特許第6616350号(P6616350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アース製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616350
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】発泡性圧縮成形物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20191125BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20191125BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20191125BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20191125BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20191125BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20191125BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61Q19/10
   A61K8/60
   A61K8/86
   A61K8/36
   A61K8/29
   A61K8/362
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-98474(P2017-98474)
(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-193328(P2018-193328A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】梶浦 直起
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−097238(JP,A)
【文献】 特開2017−066102(JP,A)
【文献】 特開2010−209294(JP,A)
【文献】 特開2005−350397(JP,A)
【文献】 特開2001−039856(JP,A)
【文献】 特開平02−115115(JP,A)
【文献】 特開2006−213676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C11D 1/00−19/00
A61L 9/00− 9/22
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 31/33−33/44
A61K 31/00−31/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)カチオン化セルロース、成分(b)香料、成分(c)ポリアルキレングリコール、成分(d)有機酸、及び成分(e)炭酸塩を含有し、かつ成分(f)酸化チタンを含有してもよい発泡性圧縮成形物であって、
前記成分(a)に対する前記成分(b)の質量比[(b)/(a)]が0.6以上1.4以下であり、前記成分(a)に対する前記成分(c)の質量比[(c)/(a)]が3以上6以下であり、
前記発泡性圧縮成形物が前記成分(f)を含有する場合、前記成分(a)に対する前記成分(f)の質量比[(f)/(a)]が3以下であり、
前記発泡性圧縮成形物100質量%に対して、前記成分(a)を0.01〜3.0質量%含有する発泡性圧縮成形物。
【請求項2】
前記発泡性圧縮成形物100質量%に対して、前記成分(b)を0.01〜2.0質量%、及び前記成分(c)を0.1〜4.0質量%含有する、請求項1に記載の発泡性圧縮成形物。
【請求項3】
入浴剤である、請求項1または2に記載の発泡性圧縮成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性圧縮成形物に関し、特にカチオン化セルロースを含有する発泡性圧縮成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴剤や洗浄剤等の剤形には、粉末、液体、及び圧縮成形物等、様々な種類がある。その中でも、圧縮成形物は、使用時の簡便さや良好な流通性から好まれ、多くのメーカーが製造・販売を行っている。
【0003】
このような圧縮成形物のなかでも、有機酸と炭酸塩との反応により炭酸ガスを発生させる発泡性を有する入浴剤や洗浄剤等がよく知られている。例えば、発泡性の入浴剤は、炭酸ガスが皮膚に浸透し血管を広げ、血行促進や疲労回復等の効果が期待される。また、発泡性の洗浄剤は、発生する気泡による清浄の効果が期待される。特許文献1には、ブリケット型の水まわり用の発泡性洗浄剤について開示されている。
【0004】
