特許第6616291号(P6616291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616291
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/48 20060101AFI20191125BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20191125BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H01L31/04 182
   H01L31/04 112Z
   H01G9/20 103
   H01G9/20 113A
   H01G9/20 111B
   H01G9/20 111C
   H01G9/20 111Z
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-522941(P2016-522941)
(86)(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公表番号】特表2016-530703(P2016-530703A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】IB2014062680
(87)【国際公開番号】WO2015001459
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年4月24日
(31)【優先権主張番号】13174589.5
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514095985
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク フェデラル ドゥ ローザンヌ(エーペーエフエル)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】イエラ アスワニ
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド カジャ ナゼールディン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル グレッツェル
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−204275(JP,A)
【文献】 特開2003−151355(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/050222(WO,A1)
【文献】 特表2013−526003(JP,A)
【文献】 米国特許第05871579(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0084008(US,A1)
【文献】 ETGAR, Lioz et al.,"Mesoscopic CH3NH3PbI3/TiO2 Heterojunction Solar Cells",JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2012年,Vol.134,p.17396-17399
【文献】 LEE, Michael M. et al.,"Efficient Hybrid Solar Cells Based on Meso-Superstructured Organometal Halide Perovskites",SCIENCE,2012年,Vol.338,p.643-647
【文献】 JAMES 他,“Low-temperature processed meso-superstructured to thin-film perovskite solar cells”,Energy & Environmental Science,2013年 3月28日,6,p1739-1743
【文献】 KOJIMA, Akihiro et al.,"Organometal Halide Perovskites as Visible-Light Sensitizers for Photovoltaic Cells",JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2009年,Vol.131,pp.6050-6051
【文献】 CHOI, Hongsik et al.,"The effect of TiCl4-treated TiO2 compact layer on the performance of dye-sensitized solar cell",Current Applied Physics,2012年,Vol.12,pp.737-741
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48
ACS PUBLICATIONS
SCIENCE
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体太陽電池の製造方法であって、該方法は、
− 集電体を含む層を提供する工程と、
− 金属酸化物層を塗布する工程であって、前記金属酸化物層が1〜40nmの厚さを有する前記工程と、
− 有機−無機ペロブスカイトを含む増感剤層を塗布する工程であって、前記増感剤層は前記金属酸化物層に直接接触している前記工程と、
− 正孔輸送層を塗布する工程と、
− 対向電極を提供する工程とを含み、
前記金属酸化物層は、(a)前記集電体、(b)任意のコンパクトな金属酸化物下地層及び(c)任意のナノ多孔性足場層から選択される1つの上に塗布され、前記金属酸化物層を塗布する工程から増感剤層を塗布する工程までの間及びその工程の後、温度が100℃未満に維持されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法中に、太陽電池、又は少なくとも前記集電体と前記金属酸化物層とを含む部分的に組み立てられた太陽電池が、一貫して及び連続して、100℃未満の温度に曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物層が100℃を超える温度に曝露されず、及び/又は前記金属酸化物層が焼結されない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属酸化物層が前記集電体上に、及び/又はコンパクトな金属酸化物下地層上に、直接堆積される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記集電体を含む層が導電性支持体層であり、好ましくは導電性ガラス及び導電性プラスチックから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属酸化物層が化学浴堆積(CBD)により塗布される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属酸化物層が、適宜、(a)前記集電体、(b)前記任意のコンパクトな金属酸化物下地層及び(c)前記任意のナノ多孔性足場層から選択される1つを、TiCl4を含む溶液に曝露することにより塗布される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記増感剤層が有機−無機ペロブスカイトを含み、前記増感剤層を塗布する工程が、
− 1種以上の2価又は3価の金属の塩を含む膜を塗布及び/又は堆積する工程、及び
− 前の工程で得られた膜を、溶媒中に1種以上の有機アンモニウム塩を含む溶液に曝露及び/又は接触させ、それによって、有機−無機ペロブスカイトを含む層を得る工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1種以上の2価又は3価の金属の塩がそれぞれ式MX2及びNX3
(ここで、Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、及びYb2+からなる群から選択される2価金属陽イオンであり、
Nは、Bi3+及びSb3+からなる群から選択され、
いずれのXも、独立して、Cl-、Br-、I-、NCS-、CN-、及びNCO-から選択される。)
を有し、
前記有機アンモニウム塩は、AX、AA′X2、及びBX2
(A及びA′は、独立して、N含有ヘテロ環及び環系を含む、1級、2級、3級又は4級有機アンモニウム化合物から選択される有機1価陽イオンから選択され、A及びA′は、1〜60個の炭素及び1〜20個のヘテロ原子を有し、そしてBは、1〜60個の炭素及び2〜20個のヘテロ原子を有し、2つの陽性荷電した窒素原子を有する、1級、2級、3級、又は4級有機アンモニウム化合物から選択される有機2価陽イオンである。)
から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法であって、前記金属酸化物層上に1種以上の2価又は3価の金属の塩を含む膜を塗布及び/又は堆積する工程は、1種以上の2価又は3価の金属の塩を含む溶液からの膜を塗布する工程を含み、前記溶液は、P及びYの塩を更に含み、ここでPは、無機及び有機陽イオンから選択され、Yは、Cl-、Br-、及びI-から選択され、Pが2価又は3価の陽イオンである場合、対応する数のYが存在して、前記塩中のPの陽イオン性電荷を補償する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光陽極、太陽電池、及びその製造方法とプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜第三世代の光発電(PV)を使用して太陽エネルギーを電流に変換することが、過去20年間広く検討されている。無機/有機発光ハーベスタ、酸化還元電解質/固体正孔導体、及び対向電極を有するメソ多孔性光陽極からなるサンドイッチ/モノリシック型PV装置は、製造の容易さ、材料選択の柔軟性、費用対効果の高い生産のために、大きな関心を集めている(Gratzel,M.Acc.Chem.Res.2009,42,1788−1798)。最近、スズ(CsSnX)又は鉛(CH3NH3PbX3)に基づく有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト(Etgar,L.et al.;J.Am.Chem.Soc.2012,134,17396−17399)が、光ハーベスタとして、伝統的な金属−有機錯体又は有機分子の代わりに導入されている。鉛ペロブスカイトは、液体電解質ベースの装置で6.54%、一方固体装置で12.3%の電力変換効率(PCE)を示す(Noh,J.H.et al.;Nano Lett.2013,dx.doi,org/10.1021)。
【0003】
未公開の欧州特許出願第12179323.6号は、導電性支持層、表面増足場構造、足場構造上に設けられた1つ以上の有機−無機ペロブスカイト層、及び対向電極を含む固体太陽電池を開示した。この参考文献に報告された太陽電池では、有機正孔輸送材料又は液体電解質の非存在下で、顕著な変換効率が達成され、後者が任意になった。
【0004】
TiO2上のCH3NH3PbX3の堆積のための最適なプロトコルは、前駆体(CH3NH3X及びPbX2、X=Cl、Br、I)溶液を、メソ多孔性TiO2膜上にスピンコーティングし、次に低温アニーリング工程を行うことにより達成される。このアニーリングプロセスは、結晶性CH3NH3PbX3を与える(上記に引用したNoh et al.)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願第12179323.6号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gratzel,M.Acc.Chem.Res.2009,42,1788−1798
【非特許文献2】Etgar,L.et al.;J.Am.Chem.Soc.2012,134,17396−17399
【非特許文献3】Noh,J.H.et al.;Nano Lett.2013,dx.doi,org/10.1021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液体電解質を含む装置の欠点、例えば溶媒蒸発の問題、及び特に温度サイクル試験の長期的なシーリングの困難さに起因する太陽電池への水の浸透などの問題に対処する。
