特許第6616343号(P6616343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616343
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】引上式連続鋳造装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/04 20060101AFI20191125BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20191125BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20191125BHJP
   F16L 9/19 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B22D11/04 115
   B22D11/00 H
   B22D11/124 G
   F16L9/19 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-41816(P2017-41816)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-144070(P2018-144070A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】永川 悠太
(72)【発明者】
【氏名】増谷 隆志
(72)【発明者】
【氏名】八百川 盾
(72)【発明者】
【氏名】原 昌司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴輝
(72)【発明者】
【氏名】岩田 靖
【審査官】 印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−300940(JP,A)
【文献】 特開2016−111132(JP,A)
【文献】 特開2014−144484(JP,A)
【文献】 特開2013−244500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00
F16L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を保持する保持炉と、
前記溶湯の湯面上に設置され、前記湯面から導出された前記溶湯が通過することにより、鋳造する中空鋳物の断面形状を規定する形状規定部材と、
前記湯面から導出された中空形状の前記溶湯の内側を冷却する冷却部と、を備えた引上式連続鋳造装置であって、
前記冷却部は、
前記保持炉に保持された前記溶湯の内部を通過して、前記湯面から導出された中空形状の前記溶湯の内側領域に向けて前記湯面から突出した先端部の噴射口から第1冷媒を噴射する内側配管と、
前記内側配管を囲むように設けられ、前記内側配管を流れる前記第1冷媒の温度を調整するための第2冷媒が流れる外側配管と、
を備え、
前記外側配管は、
断面視して、前記内側配管の外周面を覆うように設けられ、かつ、一部が前記内側配管の外周面から前記外側配管の内周面にかけて形成された往路管と、
断面視して、前記往路管の外周面を覆うように設けられた復路管と、
を有する、引上式連続鋳造装置。
【請求項2】
前記往路管及び前記復路管のそれぞれの角部には、前記冷却部の原料の粉末が設けられている、
請求項1に記載の引上式連続鋳造装置。
【請求項3】
前記冷却部は、
前記外側配管の外周面を囲むようにして設けられた断熱層をさらに備えた、
請求項1又は2に記載の引上式連続鋳造装置。
【請求項4】
前記断熱層は、
前記外側配管の外周面を囲むようにして形成された金属箔を有する、
請求項3に記載の引上式連続鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多重配管に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋳型を要しない引上式の連続鋳造方法が開示されている。特許文献1に示すように、溶融金属(溶湯)の表面(すなわち湯面)にスタータを浸漬させた後、当該スタータを引き上げると、溶湯の表面膜や表面張力によりスタータに追従して溶湯も導出される。そのため、湯面近傍に設置された形状規定部材を介して、溶湯を導出し、冷却することにより、所望の断面形状を有する鋳物を連続鋳造することができる。