入浴剤等にはカチオン化セルロースが使用されているものも知られており、例えば特許文献2に開示されたカチオン化セルロースを含有する浴用剤組成物においては、カチオン化セルロースが入浴時、入浴後の感触として、肌にすべすべ感を与え、皮膚のコンデショニング効果、即ち、保湿効果を与えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−90226号公報
【特許文献2】特開平9−315951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、カチオン化セルロースを含有する発泡性圧縮成形物の製造を試みたところ、カチオン化セルロース等に起因して発泡性圧縮成形物の硬度が低くなってしまい、圧縮成形できない、もしくは保形性に優れた発泡性圧縮成形物を成形することが困難であることがわかった。そのため、圧縮成形時にキャッピング、ラミネーション、バインディング、スティッキング、ピッキングなどの障害が起きたり、発泡性圧縮成形物が成形されたとしても、亀裂やひびが発生しやすく、製造時や輸送時に保形できないという問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、発泡性圧縮成形物の硬度が高く、保形性に優れた、カチオン化セルロースを含有する発泡性圧縮成形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、発泡性圧縮成形物中のカチオン化セルロース、香料、ポリアルキレングリコール、及び酸化チタンの含有比率を特定範囲とすることにより、硬度が高く、保形性に優れた発泡性圧縮成形物を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.成分(a)カチオン化セルロース、成分(b)香料、成分(c)ポリアルキレングリコール、成分(d)有機酸、及び成分(e)炭酸塩を含有し、かつ成分(f)酸化チタンを含有してもよい発泡性圧縮成形物であって、
前記成分(a)に対する前記成分(b)の質量比[(b)/(a)]が0.6以上1.4以下であり、前記成分(a)に対する前記成分(c)の質量比[(c)/(a)]が3以上6以下であり、
前記発泡性圧縮成形物が前記成分(f)を含有する場合、前記成分(a)に対する前記成分(f)の質量比[(f)/(a)]が3以下である発泡性圧縮成形物。
2.前記発泡性圧縮成形物100質量%に対して、前記成分(a)を0.01〜3.0質量%、前記成分(b)を0.01〜2.0質量%、及び前記成分(c)を0.1〜4.0質量%含有する、前記1に記載の発泡性圧縮成形物。
3.入浴剤である、前記1または2に記載の発泡性圧縮成形物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡性圧縮成形物は、成分(a)カチオン化セルロース、成分(b)香料、成分(c)ポリアルキレングリコール、及び成分(f)酸化チタンの含有比率を特定範囲にすることにより、硬度が高く、保形性に優れた発泡性圧縮成形物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
<発泡性圧縮成形物>
本発明の発泡性圧縮成形物は、成分(a)カチオン化セルロース、成分(b)香料、成分(c)ポリアルキレングリコール、成分(d)有機酸、及び成分(e)炭酸塩を含有し、かつ成分(f)酸化チタンを含有してもよい発泡性圧縮成形物であり、成分(a)に対する成分(b)の質量比[(b)/(a)]が0.6以上1.4以下であり、成分(a)に対する成分(c)の質量比[(c)/(a)]が3以上6以下であり、発泡性圧縮成形物が成分(f)を含有する場合、成分(a)に対する成分(f)の質量比[(f)/(a)]が3以下であることを特徴とする。後述する実施例でも示されているように、成分(a)カチオン化セルロース、成分(b)香料、成分(c)ポリアルキレングリコール、及び成分(f)酸化チタンの質量比がそれぞれ上記特定範囲であることによって、硬度が高く、保形性に優れた発泡性圧縮成形物となる。
【0013】
本発明の発泡性圧縮成形物の用途としては、例えば、入浴剤、洗浄剤、芳香剤、および消臭剤等が挙げられる。
【0014】
以下、本発明の発泡性圧縮成形物に含有される成分について説明する。
【0015】
(a)カチオン化セルロース
本発明の発泡性圧縮成形物はカチオン化セルロースを含有する。本発明の発泡性圧縮成形物の用途に応じて、カチオン化セルロースが担う役割は様々であり、特に制限されるものではないが、例えば、本発明の発泡性圧縮成形物を入浴剤として使用する場合、カチオン化セルロースは入浴後の肌に付着して保湿作用を担う。また、本発明の発泡性圧縮成形物を洗浄剤として使用する場合、カチオン化セルロースは洗浄効果を高めたり、洗浄物の表面をコーティングする役割を担う。洗浄剤は毛髪用、身体用、衣類用、口腔用などの使用用途によってその役割が変わる。また、本発明の発泡性圧縮成形物を芳香剤として使用する場合、カチオン化セルロースは芳香成分の揮散を調整する役割を担う。
【0016】
