特許第6616597号(P6616597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6616597-1,4−ジオキサン処理方法 図000005
  • 特許6616597-1,4−ジオキサン処理方法 図000006
  • 特許6616597-1,4−ジオキサン処理方法 図000007
  • 特許6616597-1,4−ジオキサン処理方法 図000008
  • 特許6616597-1,4−ジオキサン処理方法 図000009
  • 特許6616597-1,4−ジオキサン処理方法 図000010
  • 特許6616597-1,4−ジオキサン処理方法 図000011
  • 特許6616597-1,4−ジオキサン処理方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616597
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】1,4−ジオキサン処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20191125BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20191125BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20191125BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20191125BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   C02F1/28 D
   B01J20/28 Z
   B01J20/20 B
   C02F3/34 Z
   B01J20/34 D
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-129392(P2015-129392)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-12957(P2017-12957A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲史
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐二
(72)【発明者】
【氏名】河内 昭典
(72)【発明者】
【氏名】澤田 重明
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一臣
(72)【発明者】
【氏名】内田 充洋
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−313610(JP,A)
【文献】 特開2014−034500(JP,A)
【文献】 特開2014−188506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J20/00−20/34
C02F 3/28− 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性官能基量が190μmol/g以上であり、全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合が40〜60%である1,4−ジオキサン吸着用活性炭を使用することを特徴とする1,4−ジオキサン処理方法。
【請求項2】
予め、1,4−ジオキサン以外の有機化合物処理を行った後に行うことを特徴とする請求項1に記載の1,4−ジオキサン処理方法。
【請求項3】
1,4−ジオキサン分解菌による生物処理により、1,4−ジオキサン濃度を低下させた後に行うことを特徴とする請求項1または2に記載の1,4−ジオキサン処理方法。
【請求項4】
1,4−ジオキサンを吸着した1,4−ジオキサン吸着用活性炭を、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で熱処理して再生し、
該再生した1,4−ジオキサン吸着用活性炭を使用することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の1,4−ジオキサン処理方法。
【請求項5】
前記活性炭が繊維状活性炭であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の1,4−ジオキサン処理方法。
【請求項6】
塩基性官能基量が190μmol/g以上であり、全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合が40〜60%であることを特徴とする1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
【請求項7】
酸性官能基量に対する塩基性官能基量の比(塩基性官能基量/酸性官能基量)が0.5以上である請求項6に記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
【請求項8】
比表面積が700〜1000m/gである、請求項6または7に記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
【請求項9】
塩基性官能基量が300μmol/g以上である、請求項6〜のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
【請求項10】
繊維状活性炭であることを特徴とする請求項6〜のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭を含む、1,4−ジオキサン吸着用シート。
【請求項12】
