特許第6616483号(P6616483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6616483
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20191125BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   A61H3/00 B
   B25J11/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-218653(P2018-218653)
(22)【出願日】2018年11月21日
【審査請求日】2018年11月21日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592100083
【氏名又は名称】BX新生精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓也
(72)【発明者】
【氏名】船石 睦雅
(72)【発明者】
【氏名】永野 大輔
【審査官】 家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−35372(JP,A)
【文献】 特開2005−177420(JP,A)
【文献】 特開2012−200828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
B25J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の脚部に装着される脚部装着部と、
人体の胴部に装着される胴部装着部と、
前記脚部装着部と前記胴部装着部とを軸線回りに互いに相対回転が可能となるように連結する連結部と、
前記軸線回りに前記脚部装着部と一体に回転する脚部側回転部と、
前記軸線回りに前記胴部装着部と一体に回転する胴部側回転部と、
前記軸線回りに回転する第一独立回転部と第二独立回転部と、を備え、
前記脚部側回転部は、前記軸線回りにおいて前記胴部側回転部を基準として、前記第一独立回転部と接触しない所定の無接触角度範囲と、前記無接触角度範囲の一端側に連続し前記第一独立回転部と接触する所定の接触角度範囲と、を回転移動可能であり、
前記第一独立回転部は、前記接触角度範囲の前記無接触角度範囲側の端部から前記無接触角度範囲と反対側にかけて所定の独立角度範囲を回転移動可能であり、
前記第二独立回転部は、前記胴部側回転部に接触してそれ以上回転移動できないことにより、一体に回転移動する前記第一独立回転部が前記無接触角度範囲の方へ回転移動できないようにするものであり、
前記第一独立回転部を前記無接触角度範囲側に向けて弾性力を付与する弾性部材が設けられることを特徴とするアシスト装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記軸線回りに重なるように配置される複数のコイルバネからなることを特徴とする請求項1記載のアシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚部装着部及び胴部装着部を備えるアシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業用補助具が知られている(例えば特許文献1参照)。作業用補助具は、地面に接地するベース機構と、ベース機構により支持される吊り機構と、ベース機構と吊り機構とを所定の可動域で回動可能に連結する連結部と、を備える。
【0003】
ベース機構は、作業者の大腿部に沿う第1フレームと、作業者の下腿部に沿う第2フレームと、作業者の足に装着される底部と、を有し、作業者の左右側に、脚の屈伸運動を阻害しないように配される。
【0004】
吊り機構は、作業者の背面側に配される吊りフレームと、作業者の上体を吊りフレームに装着するベルトと、を有する。
【0005】
連結部には、連結部の回転をある角度以上回転しないように規制する規制手段が設けられ、吊り機構が傾倒してベース機構の連結部分に対して180度の状態から所定の角度まで回転すると、吊り機構の傾倒を規制する規制手段により、それ以上回転できなくなる。吊り機構は、連結部での回転が規制された状態で、作業者の上体を吊る。これにより作業者がある程度腰を曲げると、所定の位置で吊り機構の回転が止まり、作業者を支えることができる。作業者は自身の体重を吊り機構に預けて作業をすることができ、肉体的な負担を軽減することができる。