本発明で用いるカチオン化セルロースは、第4級アンモニウムからなるカチオン基を導入し、全体としてカチオン性を有するセルロース誘導体である。具体的には、塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース(別称「ポリクオタニウム−10」)、及び塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。なかでも、塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロースが、好適であり、例えば入浴剤の場合、良好な肌感触やより高い保湿効果が得られ、また洗浄剤の場合は、より高い洗浄効果やコーティング効果が得られ、芳香剤の場合は、芳香成分の揮散を調整する効果をより高めることができる。
【0017】
これらの中において、分子量やカチオン化度の異なるものがあるが、本発明の効果を奏する限り適宜選択して用いることができ、分子量としては、例えば、10,000〜3,000,000の範囲が好ましく、さらには50,000〜2,000,000の範囲がより好ましい。またカチオン化度は、窒素原子含有率(質量%)として、例えば、0.1〜5質量%の範囲が好ましい。
本発明で用いる上記カチオン化セルロースは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
カチオン化セルロースの含有量は、発泡性圧縮成形物100質量%に対して、好ましくは0.01〜3.0質量%であり、より好ましくは0.1〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.0質量%である。
【0019】
(b)香料
本発明の発泡性圧縮成形物は香料を含有する。本発明で用いる香料とは、天然香料、合成香料、及び精油成分の少なくともいずれかの成分からなるものである。
天然香料、合成香料、及び精油成分としては、従来公知のものを任意に用いることができ、例えば、ハッカ、ユーカリ、レモン、バーベナ、シトロネラ、カヤプテ、サルビア、タイム、クローブ、ローズマリー、ヒソップ、ジャスミン、カモミール、ネロリ、ヨモギ、ペリーラ、マジョラム、ローレル、ジュニパーベリー、ナツメグ、ジンジャー、オニオン、ガーリック、ラベンダー、ベルガモット、クラリーセージ、ペパーミント、バジル、ローズ、プチグレン、シナモン、メース、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ロジノール、オレンジ、アルテミシア、カンフル、メントール、シネオール、オイゲノール、ヒドロキシシトロネラール、サンダルウッド、コスタス、ラブダナム、アンバー、ムスク、α−ピネン、リモネン、サリチル酸メチル、ソウジュツ、ビャクジュツ、カノコソウ、ケイガイ、コウボク、センキュウ、トウヒ、トウキ、ショウキョク、シャクヤク、オウバク、オウゴン、サンシン、ケイヒ、ニンジン、ブクリョウ、ドクカツ、ショウブ、ガイヨウ、マツブサ、ビャクシ、ジュウヤク、ウイキョウ、チンピ、カミツレ、グレープフルーツ等の精油類、亜硝酸アミル、トリメチルシクロヘキサノール、アリルサルファイド、ノニルアルコール、デシルアルコール、フェニルエチルアルコール、炭酸メチル、炭酸エチル、フェニル酢酸エステル、グアイアコール、インドール、クレゾール、チオフェノール、p−ジクロロベンゼン、p−メチルキノリン、イソキノリン、ピリジン、アブシンス油酢酸、酢酸リナリル、酢酸エステル等の「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1960)、「香りの百科」,日本香料協会編,朝倉書店(1989)、「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Pajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)、「Perfume and Flavor Chemicals(aroma chemicals)」,Vols.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「香料と調香の基礎知識」,中島基貴編著,産業図書(1995)、「合成香料 化学と商品知識」,印藤元一著,化学工業日報社(1996)、「香りの百科事典」,谷田貝光克編,丸善(2005)に記載の天然香料、合成香料、及び精油成分が挙げられる。上記香料は1種又は2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0020】
なかでも、本発明における香料はテルペン系香料化合物を含有することが好ましい。特に、炭素数10のモノテルペンおよびその誘導体(炭素数10以上の化合物を含む。)であることが好ましい。ここでモノテルペンとは、2つのイソプレン単位からなる炭素数10からなる香料化合物であり、鎖状(非環式)のものと環を含む環状のものがある。
【0021】
上記テルペン系香料化合物は、イソプレンを構成単位とする香料化合物やその誘導体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オシメン、ミルセン、コスメン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、及びリナロール等の鎖状モノテルペン;リモネン、メンタン、テルピネン、フェランドレン、テルピノレン、及びシメン等の単環式モノテルペン;α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、カレン、サビネン、及びツジェン等の二環式モノテルペン等が挙げられる。
