特許第6616554号(P6616554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アスカネットの特許一覧

<>
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000002
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000003
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000004
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000005
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000006
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000007
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000008
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000009
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000010
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000011
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000012
  • 特許6616554-立体像結像装置の製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6616554
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】立体像結像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/22 20060101AFI20191125BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   G02B27/22
   G02B5/08 C
   G02B5/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-527568(P2019-527568)
(86)(22)【出願日】2018年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2018041731
【審査請求日】2019年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2018-134988(P2018-134988)
(32)【優先日】2018年7月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6203978(JP,B2)
【文献】 特開2012−247459(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/131128(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/033645(WO,A1)
【文献】 特開2001−343507(JP,A)
【文献】 特開2018−097065(JP,A)
【文献】 特許第6203989(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0017089(US,A1)
【文献】 特開2017−161733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/22 − 27/26
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ一側に、隙間を有して垂直かつ平行に配置された複数の垂直光反射面が形成された第1、第2の光制御パネルを、それぞれの前記垂直光反射面が平面視して直交した状態で重ね合わせた立体像結像装置の製造方法であって、
前記第1、第2の光制御パネルは、それぞれ、
板本体の一側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された凹凸面が形成された透明な第1の合成樹脂からなる成型母材を、インジェクション成型で製造する第1工程と、
前記傾斜面を影にして前記垂直面に対して斜め方向から金属噴射を行い、前記垂直光反射面を形成する第2工程とを有して製造され、
製造された前記第1、第2の光制御パネルを、前記溝内に充填される透明な第2の合成樹脂を介して、前記第1、第2の光制御パネルの前記凹凸面側を合わせて、重ね合わせ硬化させて一体化する樹脂充填工程を有し、
前記第1工程で行う前記インジェクション成型には、前記成型母材の形状に対応する空間部が内部に形成された金型を用い、溶融状態の前記第1の合成樹脂を、前記第1の合成樹脂が流動可能な温度に加温調整された前記金型の前記空間部に供給し、前記成型母材の前記凸条の断面三角形を形成する前記空間部の先端に行き渡らせ、前記金型を急速冷却し、
更に、前記第1の合成樹脂の屈折率η1と、前記第2の合成樹脂の屈折率η2との差が0.1以下であって、
前記第2工程を行う前に、前記凸条の断面三角形の頂部を非光反射とする非透光処理を行い、前記第2工程を行った後で前記樹脂充填工程を行う前に、前記凸条の断面三角形の頂部に対して更に非光反射とする非透光処理を行うことを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項2】
板本体の一側及び他側にそれぞれ、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置されて凹凸面が形成され、かつ、該板本体の一側及び他側に形成された前記垂直面は、平面視して直交状態となった透明な第1の合成樹脂からなる成型母材を、インジェクション成型で製造する第1工程と、
前記成型母材の一側及び他側において、前記傾斜面を影にして前記垂直面に対して斜め方向から金属噴射を行い、垂直光反射面を形成する第2工程と、
前記第2工程を行った後、前記溝内に透明な第2の合成樹脂を充填して硬化させる樹脂充填工程とを有し、
前記第1工程で行う前記インジェクション成型には、前記成型母材の形状に対応する空間部が内部に形成された金型を用い、溶融状態の前記第1の合成樹脂を、前記第1の合成樹脂が流動可能な温度に加温調整された前記金型の前記空間部に供給し、前記成型母材の前記凸条の断面三角形を形成する前記空間部の先端に行き渡らせ、前記金型を急速冷却し、
更に、前記第1の合成樹脂の屈折率η1と、前記第2の合成樹脂の屈折率η2との差が0.1以下であって、
前記第2工程を行う前に、前記凸条の断面三角形の頂部を非光反射とする非透光処理を行い、前記第2工程を行った後で前記樹脂充填工程を行う前に、前記凸条の断面三角形の頂部に対して更に非光反射とする非透光処理を行うことを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の立体像結像装置の製造方法において、前記第1工程で製造された前記成型母材の前記凸条の断面三角形の頂部は断面円弧状となって、その曲率半径が1〜20μmであることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の立体像結像装置の製造方法において、前記第1工程で製造された前記成型母材の前記凸条の断面三角形の頂部には幅が10μm以下の微小平面部が形成されていることを特徴とする立体像結像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間を有して垂直に配置された複数の垂直光反射面(鏡面)を用いる立体像結像装置製造方法に関する。ここで、立体像は、三次元画像だけでなく、二次元画像(平面像)を表示する場合も含む。
【背景技術】
【0002】
物体表面から発する光(散乱光)を用いて立体像を形成する装置として、例えば、特許文献1に記載の光学結像装置がある。この結像装置は、同公報の図1図3に示すように、透明平板の内部に、該透明平板の一方側の面に垂直に多数かつ帯状の平面光反射部を一定のピッチで並べて形成した第1及び第2の光制御パネルを用い、該第1及び第2の光制御パネルのそれぞれの一面側を、前記平面光反射部を直交させて向かい合わせて構成されている。しかしながら、この光学結像装置は全反射を使用しているので入射角が制限され、かつ透明平板の入射光の有効面積が狭いので、明るい立体像を形成できないという問題があった。
【0003】