【0008】
本発明はまた、有機正孔導体を含む装置で観察される不完全な細孔充填の欠点に対処する。具体的には、正孔導体は、多孔性半導体アノードを用いた色素増感太陽電池のメソ多孔性膜を介しては、均等に浸透しない傾向がある。更に本発明は、従来技術で使用される導体で観察される低い正孔移動度(これは、液体電解質と比較して低い)の問題に対処する。
【0009】
上記問題に加えて、低温加工メソ多孔性金属酸化物が、色素増感太陽電池のために広範囲に開発されている。しかし、今日まで最も効率的な装置でも、依然として500℃で数回の熱処理を必要とする。既にハロゲン化物ペロブスカイト吸収体系の太陽電池では、TCO(透明導電性酸化物)上のコンパクト層と多孔性電子輸送酸化膜との両方のために、高温焼結工程が使用されていた。これは基本的に、太陽電池の製造のための柔軟なプラスチック基板の利用を制限する。処理温度を低下させることは、任意の可撓性基板上に太陽電池を用いる場合の、及びマルチ接合太陽電池を加工する場合の、コストと汎用性を低下させるという両方の点で重要である。
本発明は、上記された問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
注目すべきことに、いくつかの態様において、本発明者らは、太陽電池用の基板としてプラスチックの使用を可能にする、比較的低温での製造プロセスで太陽電池を製造するためのプロセスを提供した。更に、いくつかの態様において本発明者らは、最先端の装置と比較して、平坦な及び/又は平滑な半導体層を含む太陽電池を提供する。驚くべきことに本発明の太陽電池は、高い電力変換効率を達成する。更にいくつかの態様において、本発明者らは、驚くべきことに、太陽電池を製造するための新しい方法並びに新規な太陽電池を提供する。
【0011】
ある態様において本発明は、太陽電池を製造するための方法であって、集電体を含む層を提供する工程と、金属酸化物層を塗布する工程と、前記金属酸化物層上に増感剤層を塗布する工程と、対向電極を提供する工程とを含む、前記方法を提供する。
【0012】
ある態様において本発明は、太陽電池を製造するための方法であって、集電体を含む層を塗布する工程と、前記集電体と電気的接触をするように金属酸化物層を塗布する工程と、前記金属酸化物層上に増感剤層を塗布する工程と、対向電極を提供する工程とを含む、前記方法を提供する。
【0013】
ある態様において本発明は、太陽電池を製造するための方法であって、集電体を含む層を塗布する工程を含む方法を提供する工程と、前記集電体と電気的接触をするように金属酸化物層を塗布する工程であって、前記金属酸化物層は200nm以下の厚さを有する工程と、前記金属酸化物層上に増感剤層を塗布する工程と、対向電極を提供する工程とを含む、前記方法を提供する。
【0014】
ある態様において本発明は、固体太陽電池の製造方法であって、集電体を含む層を塗布する工程と、200nm以下の厚さを有する金属酸化物層を塗布する工程と、増感剤層を塗布する工程と、対向電極を提供する工程とを含み、ここで、前記金属酸化物層は、(a)集電体の直接上、(b)任意のコンパクトな金属酸化物の下地層、(c)任意のナノ多孔性足場層上、から選択される1つの上に塗布され、前記金属酸化物層を塗布する工程から増感剤層4を塗布する工程までの間及びその工程の後、温度が300℃未満に維持されることを特徴とする、前記方法を提供する。好ましくは本方法は、正孔輸送層を塗布する工程を含む。
【0015】
ある態様において本発明は、固体太陽電池の製造方法であって、少なくとも2つの層を含む前駆体装置を得るように、金属酸化物層を、(a)集電体の直接上、(b)任意のコンパクトな金属酸化物の下地層、(c)任意のナノ多孔性足場層上、から選択される1つの上に塗布する工程と、前記前駆体装置の金属酸化物層上に増感剤層を塗布する工程と、前記太陽電池を得るように、対向電極(5)を提供する工程とを含み、前記太陽電池の製造方法中、前記金属酸化物層3は300℃未満の温度に維持されることを特徴とする、前記方法を提供する。
【0016】
ある態様において本発明は、固体太陽電池の製造方法であって、集電体を含む層を塗布する工程と、グラム当たり表面積比が≦80g/m2、好ましくは≦70g/m2、より好ましくは≦60g/m2を有する金属酸化物層を塗布する工程と、前記金属酸化物層上に増感剤層を塗布する工程と、前記太陽電池が得られるように対向電極を提供する工程とを含む、前記方法を提供する。好ましくは本方法は、正孔輸送層を塗布する工程を含む。
【0017】
ある態様において本発明は、集電体と、半導体と、金属酸化物層と、及び/又はブロッキング層と、増感剤層と、対向電極と、及び/又は金属層と、を含む前記太陽電池を提供する。
【0018】
ある態様において本発明は、集電体と;200nm未満の厚さを有する金属酸化物層及び/又はブロッキング層と;前記半導体、金属酸化物層、及び/又はブロッキング層と接触している増感剤層と;対向電極及び/又は金属層と、を含む太陽電池であって、前記増感剤は、有機−無機ペロブスカイトを含む、前記太陽電池を提供する。
【0019】
ある態様において本発明は、集電体と;コンパクトな金属酸化物層及び/又はコンパクトなブロッキング層と;前記半導体、金属酸化物層、及び/又はブロッキング層と接触している増感剤層と;対向電極及び/又は金属層と、を含む太陽電池であって、前記増感剤は、有機−無機ペロブスカイトを含む、前記太陽電池を提供する。
【0020】
ある態様において本発明は、集電体と;グラム当たり表面積比が70m2/g未満を有する、半導体、金属酸化物層、及び/又はブロッキング層と;前記半導体、金属酸化物層、及び/又はブロッキング層と接触している増感剤層と;対向電極及び/又は金属層と、を含む太陽電池であって、前記増感剤は、有機−無機ペロブスカイトを含む、前記太陽電池を提供する。
【0021】
ある態様において本発明は、集電体と、金属酸化物層及び/又はブロッキング層と、前記金属酸化物層と接触している増感剤層と、及び対向電極及び/又は金属層と、を含む固体太陽電池であって、前記金属酸化物層が200nm未満の厚さを有する、前記太陽電池を提供する。
【0022】
ある態様において本発明は、集電体と;金属酸化物層と;前記金属酸化物層と接触している増感剤層と;及び対向電極及び/又は金属層と、を含む固体太陽電池であって、前記金属酸化物層は、200nm未満の厚さと、グラム当たり表面積比が≦80g/m2、好ましくは≦70g/m2、より好ましくは≦60g/m2を有する、前記太陽電池を提供する。好ましくは、前記増感剤層と前記対向電極との間に正孔輸送層が存在する。
【0023】
ある態様において本発明は、200nm未満の厚さを有する金属酸化物層と;及び前記金属酸化物層と接触している増感剤層とを含む光陽極であって、前記増感剤が有機−無機ペロブスカイトを含む、前記光陽極を提供する。
【0024】
ある態様において本発明は、コンパクトな金属酸化物層と;及び前記コンパクトな金属酸化物層と接触している増感剤層と、を含む光陽極であって、前記増感剤が有機−無機ペロブスカイトを含む、前記光陽極を提供する。
【0025】
本発明のさらなる態様及び好適な実施態様は、以後の本明細書の部分及び添付の請求の範囲で定義される。本発明のさらなる特徴及び利点は、後述の好適な実施態様の説明から当業者には明らかであろう。例示のために、図面が参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a図1aは、本発明の実施態様の太陽電池の構造を図式的に示す。
図1b図1bは、本発明の実施態様による装置の電流密度−電圧曲線を示す。装置は、開回路電位(VOC)、短絡電流密度(Jsc)と充填率が、それぞれ922mV、11.5mA/cm2、及び0.68であり、7.3%の電力変換効率(PCE)を与える、ことを示す。
図2図2は、本発明の方法の異なる実施態様に従って、様々な方法で得られた増感剤層のX線回折図を示す。上(赤)に示す回折図は、1M PbI2溶液が最初の工程で堆積された増感剤である。下(黒)では、1M PbI2と0.025M LiIとの混合物を堆積させることにより、ペロブスカイトが得られた。上の回折図では、残留PbI2の存在を見ることができる。
図3a図3aとbは、本発明のいくつかの実施態様の処理工程に従って、1M PbI2または同等物(3a)と1M PbI2+0.025M LiI溶液(3b)を使用して、スピンコーティングにより得られた、CH3NH3PbI3の平面図を示すSEM画像である。
図3b図3aとbは、本発明のいくつかの実施態様の処理工程に従って、1M PbI2または同等物(3a)と1M PbI2+0.025M LiI溶液(3b)を使用して、スピンコーティングにより得られた、CH3NH3PbI3の平面図を示すSEM画像である。
図4a図4a〜gは、本発明の太陽電池の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
図4b図4a〜gは、本発明の太陽電池の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
図4c図4a〜gは、本発明の太陽電池の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
図4d図4a〜gは、本発明の太陽電池の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
図4e図4a〜gは、本発明の太陽電池の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
図4f図4a〜gは、本発明の太陽電池の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
図4g図4a〜gは、本発明の太陽電池の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
図5a図5aとbは、本発明の太陽電池を製造するための前駆体装置の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
図5b図5aとbは、本発明の太陽電池を製造するための前駆体装置の種々の異なる実施態様を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、光陽極及び太陽電池及び新しい太陽電池を製造するためのいくつかの新しい方法に関する。本発明はまた、新規光陽極及び太陽電池に関する。いくつかの実施態様において、本発明の太陽電池は好ましくは、例えば新規デザイン、構造、及び/又は構成を有する。
【0028】
本発明の太陽電池は好ましくは、集電体及び/又は、集電体を含む層を含む。本発明の方法は好ましくは、集電体、及び/又は集電体を含む層を塗布する工程を含む。
【0029】
ある態様において、本発明の太陽電池は好ましくは集電体を含む。図4a〜4g及び図5a〜5bでは、集電体は一般に参照番号2により示される。図1では、FTOは集電体を含む。集電体は、例えば層の形態で提供してもよい。集電体は好ましくは、連続層を形成する。集電体は好ましくは、太陽電池により発生した電流(及び/又は電子)を収集し、これを外部回路に伝導するように改変される。集電体は好ましくは、太陽電池の電気的前面接触を提供する。
【0030】
こうして集電体は好ましくは、例えば金属、ドープ金属、導電性金属酸化物、又はドープ金属酸化物のような、導電性有機材料又は導電性無機材料などの導電性材料又は半導体材料を含む。更に後述されるように、いくつかの好適な実施態様において、集電体は、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga23、ZnO−AlO3、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、SrGeO3、及び酸化亜鉛、又はこれらの組合せから選択される材料を含む。
【0031】
集電体は好ましくは、作用電極又は光陽極で発生した電流を収集し伝達するために構成される。従って集電体は好ましくは、作用電極又は光陽極と電気的接触をしている。
【0032】
本発明の目的において、「電気的に接触している」という表現は、電子又は正孔が、1つの層から電気的に接触している他の層へ、少なくとも1つの方向に進むことを意味する。具体的には、電磁放射線に曝露された作業装置中の電子流を考慮すると、電子及び/又は正孔が流れる層は、電気的に接触していると考えられる。「と電気的に接触している」という表現は、電子及び/又は正孔が、層間の任意の方向に自由に移動できることを、必ずしも意味しないか、好ましくは意味しない。