【0022】
これらのテルペン系香料化合物の中で、リモネン、ピネン、ミルセン、カレン、テルピネン、及びカンフェン等のテルペン系炭化水素;ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、ネロール、及びターピネオール等のテルペン系アルコール;酢酸リナリル、酢酸テルピニル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸シトロネリル、及び酢酸イソボロニル等のテルペン系エステル;シトロネラール、シトラール、ネラール、及びペリラアルデヒド等のテルペン系アルデヒドが好ましい。
【0023】
本発明における香料は、任意の香料用溶剤を含有してもよい。この場合、本発明における香料とは、上記香料用溶剤を含むものとする。
上記香料用溶剤としては、例えば、精製水、イオン交換水、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、3−メチル−4−メトキシブタノール、3‐メトキシ‐3‐メチル‐1‐ブタノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ブチレングリコール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等のグリコールエーテル類、n−パラフィン、パラフィン(固形)、イソパラフィン、流動パラフィン等のパラフィン類、ジエチルフタレート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、その他クエン酸トリエチル、N−メチルピロリドン、炭酸プロピレン等が挙げられ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の発泡性圧縮成形物は、上記カチオン化セルロースに対する上記香料の質量比が0.6以上1.4以下となるよう、香料を含有する。また、上記含有比率を満たす範囲内で、本発明の発泡性圧縮成形物100質量%に対して、上記香料を0.01〜2.0質量%含有することが好ましく、0.1〜1.5質量%含有することがより好ましい。
【0025】
(c)ポリアルキレングリコール
本発明の発泡性圧縮成形物はポリアルキレングリコールを含有する。ポリアルキレングリコールの分子量としては100〜20000のものが好ましく、400〜15000のものがより好ましく、2000〜10000のものがさらに好ましい。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が用いられ、特にポリエチレングリコールが好ましい。また、種々のポリアルキレングリコールの1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0026】
本発明の発泡性圧縮成形物は、上記カチオン化セルロースに対する上記ポリアルキレングリコールの質量比が3以上6以下となるよう、ポリアルキレングリコールを含有する。また、上記含有比率を満たす範囲内で、本発明の発泡性圧縮成形物100質量%に対して、上記ポリアルキレングリコールを0.1〜4.0質量%含有することが好ましく、1.0〜3.0質量%含有することがより好ましい。
【0027】
(d)有機酸
本発明で用いる有機酸は、後述の炭酸塩と反応し、炭酸ガスを発生させるための成分である。有機酸としては、例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、及びサリチル酸等が挙げられる。ハンドリングの容易さ(低吸湿性)及び経済性の観点から、コハク酸、フマル酸が好ましい。これら有機酸は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
さらに、造粒化、溶解性及び吸油能の観点から、有機酸の粒径(平均粒径d50)は、0.01〜5mmであることが好ましく、0.05〜0.5mmがより好ましい。有機酸の粒径が上記範囲であると、液中での溶け残りがなく、効率的に発泡して炭酸ガスを液中に十分に供給できるため好ましい。
【0029】
上記に示す粒径よりも大きい場合には、好適な粒度になるまで事前に解砕することが好ましい。解砕に利用できる粉砕機としては、ハンマクラッシャー等の衝撃破砕機、アトマイザー、及びピンミル等の衝撃粉砕機、フラッシュミル等の剪断粗砕機等が挙げられる。これらは、1段操作でもよく、同種又は異種粉砕機の多段操作でもよい。
【0030】
発泡性圧縮成形物100質量%中の有機酸の含有量は、好ましくは15〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。上記範囲であると、炭酸塩と反応し、炭酸ガスを発生する場合、十分な炭酸ガスを発生させることができる。
【0031】