【0003】
特許文献1では、環状の開口部(溶湯通過部)を有する形状規定部材を用いることにより、中空形状の鋳物(即ちパイプ)を鋳造している。ここで、特許文献1では、溶湯保持炉の外部から、溶湯保持炉に保持された溶湯の内部を通過して、溶湯保持炉の湯面から環状に導出された溶湯の内側にまで延びる冷却配管、の先端から冷却媒体を噴射することにより、鋳造中の中空形状の鋳物を内側から冷却している。この冷却配管は、冷却媒体を流す冷却ガスノズルと、当該冷却ガスノズルを覆う保護管と、からなる多重配管である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−144484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は以下の課題を見出した。
近年では、特許文献1に開示された多重配管構造の冷却配管を、3Dプリンタ等の立体印刷機を用いて積層造形することが可能となっている。ここで、立体印刷機を用いて多重配管を積層造形する場合、内側の配管を支持するため、通常、内側の配管と外側の配管との間にはブリッジが設けられる。
【0006】
しかしながら、内側の配管と外側の配管との間にブリッジが設けられた場合、積層造形後に多重配管内に残留している原料粉末を取り除くことが困難になる等の問題があった。なお、そのような問題を回避するために、多重配管の外径を拡大させた場合、溶湯保持炉内に設けられた多重配管により溶湯の導出が妨げられてしまう。
【0007】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであって、外径を拡大させることなく、容易に積層造形後の原料粉末を取り除くことが可能な多重配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る多重配管は、内側配管と、前記内側配管を囲むように設けられた外側配管と、を備え、前記外側配管は、断面視して、前記内側配管の外周面を覆うように設けられ、かつ、一部が前記内側配管の外周面から前記外側配管の内周面にかけて形成された往路管と、断面視して、前記往路管の外周面を覆うように設けられた復路管と、を有するものである。それにより、専用のブリッジを用いて積層造形する必要が無くなるため、配管の外径を拡大させなくても、容易に積層造形後の原料粉末を取り除くことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、外径を拡大させることなく、容易に積層造形後の原料粉末を取り除くことが可能な多重配管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る多重配管が適用される自由鋳造装置を模式的に示す断面図である。
図2図1に示す形状規定部材の平面図である。
図3図1に示す冷却部を拡大して模式的に示す断面図である。
図4図1に示す冷却部の多重配管を断面視した図である。
図5図1に示す冷却部の多重配管の積層造形工程を説明するための斜視図である。
図6図1に示す冷却部の多重配管の第1の変形例を断面視した図である。
図7図1に示す冷却部の多重配管の第2の変形例を断面視した図である。
図8図1に示す冷却部の多重配管の第3の変形例を断面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0012】
<実施の形態1>
まず、図1を参照して、実施の形態1に係る多重配管が適用される自由鋳造装置(引上式連続鋳造装置)について説明する。図1は、実施の形態1に係る多重配管が適用される自由鋳造装置を模式的に示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、実施の形態1に係る自由鋳造装置は、溶湯保持炉(保持炉)101、形状規定部材102、支持ロッド106,107、アクチュエータ108、冷却部109、及び、引上機116を備えている。なお、図1には、構成要素の位置関係を説明するために便宜的に右手系xyz座標が示されている。図1におけるxy平面は水平面を構成し、z軸方向が鉛直方向である。より具体的には、z軸のプラス方向が鉛直上向きとなる。
【0014】