【0033】
ある実施態様において、本発明の太陽電池は好ましくは1つ又はそれ以上の支持体層を含む。支持体層は好ましくは、装置の物理的支持を提供する。更に支持体層は好ましくは、物理的損傷に対する防御を提供し、従って、例えば太陽電池の2つの主要面の少なくとも片側の上で、外部に対する太陽電池の境界線を定める。図4b〜c及び4e〜g及び図5bにおいて、参照番号8は支持体層を指す。ある実施態様において太陽電池は、支持体層の上に異なる層を次々に一連の工程で適用することにより構築することができる。こうして支持体層はまた、太陽電池の作製のための出発支持体としても機能する。支持体層は、太陽電池の1つのみの上又は2つの相対する面の上に提供することができる。
【0034】
支持体層が存在する場合、これは、光が太陽電池を通過することを可能にするために、好ましくは透明である。もちろん支持体層が、電気エネルギーに変換すべき光に直接曝露されない太陽電池の側面に提供される場合、支持体は必ずしも透明である必要は無い。しかし、エネルギー変換のために光に曝露されるように設計及び/又は改変される側面に提供されるすべての支持体層は、好ましくは透明である。「透明」とは、可視光線の少なくとも一部、好ましくはその主要な部分に対して透明であることを意味する。好ましくは導電性支持体層は、可視光線のすべての波長又はタイプに対して実質的に透明である。更に導電性支持体層は、例えばUV及びIR放射線などの非可視光線に対して透明でもよい。
【0035】
便利には、及び本発明の好適な実施態様に従って、導電性支持体層9が提供され、この導電性支持体層は、前記したように支持体として並びに集電体2として機能する。こうして、導電性支持体層は、支持体層8及び集電体2を代替するか又は含有する。導電性支持体層9は、好ましくは透明である。導電性支持体層の例は、導電性ガラス又は導電性プラスチックであり、これらは商業的に入手可能である。例えば、導電性支持体層は、プラスチック又はガラスなどの透明基板上で被覆された、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga23、ZnO−AlO3、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、SrGeO3、及び酸化亜鉛から選択される材料を含む。図4b、c、e、f、及びgにおいて、参照番号9は、導電性支持体層、具体的には、支持体8並びに集電体2の両方を含む導電性ガラス又はプラスチックを指す。図1において、FTOは導電性ガラスを指すが、導電性プラスチックでもよい。
【0036】
本明細書の他の箇所でより詳細に特定されるように、本発明のプロセスは有利には、焼結無しで行うことができる。例えば、太陽電池を製造する全プロセスは、400℃未満、好ましくは300℃未満、より好ましくは200℃未満、又更には150℃未満の温度で行うことができる。これは、太陽電池が、プラスチックを支持体として使用して、得られるという利点を有する。従って本発明は、例えばプラスチック支持体、好ましくは支持体として導電性プラスチックを含む太陽電池を包含する。
【0037】
別の実施態様において、集電体はまた、例えばチタン又は亜鉛箔などの導電性金属箔により提供されることができる。特に、不透明な導電性材料は、装置により捕捉される光に曝露されない装置の側面上で、集電体として使用することができる。このような金属箔は、例えばSeigo Ito et al,Chem.Commun.2006,4004−4006に開示されているような可撓性装置で、集電体として使用されている。
【0038】
本発明の方法は、金属酸化物層を提供する工程及び/又は塗布する工程を提供する。この装置はいくつかの金属酸化物層を含むが、この層はまた、第1の酸化物層とも呼ばれる。これは、この層が一連の工程で最初に適用されることは意味せず、これが、太陽電池の他の層又は成分より重要であることを意味するものでもない。「第1の」という用語は、単にこの層を、装置中に存在し、「第2」、「第3」などの金属酸化物層と呼ばれるかもしれない他の金属酸化物層から区別するためにのみ使用される。この金属酸化物層及び/又は半導体層は、図4a〜4g及び5a〜bで参照番号3で示される。図1では、金属酸化物層3は、一連の丸(○)として示される。
【0039】
ある実施態様において、金属酸化物層3は、Si、SiO2、TiO2、Al23、Ga23、Y23、ln23、ZrO2、HfO2、SnO2、Fe23、ZnO、WO3、MoO3,Nb25、CdS、ZnS、PbS、Bi23、CdSe、CdTe、SrTiO3、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2,CaTiO3、SrTiO3、BaSnO3、Zn2Sn04、及びこれらの組合せを含むか、又はこれらから本質的になる。
【0040】
ある好適な実施態様において、金属酸化物層3は、Si、TiO2、SnO2、Fe23、ZnO、WO3、Nb25、CdS、ZnS、PbS、Bi23、CdSe、CdTe、SrTiO3、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、及びこれらの組合せから選択される1種以上、から本質的になるか、又はこれらからなる。
【0041】
金属酸化物層3の更に好適な材料は、例えばSi、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb25、及びSrTiO3である。最も好適な実施態様において、金属酸化物層は、TiO2を含むか、これから本質的になるか、及び/又はこれからなる。好ましくはTiO2は、アナターゼであるか又はアナターゼを含む。TiO2は、ルチルを含むか、又はルチルからなっていてもよい。本明細書の目的において「から本質的になる」という表現は、例えばドーパントなどの添加剤の存在を包含する。
【0042】
好ましくは、金属酸化物層又は第1の金属酸化物層は半導体である。従ってこの層は、金属酸化物層とも呼ばれる。
【0043】
金属酸化物層は、好ましくは比較的薄い。ある実施態様において、金属酸化物層3は、600nm未満の厚さを有する。好ましくは前記金属酸化物層は、300nm未満、好ましくは200nm未満、150nm未満、100nm未満、より好ましくは70nm未満、更により好ましくは50nm未満、及び最も好ましくは30nm未満の厚さを有する。
【0044】
ある好適な実施態様において、金属酸化物層3は、1〜40nm、好ましくは3〜35nm、より好ましくは5〜30nm、更により好ましくは7〜25nm、最も好ましくは10〜20nmの厚さを有する。高効率を有する太陽電池が、このような薄い金属酸化物層で得られることは、驚くべきことである。
【0045】
ある実施態様において、金属酸化物層3は、ブロッキング層であり、及び/又はブロッキング層として機能する。例えばブロッキング層3は、電子が増感剤4から金属酸化物層3の下の層に通過することを可能にし、これは、例えば集電体2、下地層13、及びメソ多孔性足場層12から選択することができる。しかし金属酸化物層は好ましくは、反対方向への電子の流れ及び/又は電荷再結合を阻害又は防止する。例えば、金属酸化物層3は、電子が集電体2から増感剤層4へ、及び/又は正孔輸送層7(存在する場合)へ通過することを阻害する。
【0046】
いくつかの実施態様において、金属酸化物層3は、例えば色素増感太陽電池(DSC)を製造するための半導体層の堆積について報告されている標準的な手順に従って、任意の適切な方法で適用される。好適な実施態様において、金属酸化物層3は、例えば化学的及び/又は物理的な堆積プロセスによる薄膜堆積法によって塗布される。化学的堆積は、例えば、メッキ、化学浴堆積(CBD、化学溶液堆積法CSDと同じである)、スピンコーティング、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化CVD、原子層堆積(ALD)を包含する。物理的堆積は、熱蒸着法、スパッタ法、パルスレーザー蒸着、陰極アーク蒸着、及び電子噴霧蒸着などの物理蒸着法を包含する。
【0047】
ある好適な実施態様において、前記金属酸化物層3は、低温堆積法により塗布される。「低温」は好ましくは、400℃未満(又はこれを超えない)、好ましくは300℃未満、より好ましくは200℃未満、更により好ましくは150℃未満、例えば130℃未満、最も好ましくは更に100℃未満の温度を指す。
【0048】
好ましくは前記金属酸化物層3は、100℃、120℃、130℃、150℃、200℃、300℃、又は更には400℃を超える熱処理を必要としないプロセスにより適用される。このような高温は一般的に、例えば先行技術の装置において半導体ナノ粒子をアニーリングするのに必要とされる焼結工程で使用される。例えば一般的な先行技術の装置において、金属酸化物粒子、特にナノ粒子、例えばTiO2ナノ粒子は、スクリーン印刷により堆積されるか、又は例えばドクターブレード法とその後の焼結工程により堆積される。高温処理を含むこのような堆積工程は好ましくは、本発明の方法のいくつかの実施態様では存在しない。
【0049】
本発明の方法のいくつかの実施態様において、焼結の工程は存在しない。「焼結」はまた、「燃焼」及び「アニーリング」として知られている。いくつかの実施態様において、本発明の装置は、焼結された金属酸化物層が欠如している。
【0050】
好適な実施態様において、前記金属酸化物層3は、原子層堆積(ALD)及び化学浴堆積(CBD)から選択される方法により塗布される。好ましくは金属酸化物層3は、CBDによって塗布される。CBDは典型的には、金属酸化物層について他の箇所で指定された厚さを有する層を与える。CBDは典型的には、コンパクトな層を与える。多孔性表面上に堆積される時、CBDは一般的に、堆積が行われる層の空隙率を維持するか、又はいくつかの場合にはわずかに低下させる。
【0051】
好ましくは前記CBDは、300℃未満、好ましくは200℃未満、より好ましくは150℃未満、例えば130℃未満又は120℃未満、最も好ましくは100℃未満の温度で行われる。
【0052】
ある実施態様において、前記金属酸化物層3は、半導体及び/又は金属酸化物の1つ又はそれ以上の前駆体を含む溶液を用いる処理により塗布される。金属酸化物層を形成するためのすべての成分が存在する場合、金属酸化物層は溶液中で直接形成される。あるいは前記金属酸化物層3は一連の工程により塗布され、ここで、金属酸化物が塗布される層は、2つ又はそれ以上の異なる溶液又は浴に連続して浸漬されるか、又は溶液に浸漬されガスに曝露されて、すべての成分を提供して層3を形成する。
【0053】
ある好適な実施態様において、前記金属酸化物層3は、金属酸化物4の前駆体を含む溶液を用いる処理により塗布される。例えば、前駆体はTiCl4である。例えば、出発層又は表面、例えば導電層を含む表面は、TiCl4を含んでよい前駆体溶液中に浸漬される。
好ましくは溶液は、約60〜90℃、例えば65〜80℃まで加熱される。例えば、出発層又は表面は、前駆体溶液への浸漬とそこからの取り出しが繰り返され、前駆体溶液からの取り出し後に洗浄工程が行われる。洗浄工程は、水及び/又はアルコールによるリンスを含んでよく、例えば、洗浄溶液を含む浴中への短時間の浸漬を含んでよい。ある実施態様において、前駆体溶液はT1Cl4の水溶液である。
【0054】
上記したようにCBDにより得られる層は、金属酸化物層4について他の箇所で特定された厚さ、例えば最大100nmの厚さを有してもよいが、一般的には<70nm、例えば<50nmの厚さが得られる。
【0055】
本発明の態様の特殊性は、太陽電池が、本明細書の他の箇所で定義される「低温」で製造することができるという事実である。しかし、他の態様において、高温処理、例えば焼結は排除されない。いくつかの実施態様において、少なくとも本発明の方法の特定の時間枠内で又は特定の工程中に、高温処理は存在しない。これらの時間枠又は期間は好ましくは、本発明の他の箇所で規定される。他の実施態様において、製造の全工程を通して、高温処理は存在しない。後者の実施態様は、プラスチック系の太陽電池の製造を可能にする。プラスチックは約200℃超又は150℃超の温度で劣化するため、本発明の方法において好ましくはこれらの温度を超えてはならない。これらの説明は、太陽電池自体の製造プロセスに関し、本発明の太陽電池を製造するために使用される出発材料が高温で得られることは排除しない。