(e)炭酸塩
本発明で用いる炭酸塩は、上記有機酸との反応により、炭酸ガスを発生させる成分である。
【0032】
炭酸塩としては、液中で有機酸と反応して炭酸ガスを発生するものであればよく、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、及び重質炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
発泡性圧縮成形物100質量%中の炭酸塩の含有量は、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
【0034】
有機酸と炭酸塩の質量比(有機酸/炭酸塩)は、0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.1がより好ましい。有機酸と炭酸塩の質量比が上記範囲であることによって、効率よく炭酸ガスを発生できる。
【0035】
炭酸塩の粒径(平均粒径d50)は、泡の微細化、泡の持続時間、沈降性等の観点から、0.01〜5mmであることが好ましく、0.05〜0.3mmがより好ましい。
【0036】
(f)酸化チタン
本発明の発泡性圧縮成形物は酸化チタンを含有してもよいし、含有しなくてもよい。本発明において、酸化チタンは、白濁剤として用いることができるため、特に本発明の発泡性圧縮成形物を入浴剤として用いる場合には、酸化チタンを含有することが好ましい。しかしながら、酸化チタンの含有量が多いと、発泡性圧縮成形物の硬度が低下してしまうため、好ましくない。
本発明の発泡性圧縮成形物が酸化チタンを含有する場合、上記カチオン化セルロースに対する酸化チタンの質量比が3以下となるよう、酸化チタンを含有する。上記範囲であることによって、硬度が高く、保形性に優れた発泡性圧縮成形物となる。また、上記含有比率を満たす範囲内で、本発明の発泡性圧縮成形物100質量%に対して、酸化チタンを10.0質量%以下含有することが好ましく、5.0質量%以下含有することがより好ましく、3.0質量%以下含有することがさらに好ましい。なお、酸化チタンの含有量が0質量%とは、本発明の発泡性圧縮成形物が酸化チタンを含有しないことを意味する。
【0037】
[その他の成分]
本発明の発泡性圧縮成形物は、上記以外の成分であっても、本発明の課題を解決できる範囲内において、その他の成分を適宜含有することができる。その他成分としては、例えば、崩壊助剤、滑沢剤、白濁剤、保湿剤、界面活性剤、酵素、色素、顔料・鉱物類、ビタミン類及びその誘導体、退色防止剤、pH調整剤、殺菌剤等を含有することができる。これらその他の成分同士はそれぞれの用途が重複していてもかまわない。
【0038】
本発明の発泡性圧縮成形物は崩壊助剤を含有することにより、発泡性圧縮成形物の崩壊性を向上させ、発泡時間を調整することができる。崩壊助剤としては、糖類や無機塩類が好的に用いられる。
糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、蔗糖、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、及びトレハロース等が挙げられる。
無機塩類としては、上記炭酸塩を除く任意成分が挙げられ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化アンモニウム等の塩化物;硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウムカリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸カリウム、及び次亜硫酸ナトリウム等の硫酸塩;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸カルシウム等の硝酸塩;リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、及びリン酸水素カルシウム等のリン酸塩;ケイ酸カルシウム、及びケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;イオウ、硫化カルシウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化アンモニウム、硫化バリウム、硫化亜鉛、硫化スズ、硫化アンチモン、硫化鉄、及び硫化リン等の硫化物;無水ケイ酸、メタケイ酸、雲母末、及び中性白土等のケイ素化合物;水酸化ナトリウム、及び水酸化カルシウム等の水酸化物;ホウ砂、ホウ酸、酸化カルシウム、臭化カリウム、過マンガン酸カリウム、人工カルス塩、鉱泉、鉱砂、及び湯の花等が挙げられる。これら無機塩類は、かさ調整剤、製剤助剤、製剤安定化剤としても含有することができる。
【0039】
滑沢剤としては、例えば、タルク、カオリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーン油等が挙げられる。
【0040】
本発明の発泡性圧縮成形物の用途が例えば入浴剤等である場合、酸化チタン以外の白濁剤を含有することもできる。酸化チタン以外の白濁剤としては、例えば、酸化カルシウム、パラフィン、クレイ、カオリン、ベントナイト等が挙げられる。