このため、特許文献2のように、材料として透明樹脂を用い、平行な土手によって形成される断面四角形の溝が一面に形成され、この溝の対向する平行な側面に光反射部が形成された凹凸板材を備えた光制御パネルを2つ用意し、この2つの光制御パネルを、それぞれの光反射部を直交又は交差させた状態で向い合わせる方法が提案されていた。
しかし、インジェクション成型時に、凹凸板材の土手の高さを高くすると(即ち、溝の深さを深くすると)脱型が極めて困難となるという問題があった。更に、平行溝の側面を鏡面化するのは、特許文献2の技術を使用しても難しく、製品にバラツキが多いという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献3及び特許文献4のように、透明板材の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された成型母材を製造し、傾斜面に沿った方向から傾斜面が影になるようにして、垂直面に向けて金属噴射を行い金属反射面を形成することで、第1、第2の光制御パネルを形成し、溝内に透明樹脂を充填して、第1、第2の光制御パネルをそれぞれの金属反射面が平面視して直交するように重ね合わせる方法が提案されている。
このように、平行に多数形成された溝が傾斜面と垂直面を有し、溝の開放側に広くなるので、押型又は脱型が容易となる。更に、金属噴射を、傾斜面に沿った方向から傾斜面が影になるようにして垂直面に向けて行うので、傾斜面に金属反射面が形成され難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/131128号公報
【特許文献2】国際公開第2015/033645号公報
【特許文献3】特許第6203989号公報
【特許文献4】特許第6203978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献3では、図10に示すように、成型母材80の製造に際し、金型に溝奥の角部を鋭角に形成することはできないことと、金型成型による寸法精度の向上と、製造過程での疵の発生防止を図るため、凸条81の断面三角形の角部(頂部)に微小平面部82を形成している。なお、引用文献4においては、微小平面部の幅は凸条のピッチの0.01〜0.1倍と記載され、引用文献3においては、凸条の底辺の幅の0.02〜0.2倍程度(10μmを遥かに超える)が好ましいと記載され、溝の開口幅に比較して大きいことから、以下に示す問題が発生した。
【0007】
即ち、図10に示すように、金属噴射を、微小平面部82が形成された凸条81の垂直面86に対し、傾斜面87に沿った方向から行うと、垂直面86のみならず微小平面部82にも金属反射面88が形成される。幅が狭くても(例えば、凸条のピッチの0.01倍程度でも)平面(微小平面部82)を形成すると、図12(A)、(B)に示すように、微小平面部82にも金属反射面88が形成された成型母材80(即ち、光制御パネル89)を用いて製造した立体像結像装置90を使用した場合、1)微小平面部82の金属反射面88により光の散乱と正反射が発生して立体像が白っぽく光ってみえる、2)立体像結像装置90を透過する結像に寄与する光が微小平面部82の金属反射面88により反射され立体像が少し暗くなる、といった問題が発生することが分かった。この問題は微小平面部82の幅が大きい程顕著になる。
【0008】
しかし、この微小平面部82の幅(図10の左右方向の幅)は成型母材80の全体的寸法からして、狭いことと、金型の温度が樹脂の流動可能な温度より低いことから、成型母材80を、図11に示す金型83で製造(インジェクション成型)するに際しては、溶融状態の透明樹脂84を、微小平面部82を形成する金型83の空間部(溝)の先端85に行き渡らせることが困難となる。このため、微小平面部82の幅を広げて透明樹脂84の充填を促進すると、図10に示す垂直面86の高さが低くなり、垂直面86のピッチpに対する垂直面86の高さhの比であるアスペクト比(h/p)が低くなって、鮮明な立体像が得られず、微小平面部82の反射光に起因して、立体像が白く見えるという欠点がある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製造が容易で鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置の製造方を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う第1の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、それぞれ一側に、隙間を有して垂直かつ平行に配置された複数の垂直光反射面が形成された第1、第2の光制御パネルを、それぞれの前記垂直光反射面が平面視して直交した状態で重ね合わせた立体像結像装置の製造方法であって、
前記第1、第2の光制御パネルは、それぞれ、
板本体の一側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された凹凸面が形成された透明な第1の合成樹脂からなる成型母材を、インジェクション成型で製造する第1工程と、
前記傾斜面を影にして前記垂直面に対して斜め方向から金属噴射を行い、前記垂直光反射面を形成する第2工程とを有して製造され、
製造された前記第1、第2の光制御パネルを、前記溝内に充填される透明な第2の合成樹脂を介して、前記第1、第2の光制御パネルの前記凹凸面側を合わせて、重ね合わせ硬化させて一体化する樹脂充填工程を有し、
前記第1工程で行う前記インジェクション成型には、前記成型母材の形状に対応する空間部が内部に形成された金型を用い、溶融状態の前記第1の合成樹脂を、前記第1の合成樹脂が流動可能な温度に加温調整された前記金型の前記空間部に供給し、前記成型母材の前記凸条の断面三角形を形成する前記空間部の先端に行き渡らせ、前記金型を急速冷却し、
更に、前記第1の合成樹脂の屈折率η1と、前記第2の合成樹脂の屈折率η2との差が0.1以下であって、
前記第2工程を行う前に、前記凸条の断面三角形の頂部を非光反射とする非透光処理を行い、前記第2工程を行った後で前記樹脂充填工程を行う前に、前記凸条の断面三角形の頂部に対して更に非光反射とする非透光処理を行う。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法は、板本体の一側及び他側にそれぞれ、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置されて凹凸面が形成され、かつ、該板本体の一側及び他側に形成された前記垂直面は、平面視して直交状態となった透明な第1の合成樹脂からなる成型母材を、インジェクション成型で製造する第1工程と、
前記成型母材の一側及び他側において、前記傾斜面を影にして前記垂直面に対して斜め方向から金属噴射を行い、垂直光反射面を形成する第2工程と、
前記第2工程を行った後、前記溝内に透明な第2の合成樹脂を充填して硬化させる樹脂充填工程とを有し、
前記第1工程で行う前記インジェクション成型には、前記成型母材の形状に対応する空間部が内部に形成された金型を用い、溶融状態の前記第1の合成樹脂を、前記第1の合成樹脂が流動可能な温度に加温調整された前記金型の前記空間部に供給し、前記成型母材の前記凸条の断面三角形を形成する前記空間部の先端に行き渡らせ、前記金型を急速冷却し、
更に、前記第1の合成樹脂の屈折率η1と、前記第2の合成樹脂の屈折率η2との差が0.1以下であって、
前記第2工程を行う前に、前記凸条の断面三角形の頂部を非光反射とする非透光処理を行い、前記第2工程を行った後で前記樹脂充填工程を行う前に、前記凸条の断面三角形の頂部に対して更に非光反射とする非透光処理を行う。
【0012】
ここで、第1の合成樹脂が流動可能な温度とは、第1の合成樹脂のガラス転移温度をTgとした場合、例えば、(Tg−10)℃以上かつ(Tg+40)℃以下(好ましくは、(Tg−5)℃以上、更にはTg℃以上(更に好ましくはTg℃超)、上限が(Tg+30)℃)である。
なお、「ガラス転移温度Tg」とは、ポリマー分子の相対的な位置は変化しないが分子主鎖が回転や振動(ミクロブラウン運動)を始める、又は停止する温度であり、第1の合成樹脂の固化温度(硬化温度、流動化温度)である。
また、第1、第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、金型は垂直に立てた状態に配置するのが好ましい。なお、硬化した後の成型母材は、垂直のまま金型から脱型してもよいし、水平又は他の角度で脱型してもよい。この脱型は、第1の合成樹脂が流動可能な温度に加温調整されていた金型を急速冷却し、第1の合成樹脂を硬化させてから行う(ヒートアンドクール処理)。
【0013】
第1、第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記第1工程で製造された前記成型母材の前記凸条の断面三角形の頂部は断面円弧状となって、その曲率半径が1〜20μmである場合がある。