【0006】
また、連結部は、吊り機構が作業者の腰を曲げる動きに連動して傾倒した場合に、作業者を起き上がらせる方向に吊り機構を付勢する弾性部材を有してよい。これにより作業者が前屈姿勢から上体を起こす動作を補助することができる。この弾性部材は、吊り機構とベース機構が垂直な状態、すなわち、作業者が起立した状態では弾性力がゼロとなるように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−200828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された作業用補助具にあっては、作業者が起立した状態では弾性力がゼロとなり、大腿部に対して上体が傾斜する状態では、傾斜角度に応じて弾性力がかかってしまう。このため、歩く場合等、アシスト力が不要な場合においても、弾性部材からの弾性力が吊り機構に付勢されてしまい、大腿部と上体との間に不要なアシスト力がかかって、歩く動作等がしにくいものであった。
【0009】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、脚部装着部が胴部装着部に対して所定の角度範囲にある場合には、弾性力が付与されないアシスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る一形態のアシスト装置は、脚部装着部と、胴部装着部と、連結部と、脚部側回転部と、胴部側回転部と、第一独立回転部と、第二独立回転部と、を備える。前記脚部装着部は、人体の脚部に装着される。前記胴部装着部は、人体の胴部に装着される。前記連結部は、前記脚部装着部と前記胴部装着部とを軸線回りに互いに相対回転が可能となるように連結する。前記脚部側回転部は、前記軸線回りに前記脚部装着部と一体に回転する。前記胴部側回転部は、前記軸線回りに前記胴部装着部と一体に回転する。前記第一独立回転部と第二独立回転部は、前記軸線回りに回転する。
【0011】
前記脚部側回転部は、前記軸線回りにおいて前記胴部側回転部を基準として、所定の無接触角度範囲と、所定の接触角度範囲と、を回転移動可能である。前記無接触角度範囲は、前記脚部側回転部が、前記第一独立回転部と接触しない角度範囲である。前記接触角度範囲は、前記脚部側回転部が、前記無接触角度範囲の一端側に連続し前記第一独立回転部と接触する角度範囲である。前記第一独立回転部は、前記接触角度範囲の前記無接触角度範囲側の端部から前記無接触角度範囲と反対側にかけて所定の独立角度範囲を回転移動可能である。前記第二独立回転部は、前記胴部側回転部に接触してそれ以上回転移動できないことにより、一体に回転移動する前記第一独立回転部が前記無接触角度範囲の方へ回転移動できないようにするものである。前記アシスト装置には、前記第一独立回転部を前記無接触角度範囲側に向けて弾性力を付与する弾性部材が設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る一形態のアシスト装置にあっては、脚部側回転部が無接触角度範囲にある場合には、脚部側回転部に弾性部材からの弾性力が付与されない。このため、脚部装着部が胴部装着部に対して所定の角度範囲にある場合、すなわち、脚部側回転部が無接触角度範囲にある場合には、アシスト装置を装着する者は、弾性力を受けることなく歩く動作等ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るアシスト装置の全体斜視図である。
図2図2は、同上のアシスト装置の正面図である。
図3図3は、同上のアシスト装置の側面図である。
図4図4は、同上のアシスト装置の左側の連結部近傍の側断面図である。
図5図5は、同上の左側の連結部、脚部側連結部、胴部側連結部の斜め前方より見た分解斜視図である。
図6図6は、同上の左側の連結部、脚部側連結部、胴部側連結部の斜め後方より見た分解斜視図である。
図7図7は、同上の左側の脚部側回転部、胴部側回転部及び独立回転部の位置関係を説明する正面図である。
図8図8は、同上の左側の脚部側回転部、胴部側回転部及び独立回転部の位置関係を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アシスト装置に関し、さらに詳しくは、脚部装着部及び胴部装着部を備えるアシスト装置に関する。以下、本発明に係るアシスト装置の一実施形態について、図1図8に基いて説明する。
【0015】
