【実施例】
【0040】
実施例1
本実施例は、養子細胞療法のためのHPV陽性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を調製する方法を実証する。
【0041】
患者は、臨床プロトコルに参加し、腫瘍切除の前に、国立癌研究所の治験審査委員会(Institutional Review Board of the National Cancer Institute)によって承認されたインフォームドコンセントにサインした。腫瘍を患者から切除した。逆転写酵素(RT)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ジェノタイピングを用いて、HPV 16 E6、HPV 16 E7、HPV 18 E6及びHPV 18 E7の発現について腫瘍を試験した。
【0042】
酵素消化物、及び鋭的剥離により得られた腫瘍フラグメント(1〜2 mm
3)を用いて、HPV 16 E6陽性、HPV E7陽性、HPV 18 E6陽性及びHPV E7陽性TILの複数(24)の独立培養物を設定した(set up)。コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ及びDNAseを含有する培地中、腫瘍フラグメントを一晩酵素消化することにより得られた単細胞浮遊液(5×10
5/mL)を培養することにより、腫瘍消化物由来のTILを作製した。腫瘍フラグメント及び消化物の培養は、5% CO
2の加湿37℃インキュベーター中、完全培地(CM)及びIL-2(6000 IU/mL, Chiron Corp., Emeryville, CA)の2 mLウェル中で開始した。CMは、グルタミン含有RPMI1640、それに加えて10%ヒトAB血清、25 mM HEPES、10 μg/mLゲンタマイシン及び5.5×10
-5M 2-メルカプトエタノールを含んだ。開始から5日後、培地の半分をウェルからアスピレートし、新鮮なCM及びIL-2と交換し、その後必要に応じて、2日から3日毎に培地交換した。これらの条件下、リンパ球は最初にウェル中の接着細胞を溶解し、次いで、増殖(multiply)及び成長(grow)し始めるだろう。
【0043】
TIL培養物は、典型的には開始から約12〜28日後に、元の2-mLウェルのコンフルエントな増殖を達成し、接着腫瘍細胞を排除した。実際には、これは、それぞれ元の腫瘍フラグメント又は消化物ウェルから約4×10
6 リンパ球であった。単一の24ウェルプレート中、ウェルすべてをプールすることにより、およそ5×10
7 TIL細胞を得た。
【0044】
TIL作製のために設計した培養物が、2-mLウェル中、コンフルエンスまで拡大した際に、それらをHPV特異的反応性について試験した。TILは、数多く(典型的には、腫瘍あたり24のグループ)設定したことから、各TIL培養物を個々にカウントすることは実現不可能であった。TIL特異性アッセイは、細胞あたりの活性よりむしろ体積あたりの活性を測定する。各ウェルを十分に混合し、100マイクロリットルのリンパ球(推定1×10
5細胞)を洗浄し、自己腫瘍消化物と、又はHPV 16及びHPV 18 E6及びE7 MACS PepTivatorペプチドプールをパルスした自己単球由来樹状細胞(DCs)と一晩共培養した。ペプチドプールは、E6又はE7(HPV 16又はHPV 18)の完全配列をカバーする、11アミノ酸がオーバーラップした15-merのペプチドを含んだ。ペプチドプールは75%超の純度で、低エンドトキシンであった。次いで、酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay)(ELISA)により、IFN-γ放出を測定した。結果を表Aに示す。
【0045】
【表A】
【0046】
HPV反応性TIL数の急速拡大は、以前に記載されるように(Dudley et al., J. Immunother., 26:332-42(2003)及びRiddell et al., J. Immunol. Methods, 128:189-201(1990))、急速拡大プロトコル(Rapid Expansion Protocol)(REP)を用いて実施した。簡単に述べると、TIL細胞を、ガス透過性のG-REXフラスコにて、30 ng/mLの抗CD3抗体及び6000 IU/mLのIL-2を有する完全培地(CM)中、200倍過剰な、放射線照射(40 Gy)同種異系末梢血単核「フィーダー」細胞とともに培養した。6000 IU/mL IL-2を有するCMを用いて、5日目に培地の半分を交換し、その後必要に応じて、細胞を分けた(split)。TILは、平均3000倍超に拡大した。
【0047】
実施例2
本実施例は、患者1由来のTILの反応性を実証する。
【0048】
患者1由来の22の異なる腫瘍フラグメント(F1〜F22)から、実施例1に記載するようにTILを作製した。患者1由来のTIL、又はメラノーマTIL(コントロール)を、HPV 18 E7ペプチドプール又はgp100 ペプチドプール(コントロール)をパルスした樹状細胞と共培養し、IFN-γを測定した。結果を
図1A〜1Bに示す。
図1A〜1Bに示すように、患者1の腫瘍フラグメント22由来のTILは、自己腫瘍株を認識したが、HPV 18 E7ペプチドを認識しなかった。
【0049】
患者1の腫瘍フラグメントF16、F17若しくはF22由来のTIL、又は治療のために患者に与えられる細胞(「輸液バッグ」)を、自己腫瘍、自己組織由来の末梢血単核細胞(PBMC)、全てのクラスI遺伝子座で適合する腫瘍細胞、HeLa細胞(HLA不適合)、又はCaSki細胞(HLA不適合)と共培養した。IFN-γを測定した。結果を