請求項6〜10のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭を含む、1,4−ジオキサン吸着用フィルター。
【請求項13】
1,4−ジオキサンを吸着した請求項6〜10のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭、請求項11に記載の1,4−ジオキサン吸着用シート、または請求項12に記載の1,4−ジオキサン吸着用フィルターのいずれか1以上を、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で加熱処理することを特徴とする再生方法。
【請求項14】
賦活処理工程の後に、活性炭と塩基性物質とを接触させる塩基性官能基付与工程を有することを特徴とする塩基性官能基量が190μmol/g以上であり、全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合が40〜60%である1,4−ジオキサン吸着用活性炭の製造方法。
【請求項15】
雰囲気温度800〜1200℃でおこなう賦活処理工程と、該賦活処理工程より後に空気存在下室温まで冷却する冷却工程とを有することを特徴とする塩基性官能基量が190μmol/g以上である1,4−ジオキサン吸着用活性炭の製造方法。
【請求項16】
活性炭を、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で加熱処理することを特徴とする塩基性官能基量が190μmol/g以上であり、全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合が40〜60%である1,4−ジオキサン吸着用活性炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭を使用する1,4−ジオキサンの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4−ジオキサンは、下記式(1)で表される環状エーテルである。1,4−ジオキサンは、主に有機合成の反応溶剤として使用されている。
【0003】
【化1】
【0004】
2010年度の日本国における1,4−ジオキサンの製造・輸入量は、約4500t/年であり、約300t/年が環境中へ放出されたと推測される。1,4−ジオキサンは、水溶性であるため、水環境中へ放出されると広域に拡散してしまう。1,4−ジオキサンは、急性毒性及び慢性毒性を有する上、発がん性も指摘されていることから、1,4−ジオキサンによる水環境の汚染は、人や動植物に悪影響を及ぼすことが懸念されている。そのため、日本国では、水道水質基準(0.05mg/L以下)、環境基準(0.05mg/L以下)及び排水基準(0.5mg/L以下)により、1,4−ジオキサンの規制がなされている。
【0005】
1,4−ジオキサンは、揮発性、固体への吸着性、光分解性、加水分解性、生分解性がいずれも低いため、水中から1,4−ジオキサンを取り除くのは困難である。例えば、1,4−ジオキサンは、通常の活性炭への吸着性に劣るため、通常の活性炭を使用する処理方法では十分に除去することができないことが知られており、非特許文献1の表11−1には、1,4−ジオキサンの活性炭吸着について、「1,4−ジオキサンは他物質と比較して活性炭吸着率が低い。また、吸着した後の活性炭を処理することが必要。」と記載されている。そのため、水中に含まれる1,4−ジオキサンの処理には、過酸化水素を添加してのオゾン処理(O/H)、紫外線照射下でのオゾン処理(O/UV)、放射線や超音波照射下でのオゾン処理等、複数の物理化学的な酸化方法を併用する促進酸化法が行われている。しかし、促進酸化法は、イニシャルコストおよびランニングコストが高い。また、1,4−ジオキサン以外の有機物や還元物質が存在すると処理効率が低下すること、および1,4−ジオキサンの濃度が低くなると処理効率が低下することから普及に至っていない。
【0006】
低コストかつ安定的に1,4−ジオキサンを含む水を処理する方法が求められており、特許文献1では、1,4−ジオキサン分解菌による生物処理が提案されている。1,4−ジオキサン分解菌は増殖が極めて遅く、他の微生物が混入していると他の微生物が優先的に増殖してしまうため、1,4−ジオキサン分解菌を培養するには、他の雑菌が混入しないように、事前に培養装置や培地を十分に滅菌する必要がある。滅菌処理には、オートクレーブを用いる蒸気滅菌、オーブン等で加熱する乾熱滅菌、ガンマ線を用いる放射線滅菌、エチレンオキサイドガスを用いる化学滅菌等の方法がある。しかし、滅菌のための設備が大規模になりすぎる、エネルギーコストがかかりすぎる、使用する薬品量が膨大となりコスト・安全性の点で問題がある等、いずれの滅菌方法も、大規模スケールで行うことは困難である。そのため、実際の1,4−ジオキサン処理現場で必要とされるだけの大量の1,4−ジオキサン分解菌を供給するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−306939号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】環境省 中央環境審議会水環境部会排水規制等専門委員会 第9回 参考資料1:検討対象に関する情報(1,4−ジオキサン),2013年6月7日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
活性炭を使用する1,4−ジオキサンの処理方法、及び、1,4−ジオキサン吸着能に優れた1,4−ジオキサン吸着用活性炭を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.塩基性官能基量が190μmol/g以上である1,4−ジオキサン吸着用活性炭を使用することを特徴とする1,4−ジオキサン処理方法。
