特許第6616478号(P6616478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616478
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】通信を有する共振電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20191125BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20191125BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20191125BHJP
   A61M 1/12 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H02J50/80
   H02J50/12
   H02J7/00 301D
   A61M1/12 110
   A61M1/12 100
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-201738(P2018-201738)
(22)【出願日】2018年10月26日
(62)【分割の表示】特願2016-553267(P2016-553267)の分割
【原出願日】2014年11月11日
(65)【公開番号】特開2019-37131(P2019-37131A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】61/902,699
(32)【優先日】2013年11月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フレディー ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】イアン コール マックイーチェン
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/061247(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0154143(US,A1)
【文献】 特開2003−218805(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0178915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H02J 7/00
A61M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送システムであって、
無線電力を送信する送信共振器からの送信済み無線電力を受信するように構成された、埋め込み式受信共振器と、
前記埋め込み式受信共振器に接続され、前記埋め込み式受信共振器から電力を受信するように構成された、埋め込み式医療デバイスと、
前記埋め込み式受信共振器及び前記埋め込み式医療デバイスの一方の内部に含められたコントローラであって、前記埋め込み式医療デバイスの動作パラメータを変更し、前記埋め込み式医療デバイスの音波シグネチャの変化をもたらすように構成された、該コントローラと、
聴取デバイスを含む外部のユーザインタフェースであって、前記聴取デバイスを用いて前記音波シグネチャの変化を検出し、前記音波シグネチャの前記変化に基づいて、前記埋め込み式医療デバイスの状態を決定するように構成された、該外部のユーザインタフェースとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記外部のユーザインタフェースが、ディスプレイを更に備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記外部のユーザインタフェースが、着用可能であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記外部のユーザインタフェースが、リストストラップに貼り付けられることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムであって、
前記外部のユーザインタフェースが、ベルトに貼り付けられることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記埋め込み式医療デバイスの前記状態が、前記埋め込み式医療デバイスの動作パラメータを含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、
前記埋め込み式医療デバイスの前記状態が、更新された状態を含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、
前記埋め込み式医療デバイスの前記状態が、警報を含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、
前記埋め込み式医療デバイスが、左室補助デバイスを含むことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、
前記音波シグネチャの前記変化は、前記左室補助デバイスのポンプの速度の変化を含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、
前記音波シグネチャの前記変化は、前記埋め込み式医療デバイスのドライブ信号に導入された高調波を含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、
前記聴取デバイスが、マイクロフォンを含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
無線電力伝送システムの作動方法であって、
埋め込み式受信共振器において、外部の送信共振器から送信された無線電力を受信すること、
受信された電力を用いて前記埋め込み式受信共振器に接続された埋め込み式医療デバイスに電力供給すること、
前記埋め込み式医療デバイスの音波シグネチャの変化をもたらすべく前記埋め込み式医療デバイスの動作パラメータを変更すること、
外部のユーザインタフェースの聴取デバイスを用いて前記音波シグネチャの前記変化を検出すること、及び
前記外部のユーザインタフェースを用いて前記音波シグネチャの前記変化に基づいて、前記埋め込み式医療デバイスの状態を決定することを含むことを特徴とする作動方法。
【請求項14】
請求項13に記載の作動方法であって、
決定された前記埋め込み式医療デバイスの前記状態に関する情報を、前記外部のユーザインタフェース上に表示することを更に含むことを特徴とする作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、参照により本明細書に組込まれる、「Resonant Power Transfer Systems with Communications」という名称の、2013年11月11日に出願された米国仮出願第61/902,699号の利益を主張する。
