特許第6616581号(P6616581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616581
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/00 20060101AFI20191125BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20191125BHJP
   B23B 31/117 20060101ALN20191125BHJP
【FI】
   B23B31/00 C
   B23Q3/12 A
   !B23B31/117 601E
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-69220(P2015-69220)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187857(P2016-187857A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127042
【氏名又は名称】株式会社アルプスツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】宮入 秀治
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭36−013016(JP,Y1)
【文献】 実開昭60−017935(JP,U)
【文献】 特開昭62−015055(JP,A)
【文献】 特開平02−250702(JP,A)
【文献】 実開平06−054964(JP,U)
【文献】 特開平06−254740(JP,A)
【文献】 特開平07−214456(JP,A)
【文献】 特開平08−155783(JP,A)
【文献】 特開平11−285908(JP,A)
【文献】 特開2000−000736(JP,A)
【文献】 特開2002−028837(JP,A)
【文献】 特開2003−001544(JP,A)
【文献】 特開2003−117767(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0095075(US,A1)
【文献】 特開2006−068860(JP,A)
【文献】 特開2008−110456(JP,A)
【文献】 特表2008−540152(JP,A)
【文献】 特開2008−298225(JP,A)
【文献】 特表2009−513374(JP,A)
【文献】 特開平07−195233(JP,A)
【文献】 特開平09−057574(JP,A)
【文献】 特開2011−120976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00−33/00
B23Q 3/00−3/154
B23Q 3/16−3/18
B23Q 11/00−13/00
F16J 15/16−15/32
F16J 15/324−15/3296
F16J 15/46−15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体通路を有するツールホルダを着脱可能であって、前記第1の流体通路と連絡する第2の流体通路が形成された本体を備え、前記本体に前記ツールホルダをクランプした際に前記第1の流体通路と前記第2の流体通路が連絡し、当該流体通路に流体が供給されるクランプ装置において、
前記第1及び第2の流体通路に供給される流体と前記クランプ装置内部が連絡する前記本体とツールホルダの間の隙間を塞ぐシール部材を備え、
前記シール部材を、前記ツールホルダのクランプ時において前記ツールホルダとの間の潰し代が大きい第1の位置と、前記ツールホルダのアンクランプ時において前記第1の位置よりも前記ツールホルダとの間の潰し代が小さい第2の位置との間で移動可能とし
前記シール部材を配置する溝を有し、前記溝の底面は、前記ツールホルダのアンクランプ方向に向かって徐々に深くなるように傾斜しており、
前記溝に配置される前記シール部材は、前記ツールホルダのアンクランプ時において前記第1の流体通路に露出することを特徴とするクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に取り付けられるツールホルダを着脱可能なクランプ装置に関し、特には、クランプ装置とツールホルダに形成される通路に供給される流体の漏洩を防止するシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にマシニングセンタ・旋盤等の工作機械は、工具主軸の先端側に取り付けられるツールホルダを着脱可能なクランプ装置を備えている。クランプ装置とツールホルダには、冷却液を工具の刃先に供給するための通路が形成されており、この通路を通して工具の刃先に冷却液が供給される。
