特許第6616449号(P6616449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616449
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】横型カテナリー式搬送装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
   C21D9/56 101H
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-98224(P2018-98224)
(22)【出願日】2018年5月22日
(65)【公開番号】特開2019-203166(P2019-203166A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2018年5月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】肥田 充弘
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 信幸
【審査官】 橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−354828(JP,A)
【文献】 特開平10−298991(JP,A)
【文献】 特開2013−010985(JP,A)
【文献】 特開平01−282404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52−9/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の支持ロールおよび下流側の支持ロールで支持されるストリップが横方向に搬送されて、前記ストリップの垂れ下がりによってカテナリー部が形成される横型カテナリー式搬送装置において、
前記横型カテナリー式搬送装置の側壁には、前記ストリップの前記カテナリー部を監視するためののぞき窓が、設けられ、
前記ストリップの前記カテナリー部と、前記のぞき窓との間には、前記カテナリー部のカテナリー量を計測するためのカテナリー計測部が、設けられており、前記カテナリー計測部は、目盛りを備えるスケール部であることを特徴とする、横型カテナリー式搬送装置。
【請求項2】
前記のぞき窓は、透光部を有し、
前記透光部には、前記カテナリー部を水平状態で監視するための水平位置決め部が、設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の横型カテナリー式搬送装置。
【請求項3】
前記のぞき窓が設けられた前記側壁の反対側に位置する側壁であり且つ前記のぞき窓に略向き合う位置には、外部からの明かりを取り入れる明かり窓が、設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の横型カテナリー式搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、横型カテナリー式搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ストリップを横方向に連続的に搬送しながら熱処理を行う熱処理炉として、横型カテナリー炉が使用されている。横型カテナリー炉においては、ストリップが上流側の支持ロールおよび下流側の支持ロールで支持されることによって、ストリップの垂れ下がりによるカテナリー部が形成される。
【0003】
上記熱処理炉の運転時においては、機械振動の影響でカテナリー部が全体的に上下に振動したり脈動したりしながら、ストリップが搬送されることがある。振動などが大きくなると、ストリップの破断やストリップの炉底への接触の原因となる。そこで、カテナリー部のカテナリー量を適切に保つことが行われている。
【0004】
特許文献1は、張力の水平分力や支持ロール間の間隔やストリップの単位長さ当たりの重量などのパラメータが所定の関係式を満たすことを利用して、カテナリー量を一定にするべく、ストリップに水平張力を与える機構を導入することを開示する。特許文献2は、同様の関係式を利用して、先行ストリップと後行ストリップとで単位長さ当たりのストリップ重量が変化した場合に、ストリップの重量変化に応じて張力を変化させることによって、カテナリー量を制御することを開示する。また、特許文献3は、従来技術として、電磁式のループ深さ検出器によってストリップのループ深さ(すなわちカテナリー量)を検出することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願昭51−173801号(実開昭53−92006号)のマイクロフィルム