図2Aに示す。
図2Aに示すように、腫瘍フラグメントF16及びF22由来のTILは、自己腫瘍認識を示した。
【0050】
自己腫瘍細胞に、HLA-A、HLA-B若しくはHLA-Cに対するサイレンシングRNA、又は無関係のRNA(非ターゲティング)をトランスフェクトし、患者1由来のTILと共培養した。IFN-γを測定した。結果を
図2Bに示す。
図2Bに示すように、患者1由来のTILの認識は、HLA-Aサイレンシングにより低下した。
【0051】
エフェクター/ターゲット細胞(患者1 TIL/自己腫瘍細胞;DMF5/624細胞;又は患者12(P12)F15/HPV18E6
121-135)を単独で培養するか、又は抗体を伴わずに、抗HLA-A2抗体とともに若しくは抗クラスII抗体とともに共培養した。DMF5細胞は、MART-1に対するMHCクラスI拘束性TCRを発現するよう形質導入されたT細胞である。結果を
図2Cに示す。
図2Cに示すように、患者1由来のTILの認識は、HLA-A
*02ブロッキングによっては阻害されず、HLA-A
*01拘束性の腫瘍認識であることが示唆された。患者1のハプロタイプはHLA-A
*01, HLA-A
*02であった。
【0052】
患者1の腫瘍フラグメントF16若しくはF22由来のTIL;治療のために患者に与えられる細胞(「輸液バッグ」);メラノーマTIL 1、2若しくは3(メラノーマ腫瘍から培養されたTIL);mE7 TCR(HPV 16 E7
11-19に対するTCRを発現するよう形質導入されたPBMC由来のT細胞);又はF15 TIL(HPV 18 E6
121-135に対して反応性であり、クラスII拘束性であり、従ってHB145でブロック可能である、別の患者由来のTIL)を、gp100ペプチドプール、OKT3抗体、又は以下をパルスしたDCs(HPV 18 E7ペプチドプール、HPV 18 E7ペプチドプール及びW6/32、HPV 16 E7
11-19、HPV 16 E7
11-19及びW6/32、HPV 16 E7
11-19及びHB145、HPV 18 E6
121-135、HPV 18 E6
121-135及びW6/32、又はHPV 18 E6
121-135及びHB 145)と共培養した。結果を
図3に示す。
図3に示すように、患者1の腫瘍フラグメントF16由来のTILは、HPV 18 E7ペプチドのクラスI拘束性の認識を示した。
【0053】
実施例3
本実施例は、HPV 18 E7反応性のCD8陽性T細胞を単離するために、患者1の腫瘍フラグメント16由来のTILのクローニングを実証する。
【0054】
DCsにHPV 18 E7をロードし、患者1の腫瘍フラグメント16(F16)由来のTILと共培養した。蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いて、4-1BB陽性細胞についてTILをソートした。ソートした細胞を、ウェルあたり2つの細胞で96ウェルプレートにて培養した。gp100ペプチドプール又はHPV 18 E7ペプチドプールに対する腫瘍反応性についてクローンをスクリーニングした。結果を
図4A及び4Bに示す。
図4A及び4Bに示すように、4-1BBベースのFACSソーティングを用いた、腫瘍フラグメントF16からのCD8陽性T細胞クローニングにより、E7 ペプチドプール反応性を有する2つのクローン(12及び21)の単離がもたらされた。
【0055】
実施例4
本実施例は、患者12由来の実施例1で作製されるTILの反応性を実証する。
【0056】
患者12由来の36の異なる腫瘍フラグメント(F1〜F36)から、実施例1に記載するようにTILを作製した。患者12由来のTIL、又はメラノーマTIL(コントロール)を、HPV 18 E6ペプチドプール、HPV 18 E7ペプチドプール又はgp100ペプチドプール(コントロール)をパルスした樹状細胞と共培養し、IFN-γを測定した。結果を
図5に示す。
図5に示すように、患者12からのF1及びF15腫瘍フラグメント由来のTILが、最も高レベルのIFN-γ産生を示した。
【0057】
自己DCsに、HPV 18 E6レンチウイルスベクター、又は緑色蛍光タンパク質(GFP)レンチウイルスベクターを形質導入した。他の自己細胞に、gp100ペプチドプール又はHPV 18 E6ペプチドプールをパルスした。形質導入された細胞を、患者12の腫瘍フラグメントF1由来のTIL、又はメラノーマTIL 1、2若しくは3と共培養した。結果を
図6に示す。
図6に示すように、患者12の腫瘍フラグメントF1から作製されたTILは、HPV 18 E6が形質導入されたDCsを認識し、TILが、天然にプロセッシングされ提示される抗原を標的とすることが示唆された。
【0058】
実施例5
本実施例は、HPV 18 E6反応性のCD8陽性T細胞を単離するために、患者12の腫瘍フラグメント1及び15由来のTILクローンの反応性を実証する。
【0059】
DCsにHPV 18 E6をロードし、患者12の腫瘍フラグメント1及び15由来のTILと共培養した。FACSを用いて、4-1BB陽性細胞についてTILをソートした。細胞を、CD4陽性及びCD8陽性集団へとさらにソートした。ソートした細胞を、ウェルあたり2つの細胞で96ウェルプレートにて培養した。HPV 18 E6ペプチドプールに対する腫瘍反応性についてクローンをスクリーニングした。F1由来のCD4陽性細胞の480ウェルのうち14が増殖(grew)し、2が反応性であった。F1由来のCD8陽性細胞の912ウェルのうち33が増殖し、反応性のものはなかった。F15由来のCD4陽性細胞の470ウェルのうち163が増殖し、32が反応性であった。F15由来のCD8陽性細胞の960ウェルのうち41が増殖し、反応性のものはなかった。