2.予め、1,4−ジオキサン以外の有機化合物処理を行った後に行うことを特徴とする1.に記載の1,4−ジオキサン処理方法。
3.1,4−ジオキサン分解菌による生物処理により、1,4−ジオキサン濃度を低下させた後に行うことを特徴とする1.または2.に記載の1,4−ジオキサン処理方法。
4.1,4−ジオキサンを吸着した1,4−ジオキサン吸着用活性炭を、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で熱処理して再生し、
該再生した1,4−ジオキサン吸着用活性炭を使用することを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の1,4−ジオキサン処理方法。
5.前記活性炭が繊維状活性炭であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の1,4−ジオキサン処理方法。
6.塩基性官能基量が190μmol/g以上であることを特徴とする1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
7.酸性官能基量に対する塩基性官能基量の比(塩基性官能基量/酸性官能基量)が0.5以上である6.に記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
8.比表面積が700〜1000m/gである、6.または7.に記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
9.全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合が40〜60%である、6.〜8.のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
10.塩基性官能基量が300μmol/g以上である、6.〜9.のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
11.繊維状活性炭であることを特徴とする6.〜10.のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭。
12.6.〜11.のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭を含む、1,4−ジオキサン吸着用シート。
13.6.〜11.のいずれかに記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭を含む、1,4−ジオキサン吸着用フィルター。
14.1,4−ジオキサンを吸着した6.〜11.に記載の1,4−ジオキサン吸着用活性炭、12.に記載の1,4−ジオキサン吸着用シート、または13.に記載の1,4−ジオキサン吸着用フィルターを、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で加熱処理すること特徴とする再生方法。
15.賦活処理工程の後に、活性炭と塩基性物質とを接触させる塩基性官能基付与工程を有することを特徴とする塩基性官能基量が190μmol/g以上である1,4−ジオキサン吸着用活性炭の製造方法。
16.雰囲気温度800〜1200℃でおこなう賦活処理工程と、該賦活処理工程より後に空気存在下室温まで冷却する冷却工程とを有することを特徴とする塩基性官能基量が190μmol/g以上である1,4−ジオキサン吸着用活性炭の製造方法。
17.活性炭を、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で加熱処理することを特徴とする塩基性官能基量が190μmol/g以上である1,4−ジオキサン吸着用活性炭の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
塩基性官能基量が190μmol/g以上である1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、4.0μmol/g以上の吸着量(q500)を有しており、従来、活性炭による処理が困難であることが知られていた1,4−ジオキサンを処理することができる。予め、1,4−ジオキサン以外の有機化合物処理を行った後に1,4−ジオキサン吸着用活性炭を使用する処理を行うことで、1,4−ジオキサンをより効率的に処理することができる。また、1,4−ジオキサン分解菌による生物処理により、1,4−ジオキサン濃度を低下させた後に1,4−ジオキサン吸着用活性炭を使用する処理を行うことで、1,4−ジオキサン吸着用活性炭の使用量、交換頻度を減らすことができる。1,4−ジオキサンを吸着した1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で熱処理することで、1,4−ジオキサン吸着用活性炭として再生するため、1,4−ジオキサン吸着用活性炭は繰り返し再利用することができ低コストである。
【0012】
繊維状活性炭は、被処理物との接触効率が高いため、1,4−ジオキサンを効率的に処理することができる。
1,4−ジオキサン吸着用活性炭の酸性官能基量に対する塩基性官能基量の比(塩基性官能基量/酸性官能基量)が0.5以上であると、1,4−ジオキサン吸着能に優れている。また、比表面積が700〜1000m/gであると、活性炭の強度に優れ、繰り返し再生利用しやすくなる。
全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合が40〜60%であると、1,4−ジオキサン吸着能に優れている。また、塩基性官能基量が300μmol/g以上であると、6.0μmol/g以上の吸着量(q500)を有し、さらに効率的に1,4−ジオキサンを処理することができる。