【特許文献2】特開平02−290926号公報
【特許文献3】特開平02−305769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および特許文献2では、所定の関係式に基づいて、カテナリー部のカテナリー量が制御されているが、単位長さ当たりのストリップ重量に変動が発生した場合や、張力測定に誤差が発生した場合には、カテナリー量を適切に制御することが困難になる。また、上流側の支持ロールおよび下流側の支持ロールが摩耗すると、上流側の支持ロールおよび下流側の支持ロールの間隔が変動するため、所定の関係式に基づく、カテナリー部のカテナリー量の制御が困難になる。
【0007】
上記特許文献3では、電磁式のループ深さ検出器によってカテナリー量が間接的に検出されているとともに、高温での熱処理を行う炉内に検出器を配置するためには、検出器を冷却するための冷却機構などが必要になり、炉内の構造が複雑になる。オペレータは、搬送中のストリップでのカテナリー部の実物を直接的に監視しながらカテナリー量を調整できると安心感を得ることができるが、上記特許文献1から特許文献3のいずれにおいても、カテナリー部の実物を直接的に監視するものではない。
【0008】
そこで、この発明の課題は、簡易な構成で、カテナリー部の実物を直接的に監視して、カテナリー部のカテナリー量を適切に制御できる、横型カテナリー式搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の一態様に係る横型カテナリー式搬送装置は、
上流側の支持ロールおよび下流側の支持ロールで支持されるストリップが横方向に搬送されて、前記ストリップの垂れ下がりによってカテナリー部が形成される横型カテナリー式搬送装置において、
前記横型カテナリー式搬送装置の側壁には、前記ストリップの前記カテナリー部を監視するためののぞき窓が、設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、横型カテナリー式搬送装置の側壁に設けられたのぞき窓を介して、ストリップのカテナリー部の実物を直接的に監視できるので、カテナリー部の適切な制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る横型カテナリー炉を側面から見た模式的説明図である。
図2図1に示した横型カテナリー炉を右側から見た模式的説明図である。
図3】ストリップのカテナリー量を説明する図である。
図4】横型カテナリー炉における電気的構成を示すブロック図である。
図5】横型カテナリー炉の側壁に設けられたのぞき窓を正面から見たときの拡大図である。
図6図5に示したのぞき窓を構成する透光部を示す図である。
図7図5に示したのぞき窓を構成するスケール部を示す図である。
図8】横型カテナリー炉の側壁に設けられたのぞき窓の水平断面図である。
図9】第2実施形態に係る横型カテナリー炉を説明する図である。
図10】第3実施形態に係る横型カテナリー炉を説明する図である。
図11】第4実施形態に係る横型カテナリー炉を側面から見た模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、この発明に係る横型カテナリー式搬送装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1から図8を参照しながら、第1実施形態に係る横型カテナリー炉1を詳細に説明する。図1は、横型カテナリー炉1を側面から見た模式的説明図である。図2は、図1に示した横型カテナリー炉1を右側から見た模式的説明図である。図3は、ストリップ4のカテナリー量Dを説明する図である。図4は、横型カテナリー炉1における電気的構成を示すブロック図である。図5は、横型カテナリー炉1の側壁27に設けられたのぞき窓10を正面から見たときの拡大図である。図6は、図5に示したのぞき窓10を構成する透光部21を示す図である。図7は、図5に示したのぞき窓10を構成するスケール部22を示す図である。図8は、横型カテナリー炉1の側壁27に設けられたのぞき窓10の水平断面図である。
【0014】