第1、第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法において、前記第1工程で製造された前記成型母材の前記凸条の断面三角形の頂部には幅が10μm以下の微小平面部が形成されている場合がある。
【0014】
更に、第1、第2の発明に係る立体像結像装置の製造方法において非透光処理が、例えば、着色処理である場合、凸条の断面三角形の頂部には、第1の着色(例えば、黒)層、金属層、第2の着色(例えば、黒)層が順次形成されることになる。
この「非光反射」とは、光を反射しない状態であって、光を吸収する状態や、光を透過する状態を含む(以下の発明においても同じ)。従って、上記した着色処理により形成される膜(即ち、着色膜)は、必ずしも厚みを有する必要はなく、例えば、着色材(通常、黒色)が凸条の断面三角形の頂部に付着した金属(不要金属)の層内に含浸してもよく、金属による反射膜(反射面)の光反射性を阻害するものであればよい。
【0015】
また、第1の参考例に係る立体像結像装置は、立設状態で隙間を有して平行配置された帯状光反射面群をそれぞれ備える第1、第2の光制御パネルを、前記帯状光反射面群を平面視して直交させて重ね合わせる立体像結像装置であって、
前記第1、第2の光制御パネルは、
板本体の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う前記溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された凹凸面が形成された透明な第1の合成樹脂からなる成型母材と、
前記垂直面に形成された垂直光反射面と、
前記溝内に充填された透明な第2の合成樹脂とを有し、
前記成型母材の前記凸条の断面三角形の頂部は、1)断面円弧状となって、その曲率半径が1〜20μmであり、又は2)微小平面部が形成されて、その幅が10μm以下であり、
更に、前記第1の合成樹脂の屈折率η1と、前記第2の合成樹脂の屈折率η2との差が0.1以下である。
ここで、前記凸条の断面三角形の頂部を非光反射面とするのがよい。
【0016】
第2の参考例に係る立体像結像装置は、板本体の両側に垂直面と傾斜面を有する断面三角形の第1、第2の溝、及び隣り合う前記第1、第2の溝によって形成される断面三角形の第1、第2の凸条がそれぞれ平行配置されて凹凸面が形成され、かつ前記板本体の両側にそれぞれ形成された前記第1、第2の溝が平面視して直交して配置される透明な第1の合成樹脂からなる成型母材と、
前記成型母材の両側にある前記第1、第2の溝の前記垂直面に形成された垂直光反射面と、
前記第1、第2の溝に充填された透明な第2の合成樹脂とを有し、
前記成型母材の前記第1、第2の凸条の断面三角形の頂部は、1)断面円弧状となって、その曲率半径が1〜20μmであり、又は2)微小平面部が形成されて、その幅が10μm以下であり、
更に、前記第1の合成樹脂の屈折率η1と、前記第2の合成樹脂の屈折率η2との差が0.1以下である。
ここで、前記第1、第2の凸条の断面三角形の頂部を非光反射面とするのがよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る立体像結像装置の製造方法は、溶融状態の第1の合成樹脂を、第1の合成樹脂が流動可能な温度に加温調整された金型の空間部に供給するので、第1の合成樹脂の流動性が保持される。これにより、溶融状態の第1の合成樹脂を、成型母材の凸条の断面三角形を形成する空間部の先端に行き渡らせることができると共に、第1の合成樹脂の流れむら(斑)やウェルドライン等の外観上の欠点も解消できる。
従って、製造が容易で、かつ長い垂直面を形成できることにより、鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置を提供できる。
特に、垂直面に対して金属噴射を行う(即ち、第2工程を行う)前に、凸条の断面三角形の頂部を非光反射とする非透光処理を行い、金属噴射を行った(即ち、第2工程を行った)後で溝内に第2の合成樹脂を充填する(即ち、樹脂充填工程を行う)前に、凸条の断面三角形の頂部に対して更に非光反射とする非透光処理を行うので、垂直面に対して金属噴射を行う際に、頂部に形成された金属による悪影響を無くすことができる。
これにより、更に鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置を提供できる。
【0018】
第1、第2の参考例に係る立体像結像装置において、成型母材の凸条の断面三角形(概略三角形、以下同じ)の頂部が断面円弧状となって、その曲率半径が1〜20μmである場合、凸条の断面三角形の頂部に微小反射平面がないため、立体像に影響する不要な光を乱反射させることができ、鮮明な立体像を得ることが可能になる。
また、成型母材の凸条の断面三角形の頂部に微小平面部が形成されて、その幅が10μm以下である場合、立体像に悪影響を及ぼす光を低減させることができ、鮮明な立体像を得ることが可能になる。
特に、凸条の断面三角形の頂部を非光反射面とした場合、垂直面に対して金属噴射を行った際に、頂部に形成された金属による悪影響を無くすことができる。
これにより、更に鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法により製造した立体像結像装置の正断面図及び側断面図である。
図2】(A)は第1の変形例に係る成型母材の垂直面への金属噴射を示す説明図、(B)は同成型母材の垂直面に金属噴射を行う前後に着色処理を行った状態を示す説明図である。
図3】(A)は本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法の第1工程で製造された成型母材の凸条及び溝の部分拡大側面図、(B)、(C)はそれぞれ第2、第3の変形例に係る成型母材の凸条及び溝の部分拡大側面図である。
図4】(A)〜(E)は同立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図5】(A)は不要金属の剥離処理の説明図、(B)は不要金属の研磨処理の説明図である。
図6】(A)〜(C)はそれぞれ光吸収膜が形成された微小平面部(即ち、凸状頂部)の部分拡大側面図である。
図7】本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法の第1工程の説明図である。
図8】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第2の実施例に係る立体像結像装置の製造方法により製造した立体像結像装置の正断面図及び側断面図である。
図9】(A)〜(E)は同立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図10】従来例に係る立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図11】同立体像結像装置の製造方法の説明図である。
図12】(A)、(B)は同立体像結像装置の製造方法を用いて製造した立体像結像装置の正断面図及び側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、図1(A)、(B)を参照しながら、本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置の製造方法により(光制御パネルの製造方法を用いて)製造した立体像結像装置10について説明する。
立体像結像装置10は、対となる第1、第2の光制御パネル(平行光反射パネル)11、11aを有している。なお、図1(A)、(B)においては、第1の光制御パネル11を下側に、第2の光制御パネル11aを上側に、それぞれ配置している。この第1の光制御パネル11と第2の光制御パネル11aは同一の構成を有しているので、その構成要素には同一の番号を付与する。
【0021】
第1の光制御パネル11(第2の光制御パネル11aも同様)には片側(表側、一側)に(第1の光制御パネル11では上部に、第2の光制御パネル11aでは下部に)、立設状態で(垂直に)隙間を有して平行配置された多数の帯状の垂直光反射面12(ミラー)からなる帯状光反射面群が形成されている。
具体的には、第1、第2の光制御パネル11、11aはそれぞれ、板本体(透明板本体)13の表側(一側)に、垂直面14及び傾斜面15を有する断面三角形の溝16、及び隣り合う溝16によって形成される断面三角形の凸条17を備えた、透明な第1の合成樹脂からなる成型母材21(図4参照)と、溝16の垂直面14に形成され、凸条17に入射した光を反射する垂直光反射面12を有している。なお、上記した第1、第2の光制御パネル11、11aの溝16及び凸条17はそれぞれ一定のピッチで平行に多数設けられて、凹凸面を形成している。垂直光反射面12は垂直面14のみに形成されているのが好ましい。
【0022】
