特許第6616503号(P6616503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6616503内視鏡的臓器マニピュレーションデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616503
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】内視鏡的臓器マニピュレーションデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
   A61B17/02
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-522721(P2018-522721)
(86)(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公表番号】特表2019-500924(P2019-500924A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】US2016059846
(87)【国際公開番号】WO2017079124
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年6月14日
(31)【優先権主張番号】62/250,081
(32)【優先日】2015年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/338,759
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シー.キーチ
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン ケー.ムーニー
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/112615(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0202077(US,A1)
【文献】 特開2006−087630(JP,A)
【文献】 特表2007−523686(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0143713(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00−17/04
A61B 17/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い形態から展開形態へ推移するように形成された引き込みガイドワイヤであって、前記引き込みガイドワイヤの前記展開形態が、
ステム部分と、
遠位端及び近位端を有するドーム部分と
を含み、前記ステム部分が前記ドーム部分の遠位端から近位側へ延びており、
前記ドーム部分が、第1側と、前記第1側とは横方向で反対側に画定された第2側とを有しており、さらに、前記ドーム部分が、前記ドーム部分の前記遠位端から前記近位端へ延びる、前記ドーム部分の前記第1側に位置する第1接触ループと、前記ドーム部分の前記遠位端から前記近位端へ延びる、前記ドーム部分の前記第2側に位置する第2接触ループと、を含む、
引き込みガイドワイヤ。
【請求項2】
前記ドーム部分の前記近位端が、臓器の表面に係合するためのほぼ平面的な係合面を画定する、請求項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項3】
前記ドーム部分が、前記ドーム部分の前記近位端に位置するワイヤのアーチ状の延びによって画定された第1足部と、前記ドーム部分の前記近位端に位置するワイヤのアーチ状の延びによって画定された第2足部とを含む、請求項1又は2に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項4】
前記ドーム部分が開いた内部領域を画定しており、前記内部領域を通って前記ステム部分が延びている、請求項1〜のいずれか一項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項5】
前記ドーム部分と前記ステム部分とが係止配列を成して相互結合されており、前記係止配列が、前記引き込みガイドワイヤの複数の交差セグメントを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項6】
前記ステム部分が近位方向に引き込まれる結果として、前記ドーム部分の遠位端に位置する前記引き込みガイドワイヤの複数の交差セグメントに圧縮力が加えられるように、前記ドーム部分が前記ステム部分から延びている、請求項1〜のいずれか一項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項7】