【0003】
一般的にこの通路110は、図6に示すように、工具主軸101の軸線方向に直線的に形成され、各通路101a、101bは、クランプ装置100のドローバ105とツールホルダ120間に配置されるクーラントチューブ125を介して連絡される。また、クランプ装置のドローバとクーラントチューブの嵌合面にはOリング136によるシール機構135が設けられており、冷却液の漏洩が防止される。
【0004】
なお、一般的にシール機構は、外部に連絡する隙間に接するどちらか一方の部材に溝を形成し、この溝にOリングを配置して、当該Oリングにより隙間を封止して外部への漏洩が防止される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−513374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、手動式のクランプ装置が従来から知られており、この種のクランプ装置は、図1に示すように、クランプ用カムシャフト等の部品が工具軸の軸線を横切るように配置されているため、クランプ装置の通路を工具軸の軸線方向に直線的に形成しにくい。
【0007】
したがって、手動式のクランプ装置に冷却液を供給するための通路を形成する場合、ツールホルダに形成された通路と直交するように、クランプ装置の周囲から中央に向かって横穴等により通路を形成し、ツールホルダ側の通路と連絡させればよい。
【0008】
この場合、ドローバとツールホルダの間の隙間をシール部材により封止しクランプ装置内部への液体の漏洩を防止したいが、ツールホルダをアンクランプする際、ドローバーがツールホルダ側に押し出される関係上、ツールホルダ側の通路にシール部材が露出するため、ツールホルダを引き抜く際に、ツールホルダとドローバの間の隙間にシール部材が食い込み破損するおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は上記問題を課題の一例として為されたもので、クランプ装置内部への液体の漏洩を防止可能であって、ツールホルダのアンクランプによってシール体を破損させずにツールホルダのクランプ・アンクランプが良好に行えるクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のクランプ装置(10)は、第1の流体通路(51)を有するツールホルダ(30)を着脱可能であって、前記第1の流体通路(51)と連絡する第2の流体通路(52)が形成された本体(11)を備え、前記本体に前記ツールホルダをクランプした際に前記第1の流体通路と前記第2の流体通路が連絡し、当該流体通路に流体が供給されるクランプ装置において、前記第1及び第2の流体通路と前記クランプ装置内部が連絡する前記本体とツールホルダの間の隙間(S)を塞ぐシール部材(65)を備え、前記シール部材を、前記ツールホルダのクランプ時において前記ツールホルダとの間の潰し代が大きい第1の位置と、前記ツールホルダのアンクランプ時において前記第1の位置よりも前記ツールホルダとの間の潰し代が小さい第2の位置との間で移動可能とし、前記シール部材を配置する溝(64)を有し、前記溝の底面(64a)は、前記ツールホルダのアンクランプ方向に向かって徐々に深くなるように傾斜しており、前記溝に配置される前記シール部材は、前記ツールホルダのアンクランプ時において前記第1の流体通路に露出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体の漏洩を確実の防止しつつ、ツールホルダのアンクランプによってシール体が隙間に食い込んで破損することを防止できる。また、ツールホルダのクランプ・アンクランプ動作を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】クランプ装置の使用状態を示す模式図である。
図2】ツールホルダの構成を示す模式図である。
図3】クランプ装置の動作例を説明するための模式図である。
図4】シール機構の構成例を示す模式図である。
図5】他のシール機構の構成例を示す模式図である。
図6】従来のクランプ装置の冷却液を供給するための通路の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下のクランプ装置10の説明において、便宜的に図1に示す左・右方向をクランプ装置10の前後方向、上・下方向をクランプ装置10の上下方向として説明する。また、以下の説明において、ツールホルダ30をクランプ装置10に装着する行為を「クランプ」と称し、ツールホルダ30をクランプ装置10から取り外す行為を「アンクランプ」と称する。
【0016】