溶湯保持炉101は、例えばアルミニウムやその合金などの溶湯M1を収容し、溶湯M1が流動性を有する所定の温度に保持する。図1の例では、鋳造中に溶湯保持炉101に溶湯M1を補充しないため、鋳造の進行とともに溶湯M1の表面(つまり湯面)は低下する。他方、鋳造中に溶湯保持炉101に溶湯M1を随時補充し、湯面を一定に保持するような構成としてもよい。ここで、溶湯保持炉101の設定温度を上げると凝固界面SIFの位置を上げることができ、溶湯保持炉101の設定温度を下げると凝固界面SIFの位置を下げることができる。なお、当然のことながら、溶湯M1はアルミニウム以外の金属やその合金であってもよい。
【0015】
形状規定部材102は、例えばセラミックスやステンレスなどからなり、湯面上に配置されている。形状規定部材102は、外部形状規定部材103と、内部形状規定部材104と、により構成されている。外部形状規定部材103は、鋳造する鋳物M3の外部の断面形状を規定し、内部形状規定部材104は、鋳造する鋳物M3の内部の断面形状を規定する。図1に示した鋳物M3は、水平方向の断面(以下、横断面と称す)の形状が管状の中空鋳物(つまりパイプ)である。
【0016】
図1の例では、外部形状規定部材103及び内部形状規定部材104は、それらの下側の主面(下面)が湯面に接触するように配置されている。それにより、溶湯M1の表面に形成される酸化膜や溶湯M1の表面に浮遊する異物の鋳物M3への混入が抑制される。他方、外部形状規定部材103及び内部形状規定部材104は、それらの下面が湯面に接触しないように設置されてもよい。具体的には、外部形状規定部材103及び内部形状規定部材104は、それらの下面が湯面から所定の距離(例えば0.5mm程度)だけ離間するように配置されてもよい。それにより、外部形状規定部材103及び内部形状規定部材104では、熱変形や溶損が抑制されるため、耐久性が向上する。
【0017】
図2は、図1に示す形状規定部材102の平面図である。ここで、図1の形状規定部材102の断面図は、図2のI−I断面図に相当する。図2の例では、外部形状規定部材103は、例えば矩形状の平面形状を有し、中央部に円形状の開口部を有している。内部形状規定部材104は、円形状の平面形状を有し、外部形状規定部材103の開口部の中央部に配置されている。外部形状規定部材103と内部形状規定部材104との間の間隙が、溶湯M1が通過する溶湯通過部105となる。なお、図2におけるxyz座標は、図1と一致している。
【0018】
なお、図2には、冷却ガス供給管112の先端部113も示されている。先端部113は、内部形状規定部材104の中央部に配置されている。先端部113には、平面視して内部形状規定部材104の中央から放射状に開口する複数の噴射口113aが設けられている。
【0019】
引上機116は、スタータ(導出部材)STを把持し、スタータSTを溶湯M1に浸漬させたり、溶湯M1に浸漬されたスタータSTを引き上げたりする。
【0020】
図1に示すように、溶湯M1は、浸漬されたスタータSTと結合した後、その表面膜や表面張力により外形を維持したままスタータSTに追従して引き上げられ、形状規定部材102の溶湯通過部105を通過する。溶湯M1が形状規定部材102の溶湯通過部105を通過することにより、溶湯M1に対し形状規定部材102から外力が印加され、鋳物M3の断面形状が規定される。ここで、溶湯M1の表面膜や表面張力によってスタータST(又は、スタータSTに追従して引き上げられた溶湯M1が凝固して形成された鋳物M3)に追従して湯面から引き上げられた溶湯を保持溶湯M2と呼ぶ。また、鋳物M3と保持溶湯M2との境界が凝固界面SIFである。
【0021】
支持ロッド106は、外部形状規定部材103を支持し、支持ロッド107は、内部形状規定部材104を支持する。支持ロッド106,107は何れもアクチュエータ108に連結されている。
【0022】
アクチュエータ108は、支持ロッド106,107を介して、外部形状規定部材103及び内部形状規定部材104を上下方向(z軸方向)に移動させることができる。それにより、鋳造の進行による湯面の低下とともに、外部形状規定部材103及び内部形状規定部材104(即ち、形状規定部材102)を下方向に移動させることができる。また、アクチュエータ108は、支持ロッド106,107を介して、形状規定部材102を水平方向(x軸方向及びy軸方向)に移動させることができる。それにより、鋳物M3の長手方向の形状を自由に変形させることができる。
【0023】