前記引き込みガイドワイヤが遠位端と近位端とを有しており、さらに、前記引き込みガイドワイヤの前記遠位端が前記ドーム部分の前記遠位端に配置されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項8】
前記引き込みガイドワイヤがモノリシックな長さのニッケル−チタンフィラメントとして形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項9】
前記引き込みガイドワイヤの外径が0.8mm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項10】
前記ドーム部分が、前記ステム部分から所定の半径方向距離だけ間隔を置いたアーチ状接触足部を画定している、請求項1〜のいずれか一項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項11】
前記ドーム部分が非外傷性である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の引き込みガイドワイヤ。
【請求項12】
第1端部から第2端部へ延びる引き込みガイドワイヤを製造する方法であって、前記方法が、比較的細長い形態から展開形態へ弾性的に推移するようにフィラメントを処理することを含み、前記展開形態が、ステム部分と、遠位端及び近位端を有するドーム部分とを含み、前記ステム部分が前記ドーム部分の遠位端から近位側へ延びており、
前記展開形態が、係止配列を成して相互結合された前記ドーム部分と前記ステム部分とを含み、前記係止配列が、前記引き込みガイドワイヤの複数の交差セグメントを含むように、前記フィラメントが処理される、方法。
【請求項13】
前記展開形態が、第1側と、前記第1側とは横方向で反対側に画定された第2側とを有する前記ドーム部分を含むように、前記フィラメントが処理され、さらに、前記ドーム部分が、前記ドーム部分の前記遠位端から前記近位端へ延びる、前記ドーム部分の前記第1側に位置する第1接触ループと、前記ドーム部分の前記遠位端から前記近位端へ延びる、前記ドーム部分の前記第2側に位置する第2接触ループと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記展開形態が、臓器の表面に係合するためのほぼ平面的な係合面を画定する前記ドーム部分の近位端を含むように、前記フィラメントが処理される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記展開形態が、前記ドーム部分の前記近位端に位置するワイヤのアーチ状の延びによって画定された第1足部と、前記ドーム部分の前記近位端に位置するワイヤのアーチ状の延びによって画定された第2足部とを含む前記ドーム部分を含むように、前記フィラメントが処理される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記展開形態が、開いた内部領域を画定する前記ドーム部分を含み、前記内部領域を通って前記ステム部分が延びるように、前記フィラメントが処理される、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ステム部分が近位方向に引き込まれる結果として、前記ドーム部分の遠位端に位置する前記引き込みガイドワイヤの複数の交差セグメントに圧縮力が加えられるように、前記展開形態が前記ステム部分から延びる前記ドーム部分を含むように、前記フィラメントが処理される、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記展開形態が遠位端と近位端とを有する前記引き込みガイドワイヤを含むように前記フィラメントが処理され、さらに、前記引き込みガイドワイヤの前記遠位端が前記ドーム部分の前記遠位端に配置される、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記引き込みガイドワイヤがモノリシックな長さのニッケル−チタンフィラメントとして形成される、請求項12〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記フィラメントの外径が前記細長い形態では0.8mm以下である、請求項12〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記展開形態が、前記ステム部分から所定の半径方向距離だけ間隔を置いたアーチ状接触足部を画定する前記ドーム部分を含むように、前記フィラメントが処理される、請求項12〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記展開形態が非外傷性である前記ドーム部分を含むように、前記フィラメントが処理される、請求項12〜21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドレナージは、管腔の閉塞又は狭窄から生じる多くの悪性及び良性の消化器(GI)疾患を取り扱うための一般的な治療アプローチである。いくつかの例としては、限定されないが、総胆管の悪性又は良性胆道閉塞に起因する胆道ドレナージ、悪性又は良性十二指腸狭窄に起因する十二指腸ドレナージ、及び胆石によって誘発される急性胆嚢炎に起因する経乳頭的胆嚢ドレナージが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