【0002】
参照による組込み
本明細書で述べる全ての出版物及び特許出願は、それぞれの個々の出版物または特許出願が、参照により組込まれることを具体的かつ個々に指示された場合と同じ程度に参照により本明細書に組込まれる。
【0003】
本分野は、一般に、共振無線電力伝送システムに関し、より具体的には、埋め込み可能共振無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0004】
多くのタイプのデバイスがロケーション間でエネルギーを送信することを必要とする。最近の進歩は、コードを使用しない無線エネルギー送信(WET:wireless energy transmission)についての革新のペースを加速してきた。無線エネルギー技術を使用するシステムの例は、給電式埋め込み可能医療デバイスでる。
【0005】
多くの埋め込み可能医療デバイスは、インプラントに給電する電気システムを必要とする。通常、これは、電力源をインプラントに接続する経皮的配線を使用して達成される。より最近、埋め込み可能医療デバイスに給電するための、例えば振動性磁場による経皮的エネルギー伝送(TET)の開発に対する関心が存在している。
【0006】
TETシステムは、通常、幾つかの構成要素またはシステムを含む。従来のTETシステムは、皮膚層にわたってエネルギーを送信するための送信コイル及び受信コイルを持つように実装される。システムは、通常、送信コイルを駆動する及び/または埋め込み式電子機器を制御するためのコントローラを含む。
【0007】
通常、埋め込み式センサ等の埋め込み式医療デバイスは、動作するのにごくわずかな電力を必要とする。こうした低い(ミリワットオーダの)電力レベルによって、電力伝送レベル及び効率が低い可能性がある。より高い(ワットオーダでかつ最大15ワット以上の)電力デバイスに関して、無線電力の効率的な伝送が著しく重要になる。更に、身体内の位置であって、より大きな埋め込み式デバイスを収容することができ、その一部が皮膚表面の下の深い所にある、身体内の位置が制限される。これらのインプラントロケーションは、送信コイルと受信コイルの両方の位置及び配向並びに伝送効率を改善し最大にする技法に対して更なる注意を必要とする。
【0008】
埋め込み可能医療デバイス用の過去のTETシステムは、埋め込み式受信コイルが皮膚の真下に位置決めされることを必要とし、また通常、受信コイルと送信コイルを整列させ、両者を共に維持する機械的特徴部を含む。これらのデバイスを皮膚下に直接埋め込むことによって、これらの埋め込み式デバイスのサイズ及び電力要件は、これらの埋め込み式デバイスがTETシステムによって給電される場合、制限される。TETシステムは、受信コイルによって電力が受信されない間でさえ動作するために設計される可能性がある。典型的な構成において、固体電子機器及び電池は、外部電力が遮断されるかまたは利用可能でないときに埋め込み式医療デバイスに給電する可能性がある。この場合、埋め込み式構成要素に関する情報を患者及び/または介護者に通信するためユーザインタフェースまたは他の電子デバイスを設けることが有益である場合がある。例えば、ユーザインタフェースは、内部電池レベルが低いときを患者に通知するためのアラームを含むことができる。
【0009】
埋め込み可能医療デバイスと、ユーザインタフェースと、外部送信機との間の信頼性のある通信は、TETシステムの構成要素間の状態及び距離が変動するため難題である可能性がある。
【0010】
無線信号は、埋め込み可能医療デバイス間の通信のために使用されるとき制限がある。無線信号の人間の身体による減衰は、非常に大きく、通信信号を損なう可能性がある。浅いインプラント深さ、適切に設定されたアンテナ、埋め込み式モジュールの適切な配向、及び信頼性のある無線リンク等の適切な状況下でも、減衰は、10dB〜20dBのオーダである可能性がある。より深いインプラント深さの場合、または、インプラントがその意図される位置からかなり回転する場合、減衰は、100dB以上まで増加する場合がある。これは、高い損失率を有する、信頼性がないかまたは完全に遮断された無線リンクをもたらす可能性がある。
【0011】
帯域内通信は、埋め込み式システムにおいて使用されており、送信機が検知することができる受信機負荷の変調を含む。帯域内通信に関する問題は、帯域内通信が共振回路内に更なる電子機器を必要とすることであり、更なる電子機器は、電力伝送効率を下げ、受信機の更なる加熱をもたらす。更に、電力効率的であるように共振回路を最適化することと、有意の量の情報を送信することの間に基本的な設計上の競合が存在する。前者は高い品質係数を有するコイルを必要とし、一方、後者は低い品質係数を好む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、インプラントが、送信機なしでユーザインタフェースと効率的に通信することができるシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
無線電力伝送システムが提供され、無線電力伝送システムは、無線電力を送信する送信共振器と、送信共振器から送信済み無線電力を受信する受信共振器と、受信共振器から電力を受信する医療デバイスと、医療デバイスの動作パラメータを変更するコントローラであって、医療デバイスの音波シグネチャに対する変化をもたらす、コントローラと、埋め込み式医療デバイスからやって来る音波シグネチャに対する変化に基づいて埋め込み式医療デバイスまたは埋め込み式受信共振器からの意図される通信を確定する聴取デバイスを備える。
【0014】
幾つかの実施形態において、聴取デバイスは、意図される通信に関連する情報を表示するディスプレイを更に備える。
【0015】
一実施形態において、聴取デバイスは装着可能である。幾つかの実施形態において、聴取デバイスは、リストストラップに貼り付けられる。他の実施形態において、聴取デバイスは、ベルトに貼り付けられる。
【0016】
幾つかの実施形態において、意図される通信は、医療デバイスの動作パラメータを含む。他の実施形態において、意図される通信は、医療デバイスの状態更新を含む。幾つかの実施形態において、意図される通信は、医療デバイスの警報を含む。
【0017】
一実施形態において、医療デバイスは左室補助デバイスを備える。1つの特定の実施形態において、音波シグネチャに対する変化は、左室補助デバイスのポンプの速度の変化を含む。
【0018】
別の実施形態において、音波シグネチャに対する変化は、医療デバイスのドライブ信号に導入される高調波を含む。
【0019】
