(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0026】
なお、図において、大きさ、膜(層)の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。
【0027】
なお、本明細書において、「膜」という表記と、「層」という表記と、を互いに入れ替えることが可能である。
【0028】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位(GND)またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。
【0029】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜的に用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書などに記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0030】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
【0031】
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「導電体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「導電体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
【0032】
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、例えば、半導体にDOS(Density of State)が形成されることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンである場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
【0033】
なお、本明細書において、Aが濃度Bの領域を有する、と記載する場合、例えば、Aのある領域における深さ方向全体の濃度がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の平均値がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の中央値がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の最大値がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の最小値がBである場合、Aのある領域における深さ方向の濃度の収束値がBである場合、測定上Aそのものの確からしい値の得られる領域における濃度がBである場合などを含む。
【0034】
また、本明細書において、Aが大きさB、長さB、厚さB、幅Bまたは距離Bの領域を有する、と記載する場合、例えば、Aのある領域における全体の大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の平均値がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の中央値がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の最大値がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の最小値がBである場合、Aのある領域における大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離の収束値がBである場合、測定上Aそのものの確からしい値の得られる領域での大きさ、長さ、厚さ、幅、または距離がBである場合などを含む。
【0035】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0036】
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0037】
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)と、が異なる場合がある。例えば、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の上面に形成されるチャネル領域の割合に対して、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0038】
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0039】
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体とゲート電極とが互いに重なる領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって、値を決定することができる。
【0040】
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
【0041】
なお、本明細書において、AがBより迫り出した形状を有すると記載する場合、上面図または断面図において、Aの少なくとも一端が、Bの少なくとも一端よりも外側にある形状を有することを示す場合がある。したがって、AがBより迫り出した形状を有すると記載されている場合、例えば上面図において、Aの一端が、Bの一端よりも外側にある形状を有すると読み替えることができる。
【0042】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0043】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
【0044】
<マイクロ波光導電減衰法>
以下に、マイクロ波光導電減衰法について図を用いて説明する。
【0045】
図1は、マイクロ波光導電減衰法を行うための装置の一例を示す模式図である。
図1に示す装置は、ワイドギャップ半導体の薄膜の評価に好適である。特に、トランジスタの半導体に用いられる、1nm以上1μm以下、2nm以上500nm以下、3nm以上200nm以下または5nm以上100nm以下のワイドギャップ半導体の評価に好適である。
【0046】
図1に示す装置は、パルスレーザ発振器301と、マイクロ波発振器302と、方向性結合器303と、導波管305と、ミキサー306と、信号処理装置307と、試料ステージ311と、を有する。なお、
図1において、導波管305は、コーナー部が曲率を有する形状を示しているが、これに限定されるものではない。試料ステージ311上には、試料320を配置することができる。試料320は、例えば、基板320bと、基板320b上の半導体320aと、を有する。
【0047】
試料ステージ311の上面には、導電体が配置されている。導電体としては、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、ステンレス鋼などの合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅およびチタンを含む導電体、銅およびマンガンを含む導電体、インジウム、スズおよび酸素を含む導電体、チタンおよび窒素を含む導電体などを用いてもよい。
【0048】
なお、試料320と試料ステージ311との間にスペーサ310を配置しても構わない。スペーサ310は、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。
【0049】
スペーサ310は、例えば、半導体320aの上面と、試料ステージ311の上面と、の距離が基板320bおよびスペーサ310におけるマイクロ波の波長の1/4程度となるように厚さを選択すればよい。なお、スペーサ310を配置することにより、試料320を上下逆さまに配置した場合でも評価が可能となる場合がある。試料320を上下逆さまに配置することで、例えば、基板320bと半導体320aとの界面の影響を多く含んだ情報が得られる場合がある。
【0050】
以下に、半導体320aのマイクロ波光導電減衰法による評価方法を示す。
【0051】
まず、マイクロ波発振器302より、マイクロ波を放射する。放射されたマイクロ波を特に進行波(入射波ともいう。)と呼ぶ。方向性結合器303を介して進行波が、導波管305と位相器315とに分かれる。導波管305を通った進行波は、試料320に入射する。このとき、試料320の半導体320aで反射したマイクロ波(特に反射波と呼ぶ。)が、再び導波管305を通る。反射波は、ミキサー306にて、位相器315を介して分かれた進行波と混合される。混合された信号は、信号処理装置307において検出される。
【0052】
このとき、信号処理装置307で検出される信号の強度は、半導体320aにおけるマイクロ波の反射率によって変化する。例えば、半導体320aのキャリア密度が高いほど、マイクロ波の反射率は高くなる。
【0053】
また、半導体320aは、励起光を吸収することで正孔および電子を生成する。即ち、励起光を半導体320aに照射することで、半導体320aのキャリア密度は高くなる。励起光は、ミラー313およびレンズ314を介して半導体320aに照射させればよい。
【0054】
マイクロ波の反射率はキャリア密度と正の相関を有することから、励起光を半導体320aに照射することで、半導体320aにおけるマイクロ波の反射率は高くなる。ある程度の時間、半導体320aに励起光を当て続けると、マイクロ波の反射率は、励起光によるキャリアの生成と、再結合などによるキャリアの消失と、のバランスによって一定値をとる。この値が、マイクロ波の反射率の最も高い値であることから、反射率のピーク値と呼ぶことができる。反射率のピーク値は、半導体320aの欠陥準位密度よって変化する場合がある。具体的には、半導体320aの浅い欠陥準位密度が高いときは、反射率のピーク値が低くなる。また、半導体320aの浅い欠陥準位密度が低いときは、反射率のピーク値が高くなる。これは、該欠陥準位が、キャリアの消失を助長するためと考えられる。
【0055】
なお、励起光としては、例えば、パルスレーザ発振器301から放射されたレーザ光を用いることができる。レーザ光は、半導体320aのエネルギーギャップよりも十分に高いエネルギーの波長を用いると好ましい。特に、半導体320aへの進入長が250nm未満、100nm未満、70nm未満または50nm未満のレーザ光を用いればよい。例えば、波長が337nm未満、315nm未満、300nm未満または270nm未満のレーザ光を用いればよい。また、光学系のコストの上昇を抑えるためには、レーザ光の波長は200nm以上とすることが好ましい。ただし、波長が200nm未満のレーザ光を用いても構わない。なお、ネオジムを添加したフッ化イットリウムリチウムをレーザ媒質に用いたレーザ(YLFレーザともいう。)の4倍高長波の波長は266nmである。なお、光の進入長は、光の強度が1/eに減衰する深さであり、下式で表すことができる。
【0057】
ここで、dは進入長[nm]を示し、λは波長[nm]を示し、kは減衰係数を示す。
【0058】
例えば、半導体320aのエネルギーギャップよりも十分に高いエネルギーの波長のレーザ光を用いない場合、検出感度を高めるためにレーザ光の出力をある程度高くしなくてはならない。そのため、半導体320aを変質させてしまう場合があった。半導体320aのエネルギーギャップよりも十分に高いエネルギーの波長のレーザ光を用いることで、レーザ光の出力を小さくした場合でも半導体320aのキャリア密度を十分に高くすることができる。したがって、上述したような、半導体320aの変質を抑制することができる。
【0059】
また、半導体320aへの進入長の浅いレーザ光を用いることで、基板320bなど下地の情報が測定結果に反映されることを抑制することができる。また、干渉効果により、半導体320aの厚さに応じて測定結果にムラが生じることを抑制することができる。
【0060】
次に、半導体320aへの励起光の照射を止めると、キャリアの生成が止まり、半導体320aのキャリア密度は低減していく。即ち、マイクロ波の反射率は低くなる。なお、マイクロ波の反射率はキャリア密度と正の相関を有するため、半導体320aにおけるキャリアの寿命(ライフタイム)を測定することもできる。キャリアの寿命は、マイクロ波の反射率のピーク値から、速やかに減衰する成分(τ1ともいう。)と、緩やかに減衰する成分(τ2ともいう。)と、に分けることができる。マイクロ波光導電減衰法によるτ1およびτ2の導出方法は、S. Yasuno, et al.: Journal of Applied Physics 2012 vol.112, 053715の記載を参照する。
【0061】
以上のようにして、半導体320aをマイクロ波光導電減衰法による評価を行うことができる。なお、試料ステージ311をX方向およびY方向に動かすことで、基板320bの面内において、複数個所の評価を行うことができる。
【0062】
なお、
図2のように、導波管305aおよび導波管305bの二つの導波管と、マジックT304と、有する装置を用いても構わない。なお、導波管305aと導波管305bとが、対称性を有すると好ましい。または、導波管305aと導波管305bとのマイクロ波の経路長が同じであればよい。なお、
図2において、導波管305aおよび導波管305bは、コーナー部が曲率を有する形状を示しているが、これに限定されるものではない。
【0063】
図2の場合も、まず、マイクロ波発振器302より、マイクロ波を放射する。方向性結合器303を介して進行波が、マジックT304と位相器315とに分かれる。マジックT304において、進行波は、導波管305aおよび導波管305bに分かれる。導波管305aを通った進行波は、励起光とともに試料320に入射する。また、導波管305bを通った進行波、そのまま試料320に入射する。このとき、試料320の半導体320aで反射したマイクロ波が、再び導波管305aおよび導波管305bを通り、マジックT304に戻る。導波管305aと導波管305bと、を通った反射波は、マジックT304において再び合流する、そして、マジックT304はそれらの和信号を出力する。そして、ミキサー306にて、位相器315を介して分かれた進行波と混合される。混合された信号は、信号処理装置307において検出される。
【0064】
このとき、導波管305bを通った反射波は、マイクロ波発振器302に起因したノイズ、および機械的振動による外乱などを、導波管305aを通った反射波と同じだけ含む。したがって、その和信号をとることで、ノイズなどの影響を低減することができる。そのため、
図2に示す装置は、励起光によるマイクロ波の反射率の変化を、さらに感度よく検出することができる。
【0065】
<ワイドギャップ半導体>
ワイドギャップ半導体は、シリコンなどと比べてエネルギーギャップが大きい半導体である。具体的には、エネルギーギャップが2eV以上5eV以下、2.2eV以上4.6eV以下、特に2.5eV以上4.0eV以下の半導体を指す。
【0066】
ワイドギャップ半導体は、エネルギーギャップが大きいことにより、マイクロ波光導電減衰法において、シリコンなどで用いられてきた波長349nmなどのレーザ光の進入長が深くなる。したがって、上述したような不具合が生じる場合があった。特に、欠陥準位密度が低いワイドギャップ半導体においては、レーザ光の進入長が従来考えられていた以上に深くなる場合がある。
【0067】
例えば、代表的なワイドギャップ半導体としては、酸化物半導体が挙げられる。以下に酸化物半導体の構造などを説明する。
【0068】
酸化物半導体は、非単結晶酸化物半導体と単結晶酸化物半導体とに分けられる。または、酸化物半導体は、例えば、結晶性酸化物半導体と非晶質酸化物半導体とに分けられる。
【0069】
なお、非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(C Axis Aligned
Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体などがある。また、結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体などがある。
【0070】
まずは、CAAC−OSについて説明する。
【0071】
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体の一つである。
【0072】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0073】
試料面と略平行な方向から、CAAC−OSの断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OSの被形成面または上面と平行に配列する。
【0074】
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC−OSの平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0075】
CAAC−OSに対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OSのout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0076】
なお、InGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OSのout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OSは、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0077】
CAAC−OSは、不純物濃度の低い酸化物半導体である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体内部に含まれると、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0078】
また、CAAC−OSは、欠陥準位密度の低い酸化物半導体である。例えば、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。したがって、レーザ光の進入長が非晶質OSよりも深くなる場合がある。
【0079】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0080】
また、CAAC−OSを用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
【0081】
次に、微結晶酸化物半導体について説明する。
【0082】
微結晶酸化物半導体は、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。微結晶酸化物半導体に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体を、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)と呼ぶ。また、nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0083】