【0060】
CD4ソートした細胞はまた、HPV 18 E6ペプチドプール(E6タンパク質全体にまたがる(spanning)プール)、ペプチドなし、HPV 18 E6タンパク質のサブプール、又はHPV 18 E6ペプチドプールのペプチド30〜37との共培養時の腫瘍壊死因子(TNF)α分泌により測定されるように、反応性について試験した。各サブプールは、初期ペプチドプールの一部を含有した。結果を
図7A〜7Cに示す。
図7A〜7Cに示すように、患者12由来の腫瘍フラグメントF1のクローン3、12及び20は、HPV 18 E6に対して反応性であった。作製されたCD4陽性T細胞クローンは、11アミノ酸がオーバーラップした2つの連続15-mersを認識した。ペプチドは、エピトープHPV 18 E6
125-135を共有した。
【0061】
実施例6
本実施例は、患者12のF15腫瘍フラグメントから作製されたクローンが、HLA-DRB1
*15拘束性の様式で、HPV 18 E6
121-135を認識することを実証する。
【0062】
クローン3、12及び20を、表Bに記載するハプロタイプを有するドナーPBMCと共培養した。ドナーPBMCにHPV 18 E6
121-135をパルスした。
【0063】
【表B】
【0064】
TNFα分泌を測定した。結果を
図8A〜8Cに示す。
図8A〜8Cに示すように、患者12のF15フラグメントから作製されたクローンは、HLA-DRB1
*15及びHLA-DQB1
*06の両方で適合するPBMC上にパルスされたHPV 18 E6
121-135を認識したが、HLA-DQB1
*06のみが適合するPBMCを認識せず、HLA-DRB1
*15拘束性であることが示唆された。HLA-DRB1
*15のフェノタイプアレル頻度は、25パーセントである。
【0065】
患者12の腫瘍フラグメントF15のクローン3由来のTILを、HPV 18 E6
77-91又はHPV 18 E6
121-135をパルスした、自己PBMC又はドナーPBMCと共培養した。結果を
図9Aに示す。
図9Aに示すように、患者12の腫瘍フラグメントF15のクローン3由来のTILは、DRB1
*15のみが適合するPBMCを認識したが、DRB1
*06のみでは認識しなかった。
【0066】
患者12の腫瘍フラグメントF15のクローン20由来のTILを、HLA-DR、HLA-DQ若しくはHLA-DPに対する抗体、pan-クラスI抗体、又はpan-クラスII抗体の存在下、HPV 18 E6
121-135と共培養した。pan-クラスI及びII抗体は、それぞれ、T細胞がMHCクラスI又はクラスII分子と結合することをブロックする。結果を
図9Bに示す。
図9Bに示すように、患者12の腫瘍フラグメントF15のクローン20由来のTILによるコグネイト(cognate)ペプチドの認識は、HLA-DRに対するブロッキング抗体により阻害された。
図9A及び9Bに示すように、患者12の腫瘍フラグメントF15由来のTILは、DRB1
*15拘束性の様式で、HPV 18 E6
121-135を認識する。
【0067】
実施例7
本実施例は、患者4及び8由来のTILの反応性を実証する。
【0068】
患者4又は患者8由来の24の異なる腫瘍フラグメント(F1〜F24)から、実施例1に記載するようにTILを作製した。患者4由来のTIL、又はメラノーマTIL(コントロール)を、HPV 16 E6ペプチドプール、HPV 16 E7ペプチドプール又はgp100ペプチドプール(コントロール)をパルスした自己DCsと共培養し、IFN-γを測定した。結果を
図10に示す。
図10に示すように、それらの腫瘍フラグメントの中で、F4、F5、F14、F19及びF22腫瘍フラグメント由来のTILが、HPV 16 E6及びE7ペプチドプールをパルスした自己DCsに対する反応性を示した。
【0069】
患者8由来のTIL又はメラノーマTIL(コントロール)を、HPV 18 E6ペプチドプール、HPV 18 E7ペプチドプール又はgp100ペプチドプール(コントロール)をパルスした自己DCsと共培養し、IFN-γを測定した。結果を
図13に示す。
図13に示すように、HPV 18 E7ペプチドプールをパルスした自己DCsに対する反応性を示すTILが作製された。
【0070】
実施例8
本実施例は、HPV反応性のCD4及びCD8陽性T細胞を単離するために、患者4の腫瘍フラグメント由来のTILのクローニングを実証する。
【0071】
DCsにHPV 16 E6又はHPV 16 E7をロードし、患者4の腫瘍フラグメント由来のTILと共培養した。HPV 16 E6及びHPV 16 E7反応性のTILを、FACSを用いて、4-1BB陽性細胞について別個にソートした。実施例1に記載するように細胞の数を拡大した。細胞を、FACSにより、4-1BB陽性細胞へとさらにソートした。ソートした細胞を、ウェルあたり2つの細胞で96ウェルプレートにて培養した。細胞を、CD4陽性及びCD8陽性集団へとさらにソートした。HPV 16 E6又はE7ペプチドプールに対する腫瘍反応性についてクローンをスクリーニングした。
【0072】
結果を
図11A〜11Dに示す。
図11A〜11Dに示すように、HPV 16 E6及びE7に対する反応性を有するCD8陽性及びCD4陽性T細胞クローンが作製された。
