特許第6616297号(P6616297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋電機製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6616297-通電装置 図000002
  • 特許6616297-通電装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616297
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】通電装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/02 20060101AFI20191125BHJP
   H01H 33/65 20090101ALI20191125BHJP
   H01H 31/02 20060101ALN20191125BHJP
【FI】
   H01H33/02 Z
   H01H33/65 Z
   !H01H31/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-527636(P2016-527636)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2015002884
(87)【国際公開番号】WO2015190087
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-120065(P2014-120065)
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】村島 稔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和樹
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−312255(JP,A)
【文献】 実公昭41−13630(JP,Y1)
【文献】 特開昭59−169010(JP,A)
【文献】 特開2013−089384(JP,A)
【文献】 特開2001−157359(JP,A)
【文献】 特開昭55−098425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/02
H01H 33/65
H01H 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の回路を開閉するラインスイッチと、ラインスイッチに着脱自在に取り付け、電気的に接続されるラインスイッチのスイッチングに伴うアークを消弧するアークシュートとを備える通電装置であって、
回路接続用の接続端子がアークシュートに設けられているものにおいて、
回路接続用の接続端子と、回路配線の接続端子との一方を導体バー、他方を導体バーが嵌合して導体バーに電気的に接続される導体受けとし、導体受けに対する導体バーの嵌合方向をラインスイッチに対するアークシュートの取付方向と一致させ、ラインスイッチに対してアークシュートを取り付けるのと同時に導体バーが導体受けに嵌合してアークシュートの回路接続用の接続端子と回路配線の接続端子とが電気的に接続されることを特徴とする通電装置。
【請求項2】
ラインスイッチからアークシュートを取り外すと、導体バーが導体受けから抜け出るように構成したことを特徴とする請求項1記載の通電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の回路を開閉するラインスイッチと、ラインスイッチに着脱自在に取り付けれてこのラインスイッチのスイッチングに伴うアークを消弧するアークシュートとを備える通電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式鉄道車両においては、車両の屋根に配置したパンタグラフにより架線(トロリー線)から直流電力を受電し、直流回路機器を介して原動機(電機機器)の主回路に通電している。このような直流回路機器には、通常、主回路の開閉を行うラインスイッチが介設されている(例えば、特許文献1参照)。そして、ラインスイッチに、そのスイッチングに伴うアークを消弧するためにアークシュートを着脱自在に取り付けて通電装置として構成したものがある。この場合、主回路に接続するための主回路接続用の接続端子はラインスイッチ自体に設けることが主流となっているが、主回路接続用の接続端子がアークシュートに設けられているものもある。
【0003】
ところで、鉄道車両の保守、点検時、主回路を開閉する役割を持つラインスイッチやアークシュートもその接点状態などが保守、点検されるが、このとき、ラインスイッチからアークシュートを一旦取り外す必要がある。ここで、上記の如く、主回路接続用の接続端子がアークシュートに設けられている場合に、この接続端子を取り外した上でしかアークシュートがラインスイッチから取り外せないのでは作業性が著しく悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-312255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、回路接続用の接続端子がアークシュートに設けられている場合でも、ラインスイッチに対してアークシュートを簡単に着脱できるようにした通電装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、電気機器の回路を開閉するラインスイッチと、ラインスイッチに着脱自在に取り付け、電気的に接続されるラインスイッチのスイッチングに伴うアークを消弧するアークシュートとを備える本発明の通電装置は、回路接続用の接続端子がアークシュートに設けられ、回路接続用の接続端子と、回路配線の接続端子との一方を導体バー、他方を導体バーが嵌合して導体バーに電気的に接続される導体受けとし、導体受けに対する導体バーの嵌合方向をラインスイッチに対するアークシュートの取付方向と一致させ、ラインスイッチに対してアークシュートを取り付けるのと同時に導体バーが導体受けに嵌合してアークシュートの回路接続用の接続端子と回路配線の接続端子とが電気的に接続されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ラインスイッチの所定位置に対してアークシュートに取り付けるのと同時に、導体バーが導体受けに嵌合してアークシュートの回路接続用の接続端子と回路配線の接続端子とが電気的に接続され、回路に電気的に接続される。
【0008】
