・分析装置102に送信する。ここで「測定」とは、無線センサ端末101が、1度に送信するべきデータを準備する処理全体をいうことにする。本実施例では、振動センサ2により、周囲の振動を測定し、その結果を送信する例を扱うものとする。また、データ収集・分析装置102が1台に対して、無線センサ端末101は複数台でセンシングシステムを構成することができる。以下では簡略化のため、無線センサ端末101のうち、1台のみの動作について説明するが、複数台に対して同様の動作が行われるものとする。
【0018】
無線センサ端末101は、電源を供給するための線路を確保することが困難な場合が多い。そこで、自立電源システム1は、太陽電池、ピエゾ素子やペルチエ素子などの発電素子や、電池などの電力供給および蓄電素子と、電源制御回路や整流回路などから構成される。自立電源システム1は、無線センサ端末101の外部から電力を供給されることなく、振動センサ2および測定回路部3に電力を供給することができる。
【0019】
振動センサ2は、測定対象物の振動を電気信号に変換し、振動の大きさに対応した電圧等を出力する素子である。圧電型振動センサやMEMS加速度センサなど、一般に振動測定用として用いられているセンサ素子を用いることが可能である。また、振動に伴い発生する音波を測定するマイクロフォンなどでも良い。測定の対象とする振動の帯域は、測定対象により様々であり、適切なセンサを選択して用いることになる。本実施例では、10Hz〜100kHz程度までの帯域で振動を測定し、振動の大きさに比例した電圧を出力するセンサを用いる。
【0020】
測定回路部3は、振動センサ2の出力信号に対して整形処理を行った後に、デジタル値へと変換し、そのデジタル値を測定データとして無線でデータ収集・分析装置102に送信する。測定回路部3は、帯域通過フィルタ回路4、振幅値検出回路5、積分回路6、アナログデジタル変換回路7、CPU8、無線通信回路9で構成される。
【0021】
帯域通過フィルタ回路4は、CPU8からの制御信号により、通過させる帯域を可変な構成とする。例えば、異なる通過帯域を持った帯域通過フィルタを複数個並べて、CPU8からの制御信号により使用する帯域通過フィルタを切り替える構成とする。本実施例では、1〜10kHz、10〜20kHzなど、10kHz単位で通過帯域が異なる帯域通過フィルタ10個を切り替えて用いる。もちろん、フィルタの回路定数をCPU8からの制御信号から設定できるようにして通過帯域を変更する構成とすることや、デジタルフィルタ回路を用いることなども可能である。また、CPU8からの制御により、フィルタすることなく、振動センサ2からの入力を、そのまま出力する機能も備える。
【0022】
振幅値検出回路5は、帯域通過フィルタ回路4から出力されてきた信号の、振幅値に比例した電圧を出力する回路である。一般的に用いられる回路を用いて実現することができ、例えば、信号レベル検出回路や、整流回路、最大値回路などで構成することが可能である。また、CPU8からの制御により、振幅値を検出することなく、帯域通過フィルタ回路4からの入力を、そのまま出力する機能も備える。また、振幅値検出回路5は省略することもできる。
【0023】
積分回路6は、振幅値検出回路5からの入力信号を一定時間積分し、積分値に比例した電圧値を出力する回路である。CPU8からの制御信号により、積分する時間の制御および積分値をリセットする機能を備える。また、CPU8からの制御により、積分することなく、振幅値検出回路5からの入力を、そのまま出力する機能も備える。また、積分回路6は省略することもできる。
【0024】
アナログデジタル変換回路7は、積分回路6からの入力信号を、デジタル信号に変換する回路である。必要に応じて、適切な増幅回路を積分回路6とアナログデジタル変換回路7の間に挿入し、アナログ信号を増幅しても良い。また、振幅値検出回路5や積分回路6を省略する場合は、帯域通過フィルタ回路4の出力を入力とする。なお、アナログデジタル変換回路7は、CPU8に含めて構成することもできる。アナログデジタル変換のサンプリング周波数は、振動のスペクトル解析が可能な程度に高い必要がある。本実施例では、振動センサが100kHzまで対応していることから、1MHzでサンプリングを行う。
【0025】
CPU8は、無線通信回路9を通してデータ収集・分析装置に送信する測定データの生成と出力、および、データ収集・分析装置102からの信号を受信する。また、受信した信号に基づき、振動センサ2および測定回路部3の各ブロックの動作制御を行う。CPU8は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアで構成することができる。また、CPU8はデータ等の記憶のために図示しないメモリを備えていてもよい。メモリは例えば不揮発性の半導体メモリである。ハードウェアと同様の処理は、メモリに格納されたプログラムを汎用のプロセッサによって実行することで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現することもできる。