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OSに対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc−OSに対し、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OSに対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc−OSに対しナノビーム電子回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0084】
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。したがって、レーザ光の進入長が非晶質OSよりも深くなる場合がある。
【0085】
次に、非晶質酸化物半導体について説明する。
【0086】
非晶質酸化物半導体は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶部を有さない酸化物半導体である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体が一例である。
【0087】
非晶質酸化物半導体は、高分解能TEM像において結晶部を確認することができない。
【0088】
非晶質酸化物半導体に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物半導体に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物半導体に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターンが観測される。
【0089】
なお、酸化物半導体は、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の物性を示す構造を有する場合がある。そのような構造を有する酸化物半導体を、特に非晶質ライク酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like Oxide Semiconductor)と呼ぶ。
【0090】
a−like OSは、高分解能TEM像において鬆(ボイドともいう。)が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。a−like OSは、TEMによる観察程度の微量な電子照射によって、結晶化が起こり、結晶部の成長が見られる場合がある。一方、良質なnc−OSであれば、TEMによる観察程度の微量な電子照射による結晶化はほとんど見られない。
【0091】
なお、a−like OSおよびnc−OSの結晶部の大きさの計測は、高分解能TEM像を用いて行うことができる。例えば、InGaZnO
4の結晶は層状構造を有し、In−O層の間に、Ga−Zn−O層を2層有する。InGaZnO
4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有する。よって、これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。そのため、高分解能TEM像における格子縞に着目し、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所においては、それぞれの格子縞がInGaZnO
4の結晶のa−b面に対応する。
【0092】
また、酸化物半導体は、構造ごとに密度が異なる場合がある。例えば、ある酸化物半導体の組成がわかれば、該組成と同じ組成における単結晶の密度と比較することにより、その酸化物半導体の構造を推定することができる。例えば、単結晶の密度に対し、a−like OSの密度は78.6%以上92.3%未満となる。また、例えば、単結晶の密度に対し、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は92.3%以上100%未満となる。なお、単結晶の密度に対し密度が78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0093】
上記について、具体例を用いて説明する。例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO
4の密度は6.357g/cm
3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm
3以上5.9g/cm
3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm
3以上6.3g/cm
3未満となる。
【0094】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成の単結晶に相当する密度を算出することができる。所望の組成の単結晶の密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて算出すればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて算出することが好ましい。
【0095】
なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、微結晶酸化物半導体、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0096】
以上が、酸化物半導体の構造の説明である。
【0097】
欠陥準位密度の低い半導体は、トランジスタ、光電変換素子または発光素子などに用いるときに、高い効率および高い信頼性を得ることができる。例えば、前述のマイクロ波光導電減衰法によって、キャリアの寿命のうち、速やかに減衰する成分τ1が30nsec以上、好ましくは40nsec以上となる領域を有する半導体は、トランジスタ、光電変換素子または発光素子などに好適である。なお、τ1は、キャリアの再結合が起こりやすいほど短くなる。キャリアの再結合は、不純物準位密度が高いほど起こりやすいため、τ1は長いほど好ましい。
【0098】
<トランジスタ>
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタについて説明する。
【0099】
<トランジスタ構造>
図3(A)および
図3(B)は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図である。
図3(A)は上面図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示す一点鎖線A1−A2、および一点鎖線A3−A4に対応する断面図である。なお、
図3(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0100】
図3(A)および
図3(B)に示すトランジスタは、基板400上の導電体413と、基板400上および導電体413上の凸部を有する絶縁体402と、絶縁体402の凸部上の半導体406aと、半導体406a上の半導体406bと、半導体406bの上面および側面と接し、間隔を開けて配置された層409aおよび層409bと、層409a上の導電体416aと、層409b上の導電体416bと、半導体406b上、層409a上、層409b上、導電体416a上および導電体416b上の半導体406cと、半導体406c上の絶縁体412と、絶縁体412上の導電体404と、導電体416a上、導電体416b上および導電体404上の絶縁体408と、絶縁体408上の絶縁体418と、を有する。なお、ここでは、導電体413をトランジスタの一部としているが、これに限定されない。例えば、導電体413がトランジスタとは独立した構成要素であるとしてもよい。
【0101】
なお、半導体406cは、A3−A4断面において、少なくとも半導体406bの上面および側面と接する。また、導電体404は、A3−A4断面において、半導体406cおよび絶縁体412を介して半導体406bの上面および側面と面する。また、導電体413は、絶縁体402を介して半導体406bの下面と面する。また、絶縁体402が凸部を有さなくても構わない。また、導電体413を有さなくても構わない。また、半導体406aを有さなくても構わない。また、半導体406cを有さなくても構わない。また、絶縁体408を有さなくても構わない。また、絶縁体418を有さなくても構わない。また、層409aを有さなくても構わない。また、層409bを有さなくても構わない。
【0102】
なお、半導体406bは、トランジスタのチャネル形成領域としての機能を有する。また、導電体404は、トランジスタの第1のゲート電極(フロントゲート電極ともいう。)としての機能を有する。また、導電体413は、トランジスタの第2のゲート電極(バックゲート電極ともいう。)としての機能を有する。また、導電体416aおよび導電体416bは、トランジスタのソース電極およびドレイン電極としての機能を有する。また、絶縁体408は、バリア層としての機能を有する。絶縁体408は、例えば、酸素または/および水素をブロックする機能を有する。または、絶縁体408は、例えば、半導体406aまたは/および半導体406cよりも、酸素または/および水素をブロックする機能が高い。
【0103】
なお、絶縁体402は過剰酸素を含む絶縁体であると好ましい。
【0104】
例えば、過剰酸素を含む絶縁体は、加熱処理によって酸素を放出する機能を有する絶縁体である。例えば、過剰酸素を含む酸化シリコン層は、加熱処理などによって酸素を放出することができる酸化シリコン層である。したがって、絶縁体402は膜中を酸素が移動可能な絶縁体である。即ち、絶縁体402は酸素透過性を有する絶縁体とすればよい。例えば、絶縁体402は、半導体406aよりも酸素透過性の高い絶縁体とすればよい。
【0105】
過剰酸素を含む絶縁体は、半導体406b中の酸素欠損を低減させる機能を有する場合がある。半導体406b中で酸素欠損は、DOSを形成し、正孔トラップなどとなる。また、酸素欠損のサイトに水素が入ることによって、キャリアである電子を生成することがある。したがって、半導体406b中の酸素欠損を低減することで、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
【0106】
ここで、加熱処理によって酸素を放出する絶縁体は、TDS分析にて、100℃以上700℃以下または100℃以上500℃以下の表面温度の範囲で1×10
18atoms/cm
3以上、1×10
19atoms/cm
3以上または1×10
20atoms/cm
3以上の酸素(酸素原子数換算)を放出することもある。
【0107】
ここで、TDS分析を用いた酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0108】
測定試料をTDS分析したときの気体の全放出量は、放出ガスのイオン強度の積分値に比例する。そして標準試料との比較により、気体の全放出量を計算することができる。
【0109】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコン基板のTDS分析結果、および測定試料のTDS分析結果から、測定試料の酸素分子の放出量(N
O2)は、下に示す式で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量電荷比32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。CH
3OHの質量電荷比は32であるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0111】
N
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。S
H2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、N
H2/S
H2とする。S
O2は、測定試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。上に示す式の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として、例えば1×10
16atoms/cm
2の水素原子を含むシリコン基板を用いて測定する。
【0112】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0113】
なお、N
O2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0114】
または、加熱処理によって酸素を放出する絶縁体は、過酸化ラジカルを含むこともある。具体的には、過酸化ラジカルに起因するスピン密度が、5×10
17spins/cm
3以上であることをいう。なお、過酸化ラジカルを含む絶縁体は、ESRにて、g値が2.01近傍に非対称の信号を有することもある。
【0115】
または、過剰酸素を含む絶縁体は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiO
X(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiO
X(X>2))は、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)により測定した値である。
【0116】
図3(B)に示すように、半導体406bの側面は、層409aおよび層409bと接する。また、導電体404の電界によって、半導体406bを電気的に取り囲むことができる(導電体から生じる電界によって、半導体を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。)。そのため、半導体406bの全体(バルク)にチャネルが形成される場合がある。s−channel構造では、トランジスタのソース−ドレイン間に大電流を流すことができ、導通時の電流(オン電流)を高くすることができる。
【0117】
高いオン電流が得られるため、s−channel構造は、微細化されたトランジスタに適した構造といえる。トランジスタを微細化できるため、該トランジスタを有する半導体装置は、集積度の高い、高密度化された半導体装置とすることが可能となる。例えば、トランジスタは、チャネル長が好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下の領域を有し、かつ、トランジスタは、チャネル幅が好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下の領域を有する。
【0118】
また、導電体413に、ソース電極よりも低い電圧または高い電圧を印加し、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向またはマイナス方向へ変動させてもよい。例えば、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることで、ゲート電圧が0Vであってもトランジスタが非導通状態(オフ状態)となる、ノーマリーオフが実現できる場合がある。なお、導電体413に印加する電圧は、可変であってもよいし、固定であってもよい。導電体413に印加する電圧を可変にする場合、電圧を制御する回路を導電体413と電気的に接続してもよい。
【0119】
次に、半導体406a、半導体406b、半導体406cなどに適用可能な半導体について説明する。なお、半導体406a、半導体406b、半導体406cなどには、例えば、前述したワイドギャップ半導体を適用しても構わない。
【0120】
半導体406bは、例えば、インジウムを含む酸化物半導体である。半導体406bは、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、半導体406bは、元素Mを含むと好ましい。元素Mは、好ましくは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステンなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い元素である。または、元素Mは、例えば、酸化物半導体のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、半導体406bは、亜鉛を含むと好ましい。酸化物半導体は、亜鉛を含むと結晶化しやすくなる場合がある。
【0121】
ただし、半導体406bは、インジウムを含む酸化物半導体に限定されない。半導体406bは、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物などの、インジウムを含まず、亜鉛を含む酸化物半導体、ガリウムを含む酸化物半導体、スズを含む酸化物半導体などであっても構わない。
【0122】
半導体406bは、例えば、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。半導体406bのエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。
【0123】
例えば、半導体406aおよび半導体406cは、半導体406bを構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から構成される酸化物半導体である。半導体406bを構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から半導体406aおよび半導体406cが構成されるため、半導体406aと半導体406bとの界面、および半導体406bと半導体406cとの界面において、欠陥準位が形成されにくい。
【0124】
半導体406a、半導体406bおよび半導体406cは、少なくともインジウムを含むと好ましい。なお、半導体406aがIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高いとする。また、半導体406bがIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25atomic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%より高く、Mが66atomic%未満とする。また、半導体406cがIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高くする。なお、半導体406cは、半導体406aと同種の酸化物を用いても構わない。ただし、半導体406aまたは/および半導体406cがインジウムを含まなくても構わない場合がある。例えば、半導体406aまたは/および半導体406cが酸化ガリウムであっても構わない。なお、半導体406a、半導体406bおよび半導体406cに含まれる各元素の原子数が、簡単な整数比にならなくても構わない。