第1、第2の光制御パネル11、11aは、それぞれの帯状光反射面群の垂直光反射面12が平面視して直交配置された状態(例えば、88〜92度の範囲で交差配置された状態を含む)で、溝16(凹凸面側)を向かい合わせて接合され一体化されている。この向かい合わせた第1の光制御パネル11と第2の光制御パネル11aとの間には、透明な第2の合成樹脂からなる接着剤18が配置されて、溝16の内部が接着剤18で埋められている(充填されている)。
なお、図1(A)、(B)においては、第1の光制御パネル11の凸条17の上面と、第2の光制御パネル11aの凸条17の下面とが、間隔S(例えば、0を超え5mm以下程度)を有して近接配置された状態を示しているが、当接配置された状態(隙間がない:0mm)でもよい。この間隔Sにも接着剤18が充填されている(間隔Sが接着剤18の層厚)。
【0023】
この第1、第2の光制御パネル11、11aの形状を構成する(即ち、成型母材21を形成する)第1の合成樹脂(透明樹脂)と、溝16に充填する接着剤18となる第2の合成樹脂(透明樹脂)は、透明度の高い同じ種類の樹脂であることが好ましいが、透明度の高い異なる種類の透明樹脂であってもよい。
第1の合成樹脂としては、例えば、第2の合成樹脂よりも融点の高い熱可塑性樹脂であるゼオネックス(ZEONEX:登録商標、ガラス転移温度:120〜160℃、屈折率η1:1.535、シクロオレフィンポリマー)を使用できる。また、第2の合成樹脂としては、例えば、ゼオノア(ZEONOR:登録商標、ガラス転移温度:100〜102℃、屈折率η2:1.53、シクロオレフィンポリマー)を使用できる。
【0024】
ここで、第1、第2の合成樹脂に同じ種類の熱可塑性樹脂を使用する場合、融点が同じであるため、第1の光制御パネル11と第2の光制御パネル11aの間に、溶融状態の第2の合成樹脂が流し込まれることになる。
このとき、第1、第2の光制御パネル11、11aの第2の合成樹脂との接触部分の第1の合成樹脂が部分的に軟化(溶融)するおそれもあるが、第1の合成樹脂と第2の合成樹脂が境界部分で混ざり合うため、例えば、屈折率の平均化や、第1の合成樹脂と第2の合成樹脂の結合力を高めることができる。
【0025】
また、第1、第2の合成樹脂に異なる種類の透明樹脂を使用する場合、屈折率が同一又は近似しているのが好ましい。具体的には、第1の合成樹脂の屈折率η1と同一又は略等しい屈折率η2(例えば、±10%の範囲、即ち(0.9〜1.1)×η1の範囲、好ましくは下限が0.95×η1、上限が1.05×η1)を有する第2の合成樹脂を使用できる。屈折率η1と屈折率η2との差は0.1以下(好ましくは0.05以下)、更には0.01以下(好ましくは0.009以下、更に好ましくは0.005以下)にするのがよい。なお、屈折率η1と屈折率η2は等しくすることが好ましいが、第1、第2の合成樹脂に異なる種類の透明樹脂を使用する場合は0に近づけるのがよい。
ここで、成型母材21を形成する第1の合成樹脂の屈折率に対し、第2の合成樹脂の屈折率を合わせる方法としては、例えば、異なる2種以上の樹脂を混合して屈折率を調整する方法がある(第1の合成樹脂も同様の方法で屈折率を調整できる)。この場合、第1、第2の合成樹脂の屈折率の数値を、上から3桁まで(小数点以下第2位まで)揃えることが好ましい。
この第1、第2の合成樹脂の屈折率とは、溶融状態ではなく硬化後の屈折率である。
【0026】
なお、第2の合成樹脂からなる接着剤18は、紫外線硬化型(例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン骨格を有する(メタ)アクリレート、ポリブタジエン骨格を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートモノマー等の(メタ)アクリレート)、熱硬化型、2液硬化型、及び常温硬化型のいずれか1であることが好ましい。また、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA:アクリル系樹脂)、非晶質フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、光学用ポリカーボネート、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂も使用できる(第1の合成樹脂も同様)。
【0027】
第1、第2の光制御パネル11、11aは、tを板本体13の厚み、hを垂直光反射面12(凸条17)の高さとすると、例えば、t/hが0.5〜10の範囲にあるのが好ましい。ここで、(t+h)は0.5〜5mmの範囲で、hは例えば0.03〜3mmの範囲であるのが実用的であるが、本発明はこの数値に限定されない。
また、垂直光反射面12(垂直面14)と傾斜面15との角度θ1は15〜60度(好ましくは、上限を45度)の範囲にあるのが好ましいが、厚みtと高さhに応じて変えることができる。
更に、垂直光反射面12のピッチ(溝16の幅)pに対する垂直光反射面12の高さhの比であるアスペクト比(h/p)は0.8〜5(好ましくは、下限が2、上限が3.5)の範囲にあるのが好ましく、これによって、より高さの高い垂直光反射面12が得られる。
【0028】
断面三角形の鋭角をなす凸条17の角部(先部、頂部)には、図2(A)、(B)に示す断面円弧状となった曲面部(円弧状部)19a、又は、図1(A)、(B)、図3(A)に示す第1の微小平面部(即ち、凸条上部)19が設けられ、断面三角形の鋭角をなす溝16の角部(底部)には、図1(A)、(B)、図2(A)、(B)、図3(A)に示す第2の微小平面部20が設けられている。
【0029】
図2(A)、(B)に示す曲面部19aの最大幅(断面で、曲面部19aと連接する垂直面14の先端位置と、曲面部19aと連接する傾斜面15の先端位置との距離)は、10μm以下、更には5μm以下、更に好ましくは3μm以下であり、曲面部19aの曲率半径は1〜20μm(更には、上限が10μm)である。なお、曲面部19aの曲率半径は、溶融状態の第1の合成樹脂の表面張力に影響される。
このように、曲面部19aの幅が狭いことから、形成される垂直面14の高さを高くでき、また、曲面部19aは断面円弧状となっていることから、表面に金属反射面が形成されても、微小反射曲面となって微小反射平面とはならず、光を乱反射又は散乱させることができるため、鮮明な立体像が得られ易くなる。
【0030】
図3(A)に示す第1の微小平面部19(微小平面部の一例)の幅w1は、垂直光反射面12が形成されるピッチpの0.01〜0.2倍(好ましくは、上限が0.1、より好ましくは0.05)の範囲にあり、しかも、10μm以下、更には5μm以下、更に3μm以下であることが好ましい。また、第2の微小平面部20の幅w2は、上記したピッチpの0.01〜0.3倍(好ましくは、下限が0.02倍、上限が0.2倍)の範囲にあり、w2≧w1であるのが好ましい。
このように、凸条17の角部に第1の微小平面部19を設けたのは、垂直面と傾斜面を交差させて鋭角とした凸条を形成するための金型を製造できないことによる。また、第2の微小平面部20を設けることにより、製品に疵が付き難くなり、製品精度が更に上がるが、設けなくてもよい(即ち、断面円弧状の曲面部や、垂直面と傾斜面を交差させて鋭角とすることができる)。
【0031】
垂直光反射面12は、図2(A)、図3(A)に示すように、第1の合成樹脂で形成される成型母材21の溝16の垂直面14に、選択的に鏡面処理を行って形成されている(図4(B)参照)。
鏡面処理は、傾斜面15を影にして、垂直面14に対して斜め方向(傾斜面15に沿った方向)から金属噴射(金属照射)することにより行う。
この金属噴射には、スパッターリング、金属蒸着、金属微粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射等がある。また、鏡面処理には、高反射率を有する金属(例えば、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Cr(クロム)等)を用いており、垂直面14に形成される金属被膜22の表面(金属反射面)が垂直光反射面12となる。
【0032】
これにより、溝16の傾斜面15に金属反射面が形成されるのを極力防止し、溝16の垂直面14に金属反射面を形成することが可能となる。
しかし、上記した方法で溝16の垂直面14に鏡面処理を行った場合、図2(A)、図3(A)に示すように、曲面部19aや第1の微小平面部19にも金属被膜が形成され、垂直面14から曲面部19aや第1の微小平面部19にかけて金属反射面23が形成されることになる。
この金属被膜が残存する光制御パネルを用いて立体像結像装置を製造し使用した場合、曲面部19aや第1の微小平面部19の幅が狭ければ(第1の微小平面部については10μm以下であれば)、形成される立体像への影響は低減できるが、曲面部19aや第1の微小平面部19の幅が広くなるに伴い(第1の微小平面部については10μm超の場合に)、前記したように、鮮明な立体像が得られなくなるおそれがある(図10図12(A)、(B)参照)。
このため、以下に示すように、曲面部19aや第1の微小平面部19を非光反射面とする着色処理(非透光処理の一例)を行うことで、曲面部19aや第1の微小平面部19からの光反射を防止することが好ましい。