【0056】
ある実施態様において、前記金属酸化物層3は焼結される。好ましくは、太陽電池を製造する全方法中に、本明細書の他の箇所で特定される焼結工程及び/又は熱処理は存在しない。
【0057】
好ましくは、本発明の方法において、400℃より高温への加熱を含む処理工程は存在しない。好ましくは、300℃より高温への加熱を含む処理工程は存在しない。より好ましくは、200℃より高温への加熱を含む処理工程は存在しない。更により好ましくは、150℃より高温への加熱を含む処理工程は存在しない。最も好ましくは、本発明の方法において、100℃より高温への加熱を含む処理工程は存在しない。「本発明の方法において」という表現は、前記金属酸化物層3の塗布から対向電極5の適用までの少なくともすべての工程を包含する。この表現はまた、具体的に言及されない任意の処理工程を指し、ここで、上記で定義された高温加熱工程も存在しない。
【0058】
ある実施態様において、前記金属酸化物層3は、400℃超の温度、好ましくは300℃超、より好ましくは200℃超、最も好ましくは150℃超の温度に供されない。最も好ましくは、前記金属酸化物層3は、130℃超の温度、特に100℃超の温度に供されない。これは、太陽電池のいくつかの他の部分が、装置の製造中にこのような高温に曝露される可能性を排除しない。
【0059】
ある実施態様において、太陽電池の製造中及び/又は本発明の方法中に、前記金属酸化物層3は、絶えず及び連続して、400℃以下の温度、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、更により好ましくは150℃以下、例えば130℃以下、最も好ましくは100℃以下の温度に維持される。
【0060】
本発明の方法は一般的に、前記対向電極2上に、好ましくは導電性支持体9上に層を塗布することで開始され、この層は好ましくは金属酸化物層であるが、別の材料でもよい。例えば後に定義される前駆体装置の製造は、本発明の方法の開始である。本発明の方法は、対向電極を適用することで終了してもよい。しかし太陽電池は好ましくは、製造が完了後も、本明細書で特定される高温には曝露されない。「全方法」という表現は、太陽電池の開始から完了までの全期間とすべての処理工程を包含し、本発明の目的に必須ではなく、従って本明細書で特定されない工程を含む。
【0061】
好適な実施態様において、本発明の太陽電池を製造するための全方法は、400℃超、好ましくは300℃超、より好ましくは200℃超、最も好ましくは150℃超の温度に加熱する工程を除外する。最も好ましくは、全方法は、130℃超、具体的には100℃超まで加熱する工程を除外する。
【0062】
好適な実施態様において、本発明の太陽電池を製造するための全方法は、400℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、更により好ましくは150℃以下、例えば130℃以下、及び/又は120℃以下、最も好ましくは100℃以下の温度で行われる。すなわち、本発明の太陽電池を製造するための全プロセス中、温度は、前記した温度未満及び/又は前記した温度を超えないように維持される。
【0063】
ある実施態様において、前記金属酸化物層3を塗布する工程中及びこの工程後から、増感剤層4を塗布する工程の前まで及びこの工程中に、製造すべき太陽電池は、400℃未満、好ましくは300℃未満、更により好ましくは200℃未満、150℃未満、130℃未満、最も好ましくは100℃未満の温度に、好ましくは本発明の全方法中、一貫して維持される。
【0064】
ある実施態様において、製造すべき太陽電池及び/又は前駆体装置は、400℃未満、好ましくは300℃未満、更により好ましくは200℃未満、150℃未満、130℃未満、最も好ましくは100℃未満の温度に、本発明の全方法中、一貫して維持される。
【0065】
本明細書の目的において、「製造すべき太陽電池」又は「部分的に組み立てられた装置/太陽電池」という表現は 本発明の製造方法の種々の段階に存在する部分的に組み立てられた太陽電池を指す。「製造すべき太陽電池」は、まだ機能性ではない。例えば「製造すべき太陽電池」は、集電体2及び金属酸化物層3を含むが、太陽電池のすべての他の部分が欠如していることがある。2、3、及び4を含むが5が欠如した部分的に組み立てられた太陽電池もまた、本明細書の目的において「製造すべき太陽電池」である。後に定義される「前駆体装置」もまた、「製造すべき太陽電池」に包含される。
【0066】
本明細書の目的において、「前駆体装置」は製造すべき太陽電池であり、少なくとも集電体2と金属酸化物層3とを含むが、増感剤層4と対向電極5が欠如している。従って「前駆体装置」はまた、任意の電荷移動層7が欠如している。例示的前駆体装置11及び11.1は、図5a及び5bに示される。
【0067】
本発明は、どこに及び/又はどの層に金属酸化物層3が塗布、例えば堆積されるかについてのいくつかの実施態様を包含する。好適な実施態様において、金属酸化物層3は、少なくとも集電体2及び/又は導電性支持体9を含む表面及び/又は層上に塗布される。
【0068】
ある実施態様において、金属酸化物層3は、(a)集電体2の直接上、(b)任意のコンパクトな金属酸化物層13、(c)任意のナノ多孔性金属酸化物層12上、から選択される1つの上に塗布される。
【0069】
選択肢(b)と(c)の場合、前記下地層及び足場は、好ましくは少なくとも集電体2及び/又は導電性支持体9、更に前記下地層13及び/又は前記足場層12を含む部分的に組み立てられた装置の一部である。
【0070】
好適な実施態様(前記選択肢(a))において、金属酸化物層3は前記集電体2の上、例えば導電性支持体9上に塗布される。この実施態様において、前記集電体2と前記金属酸化物層3との間の他の金属酸化物層及び/又は足場は、本発明の太陽電池には存在しない。この実施態様において、金属酸化物層3は、前記集電体層2と直接接触している。このような実施態様は、図4a〜dに例示されている。他の箇所で特定されるように、この実施態様では、金属酸化物層3は一般的に、比較的平滑な非多孔性表面を形成するであろう。
【0071】
好適な実施態様(前記選択肢(b))において、金属酸化物層3は、任意のコンパクトな金属酸化物層13上に塗布される。任意のコンパクトな金属酸化物層13は、図4gに示される実施態様中に存在する。この場合、金属酸化物層3は第1の金属酸化物層であり、コンパクトな金属酸化物層13は第2の金属酸化物層を形成することができる(ただし、第2の金属酸化物層は一般的に、装置製造中に第1の金属酸化物層3の前に塗布される)。コンパクトな金属酸化物層13はまた、コンパクトな金属酸化物下地層とも呼ばれる。第1の金属酸化物層3はまた、コンパクトな金属酸化物でもよい。
【0072】
コンパクトな金属酸化物下地層13が存在する場合、後者は、例えばDSC中の下地層について普通であるように堆積することができる。下地層13は好ましくは、1〜120nm(ナノメートル)の厚さを有する。これは、例えば原子層堆積ALD又はCBDにより塗布することができる。この場合、この層の厚さは、好ましくは1nm〜25nmである。下地層はまた、典型的に好ましくは10nm〜120nmの厚さをもたらす、スプレー熱分解により堆積させることもできる。本発明の装置及び方法のいくつかの態様において、下地層13は、例えば金属酸化物層3を塗布する前に焼結される。いくつかの他の実施態様において、下地層13は焼結されない。
【0073】
ある実施態様(前記選択肢(c))において、金属酸化物層3は任意のナノ多孔性足場層12上に塗布される。ナノ多孔性足場層12を含む太陽電池の実施態様は、図4e及び4f中に示される。図4fでは、ナノ多孔性足場層13は金属酸化物下地層13上に堆積される。図4eでは、ナノ多孔性足場層13は集電体2上に堆積される。
【0074】
足場層13は、存在する場合、好ましくはナノ粒子に基づくか、又はこれを使用して製造される。ナノ粒子は好ましくは、前記集電体及び/又は、存在する場合、下地層上に塗布される。「ナノ粒子」という表現は、任意の形態、具体的には、例えばいわゆるナノシート、ナノカラム、及び/又はナノチューブを有してもよい、粒子又は粒状要素を包含する。アナターゼTiO2から作製されたナノシートは、例えばEtgar et al.,Adv.Mater.2012,24,2202−2206により報告されている。
【0075】
ナノ多孔性(メソ多孔性)足場は、例えばDSC中の多孔性半導体(例えばT1O2)層の製造について一般的な、スクリーン印刷又はスピンコーティングにより製造することができる。例えば、前記で引用されたEtgar et al.を参照されたい。ナノ多孔性半導体足場構造及び層は、例えば欧州特許出願公開第0333641号明細書及び欧州特許出願公開第0606453号明細書に開示されている。
【0076】
本発明の装置及び方法のいくつかの態様において、足場層12は、例えば金属酸化物層3を塗布する前に焼結される。いくつかの他の実施態様において、足場層13は焼結されない。先行技術においては、ナノ多孔性足場は一般に焼結されることに留意されたい。本発明のいくつかの態様において、焼結されたナノ多孔性足場層は存在しない。いくつかの実施態様において、本発明は非焼結ナノ多孔性足場を包含する。
【0077】
足場層12が存在する場合、これは好ましくは、金属酸化物を含むか又は金属酸化物から作製される。好ましくは足場層は、半導体金属酸化物を含む。層12はまた、金属酸化物足場層とも呼ばれる。コンパクトな金属酸化物下地層13が存在する場合、足場層12はまた、第3の金属酸化物層とも呼ばれる。
【0078】
金属酸化物層3、任意の下地層13(存在する場合)、及び任意のナノ多孔性足場層12は、本明細書の他の箇所で金属酸化物層3について特定されたものと同じ材料から独立して選択された金属酸化物材料を含んでよい。
【0079】
金属酸化物層3、任意の下地層13(存在する場合)、及び任意のナノ多孔性足場層12は、同じか又は異なる材料を含み、及び/又はこれから本質的になってよい。
【0080】
ナノ多孔性足場の存在は任意であるため、本発明は、足場層12が存在しない方法及び装置を包含する。従って、いくつかの実施態様において、太陽電池は「ナノ粒子」に基づき、及び/又はこれから製造される層が欠如し、特に焼結ナノ粒子を含む層が欠如してもよい。
【0081】
当業者には理解できるように、本発明は、平滑な及び/又は平坦な表面上に金属酸化物層3を塗布することを包含する。増感剤は好ましくは前記金属酸化物層3上に堆積されるため、すなわち全光陽極(金属酸化物−増感剤ユニット)は実質的に増加した表面を持たないことを意味するため、これは興味深い。増感剤の堆積に関する好適な実施態様は、更に詳細に後述される。
【0082】
本発明の目的において、「平滑な」又は「平坦な」表面の特徴は、メゾスコピックスケールの表面の構造を指す。例えば、前記で特定された処理工程(a)及び/又は(b)において、金属酸化物層3は、集電体2上又はコンパクトな下地層13上に直接堆積される。集電体2(例えば、導電性支持体層9として提供される)は、例えばナノ多孔性足場層12と比較して、メゾスコピックスケールで平滑な表面を有する。同様に、任意のコンパクトな下地層13は、それを調製する方法に応じて、ある程度の多孔性を示すが、これは明らかに、足場層12よりも多孔性が少ない。
【0083】
本発明のいくつかの態様の驚くべき知見の1つは、平滑な表面上に金属酸化物層を堆積しながら、高い効率を有する太陽電池を得ることができることである。実際、ナノ多孔性足場が成長する前には、DSCは低い変換効率(η)を有し、数(例えば1〜3)パーセントを超えなかった。
【0084】
従って本発明は、金属酸化物層3上に堆積された、増感剤4を含む太陽電池を提供し、ここで、前記金属酸化物層3は非多孔性であり、特に非メソ多孔性又は非ナノ多孔性である。
【0085】
いくつかの実施態様において本発明は、金属酸化物層3上に堆積された増感剤4を含む太陽電池を提供し、ここで、前記金属酸化物層3は、グラム当たり表面積比が≦(未満又は等しい)150m2/g、より好ましくは≦100m2/g、より好ましくは≦80m2/g、より好ましくは≦70m2/g、及び最も好ましくは≦60m2/gである。
【0086】
更に好適な実施態様において、グラム当たり表面積比が≦50m2/g、、≦40m2/g、≦30m2/g、≦20m2/g、≦10m2/g、≦5m2/gである。ある実施態様において、前記グラム当たり表面積比は、20より小さい。