【0026】
無線通信回路9は、CPU8からの信号を無線送信、および、データ収集・分析装置からの無線信号を受信する回路であり、特に無線周波数や無線方式については問わない。例えば、センシングシステムで一般に用いられている無線方式である、Wi-SUN(登録商標)、Zigbee(登録商標)、WiFi(登録商標)、WirelessHART(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの規格に準拠した無線を用いることができる。また、独自のプロトコルで通信しても良い。
【0027】
データ収集・分析装置102は、無線センサ端末101が送信する測定データを受信し、保存する機能を持つ。さらに、保存した測定データについて解析を行い、その結果を基に、無線センサ端末101に測定パラメータを無線により送信する機能を持つ。測定パラメータには、無線センサ端末101の各回路の設定を指示する情報が含まれる。測定パラメータは、CPUに対するコマンドと考えてもよい。情報とは例えば、回路のON/OFF、設定するフィルタ周波数や積分時間などのパラメータである。データ収集・分析装置102は通常、入力装置、出力装置、記憶装置、処理装置を含むコンピュータに通信機能を追加することで構成することができる。あるいは、専用ハードウェアで構成しても良い。また、一般的なパソコン等に無線通信機能を持たせることでも実現できる。
【0028】
<2.動作フロー>
図2は、図1の実施例のセンシングシステムの動作フローを示す図である。無線センサ端末101とデータ収集・分析装置102のそれぞれの動作を順に説明する。
【0029】
無線センサ端末101は、初期状態(初期モード)では、振動スペクトル分析が可能な測定パラメータで、多数の点を1回の測定で取得する(S201)。測定したデータは、CPU8のメモリに蓄えて送信する(S202)。初期状態の測定ではサンプル数が多く、データ量が大きい。この測定および送信動作については、自立電源システム1で実現可能な平均消費電力で多数点のデータを送るため、測定頻度を抑える必要がある。例えば1時間に1回程度の頻度で行う。
【0030】
次に、測定した振動データを、データ収集・分析装置102が受信する。データ収集・分析装置102は、必要に応じて複数回、受信を繰り返す。受信したデータは必要に応じて記憶装置に保存する。そして、複数回の振動データの差分を比較分析する(S203)。分析結果に基づいて、特徴的な量を含んだ周波数領域を決定する(S204)。分析や決定は所定のソフトウェアにより自動的に行ってもよいし、操作者による検討が含まれていてもよい。操作者の検討・分析結果は、データ収集・分析装置102の入力装置から入力し記憶装置に保持する。
【0031】
そして、データ収集・分析装置102より、無線センサ端末101へ、特徴的な量を含んだ周波数領域の振動の振幅を測定するように、測定パラメータを含む測定指示を送信する(S205)。
【0032】
無線センサ端末101は、データ収集・分析装置102からの指示に従い、振動データのうち、特徴的な量を含んだ周波数領域の振動振幅に着眼して測定する(S206)。すなわち、初期状態の測定よりもサンプル数が少なく、データ量を小さくすることができる。これにより、この測定および送信動作については、1回につき初期状態より限定されたデータを送るため、自立電源システム1で実現可能な平均消費電力を鑑みても、比較的、高頻度に行うことができる。例えば1分に1回の頻度で行う(S207)。
【0033】
最終的に、定常状態(定常モード)においては、データ収集・分析装置102は、特徴的な量を含んだ周波数領域の振動振幅のデータを1分に1回の高頻度に収集することが可能になる。すなわち、初期状態で振動スペクトルを収集していた時と比べて、意味のあるデータのみを、高頻度に収集できる(S208)。
【0034】
<3.データ分析原理>
図3Aは、このセンシングシステムを、ポンプや切削加工装置等の工場設備の稼動状態を振動センサにより取得するシステムとして適用した場合を例として、システムの動作を具体的に説明する模式図である。
【0035】
この例では、無線センサ端末101を工場設備に取り付け、振動を測定するものとする。また、データ収集・分析装置102は、無線センサ端末101からの信号を受信する時に、測定対象の工場設備の電源がONかOFFか、の情報を別途取得可能とする。図3の無線センサ端末101で測定および送信する測定データ301には、設備OFF時のデータと、設備ON時のデータが含まれている。