図1から図3に示すように、横型カテナリー式搬送装置の一例としての横型カテナリー炉1は、ストリップ4を横方向に連続的に搬送しながら熱処理を行う熱処理炉であり、炉体3と、上流側ブライドルロール5と、下流側ブライドルロール6と、上流側の支持ロール7と、下流側の支持ロール8とを備える。また、炉体3の一側の側壁27には、のぞき窓10と、張力調整部57と、表示部59とが配設されており、炉体3の他側の(すなわち側壁27に対向する側の)側壁29には、明かり窓28が配設されている。なお、この明細書においては、搬送方向に対して上流側を単に上流側と言い、搬送方向に対して下流側を単に下流側と言う。
【0015】
上流側ブライドルロール5は、炉体3よりも上流側の外部に設けられており、例えば、それぞれがローラ駆動モータ(図示せず)に接続された2つのロールが、所定の負荷で回転することによって、ストリップ4の上流側に対して張力を発生させる。下流側ブライドルロール6は、炉体3よりも下流側の外部に設けられており、例えば、それぞれがローラ駆動モータに接続された2つのロールが、所定の負荷で回転することによって、ストリップ4の下流側に対して張力を発生させる。
【0016】
図4に示すように、横型カテナリー炉1は、横型カテナリー炉1の各種動作を制御する制御部(CPU:中央演算処理装置)51を備えている。制御部51には、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、EEPROM(電気的に消去書き込み可能なメモリ)などの各種メモリが接続されている。制御部51には、ボタンやスイッチやキーやタッチパネルなどからなる入力操作部52と、計測されたストリップ4の張力値および/または撮像された画像を表示する表示部59とが接続されている。また、制御部51には、加熱または冷却によって炉体3の内部を所定温度に調整するための温度調整部54と、ストリップ4を搬送するための上流側ブライドルロール5および下流側ブライドルロール6を回転駆動する搬送駆動部(ローラ駆動モータ)55とが接続されている。
【0017】
制御部51には、ストリップ4の張力を計測する張力計測部56と、搬送駆動部55を制御することによってストリップ4の張力を調整する張力調整部57とが接続されている。張力調整部57は、ストリップ4の張力を手動で調整するためのボタンやつまみを有することができる。制御部51には、のぞき窓10などを撮像する撮像装置30と、撮像装置30の上下方向の位置を調整する位置調整部58とが接続されている。
【0018】
図1に示すように、上流側の支持ロール7および下流側の支持ロール8は、それぞれ、炉体3の内部に配設されている。図3に示すように、横型カテナリー炉1では、大きなカテナリースパンLで(例えば、12mから21mのスパンで)離間配置された上流側の支持ロール7および下流側の支持ロール8によって、ストリップ4が支持されている。ストリップ4がその自重で垂れ下がることによって、懸垂曲線のカテナリー部4dが形成される。カテナリー部4dは、最下点Mにおいて、ストリップ基準線Bに対してカテナリー量Dの距離で垂れ下がっている。
【0019】
図1に示すように、横型カテナリー炉1の側壁27には、ストリップ4のカテナリー部4dを監視するためののぞき窓10が、設けられている。カテナリー部4dの最下点Mが、のぞき窓10の略中央部分に位置するように、のぞき窓10が配置されている。のぞき窓10の外側周辺であってオペレータがのぞき窓10を見ながらオペレータの手が届く位置には、張力調整部57および表示部59が配置されている。当該構成によれば、オペレータが、のぞき窓10を通じてカテナリー部4dを見ながら作業できるので、ストリップ4の張力調整作業およびストリップ4の張力値の確認作業が容易になる。
【0020】
図8に示すように、ストリップ4のカテナリー部4dと、監視部としてのオペレータの眼20とを結ぶ監視ラインK上の途中に、のぞき窓10が位置している。のぞき窓10は、側壁27に対して外方に突出している。のぞき窓10は、透光部21と、スケール部22と、第一枠部11と、第二枠部12と、筒状部13と、外側フランジ部14と、内側フランジ部15とを有する。
【0021】