1,4−ジオキサン吸着用活性炭を含むシート、またはフィルターとすることで、取り扱い性が向上し、また、1,4−ジオキサンとの接触効率が高まり、1,4−ジオキサンを効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実験1で使用した活性炭の吸着等温線。
図2】実験1で使用した活性炭の吸着平衡濃度。
図3】実験2で使用した活性炭の吸着等温線。
図4】実験2で使用した活性炭の酸性官能基量と吸着量(q500)との相関図。
図5】実験2で使用した活性炭の塩基性官能基量と吸着量(q500)との相関図。
図6】実験3で使用した活性炭の吸着等温線。
図7】実験3で使用した活性炭の塩基性官能基量と吸着量(q500)との相関図。
図8】活性炭(A−7)の加熱処理温度と、未処理の活性炭に対する塩基性官能基量の増加割合との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
多孔質体は、その細孔構造と高い比表面積とから、吸着剤として利用されている。吸着剤はシリカゲル等の極性吸着剤と活性炭等の非極性吸着剤とに大別される。活性炭はその表面が非極性であるため、水等の極性分子の吸着性に劣り、非極性分子の吸着性に優れている。そのため、一般に、活性炭は、水中に含まれる非極性分子を吸着して取り除くのに適している。
【0015】
上記式(1)で表される構造式を有する1,4−ジオキサンは、エーテル結合とその環状構造とに由来する高い極性を有している。1,4−ジオキサンは高い極性を有するため活性炭への吸着性に劣り、活性炭に吸着して取り除くことが困難であることが知られていた(非特許文献1参照)。
【0016】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の活性炭が通常の活性炭よりも優れた1,4−ジオキサン吸着能を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、塩基性官能基量が190μmol/g以上である1,4−ジオキサン吸着用活性炭を使用することを特徴とする。塩基性官能基量が190μmol/g以上である活性炭が、優れた1,4−ジオキサンの吸着能を示すということは、これまでに知られていない本発明者らによる新規な知見である。
【0017】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭としては塩基性官能基量が190μmol/g以上であるものを特に制限することなく使用することができる。本発明の活性炭の原料としては特に限定されず、木材、おがくず、ヤシガラ、ポリアクリロニトリル系、セルロース系、フェノール樹脂系、石油系ピッチ、石炭系ピッチ等を用いることができる。また、本発明の活性炭の形状は特に限定されず、例えば、粉末状、粒状、繊維状などが挙げられる。被処理物との接触効率が高いため、繊維状活性炭を用いることが好ましい。ジオキサン吸着能をより一層優れたものとする観点から、上記塩基性官能基量の下限としては、190μmol/g以上が好ましく、230μmol/g以上がより好ましく、300μmol/g以上がさらに好ましく、330μmol/g以上が特に好ましく、400μmol/gが一層好ましい。また、塩基性官能基量の上限は特に制限されないが、例えば、好ましくは2000μmol/g以下、より好ましくは1000μmol/g以下が挙げられる。
【0018】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭の酸性官能基量としては、ジオキサン吸着能をより一層優れたものとする観点から、好ましくは600μmol/g以下、より好ましくは400μmol/g以下、特に好ましくは300μmol/g以下が挙げられる。また、酸性官能基量の下限は特に制限されないが、例えば、好ましくは10μmol/g以上、より好ましくは100μmol/g以上、特に好ましくは200μmol/g以上が挙げられる。
【0019】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭における、酸性官能基量に対する塩基性官能基量の比(塩基性官能基量/酸性官能基量)は、ジオキサン吸着能をより一層優れたものとする観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.9以上、1.5以上が特に好ましい。当該比の上限は特に制限されないが、例えば、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.7以下が挙げられる。
【0020】
本発明において、活性炭の塩基性官能基量は、次のように測定されるものである。すなわち、0.1mol/Lの塩酸溶液50mlに、1.0gの活性炭を加え、30分間振盪した後、24時間、25℃で静置する。その後、ろ過を行いろ液を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液で中和滴定を行うことにより、活性炭の塩基性官能基量(μmol/g)を求める。また、本発明において、活性炭の酸性官能基量は、次のように測定されるものである。すなわち、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液50mlに、1.0gの活性炭を加え、30分間振盪した後、24時間、25℃で静置する。その後、ろ過を行いろ液を0.1mol/Lの塩酸溶液で中和滴定を行うことにより、活性炭の酸性官能基量(μmol/g)を求める。
【0021】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭の比表面積(窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値)としては、好ましくは500〜3000m/g、より好ましくは700〜2000m/gが挙げられる。中でも、ジオキサン吸着能を優れたものとしつつ、活性炭の強度をより一層優れたものとし、より一層繰り返し再生利用しやすくする観点からは、700〜1000m/gがより好ましく、700〜900m/gが特に好ましい。