【0033】
図2(B)に示すように、曲面部19aに、曲面部19aからの光反射を防止する光吸収膜(黒色膜)33aを形成し、光吸収面とすることができる。
具体的には、予め曲面部19aの表面に第1の着色膜37aを形成(非光反射とする着色処理)した後、上記した金属噴射を行って垂直面14から第1の着色膜37aの表面にかけて金属反射面23bを形成し、第1の着色膜37aの表面に形成された金属反射面23b、即ち不要金属24bの表面を覆うように第2の着色膜38aを形成(非光反射とする着色処理)する。ここで、不要金属24bは、第1の着色膜37aの表面を覆うように積極的に形成されたものではなく、不可避的に形成されたものである。
この第1の着色膜37aと第2の着色膜38aで光吸収膜33aが構成され、凸条17の断面三角形の頂部に非光反射面が形成されて、曲面部19aの表裏での光反射を防止できる。
【0034】
そして、図6(A)〜(C)に示すように、第1の微小平面部19に、第1の微小平面部19からの光反射を防止する光吸収膜(黒色膜)34〜36を形成し、光吸収面とすることもできる。
図6(A)は、前記した不要金属24が除去された第1の微小平面部19の上(表面)に、第1の着色膜である光吸収膜34を形成している(第1の微小平面部19を着色する処理)。これにより、微小平面部19の表裏での光反射を防止できる。
図6(B)は、第1の微小平面部19に付着した不要金属24を除去することなく、この不要金属24の上(表面)を覆うように、第1の着色膜である光吸収膜35を形成している(不要金属24の上を着色する)。
図6(C)は、予め第1の微小平面部19の表面に第1の着色膜37を形成した後、上記した金属噴射を行って垂直面14から第1の着色膜37の表面にかけて金属反射面23aを形成し、形成された不要金属24aの表面を覆うように第2の着色膜38を形成している。この第1の着色膜37と第2の着色膜38で光吸収膜36が構成され、微小平面部19の表裏での光反射を防止できる。
【0035】
これによって、第1の着色膜37により、例えば、第1の微小平面部19に内部から入射する光を吸収することができ、第2の着色膜38により、不要金属24aからの光反射を防止することができる。このため、第2の着色膜38には、隠蔽度が高い着色膜を使用して、不要金属24aの表面を覆うことが好ましい(曲面部19aに形成する光吸収膜33aを構成する第1の着色膜37aと第2の着色膜38aも同様)。
上記した第1、第2の着色膜(以下、単に着色膜とも記載)の色は、光吸収ができる色であれば特に限定されるものではないが、黒が好ましく、着色膜を形成する黒色インクとしては、隠蔽度が高い顔料系や光吸収能が高い艶消し系等(例えば、カーボンブラックを含有したインク)を使用できる。なお、着色膜の厚みは、例えば、0μm(着色材を不要金属に含浸させる場合)から、数μm〜数十μm程度であればよい。
【0036】
この着色膜を、曲面部19a、第1の微小平面部、又は、不要金属(以下、第1の微小平面部等と記載)の上に形成する方法としては、例えば、従来公知のスクリーン印刷やインクジェット印刷等を用いることができる。
スクリーン印刷とは、枠にスクリーンメッシュを張って感光材を塗布し、第1の微小平面部等に対応する領域を露出させたマスクを、成型母材上に配置した後、マスク上に配置したインクをスキージで第1の微小平面部等に押し付けることにより、第1の微小平面部等に着色膜を形成する方法である。なお、スクリーンメッシュは、シルク製のものを使用することが好ましいが、ポリエステルなどの合成繊維製や金属繊維製のものでもよい。
インクジェット印刷とは、インクに圧力や熱を加えて微粒子とし、第1の微小平面部等に吹き付けることにより、第1の微小平面部等に着色膜を形成する方法である。
なお、曲面部19a及び微小平面部19の幅が小さい場合は、非光反射処理を省略できる。また、溝底に形成されている第2の微小平面部20は0に近づける(無くす)ことは容易であるが、第2の微小平面部20があると垂直面14と傾斜面15を明確に区分できる。
【0037】
また、図3(A)、図4(B)に示す、金属噴射によって第1の微小平面部19に付着した金属被膜、即ち不要金属24を、後述する図5(A)の剥離処理、図5(B)の研磨処理、又は溶解処理によって除去し、第1の微小平面部19を透明な光通過面(非光反射面)とする透光処理を行うこともできる。なお、第1の微小平面部19のみに紫外線剥離樹脂を塗布して金属噴射を行った後、第1の微小平面部19から不要金属24のみを除去することもできる。
【0038】
傾斜面15は、透明な成型母材21のままでよく、光透過性のよい均一な平面を有しているが、後述する成型母材21の製造に際し、型抜き抵抗を下げるため、傾斜面15に複数の凹凸(ディンプル)を形成する梨地処理(脱型表面処理の一例)を行うこともできる。この傾斜面15は、図3(A)に示すように平面となっているが、図3(B)、(C)に示すように、傾斜面25、26を、上側の第1の微小平面部19の溝側端部(上端)と、下側の第2の微小平面部20の垂直面側端部(下端)とを結ぶ、仮想平面27に対して窪む凹面で構成することもできる。具体的には、以下の通りである。
図3(B)に示す傾斜面25は、断面湾曲又は円弧状の曲面で構成されている。
図3(C)に示す傾斜面26は、上側に形成された平面と、これに連接する下側に形成された曲面(断面湾曲又は円弧状)とで構成されている。
【0039】
なお、傾斜面は、凹面であれば上記した形状に限定されるものではなく、例えば、2つ以上の複数の平面で構成することもでき、この場合、隣接する平面のなす角を、180度未満(例えば、120〜175度、好ましくは、下限が150度、上限が170度)となるように、構成することもできる。
これにより、図3(A)に示すように、平面状の傾斜面15の断面傾斜角度θ1を超える角度(例えば、θ1+(1〜10度))で、傾斜面15に沿って、垂直面14に金属噴射することで、傾斜面15に金属反射面が形成されるのを更に防止し、溝16の垂直面14のみに金属反射面を形成することが可能となる(図3(B)、(C)も同様)。
このため、傾斜面15の仮想平面27に対する窪み量は、金属噴射の条件に応じて種々変更できる。
【0040】
これにより、図1(A)、(B)において、立体像結像装置10の左下側から斜めに入光した対象物からの光L1、L2は、下側の垂直光反射面12のP1、P2で反射し、更に上側の垂直光反射面12のQ1、Q2で反射して、立体像結像装置10の上側に立体像を形成できる。
この立体像結像装置10は、上記したように、第1、第2の光制御パネル11、11aを、溝16が向かい合うようにして重ね合わせるので、第1、第2の光制御パネル11、11aの垂直光反射面12が近づき、対象物からの光の集光度合いが向上し、より鮮明な画像を得ることができる。
【0041】
なお、本実施例においては、鏡面処理によって垂直面14に形成された金属被膜22の裏側(図1(A)、(B)では左側)を第1、第2の光制御パネル11、11aの垂直光反射面12として使用したが、金属被膜22の表側(図1(A)、(B)では右側)を垂直光反射面として使用することもできる。
この立体像結像装置10の動作において、空気中から板本体13へ入光する場合、及び板本体13から空気中に出光する場合に、光の屈折現象、場合によって全反射現象を起こすので、これらを考慮して立体像結像装置10を使用する必要がある(以下の実施例においても同様である)。なお、傾斜面15はそのまま光通過面となり、第1の微小平面部19(又は曲面部19a)は光通過面又は光吸収面となる。
【0042】
続いて、本発明の第1の実施例に係る立体像結像装置10の製造方法について、図4(A)〜(E)を参照しながら説明するが、第1の光制御パネル11の製造方法と第2の光制御パネル11aの製造方法は同じであるので、第1の光制御パネル11の製造方法を主として説明する。なお、図4(A)〜(C)は第1の光制御パネル11の製造方法を示している。
【0043】
(第1工程)
図4(A)に示すように、板本体13の表側(一側)に、垂直面14と傾斜面15とを有する断面三角形の溝16、及び隣り合う溝16によって形成される断面三角形の凸条17がそれぞれ平行配置された凹凸面が形成され、かつ凸条17の頂部と溝16の底部にそれぞれ第1、第2の微小平面部19、20が形成された、透明な第1の合成樹脂からなる成型母材21を、インジェクション成型(射出成形)によって製造する。このように、成型母材21を構成する板本体13と凸条17は、個別に製造されるものではなく、一体的に製造されるものである。
この成型母材21を形成する第1の合成樹脂としては、紫外線硬化型、熱硬化型、2液硬化型、及び常温硬化型のいずれか1を使用することが好ましく、また、ポリメチルメタクリレート、非晶質フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー、光学用ポリカーボネート、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂も使用できる。