【0073】
実施例9
本実施例は、抗HPV T細胞を用いた養子細胞療法が癌を治療することを実証する。
【0074】
研究のための組み入れ基準(Inclusion Criteria)は、(1)再発性/難治性若しくは転移性の子宮頸癌(cervical cancer)、又は任意の部位からのハイリスクHPV陽性癌、及び(2)白金を用いた事前化学療法(化学放射線療法を含む)、を含んだ。
【0075】
腫瘍を患者から切除した。実施例1に記載するように、腫瘍からTILを得て、増殖させ、TIL数を拡大し、数を拡大した該TILをHPV反応性についてスクリーニングした。
【0076】
患者は、-7日目及び-6日目における静脈内(IV)へのシクロホスファミド(60 mg/kg/日)、及び-5日目から-1日目までにおけるIVへのフルダラビン(25 mg/m2/日)の、骨髄非破壊的なリンパ球枯渇前処置レジメンを受けた。
【0077】
0日目にTILを患者に静脈内投与した。0日目から4日目まで、高用量のアルデスロイキン(aldeskeukin)(インターロイキン(IL)-2)(720,000 IU/kg)を患者に静脈内投与した。
【0078】
患者は、初期治療レジメンの完了(アルデスロイキン投与の最終日と定義される)から4から6週間後に、腫瘍な完全な評価を受けた。患者が、安定している疾患又は腫瘍の縮小を有した場合、完全な評価の繰り返しを、およそ3〜4ヶ月間は毎月、次いでオフスタディ基準が満たされるまで3〜4ヶ月毎に実施した。全ての測定可能病変であって、全ての病変臓器を代表する最大10までの病変を標的病変として同定し、ベースライン時に記録及び測定した。他の全ての病変(又は疾患部位)を非標的病変として同定し、これもまたベースライン時に記録した。病変を、表C(標的病変)及び表D(非標的病変)に記載するように、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors (RECIST) guideline)(バージョン1.0)に従って評価した。
【0079】
【表C】
【0080】
【表D】
【0081】
11人の患者を治療した。結果を表Eに要約する。
【0082】
【表E-1】
【表E-2】
【0083】
表Eに示すように、結果が利用可能であった8人の患者のうち、HPV反応性TILを用いた養子細胞療法により、3人の客観的反応者(objective responders)(OR)がもたらされ、それらはすべて部分奏功者(partial responders)(PR)であった。2つの部分奏功は、治療から2ヶ月後において持続し(患者3及び4)、1つの部分奏功(患者8)は、治療から9ヶ月後において持続する。
【0084】
患者4の胸部及び骨盤のコンピューター断層撮影(CT)スキャンを、治療前及び治療から9ヶ月後に実施した。結果を
図12A〜Fに示す。
図12A〜Bに示すように、大動脈周囲リンパ節における癌病変は、治療から9ヶ月後に100%縮小した。
図12C〜Dに示すように、左肺門リンパ節における癌病変も治療から9ヶ月後に100%縮小した。
図12E〜Fに示すように、総腸骨リンパ節における癌病変も治療から9ヶ月後に100%縮小した。
【0085】
患者8の肝臓の磁気共鳴画像(MRI)スキャンを、治療前及び治療から2ヶ月後に実施した。結果を
図14A〜14Bに示す。
図14A〜Bに示すように、肝臓における癌性の腫瘤は、治療から2ヶ月後に100%縮小した。患者8の腹部及び骨盤のCTスキャンも、治療前及び治療から2ヶ月後に実施した。結果を
図14C〜Hに示す。
図14C〜Dに示すように、後腹膜リンパ節における癌病変も100%縮小した。
図14E〜Fに示すように、腹壁における癌性の腫瘤も100%縮小した。さらに、
図14G〜Hに示すように、癌性の左結腸周囲腫瘤は、劇的に縮小した。
【0086】
実施例10
本実施例は、実施例9に記載の結果が得られてから9ヶ月後に得られた、実施例9に記載の臨床研究のアップデートされた結果を提供する。本実施例は、抗HPV T細胞を用いた養子細胞療法が癌を治療することを実証する。
【0087】
方法:HPV E6-及びE7-反応性について選択された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)(HPV-TIL)を用いて転移性HPV+ 癌を治療するための臨床試験を、実施例9に記載するように実施した。HPV-TIL注入は、実施例9に記載するように、先に骨髄非破壊的なコンディショニングを行い、続いて高用量のアルデスロイキンボーラス投与(bolus aldesleukin)を行った。ELISPOT、IFN-ガンマ産生及びCD137発現アッセイによりHPV反応性を評価した。
【0088】
結果:9人の子宮頸癌患者を当該研究で治療した。患者は、単回注入として、中央値にして81×10
9 T細胞(33から152×10
9の範囲)を受けた。注入された細胞は、6/8患者において、ハイリスクHPV E6及び/又はE7に対する反応性を有した。いずれのHPV反応性も有さない2人の患者は、治療に応答しなかった。HPV反応性を有する6人の患者のうち3人は、RECISTにより客観的な腫瘍縮小効果(objective tumor responses)(1 PR及び2 CR)を実証した。1人の患者は、39%の最良効果(best response)を有した。広範な転移を有する2人の患者は、治療から18ヶ月後及び11ヶ月後において持続する、完全な腫瘍縮小効果を有した。完全奏功を有する患者の1人は、化学療法抵抗性のHPV-16+ 扁平上皮癌を有し(実施例9の患者4)、もう1人は、化学放射線療法抵抗性のHPV-18+ 腺癌(実施例9の患者8)を有した。患者はともに、治療後の、HPV反応性T細胞での長期にわたる再増殖(repopulation)を実証した。HPV特異的T細胞の頻度の増加が、1人の患者では13ヶ月後に、もう1人の患者では6ヶ月後に検出可能であった。治療に応答しない、HPV反応性TILを有する2人の患者は、HPV反応性T細胞での再増殖を示さなかった。
