(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616482
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】時計ムーブメントにおいてシャフトをセンタリングするための磁気装置
(51)【国際特許分類】
G04B 31/00 20060101AFI20191125BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
G04B31/00 Z
F16C32/04 Z
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-213558(P2018-213558)
(22)【出願日】2018年11月14日
(65)【公開番号】特開2019-95442(P2019-95442A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2018年11月14日
(31)【優先権主張番号】17203695.6
(32)【優先日】2017年11月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フィリップ・ロシャ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・レジュレ
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−9585(JP,A)
【文献】
特開2017−9583(JP,A)
【文献】
特開2015−152402(JP,A)
【文献】
特開2015−118085(JP,A)
【文献】
特開2012−103249(JP,A)
【文献】
特開2011−185672(JP,A)
【文献】
米国特許第4308605(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B31/00−31/08
F16C32/00−32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメントにおいて所定の軸上にシャフト(1)をセンタリングするための磁気装置であって、当該装置は、前記シャフト(1)の強磁性材料で構成された第1端のホゾ(2)に引力を作用させるための第1の磁石(6)を含む少なくとも1つの第1の磁気軸受(20)を備える、磁気センタリング装置において、
前記第1の磁気軸受(20)は、前記第1の磁石(6)と前記シャフト(1)の前記第1端のホゾ(2)との間に取り付けられる強磁性材料で構成された少なくとも1つの第1の中央部(4)を有し、前記シャフト(1)の前記第1端のホゾ(2)を前記所定の軸上に磁気的に引き付けるために、前記第1の磁石(6)によって発生する界磁磁束を前記第1の中央部(4)を通してセンタリングするように、前記第1の中央部(4)は、非磁性材料で構成された第1のワッシャまたはブッシュ(8)における中心位置に位置決めされている、ことと、
前記第1の磁気軸受(20)は、前記第1の中央部(4)と前記シャフト(1)の前記第1端のホゾ(2)との間に取り付けられた第1のテン真受石(10)をさらに有することと、
前記第1の中央部(4)は、前記第1のワッシャまたはブッシュ(8)の中央開口に接着または押入されることと、
前記第1のワッシャまたはブッシュ(8)と前記第1の中央部(4)とを合わせたものは、前記第1の磁石(6)および前記第1のテン真受石(10)に直接接触していることと、を特徴とする、磁気センタリング装置。
【請求項2】
前記第1の中央部(4)の直径は、前記第1端のホゾ(2)の直径と同じであるか、または前記第1端のホゾ(2)の直径よりも0〜20%大きい、ことを特徴とする、請求項1に記載の磁気センタリング装置。
【請求項3】
前記第1の中央部(4)の直径は、前記第1端のホゾ(2)の直径と同じであるか、または前記第1端のホゾ(2)の直径よりも0〜20%小さい、ことを特徴とする、請求項1に記載の磁気センタリング装置。
【請求項4】
前記第1のテン真受石(10)は、ルビーで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センタリング装置。
【請求項5】
前記第1の中央部(4)は、軟質強磁性材料で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センタリング装置。
【請求項6】
前記第1のワッシャまたはブッシュ(8)は、黄銅で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センタリング装置。
【請求項7】
前記第1の磁石(6)の外径は、前記ワッシャまたはブッシュ(8)の外径および前記第1のテン真受石(10)の外径と同じであることを特徴とする、請求項1に記載の磁気センタリング装置。
【請求項8】