【0087】
グラム当たり表面積比は、BETガス吸収法で測定される比表面積としても知られている。
【0088】
いくつかの実施態様において本発明は、金属酸化物層3上に堆積された増感剤4を含む太陽電池を提供し、ここで前記金属酸化物層3は、空隙率が≦90%、好ましくは≦80%、更により好ましくは≦70%、最も好ましくは≦50%である。好適な実施態様において前記金属酸化物層3は、空隙率が≦40%、好ましくは≦30%、更により好ましくは≦20%、最も好ましくは≦10%である。
【0089】
いくつかの実施態様において、前記金属酸化物層3は、平均孔幅が<20nm、好ましくは<15nm、より好ましくは<10nm、更により好ましくは<8nm、最も好ましくは<5nmである。
【0090】
いくつかの実施態様において、前記金属酸化物層3はメソ多孔性ではない。本明細書の目的において、「メソ多孔性」は、直径2〜50nmの孔を指す。
【0091】
いくつかの実施態様において、前記金属酸化物層3はナノ結晶性ではない。
【0092】
金属酸化物層3は、比較的薄い(例えば≦50nm)ため、又は、本明細書の他の箇所で指定されるように、例えばグラム当たりの表面積比、空隙率、メソスケール上の細孔の欠如の前記特徴は、一般に及び/又はだいたい、金属酸化物層3が堆積される層に適用される。例えばCBD(またALD)による金属酸化物層の堆積は、金属酸化物層4の厚さに応じて、グラム当たりの表面積比、空隙率、平均細孔幅は、ある程度減少させることが期待されることに留意されたい。
【0093】
本発明は、増感剤4を含む太陽電池と、例えば金属酸化物層3上に増感層4を塗布する工程とを含む。増感剤は好ましくは、光吸収性化合物又は材料である。好ましくは、増感剤は顔料である。
【0094】
増感剤層4は、有機金属増感化合物、金属を含まない有機増感化合物、無機増感化合物、例えば量子ドット、Sb2S3(硫化アンチモン、例えば薄膜型)、有機顔料の凝集体、ナノコンポジット、特に有機−無機ペロブスカイト、及び前記したものの組合せからなる群の1つ以上を含んでいてもよい。本発明の目的において、原則的に、異なるタイプの染料又は同じタイプの異なる染料の組合せを含む任意のタイプの染料又は増感剤を使用することが可能である。
【0095】
有機金属増感剤は、例えば欧州特許出願公開第0613466号明細書、欧州特許出願公開第0758337号明細書、欧州特許出願公開第0983282号明細書、欧州特許出願公開第1622178号明細書、国際公開第2006/038823号、国際公開第2009/107100号、国際公開第2010/055471号、及び国際公開第2011/039715号に開示されている。代表的な有機染料は、例えば国際公開第2009/098643号、欧州特許出願公開第1990373号明細書、国際公開第2007/100033号に開示されたものである。有機染料はまた、欧州特許出願第11161954.0号明細書、及びPCT/IB2011/054628号でも使用された。
【0096】
好適な実施態様において、増感剤層4は、ナノコンポジット材料を含むか、本質的にナノコンポジット材料からなるか、又はナノコンポジット材料からなる。好適な実施態様において、増感剤層4は、有機−無機ペロブスカイトを含むか、本質的に有機−無機ペロブスカイトからなるか、又は有機−無機ペロブスカイトからなる。
【0097】
本明細書の目的において用語「ペロブスカイト」は、「ペロブスカイト構造」、及び特定するものではないがペロブスカイト材料CaTiO3を指す。本明細書の目的において「ペロブスカイト」は、酸化チタンカルシウムと同じタイプの結晶構造、及び2価陽イオンが2つの別々の1価陽イオンにより置換された同じタイプの材料を有する任意の材料を包含し、好ましくはこれに関する。ペロブスカイト構造は、一般的化学量論AMX3(ここで、「A」及び「M」は陽イオンであり、「X」は陰イオンである)を有する。「A」及び「M」陽イオンは、種々の電荷を有し、元々のペロブスカイト鉱物(CaTiO3)では、A陽イオンは2価であり、M陽イオンは4価である。本発明の目的において、ペロブスカイト式は、本明細書の他の箇所に示される式に従って、同じか又は異なってよい3つ又は4つの陰イオンと、及び/又は1つ又は2つの有機陽イオンと、及び/又は2つ又は3つの陽性荷電を有する金属原子とを有する構造を含む。
【0098】
有機−無機ペロブスカイトは、有機複合体と無機結晶との混ぜ合わさった性質を示すハイブリッド材料である。無機成分は、高いキャリア移動度を提供する共有結合性及びイオン性相互作用により結合されたフレームワークを形成する。有機成分は、これらの材料の自己集合プロセスを助け、またハイブリッド材料が、低コストの技術により他の有機材料として堆積されることを可能にする。有機成分の追加の重要な特性は、その大きさと無機シート間の電子的結合を低減することにより、有機−無機材料の電子的特性を調整することである。
【0099】
有機−無機ペロブスカイトの構造は、多層量子ウェル構造に類似しており、半導体無機シートが、大きなエネルギーギャップを有する有機層が交互に存在する。1つの可能性では、無機層の伝導帯は実質的に有機層の伝導帯の下にあり、無機層の価電子帯は同様に有機層の上にある。従って、無機シートは、電子と正孔の両方のための量子ウェルとして作用する。他の選択肢は、有機層と無機層のバンドギャップが相殺されて、電子と正孔のためのウェルが異なる層にあるII型ヘテロ構造をもたらす時である。
【0100】
有機−無機ペロブスカイトのこれらの構造は、その増感剤としての使用を可能にし、これは、電子を金属酸化物層に注入することができる。ペロブスカイトはまた、本明細書の他の箇所でより詳細に議論されているように、正孔導体としても機能することができる。
【0101】
ある実施態様において、1つ又はそれ以上のペロブスカイト層中で使用され及び/又は得られる有機−無機ペロブスカイト材料は好ましくは、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)のいずれか1つのペロブスカイト構造を含む。
AA′MX4 (I)
AMX3 (II)
AA′N2/34 (III)
AN2/33 (IV)
BN2/34 (V)
BMX4 (VI)
ここで
A及びA′は、N含有ヘテロ環及び環系を含む、1級、2級、3級又は4級有機アンモニウム化合物から独立して選択される有機1価陽イオンであり、A及びA′は、1〜60個の炭素及び1〜20個のヘテロ原子を独立に有する。
Bは、1〜60個の炭素及び2〜20個のヘテロ原子を有し、2つの陽性荷電した窒素原子を有する、1級、2級、3級又は4級有機アンモニウム化合物から選択される有機2価陽イオンである。
Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、又はYb2+からなる群から選択される2価金属陽イオンである。
Nは、Bi3+及びSb3+の群から選択される。そして、
3つ又は4つのXは、CI-、Br-、I-、NCS-、CN-、及びNCO-から独立して選択される。
【0102】
具体的には、3つ又は4つのXは同一でも異なってもよい。例えば、AMX3(式II)は、以下の式(II′)のように表すことができる。
AMXiiiiii (II′)
ここで、Xi、Xii、Xiiiは、Cl-、Br-、I-、NCS-、CN-、及びNCO-、好ましくはハロゲン化物(CI-、Br-、I-)から独立して選択され、A及びMは、本明細書の他の箇所で定義されるものである。この場合、Xi、Xii、Xiiiは、同じでも異なっていてもよい。同じ原理は、式(I)及び(III)〜(VI)のペロブスカイト、及び以下の式(VIII)〜(XIV)のより具体的な実施態様に適用される。AA′MX4(式I)の場合には、例えば、式(I′)が適用される。
AA′XiiiiiiiV (I′)
ここで、Xi、Xii、Xiiiは、Cl-、Br-、I-、NCS-、CN-、及びNCO-、好ましくはハロゲン化物イオン(CI-、Br-、I-)から独立して選択される。
【0103】
好ましくは、もし式(II)及び(IV)中のXi、Xii、Xiii、又は式(I)、(III)、(V)又は(VI)中のXi、Xii、Xiii、XiVが異なる陰イオンXを含むならば、2種以下の異なる陰イオンが存在する。例えば、XiとXiiは同じであり、XiiiはXi及びXiiと異なる陰イオンである。
【0104】
好適な実施態様において、ペロブスカイト材料は、式(I)〜(III)、好ましくは(II)又は(II′)の1つ又はそれ以上から選択される構造を有する。
【0105】
好適な実施態様において、前記有機−無機ペロブスカイト層は、式(VIII)〜(XIV)のいずれか1つのペロブスカイト構造を含む。
APbX3 (VIII)
ASnX3 (IX)
ABiX4 (X)
AA′PbX4 (XI)
AA′SnX4 (XII)
BPbX4 (XIII)
BSnX4 (XIV)
ここで、A、A′、B及びXは、本明細書の他の箇所で定義されるものである。好ましくはXはCI-、Br-及びI-から選択され、最も好ましくはXはI-である。
【0106】
好適な実施態様において、前記有機−無機ペロブスカイト層は、前記式(VIII)〜(XII)、より好ましくは(VIII)及び/又は(IX)のペロブスカイト構造を含む。
【0107】
ある実施態様において、例えばAX中の及び/又は式(I)〜(IV)及び式(VIII)〜(XII)のいずれか1つにおけるA及びA′は、以下の式(1)〜(8)の化合物のいずれか1つから独立して選択される1価陽イオンである。
【0108】
【化1】
【0109】
ここで、
1、R2、R3、及びR4はいずれも、0〜15個のヘテロ原子を含むC1〜C15有機置換基から独立して選択される。
【0110】
前記C1〜C15有機置換基のある実施態様において、前記置換基中のいずれか1つの、数個の又はすべての水素はハロゲンで置換されていてもよく、前記有機置換基は最大15個のN、S又はOヘテロ原子を含んでもよく、そして、化合物(2)〜(8)のいずれか1つにおいて、存在する置換基(該当する場合は、R1、R2、R3及びR4)の2つ又はそれ以上は、互いに共有結合して、置換もしくは非置換の環もしくは環系を形成してもよい。好ましくは、前記C1〜C15有機置換基の原子の鎖において、任意のヘテロ原子が少なくとも1つの炭素原子に結合している。好ましくは、前記0〜15個のヘテロ原子を含むC1〜C15有機置換基中に、隣接するヘテロ原子は存在せず、及び/又はヘテロ原子−ヘテロ原子結合は存在しない。
【0111】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、C1〜C15脂肪族及びC4〜C15芳香族もしくはヘテロ芳香族置換基から独立して選択され、ここで、前記置換基中のいずれか1つの、数個の又はすべての水素はハロゲンで置換されていてもよく、そして、化合物(2)〜(8)のいずれか1つにおいて、存在する置換基の2つ又はそれ以上は、互いに共有結合して、置換もしくは非置換の環もしくは環系を形成していてもよい。
【0112】
ある実施態様において、Bは、以下の式(9)及び(10)の化合物のいずれか1つから選択される2価カチオンである。
【0113】
【化2】
【0114】
ここで、
式(9)の化合物において、Lは、1〜10個の炭素、及びN、S及び/又はOから選択されるヘテロ原子0〜5個を有する有機リンカー構造であり、ここで、前記L中の水素のいずれか1つ、数個又はすべては、ハロゲンにより置換されていてもよい。
ここで、R1及びR2のはいずれも、以下の置換基(20)〜(25)のいずれか1つから選択される。
【0115】
【化3】
【0116】
ここで、置換基(20)〜(25)中の点線は、前記置換基がリンカー構造Lに連結される結合を示し、
1、R2、及びR3は、式(1)〜(8)の化合物について独立に上記で定義されたものであり、
1及びR2は、いずれも置換基(20)と異なる場合、該当するときは、それらの置換基R1、R2、及びR3を介して互いに共有結合されていてもよく、 R1、R2、及びR3はいずれも、存在する場合、R1又はR2上に前記置換基が存在するかどうかとは独立に、L又は化合物(10)の環構造に共有結合していてもよく、
そして、式(10)の化合物において、前記の2つの陽性荷電した窒素原子を含有する環は、4〜15個の炭素原子と2〜7個のヘテロ原子とを含む置換もしくは非置換の芳香環もしくは環系を表し、ここで、前記窒素原子は、前記環又は環系の環ヘテロ原子であり、残りの前記ヘテロ原子は、N、O及びSから独立に選択されてもよく、R5及びR6は、H及び置換基R1〜R4から独立して選択される。すべての又は一部の水素を置換するハロゲンもまた、前記2〜7個のヘテロ原子に加えて及び/又はこれらのヘテロ原子とは独立に、存在してもよい。