第二枠部12および外側フランジ部14は、筒状部13に対して全周溶接することによって固着されている。内側フランジ部15は、側壁27に対して溶接などによって固着されている。透光部21は、シール16を介して第一枠部11および第二枠部12によって挟持されている。透光部21を挟持している第一枠部11および第二枠部12は、ボルト17およびナット18によって締結されている。筒状部13の内周部であって内側端部の近傍には、スケール部22が固着されている。筒状部13の内周部の上部および下部には、取付片(図示せず)がそれぞれ固着されていて、スケール部22の取付穴22bに挿通されたネジ(図示せず)によって、スケール部22が取付片を介して筒状部13の内周部に固定される。のぞき窓10の筒状部13が、側壁27に形成された貫通穴27hに対して挿入されたあと、ボルト19を外側フランジ部14の貫通穴(図示せず)に挿入するとともに内側フランジ部15のネジ穴(図示せず)にボルト19を螺合させることによって、のぞき窓10が側壁27に取り付けられる。
【0022】
図6に示すように、透光部21は、例えば、円板形状をしていて、ガラスやアクリルのような透光性材料からなる。透光部21の表面には、複数の水平線21hと、垂直線21vとが形成されている。各水平線21hは、横方向に延びて、縦方向に所定の間隔で形成された細線であり、カテナリー部4dを水平状態で監視するための水平位置決め部として働く。例えば、水平線21hは、10mm間隔で配置される。各水平線21hは、オペレータの眼20のような監視部の縦方向の監視位置をカテナリー部4dの最下点Mと同じレベルに位置決めするために使用される。垂直線21vは、縦方向に延びる細線である。垂直線21vは、監視部の横方向の監視位置をカテナリー部4dの最下点Mと同じ位置に位置決めするために使用される。なお、この実施形態では、監視部がオペレータの眼20であるものとして説明する。
【0023】
図7に示すように、スケール部22は、同心の半円環形状をした板状体である。スケール部22の外側面には、目盛りが設けられており、スケール部22は、カテナリー部4dのカテナリー量Dを計測するためのカテナリー計測部として働く。スケール部22の目盛りは、複数の主スケール線22mと、複数の補助スケール線22sとを有する。主スケール線22mおよび補助スケール線22sのそれぞれは、横方向に延びる線である。主スケール線22mおよび補助スケール線22sは、交互に配置されて、補助スケール線22sは、2つの主スケール線22mの中間に位置する。例えば、主スケール線22mは、縦方向に10mm間隔で配置され、補助スケール線22sは、主スケール線22mと重ならないように、縦方向に10mm間隔で配置されている。
【0024】
そして、オペレータの眼20がストリップ4のカテナリー部4dを真正面から(すなわち水平状態で)監視するときに、透光部21における或る水平線21hが、スケール部22における対応する主スケール線22mに一致するように構成されている。そのため、オペレータの眼20がカテナリー部4dを真正面ではない位置から(すなわち非水平状態で)監視する場合、或る水平線21hが、対応する主スケール線22mに対して上方にまたは下方に位置ズレした状態で監視される。
【0025】
円環形状をしたスケール部22は、筒状部13の内周部に配設されるので、のぞき窓10の中央部には、大きな観測領域が確保される。当該構成によれば、視界が妨げられることなく、カテナリー部4dの監視と、カテナリー量Dの計測とを行うことができる。なお、スケール部22の外側面には、カテナリー部4dのカテナリー量Dであるストリップ基準線Bからの距離を具体的に表示する数字を刻印することもできる。当該構成によれば、カテナリー部4dのカテナリー量Dを具体的にかつ容易に取得できる。
【0026】
のぞき窓10が設けられた側壁27の反対側に位置する側壁29であって且つのぞき窓10に略向き合う位置には、外部からの明かりを取り入れる明かり窓28が、設けられている。当該構成によれば、カテナリー部4dを照明する照明部を炉体3の内部に別途設けることを要しないので、炉体3の構成を簡略化できる。それとともに、カテナリー部4dの対面からの明かりにより、オペレータは、線状に見えるストリップ4の側面を高いコントラストで視認できるため、目視作業を楽に行うことができる。
【0027】
ストリップ4は、搬送方向に連続的に延びているとともに、搬送方向と直交する幅方向に所定の幅を有する。オペレータの眼20が、真正面ではない位置からストリップ4を監視すると、ストリップ4の幅方向の部分も観測される。そのため、ストリップ4のカテナリー部4dが、面状に観測される。それに対して、オペレータの眼20がストリップ4のカテナリー部4dを真正面から監視すると、すなわち、オペレータの眼20の縦方向の監視位置がカテナリー部4dの最下点Mと同じレベルに位置するとともにオペレータの眼20の横方向の監視位置がカテナリー部4dの最下点Mと同じ位置に位置すると、ストリップ4のカテナリー部4dが懸垂曲線として線状に観測される。