無線電力及び通信を送信する方法もまた提供され、方法は、無線電力を、外部送信共振器から埋め込み式受信共振器に送信すること、埋め込み式受信共振器によって無線電力を受信すること、受信済み電力によって埋め込み式医療デバイスに給電すること、医療デバイスの動作パラメータを変更すること、変更済み動作パラメータに応答して、医療デバイスの音波シグネチャの変化を聴取すること、及び、医療デバイスの音波シグネチャの変化に基づいて受信共振器または医療デバイスからの意図される通信を確定することを含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、方法は、意図される通信をユーザに表示することを更に含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
無線電力伝送システムであって、
無線電力を送信する送信共振器と、
前記送信共振器から前記送信済み無線電力を受信する受信共振器と、
前記受信共振器から電力を受信する医療デバイスと、
前記医療デバイスの動作パラメータを変更するコントローラであって、前記医療デバイスの音波シグネチャに対する変化をもたらす、前記コントローラと、
前記埋め込み式医療デバイスからやって来る前記音波シグネチャに対する変化に基づいて前記埋め込み式医療デバイスまたは前記埋め込み式受信共振器からの意図される通信を確定する聴取デバイスとを備える、無線電力伝送システム。
(項目2)
前記聴取デバイスは、前記意図される通信に関連する情報を表示するディスプレイを更に備える、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記聴取デバイスは装着可能である、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記聴取デバイスは、リストストラップに貼り付けられる、項目3に記載のシステム。
(項目5)
前記聴取デバイスは、ベルトに貼り付けられる、項目3に記載のシステム。
(項目6)
前記意図される通信は、前記医療デバイスの動作パラメータを含む、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記意図される通信は、前記医療デバイスの状態更新を含む、項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記意図される通信は、前記医療デバイスの警報を含む、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記医療デバイスは左室補助デバイスを備える、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記音波シグネチャに対する前記変化は、前記左室補助デバイスのポンプの速度の変化を含む、項目9に記載のシステム。
(項目11)
前記音波シグネチャに対する前記変化は、前記医療デバイスのドライブ信号に導入される高調波を含む、項目1に記載のシステム。
(項目12)
前記聴取デバイスはマイクロフォンを備える、項目1に記載のシステム。
(項目13)
無線電力及び通信を送信する方法であって、
無線電力を、外部送信共振器から埋め込み式受信共振器に送信すること、
前記埋め込み式受信共振器によって無線電力を受信すること、
前記受信済み電力によって埋め込み式医療デバイスに電力供給すること、
前記医療デバイスの動作パラメータを変更すること、
前記変更済み動作パラメータに応答して、前記医療デバイスの音波シグネチャの変化を聴取すること、及び、
前記医療デバイスの前記音波シグネチャの前記変化に基づいて前記受信共振器または前記医療デバイスからの意図される通信を確定することを含む、無線電力及び通信を送信する方法。
(項目14)
前記意図される通信をユーザに表示することを更に含む、項目13に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の新規な特徴は、添付特許請求の範囲において詳細に述べられる。本発明の特徴及び利点のよりよい理解は、本発明の原理が利用される例証的な実施形態を述べる以下の詳細な説明及び添付図面を参照することによって得られる。
図1】基本的な無線電力伝送システムを示す図である。
図2】一対のコイルによって生成される磁束を示す図である。
図3A】コイル整列の結合係数に対する影響を示す図である。
図3B】コイル整列の結合係数に対する影響を示す図である。
図4】共振器コイル、受信機、埋め込み式医療デバイス、及びユーザインタフェースを含むTETシステムの一実施形態を示す図である。
図5】受信機及び送信機における電力の受信及び送信または通信を示す図である。
図6】受信機及び送信機における電力の受信及び送信または通信を示す図である。
図7A】TETシステムにおける超音波通信の実施形態を示す図である。
図7B】TETシステムにおける超音波通信の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に続く説明において、同様の構成要素は、異なる実施形態において示されるかどうかによらず、同じ参照数字を与えられている。本開示の実施形態(複数可)を明瞭かつ簡潔な方法で示すため、図面は必ずしも一定比例尺に従わない場合があり、また、或る特徴が或る程度概略的な形態で示される場合がある。一実施形態に関して述べられ及び/または示される特徴は、1つまたは複数の他の実施形態において及び/または他の実施形態の特徴と組合せてまたはその代わりに同じ方法でまたは類似の方法で使用することができる。
【0023】
本発明の種々の態様は、国際特許公開第WO2012045050号;米国特許第8,140,168号;第7,865,245号;第7,774,069号;第7,711,433号;第7,650,187号;第7,571,007号;第7,741,734号;第7,825,543号;第6,591,139号;第6,553,263号;及び第5,350,413号;並びに米国公開第2010/0308939号;第2008/027293号;及び第2010/0102639号に記載される態様と同様であり、それらの特許及び出願の内容全体が、全ての目的で本明細書に組込まれる。
【0024】
無線電力送信システム
電力は、磁気誘導によって無線で送信することができる。種々の実施形態において、送信機及び受信機は密に結合される。
【0025】
或る場合には、「密に結合される」または「密結合」は、コイルが、動作するために互いに非常に近くにあることを要求するシステムを指す。或る場合には、「疎に結合される」または「疎結合」は、コイルが、かなりの空間的及び/または軸方向分離、並びに或る場合には、コイルの大きい方のコイルの直径以下の距離までを有するときに動作するシステムを指す。或る場合には、「疎に結合される」または「緩い結合」は、受信機及び送信機の物理的分離及び/または配向の変化に比較的に敏感でないシステムを指す。
【0026】