【0117】
好ましくは、L中の炭素の数が減少した場合、ヘテロ原子の数は炭素の数より少ない。好ましくは、式(10)の環構造において、環ヘテロ原子の数は、炭素原子の数より少ない。
【0118】
ある実施態様において、Lは、1〜10個の炭素を有する脂肪族、芳香族、又はヘテロ芳香族リンカー構造である。
【0119】
好ましくは、置換基(20)〜(25)中の点線は、置換基中に示される窒素原子をリンカーの炭素原子に連結する炭素−窒素結合を示す。
【0120】
ある実施態様において、式(9)の化合物では、Lは、1〜8個の炭素と0〜4個のN、S及び/又はOヘテロ原子とを有する有機リンカー構造であり、ここで、前記L中の水素のいずれか1つ、数個又はすべては、ハロゲンにより置換されていてもよい。好ましくは、Lは、1〜8個の炭素を有する脂肪族、芳香族又はヘテロ芳香族リンカー構造であり、ここで前記L中の水素のいずれか1つ、数個又はすべてはハロゲンにより置換されていてもよい。
【0121】
ある実施態様において、式(9)の化合物では、Lは、1〜6個の炭素と0〜3個のN、S及び/又はOヘテロ原子とを有する有機リンカー構造であり、ここで、前記L中の水素のいずれか1つ、数個又はすべては、ハロゲンにより置換されていてもよい。好ましくは、Lは、1〜6個の炭素を有する脂肪族、芳香族又はヘテロ芳香族リンカー構造であり、ここで前記L中の水素のいずれか1つ、数個又はすべてはハロゲンにより置換されていてもよい。
【0122】
ある実施態様において、式(9)の化合物では、LはO及びSヘテロ原子を含まない。ある実施態様において、LはN、O及び/又はSヘテロ原子を含まない。
【0123】
ある実施態様において、式(10)の化合物では、前記2つの陽性荷電した窒素原子を含有する環は、4〜10個の炭素原子と2〜5個のヘテロ原子(前記2つの環N原子を含む)とを含む置換もしくは非置換の芳香環もしくは環系を表す。
【0124】
ある実施態様において、式(10)の化合物中の前記環又は環系は、O及びSヘテロ原子を含まない。ある実施態様において、式(10)の化合物中の前記環又は環系は、前記2つのN環原子以外に、さらなるN、O及び/又はSヘテロ原子を含まない。これは、水素がハロゲンにより置換される可能性を排除しない。
【0125】
当業者には理解できるように、芳香族リンカー、化合物、置換基又は環が4個の炭素を含む場合、これは、芳香族部分を提供するように、少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む。
【0126】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、0〜4個のN、S及び/又はOヘテロ原子を含むC1〜C8有機置換基から独立して選択され、ここで、N、S又はOヘテロ原子とは独立に、前記置換基中の水素のいずれか1つ、数個又はすべてはハロゲンにより置換されていてもよく、そして、同じ陽イオン上に存在する2つ又はそれ以上の置換基は、互いに共有結合して、置換もしくは非置換の環もしくは環系を形成してもよい。好ましくは、R1、R2、R3及びR4はいずれも、C1〜C8脂肪族、C4〜C8ヘテロ芳香族、及びC4〜C8芳香族置換基から独立して選択され、ここで、前記ヘテロ芳香族及び芳香族置換基は、更に置換されていてもよい。
【0127】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、0〜3個のN、S及び/又はOヘテロ原子を含むC1〜C6有機置換基から独立して選択され、ここで、N、S又はOヘテロ原子とは独立に、前記置換基中の水素のいずれか1つ、数個又はすべてがハロゲンにより置換されていてもよく、そして、同じ陽イオン上に存在する2つ又はそれ以上の置換基は、互いに共有結合して、置換もしくは非置換の環もしくは環系を形成していてもよい。好ましくは、R1、R2、R3及びR4はいずれも、独立して、C1〜C6脂肪族、C4〜C6ヘテロ芳香族及びC6〜C6芳香族置換基から選択され、ここで、前記ヘテロ芳香族及び芳香族置換基は、更に置換されていてもよい。
【0128】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、独立して、C1〜C4、好ましくはC1〜C3、最も好ましくはC1〜C2脂肪族置換基から選択され、ここで、前記置換基中の水素のいずれか1つ、数個又はすべてがハロゲンにより置換されていてもよく、そして、同じ陽イオン上に存在する2つ又はそれ以上の置換基は、互いに共有結合して、置換もしくは非置換の環もしくは環系を形成していてもよい。
【0129】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、独立して、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C4〜C10ヘテロアリール及びC6〜C10アリールから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルが3つ又はそれ以上の炭素を含む場合、これらは、直鎖、分岐鎖又は環状でもよく、前記ヘテロアリール及びアリールは、置換又は非置換でもよく、そして、R1〜R4中の数個又はすべての水素は、ハロゲンにより置換されていてもよい。
【0130】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、独立して、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、C4〜C8ヘテロアリール及びC6〜C8アリールから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルが3つ又はそれ以上の炭素を含む場合、これらは、直鎖、分岐鎖又は環状でもよく、前記ヘテロアリール及びアリールは、置換又は非置換でもよく、そして、R1〜R4中の数個又はすべての水素は、ハロゲンにより置換されていてもよい。
【0131】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、独立して、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C4〜C6ヘテロアリール及びC6アリールから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、及びアルキニルが3つ又はそれ以上の炭素を含む場合、これらは、直鎖、分岐鎖又は環状でもよく、前記ヘテロアリール及びアリールは、置換又は非置換でもよく、そして、R1〜R4中の数個又はすべての水素は、ハロゲンにより置換されていてもよい。
【0132】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、独立して、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル及びC2〜C4アルキニルから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルが3つ又はそれ以上の炭素を含む場合、これらは、直鎖、分岐鎖又は環状でもよく、そして、R1〜R4中の数個又はすべての水素は、ハロゲンにより置換されていてもよい。
【0133】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、独立して、C1〜C3、好ましくはC1〜C2アルキル、C2〜C3、好ましくはC2アルケニル、及びC2〜C3、好ましくはC2アルキニルから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルが3つ又はそれ以上の炭素を含む場合、これらは、直鎖、分岐鎖又は環状でもよく、そして、R1〜R4中の数個又はすべての水素は、ハロゲンにより置換されていてもよい。
【0134】
ある実施態様において、R1、R2、R3及びR4はいずれも、独立して、C1〜C4、より好ましくはC1〜C3、そして更に好ましくはC1〜C2アルキルから選択される。最も好ましくは、R1、R2、R3及びR4はいずれもメチルである。再度、前記アルキルは、完全に又は部分的にハロゲン化されていてもよい。
【0135】
ある実施態様において、A、A′及びBは、1つ、2つ又はそれ以上の窒素ヘテロ原子を含む置換及び非置換C5〜C6環から選択される、それぞれ1価(A、A′)及び2価(B)陽イオンであり、ここで、前記窒素原子の1つ(A、A′について)又は2つ(Bについて)は陽性に荷電している。このような環の置換基は、ハロゲンから、及び上記で定義されたC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル及びC2〜C4アルキニルから、好ましくは上記で定義されたC1〜C3アルキル、C3アルケニル及びC3アルキニルから、選択することができる。前記環はさらなるヘテロ原子を含むことができ、これは、O、N、及びSから選択することができる。2つの陽性荷電された環N原子を含む2価の有機陽イオンは、例えば上記式(10)の化合物により例示される。このような環は、例えば芳香族又は脂肪族でもよい。
【0136】
A、A′及びBはまた、その少なくとも1つが、前記で定義された置換及び非置換のC5〜C6環から選択される、2つ又はそれ以上の環を含む環系を含むことができる。式(10)の化合物中の楕円状に書かれた円はまた、例えば2つ又はそれ以上の環、しかし好ましくは2つの環、を含む環系を表わすことができる。また、A及び/又はA′が2つの環を含む場合、さらなる環ヘテロ原子が存在してもよく、これは好ましくは例えば荷電していない。
【0137】
しかし、ある実施態様において、有機陽イオンA、A′及びBは、1つ(A、A′について)、2つ(Bについて)又はそれ以上の窒素原子を含むが、ハロゲンを除いて(ハロゲンは、陽イオンA及び/又はB中の1つ又はそれ以上の水素原子を置換してもよい。)、O又はS又は任意の他のヘテロ原子を含まない。
【0138】
A及びA′は好ましくは、1つの陽性荷電した窒素原子を含む。Bは好ましくは、2つの陽性荷電した窒素原子を含む。
【0139】
A、A′及びBは、以下の式(30)及び(31)(Aについて)並びに(32)〜(34)(Bについて)の例示的環又は環系から選択することができる。
【0140】
【化4】
【0141】
ここで、R1及びR2は、独立して上記で定義されたものであり、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、H、ハロゲン、及びR1〜R4について上記で定義された置換基から独立して選択される。好ましくは、R3〜R10は、H及びハロゲン、最も好ましくはHから選択される。
【0142】
有機陽イオンA、A′及びBにおいて、水素は、F、Cl、I、及びBrなどのハロゲン、好ましくはF又はCl、により置換されていてもよい。このような置換は、ペロブスカイト層の吸湿性を低下させることが予測され、従って、本明細書の目的において有用な選択肢となる。
【0143】
好適な実施態様において、A及びA′は、独立して、式(1)の有機陽イオンから選択される。好ましくは、式(1)の陽イオン中のR1は、0〜4個のN、S及び/又はOヘテロ原子を含むC1〜C8有機置換基から選択される。より好ましくは、R1は、C1〜C4、好ましくはC1〜C3、最も好ましくはC1〜C2脂肪族置換基から選択される。
【0144】
好適な実施態様において、金属Mは、Sn2+及びPb2+、好ましくはPb2+から選択される。好適な実施態様において、NはSb3+である。
【0145】
好適な実施態様において、3つ又は4つのXは、独立して、Cl-、Br-、及びI-から選択される。
【0146】
好適な実施態様において、有機−無機ペロブスカイト材料は、以下の式(XV)〜(XIX)を有する。
AMI3 (XV)
AMI2Br (XVI)
AMI2Cl (XVII)
AMBr3 (XVII)
AMCI3 (XIX)
ここで、A及びMは、本明細書の他の箇所で定義されたものであり、後述されるようなA及びMの好適な実施態様を含む。好ましくは、Mは、Sn2+及びPb2+から選択される。好ましくは、Aは、式(1)の有機陽イオンから選択される。好ましくは、式(1)の陽イオン中のR1は、0〜4個のN、S及び/又はOヘテロ原子を含むC1〜C8有機置換基から選択される。より好ましくは、R1は、C1〜C4、好ましくはC1〜C3、最も好ましくはC1〜C2脂肪族置換基から選択される。