【0125】
半導体406bは、半導体406aおよび半導体406cよりも電子親和力の大きい酸化物を用いる。例えば、半導体406bとして、半導体406aおよび半導体406cよりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
【0126】
なお、インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有する。そのため、半導体406cがインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウム原子割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とする。
【0127】
このとき、ゲート電圧を印加すると、半導体406a、半導体406b、半導体406cのうち、電子親和力の大きい半導体406bにチャネルが形成される。
【0128】
ここで、半導体406aと半導体406bとの間には、半導体406aと半導体406bとの混合領域を有する場合がある。また、半導体406bと半導体406cとの間には、半導体406bと半導体406cとの混合領域を有する場合がある。混合領域は、欠陥準位密度が低くなる。そのため、半導体406a、半導体406bおよび半導体406cの積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続接合ともいう。)バンド図となる。
【0129】
このとき、電子は、半導体406a中および半導体406c中ではなく、半導体406b中を主として移動する。上述したように、半導体406aと半導体406bとの界面における欠陥準位密度、および半導体406bと半導体406cとの界面における欠陥準位密度を低くすることによって、半導体406b中で電子の移動が阻害されることが少なく、トランジスタのオン電流を高くすることができる。
【0130】
トランジスタのオン電流は、電子の移動を阻害する要因を低減するほど、高くすることができる。例えば、電子の移動を阻害する要因のない場合、効率よく電子が移動すると推定される。電子の移動は、例えば、チャネル形成領域の物理的な凹凸が大きい場合にも阻害される。
【0131】
トランジスタのオン電流を高くするためには、例えば、半導体406bの上面または下面(被形成面、ここでは半導体406a)の、1μm×1μmの範囲における二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)粗さが1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における平均面粗さ(Raともいう。)が1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における最大高低差(P−Vともいう。)が10nm未満、好ましくは9nm未満、さらに好ましくは8nm未満、より好ましくは7nm未満とすればよい。RMS粗さ、RaおよびP−Vは、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製走査型プローブ顕微鏡システムSPA−500などを用いて測定することができる。
【0132】
または、例えば、チャネルの形成される領域中の欠陥準位密度が高い場合にも、電子の移動は阻害される。
【0133】
例えば、半導体406bが酸素欠損(V
Oとも表記。)を有する場合、酸素欠損のサイトに水素が入り込むことでドナー準位を形成することがある。以下では酸素欠損のサイトに水素が入り込んだ状態をV
OHと表記する場合がある。V
OHは電子を散乱するため、トランジスタのオン電流を低下させる要因となる。なお、酸素欠損のサイトは、水素が入るよりも酸素が入る方が安定する。したがって、半導体406b中の酸素欠損を低減することで、トランジスタのオン電流を高くすることができる場合がある。
【0134】
また、チャネルの形成される領域中の欠陥準位密度が高いと、トランジスタの電気特性を変動させる場合がある。例えば、欠陥準位がキャリア発生源となる場合、トランジスタのしきい値電圧を変動させる場合がある。
【0135】
半導体406bの酸素欠損を低減するために、例えば、絶縁体402に含まれる過剰酸素を、半導体406aを介して半導体406bまで移動させる方法などがある。この場合、半導体406aは、酸素透過性を有する層(酸素を通過または透過させる層)であることが好ましい。
【0136】
酸化物半導体中の欠陥準位密度は、例えば、マイクロ波光導電減衰法またはESRなどによって評価することができる。例えば、欠陥準位を有する酸化物半導体は、マイクロ波光導電減衰法によって観測されるマイクロ波の反射率のピーク値が低くなる場合がある。また、ESRによって、g値が1.89以上1.96以下(代表的には、1.93または1.94)にシグナルが現れる場合がある。
【0137】
したがって、例えば、半導体406aまたは/および半導体406bが、マイクロ波光導電減衰法によって、キャリアの寿命のうち、速やかに減衰する成分τ1が30nsec以上200nsec以下、好ましくは40nsec以上200nsec以下となる領域を有すると好ましい。
【0138】
なお、トランジスタがs−channel構造を有する場合、半導体406bの全体にチャネルが形成される。したがって、半導体406bが厚いほどチャネル領域は大きくなる。即ち、半導体406bが厚いほど、トランジスタのオン電流を高くすることができる。例えば、10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上の厚さの領域を有する半導体406bとすればよい。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、例えば、300nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下の厚さの領域を有する半導体406bとすればよい。なお、チャネル形成領域が縮小していくと、半導体606bが薄いほうがトランジスタの電気特性が向上する場合もある。よって、半導体606bの厚さが10nm未満であってもよい。
【0139】
また、トランジスタのオン電流を高くするためには、半導体406cの厚さは小さいほど好ましい。例えば、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下の領域を有する半導体406cとすればよい。一方、半導体406cは、チャネルの形成される半導体406bへ、隣接する絶縁体を構成する酸素以外の元素(水素、シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、半導体406cは、ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上の厚さの領域を有する半導体406cとすればよい。また、半導体406cは、絶縁体402などから放出される酸素の外方拡散を抑制するために、酸素をブロックする性質を有すると好ましい。
【0140】
また、信頼性を高くするためには、半導体406aは厚く、半導体406cは薄いことが好ましい。例えば、10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上の厚さの領域を有する半導体406aとすればよい。半導体406aの厚さを、厚くすることで、隣接する絶縁体と半導体406aとの界面からチャネルの形成される半導体406bまでの距離を離すことができる。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、例えば、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下の厚さの領域を有する半導体406aとすればよい。
【0141】
例えば、半導体406bと半導体406aとの間に、例えば、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、1×10
19atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは2×10
18atoms/cm
3以下のシリコン濃度となる領域を有する。また、半導体406bと半導体406cとの間に、SIMSにおいて、1×10
19atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは2×10
18atoms/cm
3以下のシリコン濃度となる領域を有する。
【0142】
また、半導体406bは、SIMSにおいて、1×10
16atoms/cm
3以上2×10
20atoms/cm
3以下、好ましくは1×10
16atoms/cm
3以上5×10
19atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
16atoms/cm
3以上1×10
19atoms/cm
3以下、さらに好ましくは1×10
16atoms/cm
3以上5×10
18atoms/cm
3以下の水素濃度となる領域を有する。また、半導体406bの水素濃度を低減するために、半導体406aおよび半導体406cの水素濃度を低減すると好ましい。半導体406aおよび半導体406cは、SIMSにおいて、2×10
20atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
19atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
19atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下の水素濃度となる領域を有する。また、半導体406bは、SIMSにおいて、1×10
15atoms/cm
3以上5×10
19atoms/cm
3以下、好ましくは1×10
15atoms/cm
3以上5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
15atoms/cm
3以上1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは1×10
15atoms/cm
3以上5×10
17atoms/cm
3以下の窒素濃度となる領域を有する。また、半導体406bの窒素濃度を低減するために、半導体406aおよび半導体406cの窒素濃度を低減すると好ましい。半導体406aおよび半導体406cは、SIMSにおいて、5×10
19atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
17atoms/cm
3以下の窒素濃度となる領域を有する。
【0143】
上述の3層構造は一例である。例えば、半導体406aまたは半導体406cのない2層構造としても構わない。または、半導体406aの上もしくは下、または半導体406c上もしくは下に、半導体406a、半導体406bおよび半導体406cとして例示した半導体のいずれか一を有する4層構造としても構わない。または、半導体406aの上、半導体406aの下、半導体406cの上、半導体406cの下のいずれか二箇所以上に、半導体406a、半導体406bおよび半導体406cとして例示した半導体のいずれか一を有するn層構造(nは5以上の整数)としても構わない。
【0144】
基板400としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムなどの化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
【0145】
また、基板400として、可とう性基板を用いてもよい。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板400に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。なお、基板400として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。また、基板400が伸縮性を有してもよい。また、基板400は、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板400の厚さは、例えば、5μm以上700μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは15μm以上300μm以下とする。基板400を薄くすると、半導体装置を軽量化することができる。また、基板400を薄くすることで、ガラスなどを用いた場合にも伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板400上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。即ち、丈夫な半導体装置を提供することができる。
【0146】
可とう性基板である基板400としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。可とう性基板である基板400は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可とう性基板である基板400としては、例えば、線膨張率が1×10
−3/K以下、5×10
−5/K以下、または1×10
−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可とう性基板である基板400として好適である。
【0147】
導電体413としては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅およびチタンを含む導電体、銅およびマンガンを含む導電体、インジウム、スズおよび酸素を含む導電体、チタンおよび窒素を含む導電体などを用いてもよい。
【0148】
絶縁体402としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体402としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。
【0149】
絶縁体402は、基板400からの不純物の拡散を防止する役割を有してもよい。また、半導体406bが酸化物半導体である場合、絶縁体402は、半導体406bに酸素を供給する役割を担うことができる。
【0150】
層409aおよび層409bとしては、例えば、透明導電体、酸化物半導体、窒化物半導体または酸化窒化物半導体を用いればよい。層409aおよび層409bとしては、例えば、インジウム、スズおよび酸素を含む層、インジウムおよび亜鉛を含む層、インジウム、タングステンおよび亜鉛を含む層、スズおよび亜鉛を含む層、亜鉛およびガリウムを含む層、亜鉛およびアルミニウムを含む層、亜鉛およびフッ素を含む層、亜鉛およびホウ素を含む層、スズおよびアンチモンを含む層、スズおよびフッ素を含む層またはチタンおよびニオブを含む層などを用いればよい。または、これらの層が水素、炭素、窒素、シリコン、ゲルマニウムまたはアルゴンを含んでも構わない。
【0151】
層409aおよび層409bは、可視光線を透過する性質を有しても構わない。または、層409aおよび層409bは、可視光線、紫外線、赤外線もしくはX線を、反射もしくは吸収することで透過させない性質を有しても構わない。このような性質を有することで、迷光によるトランジスタの電気特性の変動を抑制できる場合がある。
【0152】
また、層409aおよび層409bは、半導体406bなどとの間にショットキー障壁を形成しない層を用いると好ましい場合がある。こうすることで、トランジスタのオン特性を向上させることができる。
【0153】
導電体416aおよび導電体416bとしては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅およびチタンを含む導電体、銅およびマンガンを含む導電体、インジウム、スズおよび酸素を含む導電体、チタンおよび窒素を含む導電体などを用いてもよい。
【0154】
なお、層409aおよび層409bは、導電体416aおよび導電体416bよりも高抵抗の層を用いると好ましい場合がある。また、層409aおよび層409bは、トランジスタのチャネルよりも低抵抗の層を用いると好ましい場合がある。例えば、層409aおよび層409bの抵抗率を、0.1Ωcm以上100Ωcm以下、0.5Ωcm以上50Ωcm以下、または1Ωcm以上10Ωcm以下とすればよい。層409aおよび層409bの抵抗率を上述の範囲とすることにより、チャネルとドレインとの境界部における電界集中を緩和することができる。そのため、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。また、ドレインから生じる電界に起因したパンチスルー電流を低減することができる。そのため、チャネル長の短いトランジスタにおいても、飽和特性を良好にすることができる。なお、ソースとドレインとが入れ替わらない回路構成であれば、層409aまたは層409bのいずれか一方のみ(例えば、ドレイン側)を配置するほうが好ましい場合がある。
【0155】
絶縁体412としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体412としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。
【0156】
導電体404としては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅およびチタンを含む導電体、銅およびマンガンを含む導電体、インジウム、スズおよび酸素を含む導電体、チタンおよび窒素を含む導電体などを用いてもよい。
【0157】
絶縁体408としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。絶縁体408は、好ましくは酸化アルミニウム、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。
【0158】
絶縁体418としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体418としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。
【0159】
なお、
図3では、トランジスタの第1のゲート電極である導電体404と第2のゲート電極である導電体413とが、電気的に接続しない例を示したが、本発明の一態様に係るトランジスタの構造はこれに限定されない。例えば、
図4(A)に示すように、導電体404と導電体413とが電気的に接続する構造であっても構わない。このような構成とすることで、導電体404と導電体413とに同じ電位が供給されるため、トランジスタのスイッチング特性を向上させることができる。または、
図4(B)に示すように、導電体413を有さない構造であっても構わない。
【0160】
また、
図5(A)は、トランジスタの上面図の一例である。
図5(A)の一点鎖線F1−F2および一点鎖線F3−F4に対応する断面図の一例を
図5(B)に示す。なお、
図5(A)では、理解を容易にするため、絶縁体などの一部を省略して示す。