【0022】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭の全細孔容積Vftotalは好ましくは0.3〜1.5ml/gが挙げられる。中でも、ジオキサン吸着能を優れたものとしつつ、活性炭の強度をより一層優れたものとし、より一層繰り返し再生利用しやすくする観点からは、0.3〜0.4ml/gがより好ましく挙げられる。
【0023】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭における、全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合は、好ましくは3〜80%が挙げられる。中でも、ジオキサン吸着能をより一層優れたものとする観点から、20〜80%が好ましく、40〜60%が特に好ましい。
【0024】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭の平均細孔直径(Å)としては、好ましくは17〜40Å、より好ましくは20〜35Åが挙げられる。中でも、ジオキサン吸着能をより一層優れたものとする観点から、25〜35Åが特に好ましい。
【0025】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭のメソ細孔モード直径(Å)としては、5〜70Å程度であることが好ましい。
【0026】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭の細孔分布は、それぞれ、77.4Kにおいて窒素吸着等温線に基づいて算出されるものであり、具体的には次のようにして窒素吸着等温線が作成される。活性炭を77.4K(窒素の沸点)に冷却し、窒素ガスを導入して容量法により窒素ガスの吸着量V[ml/g]を測定する。このとき、導入する窒素ガスの圧力P[mmHg]を徐々に上げ、窒素ガスの飽和蒸気圧P[mmHg]で除した値を相対圧力P/Pとして、各相対圧力に対する吸着量をプロットすることにより窒素吸着等温線が作成される。窒素ガスの吸着は、市販の自動ガス吸着量測定装置(例えば、商品名「AUTOSORB−6」(QUANTCHROME社製)や商品名「BELSORP−mini」(日本ベル社製)等)を用いて実施できる。本発明では、窒素吸着等温線に基づき、公知の解析方法に従って細孔分布を求めることができる。この解析は、上記装置に付属する解析プログラム等のような公知の手段を用いることができる。
【0027】
本発明において、1,4−ジオキサン吸着用活性炭のメソ細孔容積Vfmesoは、上記の細孔分布に基づきBJH法で計算する。BJH法は公知の方法であり、具体的には、「J.Amer.Chem.Soc.,73,373(1951))」に開示された方法が採用される。また、活性炭の全細孔容積Vftotal(ml/g)は、上記の窒素ガスの吸着量の測定結果における窒素の最大吸着量から計算することができる。また、本発明における平均細孔直径(Å)は、下記式1により求めることができ、メソ細孔モード直径(Å)は、前記した細孔分布に基づきBJH法により計算される20〜500Åのメソポア領域における細孔容積分布のピークが位置する細孔直径を意味する。
(式1)
平均細孔直径(Å)=40×全細孔容積Vftotal(ml/g)/比表面積(m/g)
【0028】
本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭を製造する方法としては、例えば、賦活処理工程より後に塩基性官能基付与工程を含む製造方法;雰囲気温度800〜1200℃でおこなう賦活処理工程と、該賦活処理工程より後に空気存在下室温まで冷却する冷却工程と、を含む製造方法等が挙げられる。また、上記のように得られた活性炭を、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で加熱処理する工程を含む製造方法とすることにより、塩基性官能基量がより一層大きいもの(例えば、塩基性官能基量が330μmol/g以上)とすることができる。さらに、従来の方法で製造された活性炭を、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で加熱処理することにより、本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭を製造することもできる。
【0029】
上記した、賦活処理工程より後に塩基性官能基付与工程を含む製造方法に関し、具体的には、活性炭と塩基性物質とを接触させて塩基性官能基を付与するものである。塩基性官能基としてはアンモニウム基を付与することが好ましい。塩基性物質としては、無機酸と中和反応するものであり、かつ、活性炭表面に塩基性官能基を付与する物質であり、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の熱分解性の塩基性物質、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の有機アミン、アンモニア等の揮発性の塩基性物質が挙げられる。塩基性物質は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該製造方法において、上記塩基性物質を溶媒に溶解させた溶液を用いて行ってもよい。また無機酸と塩基性物質との中和反応によって生じた塩も溶解する溶媒であることが好ましい。例えば、水や、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