外科的技術、経皮的腹腔鏡技術及び内視鏡技術を用いてドレナージを実施することができる。歴史的には、内視鏡ドレナージ技術は一般に、天然管腔の内部ドレナージのみ、例えば経乳頭的ドレナージ又はGI管内部自体のドレナージに制限されている。ドレナージを行うために天然管腔に内視鏡的にアクセスできないならば、患者は経皮的ドレナージのために画像下治療医(interventional radiologist)に委ねられるか、又は最後の手段として外科医に委ねられるのが典型的であった。超音波内視鏡(EUS)における最近の進歩は、経皮的又は外科的ドレナージ技術に代わる、侵襲性のより低い経壁的内部ドレナージ手段(例えば天然管腔の外部に出る)を提供している。
【0003】
経壁的EUS内部ドレナージ用途におけるステントのための現在の送達システムは、天然管腔外部への漏れが生じる結果として重篤な病的状態又は死に至らしめるリスク、並びに送達システムを複雑なものにして手順を煩わしくし多大な時間を費やすリスクを含む、いくつかの難題に直面している。ドレナージデバイスは、種々の臓器の間の内部ドレナージのために使用することができる。考えられる選択肢のうちのいくつかは、十二指腸−総胆管(CBD)、胃−肝臓、胃−空腸、胆嚢−十二指腸、胆嚢−空腸、及び胃−膵臓である。ドレナージシステムの送達及び使用に際して、種々の合併症が生じるおそれがある。例えば、ドレナージシステムの送達中に臓器壁を穿孔する結果、その臓器内部に含まれる内容物が、漏れた内容物に耐えることができない身体部位内に移動することがある。漏れのリスクを軽減するために、穿孔される2つの臓器の壁を強制的に互いに接触させることにより、臓器内容物が一方の臓器から他方の臓器へわたり、意図しない生体構造内へは達しないようにすることができる。様々な処置には、(例えば連続的なリアルタイムの超音波誘導を受けながら)臓器を貫通する、ひいては開孔するための細い針の使用が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の種々の発明態様が、合併症のリスクを軽減する送達メカニズムを促し、そして経壁的処置のためのデバイスの安全且つ効果的な送達を容易にする。本開示のいくつかの態様は、細長い形態から展開形態へ推移するように形成された引き込みガイドワイヤに関連する。展開形態は、ステム部分と、遠位端及び近位端を有するドーム部分とを含み、ステム部分がドーム部分の遠位端から近位側へ延びている。
【0005】
多数の実施態様が開示されているが、本発明の具体的実施態様を図示し記載した下記詳細な説明から、本発明のさらに他の実施態様が当業者には明らかになる。従って、図面及び詳細な説明は、例示のためのものと見なすべきであり、制限的なものとは見なすべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、いくつかの実施態様に基づく引き込みガイドワイヤを展開状態で示す等角図である。
【0007】
図2図2は、いくつかの実施態様に基づく図1の引き込みガイドワイヤを示す側面図である。
【0008】
図3図3は、いくつかの実施態様に基づく図1の引き込みガイドワイヤを示す正面図である。
【0009】
図4図4は、いくつかの実施態様に基づく図1の引き込みガイドワイヤを示す上面図である。
【0010】
図5図5は、いくつかの実施態様に基づく図1の引き込みガイドワイヤを、臓器壁の穿孔(fenestration)を通して展開された、引き込み前の状態で示す等角図である。
【0011】
図6図6は、いくつかの実施態様に基づく図4の引き込みガイドワイヤを、臓器壁の穿孔を通して展開された、引き込み後の状態で示す等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
種々の実施態様が図面に示されているが、図示のものに付加される特徴及び図示のものの代わりとなる特徴が本開示によって提供される。
【0013】
種々の実施態様は、送達システム、例えば内視鏡送達システムのための引き込みガイドワイヤに関する。微細な又は小さな直径から成る引き込みガイドワイヤを使用すると、引き込みガイドワイヤを展開するための細針(例えば中空超音波内視鏡細針)の使用が容易になる。また、臨床医又は他の使用者は、より小さな穿孔を通して引き込みガイドワイヤを展開することができる。いくつかの実施態様では、引き込みガイドワイヤは、交差ワイヤセグメントによって、細長い形態から、逆さカップ形態又は凹状形態とも記載するドーム形態へ展開され、交差ワイヤセグメントは、使用者が細いワイヤで臓器壁にかなりの引き込み力を加えるのを可能にする。このような特徴は様々な用途に利用されるが、いくつかの実施態様では、引き込みガイドワイヤは、外科的処置、例えば経壁的超音波内視鏡(EUS)内部ドレナージ用途との関連において、第1臓器の第1壁を第2臓器の第2壁と接触するように引き付けるために利用される。種々の実施態様は、ニッケル−チタン合金ワイヤ(「NiTiワイヤ」)との関連において説明されるが、種々様々な材料(例えばステンレス鋼又は形状記憶ポリマー)が考えられる。