【0089】
6人の非子宮頸癌患者も当該研究で治療した。1人の患者は、転移性扁桃腺癌の客観的な臨床反応、すなわち部分奏功を示し、治療から4ヶ月後において持続した(
図20A〜J)。
【0090】
結果を表F〜Gに示す。
【0091】
【表F】
【0092】
【表G】
【0093】
これらのデータは、HPV-TILが転移性子宮頸癌の永続的な完全退縮を媒介できること、及び細胞療法が上皮性悪性腫瘍の完全退縮を媒介できることを示す。これらのデータはまた、HPV-TILが転移性扁桃腺癌の退縮を媒介できることも示す。
【0094】
実施例11
本実施例は、抗HPV T細胞を用いた養子細胞療法による実施例10で得られた完全な腫瘍縮小効果をさらに説明する。
【0095】
方法
HPV-TILの作製:以前に記載されるように(Dudley et al., J. Immunother., 26(4):332-42(2003))、切除腫瘍の2 mmのフラグメントから腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を増殖させた。リンパ球アウトグロース(outgrowth)の2週間から3週間後に、培養物をフローサイトメトリーにより細胞構成について評価し、以下のHPVオンコプロテイン反応性の評価セクションに記載するように、インターフェロン(IFN)-ガンマ産生アッセイによりHPVタイプ特異的E6及びE7に対する反応性について評価した。CD3、CD4、CD8及びCD56に対して特異的な蛍光抗体(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリー分析を実施した。HPVオンコプロテインに対する反応性、急速増殖、高T細胞純度、及び高頻度のCD8+ T細胞に基づき、更なる拡大のために培養物を選択した。治療のために使用される細胞数への拡大は、G-REXガス透過性フラスコを用いた急速拡大プロトコルにより達成された(Dudley et al., J. Immunother., 26(4):332-42(2003);Jin et al., J. Immunother., 35(3):283-92(2012))。注入産物は、生細胞数、T細胞純度(フローサイトメトリー)、能力(potency)(IFN-γ産生)、無菌性(微生物学的研究)、及び腫瘍細胞の不存在(細胞病理学)について証明された。
【0096】
患者の治療:患者は、転移性子宮頸癌及び測定可能な疾患を有した。初回化学放射線療法又は転移性セッティングのいずれかにおいて、白金剤を用いた事前の治療を必要とした。コンディショニングレジメンは、IVへのシクロホスファミド60 mg/kgを2日間毎日、それに続いて、IVへのフルダラビン25 mg/m
2を5日間毎日、からなった。20分から30分間にわたって細胞をIV投与した。IVへのアルデスロイキン720,000 IU/kg/用量を、細胞注入から24時間以内に開始し、毒性のため又は最大15用量のために中止するまで、8時間毎に継続した。フィルグラスチムを細胞注入の翌日に開始し、好中球数が回復するまで継続した。
【0097】
腫瘍縮小効果(tumor responses):コンディショニングレジメン開始前4週間以内に、ベースラインイメージング研究を得た。フォローアップイメージングは、治療から6週間後、3つの評価のために毎月、3つの評価のために3ヶ月毎に、次いで2つの評価のために6ヶ月毎に得た。
【0098】
HPVオンコプロテイン反応性の評価:HPV反応性は、T細胞(40,000から100,000細胞)を、E6、E7、gp100、又はEBNA1及びBZLF1にわたるペプチドプール(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)(1 μM)をロードした自己の未熟樹状細胞(40,000細胞)と共培養することにより決定した。ペプチドプールは、11アミノ酸がオーバーラップした15-merのペプチドを含んだ。樹状細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)の接着フラクションから、又は磁気ビーズ単離(Miltenyi Biotec)を用いてPBMCから単離されたCD14+細胞から、10%ヒト血清並びに1000 IU/ml GM-CSF及び500 IU/ml IL-4を添加したDMEM中で5日から6日間培養することにより作製した。抗EBVコントロールT細胞は、10%ヒト血清及び3000 IU/ml IL-2を添加したAIM-V/RPMI培地中で、EBNA1及びBZLF1ペプチドプール(10 μg/mL)とともにPBMCを培養することにより、治療前に作製した。IFN-γ産生アッセイについて、上清中のIFN-γ濃度は、一晩共培養後に決定した(R&D Systems(Minneapolis, MN)又はThermo Fisher Scientific(Waltham, MA))。
【0099】