【0044】
インジェクション成型には、図7に示すように、成型母材21の形状に対応する空間部39が内部に形成された金属(合金も含む)製の金型40を用いる。この金型40は、対となる型41、42を有し、一方の型(以下、下型とも記載)41の表面形状が、板本体13の表側(一側)の断面三角形の溝16と断面三角形の凸条17の表面形状に対応し、他方の型(以下、上型とも記載)42の表面形状が、板本体13の裏側(他側)の表面形状(平面)に対応している。インジェクション成型を行うに際しては、通常、溶融状態の第1の合成樹脂を、金型の空間部に上型側から予め設定した圧力で供給し(押込み)、硬化(固化、以下同じ)させた後、対となる下型と上型を離間させて、成型品である成型母材を取出す。なお、図7では金型40を水平に配置したが、金型40を垂直に配置することもでき、これによって、より平面度の高い大型の立体像結像装置を提供できる(以下の実施例においても同じ)。また、金型を保持する枠は図示していない。
【0045】
下型41には、断面三角形の凸条17を形成する断面三角形の溝部43(空間部39において、成型母材21の凸条17の断面三角形を形成する部分)が形成されている。この溝部43の底面44は、例えば、第1の微小平面部19を形成するものであるため、底面44の内幅は非常に狭く(例えば、3μm以上9μm以下程度に)形成されている。
このため、加温されていない金型40を使用した場合、溶融状態の第1の合成樹脂の流動性が悪化し、溶融状態の第1の合成樹脂を、溝部43の底面44、即ち空間部39の先端45(ここでは下端:徐々に幅狭となる狭隘部)に行き渡らせる(充填する)ことができない(図11参照)。
【0046】
そこで、溶融状態の第1の合成樹脂46を、第1の合成樹脂が流動可能な温度に加温調整された金型40の空間部39に供給する(押込む、充填する)。
ここで、第1の合成樹脂46が流動可能な温度とは、第1の合成樹脂46のガラス転移温度をTgとした場合、例えば、(Tg−10)℃以上でよいが、好ましくは(Tg−5)℃以上(更にはTg℃以上、更に好ましくはTg℃超)にすることができる。これにより、溶融状態の第1の合成樹脂46の流動性を確保できる。
一方、上限値については、溶融状態の第1の合成樹脂46の流動性を確保できればよいため、特に限定されるものではない。しかし、金型40の空間部39へ第1の合成樹脂46を供給した後は、第1の合成樹脂46を硬化させるため金型40を急速冷却することから(ヒートアンドクール処理)、生産性や経済性を考慮すれば、例えば、(Tg+40)℃、好ましくは(Tg+30)℃、にする。
【0047】
これにより、溶融状態の第1の合成樹脂46は、金型40の空間部39に供給された時点でも流動性が保持される。
従って、射出圧が流動末端にまで伝達されるため、溶融状態の第1の合成樹脂46を、成型母材21の凸条17の断面三角形を形成する空間部39の先端45に行き渡らせ、溝部43の底面44に密着させることができると共に、第1の合成樹脂の流れむらやウェルドライン等の外観上の欠点も解消できる。
このように、溶融状態の第1の合成樹脂46を金型40の空間部39へ供給した後は、金型40を急速冷却して(ガラス転移温度Tgよりも低い温度に低下させて)第1の合成樹脂46を硬化させ、対となる一方の型41と他方の型42を離間させることで、金型40内から成型母材21を取出す。
なお、金型を加温した後に急速冷却する方法としては、例えば、熱水、蒸気、オイル、電磁誘導、及び、電気ヒータのいずれか1又は2以上を用いる方法がある。
【0048】
成型母材21の寸法については、第1、第2の光制御パネル11、11aの寸法と略同じであるが、前述の通り、溝16の部分が外広がりのテーパになっているので、更には傾斜面15に梨地処理を施すので、脱型性はよく、長尺の垂直面14を容易に得ることができる。なお、傾斜面15に梨地処理を施す方法としては、成型母材21を製造する型枠(金型40の型41)の、傾斜面15との当接面に複数の凹凸を形成する方法がある。
更に、成型母材21には、成型時に発生した残留応力を除去するためのアニーリング処理を行うことが好ましい。このアニーリング処理は、例えば成型母材21を、電気炉や熱風乾燥機、又は熱水槽(加熱溶媒)に所定時間入れることによって行う(以下の実施例においても同様)。
【0049】
(第2工程)
図3(A)、図4(B)に示すように、垂直面14に対して例えばスパッターリングを行う。これにより、垂直面14から第1の微小平面部19にかけて金属反射面23が形成される。
ここで、スパッターリングとは、真空中で不活性ガス(主にアルゴン)を導入し、ターゲットにマイナスの電圧を引加してグロー放電を起こさせ、不活性ガスをイオン化し(又は、イオン化しない原子状態で)、高速でターゲットの表面にガスイオンを衝突させ、ターゲットを構成する成膜材料(例えば、Ag、Al、Ni等)の金属粒子を弾き出し、勢いよく基材(ここでは、垂直面14)に付着させ堆積させる技術である。
【0050】
このとき、ガスの流れ28を傾斜面15に沿って(垂直面14に対して斜め方向(特定方向)から)、かつ傾斜面15が影になるようにして、垂直面14に向けてスパッターリング(金属粒噴射も含む)を行うと、傾斜面15には成膜材料が付着し難く、垂直面14に付着する(第1の微小平面部19にも付着する)。特に、傾斜面15の角度θ1が小さいほど、また、図3(B)、(C)に示した傾斜面25、26を採用するほど、選択的付着効率がよい。
なお、上記したスパッターリングの代わりに、他の鏡面処理、例えば、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射を用いて、特定方向から金属噴射を行うこともできる。ここで、金属蒸着(金属めっき)を行った場合、傾斜面の金属めっきをレーザー又は薬品等で除去することもできる。
【0051】
(第3工程)
図4(C)に示すように、第2工程の金属噴射によって第1の微小平面部19に付着した金属被膜、即ち不要金属24を、剥離処理、研磨処理(研削処理)、又は溶解処理によって除去する透光処理を行って(特に、第1の微小平面部の幅が10μm超の場合)、凸条17の頂部を非光反射面とする。
剥離処理による不要金属24の除去は、図5(A)に示す以下の方法で行う。
まず、平面となったシート29の表面に液状接着剤30を塗布する。
ここで、シート29には、紙製や布製のものを使用できるが、平滑で破れにくいものであれば特に限定されるものではない。また、液状接着剤30には、上記した第1の合成樹脂又は第2の合成樹脂と同一成分のものを使用できるが、作業効率の観点から、より短時間で硬化するものが好ましい(以上、工程a)。
【0052】
次に、シート29の上に金属噴射が行われた成型母材21の表側(凹凸面側)、即ち、第1の微小平面部19側を載せる。
これにより、第1の微小平面部19に付着した不要金属24を、シート29上の液状接着剤30に密着させることができる。
従って、シート29上の液状接着剤30は、シート29上に満遍なく行き渡った状態(シート29上を覆った状態)で配置されていればよく、過剰に厚くする必要は無い(極薄の状態、即ち、垂直面14に形成される金属被膜22に付着しない程度の厚みであればよい。以上、工程b)。
上記した液状接着剤30を硬化させ、硬化した液状接着剤30と不要金属24を一体化する(以上、工程c)。
【0053】
そして、液状接着剤30が硬化した状態でシート29を成型母材21から引き剥がす。具体的な方法としては、成型母材21をシート29の上側に配置しシート29を固定した状態で、成型母材21を上昇させる方法や、シート29を成型母材21の上側に配置し成型母材21を固定した状態で、シート29を成型母材21から引き剥がす方法がある。
これにより、不要金属24を、シート29と共に成型母材21から剥離できる。
このとき、不要金属24のみが剥離されることが好ましいが、垂直面14の頂部に位置する(不要金属24に連続する)金属被膜22が多少剥離する程度であれば問題ない(以上、工程d)。
【0054】
研磨処理による不要金属24の除去は、図5(B)に示す以下の方法で行う。
まず、金属噴射が行われた成型母材21の溝16に第2の合成樹脂31を充填し硬化させる。この充填方法は、後述する第4工程と同様の方法により実施できる。ここで、第2の合成樹脂31は、接着剤18と同様に、板本体13を形成する第1の合成樹脂の屈折率の0.9〜1.1倍の屈折率を有している。
なお、第2の合成樹脂31は、不要金属24が覆われる高さまで充填しているが、少なくとも垂直面14の上端位置(第1の微小平面部19の表面)まで充填すればよい(以上、工程a)。
続いて、成型母材21の表側(凹凸面側)を、第1の微小平面部19に形成された不要金属24が無くなるまで研磨する。なお、研磨処理は、露出する第1の微小平面部19の表面が透明な状態となるように行う。ここで、研磨には、ペースト状の研磨材等を使用できるが、薬液に反応して研磨材が消失するものも使用できる(以上、工程b)。