【0014】
図1は、いくつかの実施態様に基づく引き込みガイドワイヤ20を展開状態で示す等角図である。図示のように、引き込みガイドワイヤ20は、単一のワイヤ、又はフィラメントから形成されており、第1端部22から第2端部24へ延びており、比較的細長い形態(例えば細針内部に保持されるとき)から、臓器壁Wに係合するための展開形態へ弾性的に推移するように処理されている(例えば1つ又は2つ以上のマンドレルを使用して熱処理されている)。単一のフィラメントが図示され記載されており、またこれは上述のように特に有利であるものの、言うまでもなく編組型又は他のマルチフィラメント型ガイドワイヤ形態も考えられる。例えば、モノリシックフィラメント、又はモノフィラメントの代わりに、ガイドワイヤ20は密に編組された複数のフィラメントから形成することもできる。ガイドワイヤ20は任意には超弾性合金、例えばニッケル−チタン合金から形成されているものの、前述のように他の材料も考えられる。ガイドワイヤ20は任意には、被膜(例えば、ePTFEメンブラン・オーバーラップ、又は他の特徴)、又は例えば所望の表面処理を含んでいる。
【0015】
展開形態では、ガイドワイヤ20は、ステム30、又はステム部分30(臓器壁W内のアパーチャを通って延びる状態で図示されている)と、ドーム32、又はドーム部分32とを画定するように、比較的曲がりくねった経路を通って延びており、ドーム部分32の底面は臓器壁Wに係合している状態で図示されている。
【0016】
図示のように、ステム30は長手方向において比較的細長い形態で延びるように付勢されており、長手方向は、近位−遠位方向であり、このような「近位側」及び「遠位側」という用語は本明細書中に使用されている。ステム30は、近位端36と、遠位端38と、展開形態におけるガイドワイヤ20の形状全体の中心長手方向軸線Xとを画定するものの、オフセット(角度及び/又は横方向のオフセット)が生じることも考えられる。
【0017】
図2、3及び4は、いくつかの実施態様に基づく、展開状態(拡張状態とも記載する)における引き込みガイドワイヤ20をそれぞれ側面、正面、及び上面から見て示している。図示のように、ドーム32は、側面から見た場合にはほぼ半円形状(半円)(図2)、正面から見た場合にはベル形状(図3)、そして上面から見た場合には四分の三の円の形状(アーチ状レリーフを有する)(図4)に近似しているか、又はこれらの形状を画定している。引き込みガイドワイヤ20の種々のセグメント又は部分について説明する上で、図2の側面図は、X−Z平面(又は単に「X平面」)に面すると考えられ、図3の正面図は、Y−Z平面(又は単に「Y平面」)に面すると考えられ、そして図4の上面図は、X−Y平面(又は単に「Z平面」)に面すると考えられる。
【0018】
いくつかの実施態様では、引き込みガイドワイヤ20のドーム32は、一般に、近位端40と、遠位端42と、第1接触ループとも記載する第1ローブ44と、第2接触ループとも記載する第2ローブ46とを画定している。ドーム部分はまた、ステム部分30がそれを通って延びる開いた内部48を画定している。ドーム32は、複数の交差ワイヤセグメントを含むので、ステム部分30を引き込むと、第1ローブ44及び第2ローブ46に圧潰力が加えられる。これらのローブは圧潰に弾性的に抵抗する。こうして、引き込みガイドワイヤ20は弾性引き込み力を、臓器壁Wを引き込むためにドーム部分32の近位端40に伝える。
【0019】
いくつかの実施態様では、第1ローブ44は、第1脚部50と、第1足部52と、第2脚部54とを含んでいる。
【0020】
図2に示されているように、X平面内では、第1脚部50はステム30の遠位端38から近位側へアーチ状経路を通って延びている。図3及び4に示されているように、第1脚部50はY平面内及びZ平面内ではほぼ直線状に延びている(さほど湾曲していない)ものの、第1脚部50は隣接するワイヤセグメントへの円弧状(radiused)又はアーチ状の移行部を含んでいる。第1脚部50は、ステム30の遠位端38から、第2脚部54の上方に、そしてまた第2ローブ46の上方に延びている。
【0021】
いくつかの実施態様では、第1足部52は第1脚部50からアーチ状に延びることにより、ドーム32の近位端40に底部接触面を画定している。図2及び3に示されているように、X平面内及びY平面内では、第1足部52はほぼ直線状に延びており、ドーム32の比較的平らな底部接触面を画定している。図4に示されているように、第1足部52はZ平面内ではアーチ状経路を通って延びている(例えば180度未満)。ステム30に対する第1足部52の半径は、例えば約20mm(約40mmのドーム部分の直径全体に相当する)であるものの、種々の寸法が考えられる。第1足部52はまた、隣接するワイヤセグメントへの円弧状又はアーチ状の移行部を含む。