【0147】
好適な実施態様において、有機−無機ペロブスカイトは式(VII)(ΑΜΧiΧiiΧiii)の化合物であり、ここで、Aは前記で定義された式(1)の1価陽イオンであり、Mは本明細書の他の箇所で定義されたものであり、Χi、Χii、Χiiiは、独立して、Cl-、Br-、I-から選択される。好ましくは、式(1)の陽イオン中のR1は、C1〜C4、好ましくはC1〜C3、最も好ましくはC1〜C2脂肪族置換基から選択される。
【0148】
好適な実施態様において、有機−無機ペロブスカイトは式(VII)(ΑΜΧiΧiiΧiii)の化合物であり、ここで、Aは前記で定義された式(1)の1価陽イオンであり、MはSn2+又はPb2+であり、Χi、Χii、Χiiiは独立してCl-、Br-、I-から選択される。好ましくは、式(1)の陽イオン中のR1は、C1〜C4、好ましくはC1〜C3、最も好ましくはC1〜C2脂肪族置換基から選択される。好ましくは、Χi〜Χiiiは同じである。
【0149】
本発明の方法において、ペロブスカイト層4は、任意の適切な方法で適用することができる。好適な実施態様において、増感剤層4は、金属酸化物層3上に塗布されるか、及び/又は堆積される。好ましくは、増感剤層4は、前記金属酸化物層3に直接接触しているか、及び/又はその上にある。
【0150】
例えば、ペロブスカイト層4は、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、及びスプレーコーティングから選択される任意の1種以上により塗布することができる。最新技術によれば、ペロブスカイト層4は、例えば一般的な溶媒中に2種の前駆体を含む溶液をスピンコーティングすることにより塗布することができる。
【0151】
本発明の好適な実施態様において、ペロブスカイトは、例えば少なくとも2種の連続及び/又は別々の工程で適用される。有機−無機ペロブスカイトのための2段階の堆積手順は、米国特許第5871597号明細書に記載されている。
【0152】
好適な実施態様において、前記増感剤層4を塗布及び/又は堆積する工程は、
a)1種以上の2価又は3価金属塩を含むか、及び/又はこれから本質的になる膜を塗布及び/又は堆積する工程と、
b)1種以上の有機アンモニウム塩を塗布及び/又は堆積する工程と、を含み、ここで、工程a)及びb)は任意の順序で実施することができる。
【0153】
本発明の方法において、工程a)は好ましくは工程b)の前に行われるが、本発明はまた、他の実施態様において、工程b)が最初に実施され、次に工程a)が実施されることを包含する。
【0154】
好適な実施態様において、1種以上の2価又は3価の金属塩を含むか及び/又はこれから本質的になる前記膜は、前記金属酸化物層3上に塗布及び/又は堆積される。
【0155】
ある実施態様において、前記増感剤層4を塗布及び/又は堆積する工程は、
a)1種以上の2価又は3価金属塩を含むか、及び/又はこれから本質的になる膜を塗布及び/又は堆積する工程と、
b)1種以上の有機アンモニウム塩を含む溶液に、工程a)で得られた膜を曝露及び/又は接触させる工程と、を含む。
【0156】
好ましくは、1種以上の2価又は3価金属塩を含むか、及び/又はこれから本質的になる前記膜は、前記金属酸化物層3上に直接塗布される。好ましくは、ペロブスカイト層は、前記金属酸化物層3と直接接触している。
【0157】
ある実施態様において、前記1種以上の2価又は3価金属塩の前記膜は、溶液からの堆積(例えば、溶液Aから)、分散液からの堆積(例えば、コロイド分散液から)、熱蒸発又はスパッタリング、電子堆積、原子層堆積(ALD)による堆積、及び前記金属塩のインサイチュの形成、から選択される任意の1種以上の方法により塗布及び/又は堆積される。
【0158】
ある実施態様において、前記1種以上の2価又は3価金属塩の前記膜は、溶液から塗布及び/又は堆積される。明瞭するために、適用される溶液を溶液Aと呼ぶ。好ましくは前記1種以上の2価又は3価金属塩の前記膜は、前記金属塩の溶液Aをスピンコーティングすることにより、溶液から塗布及び/又は堆積される。例えばスピンコーティングは、3000rpm又はそれ以上、好ましくは4000rpm又はそれ以上で行われる。
【0159】
ある実施態様において、前記1種以上の2価又は3価金属塩の前記膜は、それぞれ式MX2及びMX3を有し、ここで、M、N及びXは、上記で又は本明細書の他の箇所で独立に定義されたものである。好ましくは、Mは、Sn2+及びPb2+から選択される。好ましくは、Xは、Cl-、Br-、及びI-から選択されるハロゲン化物イオンである。
【0160】
ある実施態様において、前記工程a)では、2種又はそれ以上の異なる2価又は3価の金属塩が堆積される。2種以上の金属塩が塗布及び/又は堆積される時(例えば、2種又はそれ以上の2価金属塩)、これらの2種の異なる塩は同時に塗布される。ある実施態様において、本発明の方法は、MXi2、MXii2及びMXiii2から選択される2種又はそれ以上を含む膜を塗布及び/又は堆積する工程を含み、ここで、Xi、Xii及びXiii(電荷は示していない)はここでは、I-、Cl-、Br-、NCS-、CN-、及びNCO-から、好ましくはI-、CL-、及びBr-から選択される異なる陰イオンである。例えばXi、Xii及びXiiiは、それぞれI-、CL-、及びBr-である。例えばMXi2及びMXii2、又はMXi2、MXii2及びMXiii2を含む金属塩膜が、本発明の有機アンモニウム塩に曝露される場合、混合ペロブスカイトが得られ、これは、AXi、AXii、及びAXiiiのいずれか1つから独立して選択することができる。
【0161】
好ましくは、金属塩膜がMXi2及びMXii2を含む場合、有機アンモニウム塩は、金属塩層中に含まれる陰イオンの1種を含む塩、例えばAXi又はAXiiから選択される。
【0162】
ある実施態様において、前記ペロブスカイトの塗布は、有機アンモニウム塩を塗布及び/又は堆積する工程b)を含む。工程b)が工程a)の後に行われる場合、これは好ましくは、工程a)で得られた膜を、溶媒中に1種以上の有機アンモニウム塩を含む溶液に曝露又は接触させる工程を含むか又はこの工程から本質的になる。溶媒中に1種以上の有機アンモニウム塩を含む溶液は、溶液Aが前記2価又は3価の金属塩を塗布するために使用されるかどうかとは独立して、例えば、前記金属塩が溶液から堆積されない場合(この場合、溶液Aは無い)、溶液Bと呼ばれる。
【0163】
前記1種以上の有機アンモニウム塩を含む溶液Bを製造するための溶媒は、好ましくは、溶解されるべき有機アンモニウム塩用の良好な溶媒であるが、2価又は3価の金属塩用には悪い溶媒である溶媒、特にMX2又はNX3、から選択される。この溶媒はまた、好ましくは生じるペロブスカイト用には悪い溶媒(これを溶解させない)である。
【0164】
1種以上の2価又は3価金属塩は、結晶及び/又は金属塩を、有機アンモニウム塩を含む溶液B中に浸漬することにより、前記溶液に曝露されるか又はこれと接触させることができる。例えば、堆積された金属塩(例えば、MX2又はNX3)層を含む表面、層及び/又は前駆体装置及び/又は部分的に組み立てられた装置を、有機アンモニウム塩の前記溶液B中に浸漬することができる。
【0165】
ある実施態様において、前記金属塩膜は、前記溶液Bに、10分以下、好ましくは5分以下、更により好ましくは1分以下、又は以降の段落に与えられる時間、曝露されるか又は接触される。
【0166】
ある実施態様において、前記有機−無機ペロブスカイトは、前記溶液に曝露後120秒以内、好ましくは60秒以内に形成される。より好ましくは、前記有機−無機ペロブスカイトは、前記溶液Bに曝露後45秒以内、好ましくは30秒以内に形成される。浸漬の場合、堆積された金属塩層を含む表面、層、及び/又は部分的に組み立てられた装置は、上記した期間(<120秒など)、前記溶液B中に浸漬することができる。曝露時間(接触、浸漬)は好ましくは、少なくとも1秒間、より好ましくは少なくとも2秒間行われる。
【0167】
ある実施態様において、1種以上の2価又は3価金属塩を含む前記溶液、好ましくは前記溶液Aは、P及びYの塩を更に含むことができ、ここで、Pは、無機及び有機陽イオンから選択され、YはCl-、Br-、及びI-から選択される。Pが2価又は3価陽イオンである場合、対応する数のYが存在して、前記塩中のPの陽イオン性電荷を補償する。この実施態様は好ましくは、前記ペロブスカイト層の塗布のプロセス工程a)に関する。
【0168】
ある実施態様において、Yは、前記2価又は3価金属塩の少なくとも1種のXと同じである(例えば、陽イオンが2価の無機又は有機陽イオンである場合、PY)。
【0169】
ある実施態様において、Pは、1価、2価、又は3価の無機又は有機陽イオンから選択され、有機陽イオンは、好ましくはアンモニウム、イミダゾリウム、ピチジミウム及びホスホニウム化合物から選択され、本明細書の他の箇所でで定義される式A及びBの陽イオンを含む。
【0170】
ある実施態様において、Pが無機陽イオンである場合、これは、1価、2価又は3価の無機陽イオンから選択される。好適な実施態様において、Pは1価無機陽イオンである。最も好ましくは、Pは、Li+、Na+、K+及びCs+から選択される。
【0171】
ある実施態様において、Pは、本明細書の他の箇所で定義される、1価無機陽イオンから及び有機陽イオンAから選択される。より好ましくは、Pは、Li+、Na+、K+Cs+から選択される。最も好ましくは、PはLi+である。
【0172】
Yは、前記ペロブスカイト中に存在する陰イオンである。従って、もし異なるX、例えばXi及びXii(ここで、Xi及びXiiは異なるハロゲン化物である)がある場合、Yは好ましくはXであり、Yは前記Xi及びXiiの1つと同じである。
【0173】
好ましくは、PYはPXである。ある実施態様において、PYはLiXである。
【0174】
好ましくは前記金属酸化物層3上に、1種以上の2価又は3価金属塩を含む膜を塗布及び/又は堆積する前記工程は、それぞれ式MX2及びNX3を有する前記1種以上の2価又は3価金属塩を含む溶液(好ましくは溶液A)からの前記膜を塗布することを含み、ここで、前記溶液は、前記で定義されたPYを更に含む。PY、例えばLiIは、前記2価又は3価金属塩より低濃度で存在し、例えば≦1.5M、≦1.0M、≦0.5M、好ましくは≦0.1M、より好ましくは≦0.05M、最も好ましくは0.01〜0.03Mの範囲で存在する。
【0175】
比較のために、前記1種以上の2価又は3価金属塩、例えばMX2及びNX3は、約0.4〜2M、好ましくは0.5〜1.5M、より好ましくは0.8〜1.2Mの濃度で存在する。
【0176】
驚くべきことに、LiXなどの塩PYの存在は、2価又は3価金属塩のペロブスカイトへの変換を増強する。特に、残留金属塩の存在は回避され、変換は、他の箇所で特定された溶液B中への比較的短い浸漬時間内で完了する。
【0177】
本発明の太陽電池及びこれらを製造する方法に関して、前記太陽電池は好ましくは、(a)正孔輸送材料、(b)保護層、及び(c)イオン性液体から選択される中間層7を含み、前記中間層は、前記増感剤層4、特に前記ペロブスカイト層を得た後に塗布される。中間層は、好ましくは増感剤層4の後に及びその上に塗布される。
【0178】
「正孔輸送材料」、「電荷輸送材料」、「有機正孔輸送材料」、及び「無機正孔輸送材料」などは、前記材料又は組成物中の電子又は正孔の移動(電子運動)により電荷が輸送される任意の材料又は組成物を意味する。従って「正孔輸送材料」は、導電性材料である。このような正孔輸送材料などは、電解質とは異なる。後者では、電荷は分子の拡散により輸送される。
【0179】
本発明の太陽電池の好適な実施態様において、前記中間層は、有機及び無機正孔輸送材料から選択される正孔輸送材料を含む。好適な実施態様において、前記中間層は、有機正孔輸送材料を含む。好ましくは本発明の太陽電池は、前記1種以上の増感剤層4(例えばペロブスカイト層)と対向電極との間に位置する中間層、特に有機正孔輸送材料を含む。
【0180】
当業者は、本明細書の他の箇所に開示されている導電性ポリマー等の多種多様の有機正孔輸送材料を認識している。例えば、国際公開第2007/107961号では、液体と非液体有機正孔導体が開示され、これは本発明の目的のために使用することができる。また、欧州特許出願公開第1160888号明細書及び他の刊行物では、有機正孔輸送材料(「有機導電性物質」)が開示されている。