【0041】
保湿剤としては、例えば、セラミド、セラミド誘導体、セラミド類似物質などのセラミド類;乳酸ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、グルタミン酸二ナトリウム等の有機酸塩類;コンドロイチン硫酸、及びヒアルロン酸等のムコ多糖類;大豆、トウモロコシ、及びニンジン等から得られる植物コラーゲン;サケ、フグ、マグロ、及びヒラメ等から得られるマリンコラーゲン;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル、シア脂、スクワラン、プラセンタ、アルブチン、カゼイン、シルク、はちみつ等が挙げられる。
【0042】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤;石けん用素地などの脂肪酸エステル、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルグルコシド硫酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等の陰イオン系界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
酵素としては、例えば、トリプシン、α−キモトリプシン、プロメライン、パパイン、プロテアーゼ、プロクターゼ、セラチオペプチダーゼ、リゾチーム、ペプシン及びフイシン等が挙げられる。
【0044】
色素としては、例えば、青色1号、青色2号、赤色102号、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、緑色3号、緑色201号、緑色204号、橙色205号等の法定色素、クロロフィル、リボフラビン、アンナット、アントシアニン等が挙げられる。
【0045】
顔料・鉱物類としては、例えば、タルク、クレイ、カオリン、ベンガラ、黄酸化鉄、マイカ、雲母、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ベントナイト、ゼオライト、無水ケイ酸、メタケイ酸、酸性白土、これらの被覆粒(顆粒)等が挙げられる。これらは、製剤助剤としても含有することができる。
【0046】
ビタミン類およびその誘導体としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンH、パントテン酸、ニコチン酸又はその誘導体、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
退色防止剤としては、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸などのアミノ酸;サリチル酸およびその塩等が挙げられる。
【0048】
pH調整剤としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
殺菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ジクロロイソシアヌル酸、銀ゼオライト、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、塩化クロルヘキシジン、ヒノキチオール、フェノール、グリチルリチン酸塩およびその誘導体等が挙げられる。
【0050】
本発明の発泡性圧縮成形物は、上記成分を混合し圧縮成形することにより製造される。圧縮成形する場合には、発泡性圧縮成形物、例えばブリケットや錠剤が得られるものであればその方法は特に限定されず、周知のブリケット機や打錠機を用いることができる。
周知のブリケット機としては、例えばブリケッティングマシン(新東工業株式会社製)等が挙げられる。
打錠機は、臼の中に粉末混合物を充填し、下杵と上杵の間で圧縮して成形する装置である。打錠機には、1個の臼内で上下一組の杵が上下運動して圧縮する単発打錠機、水平に回転するターンテーブルの外周に、臼が等間隔に埋め込まれ、ターンテーブルが回転する間に、充填・圧縮・排出の一連の操作が連続的に行われるロータリー打錠機がある。周知の打錠機として、単発打錠機には志賀製作所製打錠機等を、ロータリー打錠機には株式会社菊水製作所製打錠機等を用いることができる。また、作製する錠剤の重量に合わせた杵臼と、例えば理研機器株式会社、ラボネクト株式会社等の油圧式ポンプ等を用いて単発打錠し、本発明の発泡性圧縮成形物を製造することもできる。
【0051】
圧縮成形方法は制限されるべきでなく、直接粉末圧縮法(直打法)や顆粒圧縮法(間接圧縮法)により製造することができる。また、各成分の混合の順序や混合方法等は適宜選定される。
【0052】
ブリケット機を用いるときのブリケットの粒径は、ブリケットの溶解性の観点から10mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましい。ブリケットの形状としては、特に限定されるものではないが、ブリケット状、アーモンド状、ピロー状、フィンガー状、レンズ状等が好ましい。