【0022】
いくつかの実施態様では、第2脚部54は第1足部52から遠位側へ上方に延びている。図2に示されているように、第2脚部54はX平面内ではアーチ状経路を成して延びている。図3に示されているように、第2脚部54はY平面内では反曲しているか、或いはS字形状を画定しており、第1足部52から第2ローブ46内へ延びている。図4に示されているように、Z平面内では、第2脚部54は第1足部52からほぼ直線状に上方へ向かって延びているものの、アーチ状経路も考えられる。第2脚部54は次いで、アーチ状移行部60を通って第2ローブ46へ移行する。アーチ状移行部60は第1脚部50の下側を通る。この場所では、第1脚部50はステム30から移行している。いくつかの実施態様では、アーチ状移行部の半径は約8mmであるが、種々の寸法が考えられる。第2脚部54はまた、隣接するワイヤセグメントへの円弧状又はアーチ状の移行部を含む。
【0023】
いくつかの実施態様では、第2ローブ46は、第3脚部70と、第2足部72と、第4脚部74とを含む。
【0024】
図1に示されているように、第3脚部70は第1ローブ44の第2脚部54から近位側へ下方に延びている。図2に示されているように、第3脚部70はX平面内ではアーチ状経路を成して延びている(部分的に隠れている)。図3に示されているように、第3脚部70はY平面内では反曲しているか、或いはS字形状を画定しており、第1ローブ44の第2脚部54から延びている。第3脚部70は第2脚部54からアーチ状移行部60を通って延びている。アーチ状移行部60は、第1脚部50の下側を通っている。図4に示されているように、Z平面内では、第3脚部70は第2脚部54から第2足部72へほぼ直線状に下方へ向かって延びているものの、アーチ状経路も考えられる。第3脚部70はまた、隣接するワイヤセグメントへの円弧状又はアーチ状の移行部を含む。
【0025】
いくつかの実施態様では、第2足部72は第3脚部70からアーチ状に延びることにより、ドーム32の近位端40に底部接触面を画定している。図2及び3に示されているように、X平面内及びY平面内では、足部72(図2では大部分が隠れている)はほぼ直線状に延びており、ドーム32の比較的平らな底部接触面を画定している。図4に示されているように、第2足部72はZ平面内ではアーチ状経路を通って延びている(例えば180度未満)。ステム30に対する第2足部72の半径は、例えば約20mmであるものの、種々の寸法が考えられる。このようにZ平面から見たドーム32の幅、又はガイドワイヤ20のフットプリントは、いくつかの実施態様によれば、近位端40において約40mmであるものの、種々の寸法が考えられる。換言すれば、ガイドワイヤ20が示す、折り畳み形態から拡張形態への交差形状比(crossing profile ratio)は、いくつかの実施態様によれば1:40を上回る(例えば、直径1mm未満のガイドワイヤが、直径約40mmの複雑な形状へ推移する)。第2足部72はまた、隣接するワイヤセグメントへの円弧状又はアーチ状の移行部を含む。いくつかの実施態様では、足部分52,74の種々の円弧状移行部は、例えば、ドーム部分32が展開形態において非外傷性であり、且つ組織を貫通又は穿刺しないことを保証するのを助ける。
【0026】
図2に示されているように、X平面内では、第4脚部74は第2足部72から遠位側へ上方にアーチ状経路を通って延びている。図3及び4に示されているように、第4脚部74はY平面内及びZ平面内ではほぼ直線状に延びている(さほど湾曲していない)ものの、第4脚部74は隣接するワイヤセグメントへの円弧状又はアーチ状の移行部を含んでいる。図示のように、第4脚部74は、ドーム32の近位端40と遠位端42との間の中間位置で、第1脚部50の下側を通る。例えば、第4脚部74は、ガイドワイヤ20の中心長手方向軸線Xに対して、Y平面(図3)内で若干角度がついた経路を移動する。第4脚部74はまた、ドーム32の遠位端42で第2脚部54の下側に延びている。図示のように、第4脚部74は、第2脚部54が第1脚部50の下側を通る場所の近く(例えば約5mm以内)で、第2脚部54の下側に延びている。
【0027】
図示のように、第4脚部74は、上方に向かって遠位側へ延びるセグメント80で終わっている。このセグメント80はフック80とも記載する。ガイドワイヤ20の遠位端24に相当する、上方に向かって延びるフック80は、ワイヤセグメントを整列させ、交差点(ガイドワイヤの複数の交差セグメントとも記載する)の位置と、展開状態又は拡張状態におけるガイドワイヤ20の形状全体とを画定するのを助けるための係止又は固定メカニズムとして作用することができる。
【0028】