【0028】
したがって、ストリップ4のカテナリー部4dがのぞき窓10を介して真正面から監視されるように、オペレータの眼20の監視位置が調整される。
【0029】
カテナリー部4dの縦方向の位置は、単位長さ当たりのストリップ重量、上流側の支持ロール7および下流側の支持ロール8の間隔、および、張力などのパラメータが所定の関係式を満たすように変化する。すなわち、カテナリー部4dの最下点Mは、縦方向(上下方向)に変化する。オペレータの眼20がカテナリー部4dの最下点Mを真正面から(すなわち水平状態で)監視するように、オペレータの眼20の監視位置が、縦方向(上下方向)に調整される。すなわち、ストリップ4のカテナリー部4dが懸垂曲線として線状に観測される位置に、オペレータの眼20が、位置決めされる。なお、カテナリー部4dの横方向の位置は、上記パラメータの影響を実質的に受けないため、オペレータの眼20の横方向(左右方向)の監視位置を調整することは、実質的に不要である。
【0030】
ストリップ4が連続的に搬送されるときに、現実的には、ストリップ4が、機械振動などの影響により縦方向(上下方向)に振動するため、カテナリー部4dが、その振れ幅によっては、懸垂曲線として線状に観測されにくい場合がある。そこで、簡易的に、オペレータの眼20がカテナリー部4dの最下点Mを真正面から(すなわち水平状態で)監視するように、透光部21の水平線21hとスケール部22の主スケール線22mとが使用される。カテナリー部4dの最下点Mの近傍にある水平線21hが、対応する主スケール線22mに一致するように、オペレータの眼20が、位置決めされる。その結果、オペレータの眼20が、カテナリー部4dの振動の振れ幅の最下点Mを近似的に真正面から(すなわち略水平状態で)監視でき、カテナリー量Dが適切であるか否かを実物で直接的に監視できる。
【0031】
そして、オペレータは、そのような状態を保ちながら、カテナリー部4dの最下点Mの位置に対応するスケール部22の位置を読み取る。オペレータは、スケール部22に形成された主スケール線22mおよび補助スケール線22sに基づいて、カテナリー部4dのカテナリー量Dを計測する。オペレータは、計測されたカテナリー量Dに基づいて、手元にある張力調整部57を操作して、ストリップ4の張力を制御する。その結果、カテナリー部4dのカテナリー量Dが適切に制御される。
【0032】
〔第2実施形態〕
図9を参照しながら、第2実施形態に係る横型カテナリー炉1におけるカテナリー部4dの監視、カテナリー量Dの計測、および、カテナリー量Dの制御を詳細に説明する。
【0033】
図9に示すように、第2実施形態に係る横型カテナリー炉1は、監視部として撮像装置30が使用されることを除いて、上記実施形態の横型カテナリー炉1と同一の構成をしている。
【0034】
撮像装置30は、レンズ31と筐体32と撮像素子53とを有し、レンズ31がのぞき窓10に対面するように、撮像装置30が配設されている。撮像装置30は、のぞき窓10に合焦して、のぞき窓10の画像を撮像するように構成されている。
【0035】
炉体3から離れたところには、制御ボックス50が配置されている。制御ボックス50は、制御部51と、入力操作部52と、張力調整部57と、表示部59とを備える。撮像されたのぞき窓10の画像は、有線または無線によって、制御部51に送信される。制御部51は、のぞき窓10の画像が表示部59に表示されるように制御する。のぞき窓10の画像として、ストリップ4のカテナリー部4d、透光部21の水平線21hおよび垂直線21v、スケール部22の主スケール線22mおよび補助スケール線22sなどが、表示部59に表示される。
【0036】
撮像装置30の筐体32は、支持台33から垂直方向に延びる支柱34に対して、縦方向(上下方向)に移動可能に、すなわち昇降可能に、支持されている。撮像装置30を昇降させる昇降機構は、様々な態様が利用可能であるが、例えば、支柱34の側部に設けられたラックと、ラックに噛み合うピニオンと、撮像装置30に内蔵されて、ピニオンを回転駆動するピニオン駆動モータとによって構成される。ピニオン駆動モータは、撮像装置30の位置調整部58として働く。
【0037】