アシスト装置は、身体機能が低下した高齢者、病気や事故等により障害を負った障害者、あるいは、健常者で、荷物等を持ち上げる作業者が装着する。以下の説明においては、アシスト装置を装着する者が作業者であるとして説明するが、アシスト装置は、高齢者、障害者又は作業者のみが装着するものではない。すなわち、アシスト装置は、健常者であって荷物等を持ち上げない者が装着してもよく、装着者は限定されない。
【0016】
アシスト装置は、主に、作業者が、胴部を前側に傾倒させて手や腕で荷物等をつかんだ後、胴部を起立させて荷物等を持ち上げる動作をアシストする。ここで、アシストとは、作業者が荷物等を持ち上げるのに要する力が軽減されるように補助することをいう。また、本実施形態では、作業者として、日本人の平均的な成人男性を想定している。
【0017】
図1図4に示すように、アシスト装置1は、脚部装着部2と、胴部装着部3と、脚部装着部2と胴部装着部3とを連結する連結部10と、を備える。
【0018】
脚部装着部2は、作業者の人体の脚部に装着される。本実施形態では、脚部装着部2が装着される部分として、大腿部が想定されているが、脚部装着部2が装着される脚部の部位としては、膝部、下腿部又は足部であってもよい。アシスト装置1は、脚部装着部2として、作業者の右側の脚部に装着される右側の脚部装着部2と、左側の脚部に装着される左側の脚部装着部2と、をそれぞれ備える。ここで、図1図3に示すように、前後左右上下を規定する。すなわち、アシスト装置1を装着した作業者からみた前後左右上下を、アシスト装置1の前後左右上下とする。脚部装着部2は、アシスト力の伝達のための力を受ける主体となる脚部装着本体部21と、作業者の脚部が脚部装着本体部21から離脱するのを抑える脚部拘束部22と、脚部側連結部23と、を有する。
【0019】
脚部装着本体部21は、ロッド部材210からなる。ロッド部材210は、SUSやアルミニウムをはじめとする金属により形成される。ロッド部材210は、作業者の大腿部の外側の側面に沿うように装着される。ロッド部材210は、直線状に伸びる角棒状をしたものである。ロッド部材210の長さは、概ね作業者の大腿部の長さとなっている。ロッド部材210の幅は、大腿部の径よりも短い長さで、3cm、5cm、10cm等、概ね3〜10cmである。ロッド部材210の厚みは、ロッド部材210の幅よりも短い長さで、3mm、5mm、10mm等、概ね3〜10mmである。なお、ロッド部材210の材質、長さ、幅及び厚みは上記材質、長さ、幅及び厚みに限定されない。
【0020】
脚部拘束部22は、前側から脚部に当たる前拘束部221と、後側から脚部に当たる後拘束部222と、を有する。前拘束部221は、ロッド部材210の下端部に設けられる。前拘束部221は、ロッド部材210から前側に向けて伸び、途中で内側(右側の脚部装着部2においては左側、左側の脚部装着部2においては右側)に湾曲している。前拘束部221は、平面視において作業者の膝部の直上の前大腿部に沿う概ね半円弧状をなし、この前大腿部に沿う曲率半径を有している。前拘束部221は、SUSやアルミニウムをはじめとする金属により形成される。前拘束部221の幅(上下方向長さ)は、3cm、5cm、10cm等、概ね3〜10cmである。前拘束部221の厚みは、1mm、3mm等、概ね1〜3mmである。なお、前拘束部221の材質、長さ、幅及び厚みは上記材質、長さ、幅及び厚みに限定されない。
【0021】
後拘束部222は、ロッド部材210の上端部に設けられる。後拘束部222は、ロッド部材210から後側に向けて伸び、途中で内側に湾曲している。後拘束部222は、平面視において作業者の脚部の付け根の後大腿部に沿う概ね1/4円弧状をなし、この後大腿部に沿う曲率半径を有している。後拘束部222は、SUSやアルミニウムをはじめとする金属により形成される。後拘束部222の幅(上下方向長さ)は、5cm、10cm、15cm等、概ね5〜15cmである。後拘束部222の厚みは、2mm、5mm等、概ね2〜5mmである。なお、後拘束部222の材質、長さ、幅及び厚みは上記材質、長さ、幅及び厚みに限定されない。
【0022】
脚部側連結部23は、連結部10により、後述する胴部側連結部33と回転可能に連結される。本実施形態では、脚部側連結部23は、脚部装着本体部21と回転可能に連結される。脚部側連結部23の下端部及び脚部装着本体部21の上端部には、軸線が前後方向を向く軸部24が通る軸孔がそれぞれ形成されており、この軸孔に軸部24が通されて連結される。脚部装着本体部21は、脚部側連結部23に対して、左右方向に回転可能となる。これにより、アシスト装置1を装着した作業者が、胴部に対して脚部を左右に回転しやすくなる。