比較的細長い形態(例えば細針内部に保持されるとき)から、臓器壁に係合するための展開形態へガイドワイヤ20を展開するための種々の方法が考えられる。いくつかの実施態様では、臓器(例えば胆嚢)の壁Wを穿刺して穿孔H(図1)を形成するために、内視鏡の誘導のもとで細針(例えばEUS細針)(図示せず)が利用される。ガイドワイヤ20は細針と一緒に穿孔に送達される。細針内には、ガイドワイヤ20はほぼ折り畳まれた(例えば概ね細長い)形態で含まれている。参考までに述べるならば、「細長い形態(elongate configuration)」という用語は、図示されているドーム部分32の形状のような複雑な形状ではなく、より単純なジオメトリ(例えば線又は弧)を含む。
【0029】
ガイドワイヤ20は針から展開され、そしてガイドワイヤ20の遠位端24から始まって連続して展開される。例えば、ガイドワイヤ20は、フック80から始まってその形状を弾性的に復元し、次いで曲がりくねりながら、ガイドワイヤの遠位端24で始まってステム30で終わるその複雑な最終形状になる。ステム30は、使用者がこれに緊張を与えるのを可能にするのに充分な長さを有しており、ひいては臓器外部から、壁を通して、極めて小さな穿孔Hを通してドーム32に緊張を加える手段を提供する。その緊張は、いくつかの実施態様によれば、臓器の壁Wを引き込むために用いることができる。いくつかの例では、ガイドワイヤは最大直径が0.8mmであり、比較的小さな開孔を容易にするものの、より小さな直径を含む種々の寸法が考えられる。
【0030】
図5及び6は、ガイドワイヤが展開に続いて、ステム30に引き込み力F(図6)が加えられることによってどのように変形するかを示している。図5(引き込み力Fがない)と図6(引き込み力Fがある)とを比較することによって明らかなように、ドーム32の種々の交差ワイヤセグメントはドーム32の圧潰に弾性的に抵抗する。加えて、Z平面内のドーム32、具体的には近位端40の底部接触面の比較的広幅の形状は、引き込み中、穿孔に対する応力付与を回避するのを助ける(例えば裂断又は漏れの機会を減らす)。ドーム32の開いた内部48、及び前述の拡大されたフットプリントはまた、デバイス(例えばドレナージデバイス)がガイドワイヤ20のステム部分30に被さって、所望のように穿孔H内へ、又は穿孔Hを通って送達されるのを支援する。
【0031】
いくつかの実施態様では、ガイドワイヤ20を取り除くために、針又は他の送達デバイス(図示せず)が穿孔を通して再導入され、ガイドワイヤ20は送達デバイス内へ引き込まれ、折り畳み形態へ戻される。
【0032】
本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変更及び追加を模範的実施形態に施すことができる。例えば、上記実施態様は特定の特徴に言及しているが、本発明の範囲はまた、特徴の異なる組み合わせを有する実施態様、並びに、上記特徴の全てを含まない実施態様を含む。以下、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
細長い形態から展開形態へ推移するように形成された引き込みガイドワイヤであって、上記引き込みガイドワイヤの上記展開形態が、
ステム部分と、
遠位端及び近位端を有するドーム部分と
を含み、上記ステム部分が上記ドーム部分の遠位端から近位側へ延びている、
引き込みガイドワイヤ。
[2]
上記ドーム部分が、第1側と、上記第1側とは横方向で反対側に画定された第2側とを有しており、さらに、上記ドーム部分が、上記ドーム部分の上記遠位端から上記近位端へ延びる、上記ドーム部分の上記第1側に位置する第1接触ループと、上記ドーム部分の上記遠位端から上記近位端へ延びる、上記ドーム部分の上記第2側に位置する第2接触ループと、を含む、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[3]
上記ドーム部分の上記近位端が、臓器の表面に係合するためのほぼ平面的な係合面を画定する、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[4]
上記ドーム部分が、上記ドーム部分の上記近位端に位置するワイヤのアーチ状の延びによって画定された第1足部と、上記ドーム部分の上記近位端に位置するワイヤのアーチ状の延びによって画定された第2足部とを含む、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[5]
上記ドーム部分が開いた内部領域を画定しており、上記内部領域を通って上記ステム部分が延びている、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[6]
上記ドーム部分と上記ステム部分とが係止配列を成して相互結合されており、上記係止配列が、上記引き込みガイドワイヤの複数の交差セグメントを含む、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[7]
上記ステム部分が近位方向に引き込まれる結果として、上記ドーム部分の遠位端に位置する上記引き込みガイドワイヤの複数の交差セグメントに圧縮力が加えられるように、上記ドーム部分が上記ステム部分から延びている、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[8]