本実施形態のクランプ装置10は、例えば、図示しないが、マシニングセンタ・旋盤等の工作機械に設けられ、ツールホルダ30を着脱するための着脱ユニットとして機能する。ツールホルダ30には、切削工具として機能する複数の種類の工具(以下、「ツール」という)の中から切削すべきワークに応じて選択されたツールがそれぞれ取り付けられる。また、本実施形態のクランプ装置10は、特に、手動式のクランプ装置10に好適に使用される。なお、工作機械は、従来から公知のため、詳細な説明は省略するものとする。
【0017】
図1に示すように、クランプ装置10は、軸線方向に延びる工具軸11(本願の本体)を備え、その前方部は環状に形成され、内側に空間部12を有している。図示しないが、この工具軸11の前方部には、ドローバー15を介してツールホルダ30がクランプされる。なお、工具軸11は、工作機械の種類により、回転する場合も固定されて回転しない場合も存在する。
【0018】
工具軸11の空間部12には、図1に示すように、ドローバ15と、このドローバ15に形成されている貫通孔(図示しない)に配置されるカム部16aを有するカムシャフト16と、が設けられている。そして、カムシャフト16によりこのカム部16aを工具軸11の軸線に直交する軸周りに所定の方向に回転させることで、ドローバ15を工具軸11の軸線方向に移動(往復運動)可能になっている。
【0019】
工具軸11には、その外周面からカムシャフト16の一端側に向けて貫通穴17が形成され、その貫通穴17には、カムシャフト16が配置され、このカムシャフト16には回転操作するための操作部20が設けられている。この操作部20は、六角レンチ等の操作工具と嵌合され、この操作工具によって回転操作される。
【0020】
ドローバ15は、バネ等の弾性部材22によって常に前方側に付勢されているとともに、その外周面が工具軸11の内壁に対して工具軸11の軸線方向に擦動可能に配置されている。また、ドローバ15は、操作部20によるカムシャフト16の回転操作により、弾性部材22に抗して後方へと移動可能となっている。
【0021】
また、ドローバ15の前方外周面には、ツールホルダ20を固定するためのクランプセグメント24を含むチャック機構25が設けられているとともに、クランプセグメント24の先端側を径方向に移動させるためのガイド部26を有している。
【0022】
また、ドローバ15の前方端部の周面は、斜面を有するように面取りされて形成されており、後述するシール体65を溝64に挿入しやすくなっている。
【0023】
図2に示すように、ツールホルダ30は、後方が環状に形成された結合部32を備え、この結合部32の後方にはドローバ15の先端部を収容する収容部33を有している。結合部32の後方内周面には環状の溝35が形成されており、この溝35は、図1に示すように、ツールホルダ30がクランプされる際に、ドローバ15に設けられているクランプセグメント24の先端部と係合される。また、結合部32の外周面は後方側の径が若干縮小されるように工具軸11の軸線方向に傾斜するテーパ面を有して形成されており、アンクランプ時におけるドローバ15の移動により押し出されやすくなっている。
【0024】
なお、本実施形態の用語として用いられる「環状」には、略多角形状も含まれ、具体的には結合部32の後方は、工具軸11の軸線方向に対する横断面が円形状であるが多角形状であっても構わない。
【0025】
図1に示すように、ツールホルダ30は、操作部20によるカムシャフト16の回転操作により、ドローバー15を工具軸11の軸線方向へ移動させることで工具軸11の先端側でクランプ、又はアンクランプされる。
【0026】
具体的には、図1の下方側のクランプ状態図に示すように、矢印で示すドローバ15の後方への移動によって、クランプセグメント24はガイド部26に沿ってその先端部が後端部を支点としてツールホルダ30側へと回動し、その先端部がツールホルダ30の溝35に案内される。そして、クランプセグメント24の先端部がツールホルダ30の溝35と係合されることでツールホルダ30がクランプ装置10に固定される。
【0027】
一方、図1の上方側のアンクランプ状態図に示すように、矢印で示すドローバ15の前方への移動によって、クランプセグメント24はガイド26に沿ってその先端部が後端部を支点としてドローバ15側へと回動し、その先端部がツールホルダ30の溝35から解放され離反する、またドローバ15で押し出されることで結合部32の結合(食いつき)が解かれる、続いてツールホルダ30がクランプ装置10から引き抜かれ、取り外される。
【0028】
また、図3に示すように、ツールホルダ30とクランプ装置10には、ツールに冷却液(本願の流体)を供給するための冷却液供給路51、52がそれぞれに形成されており、ツールホルダ30をクランプ装置10にクランプした際に各冷却液供給路51、52が連絡しツールに冷却液を供給可能である。なお、図示しないが、冷却液供給路51(本願の第1の流体通路)の一端はツールに連絡し、他の冷却液供給路52(本願の第2の流体通路)の他端は、冷却液を供給する冷却液供給源と連絡し、冷却液供給源から供給される冷却液が各冷却液供給路51、52を通って、ツールから外部へと放出される。