オペレータは、炉体3から離れたところに位置しており、制御ボックス50の表示部59に表示された画像を監視しながら入力操作部52を操作することによって、筐体32に収容されたピニオン駆動モータの回転方向および回転速度を制御する。位置調整部58を調整することによって、撮像装置30の監視位置が、縦方向(上下方向)に調整される。その結果、ストリップ4のカテナリー部4dが懸垂曲線として線状に撮像される位置に、つまり、カテナリー部4dの最下点Mが真正面から(すなわち水平状態で)監視される位置に、撮像装置30が位置決めされる。
【0038】
上記第1実施形態と同様に、ストリップ4の連続搬送の際に、現実的には、カテナリー部4dが機械振動などの影響により縦方向(上下方向)に振動するため、カテナリー部4dが、懸垂曲線として線状に観測されずに、面状に観測されることもある。そこで、カテナリー部4dの最下点Mの近傍にある水平線21hが、対応する主スケール線22mに一致するように、撮像装置30を位置決めすることによって、カテナリー部4dの最下点Mが近似的に真正面から(すなわち略水平状態で)監視される。その結果、オペレータは、撮像装置30を介して、ストリップ4のカテナリー部4dを間接的に監視できる。
【0039】
炉体3から離れたところにいるオペレータは、表示部59に表示された画像から、カテナリー部4dの最下点Mの位置に対応するスケール部22の位置を読み取る。オペレータは、スケール部22に形成された主スケール線22mおよび補助スケール線22sに基づいて、カテナリー部4dのカテナリー量Dを計測する。オペレータは、計測されたカテナリー量Dに基づいて、張力調整部57を操作して、ストリップ4の張力を制御する。その結果、炉体3から離れたところにいるオペレータによって、カテナリー部4dのカテナリー量Dが適切に制御される。
【0040】
〔第3実施形態〕
図10を参照しながら、第3実施形態に係る横型カテナリー炉1におけるカテナリー部4dの監視、カテナリー量Dの計測、および、カテナリー量Dの制御を詳細に説明する。
【0041】
図10に示すように、第3実施形態に係る横型カテナリー炉1は、水平柱41およびスケール柱42が炉体3の外側に配置されることを除いて、上記実施形態の横型カテナリー炉1と同一の構成をしている。
【0042】
横型カテナリー炉1の側壁27には、ストリップ4のカテナリー部4dを監視するためののぞき窓10が、設けられているが、のぞき窓10は、第1実施形態で説明したような、水平線21h、垂直線21v、主スケール線22m、および、補助スケール線22sを備えていない。その代わりに、炉体3の外側には、水平柱41およびスケール柱42が配置されている。水平柱41およびスケール柱42は、支持台43によって、垂直に延びるように支持されている。ストリップ4のカテナリー部4dと、監視部としてのオペレータの眼20または撮像装置30とを結ぶ監視ラインK上であって、のぞき窓10の外側には、水平柱41およびスケール柱42が配置されている。炉体3から遠い側には、水平柱41が配置され、炉体3に近い側には、スケール柱42が配置されている。水平柱41およびスケール柱42が、炉体3の外側に配設されているので、水平柱41およびスケール柱42は、交換や調整が容易であり、熱や粉塵の影響を受けにくくなる。
【0043】
水平柱41は、円柱または角柱の形状をしており、水平柱41の表面には、複数の水平線41hが形成されている。各水平線41hは、横方向に延びて、縦方向に所定の間隔で形成された線であり、カテナリー部4dを水平状態で監視するための水平位置決め部として働く。例えば、水平線41hは、10mm間隔で配置される。各水平線41hは、監視部として働くオペレータの眼20または撮像装置30の縦方向の監視位置をカテナリー部4dの最下点Mと同じレベルに位置合わせするために使用される。
【0044】
スケール柱42は、円柱または角柱の形状をしている。スケール柱42の表面には、目盛りが形成されており、スケール柱42は、カテナリー部4dのカテナリー量Dを計測するためのカテナリー計測部として働く。スケール柱42の目盛りは、複数の主スケール線42mと、複数の補助スケール線42sとを有する。主スケール線42mおよび補助スケール線42sのそれぞれは、横方向に延びる線である。主スケール線42mおよび補助スケール線42sは、交互に配置されて、補助スケール線42sは、2つの主スケール線42mの中間に位置する。例えば、主スケール線42mは、縦方向に10mm間隔で配置され、補助スケール線42sは、主スケール線42mと重ならないように、縦方向に10mm間隔で配置されている。水平柱41を支持する支持台43とスケール柱42を支持する支持台43とは、同一の水平面上に配置され、水平柱41の水平線41hおよびスケール柱42の主スケール線42mが同じ高さになるように構成されている。