また、雰囲気温度800〜1200℃でおこなう賦活処理工程と、該賦活処理工程より後に空気存在下室温まで冷却する冷却工程と、を含む製造方法に関し、具体的には、次のとおりである。上記賦活処理工程は、例えば、不融化処理した活性炭原料を、好ましくは水蒸気飽和窒素雰囲気下、雰囲気温度800〜1200℃、より好ましくは850〜1000℃で30〜120分間、賦活処理をおこない、次いで、空気存在下室温まで冷却する。このように、比較的高温で賦活処理をおこない、次いで、空気に接触させることで、塩基性官能基量を高いものとすることができる。
【0031】
1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、例えば、繊維状とする場合、Mg、Mn、Fe、Y、Pt、Gdの少なくとも1種の金属成分を0.01〜5重量%含有するピッチからなる活性炭前駆体を紡糸し、不融化処理、炭化処理を行い、前記した賦活処理工程より後に塩基性官能基付与工程を含む製造方法、または雰囲気温度800〜1000℃でおこなう賦活処理工程と、該賦活処理工程より後に空気存在下室温まで冷却する冷却工程とを含む製造方法により得ることもできる。上記製造方法により、全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合を調整しやすくなる。
【0032】
含有させる金属成分の種類を変化させることと、賦活の温度、時間等を調整することによって、得られる活性炭のメソ細孔モード直径を制御することができる。例えば、(a)Mgを含有する活性炭前駆体から得られる活性炭のメソ細孔モード直径は30〜36Å、(b)Mn、Y、Pt、Gdの少なくとも1種を含有する活性炭前駆体から得られる活性炭のメソ細孔モード直径は34〜40Å、(c)Feを含有する活性炭前駆体から得られる活性炭のメソ細孔モード直径は40〜45Åにそれぞれ制御することができる。また、上記(a)〜(c)の2種以上の金属を含有する活性炭前駆体を用いることで、2種以上の異なるメソ細孔モード直径を有する活性炭を製造することもできる。
【0033】
金属成分の含有量は活性炭前駆体中0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがさらに好ましい。金属成分の含有量が0.01重量%未満の場合は、上記したメソ細孔容積、メソ細孔容積率を満たす活性炭が得られなくなることがある。5重量%を超える場合は、活性炭中で金属成分が凝縮しやすくなり、活性炭の物理的強度が低下してしまうことがある。
【0034】
活性炭前駆体は、金属成分を含む化合物(金属化合物)とピッチとを混合することによって調製することができる。金属化合物としては、上記金属成分が含まれていれば特に限定されず、無機化合物及び有機化合物のいずれも使用することができる。無機化合物としては、例えば塩化物、硝酸塩、酢酸塩等の無機塩類を使用することができる。より具体的には、塩化鉄、硝酸鉄、酢酸鉄等を例示することができる。また、有機化合物としては、上記金属成分とアセチルアセトンやシクロペンタジエン等との有機金属錯体が挙げられる。より具体的には、トリスアセチルアセトナート鉄、トリスシクロペンタジエニル鉄、アセチルアセトナート鉄、アセチルアセトナートマグネシウム、アセチルアセトナートマンガン、アセチルアセトナートイットリウム、アセチルアセトナート白金、アセチルアセトナートガドリニウム等を例示することができる。
【0035】
金属化合物とピッチとの混合方法は、均一に混合できれば限定されない。例えば、金属化合物とピッチとをそのまま混合したり、あるいは適当な溶媒中で両者を混合してもよい。溶媒を用いた場合は、必要に応じて減圧蒸留により取り除く。
【0036】
上記の方法で得られた活性炭を不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で加熱処理することにより、活性炭の塩基性官能基量をより一層大きくすることができ、例えば、塩基性官能基量を300μmol/g以上とすることができる。加熱処理により表面官能基が除去された後に空気と接触することで、含酸素塩基性サイト(クロメン構造やピロン構造等)が発生し、塩基性官能基量が大きくなると推測される。
【0037】
また、従来の方法で製造された活性炭を、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で加熱処理することにより、塩基性官能基量が190μmol/g以上である本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭を製造することもできる。熱処理条件が700℃より低いと塩基性官能基が十分に生成しにくく、1100℃より高いと塩基性官能基量が低下しやすくなる。加熱処理する時間は特に制限されないが、通常10分から24時間程度である。
【0038】
また、本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、当該活性炭を含むシートとすることができる。当該シート形態としては、特に限定されず、織編物、または、湿式抄紙法、乾式不織布法、湿式不織布法などの公知の製造方法によって得ることができる不織布等が挙げられる。また、1,4−ジオキサン吸着用活性炭の混率についても本発明の効果を奏する範囲で限定されず、他の機能性を付与する他の材料、繊維材料等を混合してもよい。シートとすることにより、取り扱い性が向上する。また、1,4−ジオキサンとの接触効率が高まり、1,4−ジオキサンを効率的に処理することができる。
【0039】
さらに、本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、当該活性炭を含むフィルターとすることができる。フィルターとする際は、1,4−ジオキサン吸着用活性炭をそのままハウジングに充填してもよく、上記のようにシート形状としてもよく、バインダー成分、フィブリル化繊維等と混合成型しブロック状のものとしてもよい。フィルターとすることにより、取り扱い性が向上する。また、1,4−ジオキサンとの接触効率が高まり、1,4−ジオキサンを効率的に処理することができる。