ここで、導体バーが導体受けに嵌合した後、ロック機構を設けて導体受けからの導体バーの抜け止めをすることが考えられるが、これでは、部品点数が増えてコスト高を招くばかりか、ラインスイッチに対するアークシュートの着脱作業が面倒となる。本発明においては、ラインスイッチからアークシュートを取り外すと、導体バーが導体受けから抜け出るように構成することが好ましい。これによれば、ラインスイッチの所定位置からアークシュート取り外すのと同時に導体バーと導体受けとの嵌合が解除できることと、ラインスイッチの所定位置に対してアークシュートに取り付けるのと同時に導体バーが導体受けに嵌合してアークシュートの回路接続用の接続端子と回路配線の接続端子とが電気的に接続されることとが相俟って、保守、点検時に、特別な工具を必要としない極めて簡単な作業でラインスイッチの所定位置に対するアークシュートの着脱と、回路への電気的な接続とを行うことができ、ラインスイッチの接点の確認やアークシュート内部の点検が極めて容易になり、保守、点検時の作業性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の通電装置を備える電動式鉄道車両用の制御装置の模式的構成図。
図2】通電装置の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の通電装置として電動式鉄道車両の制御装置に適用されるものを例にその実施形態を説明する。以下においては、図2に示す姿勢を基準として、方向を示す用語を用いるものとする。
【0011】
図1に示すように、電動式鉄道車両の制御装置TCは、その屋根に配置したパンタグラフPgにより架線(トロリー線)Owから直流電力を受電し、高速度遮断器Cg等の直流回路機器Dcを介してインバータ装置Imに入力する。そして、インバータ装置Imは、その入力された直流電力を三相交流電力に変換し、図示省略の開閉器を介して原動機Moに供給する。この場合、インバータ装置Im及び開閉器により主回路Mcが構成される。そして、直流回路機器Dcには、本実施形態の通電装置Amが設けられている。
【0012】
図2を参照して、通電装置Amは、主回路Mcを開閉するラインスイッチLsとこのラインスイッチLsのスイッチングに伴うアークを消弧するアークシュートAsとを備える。ラインスイッチLsは、箱状のラインスイッチ本体1を備え、アークシュートAsもまた箱状のアークシュート本体2を備える。そして、アークシュート本体2が、取付ベース3上に設置されるラインスイッチ本体1の所定位置に着脱自在に取り付けられるようになっている。具体的には、アークシュート本体2をその上方からラインスイッチ本体1上に設置すると、ワンタッチロック機構Rmにより両者が連結され、ラインスイッチLsとアークシュートAsとが電気的に接続される。なお、ラインスイッチLs、アークシュートAs及びワンタッチロック機構Rmとしては、夫々公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0013】
アークシュート本体2には、パンタグラグPgからの直流電力が入力される入力側の接続端子4と、主回路Mcに出力する出力側の接続端子5とが設けられている。各接続端子4,5は、アークシュート本体2から外方に向けて水平に張り出す基部41,51と、基部41,51にボルトBoを介して夫々固定された、下方に向けて夫々湾曲するL字状の導体バー42,52とで構成されている。
【0014】
また、パンタグラフPgから通電装置Amへの回路配線61と通電装置Amから主回路Mcに通じる回路配線62との端部には、導体バー42,52の先端部が嵌合して導体バー42,52に電気的に接続される導体受けとして役割を果たす接続端子7,8がボルトBoにより夫々固定されている。各接続端子7,8は、夫々がフォークプラグ状のものであり、上方に向けて開口する姿勢で取付ベース3に立設した導体受け支え9,9で支持されている。なお、取付ベース3は、導体受け支え9,9相互の間を絶縁するために絶縁物で構成されている。
【0015】
導体バー42,52が嵌合する内面には所謂多面接触子71,81が設けられている。これにより、導体受けとして接続端子7,8に対する導体バー42,52の嵌合方向が、ラインスイッチ本体1に対するアークシュート本体2の取付方向と一致する。そして、ラインスイッチ本体1上にその上方からアークシュート本体2を設置すると、導体バー42,52が接続端子7,8に夫々挿入されて嵌合し、直流回路機器Dcとインバータ装置Imとが電気的に接続される。他方、ワンタッチロック機構Rmを解除し、アークシュート本体2を上方に持ち上げてラインスイッチ本体1から取り外すと、導体バー42,52が導体受けとしての接続端子7,8から抜け出る。この場合、特別な工具を使用せず、アークシュート本体2に対してラインスイッチ本体1を着脱することが可能となる。
【0016】
ここで、仮に各接続端子により導体バーを単純に挟み込む方式とすると、両者間の接触力を確保するために導体バーを導体受けで強く挟み込む必要があり、これでは、導体受けに対する導体バーの挿抜力が大きくなって、容易な着脱と安定的な電気的接続との両立が困難になる恐れがある。それに対して、導体バー42,52との接触面にベリリウム銅などの材質から構成される多面接触子71,81を設けておけば、通電面積が確実に確保されて電流伝達が満足されると共に、多数に分割されて個々の接点の接触圧は小さいため、比較的小さな挿抜力で着脱することができる。
【0017】
以上の実施形態によれば、ラインスイッチ本体1からアークシュート本体2を取り外すと同時に導体バー42,52が導体受けから抜け出て接続端子7,8との嵌合が解除できることと、ラインスイッチ本体1の所定位置に対してアークシュート本体2を取り付けるのと同時に導体バー42,52が導体受け7,8に嵌合してアークシュート本体2の主回路接続用の接続端子4,5(具体的には、導体バー42,52)、回路配線61,62の接続端子7.8とが電気的に接続されることとが相俟って、保守、点検時に、特別な工具を必要としない極めて簡単な作業でラインスイッチ本体1の所定位置に対するアークシュート本体2の着脱を行うことができ、ラインスイッチLsの接点の確認やアークシュートAs内部の点検が極めて容易になり、保守、点検時の作業性が大幅に向上する。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、アークシュートAsに設けた一方の接続端子4,5を導体バー、導体受けとしての他方の各接続端子7,8をフォークプラグ状でその内面に多面接触子71,81を設けたものとしたが、アークシュートAsに設けた一方の接続端子4,5を導体受け、その他方を導体バーとすることができ、また、導体バーは、全体がバーである必要はなく、導体受けに嵌合する部分がバー状のものであればよい。また、通電面積が確実に確保されて電流伝達が満足されると共に比較的小さな挿抜力で着脱することができるものであれば、ソケット式のものなど他の形態のものを採用することができる。更に、通電装置として電動式鉄道車両の制御装置に適用されるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は他の用途ものにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
Ls…ラインスイッチ、As…アークシュート、1…ラインスイッチ本体、2…アークシュート本体、4,5…主回路接続用の接続端子、42,52…導体バー(主回路接続用の接続端子)、7,8…回路配線の接続端子(導体受け)。
図1
図2