種々の実施形態において、送信機及び受信機は非共振回路である。例えば、1つのコイル内の電流の変化は、変化する磁場を誘導する。磁場内の第2のコイルは磁束を採取し、その磁束は、次に、第2のコイル内に電流を誘導する。非共振コイルを有する密に結合したシステムの例は、参照により全ての目的で本明細書に組込まれる国際公開第WO2000/074747号に記載される。従来の変圧器は、密に結合した非共振システムの別の例である。種々の実施形態において、送信機及び受信機は共振回路である。例えば、コイルの一方または両方は、同調キャパシタまたは各コイル内の周波数を制御するための他の手段に接続される。共振コイルを有する密に結合したシステムの例は、参照により全ての目的で本明細書に組込まれる、国際公開第WO2001/037926号;第WO2012/087807号;第WO2012/087811号;第WO2012/087816号;第WO2012/087819号;第WO2010/030378号;及び第WO2012/056365号、及び米国公開第2003/0171792号に記載される。
【0027】
種々の実施形態において、送信機及び受信機は疎に結合される。例えば、送信機は、共振して、受信機によって比較的遠い距離で採取される磁場を伝搬させることができる。或る場合には、エネルギーは、幾つかの計器にわたって送信される可能性がある。疎に結合されたシステムにおいて、電力伝送は、必ずしも臨界距離に依存しない場合がある。むしろ、システムは、送信機と受信機との間の結合係数に対する変化に対処することができる場合がある。疎に結合されたシステムの例は、参照により全ての目的で本明細書に組込まれる国際公開第WO2012/045050号に記載される。
【0028】
電力を、放射エネルギーによって無線で送信することができる。種々の実施形態において、システムはアンテナを備える。アンテナは、共振または非共振である場合がある。例えば、非共振アンテナは、電磁波を放射して、場を生成することができる。場は近接場または遠方場である可能性がある。場は指向性がある可能性がある。一般に、遠方場は、広い範囲を有するが、低い電力伝送率を有する。共振器によってエネルギーを放射するためのこうしたシステムの例は、参照により全ての目的で本明細書に組込まれる国際公開第WO2010/089354号に記載される。こうした非共振システムの例は、参照により全ての目的で本明細書に組込まれる国際公開第WO2009/018271号に記載される。アンテナの代わりに、システムは、レーザ等の高エネルギー光源を備えることができる。システムは、送信点から受信点までの、空間的に制限された直接のコヒーレント経路内で光子が電磁エネルギーを搬送する可能性がある。こうしたシステムの例は、参照により全ての目的で本明細書に組込まれる国際公開第WO2010/089354号に記載される。
【0029】
電力はまた、エネルギーが通過する材料または媒体を利用することによって送信することができる。例えば、体積伝導は、送信点と受信点との間の組織を通して電気エネルギーを送信することを含む。こうしたシステムの例は、参照により全ての目的で本明細書に組込まれる国際公開第WO2008/066941号に記載される。
【0030】
電力はまた、キャパシタ充電技法を使用して伝送することができる。システムは共振または非共振である可能性がある。無線エネルギー伝送のためのキャパシタ充電の例は、参照により全ての目的で本明細書に組込まれる国際公開第WO2012/056365号に記載される。
【0031】
本発明の種々の態様によるシステムは、ここで、磁気誘導による無線エネルギー伝送用のシステムに関連して述べられる。例示的なシステムは、共振電力伝送を利用する。システムは、誘導結合された2つのコイル間で電力を送信することによって働く。しかし、変圧器と対照的に、例示的なコイルは、共に密に結合されない。変圧器は、一般に、互いに直接隣接して整列され位置決めされることを必要とする。例示的なシステムは、コイルの疎結合に対処する。
【0032】
1つの受信機コイル及び1つの送信機コイルによって述べるが、システムが2つ以上の受信機コイル及び2つ以上の送信機コイルを使用できることが本明細書の説明から認識されるであろう。例えば、送信機は、2つのコイル、すなわち、磁束を共振させる第1のコイル及び第1のコイルを励磁する第2のコイルを持つことができる。「共振器」及び「コイル」の使用が、或る程度交換可能に使用できることが本明細書の説明から更に認識されるであろう。種々の点において、「共振器」は、共に接続されたコイル及びキャパシタを指す。
【0033】
本開示の種々の実施形態によれば、システムは、1つまたは複数の受信機に無線で電力を送信する1つまたは複数の送信機を備える。種々の実施形態において、システムは、多重化配置構成で1つの送信機及び2つ以上の受信機を含む。周波数発生器は、送信機に電気結合されて、特定の周波数または複数の周波数の範囲で電力を送信する送信機を駆動することができる。周波数発生器は、電圧制御式発振器及びキャパシタの1つまたは複数の切換え可能なアレイ、電圧制御式発振器及び1つまたは複数のバラクタ、位相ロックループ、直接デジタル合成器、またはその組合せを含む可能性がある。送信機は、電力を複数の周波数で同時に送信する可能性がある。周波数発生器は、共通基準発振器、2つ以上の独立した電圧制御式発振器、またはその組合せに電気結合された2つ以上の位相ロックループを含む可能性がある。送信機は、電力を、共通周波数で複数の受信機に同時に送出するように配置される可能性がある。
【0034】
種々の実施形態において、送信機は、低電力信号を特定の周波数で送信する。送信機は、低電力信号を特定の時間及び/または間隔の間送信することができる。種々の実施形態において、送信機は、高電力信号を、特定の周波数で無線で送信する。送信機は、高電力信号を特定の時間及び/または間隔の間送信することができる。
【0035】
種々の実施形態において、受信機は、周波数選択メカニズムを含み、周波数選択メカニズムは、受信機コイルに電気結合され、受信機が受信できる周波数または周波数範囲を共振器が変更することを可能にするように配置される。周波数選択メカニズムは、離散的キャパシタの切換え可能なアレイ、可変キャパシタンス、受信アンテナに電気結合した1つまたは複数のインダクタ、受信アンテナのコイルの更なるターン数、またはその組合せを含む可能性がある。
【0036】
一般に、送信機コイルからの磁束のほとんどは、受信機コイルに達しない。受信機コイルに達する、送信機によって生成される磁束の量は、「結合係数」と呼ばれる「k」で記述される。
【0037】
種々の実施形態において、システムは、kの値を、約0.2と約0.01との間の範囲に維持する。種々の実施形態において、システムは、kの値を、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、少なくとも0.04、または少なくとも0.05に維持する。
【0038】
種々の実施形態において、コイルは物理的に分離される。種々の実施形態において、分離は、受信機コイルの厚さより大きい。種々の実施形態において、分離距離は、受信機コイル及び送信機コイルの大きい方の直径以下である。
【0039】
磁束のほとんどが受信機に達しないため、送信機コイルは、受信機に結合されるものよりずっと大きな場を生成しなければならない。種々の実施形態において、これは、コイル内に多数のアンペアターンを有する送信機を構成することによって達成される。
【0040】