【0036】
図3で説明したように、初期状態(S201〜S202)においては、無線センサ端末101は、振動スペクトル分析が可能な測定パラメータに基づいて測定する。すなわち、CPU8からの制御により、帯域通過フィルタ回路4、振幅値検出回路5、積分回路6は、各々への入力信号をそのまま出力するように設定され、振動センサ2の出力をアナログデジタル変換回路7でデジタル値に変換し、その変換した値を測定データ301として無線送信する。
【0037】
振動は様々な周波数成分を含んでいるため、その分析に十分な測定点として、1024〜16384点程度が必要となる。本例では、アナログデジタル変換回路7は1MHzのサンプリング周波数で16384点をサンプリングし、無線送信する。この測定を、無線センサ端末101で用いている自立電源システム1で動作可能な消費電力で行う必要があるが、自立電源で用いることができるエネルギーが小さい、もしくは、電池で長期間動作させることを鑑み、間欠的に動作する必要がある。無線データ送信量が多くなると、一般に消費電力は大きくなることから、この測定動作は、1〜24時間に1回程度の低頻度にする必要がある。本例では、1時間に1回、測定および送信を行うものとする。
【0038】
そのようにして取得された測定データ301をデータ収集・分析装置102が受信して分析する。本例では、受信した振動データに対してFFT(Fast Fourier Transform)処理を行い周波数スペクトル302に変換したうえで、測定対象の工場設備の電源がONかOFFか、の信号と併せて、複数の振動スペクトルデータを比較する。
【0039】
図3Bに、ON状態で取得された振動スペクトルデータと、OFF状態で取得された振動のスペクトルデータを比較する概念を示す。図3Bでは2つのデータのみであるが、実際には、それぞれに対して複数回ずつ取得したデータを基に解析するのが望ましい。そして、ON状態とOFF状態のそれぞれの振動スペクトルの差分を分析した結果、装置がONの状態の際にのみ強くなる振動の特徴的な周波数成分303を特定する。
【0040】
図3Cはデータ収集・分析装置102より、抽出した特徴的な周波数成分303の振幅強度を測定する測定パラメータを無線センサ端末101に指示する概念を示す。すなわち、CPU8からの制御により、帯域通過フィルタ回路4は特徴的な周波数成分を含む帯域を通過するように設定され、その出力を振幅値検出回路5、積分回路6を通して、アナログデジタル変換回路7でデジタル値に変換し、その変換した値を無線送信するように設定される。この結果、測定回路部3は、特徴周波数の振動振幅の測定データ304のみを測定し、1点のデータとして送信すれば良くなるため、その消費エネルギーは極僅かとなり、自立電源システム1を用いても、例えば1分に1回の測定頻度で通信することが可能となる。すなわち、多くのスペクトルを含むデータと比較して、低電力に測定を行うことができるため高頻度にデータを取得することが可能となる。
【0041】
このようにして得られた測定データ304は、すなわち、装置の稼動状態を反映した特徴的な周波数の振幅強度であり、振動スペクトルを取得する必要がある初期状態と比較して、その変化を詳細に取得することが可能であるとともに、データ量は減らすことができる。従って、工場設備の詳細な運転状況の把握や、予兆診断などに用いるデータを効率的に収集できる。
【0042】
<4.システム動作詳細>
図1を再度参照して、システムの動作を具体的に説明する。先に述べたように、初期状態(S201〜S202)では振動センサ2で収集したデータを、帯域通過フィルタ回路4、振幅値検出回路5、積分回路6を動作させずに、ほぼそのままアナログデジタル変換器でデジタル信号に変換し、測定データ301としてデータ収集・分析装置102に送信する。測定データ301の量が大きく(例えば16384点)、測定や送信のための消費電力が大きいので、測定や送信の頻度は小さい(例えば1時間に1回)。
【0043】
データ収集・分析装置102では、測定データ301の分析により、測定すべき特徴周波数を決定し、測定パラメータとして無線センサ端末101に送る(S203〜S205)。測定パラメータは、例えば、CPU8に対するコマンドであり、CPU8はコマンドに従って帯域通過フィルタ回路4等の回路の動作設定を行う。無線センサ端末101側が、振幅値検出回路5や積分回路6を備えている場合には、これらの回路の動作要否や動作条件(例えばフィルタ周波数、積分時間)等も、測定パラメータに付加あるいは含めて無線センサ端末101に送る。
【0044】