【0055】
溶解処理による不要金属24の除去は、以下の方法で行う。
まず、金属噴射が行われた成型母材21の溝16を下向きにする(以上、工程a)。
次に、第1の微小平面部19にある不要金属24を溶解液に漬けて溶解除去する。このとき、成型母材21を機械的揺動又は超音波によって加振することが好ましい。
この溶解液は、不要金属24の成分に応じて決定する。例えば、不要金属がAlで構成されていれば、水酸化ナトリウムを使用でき、Agで構成されていれば、硝酸や熱濃硫酸を使用できる(以上、工程b)。
不要金属24が溶解した後、第1の微小平面部19上に残った溶解液を、例えば、水やエタノール(有機溶剤)等の洗浄液を用いて洗浄する(以上、工程c)。
そして、洗浄液を乾燥する(以上、工程d)。
【0056】
以上の方法により、垂直面14の表面に金属被膜(金属反射膜)22が形成され、その表面が垂直光反射面12となり、第1の光制御パネル11が得られる(第2の光制御パネル11aも同様)。
なお、第1の微小平面部19には、図6(A)〜(C)に示す光吸収膜34〜36を形成する非透光処理を行うこともできる(特に、第1の微小平面部の幅が10μm超の場合)。
図6(A)に示す光吸収膜34は、上記した不要金属24が除去された第1の微小平面部19の表面に、前記した印刷方法で形成する。
図6(B)に示す光吸収膜35は、第1の微小平面部19に付着した不要金属24を除去することなく、この不要金属24の表面を覆うように、前記した印刷方法で形成する。
図6(C)に示す光吸収膜36は、上記した第1工程を行った後、かつ、第2工程を行う前に、第1の微小平面部19の表面に、前記した印刷方法で第1の着色膜37を形成し(凸条17の断面三角形の頂部にある第1の微小平面部19を非光反射とする着色処理)、更に、第2工程で上記した金属噴射を行って垂直面14から第1の着色膜37の表面にかけて金属反射面23aを形成し、第2工程を行った後で、第4工程を行う前に、形成された不要金属24aの表面を覆うように、前記した印刷方法で第2の着色膜38を形成(第1の微小平面部19に対して更に非光反射とする着色処理)することで、得られる(図2(B)に示す光吸収膜33aも同様)。
なお、図2(A)、(B)に示すように、第1工程で、成型母材21の凸条17の頂部に曲面部19aを設けた場合、第2工程を行う前に、曲面部19aの表面に第1の着色膜37aを形成し、第2工程で形成された不要金属24bの表面を覆うように、第4工程を行う前に、第2の着色膜38aを形成する。これにより、曲面部19aを非光反射面とすることができる。
【0057】
(第4工程(樹脂充填工程))
まず、2組の光制御パネル(即ち、第1、第2の光制御パネル11、11a)を用意する。
そして、図4(D)に示すように、第1工程〜第3工程を経て製造された第1の光制御パネル11を、溝16が上方に開口した状態で支持台32上に配置し、この第1の光制御パネル11の上に、前記した第2の合成樹脂からなる接着剤18を載せる。なお、接着剤18は液体(例えば、ゼリー状)である。
この接着剤18には、紫外線硬化型、熱硬化型、2液硬化型、及び常温硬化型のいずれか1を使用することが好ましく、また、ポリメチルメタクリレート、非晶質フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー、光学用ポリカーボネート、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂も使用できる。
【0058】
続いて、第1の光制御パネル11上に、第2の光制御パネル11aを、それぞれの垂直光反射面12が平面視して直交配置された状態で、溝16(凹凸面側)を向かい合わせて配置する。
そして、脱気状態(減圧状態、更には真空状態)で、第2の光制御パネル11aをプレス33で第1の光制御パネル11に対して押圧し、第1、第2の光制御パネル11、11aの溝16内に接着剤18を充填して(溝16を接着剤18で埋めて)硬化させ、第1、第2の光制御パネル11、11aを接合する。
このように、第1、第2の光制御パネル11、11aの接合作業を、脱気状態で行うことで、内部に気泡が発生することを防止できる。なお、第1、第2の光制御パネル11、11aの接合中に超音波等の振動を加えて(加振して)、内部に発生した気泡を除去することもできる。
【0059】
なお、接着剤18には、熱可塑性樹脂からなる板状(シート状)のものを使用することもできる。
この場合、まず、第1の光制御パネル11の上に板状の接着剤18を載せ、更にこの接着剤18の上に第2の光制御パネル11aを載せる。次に、脱気状態で、第2の光制御パネル11aをプレス33で第1の光制御パネル11に対して押圧しながら、少なくとも接着剤18を加熱し軟化(更には溶融)させて、溝16を接着剤18で埋めた後、冷却する。
また、脱気状態で、溝16を向かい合わせて対向配置された第1の光制御パネル11と第2の光制御パネル11aとの間に、接着剤18を注入することもできる。この場合、接着剤18の注入部以外を封止する。
【0060】
なお、前記した第3工程において、研磨処理による不要金属24の除去を行った場合、第1、第2の光制御パネル11、11aの溝16には第2の合成樹脂31が充填され硬化している。
このため、第2の合成樹脂31が充填され硬化した第1の光制御パネル11を、溝16の開口側を上にした状態で支持台32上に配置し、この第1の光制御パネル11の上に透明樹脂(液体(ゼリー状))を載せる。続いて、第1の光制御パネル11上に、第2の合成樹脂31が充填され硬化した第2の光制御パネル11aを、それぞれの垂直光反射面12が平面視して直交配置された状態で、溝16の開口側(凹凸面側)を向かい合わせて配置して、上記した方法により第1、第2の光制御パネル11、11aを接合する。
ここで、第1、第2の光制御パネル11、11aを接合する透明樹脂には、前記した第2の合成樹脂や任意の屈折率の透明樹脂(接着剤)を使用することができる。
これによって、図4(E)に示す立体像結像装置10が完成する。
【0061】
次に、図8(A)、(B)を参照しながら、本発明の第2の実施例に係る立体像結像装置の製造方法により製造した立体像結像装置50について説明するが、前記した立体像結像装置10と同一部材には同一符号を付し、詳しい説明を省略する。
前記した立体像結像装置10は、第1、第2の光制御パネル11、11aを別々に製造し、溝16を向かい合わせた状態で重ね合わせて一体化して形成したものである。一方、この立体像結像装置50は、板本体(透明板本体)51の表裏側(両側)に形成される溝52、53及び凸条54、55を、金型(図示しない)によって一体成型して、形成されたものである。
【0062】
この立体像結像装置50は、中央に位置する板本体51の表側(一側)に、垂直面56と傾斜面57を有する断面三角形の溝(第1の溝)52、及び隣り合う溝52によって形成される断面三角形の凸条(第1の凸条)54が、それぞれ平行配置されて凹凸面が形成され、板本体51の裏側(他側)に、垂直面58と傾斜面59を有する断面三角形の溝(第2の溝)53、及び隣り合う溝53によって形成される断面三角形の凸条(第2の凸条)55が、それぞれ平行配置されて凹凸面が形成された、透明な第1の合成樹脂からなる成型母材60を有している。そして、成型母材60の断面三角形の凸条54、55の頂部には、第1の微小平面部19が形成されている。
なお、第1の微小平面部19の代わりに、前記した曲面部19aが形成されてもよい。この場合、曲面部19aは断面円弧状となっていることから、表面に金属反射面が形成されても、微小反射曲面となって微小反射平面とはならない。
【0063】
この板本体51の表側に形成された溝52と、板本体51の裏側に形成された溝53とは、平面視して直交(例えば、85〜95度、より好ましくは88〜92度の範囲で交差した状態を含む)している。
溝52、53は、立体像結像装置10の溝16と同様の構成であり、凸条54、55は、立体像結像装置10の凸条17と同様の構成である。この溝52、53の垂直面56、58に、金属被膜22からなる垂直光反射面12が形成されている。従って、立体像結像装置50は、一側及び他側に垂直光反射面12が平面視して直交状態で形成されている。
この垂直光反射面12の高さをh1とすると、板本体51の厚みTは、例えば、0.5×h1〜3×h1(更には、上限が1×h1)の範囲にあるのが好ましい。また、垂直光反射面12のピッチpに対する垂直光反射面12の高さh1のアスペクト比(h1/p)は0.8〜5の範囲にあるのが好ましい。
【0064】
なお、溝52、53の内部は、透明な第2の合成樹脂からなる充填剤18a(前記した接着剤18と同一成分)で埋められている(充填されている)。この溝52、53を埋めた充填剤(充填材)18aの表面は、特に処理せずにそのままの状態でもよく、また、必要に応じて硬化後、研削(研磨)してもよい。