受信機に結合される磁束だけが実際の負荷に結合するため、場のエネルギーのほとんどは無効である。コイル内の電流は、キャパシヤが共振器を作成するためコイルに接続された状態で維持される可能性がある。したがって、電力源は、受信機によって吸収されるエネルギーを供給する必要があるだけである。共振キャパシタは、受信機に結合されない過剰の磁束を維持する。
【0041】
種々の実施形態において、受信機のインピーダンスは、送信機に整合される。これは、受信機からのエネルギーの効率的な伝送を可能にする。この場合、受信機コイルは、共振キャパシヤを持つ必要が無い場合がある。
【0042】
ここで、図1を考えると、無線エネルギー送信の簡略化された回路が示される。例示的なシステムは、直列接続を示すが、システムは、送信機側または受信機側で直列または並列に接続される可能性がある。
【0043】
例示的な送信機は、キャパシタCxによって電力源Vsに接続されたコイルLxを含む。例示的な受信機は、キャパシタCyによって負荷に接続されたコイルLyを含む。キャパシタCxは、Lxを所望の周波数で共振させることができる。送信機コイルのキャパシタンスCxを、その幾何形状によって規定することができる。インダクタLx及びLyは、結合係数kによって接続される。Mxyは、2つのコイル間の相互インダクタンスである。相互インダクタンスMxyは結合係数kに関連する。
【0044】
【数1】
【0045】
例示的なシステムにおいて、電力源Vsは、送信機コイルLxと直列接続状態にあるため、全ての無効電流を搬送しなければならない場合がある。これは、電力源の電流定格により大きな負担をかけ、電力源内の任意の抵抗が損失を倍加することになる。
【0046】
例示的なシステムは、送信機によって無線で送信されるエネルギーを受信する受信機を含む。例示的な受信機は負荷に接続される。受信機及び負荷を、制御可能なスイッチに電気接続することができる。
【0047】
種々の実施形態において、受信機は、電子制御可能なスイッチによって受信機コイルに接続するまたは受信機コイルから外される回路要素を含む。電気結合は、直列と並列の両方の配置構成を含む可能性がある。回路要素は、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、複数の長さのアンテナ構造、またはその組合せを含む可能性がある。システムは、電力が、所定の時間増分で、送信機によって送信され、受信機によって受信される可能性がある。
【0048】
種々の実施形態において、送信機コイル及び/または受信機コイルは実質的に2次元構造である。種々の実施形態において、送信機コイルは、送信機インピーダンス整合構造に結合することができる。同様に、受信機コイルは、受信機インピーダンス整合構造に結合することができる。適したインピーダンス整合構造の例は、コイル、ループ、変圧器、及び/またはインピーダンス整合ネットワークを含むが、それに限定されない。インピーダンス整合ネットワークは、信号源を共振器構造に接続するインダクタまたはキャパシタを含むことができる。
【0049】
種々の実施形態において、送信機は、コントローラ(図示せず)及び駆動回路によって制御される。コントローラ及び/または駆動回路は、指向性カプラ、信号発生器、及び/または増幅器を含むことができる。コントローラは、送信機周波数または増幅利得を調整して、受信機と送信機との間の結合に対する変化を補償することができる。
【0050】
種々の実施形態において、送信機コイルは、インピーダンス整合済みコイルループに接続される。ループは、電力源に接続され、送信機コイルを励磁する。第1のコイルループは有限の出力インピーダンスを有することができる。信号発生器出力を、増幅し、送信機コイルに給送することができる。使用時、電力を、第1のコイルループと主送信機コイルとの間で磁気的に伝送することができ、主送信機コイルは、次に、磁束を受信機に送信する。受信機コイルによって受信されるエネルギーは、オーミック接続によって負荷に送出される。
【0051】
実際の回路に対する難題の1つは、どのようにしてエネルギーを共振器に入れまたそこから出すかである。電力源及び負荷を単に共振器と直列にまたは並列に置くことは、必要とされる電圧及び電流のために難しい。種々の実施形態において、システムは、システム特性を分析し、関係する電圧及び電流を推定し、受信機によって必要とされる電力を送出するように回路要素を制御することによって近似的なエネルギー平衡を達成する。
【0052】
例示的な実施形態において、システム負荷電力Pは15ワットであると仮定され、また、システムの動作周波数fは250kHzである。そして、各サイクルについて、負荷は、共振から或る量のエネルギーを取除く。
【0053】
【数2】
【0054】
受信機共振におけるエネルギーが、通常、動作中の埋め込み可能医療デバイスの場合、負荷によって取除かれるエネルギーの数倍大きいことが見出された。種々の実施形態において、システムは、受信機のエネルギー対除去される負荷のエネルギーについて比7:1を仮定する。この仮定の下で、例示的な受信機共振における瞬時エネルギーは420μJである。
【0055】
例示的な回路が分析され、受信機コイルの自己インダクタンスが、60μHであることが見出された。エネルギー及びインダクタンスから、共振器における電圧及び電流を計算することができる。
【0056】
【数3】
【0057】
【数4】
【0058】
【数5】
【0059】
電圧及び電流は互いに対してトレードオフされる可能性がある。インダクタは、ターン数によらず、同じ量の磁束に結合することができる。コイルのアンペアターンは、この例では同じままである必要があるため、より多くのターン数は電流が減少することを意味する。しかし、コイル電圧は増加する必要がある。同様に、電圧は、より大きな電流と引換えに減少する可能性がある。送信機コイルは、ずっと多くの磁束を有する必要がある。送信機磁束は、結合係数によって受信機磁束に関連付けられる。したがって、送信機コイルからの場のエネルギーは、kによってスケーリングされる。
【0060】
【数6】
【0061】
kが0.05であれば、以下である。
【0062】
【数7】
【0063】
同じ回路の場合、送信機コイルの自己インダクタンスは、先に述べたように146μHであった。これは、以下をもたらす。
【0064】
【数8】
【0065】
【数9】
【0066】
競合因子及び状況に適合し所望の結果を達成するために電圧、電流、及びインダクタンスをどのように平衡させるかがこの例から認識される可能性がある。受信機のように、電圧及び電流は、互いに対してトレードオフされる可能性がある。この例において、システム内の電圧及び電流は比較的高い。負荷が低い場合に受信機における電圧及び/または電流を下げるように同調が調整される可能性がある。
【0067】
結合係数及び相互インダクタンスの推定