【0161】
また、
図3などではソース電極およびドレイン電極として機能する導電体416aおよび導電体416bが半導体406bの上面および側面、絶縁体402の上面などと接する例を示したが、本発明の一態様に係るトランジスタの構造はこれに限定されない。例えば、
図5に示すように、導電体416aおよび導電体416bが半導体406bの上面のみと接する構造であっても構わない。
【0162】
また、
図5(B)に示すように、絶縁体418上に絶縁体428を有してもよい。絶縁体428は、上面が平坦な絶縁体であると好ましい。なお、絶縁体428は、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体428としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。絶縁体428の上面を平坦化するために、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法などによって平坦化処理を行ってもよい。
【0163】
または、絶縁体428は、樹脂を用いてもよい。例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、シリコーンなどを含む樹脂を用いればよい。樹脂を用いることで、絶縁体428の上面を平坦化処理しなくてもよい場合がある。また、樹脂は短い時間で厚い膜を成膜することができるため、生産性を高めることができる。
【0164】
また、
図5(A)および
図5(B)に示すように、絶縁体428上に導電体424aおよび導電体424bを有してもよい。導電体424aおよび導電体424bは、例えば、配線としての機能を有する。また、絶縁体428が開口部を有し、該開口部を介して導電体416aと導電体424aとが電気的に接続しても構わない。また、また、絶縁体428が別の開口部を有し、該開口部を介して導電体416bと導電体424bとが電気的に接続しても構わない。このとき、それぞれの開口部内に導電体426a、導電体426bを有しても構わない。
【0165】
導電体424aおよび導電体424bとしては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅およびチタンを含む導電体、銅およびマンガンを含む導電体、インジウム、スズおよび酸素を含む導電体、チタンおよび窒素を含む導電体などを用いてもよい。
【0166】
図5に示すトランジスタは、層409aおよび層409bは、半導体406bの側面と接しない。したがって、第1のゲート電極として機能する導電体404から半導体406bの側面に向けて印加される電界が、層409aおよび層409bなどによって遮蔽されにくい構造である。また、層409aおよび層409bは、絶縁体402の上面と接しない。そのため、絶縁体402から放出される過剰酸素(酸素)が層409aおよび層409bを酸化させるために消費されない。したがって、絶縁体402から放出される過剰酸素(酸素)を、半導体406bの酸素欠損を低減するために効率的に利用することのできる構造である。即ち、
図5に示す構造のトランジスタは、高いオン電流、高い電界効果移動度、低いサブスレッショルドスイング値、高い信頼性などを有する電気特性の優れたトランジスタである。
【0167】
図6(A)および
図6(B)は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図である。
図6(A)は上面図であり、
図6(B)は、
図6(A)に示す一点鎖線G1−G2、および一点鎖線G3−G4に対応する断面図である。なお、
図6(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0168】
トランジスタは、
図6に示すように、層409a、層409b、導電体416aおよび導電体416bを有さず、導電体426aおよび導電体426bと、半導体406bと、が接する構造であっても構わない。この場合、半導体406bまたは/および半導体406aの、少なくとも426aおよび導電体426bと接する領域に低抵抗領域423a(低抵抗領域423b)を設けると好ましい。低抵抗領域423aおよび低抵抗領域423bは、例えば、導電体404などをマスクとし、半導体406bまたは/および半導体406aに不純物を添加することで形成すればよい。なお、導電体426aおよび導電体426bが、半導体406bの孔(貫通しているもの)または窪み(貫通していないもの)に設けられていても構わない。導電体426aおよび導電体426bが、半導体406bの孔または窪みに設けられることで、導電体426aおよび導電体426bと、半導体406bとの接触面積が大きくなるため、接触抵抗の影響を小さくすることができる。即ち、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。
【0169】
また、
図7(A)および
図7(B)は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図である。
図7(A)は上面図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示す一点鎖線J1−J2、および一点鎖線J3−J4に対応する断面図である。なお、
図7(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0170】
図7(A)および
図7(B)に示すトランジスタは、基板600上の導電体604と、導電体604上の絶縁体612と、絶縁体612上の半導体606aと、半導体606a上の半導体606bと、半導体606b上の半導体606cと、半導体606a、半導体606bおよび半導体606cと接し、間隔を開けて配置された層609aおよび層609bと、層609a上の導電体616aと、層609b上の導電体616bと、半導体606c上、導電体616a上および導電体616b上の絶縁体618と、を有する。なお、導電体604は、絶縁体612を介して半導体606bの下面と面する。また、絶縁体612が凸部を有しても構わない。また、基板600と導電体604の間に絶縁体を有しても構わない。該絶縁体は、絶縁体402や絶縁体408についての記載を参照する。また、半導体606aを有さなくても構わない。また、絶縁体618を有さなくても構わない。また、層609aを有さなくても構わない。また、層609bを有さなくても構わない。
【0171】
なお、半導体606bは、トランジスタのチャネル形成領域としての機能を有する。また、導電体604は、トランジスタの第1のゲート電極(フロントゲート電極ともいう。)としての機能を有する。また、導電体616aおよび導電体616bは、トランジスタのソース電極およびドレイン電極としての機能を有する。
【0172】
なお、絶縁体618は過剰酸素を含む絶縁体であると好ましい。
【0173】
なお、基板600は、基板400についての記載を参照する。また、導電体604は、導電体404についての記載を参照する。また、絶縁体612は、絶縁体412についての記載を参照する。また、半導体606aは、半導体406cについての記載を参照する。また、半導体606bは、半導体406bについての記載を参照する。また、半導体606cは、半導体406aについての記載を参照する。また、層609aおよび層609bは、層409aおよび層409bついての記載を参照する。また、導電体616aおよび導電体616bは、導電体416aおよび導電体416bについての記載を参照する。また、絶縁体618は、絶縁体402についての記載を参照する。
【0174】
なお、絶縁体618上には、表示素子が設けられていてもよい。例えば、画素電極、液晶層、共通電極、発光層、有機EL層、陽極、陰極などが設けられていてもよい。表示素子は、例えば、導電体616aなどと接続されている。
【0175】
また、
図8(A)は、トランジスタの上面図の一例である。
図8(A)の一点鎖線K1−K2および一点鎖線K3−K4に対応する断面図の一例を
図8(B)に示す。なお、
図8(A)では、理解を容易にするため、絶縁体などの一部を省略して示す。
【0176】
なお、半導体の上に、チャネル保護膜として機能させることができる絶縁体を配置してもよい。例えば、
図8に示すように、層609aおよび層609bと、半導体606cとの間に、絶縁体620を配置してもよい。その場合、層609a(層609b)と半導体606cとは、絶縁体620中の開口部を介して接続される。絶縁体620は、絶縁体618についての記載を参照すればよい。
【0177】
なお、
図7(B)や
図8(B)において、絶縁体618の上に、導電体613を配置してもよい。その場合の例を
図9(A)および
図9(B)に示す。なお、導電体613については、導電体413についての記載を参照する。また、導電体613には、導電体604と同じ電位や同じ信号が供給されてもよいし、異なる電位や信号が供給されてもよい。例えば、導電体613に、一定の電位を供給して、トランジスタのしきい値電圧を制御してもよい。つまり、導電体613は、第2のゲート電極としての機能を有することができる。また、導電体613などによってs−channel構造を形成していても構わない。
【0178】
<トランジスタ作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る
図3に示したトランジスタの作製方法を
図10、
図11および
図12を用いて説明する。なお、ここでは、理解を容易にするため、導電体413、層409aおよび層409bを形成しない例を示す。また、
図3では、半導体406a、半導体406bおよび半導体406cの積層構造を有する例を示しているが、ここではそれらに代えて半導体406単層を有する例を示す。
【0180】
次に、絶縁体402を成膜する。絶縁体402の成膜は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法またはパルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法などを用いて行うことができる。
【0181】
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0182】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0183】
また、ALD法も、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。また、ALD法も、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0184】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0185】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間の分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0186】
次に、半導体436を成膜する(
図10(A)参照。)。半導体436は、後の工程を経て半導体406となる半導体である。半導体436の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0187】
次に、上述したマイクロ波光導電減衰法を用いて、半導体436を評価する。半導体436の評価には、励起光430を用いる(
図10(B)参照。)。マイクロ波光導電減衰法による評価は、半導体436へのダメージをほとんど与えないといわれている。ところが、評価の条件によっては、励起光430の照射によって半導体436が変質する場合がある。したがって、励起光430は、半導体436のチャネル形成領域となる領域を避けて照射することが好ましい。また、予め決められた領域に対し、基板400面内の複数個所で同様の評価を行っても構わない。
【0188】
次に、半導体436をフォトリソグラフィ法などによって加工し、半導体406を形成する(
図11(A)参照。)。なお、半導体406を形成する際、絶縁体402もエッチングされ、一部の領域が薄くなる場合がある。即ち、絶縁体402は、半導体406と接する領域に凸部を有する形状となる場合がある。このとき、励起光430の照射された半導体436の領域もエッチングすればよい。
【0189】
なお、フォトリソグラフィ法では、まず、フォトマスクを介してレジストを露光する。次に、露光された領域を、現像液を用いて除去または残存させてレジストマスクを形成する。次に、当該レジストマスクを介してエッチング処理することで導電体、半導体または絶縁体などを所望の形状に加工することができる。例えば、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いて、レジストを露光することでレジストマスクを形成すればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、フォトマスクは不要となる。なお、レジストマスクの除去には、アッシングなどのドライエッチング処理または/およびウェットエッチング処理を用いることができる。
【0190】
次に、導電体416aおよび導電体416bとなる導電体を成膜する。導電体の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0191】
次に、導電体をフォトリソグラフィ法などによって加工し、導電体416aおよび導電体416bを形成する(
図11(B)参照。)。
【0192】
次に、絶縁体412となる絶縁体を成膜する。絶縁体の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0193】
次に、導電体404となる導電体を成膜する。導電体の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0194】
次に、導電体をフォトリソグラフィ法などによって加工し、導電体404を形成する。
【0195】
次に、絶縁体をフォトリソグラフィ法などによって加工し、絶縁体412を形成する。(
図12(A)参照。)。なお、絶縁体412を形成する際、絶縁体402もエッチングされ、一部の領域が薄くなる場合がある。即ち、絶縁体402は、絶縁体412と接する領域に凸部を有する形状となる場合がある。
【0196】
次に、絶縁体408を成膜する。絶縁体408の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0197】
次に、絶縁体418を成膜することでトランジスタを作製することができる(
図12(B)参照。)。絶縁体418の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0198】
以上に示したように、トランジスタのチャネル形成領域となる半導体をトランジスタの作製工程中に評価することができる。したがって、製造時の品質管理を工程の一環として行うことができる。また、抜き取り評価も不要となる。そのため、トランジスタを歩留まり高く作製することができる。また、トランジスタを生産性高く作製することができる。また、該トランジスタを有する半導体装置を歩留まり高く作製することができる。また、該トランジスタを有する半導体装置を生産性高く作製することができる。
【0199】
<半導体装置>
以下では、本発明の一態様に係る半導体装置を例示する。
【0200】
<回路>
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタを利用した回路の一例について説明する。
【0201】
<CMOSインバータ>
図13(A)に示す回路図は、pチャネル型のトランジスタ2200とnチャネル型のトランジスタ2100を直列に接続し、かつそれぞれのゲートを接続した、いわゆるCMOSインバータの構成を示している。
【0202】
<半導体装置の構造1>
図14は、
図13(A)に対応する半導体装置の断面図である。
図14に示す半導体装置は、トランジスタ2200と、トランジスタ2100と、を有する。また、トランジスタ2100は、トランジスタ2200の上方に配置する。なお、トランジスタ2100として、
図1に示したトランジスタを用いた例を示しているが、本発明の一態様に係る半導体装置は、これに限定されるものではない。例えば、
図3、
図4または
図5に示したトランジスタなどを、トランジスタ2100として用いても構わない。よって、トランジスタ2100については、適宜上述したトランジスタについての記載を参酌する。
【0203】
図14に示すトランジスタ2200は、半導体基板450を用いたトランジスタである。トランジスタ2200は、半導体基板450中の領域472aと、半導体基板450中の領域472bと、絶縁体462と、導電体454と、を有する。
【0204】
トランジスタ2200において、領域472aおよび領域472bは、ソース領域およびドレイン領域としての機能を有する。また、絶縁体462は、ゲート絶縁体としての機能を有する。また、導電体454は、ゲート電極としての機能を有する。したがって、導電体454に印加する電位によって、チャネル形成領域の抵抗を制御することができる。即ち、導電体454に印加する電位によって、領域472aと領域472bとの間の導通・非導通を制御することができる。
【0205】
半導体基板450としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムなどの化合物半導体基板などを用いればよい。好ましくは、半導体基板450として単結晶シリコン基板を用いる。
【0206】
半導体基板450は、n型の導電型を付与する不純物を有する半導体基板を用いる。ただし、半導体基板450として、p型の導電型を付与する不純物を有する半導体基板を用いても構わない。その場合、トランジスタ2200となる領域には、n型の導電型を付与する不純物を有するウェルを配置すればよい。または、半導体基板450がi型であっても構わない。
【0207】
半導体基板450の上面は、(110)面を有することが好ましい。こうすることで、トランジスタ2200のオン特性を向上させることができる。
【0208】
領域472aおよび領域472bは、p型の導電型を付与する不純物を有する領域である。このようにして、トランジスタ2200はpチャネル型トランジスタを構成する。
【0209】
なお、トランジスタ2200は、領域460などによって隣接するトランジスタと分離される。領域460は、絶縁性を有する領域である。
【0210】
図14に示す半導体装置は、絶縁体464と、絶縁体466と、絶縁体468と、導電体480aと、導電体480bと、導電体480cと、導電体478aと、導電体478bと、導電体478cと、導電体476aと、導電体476bと、導電体474aと、導電体474bと、導電体474cと、導電体496aと、導電体496bと、導電体496cと、導電体496dと、導電体498aと、導電体498bと、導電体498cと、絶縁体490と、絶縁体492と、絶縁体494と、を有する。
【0211】