【0045】
オペレータの眼20または撮像装置30は、水平柱41の水平線41hが、スケール柱42の対応する主スケール線42mまたは補助スケール線42sに一致するように位置決めされる。そのあと、オペレータの眼20または撮像装置30は、のぞき窓10を介してストリップ4のカテナリー部4dを監視し、カテナリー部4dの最下点Mの位置に対応するスケール柱42の位置を読み取る。スケール柱42に形成された主スケール線42mおよび補助スケール線42sに基づいて、カテナリー部4dのカテナリー量Dが計測される。オペレータまたは制御部51は、計測されたカテナリー量Dに基づいて、ストリップ4の張力を制御することによって、カテナリー部4dのカテナリー量Dを適切に制御できる。また、水平柱41を支持する支持台43とスケール柱42を支持する支持台43を一組にして、各支持台43を床に固定することなく持ち運び可能にすれば、一組で複数の場所を監視できる。
【0046】
〔第4実施形態〕
図11を参照しながら、第4実施形態に係る横型カテナリー炉1を説明する。
【0047】
図11に示すように、複数の支持ロール7,8が、炉体3の内部に所定間隔をおいて配設されている。当該支持ロール7,8で支持されながら搬送されるストリップ4においては、複数のカテナリー部4dが形成されている。横型カテナリー炉1の側壁27には、各カテナリー部4dを監視するためののぞき窓10が、複数設けられている。したがって、第4実施形態に係る横型カテナリー炉1は、複数のカテナリー部4dと、各カテナリー部4dに対応したのぞき窓10とを有する。
【0048】
第3実施形態と同様に、図示しないオペレータの眼または撮像装置は、各のぞき窓10を介してストリップ4の各カテナリー部4dを監視する。そして、各カテナリー部4dの最下点Mの位置に基づいて、各カテナリー部4dの各カテナリー量Dが計測される。計測された各カテナリー量Dは、ストリップ4の張力調整に利用される。
【0049】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0050】
上流側の支持ロール7および下流側の支持ロール8は、炉体3の外部に配設される構成にすることもできる。
【0051】
スケール柱42を耐熱性材料にして、該スケール柱42を炉体3の内部に配設したり、前述のスケール部22としたりすることもできる。撮像装置30は、手動または自動で縦方向に(上下に)移動する構成にすることもできる。
【0052】
カテナリー計測部22,42の位置と水平位置決め部21h,41hの位置とを変えて、水平位置決め部21h,41hと監視部20,30との間に、カテナリー計測部22,42を配置することもできる。
【0053】
また、カテナリー部4dの監視と、カテナリー量Dの計測とが、制御部51の画像認識技術によって行われ、ストリップ4の張力制御が、制御部51によって自動的に行われることによって、カテナリー量Dの制御が自動的に行われるという態様にすることもできる。ストリップ4の張力を手動で調整する張力調整部57と、ストリップ4の張力を表示する表示部59との両方がのぞき窓10の周辺に配置される構成、当該張力調整部57だけがのぞき窓10の周辺に配置される構成、および、当該表示部59だけがのぞき窓10の周辺に配置されるなど様々な構成にすることができる。
【0054】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0055】
この発明の一態様に係る横型カテナリー式搬送装置は、
上流側の支持ロール7および下流側の支持ロール8で支持されるストリップ4が横方向に搬送されて、前記ストリップ4の垂れ下がりによってカテナリー部4dが形成される横型カテナリー式搬送装置1において、
前記横型カテナリー式搬送装置1の側壁27には、前記ストリップ4の前記カテナリー部4dを監視するためののぞき窓10が、設けられていることを特徴とする。
【0056】
上記構成によれば、横型カテナリー式搬送装置1の側壁27に設けられたのぞき窓10を介して、ストリップ4のカテナリー部4dの実物を直接的に監視するので、カテナリー部4dの適切な制御が可能になる。
【0057】
また、一実施形態の横型カテナリー式搬送装置では、