また、充填剤18aの表面(露出面)に、例えば、第1の合成樹脂又は第2の合成樹脂からなる透明平板を配置することもできる。なお、透明平板は、凸条54、55の頂部(第1の微小平面部19)に当接してもよく、また、凸条54、55の頂部とは隙間を有してもよい。
このように、充填剤18aの表面に透明平板を配置する場合、立体像結像装置を補強できるため、板本体51の厚みTをより薄くできるので好ましい。
【0065】
上記した立体像結像装置50は、板本体51の両側(一側及び他側)に、断面三角形の第1、第2の溝52、53、及び断面三角形の第1、第2の凸条54、55がそれぞれ形成された成型母材60を用いるので、第1、第2の溝52、53及び第1、第2の凸条54、55を一体的に製造でき、立体像結像装置50の製造が容易になる。
なお、第1の微小平面部19は、前記した立体像結像装置10と同様に、金属噴射によって第1の微小平面部19に付着する不要金属24が除去され、透明な光通過面(非光反射面)としている(特に、第1の微小平面部の幅が10μm超の場合)。また、前記したように、第1の微小平面部19に、第1の微小平面部19からの光反射を防止する光吸収膜34〜36を形成して、第1、第2の凸条54、55の頂部を非透光の非光反射面とすることもできる(図6(A)〜(C)参照)。更に、曲面部19aの場合は光吸収膜33aを形成する(図2(B)参照)。
【0066】
続いて、本発明の第2の実施例に係る立体像結像装置50の製造方法について、図9(A)〜(E)を参照しながら説明するが、前記した第1の実施例に係る立体像結像装置10の製造方法と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0067】
(第1工程)
図9(A)に示すように、板本体51の両側に、断面三角形の溝52、53、及び隣り合う溝52、53によって形成される断面三角形の凸条54、55がそれぞれ形成され、しかも凸条54、55の頂部と溝52、53の底部にそれぞれ第1、第2の微小平面部19、20が形成され、かつ板本体51の両側にそれぞれ形成された溝52、53(垂直面56、58)が平面視して直交して配置された成型母材60を、インジェクション成型によって製造する。
この成型母材60は、前記した立体像結像装置10の成型母材21と同様、透明な第1の合成樹脂によって形成されている。また、インジェクション成型は、前記した立体像結像装置10の成型母材21と同様、成型母材60の形状に対応する空間部が内部に形成された金型を用い、溶融状態の第1の合成樹脂を、第1の合成樹脂が流動可能な温度に加温調整された金型の空間部に供給し、成型母材60の第1、第2の凸条54、55の断面三角形を形成する空間部の先端(ここでは上端と下端)に行き渡らせた後、金型を急速冷却する(図7参照)。
【0068】
(第2工程)
図9(B)に示すように、垂直面56に対して例えばスパッターリングを行う。これにより、垂直面56から第1の微小平面部19にかけて金属反射面23が形成される。具体的には、ガスの流れ28を傾斜面57に沿って(垂直面56に対して斜め方向(特定方向)から)、かつ傾斜面57が影になるようにして、垂直面56に向けてスパッターリング(金属粒噴射も含む)を行う。なお、垂直面58も同様の方法で鏡面処理を行う。
この鏡面処理には、スパッターリングの代わりに、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射を用いて、金属噴射を行うこともできる。
【0069】
(第3工程)
図9(C)に示すように、第2工程の金属噴射によって第1の微小平面部19に付着した金属被膜、即ち不要金属24を、前記した剥離処理、研磨処理(研削処理)、又は溶解処理によって除去して、第1の微小平面部19を非光反射とする透光処理を行う(特に、第1の微小平面部の幅が10μm超の場合)。なお、第1の微小平面部19には、前記したように、光吸収膜34〜36を形成する非透光処理を行うこともできる(図6(A)〜(C)参照)。また、曲面部19aの場合は光吸収膜33aを形成する(図2(B)参照)。
これによって、一側の垂直面56及び他側の垂直面58の各表面に金属被膜(金属反射膜)22が形成され、その表面が垂直光反射面12となり、立体像結像装置本体61が得られる。
【0070】
(第4工程(樹脂充填工程))
図9(D)に示すように、立体像結像装置本体61の上に、前記した第2の合成樹脂からなる充填剤18aを載せ、この充填剤18aで溝52を埋めて硬化させる。そして、立体像結像装置本体61を反転させ、立体像結像装置本体61の上に、前記した第2の合成樹脂からなる充填剤18aを載せ、この充填剤18aで溝53を埋めて硬化させる。
なお、使用する充填剤18aは液体(例えば、ゼリー状)である。
ここで、各溝52、53への充填剤18aの充填は、脱気状態で行うことが好ましい。また、各溝52、53への充填剤18aの充填の際(又は、充填後)には、平面化処理を行うことが好ましい。この平面化処理は、プレス等で押す場合、金型で成型する場合の他、切削又は研磨による場合や、液体の充填剤18a上に透明平板を配置する場合も含む。
なお、前記した第3工程において、研磨処理による不要金属24の除去を行う場合、上記した第4工程の処理が不要となる。
これにより、図9(E)に示す露出面が平面となった平板状の立体像結像装置50が得られる。
なお、以上の実施例において、インジェクション成型で金型内に樹脂を充填する場合には、金型を垂直に保って行うと成型母材をより均一な平面とすることができる。脱型時には、急速冷却により金型の温度を第1の合成樹脂のガラス転移温度Tgよりも下げて第1の合成樹脂を硬化させてから行う(ヒートアンドクール処理)。
【0071】
以上、本発明を、実施例を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施例や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の立体像結像装置の製造方を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施例においては、曲面部や微小平面部を非光反射面とする処理を行った場合について説明したが、例えば、微小平面部の幅(狭い)や要求される製品品質によっては、上記した非光反射面とする処理を行わなくてもよい(微小平面部にも金属被膜が形成され、垂直面から微小平面部にかけて金属反射面が形成された状態でもよい)。また、前記したように、微小平面部の幅は非常に狭いことから、微小平面部に不要金属である金属被膜(金属反射面)が形成されない場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る立体像結像装置の製造方は、アスペクト比が比較的高く、鮮明な画像を得ることができる立体像結像装置を容易にかつ安価に製造できる。これによって、立体像結像装置を、映像を必要とする機器(例えば、医療機器、家庭電気製品、自動車、航空機、船舶等)で有効に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
10:立体像結像装置、11:第1の光制御パネル、11a:第2の光制御パネル、12:垂直光反射面、13:板本体、14:垂直面、15:傾斜面、16:溝、17:凸条、18:接着剤、18a:充填剤、19:第1の微小平面部、19a:曲面部、20:第2の微小平面部、21:成型母材、22:金属被膜、23、23a、23b:金属反射面、24、24a、24b:不要金属、25、26:傾斜面、27:仮想平面、28:ガスの流れ、29:シート、30:液状接着剤、31:第2の合成樹脂、32:支持台、33:プレス、33a:光吸収膜、34〜36:光吸収膜、37、37a:第1の着色膜、38、38a:第2の着色膜、39:空間部、40:金型、41、42:型、43:溝部、44:底面、45:先端、46:溶融状態の第1の合成樹脂、50:立体像結像装置、51:板本体、52、53:溝、54、55:凸条、56:垂直面、57:傾斜面、58:垂直面、59:傾斜面、60:成型母材、61:立体像結像装置本体
【要約】
板本体13の一側に、傾斜面15と垂直面14とを有する断面三角形の溝16、及び断面三角形の凸条17が交互に平行配置された透明な第1の合成樹脂からなる成型母材21を、インジェクション成型で製造し、垂直面14に対し金属噴射を行って垂直光反射面12を形成してそれぞれ製造した第1、第2の光制御パネル11、11aを、透明な第2の合成樹脂を介し、その凹凸面側を合わせて重ね合わせ硬化させて一体化して立体像結像装置10を製造するに際し、インジェクション成型には、成型母材21の形状に対応する空間部39が内部に形成された金型40を用い、溶融状態の第1の合成樹脂46を、第1の合成樹脂46が流動可能な温度に加温調整された金型40の空間部39に供給し、成型母材21の凸条17の断面三角形を形成する空間部39の先端45に行き渡らせ、金型40を急速冷却し、第1、第2の合成樹脂の屈折率η1、η2の差を0.1以下とした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12