絶縁体464は、トランジスタ2200上に配置する。また、絶縁体466は、絶縁体464上に配置する。また、絶縁体468は、絶縁体466上に配置する。また、絶縁体490は、絶縁体468上に配置する。また、トランジスタ2100は、絶縁体490上に配置する。また、絶縁体492は、トランジスタ2100上に配置する。また、絶縁体494は、絶縁体492上に配置する。
【0212】
絶縁体464は、領域472aに達する開口部と、領域472bに達する開口部と、導電体454に達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体480a、導電体480bまたは導電体480cが埋め込まれている。
【0213】
また、絶縁体466は、導電体480aに達する開口部と、導電体480bに達する開口部と、導電体480cに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体478a、導電体478bまたは導電体478cが埋め込まれている。
【0214】
また、絶縁体468は、導電体478bに達する開口部と、導電体478cに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体476aまたは導電体476bが埋め込まれている。
【0215】
また、絶縁体490は、トランジスタ2100のチャネル形成領域と重なる開口部と、導電体476aに達する開口部と、導電体476bに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体474a、導電体474bまたは導電体474cが埋め込まれている。
【0216】
導電体474aは、トランジスタ2100のボトムゲート電極としての機能を有しても構わない。または、例えば、導電体474aに一定の電位を印加することで、トランジスタ2100のしきい値電圧などの電気特性を制御しても構わない。または、例えば、導電体474aとトランジスタ2100のトップゲート電極である導電体404とを電気的に接続しても構わない。こうすることで、トランジスタ2100のオン電流を大きくすることができる。また、パンチスルー現象を抑制することができるため、トランジスタ2100の飽和領域における電気特性を安定にすることができる。
【0217】
また、絶縁体492は、トランジスタ2100のソース電極またはドレイン電極の一方である導電体416bを通って、導電体474bに達する開口部と、トランジスタ2100のソース電極またはドレイン電極の他方である導電体416aに達する開口部と、トランジスタ2100のゲート電極である導電体404に達する開口部と、導電体474cに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体496a、導電体496b、導電体496cまたは導電体496dが埋め込まれている。ただし、それぞれの開口部は、さらにトランジスタ2100などの構成要素のいずれかを介する場合がある。
【0218】
また、絶縁体494は、導電体496aに達する開口部と、導電体496bおよび導電体496dに達する開口部と、導電体496cに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体498a、導電体498bまたは導電体498cが埋め込まれている。
【0219】
絶縁体464、絶縁体466、絶縁体468、絶縁体490、絶縁体492および絶縁体494としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁体401としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。
【0220】
絶縁体464、絶縁体466、絶縁体468、絶縁体490、絶縁体492または絶縁体494の一以上は、水素などの不純物および酸素をブロックする機能を有する絶縁体を有することが好ましい。トランジスタ2100の近傍に、水素などの不純物および酸素をブロックする機能を有する絶縁体を配置することによって、トランジスタ2100の電気特性を安定にすることができる。
【0221】
水素などの不純物および酸素をブロックする機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。
【0222】
導電体480a、導電体480b、導電体480c、導電体478a、導電体478b、導電体478c、導電体476a、導電体476b、導電体474a、導電体474b、導電体474c、導電体496a、導電体496b、導電体496c、導電体496d、導電体498a、導電体498bおよび導電体498cとしては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅およびチタンを含む導電体、銅およびマンガンを含む導電体、インジウム、スズおよび酸素を含む導電体、チタンおよび窒素を含む導電体などを用いてもよい。
【0223】
なお、
図15に示す半導体装置は、
図14に示した半導体装置のトランジスタ2200の構造が異なるのみである。よって、
図15に示す半導体装置については、
図14に示した半導体装置の記載を参酌する。具体的には、
図15に示す半導体装置は、トランジスタ2200がFin型である場合を示している。トランジスタ2200をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ2200のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ2200のオフ特性を向上させることができる。
【0224】
また、
図16に示す半導体装置は、
図14に示した半導体装置のトランジスタ2200の構造が異なるのみである。よって、
図16に示す半導体装置については、
図14に示した半導体装置の記載を参酌する。具体的には、
図16に示す半導体装置は、トランジスタ2200がSOI基板に設けられた場合を示している。
図16には、絶縁体452によって領域456が半導体基板450と分離されている構造を示す。SOI基板を用いることによって、パンチスルー現象などを抑制することができるためトランジスタ2200のオフ特性を向上させることができる。なお、絶縁体452は、半導体基板450の一部を絶縁体化させることによって形成することができる。例えば、絶縁体452としては、酸化シリコンを用いることができる。
【0225】
図14乃至
図16に示した半導体装置は、半導体基板を用いてpチャネル型トランジスタを作製し、その上方にnチャネル型トランジスタを作製するため、素子の占有面積を縮小することができる。即ち、半導体装置の集積度を高くすることができる。また、nチャネル型トランジスタと、pチャネル型トランジスタとを同一の半導体基板を用いて作製した場合と比べて、工程を簡略化することができるため、半導体装置の生産性を高くすることができる。また、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、pチャネル型トランジスタは、LDD(Lightly Doped Drain)領域、シャロートレンチ構造、歪み設計などの複雑な工程を省略できる場合がある。そのため、nチャネル型トランジスタを、半導体基板を用いて作製する場合と比べて、生産性および歩留まりを高くすることができる場合がある。
【0226】
<CMOSアナログスイッチ>
また
図13(B)に示す回路図は、トランジスタ2100とトランジスタ2200のそれぞれのソースとドレインを接続した構成を示している。このような構成とすることで、いわゆるCMOSアナログスイッチとして機能させることができる。
【0227】
<記憶装置1>
本発明の一態様に係るトランジスタを用いた、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置)の一例を
図17に示す。
【0228】
図17(A)に示す半導体装置は、第1の半導体を用いたトランジスタ3200と第2の半導体を用いたトランジスタ3300、および容量素子3400を有している。なお、トランジスタ3300としては、上述したトランジスタを用いることができる。
【0229】
トランジスタ3300は、オフ電流の小さいトランジスタが好ましい。トランジスタ3300は、例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタを用いることができる。トランジスタ3300のオフ電流が小さいことにより、半導体装置の特定のノードに長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、またはリフレッシュ動作の頻度が極めて少なくすることが可能となるため、消費電力の低い半導体装置となる。
【0230】
図17(A)において、第1の配線3001はトランジスタ3200のソースと電気的に接続され、第2の配線3002はトランジスタ3200のドレインと電気的に接続される。また、第3の配線3003はトランジスタ3300のソース、ドレインの一方と電気的に接続され、第4の配線3004はトランジスタ3300のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ3200のゲート、およびトランジスタ3300のソース、ドレインの他方は、容量素子3400の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線3005は容量素子3400の電極の他方と電気的に接続されている。
【0231】
図17(A)に示す半導体装置は、トランジスタ3200のゲートの電位が保持可能という特性を有することで、以下に示すように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0232】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300が導通状態となる電位にして、トランジスタ3300を導通状態とする。これにより、第3の配線3003の電位が、トランジスタ3200のゲート、および容量素子3400の電極の一方と電気的に接続するノードFGに与えられる。即ち、トランジスタ3200のゲートには、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という。)のどちらかが与えられるものとする。その後、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300が非導通状態となる電位にして、トランジスタ3300を非導通状態とすることにより、ノードFGに電荷が保持される(保持)。
【0233】
トランジスタ3300のオフ電流が小さいため、ノードFGの電荷は長期間にわたって保持される。
【0234】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線3001に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線3005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、第2の配線3002は、ノードFGに保持された電荷量に応じた電位をとる。これは、トランジスタ3200をnチャネル型とすると、トランジスタ3200のゲートにHighレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧V
th_Hは、トランジスタ3200のゲートにLowレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧V
th_Lより低くなるためである。ここで、見かけ上のしきい値電圧とは、トランジスタ3200を「導通状態」とするために必要な第5の配線3005の電位をいうものとする。したがって、第5の配線3005の電位をV
th_HとV
th_Lの間の電位V
0とすることにより、ノードFGに与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、ノードFGにHighレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の電位がV
0(>V
th_H)となれば、トランジスタ3200は「導通状態」となる。一方、ノードFGにLowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の電位がV
0(<V
th_L)となっても、トランジスタ3200は「非導通状態」のままである。このため、第2の配線3002の電位を判別することで、ノードFGに保持されている情報を読み出すことができる。
【0235】
なお、メモリセルをアレイ状に配置する場合、読み出し時には、所望のメモリセルの情報を読み出さなくてはならない。ほかのメモリセルの情報を読み出さないためには、ノードFGに与えられた電荷によらずトランジスタ3200が「非導通状態」となるような電位、つまり、V
th_Hより低い電位を第5の配線3005に与えればよい。または、ノードFGに与えられた電荷によらずトランジスタ3200が「導通状態」となるような電位、つまり、V
th_Lより高い電位を第5の配線3005に与えればよい。
【0236】
<半導体装置の構造2>
図18は、
図17(A)に対応する半導体装置の断面図である。
図18に示す半導体装置は、トランジスタ3200と、トランジスタ3300と、容量素子3400と、を有する。また、トランジスタ3300および容量素子3400は、トランジスタ3200の上方に配置する。なお、トランジスタ3300としては、上述したトランジスタ2100についての記載を参照する。また、トランジスタ3200としては、
図14に示したトランジスタ2200についての記載を参照する。なお、
図14では、トランジスタ2200がpチャネル型トランジスタである場合について説明したが、トランジスタ3200がnチャネル型トランジスタであっても構わない。
【0237】
図18に示すトランジスタ2200は、半導体基板450を用いたトランジスタである。トランジスタ2200は、半導体基板450中の領域472aと、半導体基板450中の領域472bと、絶縁体462と、導電体454と、を有する。
【0238】
図18に示す半導体装置は、絶縁体464と、絶縁体466と、絶縁体468と、導電体480aと、導電体480bと、導電体480cと、導電体478aと、導電体478bと、導電体478cと、導電体476aと、導電体476bと、導電体474aと、導電体474bと、導電体474cと、導電体496aと、導電体496bと、導電体496cと、導電体496dと、導電体498aと、導電体498bと、導電体498cと、導電体498dと、絶縁体490と、絶縁体492と、絶縁体494と、を有する。
【0239】
絶縁体464は、トランジスタ3200上に配置する。また、絶縁体466は、絶縁体464上に配置する。また、絶縁体468は、絶縁体466上に配置する。また、絶縁体490は、絶縁体468上に配置する。また、トランジスタ2100は、絶縁体490上に配置する。また、絶縁体492は、トランジスタ2100上に配置する。また、絶縁体494は、絶縁体492上に配置する。
【0240】
絶縁体464は、領域472aに達する開口部と、領域472bに達する開口部と、導電体454に達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体480a、導電体480bまたは導電体480cが埋め込まれている。
【0241】
また、絶縁体466は、導電体480aに達する開口部と、導電体480bに達する開口部と、導電体480cに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体478a、導電体478bまたは導電体478cが埋め込まれている。
【0242】
また、絶縁体468は、導電体478bに達する開口部と、導電体478cに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体476aまたは導電体476bが埋め込まれている。
【0243】
また、絶縁体490は、トランジスタ3300のチャネル形成領域と重なる開口部と、導電体476aに達する開口部と、導電体476bに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体474a、導電体474bまたは導電体474cが埋め込まれている。
【0244】
導電体474aは、トランジスタ3300のボトムゲート電極としての機能を有しても構わない。または、例えば、導電体474aに一定の電位を印加することで、トランジスタ3300のしきい値電圧などの電気特性を制御しても構わない。または、例えば、導電体474aとトランジスタ3300のトップゲート電極である導電体404とを電気的に接続しても構わない。こうすることで、トランジスタ3300のオン電流を大きくすることができる。また、パンチスルー現象を抑制することができるため、トランジスタ3300の飽和領域における電気特性を安定にすることができる。
【0245】
また、絶縁体492は、トランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の一方である導電体416bを通って、導電体474bに達する開口部と、トランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方である導電体416aと絶縁体412を介して導電体414に達する開口部と、トランジスタ3300のゲート電極である導電体404に達する開口部と、トランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方である導電体416aを通って、導電体474cに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体496a、導電体496b、導電体496cまたは導電体496dが埋め込まれている。ただし、それぞれの開口部は、さらにトランジスタ3300などの構成要素のいずれかが有する開口部を介する場合がある。
【0246】
また、絶縁体494は、導電体496aに達する開口部と、導電体496bに達する開口部と、導電体496cに達する開口部と、導電体496dに達する開口部と、を有する。また、開口部には、それぞれ導電体498a、導電体498b、導電体498cまたは導電体498dが埋め込まれている。
【0247】
絶縁体464、絶縁体466、絶縁体468、絶縁体490、絶縁体492または絶縁体494の一以上は、水素などの不純物および酸素をブロックする機能を有する絶縁体を有することが好ましい。トランジスタ3300の近傍に、水素などの不純物および酸素をブロックする機能を有する絶縁体を配置することによって、トランジスタ3300の電気特性を安定にすることができる。
【0248】
導電体498dとしては、例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅およびチタンを含む導電体、銅およびマンガンを含む導電体、インジウム、スズおよび酸素を含む導電体、チタンおよび窒素を含む導電体などを用いてもよい。
【0249】