先に説明したように、結合係数kは幾つかの理由で有用である場合がある。一例において、結合係数は、適切な性能を確保するために同調調整が行われるように、互いに対するコイルの配置構成を理解するために使用され得る。受信機コイルが送信機コイルから離れる場合、相互インダクタンスが減少することになり、他の事情が同じであれば、より少ない電力が伝送されることになる。種々の実施形態において、システムは、結合係数の低下を補償するために同調調整を行う。
【0068】
上述した例示的なシステムは、しばしば、不完全な情報を有する。当業者によって理解される種々の理由で、システムは、全てのパラメータについてデータを収集しない。更に、コイル間の物理的ギャップのせいで、また、2つの共振器間の外部通信手段がない状態で、送信機は、受信機が持っていない情報を有する場合がある、また、その逆も同様である。これらの制限は、結合係数kを直接測定しリアルタイムに導出することを難しくする。
【0069】
以下には、所与の幾何形状の2つのコイルについて結合係数kを推定するための幾つかの原理が述べられる。そのアプローチは、ビオサバール計算または有限要素法等の技法を利用することができる。特定の配向でコイルがどのように相互作用するかに基づく、或る仮定及び一般化が、理解を簡単にするために行われる。電気回路の観点から、全ての物理的幾何形状並べ替えは、一般に、結合係数をもたらす可能性がある。
【0070】
2つのコイルが、一方のコイルが他のコイルの周囲を囲む状態で同じ平面内にあるように配置される場合、結合係数は、2つのコイルの面積の比にほぼ比例すると推定される可能性がある。これは、コイル1によって生成される磁束が、図2に示すようにコイル1が閉囲するエリアにわたってほぼ均一であることを仮定する。
【0071】
コイルが、整列がずれ、それにより、コイルが或る相対的な角度にある場合、結合係数は減少することになる。減少量は、図3Aに示す角度の余弦にほぼ等しいと推定される。コイルが互いに直角であり、それにより、シータ(θ)が90°である場合、磁束は受信機によって受信されないことになり、結合係数はゼロであることになる。
【0072】
コイルが、一方のコイルからの磁束の半分が一方向にあり、他の半分が他の方向にあるように配置される場合、図3Bに示すように、磁束は相殺し、結合係数はゼロである。
【0073】
最終原理は、コイルの対称性による。一方のコイルから他方のコイルへの結合係数及び相互インダクタンスは、どのコイルが励磁されるかによらず、同じであると仮定される。
【0074】
【数10】
【0075】
図4は、患者の外側部分に位置決めされる送信機及び共振器コイル402を含むTETシステム400の一実施形態を示す。図4において、送信機は、平坦共振器コイル或は患者の解剖学的構造に適合する湾曲または適合可能共振器コイルである可能性がある。送信機は、患者に埋め込まれた受信機404に無線エネルギーを送信する可能性がある。幾つかの実施形態において、受信機は、心臓ポンプ等の埋め込み式医療デバイス406に電気結合されて、医療デバイスの動作のためにエネルギーを提供することができる。
【0076】
システム400は、受信機及び/または送信機と通信できるユーザインタフェース408を更に含む可能性がある。ユーザインタフェースは、例えば、スマートフォン、タブレット、又はPC、或はリストウォッチのフォームファクタの装着可能デバイス等の携帯デバイスである可能性がある。一般に、ユーザインタフェースは、患者に情報を伝えるためのディスプレイ及びTETシステムの残りの部分と無線で通信するハードウェアを含む。ユーザインタフェースは、例えば、インプラントの動作状態、インプラントの電池寿命、充電状態、或は、インプラントまたは患者の健康に関する他の任意の数の情報またはパラメータを、ユーザに表示する可能性がある。ユーザインタフェースは、低電池レベル、充電リマインダ、またはデバイス誤動作(埋め込み式電力受信機又は取付け式医療デバイスからの誤動作に関する情報を含む)等のアラームを含み表示することができる。受信機からユーザインタフェースまたは送信機への通信は、人間の組織層を通過しなければならないため無線である。無線通信は、患者を囲む環境によって(例えば、患者が泳いでいるかまたは水中を潜水している場合に)更に複雑化される可能性がある。
【0077】
幾つかの実施形態において、ユーザインタフェース408は共振回路を含む可能性がある。共振回路は、高い品質係数を持ち、また、磁場から有意な量のエネルギーを消散しないように設計される可能性がある。ユーザインタフェース内の共振回路は、種々の機能を実施する電子機器を含む可能性がある。例えば、ユーザインタフェースは、共振回路を有する埋め込み式受信機と通信し、そこからの情報を受信する可能性がある。情報は、医療デバイス406の動作に関連するデータを含む可能性がある。一実施形態において、医療デバイス460は、心室補助デバイス(VAD)であり、ユーザインタフェースに通信されるデータは、電力消費、アラーム事象データ、ポンプ速度、拍動指数、ポンプ流量、システム状態、及び同様なものを含む。
【0078】
ユーザインタフェースと埋め込み式構成要素との間の情報の通信は、ユーザインタフェースから受信機に磁気信号を送信すること、または代替的に、ユーザインタフェースから受信機に磁気信号を送信することによって達成される可能性がある。更に、ユーザインタフェースは、受信機からまたは送信機から無線電力を受信して、送信機が埋め込み式受信機を再充電することができるのと全く同じ方法でユーザインタフェース内の電力源を再充電する可能性がある。通信は、共振回路内の磁気信号によるため、患者が水中を潜水していても送信され受信される可能性がある。通信のための磁気共振の使用はまた、複数の組織層を通した深部身体インプラントとの通信を可能にする。
【0079】
幾つかの実施形態において、ユーザインタフェースは、無線によってTETシステムの残りの部分と通信するように設計された従来の無線通信ハードウェアを含む可能性がある。一実施形態において、共振回路は、別の通信システムに対する付属物である。一実施形態において、共振回路は、(例えば、無線通信システム等の主通信システムが故障した場合に)バックアップとしての通信のために構成される。他の実施形態において、共振回路による磁気通信は、TETシステム内で通信する主要な方法である可能性がある。
【0080】
幾つかの実施形態において、1つ又は複数の聴取デバイス410が、ユーザインタフェース408内等の、1つ又は複数の外部デバイス内に埋設されて、埋め込み式受信機404または医療デバイス406から聴取デバイス(複数可)への一方向通信を可能にし得る。埋め込み式受信機は、例えば、デバイスの、種々の警報、状態更新、または動作パラメータ等のような情報を、患者または医療デバイス408から収集する可能性がある。収集される情報は、音波信号を発生することによってまたはその音波シグネチャに対する変化をもたらす医療デバイスの機能または動作パラメータを変更することによって、音波信号によって外部聴取デバイス(複数可)410に通信される可能性がある。外部聴取デバイスは、音波信号を聴取することによって、埋め込み式システムから音波通信を受信する可能性がある。
【0081】