冷却部109は、冷却ガス(例えば空気、窒素、アルゴンなど)をスタータSTや鋳物M3に吹き付けることで、間接的に保持溶湯M2を冷却する部である。冷却ガスの流量を増やすと凝固界面SIFの位置を下げることができ、冷却ガスの流量を減らすと凝固界面SIFの位置を上げることができる。なお、冷却部109も、上下方向(鉛直方向;z軸方向)及び水平方向(x軸方向及びy軸方向)に移動可能となっている。そのため、例えば、鋳造の進行による湯面の低下とともに、形状規定部材102の下方向の移動に合わせて、冷却部109を下方向に移動することができる。あるいは、引上機116や形状規定部材102の水平方向の移動に合わせて、冷却部109を水平方向に移動することができる。
【0024】
より具体的には、冷却部109は、鋳造中の鋳物M3を外側から冷却する部及び内側から冷却する部からなり、鋳物M3を外側から冷却する部として、冷却ガス供給管110を有し、鋳物M3を内側から冷却する部として、第1の冷却ガス供給管(内側配管)112、第2の冷却ガス供給管(外側配管の往路管)114、第2の冷却ガスの排出管(外側配管の復路管)115、及び、断熱層120を有する。
【0025】
図3は、冷却部109を拡大して模式的に示す断面図である。
まず、鋳物M3を外側から冷却する部では、冷却ガス供給管110の複数の先端部111が、鋳物M3の外側に鋳物M3の外周面を囲むようにして設けられている。冷却ガス供給管110は、これら複数の先端部111の噴射口111aから、鋳造中の中空形状の鋳物M3の外周面に向けて、冷却ガスA3を噴射する。それにより、鋳物M3に連続する保持溶湯M2の外周面が間接的に冷却される。
【0026】
続いて、冷却部109のうち鋳物M3を内側から冷却する部では、冷却ガス供給管(内側配管)112が、溶湯保持炉101の外部から、溶湯保持炉101に保持された溶湯M1の内部を通過して、中空形状の保持溶湯M2の内側領域にまで延在している。即ち、冷却ガス供給管112の先端部113は、湯面から中空形状の保持溶湯M2の内側領域に突出して設けられている。冷却ガス供給管112は、先端部113に設けられた複数の噴射口113aから、鋳造中の中空形状の鋳物M3の内周面に向けて、冷却ガスA1を噴射する。それにより、鋳物M3に連続する保持溶湯M2の内周面が間接的に冷却される。
【0027】
冷却ガス供給管(外側配管の往路管)114は、冷却ガス供給管112の外周面を覆うように設けられている。冷却ガス供給管114には、冷却ガスA2が流れる。この冷却ガスA2の流量又は温度を調整することにより、冷却ガスA1の温度が調整される。排出管(外側配管の復路管)115は、冷却ガス供給管114に連続し、かつ、冷却ガス供給管114の外周面を覆うように設けられ、冷却ガスA2を排出口115aから装置外に排出する。なお、冷却ガスA2の代わりに冷却水等の他の冷媒が用いられてもよい。
【0028】
即ち、冷却部109では、冷却ガス供給管112、114、115によって多重配管が構成されている。そのため、この多重配管の中心に位置する冷却ガス供給管112を流れる冷却ガスA1の温度は、高温の溶湯M1の影響を受けにくい。また、本例では、この多重配管の外周面を覆うようにして断熱層120が設けられている。そのため、冷却ガスA1の温度は、高温の溶湯M1の影響をさらに受けにくくなっている。
【0029】
スタータSTに連結された引上機116により鋳物M3を引き上げつつ、冷却ガスによりスタータSTや鋳物M3を冷却することにより、凝固界面SIF近傍の保持溶湯M2が上側(z軸方向プラス側)から下側(z軸方向マイナス側)へ順次凝固し、鋳物M3が形成されていく。引上機116による引上速度を速くすると凝固界面SIFの位置を上げることができ、引上速度を遅くすると凝固界面SIFの位置を下げることができる。
【0030】
なお、形状規定部材102を水平方向に移動させる代わりに、引上機116を水平方向に移動させてもよい。引上機116を水平方向に移動させながら引き上げることにより、保持溶湯M2を斜め方向に導出することができる。そのため、鋳物M3の長手方向の形状を自由に変化させることができる。
【0031】
続いて、図1乃至図3を参照して、実施の形態1にかかる自由鋳造方法について説明する。まず、引上機116によりスタータSTを降下させ、外部形状規定部材103と内部形状規定部材104との間の溶湯通過部105を通して、スタータSTの先端部(下端部)を溶湯M1に浸漬させる。
【0032】
次に、所定の速度でスタータSTの引き上げを開始する。ここで、スタータSTが湯面から離間しても、溶湯M1は、表面膜や表面張力によってスタータSTに追従して湯面から引き上げられ(導出され)保持溶湯M2を形成する。図1に示すように、保持溶湯M2は、形状規定部材102の溶湯通過部105に形成される。つまり、形状規定部材102により、保持溶湯M2に形状が付与される。