ELISPOT(Mabtech(Cincinnati, OH))分析を、製造者の説明書に従って実施した。簡単に述べると、捕捉抗体(クローン1-D1K, Mabtech)でプレコーティングされたELIIPプレート(Millipore(Billerica, MA)のWAIPSWU)に10,000個のエフェクター細胞及び40,000個のターゲット細胞を播種した。16時間から18時間のインキュベーション後、ビオチン化抗IFN-γ抗体(7-B6-1 biotin, Mabtech)を室温で2時間添加することにより、IFN-γ分泌を検出した。ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(Mabtech)とともに1時間インキュベーション後、基質試薬(5-ブロモ-4-クロロ-3'-インドリルホスフェート p-トルイジン/ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(5-bromo-4-chloro-3'-indolyphosphate p-toluidine/ nitro-blue tetrazolium chloride), Kirkegaard & Perry Laboratories, Inc.(Gaithersburg, MD))を添加して、スポット形成をさせた。スポット形成は、水道水ですすぐことにより停止させた。ImmunoSpot自動リーダー(Cellular Technology, Ltd.(Shaker Heights, OH))を用いてスポットをカウントした。E6又はE7に対するELIPSOT応答は、ネガティブコントロールの2倍を超え、且つ10スポット/ウェルより多い場合に陽性と定義した。
【0100】
CD137上方制御アッセイを、20時間から24時間の共培養後、フローサイトメトリー分析により実施した(Wolfl et al., Blood, 110(1):201-10(2007))。細胞をCD137、CD4、CD8及びCD3に対する蛍光抗体(BD Biosciences, San Jose, CA)で標識した。それらをヨウ化プロピジウム(BD Pharmingen, Franklin Lakes, New Jersey)で対比染色した後、BD FACSCanto IIセルアナライザー(BD Biosciences)を用いてデータ収集した。FlowJoソフトウェアMacバージョン10(TreeStar, Ashland, OR)を用いてデータを分析した。
【0101】
免疫組織化学:免疫組織化学染色を、NCIのLaboratory of Pathologyにて、標準的な手順に従って、ホルマリン固定パラフィン包埋転移性腫瘍の4 μM切片に対して実施した。脱パラフィン、再水和及び抗原賦活化(antigen retrieval)の後、腫瘍切片を、1:80希釈の抗ヒトCD4クローン1F6(Novocastra, Wetzlar, Germany)とともに2時間、1:50希釈の抗ヒトCD8クローンCD8/144B(Dako Corp., Glostrup, Denmark)とともに2時間、又は1:200希釈の抗ヒトp16クローンJC8(Santa Cruz, Dallas, Texas)とともに32分間、インキュベートした。CD4染色スライドは、AutostainerLink 48(Dako Corp.)で染色し、EnVision Flex+ 検出システム(Dako Corp.)を用いて可視化した。CD8及びp16染色スライドは、Ventana Benchmark XT(Ventana Medical Systems, Tucson, AZ)で染色し、Ultraview検出システム(Ventana Medical Systems)を用いて可視化した。画像は、10x 顕微鏡でキャプチャした。
【0102】
末梢血からのリンパ球サブセットの決定:手動の鑑別決定(manual differential determination)を用いた全血球計算は、Clinical Center Hematology Laboratoryにより実施された。T、B及びNK細胞に対するリンパ球フェノタイピングは、標準化された基準を用いて、NIH Immunology Flow Cytometry Laboratoryにより実施された。
【0103】
リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR):RNeasyキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、新鮮腫瘍組織の2 mmのフラグメントからRNAを単離した。qScriptcDNAスーパーミックス(Quanta BioSciences, Gaithersburg, MD)を用いて、逆転写ファーストストランドDNA合成を実施した。カスタムメイドのTaqmanプライマー及びプローブ配列(Applied Biosciences, Foster City, CA)を、HPV16-E6、HPV16-E7、HPV18-E6及びHPV18-E7のために使用した。容易に入手可能なグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プライマープローブセットを用いて、オンコプロテイン発現レベルを標準化した(Hs02758991_g1, Applied Biosciences, Foster City, CA)。7500 Fast Real-TimePCR System(Applied Biosciences)にてRT-PCRを実施した。
【0104】