【0023】
胴部装着部3は、作業者の人体の胴部に装着される。本実施形態では、胴部装着部3が装着される部分として、腰部及び背部が想定されているが、胴部装着部3が装着される胴部の部位としては、腰部及び背部に替えてあるいは腰部及び背部に加えて、臀部であってもよい。胴部装着部3は、アシスト力の伝達のための力を受ける主体となる胴部装着本体部31と、作業者の胴部が胴部装着本体部31から離脱するのを抑える胴部拘束部と、胴部側連結部33と、を有する。
【0024】
胴部装着本体部31は、フレーム310からなる。フレーム310は、SUSやアルミニウムをはじめとする金属により形成される。フレーム310は、作業者の胴部(腰部及び背部)の後側の側面に沿うように装着される。フレーム310は、右側に位置して上下方向に直線状に伸びる右縦片311、左側に位置して上下方向に直線状に伸びる左縦片312、右縦片311と左縦片312とをつなぐ、左右方向に直線状に伸びる上横片313及び下横片314を有する。
【0025】
上横片313及び下横片314は、左右方向の長さは概ね作業者の肩幅と同じである。上横片313及び下横片314は、SUSやアルミニウムをはじめとする金属により形成される。上横片313及び下横片314の幅(上下方向長さ)は、5cm、10cm、15cm等、概ね5〜15cmである。上横片313及び下横片314の厚みは、2mm、5mm等、概ね2〜5mmである。なお、上横片313及び下横片314の材質、長さ、幅及び厚みは上記材質、長さ、幅及び厚みに限定されない。
【0026】
上横片313は、アシスト装置1が作業者に装着された状態で、作業者の背部に位置するように設定される。上横片313は、右縦片311の上端部と左縦片312の上端部とをつなぐ。下横片314は、アシスト装置1が作業者に装着された状態で、作業者の腰部に位置するように設定される。下横片314は、右縦片311の下端部と左縦片312の下端部とをつなぐ。上横片313又は下横片314と、右縦片311又は左縦片312とは、溶接、ビス止め等、従来公知の適宜手段により接続され、接続方法は限定されない。
【0027】
胴部拘束部は、本実施形態では、図示しないが、フレーム310と胴部とを束ねて固定するバンドである。
【0028】
胴部側連結部33は、連結部10により、脚部側連結部23と回転可能に連結される。本実施形態では、胴部側連結部33は、内部に連結部10と脚部側連結部23の下端部を除く部分を収容する、側面視円形状をした内カバー体330を有する。この内カバー体330が胴部装着本体部31の下端部にビス止めにより固定されることにより、胴部側連結部33と胴部装着本体部31とが一体的に連結される。
【0029】
図4図6に示すように、連結部10は、脚部装着部2と胴部装着部3とを、左右方向を向く軸線回りに互いに相対回転が可能となるように連結する。なお、図4図6には、左側の連結部10、脚部側連結部23及び胴部側連結部33を示している。
【0030】
本実施形態では、連結部10は、脚部側連結部23と胴部側連結部33とを、相対回転が可能となるように連結する。連結部10は、軸線が左右方向を向く連結軸101を有する。脚部側連結部23の上端部には、連結軸101が通る脚部側連結軸孔231が形成されている。胴部側連結部33は、内部に筒部を有しており、この内部が、連結軸101が通る胴部側連結軸孔331となっている。脚部側連結軸孔231と胴部側連結軸孔331とに連結軸101が通されて、脚部側連結部23と胴部側連結部33とが相対回転可能に連結される。更に詳しくは、胴部側連結軸孔331の内部には、脚部側連結部23の脚部側連結軸孔231の周囲の筒部が通されている。なお、連結軸101は、脚部側連結部23と胴部側連結部33のうちの一方に固定されてもよいし、脚部側連結部23と胴部側連結部33のいずれにも固定されなくてもよい。
【0031】
また、アシスト装置1は、脚部側回転部4と、胴部側回転部5と、独立回転部6と、を備える。
【0032】
脚部側回転部4は、連結軸101の軸線回りに脚部装着部2と一体に回転する。本実施形態では、脚部側回転部4は、ブロック状をしており、連結軸101の軸線から連結軸101の径外方向に所定長さ離れた位置に、脚部側連結部23と一体的に設けられる。
【0033】