前記第1の磁石(6)の外径は、前記ワッシャまたはブッシュ(8)の外径と同じであることと、
前記第1のテン真受石(10)は、前記第1のワッシャまたはブッシュ(8)の直径よりも小さい直径を有し、前記第1端のホゾ(2)の側で、前記第1のワッシャまたはブッシュ(8)の下部中央の空洞内に固定されている、ことと、を特徴とする、請求項1に記載の磁気センタリング装置。
【請求項9】
前記第1の磁気軸受(20)は、第1の支持体(22)を有し、前記第1の支持体は、前記第1端のホゾ(2)が接触することなく貫通するために、前記第1端のホゾ(2)の直径よりも大きい直径を有する開口部(23)を有する基部を、前記第1端のホゾ(2)の側に含み、第1の台枠(21)を、前記第1の支持体(22)内に位置決めするとともに、弾性手段(24)によって前記第1の支持体(22)内の逆円錐形状の座部に保持している、ことと、
前記台枠は、第1の上側受石(12)と、前記第1の永久磁石(6)と、前記第1のワッシャまたはブッシュ(8)内に位置決めされた前記第1の中央部(4)と、前記第1のテン真受石(10)と、を順に有することと、を特徴とする、請求項7または8に記載の磁気センタリング装置。
【請求項10】
当該装置は、前記シャフト(1)の強磁性材料で構成された第2端のホゾ(3)に引力を作用させるための第2の磁石(7)を含む第2の磁気軸受(30)を有し、前記第2端のホゾ(3)は、前記シャフト(1)の前記第1端のホゾ(2)とは反対側である、ことを特徴とする、請求項1に記載の磁気センタリング装置。
【請求項11】
前記第2の磁気軸受(30)は、前記第2の磁石(7)と前記シャフト(1)の前記第2端のホゾ(3)との間に取り付けられる軟質強磁性材料で構成された第2の中央部(5)を有し、前記シャフト(1)の前記第2端のホゾ(3)を前記所定の軸上に磁気的に引き付けるために、前記第2の磁石(7)によって発生する界磁磁束を前記第2の中央部(5)を通してセンタリングするように、前記第2の中央部(5)は、非磁性材料で構成された第2のワッシャまたはブッシュ(9)における中心位置に位置決めされている、ことと、
前記第2の中央部(5)の直径は、前記第2端のホゾ(3)の直径と同じであるか、または前記第2端のホゾ(3)の直径よりも0〜20%大きい、ことと、
前記第2の磁気軸受(30)は、前記第2の中央部(5)と前記シャフト(1)の前記第2端のホゾ(3)との間に取り付けられた第2のテン真受石(11)をさらに有することと、を特徴とする、請求項10に記載の磁気センタリング装置。
【請求項12】
前記第2の磁気軸受(30)は、前記第2の磁石(7)と前記シャフト(1)の前記第2端のホゾ(3)との間に取り付けられる軟質強磁性材料で構成された第2の中央部(5)を有し、前記シャフト(1)の前記第2端のホゾ(3)を前記所定の軸上に磁気的に引き付けるために、前記第2の磁石(7)によって発生する界磁磁束を前記第2の中央部(5)を通してセンタリングするように、前記第2の中央部(5)は、非磁性材料で構成された第2のワッシャまたはブッシュ(9)における中心位置に位置決めされている、ことと、
前記第2の中央部(5)の直径は、前記第2端のホゾ(3)の直径と同じであるか、または前記第2端のホゾ(3)の直径よりも0〜20%小さい、ことと、
前記第2の磁気軸受(30)は、前記第2の中央部(5)と前記シャフト(1)の前記第2端のホゾ(3)との間に取り付けられた第2のテン真受石(11)をさらに有することと、を特徴とする、請求項10に記載の磁気センタリング装置。
【請求項13】
前記第2のテン真受石(11)は、ルビーで構成されていることを特徴とする、請求項11または12に記載の磁気センタリング装置。
【請求項14】
前記第2のワッシャまたはブッシュ(9)は、黄銅で構成されていることを特徴とする、請求項11または12に記載の磁気センタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントにおいて所定の軸上にシャフトをセンタリングするための磁気装置に関するものであり、この装置は、シャフトの磁性材料で構成されたホゾに引力を作用させるように配置された磁石を備えた少なくとも1つの磁気軸受を含む。
【背景技術】
【0002】
時計ムーブメントの回転部材において、例えば回転のシャフトを所定の軸上に保持するために、永久磁石を使用できることが知られている。これには、回転シャフトによる摩擦を抑えつつ、通常は極めて局所的である十分な保持力が生じるという利点がある。ところが、その磁場は、磁気センタリング手段がなければ過度にオフセンタである可能性があり、このことが、多数の部品が生産されても製造後に不良品としてはじかれることにつながっている。
【0003】
国際公開第2012/062524号を引用することができる。これは、この文献の
図13に関連して、
図1に先行技術として示す、少なくとも1つの磁気軸受を備えたシャフト用ピボット装置について記載している。この