【0033】
次に、スタータST、又は、保持溶湯M2が凝固して形成された鋳物M3は、冷却部109から吹き出される冷却ガスによって冷却される。それにより、スタータST又は鋳物M3に連続する保持溶湯M2が間接的に冷却されて上側から下側に向かって順に凝固し、鋳物M3が成長していく。このようにして、鋳物M3を連続鋳造することができる。
【0034】
(多重配管の断面構造)
ところで、近年では、冷却部109の多重配管を、3Dプリンタ等の立体印刷機を用いて積層造形することが可能となっている。ここで、立体印刷機を用いて多重配管を積層造形する場合、断面視して内側の配管(冷却ガス供給管112)が宙に浮いている状態では積層造形できないため、通常、内側の配管と外側の配管との間にはブリッジが設けられる。しかしながら、内側の配管と外側の配管との間にブリッジが設けられた場合、積層造形後に多重配管内に残留している原料粉末を取り除くことが困難になる等の問題があった。なお、そのような問題を回避するために、多重配管の外径を拡大させた場合、溶湯保持炉内に設けられた多重配管により溶湯の導出が妨げられてしまう。
【0035】
そこで、本実施の形態に係る多重配管では、ブリッジを用いない構造を採用することにより、外径を拡大させることなく、容易に積層造形後の原料粉末を取り除くことを可能にしている。以下、具体例を挙げて説明する。
【0036】
図4は、冷却部109の多重配管を断面視した図である。
図4に示すように、多重配管では、断面視して、中心部分に冷却ガス供給管(内側配管)112が設けられ、それを囲むようにして外側配管119が設けられている。なお、外側配管119は、冷却ガス供給管(外側配管の往路管)114と、排出管(外側配管の復路管)115と、によって構成されている。
【0037】
冷却ガス供給管(外側配管の往路管)114は、断面視して略三角形状の4つの冷却ガス供給管114_1〜114_4に分割されている。
【0038】
冷却ガス供給管114_1〜114_4では、それぞれの略三角形状の一辺が、冷却ガス供給管(内側配管)112の外周面の全部又は大部分を覆っている。それにより、冷却ガス供給管112を流れる冷却ガスA1の温度を、冷却ガス供給管114を流れる冷却ガスA2を用いて効率良く調整することができる。
【0039】
また、冷却ガス供給管114_1〜114_4では、それぞれの略三角形状の残りの二辺が、冷却ガス供給管(内側配管)112の外周面から、外側配管119の内周面にかけて形成されている。即ち、冷却ガス供給管114では、その一部が、ブリッジと同等の機能を持つものとして、冷却ガス供給管(内側配管)112から外側配管119の内周面にかけて形成されている。それにより、この多重配管は、専用のブリッジが無くても積層造形されることができる。
【0040】
排出管115は、断面視して略三角形状の4つの排出管115_1〜115_4に分割されている。排出管115_1〜115_4は、それぞれ冷却ガス供給管114_1〜114_4の間隙に設けられている。
【0041】
ここで、外側配管119の内周面の大部分は、排出管115_1〜115_4によって覆われており、冷却ガス供給管114_1〜114_4は、それぞれの略三角形状の頂点部分を外側配管119の内周面に接触させている程度である。そのため、冷却ガス供給管114_1〜114_4を流れる冷却ガスA2は、外側配管119の外側にある溶湯M1からの熱の影響を受けにくい。
【0042】
断熱層120は、断面視して、外側配管119の外周面を囲むようにして設けられている。断熱層120は、必須ではないが、溶湯M1から多重配管内部への熱伝導をさらに抑制することができる。
【0043】
断熱層120は、例えば、空気が封入された空間領域(空気層)を有する。ここで、空間領域には、原料粉末が残留されていてもよい。それにより、赤外線等の輻射による熱伝導を抑制することができる。なお、断熱層120に空間領域が設けられる場合、外側配管119と断熱層120の外周壁との間の空間領域にはブリッジが設けられる。
【0044】
図5は、冷却部109の多重配管の積層造形工程を示す斜視図である。図5に示すように、冷却部109の多重配管は、3Dプリンタ等の立体印刷機を用いて工程A、B、C,Dの順に積層造形されている。図5を見てもわかるように、本実施の形態に係る多重配管は、専用のブリッジが無くても積層造形されることができる。
【0045】