胴部側回転部5は、連結軸101の軸線回りに胴部装着部3と一体に回転する。本実施形態では、胴部側回転部5は、ブロック状をしており、連結軸101の軸線から連結軸101の径外方向に脚部側回転部4と同様の所定長さ離れた位置に、胴部側連結部33と一体的に設けられる。胴部側回転部5は、連結軸101の軸線回りの二箇所にそれぞれ設けられている。なお、胴部側回転部5は、連結軸101の軸線回りの一箇所のみ又は三以上の箇所に設けられてもよい。
【0034】
独立回転部6は、連結軸101の軸線回りに脚部装着部2及び胴部装着部3とは独立して回転する。本実施形態では、胴部側連結部33の内カバー体330に沿う円板部71及び側筒部72を有する独立回転体7が外カバー体70内に収容される。外カバー体70は、側面視円形状をした天壁部と、軸線回りを囲む側壁部と、を有する。外カバー体70は、独立回転体7と一体的に設けられる。本実施形態では、独立回転体7は、外カバー体70の天壁部に対して、ボルト止め等により固定される。
【0035】
また、外カバー体70の側壁部に隣接して、中間カバー体230が設けられる。中間カバー体230は、外カバー体70の側壁部と同様に軸線回りを囲む側壁部を有する。中間カバー体230は、脚部側連結部23と一体的に設けられる。本実施形態では、脚部側連結部23は、中間カバー体230に対して、ボルト止め等により固定される。
【0036】
内カバー体330、中間カバー体230及び外カバー体70により、連結部10、脚部側回転部4、胴部側回転部5、独立回転部6及び後述する弾性部材8を収容するカバーが構成される。
【0037】
円板部71の中央に、連結軸101が通る独立回転側連結軸孔73が形成されている。独立回転側連結軸孔73に連結軸101が通されることにより、独立回転体7は、脚部側連結部23と胴部側連結部33とに対してそれぞれ相対回転可能に連結される。本実施形態では、独立回転部6は、ブロック状をしており、連結軸101の軸線から連結軸101の径外方向に脚部側回転部4及び胴部側回転部5と同様の所定長さ離れた位置に、独立回転体7と一体的に設けられる。独立回転部6は、連結軸101の軸線回りの二箇所にそれぞれ第一独立回転部61と第二独立回転部62とが設けられている。
【0038】
以下、脚部側回転部4、胴部側回転部5及び独立回転部6の位置関係を基に、アシスト装置1の動作について説明する。
【0039】
図1図3に示すように、脚部装着部2と胴部装着部3とが、側面視において一直線状に位置している状態で、脚部側回転部4、胴部側回転部5及び独立回転部6の位置関係は図7に示す状態となる。第二独立回転部62は、胴部側回転部5に接触している。なお、後述するが、第二独立回転部62は、胴部側回転部5に接触する方向に弾性力が付与されている。
【0040】
脚部側回転部4は、連結軸101の軸線回りにおいて胴部側回転部5を基準として、所定の無接触角度範囲11を回転移動可能である。以下の説明においては、便宜上、連結軸101の軸線回りにおける脚部側回転部4の角度位置とは、脚部側回転部4の前端部40の角度位置をいうものとする。
【0041】
図8に示すように、無接触角度範囲11は、脚部側回転部4が第一独立回転部61と接触する角度位置と、脚部側回転部4が第二独立回転部62と接触する角度位置の間の角度範囲となる。すなわち、無接触角度範囲11は、脚部側回転部4が、独立回転部6と接触しない角度範囲である。
【0042】
また、脚部側回転部4は、無接触角度範囲11の一端側に連続する所定の接触角度範囲12を回転移動可能である。接触角度範囲12は、脚部側回転部4が第一独立回転部61と接触する角度位置から、無接触角度範囲11と反対側に伸びる角度範囲である。すなわち、接触角度範囲12は、独立回転部6と接触する角度範囲である。無接触角度範囲11の終端は、特に限定されない。
【0043】
また、第一独立回転部61は、接触角度範囲12の無接触角度範囲11側の端部から無接触角度範囲11と反対側にかけて所定の独立角度範囲13を回転移動可能である。便宜上、連結軸101の軸線回りにおける第一独立回転部61の角度位置とは、第一独立回転部61の後端部60の角度位置をいうものとする。第二独立回転部62が胴部側回転部5に接触してそれ以上後方へ回転移動できないため、第一独立回転部61は無接触角度範囲11の方へは回転移動できない。独立角度範囲13の終端は、特に限定されない。
【0044】