図1は、シャフト1を含むピボット装置を示しており、その両端は、それぞれ参照符号2および3を付した2つのホゾを形成している。これらのホゾは、磁性材料で構成されている。
図1は、さらに、回転する2つのホゾ2、3を支持および案内するように配置された第1の軸受および第2の軸受を示している。2つの軸受の各々は、参照符号40および44をそれぞれ付した台枠と、台枠に取り付けられた参照符号4および6をそれぞれ付した永久磁石と、磁石と台枠の開口との間に挿入された参照符号18Aおよび19Aをそれぞれ付した支持面を有する石と、を含む。第1の軸受および第2の軸受の磁石4および6は、それぞれ第1のホゾおよび第2のホゾを引き付けるような向きに配置されて、これにより、ある程度の径方向および軸方向の遊びを有して、シャフト1を回転軸に保持する。
【0004】
上記の原理で動作する信頼性の高い時計機構を製作することは、極めて小寸法であるため、大きな技術的課題となる。さらに、計時機能を精密に実現するためには、かなり高い空間精度が要求される。
【0005】
また、欧州特許出願公開第3106934号明細書を引用することもできる。これは、所定の軸上のシャフトのためのピボット装置について記載しており、この装置は、磁石と、シャフトのホゾに向けて磁束をセンタリングするための構造と、を有する少なくとも1つの磁気軸受を有する。このセンタリング構造は、周辺部と、連結要素によって周辺部に弾性連結された中央部と、を含む。その中央部は、高透磁率の材料で、磁石よりも小寸法に形成されている。
【0006】
一般的に、欧州特許出願公開第3106934号明細書またはスイス国特許出願公開第711220号明細書に記載されているような周知の磁気センタリング装置では、その装置の各種構成要素は組み立て時に検査されて、磁気軸受の少なくとも1つの磁石によって発生する磁場が過度にオフセンタである場合には、それらの生産された部品は不良品としてはじかれる。現在、周知の磁気センタリング装置での不良率は、あまりにも高くて、そのような装置を産業化することは難しく、これが欠点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/062524号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3106934号明細書
【特許文献3】スイス国特許出願公開第711220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、時計ムーブメントにおいて所定の軸上にシャフトをセンタリングするための磁気装置を提供することにより、先行技術の欠点を解消することであり、この磁気装置では、少なくとも1つの磁石によって発生する磁力線は、単純化された構成を用いて、シャフトの回転軸の方向に適切にセンタリングされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、独立請求項1で規定する特徴を有する、時計ムーブメントにおいて所定の軸上にシャフトをセンタリングするための磁気装置に関するものである。
【0010】
この磁気センタリング装置の具体的な実施形態を、従属請求項2〜14で規定している。
【発明の効果】
【0011】
この磁気センタリング装置の1つの利点は、磁石によって発生する磁場のためのセンタリングパッドを用いて、シャフトの両端のホゾの1つを所定の軸上に適切にセンタリングすることが可能であることにある。好ましくは軟質強磁性材料で製造されるパッドで構成される中央部において磁場の強度が高まるとともに、磁場の径方向の勾配も大きくなる。これにより、シャフトの正確なセンタリングを確保するように、シャフト端のホゾに径方向に作用する磁気復元力が増大する。
【0012】
このシャフト用磁気センタリング装置の他の利点は、磁場の良好なセンタリングが、センタリングパッドによって容易に実現されることにある。さらに、そのパッドを備えた磁気軸受の単純化された構造は、生産が容易である。磁場は2〜3倍にリセンタリングされる。このような条件下では、磁気センタリング装置の製造後に不良品としてはじかれる部品の数は、先行技術の装置と比較して大幅に減少する。
【0013】
時計ムーブメントにおいて所定の軸上にシャフトをセンタリングするための磁気装置の目的、利点、および特徴は、特に図面に関連した以下の説明において、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、先行技術の磁気ピボット装置の長手方向断面図である。
【
図2】
図2は、本発明による磁気センタリング装置を用いて、時計ムーブメントの所定の軸上にシャフトを磁気センタリングする原理の図である。
【
図3】
図3は、本発明による磁気センタリング装置を備えた時計ムーブメントの一部分の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、時計ムーブメントにおいて所定の軸上にシャフトをセンタリングするための磁気装置の、当技術分野で周知の部分については、いずれも簡単にのみ説明する。