上記引き込みガイドワイヤが遠位端と近位端とを有しており、さらに、上記引き込みガイドワイヤの上記遠位端が上記ドーム部分の上記遠位端に配置されている、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[9]
上記引き込みガイドワイヤがモノリシックな長さのニッケル−チタンフィラメントとして形成されている、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[10]
上記引き込みガイドワイヤの外径が0.8mm以下である、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[11]
上記ドーム部分が、上記ステム部分から所定の半径方向距離だけ間隔を置いたアーチ状接触足部を画定している、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[12]
上記ドーム部分が非外傷性である、項目1に記載の引き込みガイドワイヤ。
[13]
第1端部から第2端部へ延びる引き込みガイドワイヤを製造する方法であって、上記方法が、比較的細長い形態から展開形態へ弾性的に推移するようにフィラメントを処理することを含み、上記展開形態が、ステム部分と、遠位端及び近位端を有するドーム部分とを含み、上記ステム部分が上記ドーム部分の遠位端から近位側へ延びている、方法。
[14]
上記展開形態が、第1側と、上記第1側とは横方向で反対側に画定された第2側とを有する上記ドーム部分を含むように、上記フィラメントが処理され、さらに、上記ドーム部分が、上記ドーム部分の上記遠位端から上記近位端へ延びる、上記ドーム部分の上記第1側に位置する第1接触ループと、上記ドーム部分の上記遠位端から上記近位端へ延びる、上記ドーム部分の上記第2側に位置する第2接触ループと、を含む、項目13に記載の方法。
[15]
上記展開形態が、臓器の表面に係合するためのほぼ平面的な係合面を画定する上記ドーム部分の近位端を含むように、上記フィラメントが処理される、項目13に記載の方法。
[16]
上記展開形態が、上記ドーム部分の上記近位端に位置するワイヤのアーチ状の延びによって画定された第1足部と、上記ドーム部分の上記近位端に位置するワイヤのアーチ状の延びによって画定された第2足部とを含む上記ドーム部分を含むように、上記フィラメントが処理される、項目13に記載の方法。
[17]
上記展開形態が、開いた内部領域を画定する上記ドーム部分を含み、上記内部領域を通って上記ステム部分が延びるように、上記フィラメントが処理される、項目13に記載の方法。
[18]
上記展開形態が、係止配列を成して相互結合された上記ドーム部分と上記ステム部分とを含み、上記係止配列が、上記引き込みガイドワイヤの複数の交差セグメントを含むように、上記フィラメントが処理される、項目13に記載の方法。
[19]
上記ステム部分が近位方向に引き込まれる結果として、上記ドーム部分の遠位端に位置する上記引き込みガイドワイヤの複数の交差セグメントに圧縮力が加えられるように、上記展開形態が上記ステム部分から延びる上記ドーム部分を含むように、上記フィラメントが処理される、項目13に記載の方法。
[20]
上記展開形態が遠位端と近位端とを有する上記引き込みガイドワイヤを含むように上記フィラメントが処理され、さらに、上記引き込みガイドワイヤの上記遠位端が上記ドーム部分の上記遠位端に配置される、項目13に記載の方法。
[21]
上記引き込みガイドワイヤがモノリシックな長さのニッケル−チタンフィラメントとして形成される、項目13に記載の方法。
[22]
上記フィラメントの外径が上記細長い形態では0.8mm以下である、項目13に記載の方法。
[23]
上記展開形態が、上記ステム部分から所定の半径方向距離だけ間隔を置いたアーチ状接触足部を画定する上記ドーム部分を含むように、上記フィラメントが処理される、項目13に記載の方法。
[24]
上記展開形態が非外傷性である上記ドーム部分を含むように、上記フィラメントが処理される、項目13に記載の方法。
[25]
引き込みガイドワイヤを細長い形態から展開形態へ展開する方法であって、上記方法が、
送達デバイスによって臓器壁に穿孔を形成することと、
上記送達デバイスから上記引き込みガイドワイヤを延ばして、上記引き込みガイドワイヤが展開形態へ推移するようにすることと
を含み、上記展開形態が、
ステム部分と、
遠位端及び近位端を有するドーム部分と
を含み、上記ステム部分が上記ドーム部分の遠位端から近位側へ延びている、方法。
[26]
上記ドーム部分が上記臓器壁に引き込み力を加えるように、上記ステム部分を緊張させることを更に含む、項目25に記載の方法。
[27]
上記送達デバイスが中空針である、項目25に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6