次に、アシスト装置1に設けられる弾性部材8について説明する。図4図6には、弾性部材8は、独立回転部6を無接触角度範囲11側に向けて弾性力を付与する。本実施形態では、弾性部材8は、胴部側連結部33と独立回転体7との間に弾性力を付与する。弾性部材8は、連結軸101の軸線回りに位置する第一コイルバネ81〜第五コイルバネ85からなる。図5に示すように、各コイルバネ81〜85の一端部は、胴部側連結部33に形成された孔332に引っ掛けられて胴部側連結部33に固定され、各コイルバネ81〜85の他端部は、独立回転体7の円板部71に形成された孔74に引っ掛けられて円板部71に固定される。図4に示すように、第一コイルバネ81は、最も内側(すなわち連結軸101の径方向における中心側)に位置する。第一コイルバネ81のすぐ外側に第二コイルバネ82が位置し、第二コイルバネ82のすぐ外側に第三コイルバネ83が位置し、第三コイルバネ83のすぐ外側に第四コイルバネ84が位置し、第四コイルバネ84のすぐ外側に第五コイルバネ85が位置している。このように、各コイルバネ81〜85を連結軸101の径方向に重なるように配置することにより、小さなスペースに多くの弾性部材8を配置して、大きな弾性力を発生させることができる。図7に示す状態において、第二独立回転部62は、所定の弾性力で胴部側回転部5に押されている。
【0045】
脚部側回転部4の角度位置が、無接触角度範囲11内にあるときは、脚部側回転部4は第一独立回転部61及び第二独立回転部62から力を受けることがなく、ほぼ無負荷で回転移動が可能である。無接触角度範囲11は、例えば15度、30度、45度、60度、90度、120度等、適宜決められる。
【0046】
脚部側回転部4が、接触角度範囲12内に進入しようしても、脚部側回転部4が第一独立回転部61を押す力が、第一独立回転部61が胴部側回転部5に押されている弾性力以下である場合、脚部側回転部4の回転移動は第一独立回転部61により規制される。
【0047】
脚部側回転部4が第一独立回転部61を押す力が、第一独立回転部61が胴部側回転部5に押されている弾性力を超えると、図8に示すように、脚部側回転部4が第一独立回転部61を押す力に応じて、脚部側回転部4が接触角度範囲12内に進入する。更に詳しくは、脚部側回転部4が第一独立回転部61を押す力が第一独立回転部61が胴部側回転部5に押されている弾性力を超えた分の力に比例した角度だけ、脚部側回転部4が接触角度範囲12内に進入する。
【0048】
上述したアシスト装置1にあっては、図7に示すように、脚部側回転部4が無接触角度範囲11にある場合には、脚部側回転部4に弾性部材8からの弾性力が付与されない。このため、脚部装着部2が所定の角度範囲にある場合、すなわち、脚部側回転部4の角度位置が無接触角度範囲11にある場合には、アシスト装置1を装着する者は、弾性力を受けることなく歩く動作等ができる。
【0049】
作業者が胴部を前側に傾倒させて、脚部側回転部4が第一独立回転部61を押す力が第一独立回転部61が胴部側回転部5に押されている弾性力を超えると、図8に示すように脚部側回転部4が接触角度範囲12内に進入し、脚部側回転部4が第一独立回転部61を押すのと同じ弾性力を胴部が受けることになる。これにより、作業者は、胴部を前側に傾倒させて手や腕で荷物等をつかんだ後、胴部を起立させて荷物等を持ち上げる動作を行う際に、弾性力を受けて、荷物等を持ち上げる動作がアシストされる。
【0050】
なお、アシスト装置1の装着者として想定される作業者は、日本人の平均的な成人男性に限定されず、作業者の国籍、年齢及び性別が限定されないのは勿論のこと、作業者の体格等の身体的特徴も限定されない。すなわち、本発明に係るアシスト装置1は、あらゆる作業者の身体的特徴に対応することが可能であり、作業者の身体的特徴に応じてサイズ等を適宜変更した設計とすることが好ましい。
【0051】
脚部装着部2としては、少なくとも右側の脚部装着部2と左側の脚部装着部2のうちの一方があればよい。
【0052】
ロッド部材210は、直線状に伸びず、曲がっていてもよく、形状は限定されない。また、ロッド部材210は、角棒状ではなく丸棒状でもよく、長手方向と直交する断面における形状は限定されない。
【0053】
脚部拘束部22としては、前拘束部221及び後拘束部222を有するものではなく、例えばロッド部材210と大腿部とを束ねて固定するバンド等であってもよく、脚部拘束部22は特に限定されない。脚部拘束部22が例えばバンドである場合、アシスト装置1に付属するものではなく、作業者が持ち寄る任意の脚部拘束部22が利用可能である。
【0054】
前拘束部221は、半円弧状ではなくてもよいし、湾曲していなくてもよく、前拘束部221の形状は限定されない。前拘束部221が設けられる位置は、ロッド部材210の下端部でなくてもよく、ロッド部材210の上端部や上下方向の中間部であってもよい。
【0055】