このように、本実施の形態にかかる多重配管では、冷却ガス供給管(外側配管の往路管)114の一部が、ブリッジと同等の機能を有するものとして、冷却ガス供給管(内側配管)112から外側配管119の内周面にかけて形成されている。それにより、本実施の形態にかかる多重配管は、専用のブリッジを用いて積層造形する必要が無くなるため、外径を拡大させることなく、容易に積層造形後の原料粉末を取り除くことができる。
【0046】
(多重配管の第1変形例)
図6は、冷却部109の多重配管の第1変形例を断面視した図である。
図6に示す多重配管は、図4に示す多重配管と比較して、断面視して、冷却ガス供給管114_1〜114_4のそれぞれの角部において粉末残留部121をさらに備える。図6に示す多重配管のその他の構造については、図4に示す多重配管の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0047】
粉末残留部121は、例えば、積層造形後の原料粉末を残留させることにより、断熱材としての役割を果たす。それにより、粉末残留部121は、溶湯M1からの多重配管内部への熱伝導を抑制することができる。
【0048】
(多重配管の第2変形例)
図7は、冷却部109の多重配管の第2変形例を断面視した図である。
図7に示す多重配管は、図4に示す多重配管と比較して、断面視して、断熱層120の空間領域において、金属箔122をさらに備える。図7に示す多重配管のその他の構造については、図4に示す多重配管の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0049】
断熱層120の空間領域に金属箔122を設けることにより、輻射による熱伝導をさらに抑制することができる。なお、金属箔122は、外側配管119と断熱層120とをつなぐブリッジとしても用いられてもよい。
【0050】
(多重配管の第3変形例)
図8は、冷却部109の多重配管の第3変形例を断面視した図である。
図8に示す多重配管では、図4に示す多重配管と比較して、冷却ガス供給管114が4つに分割される代わりに3つの冷却ガス供給管114_1〜114_3に分割され、排出管115が4つに分割される代わりに3つの冷却ガス供給管115_1〜115_3に分割されている。図8に示す多重配管のその他の構造については、図4に示す多重配管の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0051】
図8に示す多重配管でも、図4に示す多重配管の場合と同等程度の効果を奏することができる。なお、冷却ガス供給管114及び排出管115は、3つや4つに分割される場合に限られず、任意の数に分割されることができる。
【0052】
また、図8に示す多重配管に対し、上記した粉末残留部121や金属箔122が設けられてもよい。
【0053】
以上のように、上記実施の形態にかかる多重配管では、冷却ガス供給管(外側配管の往路管)114の一部が、ブリッジと同等の機能を有するものとして、冷却ガス供給管(内側配管)112から外側配管119の内周面にかけて形成されている。それにより、上記実施の形態にかかる多重配管は、専用のブリッジを用いて積層造形する必要が無くなるため、外径を拡大させることなく、容易に積層造形後の原料粉末を取り除くことができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、多重配管に断熱層120が設けられた場合について説明したが、これに限られず、不要であれば断熱層120は設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0055】
101 溶湯保持炉
102 形状規定部材
103 外部形状規定部材
104 内部形状規定部材
105 溶湯通過部
106 支持ロッド
107 支持ロッド
108 アクチュエータ
109 冷却部
110 冷却ガス供給管
111 先端部
111a 噴射口
112 冷却ガス供給管(内側配管)
113 先端部
113a 噴射口
114 冷却ガス供給管(外側配管の往路管)
114_1〜114_4 冷却ガス供給管
115 排出管(外側配管の復路管)
115_1〜115_4 排出管
115a 排出口
116 引上機
119 外側配管
120 断熱層
121 粉末残留部
122 金属箔
A1〜A3 冷却ガス
M1 溶湯
M2 保持溶湯
M3 鋳物
SIF 凝固界面
ST スタータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8