【0016】
図2は、時計ムーブメントにおいて所定の軸上にシャフト1をセンタリングするための磁気装置の簡略図である。この磁気センタリング装置は、シャフト1を所定の軸上にセンタリングするための少なくとも1つの磁気軸受20を有する。このために、シャフト1は、その端に、強磁性材料で構成された少なくとも1つのホゾ2を有する。
図2に示すように、磁気センタリング装置は、時計ムーブメントの動作時に回転するよう意図されるシャフト1の両端のホゾ2、3の各側に位置決めされる2つの磁気軸受20、30を有することが好ましい。2つの磁気軸受20、30は、磁気引力を利用してシャフト1をその回転のための所定の軸上に保持する機能を有する。
【0017】
この
図2において、第1の磁気軸受20は、シャフト1の第1端のホゾ2から順に、ルビーで構成され得る少なくとも1つの第1のテン真受石10と、第1の受石の上で中心に位置するように位置決めされる軟質強磁性材料で構成された第1のパッド4であり得る第1の中央部4と、を有する。第1のパッド4は、例えば、受石10上で中心位置に位置決めされる。第1のパッド4は、黄銅のような非磁性材料で構成された第1のワッシャ8またはブッシュの中央開口に挿入または押入または接着される。第1のワッシャ8と磁場をセンタリングするための第1のパッド4とを有するアセンブリの直上に、第1のワッシャ8と同じ直径を有し得る少なくとも1つの第1の磁石6を位置決めする。この永久磁石は、例えば、ネオジム−鉄−ホウ素で構成することができる。シャフト1を所定の軸上にセンタリングするための第1の強磁性ホゾ2の径方向引力を高めるために、第1の磁石6によって発生する界磁磁束は、第1のパッド4を通過するようにリセンタリングされる。この所定の軸は、通常は、時計ムーブメントの動作時に回転するシャフト1の軸である。
【0018】
図2において、磁気センタリング装置は、さらに、シャフト1の第1端のホゾ2と反対の第2端のホゾ3に対面して位置決めされる第2の磁気軸受30を有することが好ましい。第2の磁気軸受30は、第2端のホゾ3から順に、ルビーで構成され得る少なくとも1つの第2のテン真受石11と、第2の受石上の軟質強磁性材料で構成された第2のパッド5であり得る第2の中央部5と、を有する。第2のパッド5は、例えば、第2の受石11上で中心位置に位置決めされる。第2のパッド5は、黄銅のような非磁性材料で構成された第2のワッシャ9またはブッシュの中心位置に挿入または押入または接着される。第2のワッシャ9と磁場をセンタリングするための第2のパッド5とを含むアセンブリの直上に、第2のワッシャ9と同じ直径を有し得る少なくとも1つの第2の磁石7を位置決めする。シャフト1を所定の軸上にセンタリングするための第2の強磁性ホゾ3の径方向引力を高めるために、第2の磁石7によって発生する界磁磁束は、第2のパッド5を通過するようにリセンタリングされる。
【0019】
第1の受石10と第1端のホゾ2との間の空間、または第2の受石11と第2端のホゾ3との間の空間は、0.1mm未満であり、好ましくは0.03mm未満である。これは、シャフト1の寸法、および好ましくは0.15mm程度である1mm未満の直径を有し得る両端のホゾ2、3の寸法に依存する。これにより、第1および第2の永久磁石6、7は、それぞれのパッド4、5を通して各々のホゾ2、3に対して十分な磁気引力を付与する。各々のテン真受石10、11の厚さは、1mm未満であり、好ましくは0.06mm程度である。軟質強磁性材料で構成される中央部またはパッド4、5の各々は、例えば、各端のホゾ2、3の直径と同じ外径、または0〜20%小さい直径を有し得る。
【0020】
ただし、軟質強磁性材料で構成される中央部またはパッド4、5の各々は、例えば、各端のホゾ2、3の直径と同じ外径、または0〜20%大きい直径を有し得ることも想定できる。
【0021】
各々の磁気軸受20、30がこのように配置されると、各部品の取り付けは容易となって、シャフト1の両端のホゾ2、3を所定の軸上に保持するように、各々の磁石の磁束をより良好にリセンタリングすることが可能となる。磁石6、7によって発生する磁束は、2〜3倍にリセンタリングされる。
【0022】
また、各々の中央部またはパッド4、5ならびにシャフト1は、軟質強磁性材料のような高透磁率の材料で形成することができるということにも留意すべきである。その軟質強磁性材料は、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、シリコン、鉄−コバルト合金、ニッケル−コバルト合金、または鉄−ニッケル合金、から選択することができる。一実施形態では、その材料は、リンの割合が11%以下であるニッケル−リンであり得る。他の変形例によれば、磁束センタリング要素は、5kA/m未満の保磁力H
C、0.5T超の飽和磁束密度、1000以上の最大透磁率μ