後拘束部222は、1/4円弧状ではなくてもよいし、湾曲していなくてもよく、後拘束部222の形状は限定されない。後拘束部222が設けられる位置は、ロッド部材210の上端部でなくてもよく、ロッド部材210の下端部や上下方向の中間部であってもよい。
【0056】
上横片313は、アシスト装置1が作業者に装着された状態で、作業者の腰部に位置するように設定されてもよい。下横片314は、アシスト装置1が作業者に装着された状態で、作業者の臀部又は背部に位置するように設定されてもよい。上横片313及び下横片314の上下方向における位置は、特に限定されない。
【0057】
胴部装着本体部31は、右縦片311、左縦片312、上横片313及び下横片314を有するフレーム310に限定されない。
【0058】
胴部拘束部は、アシスト装置1に付属するものであっても勿論よいし、アシスト装置1に付属するものではなくてもよく、作業者が持ち寄る任意の胴部拘束部が利用可能である。
【0059】
脚部側連結部23、胴部側連結部33、連結部10、脚部側回転部4、胴部側回転部5、独立回転部6、独立回転体7及び弾性部材8は、SUSやアルミニウムをはじめとする金属により形成されるが、材質は特に限定されない。
【0060】
弾性部材8を構成するコイルバネの個数は、一個、二個、三個、四個、六個等でもよく、特に限定されない。
【0061】
以上、述べた一実施形態およびその変形例から明らかなように、第1の態様のアシスト装置1は、脚部装着部2と、胴部装着部3と、連結部10と、脚部側回転部4と、胴部側回転部5と、独立回転部6と、を備える。脚部装着部2は、人体の脚部に装着される。胴部装着部3は、人体の胴部に装着される。連結部10は、脚部装着部2と胴部装着部3とを軸線回りに互いに相対回転が可能となるように連結する。脚部側回転部4は、軸線回りに脚部装着部2と一体に回転する。胴部側回転部5は、軸線回りに胴部装着部3と一体に回転する。独立回転部6は、軸線回りに脚部装着部2及び胴部装着部3とは独立して回転する。
【0062】
脚部側回転部4は、軸線回りにおいて胴部側回転部5を基準として、所定の無接触角度範囲11と、所定の接触角度範囲12と、を回転移動可能である。無接触角度範囲11は、脚部側回転部4が、胴部装着部3及び独立回転部6と接触しない角度範囲である。接触角度範囲12は、脚部側回転部4が、無接触角度範囲11の一端側に連続し独立回転部6と接触する角度範囲である。独立回転部6は、接触角度範囲12の無接触角度範囲11側の端部から無接触角度範囲11と反対側にかけて所定の独立角度範囲13を回転移動可能である。アシスト装置1には、独立回転部6を無接触角度範囲11側に向けて弾性力を付与する弾性部材8が設けられる。
【0063】
第1の態様によれば、脚部側回転部4の角度位置が無接触角度範囲11にある場合には、アシスト装置1を装着する者は、弾性力を受けることなく歩く動作等ができる。
【0064】
第2の態様では、第1の態様との組み合わせにより実現される。第2の態様では、弾性部材8は、軸線回りに重なるように配置される複数のコイルバネ81〜85からなる。
【0065】
第2の態様によれば、小さなスペースに多くのコイルバネ81〜85を配置して、大きな弾性力を発生させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 アシスト装置
10 連結部
11 無接触角度範囲
12 接触角度範囲
13 独立角度範囲
2 脚部装着部
3 胴部装着部
4 脚部側回転部
5 胴部側回転部
6 独立回転部
8 弾性部材
【要約】
【課題】脚部装着部が胴部装着部に対して所定の角度範囲にある場合には、弾性力が付与されないアシスト装置を提供する。
【解決手段】アシスト装置は、脚部装着部と、胴部装着部と、連結部と、脚部側回転部4と、胴部側回転部5と、独立回転部6と、を備える。連結部は、脚部装着部と胴部装着部とを軸線回りに相対回転可能に連結する。脚部側回転部4は、所定の無接触角度範囲11と、所定の接触角度範囲12と、を回転移動可能である。無接触角度範囲11は、脚部側回転部4が、独立回転部6と接触しない角度範囲である。接触角度範囲12は、脚部側回転部4が、無接触角度範囲11の一端側に連続し独立回転部6と接触する角度範囲である。第一独立回転部61は、独立角度範囲13を回転移動可能である。アシスト装置1には、独立回転部6を無接触角度範囲11側に向けて弾性力を付与する弾性部材8が設けられる。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8