打錠機を用いるときの錠剤の大きさは、円柱状の場合には直径(多角形の場合には1辺の長さ)が80mm以下のものが好ましく、70mm以下がより好ましく、また、10mm以上が好ましく、30mm以上がより好ましい。錠剤の厚みは、20mm以下が好ましく、17mm以下がより好ましく、また、5mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましい。錠剤の形状は、特に限定されるものではないが、円柱形状、ブロック形状、球形状、半球形状、多角体形状等が好ましい。
【0053】
本発明の発泡性圧縮成形物は、カチオン化セルロース、香料、ポリアルキレングリコール、及び酸化チタンの含有比率を特定範囲とするため、硬度が高く、保形性に優れた発泡性圧縮成形物を提供することができる。この様な硬度としては、好ましくは、実施例に後述するように、デジタルフォースゲージを用いて、発泡性圧縮成形物に圧力をかけていき、亀裂やひびが生じた時の最大圧力、すなわち硬度を測定したとき、3.0kgf以上であることが好ましい。3.0kgf以上の硬度であることにより、亀裂やひびが発生しにくい。
また、本発明の発泡性圧縮成形物は、圧縮成形時にスティッキングの発生が認められない。ここで、スティッキングとは、圧縮成形時に杵臼に混合粉体がつき、圧縮成形物の表面が一部欠け、表面につやがなくなり、成形が容易にできないことをいう。すなわち、「スティッキングの発生が認められない」とは、圧縮成形時に杵臼に混合粉体がつかないこと、または圧縮成形物の表面が欠けないことを意味する。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0055】
(実施例1〜13、比較例1〜5、参考例1)
表1に示す組成に従って、各成分を常法により均一に混合し、粉末混合物を作製した。この粉末混合物を、油圧ポンプ式打錠機(ラボネクト株式会社製打錠機)を用いて、圧縮成形することにより、直径30mm、厚み15mmの15g/錠の発泡性圧縮成形物を製造した。
なお、表中の各成分は、以下のものを使用した。
・塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース:カチナールLC−100(東邦化学工業社製)
・香料:ゆずの香り(主成分:テルペン系炭化水素)
・ポリエチレングリコール6000:PEG−6000P(三洋化成工業社製、平均分子量7300〜9300)
【0056】
得られた発泡性圧縮成形物について、下記方法に従い、所望の物性を測定した。結果を表1に示す。
<硬度>
実施例、比較例、及び参考例で得られた各発泡性圧縮成形物について、発泡性圧縮成形物の側面(厚み15mm側)に、デジタルフォースゲージ(アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて圧力をかけていき、亀裂やひびが生じる時の最大圧力(硬度)を測定した。
下記条件にて圧力をかけ、最大圧力を発泡性圧縮成形物の硬度として評価した。各実施例、比較例、及び参考例について計3錠ずつ硬度を測定し、その平均値を測定値とした。硬度の測定条件および評価基準を以下に示す。
[測定条件]
・デジタルフォースゲージ:MODEL−RZ−50(アイコーエンジニアリング社製)
・電気スタンド:MODEL−1308U(アイコーエンジニアリング社製)
・計測用アタッチメント:012B(円形、直径15mm)
・計測時の電動スタンド速度:5mm/min
[評価基準]
・硬度が3.0kgf以上:○
・硬度が3.0kgf未満:×
圧縮成形時の製造適正(圧縮成形適正)の評価基準を以下に示す。
[圧縮成形適正の評価基準]
・スティッキングの発生が認められない:○
・スティッキングの発生が認められる:×
スティッキングの発生の有無は、圧縮成形時に杵臼への混合粉体の付着の有無、または圧縮成形物の表面の欠けの有無により判定した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の結果から分かるように、成分(a)カチオン化セルロースに対する成分(b)香料の質量比[(b)/(a)]が0.6以上1.4以下であり、成分(a)カチオン化セルロースに対する成分(c)ポリアルキレングリコールの質量比[(c)/(a)]が3以上6以下であり、かつ、成分(f)酸化チタンを含有しない、あるいは成分(f)酸化チタンを含有する場合、成分(a)カチオン化セルロースに対する成分(f)酸化チタンの質量比[(f)/(a)]が3以下である実施例1〜13については、硬度が3.0kgf以上と良好であり、スティッキングの発生も認められなかった。すなわち、実施例1〜13の発泡性圧縮成形物は、硬度が高く、保形性に優れることがわかった。
一方、上記成分(a)〜(c)、(f)の含有量比が、本発明の範囲内にない比較例1〜5については、硬度が3.0kgf未満であるか(比較例1、3、4、5)、スティッキングの発生が認められた(比較例2)。
なお、カチオン化セルロースを含有しない参考例1については、硬度が3.0kgf以上と良好であり、スティッキングの発生も認められなかった。