一実施形態において、聴取デバイス410は、マイクロフォンを備える可能性があり、マイクロフォンは、埋め込み式システム内の音波変化を検出する。受信機または医療デバイス内のコントローラは、医療デバイスの動作パラメータを変更する可能性があり、デバイスの音波パラメータ(例えば、デバイスがどれだけ多くのノイズを生成するか、または、デバイスが生成するノイズのタイプ/ピッチ)を変更する。医療デバイスの動作のこれらの変化は、マイクロフォンによって検出される可能性があり、マイクロフォンは、音波変化を解釈して、通信されている情報を確定する可能性がある。
【0082】
例えば、医療デバイス408が左室補助デバイス(LVAD)を備える場合、受信機は、埋め込み式ポンプの速度が変化するときを検知する可能性がある。ポンプの速度がどのように変化するかに応じて、聴取デバイスは、埋め込み式システムからやって来る音波信号に対する変化に基づいて、意図される通信を確定する可能性がある。例によれば、一実施形態において、コントローラは、LVADの速度を減少させることができ、それが、LVADのピッチを低下させることをもたらす可能性がある。聴取デバイスは、LVADの低下したピッチを検出し、その低下したピッチを所定のメッセージまたは通信に関係付ける可能性がある。例えば、低下したピッチが使用されて、埋め込み式システムの低電力のまたは何らかの他のアラームを通信する可能性がある。その意図は、信号を確実に送出するために必要とされるのと同程度にわずかにポンプの速度を変更するが、患者に対する臨床的影響がほとんどないか全くないように、できる限りポンプ速度の変化を最小にすることである。幾つかの実施形態において、この通信方法は、緊急使用の場合、主通信モードが故障したときにだけ使用され得る。
【0083】
別の実施形態において、高調波が、医療デバイスのドライブ信号に導入されて(例えば、受信機または医療デバイス内のコントローラによって導入されて)、音波信号であって、聴取デバイス(複数可)によってその後、検出され解釈される可能性がある、音波信号を変調する可能性がある。
【0084】
更に、外部聴取デバイス(複数可)によって医療デバイスを「聴取すること」は、おそらく、埋め込み可能デバイス及び患者健康モニタリングオプションの付加を可能にし得る。当業者によって理解されるように、動作中のデバイスは、特定の周波数で音を放出する。聴取デバイスは、デバイスの周波数及び時間領域における変化を検出する可能性がある。例えば、心臓ポンプ等のデバイスの動作の変化は、早期ポンプ血栓検出を可能にし得る。モニターすることができる他のパラメータは、ヘマトクリットレベル(粘度に影響を及ぼす)の変化によるポンプ速度の変化を含む。デバイス動作に基づいてデータを送信する回路要素を利用する従来のシステムと違って、例示的なシステムは、変化があるかを、直接「聴取する」可能性がある。
【0085】
このタイプの音波通信と無線または電磁通信との差は、本開示の音波アプローチが、レンジ増加、複雑さの減少、セキュリティの増加、水中動作を可能にすることである。他のタイプの通信システムは、本明細書の説明から認識されるように、音響「聴取」を可能にしない。
【0086】
幾つかの実施形態において、受信機または医療デバイス以外の埋め込み式デバイスは、音波信号を発生するために使用され得る。幾つかの実施形態において、聴取デバイスは、埋め込み式システムから音波信号を受信するため患者の身体と接触状態にある必要があるが、他の実施形態において、聴取デバイスは、患者の身体と接触状態にある必要はない。
【0087】
音波通信方法が一方向性であるとして上述されたが、本明細書で述べる原理が2方向性通信スキームにおいて同様に使用され得ることが理解されるべきである。
【0088】
図5は、組合せ式の磁気通信と磁気エネルギー伝送の受信機を含む共振回路500がどのように働くかを示す。これは、例えば、上述したユーザインタフェースに含まれる共振回路である可能性がある。基本的な考えは、電力/電気エネルギーを伝送するのに十分に大きな振動、及び、情報を含むように符号化される振動を共に含む磁場を、共振回路のコイル502が、「採取する」(電圧に変換する)ことである。共振回路の品質係数は注意深く選択されなければならない。すなわち、品質係数は、電力/エネルギーを効率的に伝送するのに十分に高いが、単位時間当たりの所望量の情報(ビット/秒)を通信できるのに十分に低くあるべきである。情報は、振幅変調(AM)か、周波数変調(FM)か、またはAMとFMの両方の組合せによって符号化される可能性がある。直交変調(またはより高次の変調)が使用される可能性があり、AM/FMコンボを使用する場合、自然な選択であることになる。
【0089】
1つの受信機だけを有するTETシステム内の受信コイルは、受信される電力効率及びビットレートを最大にするため、出来る限り大きくあるべきである。システム内に複数の受信機が存在する場合、最も遠い受信機が出来る限り大きくあるべきである。より近い受信機は、所望の電力伝送効率に応じて、より小さなコイルを有する場合がある。
【0090】
図5に示すように、コイル502からの出力は、エネルギーユーザ506に送出するため共振エネルギー伝送システム504に分割される可能性があり、エネルギーユーザ506は、ユーザインタフェース用の電池充電及び電力送出特徴部を示す可能性がある。コイルからの出力はまた、(オプションのハイパスフィルタ510を介して)AD変換器508に送出される可能性がある。ハイパスフィルタは、共振エネルギー伝送システムの低周波数を除去する可能性がある。これは、AD変換器を高電圧から保護し、非常に簡単なAD変換器(3レベル 1/未定義/0 変換器等)が使用されることを可能にする。ハイパスフィルタに対する代替法は、(共振エネルギー伝送が通信に比べて高い周波数で動作する場合)ローパスフィルタ、AD変換器を保護するための任意のタイプの電圧変圧器または電圧ステップダウン構成要素、或は、(AD変換器が、高電圧を受信すると等級付けされる場合)単にハイパスフィルタを完全に省くことを含む。フィルタが全く使用されない場合、AD変換器は、簡単な3レベル(または同様の)変換器である可能性があるのではなく、大きなダイナミックレンジを提供しなければならず、また、CPU512は、高速フーリエ変換または同様なものを通して未処理信号を処理しなければならない。フィルタが使用されるかどうかによらず、CPU512は、通信情報を、例えば上述したユーザインタフェース等の情報ユーザ514に渡して、インプラントに関する重要な情報を患者に表示するようにする。
【0091】
共振回路は、最低でも、キャパシタであって、コイル502と共に回路に所望の共振周波数を与える、キャパシタを含むべきである。回路は、電力が負荷に送出される前に別のコイル(「励磁」コイル)または電圧駆動型キャパシタを含む可能性がある。負荷は、DCに整流するFETのブリッジまたはAC−AC変換器である場合がある、或は、電圧は、種々のエネルギーユーザ506(ディスプレイ等のエネルギーを必要とする構成要素、例えば、充電を必要とする電池またはモータ等)に直接届く可能性がある。
【0092】