血清サイトカインレベルの分析:HPV-TILでの治療前及び治療後に採取した患者の血清中、17のサイトカインレベル(IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-17、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、IFN-γ、単球走化性タンパク質(MCP)-1、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1β、及び腫瘍壊死因子(TNF)-α)を、Bio-PlexPro Human Cytokine 17-plex Assay(Bio-Rad Laboratories)を用いて、製造者の説明書に従って測定した。Bio-Plex200システム(Bio-Rad)によりサイトカインレベルを得た。
【0105】
ケースレポート
患者4は、HPV-TILでの治療14ヶ月前に、ステージ3Bの低分化子宮頸部扁平上皮癌と診断された。患者は、最初に、シスプラチン、ビンクリスチン及びブレオマイシンで治療され、それに続いて、ゲムシタビン+シスプラチンを用いた化学放射線療法、及び小線源療法で治療された。2ヶ月後、傍気管リンパ節(バイオプシーにより確認)、気管分岐部リンパ節及び両側肺門リンパ節に転移性癌が検出された。患者は、疾患の進行前に、トポテカン及びパクリタキセルを4サイクル受け、次いで、実施例9及び10に記載の臨床試験を施行された。HPV-TILは、切除した傍気管リンパ節から調製した。患者は、リンパ球枯渇化学療法を受け、それに続いて、152×10
9 HPV-TILの単回静脈内注入、及び2用量のアルデスロイキンを受けた。アルデスロイキンの投薬は、患者の疲労のために中止した。患者は、細胞注入から12日後、血液学的回復後に病院から退院した。
【0106】
患者8は、HPV-TILでの治療17ヶ月前に、ステージIB2の子宮頸部腺癌と診断された。原発腫瘍は、シスプラチンを用いた化学放射線療法、それに続いて小線源療法で治療された。5ヶ月後、患者は、化学放射線療法抵抗性の原発腫瘍(バイオプシーにより確認)を有することが注目された。救済手術により、傍大動脈及び腸骨リンパ節転移、並びに残存する骨盤の疾患(residual pelvic disease)が同定された。該患者の癌は、更に後腹膜リンパ節及び肝臓表面を侵すように進行し、右側水腎水尿管症及び両側性肺動脈塞栓を発症し、尿管ステント及び抗凝固療法を必要とした。次いで、本実施例に記載のプロトコルに従って、2つの腹膜小結節(peritoneal nodules)から作製されたHPV-TILを用いて患者を治療した。患者は、リンパ球枯渇化学療法を受け、それに続いて、75×10
9 HPV-TIL細胞及び8用量のアルデスロイキンを受けた。アルデスロイキンの投薬は、肺水腫に続発する低酸素症のために中止し、酸素補給を必要とし、利尿で解決された。細胞注入から11日後に、病院から退院した。
【0107】
完全な臨床的反応
患者はともに、治療前に播種性の進行性疾患を有した(
図12A〜F;
図14A〜H;
図15A〜B;
図16A〜D;
図21A〜H;及び
図22A〜H)。患者4は、傍大動脈縦隔リンパ節、両側肺門(bilateral lung hila)リンパ節、気管分岐部リンパ節、及び腸骨リンパ節を侵す転移性腫瘍を有した(
図15A;
図12A〜F;及び
図21A〜H)。患者8は、少なくとも7つの部位を侵す転移性癌を有した:肝臓表面上の2つの腫瘍、傍大動脈及び大動静脈(aortocaval)のリンパ節、腹壁、左骨盤における結腸周囲腫瘤、並びに右尿管を塞ぐ小結節(
図15B;
図14A〜H;
図16A〜D;及び
図22A〜H)。患者はそれぞれ、単回注入T細胞で治療され、数ヶ月にわたって生じる腫瘍退縮がもたらされた(
図15A〜B)。患者はともに、客観的な完全腫瘍縮小効果を生じ、治療から18ヶ月後及び11ヶ月後において持続した(
図21A〜H(患者4)及び
図22A〜H(患者8))。右尿管を塞ぐ腫瘍の退縮後、以前に留置された尿管ステントを患者8から除去した(
図22G及びH)。いずれの患者も追加の治療を受けなかった。患者はともに、フルタイムの雇用に復帰した。
【0108】
HPV-TILの毒性
細胞注入と関連する急性毒性は存在しなかった。自己免疫の有害事象は生じなかった。患者はともに、発熱と関連する一過性の血清サイトカインの上昇を呈したが(
図17A〜B)、いずれの患者も重篤なサイトカイン放出症候群は発症しなかった。凍結保存された血清中のサイトカインレベルを決定した。試験は以下のサイトカインについて行った:IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12(p70)、IL-13、IL-17、G-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IFN-γ、MCP-1、マクロファージ炎症性タンパク質1ベータ(MIP-1β)及びTNF-α。2の連続測定においてベースラインの2倍超のレベルを有するサイトカインを示す。アルデスロイキンは、細胞注入から8時間毎に投薬された(患者4は2用量を受け、患者8は8用量を受けた)。GCSFは、細胞注入翌日から開始して毎日投与され、好中球数が回復するまで継続された(患者4は11用量を受け、患者8は9用量を受けた)。
【0109】
アルデスロイキンは、プロトコルデザインによりトレランスまで投薬され、患者4は疲労のために、患者8は呼吸困難のために中止した。グレード3及びグレード4の有害事象を表Hに列記する。最も一般的な毒性は、血液学的であり、リンパ球枯渇コンディショニングレジメン(シクロホスファミド及びフルダラビン)の予想される作用であった。