【0029】
ツールホルダ30の冷却液供給路51は、結合部32の外周面から収容部33に鉛直方向に貫通して形成される第1の孔部51aと、収容部33と連絡し結合部32の内部を軸線方向に直線的に延びる第2の孔部51bによって形成されている。
【0030】
一方、クランプ装置10の冷却液供給路52は、工具軸11の前方部外周面側から空間部12に鉛直方向に貫通して形成される第3の孔部52aによって形成されている。
【0031】
そして、ツールホルダ30がクランプされた際に、クランプ装置10の第3の孔部52aとツールホルダ30の第1の孔部51aとが連絡するとともに、ツールホルダ30とクランプ装置10との隙間Hを介して第1の孔部51aと第2の孔部51bが連絡すること
で、冷却液が冷却供給源からツールへと供給される。
【0032】
また、ツールホルダ30のクランプ時において、ツールホルダ30の後端側外周面は工具軸11の内壁面に沿って工具軸11の空間部12に挿入され、ツールホルダ30の後端側内周面は、ドローバ15の外周面に沿って工具軸11の空間部12に挿入される。
【0033】
そして、ツールホルダ30がクランプされ、冷却液が供給されると、ドローバ15の外周面とツールホルダ30の内周面との間に形成された環状の隙間Sからクランプ装置10内部へと冷却液が漏洩するため、この隙間Sにはシール機構60が設けられている。
【0034】
図4に示すように、シール機構60は、ドローバ15の先端部外周面に形成された環状の溝64と、この溝64に保持される環状のシール体65(本願のシール部材)と、を備え、シール体65は、初期の漏れが生じないようツールホルダ30の内周面に常に接触するように溝64の開口から突出して配置され、環状の隙間Sは、このシール体65によって封止される。
【0035】
溝64は、シール体65を移動させるために工具軸11の軸線方向に延びて形成され、その底面64aは前方側の径が縮小されるように工具軸11の軸線方向に傾斜して形成されている。また、前記溝64の側面は、前記ツールホルダ30のクランプ時かつ冷却液の加圧時において、前記シール体65の一端側が接触する壁面64bと、前記ツールホルダ30のアンクランプ時において、前記シール体65の他端側が接触する壁面64cを有する。また、壁面64cと底面64aとが接続する隅部はシール体の外周面の一部が接触するように傾斜して形成されている。
【0036】
このようにすれば、シール体65は、ツールホルダ30のクランプ・アンクランプによって溝64内を移動可能となり、シール体65が溝64の左側の第1の位置に配置された場合と、右側の第2の位置に配置された場合で溝64から露出する露出量を相違させ、ツールホルダ30のクランプ後、冷却液の加圧時には第1の位置においてシール部材65の潰し代を大きくし、前記ツールホルダ30のアンクランプ時には第2の位置において第1の位置よりもシール部材65の潰し代が小さくなるように設定される。
【0037】
さらに具体的には、シール体65が第2の位置に配置された場合には、初期のシールに必要な最低限の接触圧でツールホルダ30に接触させ、シール体65が第1の位置に配置された場合には、高圧の液体(冷却液)の漏洩を防止するのに必要な接触圧でツールホルダ30に接触させるように溝64の底面64aの傾斜具合やシール体65の外径及び硬さなどが適宜設定される。
【0038】
シール体65は、ゴム材又は弾力性を有する樹脂製の外観が環状に形成された部材であって、その断面は円形状に形成されている。このシール体65は、例えば、Oリングが用いられ、径方向に伸ばされた上で、環状の溝64に嵌合され、ツールホルダ30の移動、冷却液の供給によって、溝64内を移動する。シール体65の断面形状は、ドローバ15に形成される溝64の断面形状にしたがって規定され、円形状のOリングでなくても良い。例えば台形形状などの断面としても良い。
【0039】
なお、シール体65は、常にドローバ15とツールホルダ30との隙間Sを封止すべく、溝64内のいずれの位置においてもツールホルダ30との間がシールされるように設定される。
【0040】
次に、本実施形態のクランプ装置の動作例について図3及び図4を用いて説明する。
【0041】
まず、シール体65は、ツールホルダ30のアンクランプ時においてドローバ15の移動により移動し、図3の上方側のアンクランプ状態図に示すように、溝64の右側の壁面64cに接触するように配置される。
【0042】
そして、図3の下方側のクランプ状態図に示すように、ツールホルダ30のクランプ時において、ツールホルダ30を工具軸11の空間部12に挿入するとともに操作部20におけるクランプ操作を行うことにより、ドローバ15が左側に引き込まれ、上述したようにクランプセグメント24の先端部がツールホルダ30の溝35と係合されることでツールホルダ30がクランプ装置10に固定される。