共振回路は、TETシステム(受信機及び送信機を含む)の他の構成要素と同じ周波数で動作する可能性がある、または、自分自身の異なる周波数で動作する独立した共振回路である可能性がある。共振回路はまた、簡略化されて、ユーザインタフェースのために、共振エネルギー伝送機能ではなく、通信機能だけを提供する可能性がある。
【0093】
ハイパスフィルタは、共振エネルギー伝送システムの低周波数を除去する。これは、DA変換器を高電圧から保護し、非常に簡単なDA変換器(3レベル 1/未定義/0 変換器等)が使用されることを可能にする。ハイパスフィルタに対する代替法は、(共振エネルギー伝送が通信に比べて高い周波数で動作する場合)ローパスフィルタ、DA変換器を保護するための任意のタイプの電圧変圧器または電圧ステップダウン構成要素、或は、(DA変換器が、高電圧を受信すると等級付けされる場合)単にハイパスフィルタを完全に省くことを含む。フィルタが全く使用されない場合、DA変換器は、簡単な3レベル(または同様の)変換器である可能性があるのではなく、大きなダイナミックレンジを提供しなければならず、また、CPUは、高速フーリエ変換または同様なものを通して未処理信号を処理しなければならないことになる。
【0094】
CPU512は任意のタイプの信号プロセッサである可能性がある。
【0095】
上述した磁気通信スキームの利点は、データに加えて電力を伝送する能力である。共振回路の装備は、従来の磁気通信コイルによって可能でないと思われるエネルギーの送信を可能にする
【0096】
本明細書で述べるシステムは、別個のデータ及び電力媒体についての必要性をなくすため民生用電子機器にとって特に有利である場合がある。単一システムが使用されて、電子デバイスに給電する及び/または2つの遠隔構成要素間で所望のデータを送信する可能性がある。
【0097】
図6は、組合せ式の磁気通信及び磁気エネルギー伝送の送信機用の共振回路600がどのように働くかを示す。図5に示す受信機と比較して、図6の送信機の情報は、他の方向に、情報プロバイダ615(例えば、センサまたはユーザインタフェース)から、信号処理用CPU612または同様なものに、AD変換器610(おそらくは増幅器を有する)に、ハイパスフィルタ608を通してコイルに流れる。エネルギーはまた、他の方向に、エネルギープロバイダ606(例えば、電池パック及びFETブリッジ)から共振エネルギー伝送システム604に流れる可能性がある。
【0098】
別の実施形態において、超音波通信が、上述した磁気通信の代わりにTETシステムの構成要素間で使用され得る。超音波送受信機は、TETS送信機、受信機、又はユーザインタフェース内に含まれて、コード化済みの超音波信号によって情報を送信し受信する可能性がある。復号器及び符号器は、各送受信機に更に結合される可能性がある。音波の減衰が、人間の身体内で無線信号の減衰に比べて著しく低い可能性があるため、この通信方法は、同様に、標準的な無線通信より信頼性が高い可能性がある。
【0099】
一実施形態による送受信機は、2つの別個の部分、すなわち、超音波を発生するトランスジューサ、及び、マイクロフォン、トランスジューサまたは超音波信号を受信する他の受信機に分割される可能性がある。幾つかの実施形態において、超音波信号は、約100kHzから20MHz以上の範囲にある周波数で送信される可能性がある。一般に、周波数が低ければ低いほど、送信中に、信号がより少なく減衰し、かつ、通信にとって依然として有用でありながら、信号が長い距離を進む可能性がある。例えば、20MHzで、減衰深さは約2cmである。100kHz未満の周波数は、動物、特に、患者と共に生きるペットの聴覚に干渉する可能性がある。
【0100】
図7Aから7Bは、図4のTETシステム等のTETシステムにおいて使用するための超音波通信システムの実施形態を示す。例えば、図7Aに示すシステムは、図4のユーザインタフェース404と同様のユーザインタフェース708を含む可能性がある。幾つかの実施形態において、ユーザインタフェースは、リストバンド717の上等、ユーザによって装着される可能性がある。代替的に、ユーザインタフェースは、ベルトに、接着剤に、ベルクロ(登録商標)にユーザインタフェースを付着させることによって、または、衣料品の上でまたはその中にユーザインタフェースを一体化することによって、患者によって装着される可能性がある。図7Bは、図4の受信機404と同様の埋め込み可能受信機704を示す。ユーザインタフェース708は、受信機704の上にまたはその中に配設された超音波送受信機718と通信する超音波送受信機716を含む可能性がある。示す例において、送受信機718は、埋め込み式デバイスのハウジングを構成するフェライト層720及びチタン層722の外側に配設される可能性がある。
【0101】
種々の例証的な実施形態が上述されたが、任意の幾つかの変更を、特許請求の範囲が述べる本発明の範囲から逸脱することなく、種々の実施形態に対して行うことができる。例えば、述べる種々の方法ステップが実施される順序は、代替の実施形態において、しばしば変更される場合があり、他の代替の実施形態において、1つまたは複数の方法ステップは完全にスキップされる場合がある。種々のデバイス及びシステムの実施形態のオプションの特徴は、幾つかの実施形態では含まれる場合があり、他の実施形態では含まれない場合がある。したがって、先の説明は、主に例示のために提供され、本発明が特許請求の範囲において述べられるため、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。医療システムとして幾つかの点で述べられるが、本原理が、限定はしないが、民生用電子機器、自動車、電話及び個人用通信デバイス、ゲーミングデバイス、並びにコンピュータ及び周辺機器を含む他のタイプのシステムに同様に適用される可能性があることが本明細書の説明から認識されるであろう。
【0102】
本明細書に含まれる例及び例証は、制限ではなく例証として、主題をそこで実施することができる特定の実施形態を示す。述べたように、他の実施形態を利用し、また、そこから導出することができ、それにより、構造的及び論理的な置換及び変更を、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。本発明の主題のこうした実施形態は、単に便宜上、また、本出願の範囲を、発明または発明の概念の2つ以上が実際に開示される場合に、任意の単一の発明または発明の概念に自発的に限定することを意図することなく、個々にまたは一括して本明細書で用語「発明」と呼ぶことができる。そのため、特定の実施形態が本明細書で示され述べられるが、同じ目的を達成すると推定される任意の配置構成が、示す特定の実施形態と置換される場合がある。本開示は、種々の実施形態の任意のまた全ての適応または変形をカバーすることを意図される。上記実施形態及び本明細書で特に述べられない他の実施形態の組合せは、上記説明を検討すると当業者に明らかになるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B