トランジスタ3200のソースまたはドレインは、導電体480bと、導電体478bと、導電体476aと、導電体474bと、導電体496cと、を介してトランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の一方である導電体416bと電気的に接続する。また、トランジスタ3200のゲート電極である導電体454は、導電体480cと、導電体478cと、導電体476bと、導電体474cと、導電体496dと、を介してトランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方である導電体416aと電気的に接続する。
【0250】
容量素子3400は、トランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方と電気的に接続する電極と、導電体414と、絶縁体412と、を有する。なお、絶縁体412は、トランジスタ3300のゲート絶縁体と同一工程を経て形成できるため、生産性を高めることができて好ましい場合がある。また、導電体414として、トランジスタ3300のゲート電極と同一工程を経て形成した層を用いると、生産性を高めることができて好ましい場合がある。
【0251】
そのほかの構造については、適宜
図14などについての記載を参酌することができる。
【0252】
なお、
図19に示す半導体装置は、
図18に示した半導体装置のトランジスタ3200の構造が異なるのみである。よって、
図19に示す半導体装置については、
図18に示した半導体装置の記載を参酌する。具体的には、
図19に示す半導体装置は、トランジスタ3200がFin型である場合を示している。Fin型であるトランジスタ3200については、
図15に示したトランジスタ2200の記載を参照する。なお、
図15では、トランジスタ2200がpチャネル型トランジスタである場合について説明したが、トランジスタ3200がnチャネル型トランジスタであっても構わない。
【0253】
また、
図20に示す半導体装置は、
図18に示した半導体装置のトランジスタ3200の構造が異なるのみである。よって、
図20に示す半導体装置については、
図18に示した半導体装置の記載を参酌する。具体的には、
図20に示す半導体装置は、トランジスタ3200がSOI基板である半導体基板450に設けられた場合を示している。SOI基板である半導体基板450に設けられたトランジスタ3200については、
図16に示したトランジスタ2200の記載を参照する。なお、
図16では、トランジスタ2200がpチャネル型トランジスタである場合について説明したが、トランジスタ3200がnチャネル型トランジスタであっても構わない。
【0254】
<記憶装置2>
図17(B)に示す半導体装置は、トランジスタ3200を有さない点で
図17(A)に示した半導体装置と異なる。この場合も
図17(A)に示した半導体装置と同様の動作により情報の書き込みおよび保持動作が可能である。
【0255】
図17(B)に示す半導体装置における、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ3300が導通状態になると、浮遊状態である第3の配線3003と容量素子3400とが導通し、第3の配線3003と容量素子3400の間で電荷が再分配される。その結果、第3の配線3003の電位が変化する。第3の配線3003の電位の変化量は、容量素子3400の電極の一方の電位(または容量素子3400に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0256】
例えば、容量素子3400の電極の一方の電位をV、容量素子3400の容量をC、第3の配線3003が有する容量成分をCB、電荷が再分配される前の第3の配線3003の電位をVB0とすると、電荷が再分配された後の第3の配線3003の電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。したがって、メモリセルの状態として、容量素子3400の電極の一方の電位がV1とV0(V1>V0)の2つの状態をとるとすると、電位V1を保持している場合の第3の配線3003の電位(=(CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合の第3の配線3003の電位(=(CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0257】
そして、第3の配線3003の電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0258】
この場合、メモリセルを駆動させるための駆動回路に上記第1の半導体が適用されたトランジスタを用い、トランジスタ3300として第2の半導体が適用されたトランジスタを駆動回路上に積層して配置する構成とすればよい。
【0259】
以上に示した半導体装置は、酸化物半導体を用いたオフ電流の小さいトランジスタを適用することで、長期にわたって記憶内容を保持することが可能となる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、またはリフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力の低い半導体装置を実現することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが好ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0260】
また、該半導体装置は、情報の書き込みに高い電圧が不要であるため、素子の劣化が起こりにくい。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行わないため、絶縁体の劣化といった問題が生じない。即ち、本発明の一態様に係る半導体装置は、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上した半導体装置である。さらに、トランジスタの導通状態、非導通状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作が可能となる。
【0261】
<撮像装置>
以下では、本発明の一態様に係る撮像装置について説明する。
【0262】
図21(A)は、本発明の一態様に係る撮像装置200の構成例を示す平面図である。撮像装置200は、画素部210と、画素部210を駆動するための周辺回路260と、周辺回路270、周辺回路280と、周辺回路290と、を有する。画素部210は、p行q列(pおよびqは2以上の整数)のマトリクス状に配置された複数の画素211を有する。周辺回路260、周辺回路270、周辺回路280および周辺回路290は、それぞれ複数の画素211に接続し、複数の画素211を駆動するための信号を供給する機能を有する。なお、本明細書等において、周辺回路260、周辺回路270、周辺回路280および周辺回路290などの全てを指して「周辺回路」または「駆動回路」と呼ぶ場合がある。例えば、周辺回路260は周辺回路の一部といえる。
【0263】
また、撮像装置200は、光源291を有することが好ましい。光源291は、検出光P1を放射することができる。
【0264】
また、周辺回路は、少なくとも、論理回路、スイッチ、バッファ、増幅回路、または変換回路の1つを有する。また、周辺回路は、画素部210を形成する基板上に配置してもよい。また、周辺回路は、その一部または全部をIC等の半導体装置で実装してもよい。なお、周辺回路は、周辺回路260、周辺回路270、周辺回路280および周辺回路290のいずれか一以上を省略してもよい。
【0265】
また、
図21(B)に示すように、撮像装置200が有する画素部210において、画素211を傾けて配置してもよい。画素211を傾けて配置することにより、行方向および列方向の画素間隔(ピッチ)を短くすることができる。これにより、撮像装置200における撮像の品質をより高めることができる。
【0266】
<画素の構成例1>
撮像装置200が有する1つの画素211を複数の副画素212で構成し、それぞれの副画素212に特定の波長帯域の光を透過するフィルタ(カラーフィルタ)を組み合わせることで、カラー画像表示を実現するための情報を取得することができる。
【0267】
図22(A)は、カラー画像を取得するための画素211の一例を示す平面図である。
図22(A)に示す画素211は、赤(R)の波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212(以下、「副画素212R」ともいう)、緑(G)の波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212(以下、「副画素212G」ともいう)および青(B)の波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212(以下、「副画素212B」ともいう)を有する。副画素212は、フォトセンサとして機能させることができる。
【0268】
副画素212(副画素212R、副画素212G、および副画素212B)は、配線231、配線247、配線248、配線249、配線250と電気的に接続される。また、副画素212R、副画素212G、および副画素212Bは、それぞれが独立した配線253に接続している。また、本明細書等において、例えばn行目の画素211に接続された配線248および配線249を、それぞれ配線248[n]および配線249[n]と記載する。また、例えばm列目の画素211に接続された配線253を、配線253[m]と記載する。なお、
図22(A)において、m列目の画素211が有する副画素212Rに接続する配線253を配線253[m]R、副画素212Gに接続する配線253を配線253[m]G、および副画素212Bに接続する配線253を配線253[m]Bと記載している。副画素212は、上記配線を介して周辺回路と電気的に接続される。
【0269】
また、撮像装置200は、隣接する画素211の、同じ波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212同士がスイッチを介して電気的に接続する構成を有する。
図22(B)に、n行(nは1以上p以下の整数)m列(mは1以上q以下の整数)に配置された画素211が有する副画素212と、該画素211に隣接するn+1行m列に配置された画素211が有する副画素212の接続例を示す。
図22(B)において、n行m列に配置された副画素212Rと、n+1行m列に配置された副画素212Rがスイッチ201を介して接続されている。また、n行m列に配置された副画素212Gと、n+1行m列に配置された副画素212Gがスイッチ202を介して接続されている。また、n行m列に配置された副画素212Bと、n+1行m列に配置された副画素212Bがスイッチ203を介して接続されている。
【0270】
なお、副画素212に用いるカラーフィルタは、赤(R)、緑(G)、青(B)に限定されず、それぞれシアン(C)、黄(Y)およびマゼンダ(M)の光を透過するカラーフィルタを用いてもよい。1つの画素211に3種類の異なる波長帯域の光を検出する副画素212を設けることで、フルカラー画像を取得することができる。
【0271】
または、それぞれ赤(R)、緑(G)および青(B)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212に加えて、黄(Y)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212を有する画素211を用いてもよい。または、それぞれシアン(C)、黄(Y)およびマゼンダ(M)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212に加えて、青(B)の光を透過するカラーフィルタが設けられた副画素212を有する画素211を用いてもよい。1つの画素211に4種類の異なる波長帯域の光を検出する副画素212を設けることで、取得した画像の色の再現性をさらに高めることができる。
【0272】
また、例えば、
図22(A)において、赤の波長帯域を検出する副画素212、緑の波長帯域を検出する副画素212、および青の波長帯域を検出する副画素212の画素数比(または受光面積比)は、1:1:1でなくても構わない。例えば、画素数比(受光面積比)を赤:緑:青=1:2:1とするBayer配列としてもよい。または、画素数比(受光面積比)を赤:緑:青=1:6:1としてもよい。
【0273】
なお、画素211に設ける副画素212は1つでもよいが、2つ以上が好ましい。例えば、同じ波長帯域を検出する副画素212を2つ以上設けることで、冗長性を高め、撮像装置200の信頼性を高めることができる。
【0274】
また、可視光を吸収または反射して、赤外光を透過するIR(IR:Infrared)フィルタを用いることで、赤外光を検出する撮像装置200を実現することができる。
【0275】
また、ND(ND:Neutral Density)フィルタ(減光フィルタ)を用いることで、光電変換素子(受光素子)に大光量光が入射した時に生じる出力飽和することを防ぐことができる。減光量の異なるNDフィルタを組み合わせて用いることで、撮像装置のダイナミックレンジを大きくすることができる。
【0276】
また、前述したフィルタ以外に、画素211にレンズを設けてもよい。ここで、
図23の断面図を用いて、画素211、フィルタ254、レンズ255の配置例を説明する。レンズ255を設けることで、光電変換素子が入射光を効率よく受光することができる。具体的には、
図23(A)に示すように、画素211に形成したレンズ255、フィルタ254(フィルタ254R、フィルタ254Gおよびフィルタ254B)、および画素回路230等を通して光256を光電変換素子220に入射させる構造とすることができる。
【0277】
ただし、二点鎖線で囲んだ領域に示すように、矢印で示す光256の一部が配線257の一部によって遮光されてしまうことがある。したがって、
図23(B)に示すように光電変換素子220側にレンズ255およびフィルタ254を配置して、光電変換素子220が光256を効率良く受光させる構造が好ましい。光電変換素子220側から光256を光電変換素子220に入射させることで、検出感度の高い撮像装置200を提供することができる。
【0278】
図23に示す光電変換素子220として、pn型接合またはpin型の接合が形成された光電変換素子を用いてもよい。
【0279】
また、光電変換素子220を、放射線を吸収して電荷を発生させる機能を有する物質を用いて形成してもよい。放射線を吸収して電荷を発生させる機能を有する物質としては、セレン、ヨウ化鉛、ヨウ化水銀、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウム、カドミウム亜鉛合金等がある。
【0280】
例えば、光電変換素子220にセレンを用いると、可視光や、紫外光、赤外光に加えて、X線や、ガンマ線といった幅広い波長帯域にわたって光吸収係数を有する光電変換素子220を実現できる。
【0281】
ここで、撮像装置200が有する1つの画素211は、
図22に示す副画素212に加えて、第1のフィルタを有する副画素212を有してもよい。
【0282】
<画素の構成例2>
以下では、シリコンを用いたトランジスタと、酸化物半導体を用いたトランジスタと、を用いて画素を構成する一例について説明する。
【0283】
図24(A)、
図24(B)は、撮像装置を構成する素子の断面図である。
図24(A)に示す撮像装置は、シリコン基板100に設けられたシリコンを用いたトランジスタ151、トランジスタ151上に積層して配置された酸化物半導体を用いたトランジスタ152およびトランジスタ153、ならびにシリコン基板100に設けられたフォトダイオード160を含む。各トランジスタおよびフォトダイオード160は、種々のプラグ170および配線171と電気的な接続を有する。また、フォトダイオード160のアノード161は、低抵抗領域163を介してプラグ170と電気的に接続を有する。
【0284】
また撮像装置は、シリコン基板100に設けられたトランジスタ151およびフォトダイオード160を有する層110と、層110と接して設けられ、配線171を有する層120と、層120と接して設けられ、トランジスタ152およびトランジスタ153を有する層130と、層130と接して設けられ、配線172および配線173を有する層140を備えている。
【0285】
なお
図24(A)の断面図の一例では、シリコン基板100において、トランジスタ151が形成された面とは逆側の面にフォトダイオード160の受光面を有する構成とする。該構成とすることで、各種トランジスタや配線などの影響を受けずに光路を確保することができる。そのため、高開口率の画素を形成することができる。なお、フォトダイオード160の受光面をトランジスタ151が形成された面と同じとすることもできる。
【0286】
なお、トランジスタを用いて画素を構成する場合には、層110を、トランジスタを有する層とすればよい。または層110を省略し、トランジスタのみで画素を構成してもよい。
【0287】
なおトランジスタを用いて画素を構成する場合には、層130を省略すればよい。層130を省略した断面図の一例を
図24(B)に示す。層130を省略する場合、層140の配線172も省略することができる。
【0288】
なお、シリコン基板100は、SOI基板であってもよい。また、シリコン基板100に替えて、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウムまたは有機半導体を有する基板を用いることもできる。
【0289】
ここで、トランジスタ151およびフォトダイオード160を有する層110と、トランジスタ152およびトランジスタ153を有する層130と、の間には絶縁体180が設けられる。ただし、絶縁体180の位置は限定されない。
【0290】
トランジスタ151のチャネル形成領域近傍に設けられる絶縁体中の水素はシリコンのダングリングボンドを終端し、トランジスタ151の信頼性を向上させる効果がある。一方、トランジスタ152およびトランジスタ153などの近傍に設けられる絶縁体中の水素は、酸化物半導体中にキャリアを生成する要因の一つとなる。そのため、トランジスタ152およびトランジスタ153などの信頼性を低下させる要因となる場合がある。したがって、シリコン系半導体を用いたトランジスタの上層に酸化物半導体を用いたトランジスタを積層して設ける場合、これらの間に水素をブロックする機能を有する絶縁体180を設けることが好ましい。絶縁体180より下層に水素を閉じ込めることで、トランジスタ151の信頼性が向上させることができる。さらに、絶縁体180より下層から、絶縁体180より上層に水素が拡散することを抑制できるため、トランジスタ152およびトランジスタ153などの信頼性を向上させることができる。
【0291】
絶縁体180としては、例えば、絶縁体408の記載を参照する。
【0292】
また、
図24(A)の断面図において、層110に設けるフォトダイオード160と、層130に設けるトランジスタとを重なるように形成することができる。そうすると、画素の集積度を高めることができる。すなわち、撮像装置の解像度を高めることができる。
【0293】
また、
図25(A1)および
図25(B1)に示すように、撮像装置の一部または全部を湾曲させてもよい。