【0040】
本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、塩基性官能基量が190μmol/g以上であることから、1,4−ジオキサンの吸着性能に優れる。特に、水道水質基準や地下水の水質汚濁に係る環境基準として、1,4−ジオキサンの濃度基準値が0.05mg/L以下と定められているところ、本発明の活性炭を1,4−ジオキサン濃度が0.05mg/Lを超える水中における該1,4−ジオキサン吸着用として用いると、上記基準を満足するように処理しやすくなり好適である。さらに、水質汚濁防止法施行令に定める特定事業場から公共用水域または下水道へ排出される水質の基準として、1,4−ジオキサンの濃度基準値が0.5mg/Lと定められているところ、本発明の活性炭を1,4−ジオキサン濃度が0.5mg/Lを超える水中における該1,4−ジオキサン吸着用として用いると、上記基準を満足するように処理しやすくなり好適である。また、本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、工場等の排気中に含まれる1,4−ジオキサン吸着用として好適である。
【0041】
本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、塩基性官能基量が190μmol/g以上であることから、1,4−ジオキサンの吸着能に優れる。本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭が備える1,4−ジオキサンの吸着能としては、以下のように測定、算出される活性炭単位質量当りの吸着量q500が4.0μmol/g以上が好ましく、5.0μmol/g以上がより好ましく、6.0μmol/g以上がより好ましく、8.0μmol/g以上がさらに好ましく、10.0μmol/g以上が特に好ましい。
<方法>
活性炭と、純水に1,4−ジオキサンを溶解させた溶液とを重量比1:100にて混合し、18時間撹拌した後にろ過する。尚、溶液の1,4−ジオキサン濃度は、およそ1、3、10、30mg/Lとする。ろ液中の1,4−ジオキサン濃度を、ヘッドスペースGC/MC(島津製作所:GC/MS−QP2010 PLUS、TURBOMATRIX HS40)で測定した。吸着前後の1,4−ジオキサン濃度の差分を吸着量とし、活性炭1gあたりの1,4−ジオキサン吸着量を求めることにより、吸着等温線を作成する。次いで、Freundlich型の吸着等温式(q=k・C1/n(q:吸着量、C:平衡吸着濃度、k及び1/nは定数))により、溶液中の1,4−ジオキサン濃度が500μg/Lで平衡となる時の活性炭の吸着量q500(平衡吸着量(μmol/g))を算出する。
【0042】
産業廃棄物処分場における浸出水もしくは放流水、または、化学工業、医薬品製造業、繊維工業または一般機器具製造業等の工業排水において、1,4−ジオキサンが上記したような高い濃度で検出される場合があることから、本発明の活性炭は、産業廃棄物処分場における浸出水もしくは放流水、または工業排水を処理する用途に好適に用いることができる。
【0043】
本発明の活性炭は、1,4−ジオキサン濃度が好ましくは0.05mg/Lを超える、より好ましくは0.5mg/Lを超える水中における該1,4−ジオキサン吸着用であって、前記1,4−ジオキサン濃度が好ましくは0.05mg/Lを超える、より好ましくは0.5mg/Lを超える水が、当該1,4−ジオキサン吸着用活性炭による処理以外の水処理方法により処理されたものである場合、1,4−ジオキサンの吸着性能がより一層発揮できるため好ましい。特に、上記1,4−ジオキサン吸着用活性炭による処理以外の水処理方法は、1,4−ジオキサン以外の有機化合物、より好ましくは1,4−ジオキサン以外の有機化合物であって、1,4−ジオキサンより極性が低い有機化合物を除去する水処理方法であることが特に好ましい。これは、1,4−ジオキサン吸着用活性炭と、1,4−ジオキサンと1,4−ジオキサン以外の有機化合物を含む汚染水とを接触させると、1,4−ジオキサン以外の有機化合物が優先的に1,4−ジオキサン吸着用活性炭に吸着する場合があるためである。そのため、予め、その他の有機化合物、より好ましくは、1,4−ジオキサンより極性が低い有機化合物を取り除いた後に、1,4−ジオキサン吸着用活性炭による1,4−ジオキサン処理を行うことが好ましい。予め、水中に存在する1,4−ジオキサン以外の有機化合物を取り除く方法は特に制限されず、例えば、本発明の活性炭以外の活性炭による処理、オゾン処理、活性汚泥処理、膜処理、ろ過処理、凝集処理、沈殿・浮上処理、酸化・消毒処理、析出処理、イオン交換・キレート処理、電気化学処理、エアレーション処理、塩素処理、及び生物処理からなる群より選ばれる1種以上の処理が挙げられる。これらの処理は、従来の排水処理設備で通常行われているため、本発明の1,4−ジオキサン吸着用活性炭による処理を、排水処理設備のこれらの処理工程よりも下流で行うことで、効率的に廃水中の1,4−ジオキサンを取り除くことができる。
【0044】
本発明の処理方法は、1,4−ジオキサンを含む水と1,4−ジオキサン吸着用活性炭、もしくは1,4−ジオキサン吸着用活性炭を含むシート、またはフィルターとを接触させるだけで、水中に含まれる1,4−ジオキサンを吸着して取り除くことができ、従来の排水処理設備をそのまま利用することができるため、低コストで導入することができる。
【0045】
水中に含まれる1,4−ジオキサンの濃度に特に制限はなく、例えば、ジオキサンを使用する工場、副生成物としてジオキサンが生じる化学反応工程を利用する工場等から生じる1,4−ジオキサンを高濃度で含む廃水、一般下水処理場の1,4−ジオキサンを低濃度で含む廃水の処理に利用することができる。ただし、活性炭に吸着できる物質の量には限界があるため、1,4−ジオキサンを高濃度で含む廃水を1,4−ジオキサン吸着用活性炭で処理すると、必要な1,4−ジオキサン吸着用活性炭の量が増える、交換頻度が高くなるという問題がある。そのため、1,4−ジオキサン分解菌による生物処理を行い、廃水中の1,4−ジオキサン濃度を低下させた後に、1,4−ジオキサン吸着用活性炭による1,4−ジオキサン処理を行うことが好ましい。