【0043】
このとき、シール体65は、ツールホルダ30の挿入時には溝64の右側に移動しているため、ツールホルダー30が主軸11の空間部12に挿入しやすくなっている。
【0044】
ツールホルダ30のクランプ後、冷却液供給源から冷却液が供給されると、冷却液供給路51、52を冷却液が通過するため、シール体65には冷却液による圧力流体が作用する。シール体65は、この圧力流体により溝64の左側壁面64bに押し込まれることにより、ツールホルダ30に対する接触圧が高められ、シール性能を発揮し、冷却液の隙間Sからのクランプ装置10内部への漏洩を防止する。
【0045】
一方、ツールホルダ30のアンクランプ時において、冷却液の供給が停止され、操作部20におけるクランプ操作によりドローバ15が右側に移動すると、上述したようにクランプセグメント24はツールホルダ30の溝35から離反するとともにツールホルダ30が右側に押し出されるため、引き抜き可能となる。
【0046】
このとき、シール体65は、高い接触圧でツールホルダ30に接触しているものの、溝64の底面64aはシール体65の移動によって接触圧が低くなるように傾斜しており、ツールホルダ30の引き抜きとともにシール体65が右に移動しやすくなっていることから、ツールホルダ30を引き抜きやすい。
【0047】
また、アンクランプ時において、シール体65は溝64の右側壁面64cに移動し、第1の孔部51aに一部が露出しており、ツールホルダ30の更なる引き抜きによって、この露出した部分がドローバ15とツールホルダ30の間の隙間Sに食い込み破損する可能性があるものの、本実施形態のシール機構60では、シール体65の接触圧が十分低い位置でツールホルダ30が引き抜かれるため、シール体65は変形しにくくなっており、ツールホルダ30の引き抜きによって隙間Sにシール体65が食い込まれることがなく、シール体65の破損を十分に防止できる。
【0048】
このように本実施形態のクランプ装置10のシール機構60は、常にツールホルダ30とドローバ15との隙間Sのシール性を保持しつつ、アンクランプ時におけるツールホルダ30の移動にともなってシール体65が溝64内を接触圧の低い右側に移動するため挿入しやすく、更には、クランプ後の冷却液の供給による圧力流体がシール体65に作用した際に、シール体65が溝64内を接触圧の高い左側に移動し適切なシール性が保持されるため、冷却液の漏洩を適切に防止可能である。
【0049】
また、アンクランプ時におけるツールホルダ30の移動にともなって、接触圧が低下するようにシール体65が移動し易くなっており、更には、シール体65の接触圧が十分低い位置でツールホルダ30が引き抜かれるため、シール体65が変形しにくくなっており、シール体65の一部が溝64から飛び出し、隙間Sに食い込むことにより破損する危険性を低くすることが可能である。
【0050】
次に、シール機構60の溝の形状の他の実施形態について図5を用いて説明する。
【0051】
上記実施形態のシール機構60の溝64は、底面64aが山型の傾斜面を有しているのに対して、図5(a)の溝70は、底面70aと右側の壁面70cとの隅部が傾斜してなく、所定の空間(隙間)を有している点で異なる。このようにすれば、シール体65が変形しやすくなるとともに、溝70の加工を容易にできる利点を有する。
【0052】
また、図5(b)の溝71は、底面71aと右側の壁面71cとの隅部が水平(主軸の軸線と平行)に形成されている点で異なる。このようにすれば、溝71の寸法管理がしやすく、適切な接触圧の実現が出来る。
【0053】
なお、本願は本実施形態に限定されるものではなく、種々の形態にて実施することが可能である。例えば、本実施形態では、シール機構60はドローバ15に設けられているが、ツールホルダ30側に設けられていても構わない。
【0054】
また、本実施形態のシール機構60の溝64の底面は傾斜面としたが、スムースな移動が可能であれば例えば細かな階段状に形成しても構わない。またドローバ15の工具軸11の軸線方向に対する横断面形状は、円形状の他、例えば、楕円、略多角形(三角・四角・六角・八角)の場合がある。この形状に合わせた一周の溝で溝64を形成することも考えられる。
【0055】
また、本実施形態では、冷却液通路が略L字状に曲折して形成されているが、例えば、図6に示すクランプ装置のように、軸方向に直線的に形成される冷却液通路を有する場合にも、本実施形態のシール機構60を用いることで、ツールホルダの抜き差しが容易となる。
【符号の説明】
【0056】
S 隙間
10 クランプ装置
11 主軸
30 ツールホルダ
51、52 冷却液供給路
60 シール機構
64 溝
64a 底面
65 シール体
図1
図2
図3
図4
図5
図6