図25(A1)は、撮像装置を同図中の二点鎖線X1−X2の方向に湾曲させた状態を示している。
図25(A2)は、
図25(A1)中の二点鎖線X1−X2で示した部位の断面図である。
図25(A3)は、
図25(A1)中の二点鎖線Y1−Y2で示した部位の断面図である。
【0294】
図25(B1)は、撮像装置を同図中の二点鎖線X3−X4の方向に湾曲させ、かつ、同図中の二点鎖線Y3−Y4の方向に湾曲させた状態を示している。
図25(B2)は、
図25(B1)中の二点鎖線X3−X4で示した部位の断面図である。
図25(B3)は、
図25(B1)中の二点鎖線Y3−Y4で示した部位の断面図である。
【0295】
撮像装置を湾曲させることで、像面湾曲や非点収差を低減することができる。よって、撮像装置と組み合わせて用いるレンズなどの光学設計を容易とすることができる。例えば、収差補正のためのレンズ枚数を低減できるため、撮像装置を用いた電子機器などの小型化や軽量化を実現することができる。また、撮像された画像の品質を向上させる事ができる。
【0296】
<CPU>
以下では、上述したトランジスタや上述した記憶装置などの半導体装置を含むCPUについて説明する。
【0297】
図26は、上述したトランジスタを一部に用いたCPUの一例の構成を示すブロック図である。
【0298】
図26に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithmetic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、
図26に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。例えば、
図26に示すCPUまたは演算回路を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含み、それぞれのコアが並列で動作するような構成としてもよい。また、CPUが内部演算回路やデータバスで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなどとすることができる。
【0299】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0300】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0301】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号を元に、内部クロック信号を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号を上記各種回路に供給する。
【0302】
図26に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジスタ1196のメモリセルとして、上述したトランジスタや記憶装置などを用いることができる。
【0303】
図26に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。即ち、レジスタ1196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
【0304】
図27は、レジスタ1196として用いることのできる記憶素子1200の回路図の一例である。記憶素子1200は、電源遮断で記憶データが揮発する回路1201と、電源遮断で記憶データが揮発しない回路1202と、スイッチ1203と、スイッチ1204と、論理素子1206と、容量素子1207と、選択機能を有する回路1220と、を有する。回路1202は、容量素子1208と、トランジスタ1209と、トランジスタ1210と、を有する。なお、記憶素子1200は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタなどのその他の素子をさらに有していてもよい。
【0305】
ここで、回路1202には、上述した記憶装置を用いることができる。記憶素子1200への電源電圧の供給が停止した際、回路1202のトランジスタ1209のゲートにはGND(0V)、またはトランジスタ1209がオフする電位が入力され続ける構成とする。例えば、トランジスタ1209のゲートが抵抗等の負荷を介して接地される構成とする。
【0306】
スイッチ1203は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタ1213を用いて構成され、スイッチ1204は、一導電型とは逆の導電型(例えば、pチャネル型)のトランジスタ1214を用いて構成した例を示す。ここで、スイッチ1203の第1の端子はトランジスタ1213のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1203の第2の端子はトランジスタ1213のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ1203はトランジスタ1213のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ1213の導通状態または非導通状態)が選択される。スイッチ1204の第1の端子はトランジスタ1214のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1204の第2の端子はトランジスタ1214のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ1204はトランジスタ1214のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ1214の導通状態または非導通状態)が選択される。
【0307】
トランジスタ1209のソースとドレインの一方は、容量素子1208の一対の電極のうちの一方、およびトランジスタ1210のゲートと電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM2とする。トランジスタ1210のソースとドレインの一方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)に電気的に接続され、他方は、スイッチ1203の第1の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)はスイッチ1204の第1の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。スイッチ1204の第2の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの他方)は電源電位VDDを供給することのできる配線と電気的に接続される。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)と、スイッチ1204の第1の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの一方)と、論理素子1206の入力端子と、容量素子1207の一対の電極のうちの一方と、は電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM1とする。容量素子1207の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子1207の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。容量素子1208の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子1208の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。
【0308】
なお、容量素子1207および容量素子1208は、トランジスタや配線の寄生容量等を積極的に利用することによって省略することも可能である。
【0309】
トランジスタ1209のゲートには、制御信号WEが入力される。スイッチ1203およびスイッチ1204は、制御信号WEとは異なる制御信号RDによって第1の端子と第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択され、一方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間は非導通状態となる。
【0310】
トランジスタ1209のソースとドレインの他方には、回路1201に保持されたデータに対応する信号が入力される。
図27では、回路1201から出力された信号が、トランジスタ1209のソースとドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子1206によってその論理値が反転された反転信号となり、回路1220を介して回路1201に入力される。
【0311】
なお、
図27では、スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子1206および回路1220を介して回路1201に入力する例を示したがこれに限定されない。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号が、論理値を反転させられることなく、回路1201に入力されてもよい。例えば、回路1201内に、入力端子から入力された信号の論理値が反転した信号が保持されるノードが存在する場合に、スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
【0312】
また、
図27において、記憶素子1200に用いられるトランジスタのうち、トランジスタ1209以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる膜または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン膜またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、記憶素子1200に用いられるトランジスタ全てを、チャネルが酸化物半導体で形成されるトランジスタとすることもできる。または、記憶素子1200は、トランジスタ1209以外にも、チャネルが酸化物半導体で形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残りのトランジスタは酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板1190にチャネルが形成されるトランジスタとすることもできる。
【0313】
図27における回路1201には、例えばフリップフロップ回路を用いることができる。また、論理素子1206としては、例えばインバータやクロックドインバータ等を用いることができる。
【0314】
本発明の一態様に係る半導体装置では、記憶素子1200に電源電圧が供給されない間は、回路1201に記憶されていたデータを、回路1202に設けられた容量素子1208によって保持することができる。
【0315】
また、酸化物半導体にチャネルが形成されるトランジスタはオフ電流が極めて小さい。例えば、酸化物半導体にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そのため、当該トランジスタをトランジスタ1209として用いることによって、記憶素子1200に電源電圧が供給されない間も容量素子1208に保持された信号は長期間にわたり保たれる。こうして、記憶素子1200は電源電圧の供給が停止した間も記憶内容(データ)を保持することが可能である。
【0316】
また、スイッチ1203およびスイッチ1204を設けることによって、プリチャージ動作を行うことを特徴とする記憶素子であるため、電源電圧供給再開後に、回路1201が元のデータを保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
【0317】
また、回路1202において、容量素子1208によって保持された信号はトランジスタ1210のゲートに入力される。そのため、記憶素子1200への電源電圧の供給が再開された後、容量素子1208によって保持された信号を、トランジスタ1210の状態(導通状態、または非導通状態)に変換して、回路1202から読み出すことができる。それ故、容量素子1208に保持された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出すことが可能である。
【0318】
このような記憶素子1200を、プロセッサが有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、プロセッサ全体、もしくはプロセッサを構成する一つ、または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる。
【0319】
記憶素子1200をCPUに用いる例として説明したが、記憶素子1200は、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、PLD(Programmable Logic Device)等のLSI、RF−ID(Radio Frequency Identification)にも応用可能である。
【0320】
<表示装置>
以下では、本発明の一態様に係る表示装置について、
図28および
図29を用いて説明する。
【0321】
表示装置に用いられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう。)、発光素子(発光表示素子ともいう。)などを用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electroluminescence)、有機ELなどを含む。以下では、表示装置の一例としてEL素子を用いた表示装置(EL表示装置)および液晶素子を用いた表示装置(液晶表示装置)について説明する。
【0322】
なお、以下に示す表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むICなどを実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0323】
また、以下に示す表示装置は画像表示デバイス、または光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPC、TCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板を有するモジュールまたは表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0324】
図28は、本発明の一態様に係るEL表示装置の一例である。
図28(A)に、EL表示装置の画素の回路図を示す。
図28(B)は、EL表示装置全体を示す上面図である。また、
図28(C)は、
図28(B)の一点鎖線M−Nの一部に対応するM−N断面である。
【0325】
図28(A)は、EL表示装置に用いられる画素の回路図の一例である。
【0326】
なお、本明細書等においては、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有するすべての端子について、その接続先を特定しなくても、当業者であれば、発明の一態様を構成することは可能な場合がある。つまり、接続先を特定しなくても、発明の一態様が明確であるといえる。そして、接続先が特定された内容が、本明細書等に記載されている場合、接続先を特定しない発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。特に、端子の接続先として複数の箇所が想定される場合には、その端子の接続先を特定の箇所に限定する必要はない。したがって、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有する一部の端子についてのみ、その接続先を特定することによって、発明の一態様を構成することが可能な場合がある。
【0327】
なお、本明細書等においては、ある回路について、少なくとも接続先を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。または、ある回路について、少なくとも機能を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。つまり、機能を特定すれば、発明の一態様が明確であるといえる。そして、機能が特定された発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。したがって、ある回路について、機能を特定しなくても、接続先を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。または、ある回路について、接続先を特定しなくても、機能を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。
【0328】
図28(A)に示すEL表示装置は、スイッチ素子743と、トランジスタ741と、容量素子742と、発光素子719と、を有する。
【0329】
なお、
図28(A)などは、回路構成の一例であるため、さらに、トランジスタを追加することが可能である。逆に、
図28(A)の各ノードにおいて、トランジスタ、スイッチ、受動素子などを追加しないようにすることも可能である。
【0330】
トランジスタ741のゲートはスイッチ素子743の一端および容量素子742の一方の電極と電気的に接続される。トランジスタ741のソースは容量素子742の他方の電極と電気的に接続され、発光素子719の一方の電極と電気的に接続される。トランジスタ741のソースは電源電位VDDが与えられる。スイッチ素子743の他端は信号線744と電気的に接続される。発光素子719の他方の電極は定電位が与えられる。なお、定電位は接地電位GNDまたはそれより小さい電位とする。
【0331】
スイッチ素子743としては、トランジスタを用いると好ましい。トランジスタを用いることで、画素の面積を小さくでき、解像度の高いEL表示装置とすることができる。また、スイッチ素子743として、トランジスタ741と同一工程を経て作製されたトランジスタを用いると、EL表示装置の生産性を高めることができる。なお、トランジスタ741または/およびスイッチ素子743としては、例えば、上述したトランジスタを適用することができる。
【0332】
図28(B)は、EL表示装置の上面図である。EL表示装置は、基板700と、基板750と、シール材734と、駆動回路735と、駆動回路736と、画素737と、FPC732と、を有する。シール材734は、画素737、駆動回路735および駆動回路736を囲むように基板700と基板750との間に配置される。なお、駆動回路735または/および駆動回路736をシール材734の外側に配置しても構わない。
【0333】
図28(C)は、
図28(B)の一点鎖線M−Nの一部に対応するEL表示装置の断面図である。
【0334】