無線センサ端末101では、受信した測定パラメータに従って各回路の動作設定を行う。定常状態(S206〜S207)では、帯域通過フィルタ回路4を機能させ、特徴周波数を抽出する。通常は特徴周波数は、システムが扱う最高周波数より低いので、測定データ304の量を小さくすることができる(例えば2048点)。測定データ304をアナログデジタル変換回路7でデジタル信号として、データ収集・分析装置102へ送信する。定常状態では、測定や送信のための消費電力が小さいので、測定や送信の頻度は大きくできる(例えば1分に1回)。このとき、特徴周波数に応じて、振動センサ2の出力を制限することもできる。
【0045】
基本的な構成では、測定データ304をそのままデジタル化して送信するが、振幅値検出回路5や積分回路6を追加することもできる。振動は瞬間的な物理現象になるので、振動センサ2で検出する際、サンプリングのタイミングによっては振動を捉えることができない場合がある。よって、特徴周波数を検出後は、ある周波数範囲の振幅を、一定の期間積分した値を収集することで、一定の期間に含まれる振動を再現性高く検出する。このために、振幅値検出回路5によって特徴周波数の振幅を電圧値に変換し、当該振幅の値を積分回路6で積分する。積分処理を行うことにより、特徴周波数の変動がある程度平準化されるとともに、データ量を圧縮することができる。振幅値検出回路5と積分回路6は、通常は定常状態において同時に機能させるように、前述の測定パラメータに基づいてCPU8からのコマンドで制御される。
【0046】
また、測定パラメータに基づくCPU8からのコマンドには、積分時間を制御するためのパラメータを含めてもよい。意味のある振動が、パルス状に入力される場合を想定すると、パルス状の振動と振動の間隔が長い場合は、積分時間を長くすることができる。また、ノイズが多くてSN比が悪い場合などは、積分時間を長くすることが望ましい。このような設定は、データ収集・分析装置102から、測定パラメータに含めあるいは付加して設定することになる。
【0047】
<5.補足>
図3の説明では、特徴周波数は単一として1点のデータのみをデータ収集・分析装置102に送信することにしたが、帯域通過フィルタ回路4により、特徴的な周波数を複数抽出してもよい。あるいは、周波数帯域を限定してもよい。
【0048】
実施例では、設備のON、OFFに基づいて分析を行い、特徴周波数を特定する例を示したが、他にも、正常時と異常時、冷却時と加熱時、新品状態と経年後など、分析のための比較手法は種々あり、特に限定するものではない。
【0049】
なお、本実施例にある帯域通過フィルタ回路4、振幅値検出回路5、積分回路6を制御して行う信号処理は、その一部、もしくは全体をデジタル信号処理として行うことも可能であるが、その場合、振動データをデジタルで詳細かつ相応の量、取得する必要があるため、自立電源システム1で動作可能な低消費電力化は難しくなる恐れがあり、アナログ回路で構成することが望ましい。
【0050】
以上説明したように、従来は、自立電源で動作する程度に無線センサ端末を低電力化した場合、無線通信量を減らすために短いデータ量しか送信することができず、温度、湿度、照度など、利用可能なセンサ種類が、1回の測定で数バイト程度のデータ量で済む物理量に限定されていた。そのため、例えば振動スペクトルの測定のような、比較的短時間で多数回測定が必要なセンサではデータ量が多くなるため、適用できないという課題があった。本発明の実施例では、センサおよび、センサからのアナログ信号から特定周波数のみを取り出すフィルタ回路と、フィルタ回路からの信号出力の強度を、一定時間積分して取得する積分強度取得回路、強度取得回路の出力をデジタルデータに変換するアナログデジタル変換回路、を設ける。さらに、フィルタ回路の通過帯域と積分強度取得回路の積分時間を、無線センサ端末の外部より指示された値に可変な構成とする。
【0051】
このような実施例の構成により、センサ信号の、ある周波数範囲の信号強度を積分した値として取得することを、電力の追加は少なく実現することができ、無線センサ端末のセンサ測定に必要な電力および、無線通信に必要なデータ量を減らすことができる。その結果、振動スペクトルのような比較的短時間で多数回測定が必要とされていたセンサを用いた場合の無線センサ端末の消費電力を削減できる。従来の課題を解決することができる。
【0052】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
101 無線センサ端末
102 データ収集・分析装置
1 自立電源システム
2 振動センサ
3 測定回路部
4 帯域通過フィルタ回路
5 振幅値検出回路
6 積分回路
7 アナログデジタル変換回路
8 CPU
9 無線通信回路
図1
図2
図3A
図3B
図3C