前記ストリップ4の前記カテナリー部4dと、前記のぞき窓10を介して前記カテナリー部4dを監視する監視部20,30との間に形成される監視ラインK上には、前記カテナリー部4dのカテナリー量Dを計測するためのカテナリー計測部22,42が、設けられている。
【0058】
上記実施形態によれば、カテナリー計測部22,42によって、カテナリー部4dの実物のカテナリー量Dを計測するので、計測されたカテナリー量Dに基づいて、ストリップ4の張力を制御できる。
【0059】
また、一実施形態の横型カテナリー式搬送装置では、
前記カテナリー計測部22,42と前記監視部20,30との間には、前記カテナリー部4dを水平状態で監視するための水平位置決め部21h,41hが、さらに設けられている。
【0060】
上記実施形態によれば、水平位置決め部21h,41hによって、監視部20,30がカテナリー部4dの実物を水平状態で監視するので、カテナリー量Dの計測誤差が小さくなる。
【0061】
また、一実施形態の横型カテナリー式搬送装置では、
前記のぞき窓10の周辺には、前記ストリップ4の張力を調整する張力調整部57と、前記ストリップ4の張力値を表示する表示部59との少なくとも一方が、設けられている。
【0062】
上記実施形態によれば、のぞき窓10の周辺には張力調整部57および表示部59との少なくとも一方があるので、ストリップ4の張力調整作業およびストリップ4の張力値の確認作業が容易になる。
【0063】
また、一実施形態の横型カテナリー式搬送装置では、
前記監視部が、前記カテナリー部4dの画像を撮像する撮像装置30であり、
前記横型カテナリー式搬送装置1から離れたところには、前記撮像装置30によって撮像された画像と前記ストリップの張力値とを表示する表示部59と、前記ストリップ4の張力を調整する張力調整部57とが、設けられている。
【0064】
上記実施形態によれば、オペレータは、横型カテナリー式搬送装置1から離れたところで、カテナリー部4dの画像を監視しながら、ストリップ4の張力調整作業およびストリップ4の張力値の確認作業を行うことができる。
【0065】
また、一実施形態の横型カテナリー式搬送装置では、
前記のぞき窓10が設けられた前記側壁27の反対側に位置する側壁29であり且つ前記のぞき窓10に略向き合う位置には、外部からの明かりを取り入れる明かり窓28が、設けられている。
【0066】
上記実施形態によれば、カテナリー部4dを照明する照明部を炉体3の内部に別途設けることを要しないので、炉体3の構成を簡略化できる。それとともに、カテナリー部4dの対面からの明かりにより、オペレータは、線状に見えるストリップ4の側面を高いコントラストで視認できるため、目視作業を楽に行うことができる。
【0067】
また、一実施形態の横型カテナリー式搬送装置では、
前記撮像装置30が、上下方向に移動可能に構成されている。
【0068】
上記実施形態によれば、上下方向に移動可能な撮像装置30によって、カテナリー部4dが水平状態で監視されるので、カテナリー量Dの計測誤差が小さくなる。
【符号の説明】
【0069】
1…横型カテナリー炉(横型カテナリー式搬送装置)
3…炉体
4…ストリップ
4d…カテナリー部
5…上流側ブライドルロール
6…下流側ブライドルロール
7…上流側の支持ロール
8…下流側の支持ロール
10…のぞき窓
11…第一枠部
12…第二枠部
13…筒状部
14…外側フランジ部
15…内側フランジ部
16…シール
17…ボルト
18…ナット
20…オペレータの眼(監視部)
21…透光部
21h…水平線(水平位置決め部)
21v…垂直線
22…スケール部(カテナリー計測部)
22b…取付穴
22m…主スケール線
22s…補助スケール線
27…側壁
27h…貫通穴
28…明かり窓
29…側壁
30…撮像装置(監視部)
31…レンズ
32…筐体
33,43…支持台
34…支柱
41…水平柱
41h…水平線(水平位置決め部)
42…スケール柱(カテナリー計測部)
42m…主スケール線
42s…補助スケール線
50…制御ボックス
51…制御部
52…入力操作部
53…撮像素子
54…温度調整部
55…搬送駆動部
56…張力計測部
57…張力調整部
58…撮像装置の位置調整部
59…表示部
B…ストリップ基準線
D…カテナリー量
K…監視ライン
L…カテナリースパン
M…カテナリー部の最下点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11