Rを特徴とする軟質磁性材料で、全体を構成することができる。他の変形例によれば、その材料は、硬質磁性材料とすることもできる。
【0023】
図3は、本発明による磁気センタリング装置を備えた時計ムーブメントの一部分の断面を示している。この
図3は、より完全な第1の磁気軸受20と、第1の磁気軸受20によって所定の軸上に磁気的に保持されるシャフト1の第1端のホゾ2と、を主に示している。
【0024】
第1の磁気軸受20は、第1の支持体22を有し、これは、第1端のホゾ2の直径よりも大きい直径を有する開口部23を有する基部を、第1端のホゾ2の側に含む。第1の磁気軸受20は、回転する第1端のホゾ2を支持および案内するように配置されている。第1端のホゾ2は、第1の支持体22の開口部23に、直接接触することなく貫通している。また、第1の支持体22は、第1の台枠21を位置決めするようにも設計されている。この目的のため、第1の台枠21は、第1の支持体22の内側上部に位置決めされる弾性手段24によって、第1の支持体22内の逆円錐形状の座部に保持されている。第1の支持体22は、環状リムを有する回転部品である。
【0025】
また、第1の磁気軸受20は、第1の台枠21内に、上から順に、第1の上側受石12と、第1の永久磁石6と、第1の磁石6によって発生する界磁磁束のセンタリングのための第1の中央部またはパッド4であって、第1の非磁性ワッシャまたはブッシュ8に押入された第1のパッド4と、第1のテン真受石10と、を有している。第1端のホゾ2は、軟質強磁性材料で構成された第1のパッド4を通過する界磁磁束の引力によって、適切にセンタリングされて、引き付けられる。
【0026】
第1の上側受石12は、台枠21の頂部を閉じるとともに、第1の上側受石12の外径と同じ外径を有する第1の磁石6のための支持体として機能するように配置されている。また、第1のワッシャ8も、第1の永久磁石6の外径と同じ外径を有する。第1のテン真受石10は、第1のワッシャ8の直径よりも小さい直径を有し、第1端のホゾ2の側で、第1のワッシャ8の下部中央の空洞内に固定されている。この第1のテン真受石10は、第1端のホゾ2のための支持面を有する。
【0027】
また、軸方向の衝撃を受けた場合には、第1端のホゾ2は、第1のテン真受石10を押すことができ、そして、そのテン真受石を含む第1の台枠21は、上方に退避することができるということにも留意すべきである。弾性手段24によって、第1の台枠21は、その初期位置に戻されることが可能となる。第1端のホゾ2が受けた衝撃に伴って径方向の変位が生じた場合には、第1の支持体の開口部23によって、その変位を制限することが可能となる。
【0028】
第1の磁気軸受20のみについて、
図3を参照して説明したが、第1端のホゾ2と反対の第2端のホゾ3の側に、第2の磁気軸受30を設けることができる。この第2の磁気軸受は、第1の磁気軸受と同じ構成要素(図示せず)を有する。
【0029】
第2の磁気軸受は、第2端のホゾのための開口部を有する第2の支持体を有し、この第2の支持体内に、弾性手段によって第2の台枠が保持されている。また、第2の台枠は、下から順に、第2の下側受石と、第2の永久磁石と、第2の磁石によって発生する界磁磁束のセンタリングのための第2の中央部またはパッドであって、第2の非磁性ワッシャまたはブッシュに押入された第2のパッドと、第2端のホゾのための第2のテン真受石と、を有している。
【0030】
第1の磁気軸受および第2の磁気軸受を配置することにより、それらの磁石の、強磁性パッドを通過する磁束の最大磁気引力によって、シャフトの第1端および第2端のホゾを平衡状態で中心に保持する。
【0031】
また、シャフトの第1端および第2端のホゾの過度の径方向変位を防ぐために、第1と第2のテン真受石10、11のそれぞれ支持面は、球面キャップのような凹形状を有し得るということにも留意すべきである。
【0032】
当業者であれば、上記の説明に基づき、請求項で規定する本発明の範囲から逸脱することなく、時計ムーブメントにおいて所定の軸上にシャフトをセンタリングするための磁気装置のいくつかの変形実施形態を想定することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 シャフト
2 (シャフトの)第1端のホゾ
3 (シャフトの)第2端のホゾ
4 第1の中央部(第1のパッド)
5 第2の中央部(第2のパッド)
6 第1の磁石
7 第2の磁石
8 第1のワッシャ(ブッシュ)
9 第2のワッシャ(ブッシュ)
10 第1のテン真受石
11 第2のテン真受石
12 第1の上側受石
20 第1の磁気軸受
21 第1の台枠
22 第1の支持体
23 (第1の支持体の)開口部
24 弾性手段
30 第2の磁気軸受
H
C 保磁力
μ
R 最大透磁率
1 シャフト(先行技術)
2 ホゾ(先行技術)
3 ホゾ(先行技術)
4 磁石(先行技術)
6 磁石(先行技術)
18A 支持面(先行技術)
19A 支持面(先行技術)
40 台枠(先行技術)
44 台枠(先行技術)