【0181】
本発明の目的のために好適な有機正孔輸送材料は、スピロキューOMeTAD(2,2′,7,7′−テトラキス−N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン−9,9′−スピロビフルオレン)及びその誘導体であるPTAA(ポリ(トリアリールアミン))、例えば(ポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン])又は(ポリ[ビス(4−フェニル)(4−ブチルフェニル)アミン])である。さらなる正孔輸送材料を開示する米国特許出願公開第2012/0017995号明細書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0182】
「有機正孔輸送材料」、「有機正孔輸送層」、「有機電荷輸送材料」、「電子ブロッキング層」などという表現における「有機」は、他の成分の存在を排除するものではないことに留意されたい。さらなる成分は、例えば、(a)1種以上のドーパント、(b)1種以上の溶媒、(c)イオン化合物などの1種以上の他の添加剤、及び(c)前記成分の組合せ、から選択することができる。有機電荷輸送材料では、そのような追加の成分は、0〜30wt%、0〜20wt%、0〜10wt%、最も好ましくは0〜5wt%の量で存在することができる。
【0183】
有機正孔輸送材料中に存在することができるイオン性化合物の例としては、TBAPF6、NaCF3SO3、LiCF3SO3、LiClO4、及びLi[(CF3SO22Nがある。
【0184】
有機正孔輸送材料中に存在してもよい他の化合物の例は、例えばアミン類、4−tert−ブチルピリジン、4−ノニル−ピリジン、イミダゾール、N−メチルベンズイミダゾールである。
【0185】
別の実施態様において、中間層は、無機正孔輸送材料を含むか、及び/又はこれから本質的になる。多種類の無機正孔輸送材料が商業的に入手可能である。無機正孔輸送材料の非限定例は、Cu20,CuNCS,Cul,MoO3,及びWoO3である。無機正孔輸送材料はドープされていてもされていなくてもよい。
【0186】
ある実施態様において、中間層、例えば前記有機又は無機正孔輸送材料は、増感剤層4から正孔を取り出し、及び/又は対向電極から増感剤に新しい電子を提供する。すなわち、正孔輸送材料は、電子を対向電極からペロブスカイト材料層に輸送する。
【0187】
中間層は、保護層を含むか及び/又はこれから本質的になることができる。ある実施態様において、保護層は好ましくは金属酸化物を含む。特に保護層は、Mg酸化物、Hf酸化物、Ga酸化物、In酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Ta酸化物、Y酸化物、及びZr酸化物を含むか及び/又はこれから本質的になることができる。Ga酸化物は、前記保護層のための好適な材料である。保護層は存在する場合、好ましくは5nm以下、好ましくは4nm以下、更により好ましくは3nm以下、及び最も好ましくは2nm以下の厚さを有する。好適な実施態様において、保護層は、1.5nm以下、更には1nm以下の厚さを有する。前記金属「保護層」は、好ましくは「バッファー層」である。
【0188】
本発明の太陽電池及び/又はヘテロ接合の実施態様において、前記保護層は、原子層堆積(ALD)によって提供される。例えば、前記保護層を塗布するように、2〜7層がALDによって堆積される。従って、前記保護層は、好ましくは金属酸化物の多層である。
【0189】
ある実施態様において、保護層は、2011年12月8日に出願された係属中の国際出願PCT/IB2011/055550号(これは、参照のためその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているものである。
【0190】
別の実施態様によれば、中間層7は存在せず、例えば図4a〜bに示されるような実施態様により例示されるように、前記対向電極及び/又は金属層5は、増感剤層4と直接接触しており、及び/又はいかなる追加の層又は媒体によっても、前記増感剤層から分離されていない。例えば増感剤がナノコンポジットである場合、特に有機−無機ペロブスカイトである場合、正孔輸送層は存在しなくてもよい。これは、すでに出願された欧州特許出願第12179323.6号に開示されている。
【0191】
増感剤4がナノコンポジットでない場合、特に増感剤が有機−無機ペロブスカイトを含まないか又はこれから本質的にならない場合、中間層7は好ましくは存在し、特に、有機正孔輸送層などの正孔輸送層の形で存在する。
【0192】
対向電極5は増感剤層4に面し、又は中間層7(存在する場合)は電池の内部を向いている。対向電極5は最外層を形成することができ、従って電池の外表面の1つを形成することができる。基板及び支持体層が対向電極の片側に存在することも可能である(図4d)。
【0193】
対向電極5は一般的に、電池の内部に向けて電子を提供し正孔を充填するのに適した触媒活性材料を含む。対向電極は、例えばPt、Au、Ni、Cu、Ag、In、Ru、Pd、Rh、Ir、Os、C、導電性ポリマー、導電性酸化物、例えばインジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga23、ZnO−AlO3、スズ酸化物、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、SrGeO3、及び前記の2種以上の組み合わせから選択される(からなる群から選択される)1種以上の材料を含むことができる。導電性ポリマーは、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリベンゼン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリプロピレンジオキシ−チオフェン、ポリアセチレン、及び前記の2種以上の組合せから選択することができる。このような導電性ポリマーは、正孔輸送材料として使用することができる。ある実施態様において、対向電極は好ましくは陰極である。
【0194】
対向電極5は、存在する場合には、ペロブスカイト層の上に又は中間層の上に、対向電極材料の熱蒸発により、従来のように適用することができる。
【0195】
対向電極5は、好ましくは集電体に接続され、これは次に外部回路に接続される。装置の第1の側面に関連して詳述されるように、導電性ガラス又はプラスチックなどの導電性支持体は、第2の側面上の対向電極と電気的に接続されていてもよい。
【0196】
本発明の太陽電池は、好ましくは固体太陽電池である。
【0197】
本発明の太陽電池は、前記有機−無機ペロブスカイトなどの、ナノコンポジット増感剤により増感された、例えば色素増感太陽電池(DSC)であってもよい。
【0198】
ある実施態様において、本発明の実施態様の太陽電池は、48.2°の太陽天頂角、100mWcm2の太陽光強度、及び25℃のセル温度に対応する、標準的な空気量の1.5グローバル(AM1.5G)日照条件で測定する時、≧4%、好ましくは≧5%、より好ましくは≧6%、そして最も好ましくは≧7%の電力変換効率(PCE)を示す。
【0199】
本発明の太陽電池の光陽極及び/又は作用電極は、金属酸化物層3により、任意に増感剤層4とともに形成することができる。ある実施態様において、光陽極及び/又は作用電極は、有機−無機ペロブスカイト層4により形成される。これは、例えば、金属酸化物層3が単にブロッキング層として機能する場合に適用される。
【0200】
以下、本発明を実施例により説明する。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0201】
実施例1
薄膜固体太陽電池の低温製造
TiO2ナノ層(NL−T1O2)は、FTO基板上の水性T1Cl4(40mM、75℃、30分)の化学浴堆積により、次に水及びエタノール中でのリンスを介して、製造される。このプロセスは、FTO表面でのより良好なカバー率を確実にするために、複数回繰り返される。FTOを吸収体又は正孔導体に曝露すると、電子の好ましくない逆流を引き起こし、これは、光発生された電荷担体の損失を招く。
【0202】
異なる濃度のT1Cl4により、表1に示される種々の厚さの金属酸化物層が得られる。TiO2層の5〜200nmの厚さは、200nm超の厚さより良好な性能を示すようである。
【0203】
【表1】
【0204】
NL−TiO2上で、ペロブスカイト吸収体の固体薄膜(約300〜400nm)は、2013年5月14日に出願された欧州特許出願第13166720.6号に報告されたH20不含ドライボックス中で、連続堆積法を使用して、NL−TiO2の上に堆積される。この操作は、以下に簡単に説明される。
【0205】
DMF中のPbI2(1M)とLiI(0.025M)の混合物を、NL−TiO2上でスピンコーティング(6500rpm、30秒)し、70℃で15分間乾燥した。次にPbI2膜は、ヨウ化メチルアンモニウム溶液(イソプロパノール中8mg/ml)中に30秒間浸漬し、70℃で30分間乾燥することにより、ペロブスカイトCH3NH3PbI3吸収体に変換した。LiIの追加は、次のセクションで提示されるX線回折図からも明らかなように、CH3NH3PbI3へのPbI2の変換を増強する。
【0206】
装置の組立は、ペロブスカイト膜上に正孔輸送層(スピロ−OMeTAD)を堆積させ、次に金をバックコンタクトとして金を蒸発させることにより完了される。光発電の特徴は、標準的なAM1.5G太陽照明下で、対応する装置で試験される。図1bは、電流密度−電圧曲線を示す。装置は、それぞれ922mV、11.5mA/cm2、及び0.68の、開回路電位(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、及び充填率(FF)を示し、7.3%の電力変換効率(PCE)を与える。
【0207】
実施例2
ペロブスカイト型増感剤の結晶成長への追加の又は異なる金属ハロゲン化物前駆体の影響
図2は、LiIの添加有り及び無しで、顕微鏡ガラス基板上の吸収体材料のX線回折図(BRUKER D8 DISCOVER)を示す。両方の試料は、同様のブラッグ反射を示し、ペロブスカイト結晶の形成を確認している。更に、LiIの無い試料は約11℃のピークを示し、これは、残留PbI2の存在に起因する。LiIの添加は、CH3NH3PbI3へのPbI2の転換を増強し、これはまた、室温でのDMF溶液中の1M PbI2の溶解度を上昇させると結論付けることができる。LiIはイソプロパノールに可溶であるため、残留LiIも残留PbI2も、ペロブスカイト型に変換後のXRDで観察されない。
【0208】
図3a及びbは、LiI有り(図3b)及びLiI無し(図3a)で、DMF中のPbI2溶液をスピンコーティングして得られたCH3NH3PbI3膜の上面図を示すSEM画像である。純粋なPbI2膜の場合、メチルアンモニウムヨウ化鉛の核形成は、平坦なPbI2の上で行われ、PbI2のCH3NH3PbI3への完全な変換のためのヨウ化メチルアンモニウムの拡散を可能にしない。LiIを添加すると、平坦な膜上のPbI2の完全な変換が30秒で達成され、CH3NH3PbI3ペロブスカイトの形成をもたらす。
【0209】
本発明は、メソ多孔性金属酸化物の熱処理の要件の長年の問題に対処し、低温処理可能メソ多孔性酸化物を提供する。本発明者らは、75℃でTiCl4化学浴から透明導電性ガラス上に、TiO2ナノ粒子コンパクト膜(10〜20nm)の超薄層を堆積した。堆積された膜は、その後の熱焼結工程なしで光陽極として使用され、従ってTCOと任意の従来のDSCで使用されるメソ多孔性のTiO2足場上の、コンパクトな層の必要性を完全に排除する。
【0210】
更に、我々の最近の太陽電池製造法により、多大な時間節約が達成されることに注意しなければならない。従来のTiO2ペーストの製造のためには、最低1週間が必要である。本ケースの場合、光陽極の製造全体は2〜3時間を必要とし、これは、我々の新しい装置構成の経済的な側面を更に強調する。図1aは、固体の低温加工太陽電池の断面図を示す。
【0211】
結論として、我々は、任意の柔軟な導電性基板上で効果的に使用することができる次世代太陽電池の低温製造のための新たな装置構成を提供する。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図5a
図5b