【0110】
【表H】
【0111】
腫瘍抗原発現及びT細胞浸潤
HPV-TILの作製のために切除された転移性腫瘍は、患者4由来の扁平上皮癌及び患者8由来の腺癌であった。悪性細胞は、ハイリスクHPV感染の高感度指標であるp16INK4Aを発現した。HPVタイプ、並びにHPV-TILの標的抗原であるE6及びE7の発現レベルを、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により各患者腫瘍について決定した。患者4はHPV-16+の癌を有し、患者8はHPV-18+の癌を有した。両方の患者由来の腫瘍におけるT細胞浸潤は、患者4ではCD8+細胞が、患者8ではCD4+細胞が多数を示す混合組成を示した。CD4+及びCD8+ T細胞はともに、切除腫瘍から増殖した。注入されるHPV-TILは、患者4では19%のCD4+及び79%のCD8+ T細胞から構成され、患者8では15%のCD4+及び87%のCD8+ T細胞から構成された。
【0112】
HPV-TILによるHPVオンコプロテインの標的化
患者4に投与されるHPV-TILは、インターフェロン(IFN)-γ産生及びELISPOTアッセイにより実証されるように、E6及びE7オンコプロテインの両方に対して反応性であった(
図18A及びC)。ELISPOTアッセイにより、注入細胞の5%、及び7%超が、それぞれ、E6又はE7に対する応答を示した(
図18C及びD)。E6応答は、CD8+ T細胞媒介性であり、E7応答は、CD4+及びCD8+ T細胞媒介性であった。CD137上方制御アッセイにより測定されるように、合計で注入細胞の14%がHPV反応性を示した。患者8について、HPV-TILはE7に対して反応性であり(
図18B)、ELISPOTアッセイにより、T細胞の4%が抗原に応答した(
図18D)。この応答は、CD4+ T細胞により主に媒介された。
【0113】
オンコプロテイン反応性T細胞での再増殖
HPV-TIL注入に続いて、末梢血CD4+及びCD8+ T細胞が急速に増加したが、NK及びB細胞はしなかった(
図19A〜B)。注入T細胞の数の拡大は、IFN-γ産生、ELISPOT、及びCD137上方制御アッセイにより測定されるように、HPVオンコプロテインに対する末梢血T細胞反応性の確立及び持続と関連した(
図19C〜F)。患者はともに、治療前には、たとえ存在するとしても、E6又はE7に対する反応性を殆ど有さなかった。治療の後、患者4は、E6及びE7のロバストなT細胞認識を獲得した。患者8については、この認識は弱かったが、それにもかかわらず検出可能であり、注入T細胞と一致して、E7のみに対して向けられた。治療から1ヶ月後、患者4の末梢血T細胞の12%が、オンコプロテイン反応性であった(E6に対して7%及びE7に対して5%)(
図19E)。これらの抗原に対する反応性は、細胞注入から4ヶ月後及び13ヶ月後において持続され、末梢血T細胞の1%がオンコプロテイン認識を示した(
図19E)。患者8は、治療から1ヶ月後において、0.4%のHPV反応性T細胞を示した(
図19F)。この反応性は、治療から3ヶ月後及び6ヶ月後において、低レベルにもかかわらず持続された(
図19D及びF)。注入HPV-TILにおけるT細胞サブセットの反応性と一致して、患者で再増殖(repopulated)したHPV特異的T細胞は、主に、患者4についてはE6及びE7反応性CD8+ T細胞であり、患者8についてはE7反応性CD4+ T細胞であった。
【0114】
実施例12
本実施例は、実施例10及び11に記載の結果が得られてから4ヶ月後に得られた、実施例10及び11に記載の臨床研究からの、患者4及び8のアップデートされた結果を提供する。本実施例は、抗HPV T細胞を用いた養子細胞療法が癌を治療することを実証する。
【0115】
実施例10及び11に記載するように治療された患者4及び8の客観的な完全腫瘍縮小効果は、それぞれ、治療から22ヶ月後及び15ヶ月後において持続した。
【0116】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0117】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ(at least one)」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1つ以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項から選択される1つの事項(A又はB)、又は列挙した事項のうち2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特記のない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書に特記のない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的用語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての用語は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0118】
発明を実施するために本発明者らが知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施態様が本明細書に記載される。これらの好ましい実施態様のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。