図28(C)には、トランジスタ741として、基板700上の導電体704aと、導電体704a上の絶縁体712aと、絶縁体712a上の絶縁体712bと、絶縁体712b上にあり導電体704aと重なる半導体706と、半導体706と接する導電体716aおよび導電体716bと、半導体706上、導電体716a上および導電体716b上の絶縁体718aと、絶縁体718a上の絶縁体718bと、絶縁体718b上の絶縁体718cと、絶縁体718c上にあり半導体706と重なる導電体714aと、を有する構造を示す。なお、トランジスタ741の構造は一例であり、
図28(C)に示す構造と異なる構造であっても構わない。
【0335】
したがって、
図28(C)に示すトランジスタ741において、導電体704aはゲート電極としての機能を有し、絶縁体712aおよび絶縁体712bはゲート絶縁体としての機能を有し、導電体716aはソース電極としての機能を有し、導電体716bはドレイン電極としての機能を有し、絶縁体718a、絶縁体718bおよび絶縁体718cはゲート絶縁体としての機能を有し、導電体714aはゲート電極としての機能を有する。なお、半導体706は、光が当たることで電気特性が変動する場合がある。したがって、導電体704a、導電体716a、導電体716b、導電体714aのいずれか一以上が遮光性を有すると好ましい。
【0336】
なお、絶縁体718aおよび絶縁体718bの界面を破線で表したが、これは両者の境界が明確でない場合があることを示す。例えば、絶縁体718aおよび絶縁体718bとして、同種の絶縁体を用いた場合、観察手法によっては両者の区別が付かない場合がある。
【0337】
図28(C)には、容量素子742として、基板上の導電体704bと、導電体704b上の絶縁体712aと、絶縁体712a上の絶縁体712bと、絶縁体712b上にあり導電体704bと重なる導電体716aと、導電体716a上の絶縁体718aと、絶縁体718a上の絶縁体718bと、絶縁体718b上の絶縁体718cと、絶縁体718c上にあり導電体716aと重なる導電体714bと、を有し、導電体716aおよび導電体714bの重なる領域で、絶縁体718aおよび絶縁体718bの一部が除去されている構造を示す。
【0338】
容量素子742において、導電体704bおよび導電体714bは一方の電極として機能し、導電体716aは他方の電極として機能する。
【0339】
したがって、容量素子742は、トランジスタ741と共通する膜を用いて作製することができる。また、導電体704aおよび導電体704bを同種の導電体とすると好ましい。その場合、導電体704aおよび導電体704bは、同一工程を経て形成することができる。また、導電体714aおよび導電体714bを同種の導電体とすると好ましい。その場合、導電体714aおよび導電体714bは、同一工程を経て形成することができる。
【0340】
図28(C)に示す容量素子742は、占有面積当たりの容量が大きい容量素子である。したがって、
図28(C)は表示品位の高いEL表示装置である。なお、
図28(C)に示す容量素子742は、導電体716aおよび導電体714bの重なる領域を薄くするため、絶縁体718aおよび絶縁体718bの一部が除去された構造を有するが、本発明の一態様に係る容量素子はこれに限定されるものではない。例えば、導電体716aおよび導電体714bの重なる領域を薄くするため、絶縁体718cの一部が除去された構造を有しても構わない。
【0341】
トランジスタ741および容量素子742上には、絶縁体720が配置される。ここで、絶縁体720は、トランジスタ741のソース電極として機能する導電体716aに達する開口部を有してもよい。絶縁体720上には、導電体781が配置される。導電体781は、絶縁体720の開口部を介してトランジスタ741と電気的に接続してもよい。
【0342】
導電体781上には、導電体781に達する開口部を有する隔壁784が配置される。隔壁784上には、隔壁784の開口部で導電体781と接する発光層782が配置される。発光層782上には、導電体783が配置される。導電体781、発光層782および導電体783の重なる領域が、発光素子719となる。
【0343】
ここまでは、EL表示装置の例について説明した。次に、液晶表示装置の例について説明する。
【0344】
図29(A)は、液晶表示装置の画素の構成例を示す回路図である。
図29に示す画素は、トランジスタ751と、容量素子752と、一対の電極間に液晶の充填された素子(液晶素子)753とを有する。
【0345】
トランジスタ751では、ソース、ドレインの一方が信号線755に電気的に接続され、ゲートが走査線754に電気的に接続されている。
【0346】
容量素子752では、一方の電極がトランジスタ751のソース、ドレインの他方に電気的に接続され、他方の電極が共通電位を供給する配線に電気的に接続されている。
【0347】
液晶素子753では、一方の電極がトランジスタ751のソース、ドレインの他方に電気的に接続され、他方の電極が共通電位を供給する配線に電気的に接続されている。なお、上述した容量素子752の他方の電極が電気的に接続する配線に与えられる共通電位と、液晶素子753の他方の電極に与えられる共通電位とが異なる電位であってもよい。
【0348】
なお、液晶表示装置も、上面図はEL表示装置と同様として説明する。
図28(B)の一点鎖線M−Nに対応する液晶表示装置の断面図を
図29(B)に示す。
図29(B)において、FPC732は、端子731を介して配線733aと接続される。なお、配線733aは、トランジスタ751を構成する導電体または半導体のいずれかと同種の導電体または半導体を用いてもよい。
【0349】
トランジスタ751は、トランジスタ741についての記載を参照する。また、容量素子752は、容量素子742についての記載を参照する。なお、
図29(B)には、
図28(C)の容量素子742に対応した容量素子752の構造を示したが、これに限定されない。
【0350】
なお、トランジスタ751の半導体に酸化物半導体を用いた場合、極めてオフ電流の小さいトランジスタとすることができる。したがって、容量素子752に保持された電荷がリークしにくく、長期間に渡って液晶素子753に印加される電圧を維持することができる。そのため、動きの少ない動画や静止画の表示の際に、トランジスタ751をオフ状態とすることで、トランジスタ751の動作のための電力が不要となり、消費電力の小さい液晶表示装置とすることができる。また、容量素子752の占有面積を小さくできるため、開口率の高い液晶表示装置、または高精細化した液晶表示装置を提供することができる。
【0351】
トランジスタ751および容量素子752上には、絶縁体721が配置される。ここで、絶縁体721は、トランジスタ751に達する開口部を有する。絶縁体721上には、導電体791が配置される。導電体791は、絶縁体721の開口部を介してトランジスタ751と電気的に接続する。
【0352】
導電体791上には、配向膜として機能する絶縁体792が配置される。絶縁体792上には、液晶層793が配置される。液晶層793上には、配向膜として機能する絶縁体794が配置される。絶縁体794上には、スペーサ795が配置される。スペーサ795および絶縁体794上には、導電体796が配置される。導電体796上には、基板797が配置される。
【0353】
上述した構造を有することで、占有面積の小さい容量素子を有する表示装置を提供することができる、または、表示品位の高い表示装置を提供することができる。または、高精細の表示装置を提供することができる。
【0354】
例えば、本明細書等において、表示素子、表示素子を有する装置である表示装置、発光素子、および発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態を用いること、または様々な素子を有することができる。表示素子、表示装置、発光素子または発光装置は、例えば、EL素子(有機物および無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、白色、赤色、緑色または青色などの発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブの少なくとも一つを有している。電気的または磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有していてもよい。
【0355】
EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)またはSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インクまたは電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部または全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0356】
なお、LEDを用いる場合、LEDの電極や窒化物半導体の下に、グラフェンやグラファイトを配置してもよい。グラフェンやグラファイトは、複数の層を重ねて、多層膜としてもよい。このように、グラフェンやグラファイトを設けることにより、その上に、窒化物半導体、例えば、結晶を有するn型GaN半導体などを容易に成膜することができる。さらに、その上に、結晶を有するp型GaN半導体などを設けて、LEDを構成することができる。なお、グラフェンやグラファイトと、結晶を有するn型GaN半導体との間に、AlN層を設けてもよい。なお、LEDが有するGaN半導体は、MOCVDで成膜してもよい。ただし、グラフェンを設けることにより、LEDが有するGaN半導体は、スパッタリング法で成膜することも可能である。
【0357】
<電子機器>
本発明の一態様に係る半導体装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を
図30に示す。
【0358】
図30(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体901、筐体902、表示部903、表示部904、マイクロフォン905、スピーカー906、操作キー907、スタイラス908等を有する。なお、
図30(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部903と表示部904とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
【0359】
図30(B)は携帯データ端末であり、第1筐体911、第2筐体912、第1表示部913、第2表示部914、接続部915、操作キー916等を有する。第1表示部913は第1筐体911に設けられており、第2表示部914は第2筐体912に設けられている。そして、第1筐体911と第2筐体912とは、接続部915により接続されており、第1筐体911と第2筐体912の間の角度は、接続部915により変更が可能である。第1表示部913における映像を、接続部915における第1筐体911と第2筐体912との間の角度にしたがって、切り替える構成としてもよい。また、第1表示部913および第2表示部914の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしてもよい。なお、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。または、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。
【0360】
図30(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体921、表示部922、キーボード923、ポインティングデバイス924等を有する。
【0361】
図30(D)は電気冷凍冷蔵庫であり、筐体931、冷蔵室用扉932、冷凍室用扉933等を有する。
【0362】
図30(E)はビデオカメラであり、第1筐体941、第2筐体942、表示部943、操作キー944、レンズ945、接続部946等を有する。操作キー944およびレンズ945は第1筐体941に設けられており、表示部943は第2筐体942に設けられている。そして、第1筐体941と第2筐体942とは、接続部946により接続されており、第1筐体941と第2筐体942の間の角度は、接続部946により変更が可能である。表示部943における映像を、接続部946における第1筐体941と第2筐体942との間の角度にしたがって切り替える構成としてもよい。
【0363】
図30(F)は自動車であり、車体951、車輪952、ダッシュボード953、ライト954等を有する。
【実施例1】
【0364】
本実施例では、基板上の酸化物半導体と、酸化物半導体上の絶縁体と、を有する試料に対し、ESRによる評価、およびマイクロ波光導電減衰法による評価を行った例を示す。
【0365】
まずは、ESRによる評価を行った試料A1、試料A2、試料A3、試料A4、試料A5および試料A6の作製方法を説明する。
【0366】
まず、基板として、厚さが0.5mmの石英基板を準備した。次に、酸化物半導体として、厚さが50nmのIn−Ga−Zn酸化物を成膜した。次に、窒素雰囲気において450℃で1時間の加熱処理を行った。次に、酸素雰囲気において450℃で1時間の加熱処理を行った。次に、絶縁体として、酸化窒化シリコンを成膜することで、試料A1乃至試料A6を作製した。
【0367】
なお、In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴンおよび酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は300℃とした。
【0368】
また、酸化窒化シリコンは、PECVD法を用いて成膜した。成膜ガスとしては、モノシランが1に対して亜酸化窒素が800となる体積比で混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、200Paとなるよう調整した。成膜電力は、60MHzの高周波電源を用いて150Wとした。電極間のギャップは28mmとした。基板温度は350℃とした。
【0369】
なお、酸化窒化シリコンの厚さは、試料A1が5nm、試料A2が7.5nm、試料A3が10nm、試料A4が12.5nm、試料A5が15nm、試料A6が20mnとなるように成膜した。
【0370】
次に、試料A1乃至試料A6のESRによる評価を行った。なお、試料A1乃至試料A6は、In−Ga−Zn酸化物の膜面が磁場に直交する向きに設置した。試料A1乃至試料A6におけるg値が1.93近傍に現れるシグナルに関連する欠陥準位のスピン密度を定量化し、
図31に示す。なお、ESRによる評価は、日本電子株式会社製電子スピン共鳴装置JES−FA300を用いた。
【0371】
図31より、酸化窒化シリコンが薄いもの、および厚いものにおいて、g値が1.93近傍にシグナルが現れなかった。即ち、スピン密度が、検出下限(ここでは1.4×10
17spins/cm
3)以下となった。したがって、酸化窒化シリコンの、成膜初期においてIn−Ga−Zn酸化物へのダメージが生じていることが示唆された。また、酸化窒化シリコンを厚く成膜することで、In−Ga−Zn酸化物のダメージが回復することが示唆された。
【0372】
次に、マイクロ波光導電減衰法による評価を行った試料B1、試料B2、試料B3、試料B4、試料B5および試料B6の作製方法を説明する。
【0373】
まず、基板として、厚さが1.1mmの石英基板を準備した。次に、酸化物半導体の1層目として、厚さが40nmのIn−Ga−Zn酸化物を成膜した。次に、酸化物半導体の2層目として、厚さが60nmのIn−Ga−Zn酸化物を成膜した。次に、窒素雰囲気において450℃で1時間の加熱処理を行った。次に、酸素雰囲気において450℃で1時間の加熱処理を行った。次に、絶縁体として、酸化窒化シリコンを成膜することで、試料B1乃至試料B6を作製した。
【0374】
なお、In−Ga−Zn酸化物の1層目は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:4であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が11%となるようにアルゴンおよび酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は200℃とした。
【0375】
また、In−Ga−Zn酸化物の2層目は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴンおよび酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は300℃とした。
【0376】
また、酸化窒化シリコンは、PECVD法を用いて成膜した。成膜ガスとしては、モノシラン1に対して亜酸化窒素が800となる体積比で混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、200Paとなるよう調整した。成膜電力は、60MHzの高周波電源を用いて150Wとした。電極間のギャップは28mmとした。基板温度は350℃とした。
【0377】
なお、酸化窒化シリコンの厚さは、試料B1が5nm、試料B2が7.5nm、試料B3が10nm、試料B4が12.5nm、試料B5が15nm、試料B6が20mnとなるように成膜した。
【0378】
次に、試料B1乃至試料B6のマイクロ波光導電減衰法による評価を行った。試料B1乃至試料B6におけるマイクロ波の反射率のピーク値を
図32に示す。励起光としては、ネオジムを添加したフッ化イットリウムリチウムをレーザ媒質に用いたレーザの3倍高調波(YLF−3HG、波長349nm)を用いた。なお、マイクロ波光導電減衰法による評価は、株式会社コベルコ科研製低温ポリシリコン・SiC評価装置LTA−1800SPを用いた。
【0379】
図32より、酸化窒化シリコンの厚さによってマイクロ波の反射率のピーク値が変化することがわかった。
【0380】
ここで、試料A1乃至試料A6と試料B1乃至試料B6との比較において、酸化窒化シリコンの条件が同じ試料同士であれば、それぞれのデータを対応させて評価することが可能である。よって、横軸に試料A1乃至試料A6においてESRで測定されたスピン密度をとり、縦軸に試料B1乃至試料B6においてマイクロ波光導電減衰法で測定されたマイクロ波の反射率のピーク値をとって得られたデータをプロットすることで、それらの相関関係を評価することができる(
図33参照。)。
【0381】
図33により、ESRでスピン密度が検出下限以下と評価された試料においても、マイクロ波光導電減衰法で測定されたマイクロ波の反射率のピーク値が測定できていれば、外挿によりスピン密度を算出できる可能性が示唆された。即ち、マイクロ波光導電減衰法は、ESRよりも高い感度でスピン密度を定量化できる可能性がある。
【0382】
なお、本実施例では、波長349nmの励起光を用いているため、マイクロ波光導電減衰法の感度が十分でない可能性もある。例えば、波長が337nm未満、315nm未満、300nm未満または270nm未満のレーザ光(代表的には、波長266nm)を用いることで、さらに高い感度で酸化物半導体のスピン密度を評価できる可能性がある。