【0046】
また、1,4−ジオキサンの処理に利用した後の1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、不活性ガス雰囲気下、700℃以上1100℃以下で熱処理することで、塩基性官能基量が190μmol/g以上である1,4−ジオキサン吸着用活性炭として再生することができる。この条件以外では、塩基性官能基量が190μmol/gより小さくなり、1,4−ジオキサン吸着用活性炭として再生できない。1,4−ジオキサン吸着用活性炭に吸着された1,4−ジオキサンは、熱処理時の高温で揮発、分解するため、空気中に放出されることはない。再生された1,4−ジオキサン吸着用活性炭は、1,4−ジオキサンの処理に再利用することができる。
【実施例】
【0047】
「実験1」市販活性炭の1,4−ジオキサン吸着平衡濃度測定
市販の活性炭と、純水に1,4−ジオキサンを溶解させた溶液とを重量比1:100にて混合し、18時間撹拌した後にろ過した。なお、溶液の1,4−ジオキサン濃度は、およそ1、3、10、30mg/Lとした。ろ液中の1,4−ジオキサン濃度を、ヘッドスペースGC/MC(島津製作所:GC/MS−QP2010 PLUS、TURBOMATRIX HS40)で測定した。活性炭には、CABOT社(米国)製、商品名:VULCAN XC72、ユニチカ株式会社製、商品名:A−7、および商品名:W−15Wを用いた。
【0048】
吸着試験終了時における溶液中の1,4−ジオキサン濃度と活性炭への吸着量の関係がFreundlich型の吸着等温式(q=k・C1/n(q:吸着量、C:平衡吸着濃度、k及び1/nは定数))に従うことを確認し、溶液中の1,4−ジオキサン濃度が500μg/Lで平衡となる時の活性炭の吸着量q500(平衡吸着量(μmol/g))をサンプルごとに算出した。各活性炭の吸着等温線及び、吸着平衡濃度を図1、2に示す。
【0049】
XC72の吸着量q500は1.67μmol/gであった。A−7、W−15Wの吸着量q500はそれぞれ5.49μmol/g、6.49μmo/gと、XC72の3倍以上の値を示し、A−7、W−15Wは、1,4−ジオキサン吸着能に優れていた。
【0050】
「実験2」改質活性炭の1,4−ジオキサン吸着平衡濃度測定
上記実験1で用いた1,4−ジオキサン吸着能に優れていた市販の活性炭(商品名:A−7、W−15W)に、液面酸化処理、加熱処理を行った。
・液面酸化処理
1mol/Lの過酸化水素溶液、または硝酸溶液に、活性炭を10g/Lとなるように添加し、30℃で24時間反応させた。その後、110℃で24時間乾燥させた。
・加熱処理
電気炉(デンケン社製、装置名:卓上マッフル炉KDFS90/S90G)を用いて、窒素雰囲気下、1000℃で1時間加熱処理を行った。
【0051】
上記処理を施した改質活性炭および未処理の活性炭の、酸性官能基量と塩基性官能基量の測定を行った。
・酸性官能基量の測定
0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液50mlに、1.0gの活性炭を加え、30分間振盪した後、24時間、25℃で静置した。その後、ろ過を行いろ液を0.1mol/Lの塩酸溶液で中和滴定を行い、活性炭の酸性官能基量(μmol/g)を求めた。
・塩基性官能基量の測定
0.1mol/Lの塩酸溶液50mlに、1.0gの活性炭を加え、30分間振盪した後、24時間、25℃で静置した。その後、ろ過を行いろ液を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液で中和滴定を行い、活性炭の塩基性官能基量(μmol/g)を求めた。
【0052】
上記処理を行った改質活性炭を用い、上記実験1と同様にして吸着量q500を求めた。
また、未処理、及び改質活性炭の比表面積を、窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)で測定した。窒素ガス吸着量は、商品名「AUTOSORB−6」(QUANTCHROME社製)を用いて測定した。細孔分布の解析は、付属の解析プログラムで実施した。また、全細孔容積は、窒素の最大吸着量から計算した。平均細孔直径は上記式1から求めた。
【0053】
各活性炭の吸着等温線を図3に、酸性官能基量、塩基性官能基量、塩基性官能基量/酸性官能基量、比表面積、全細孔容積、平均細孔直径、吸着量(q500)を表1に示す。また、酸性官能基量と吸着量(q500)との相関を図4、塩基性官能基量と吸着量(q500)との相関を図5に示す。なお、未処理、液面酸化処理及び加熱処理したA−7の、全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合は、いずれも1〜10%の範囲内であった。また、未処理、液面酸化処理及び加熱処理したW−15Wの、全細孔容積Vftotalに対する、細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合は、いずれも40〜60%の範囲内であった。
【0054】
【表1】
【0055】
加熱処理を行った活性炭で吸着量が大きく上昇し、硝酸処理を行った活性炭で吸着量が減少していることが確かめられた。過酸化水素処理は、A−7では吸着量が増加したが、W−15Wでは吸着量が減少した。
【0056】
図4に示すように、酸性官能基量が少なくなるほど、1,4−ジオキサンの吸着量が増加することが確かめられた。また、図5に示すように、塩基性官能基量が多くなるほど、1,4−ジオキサンの吸着量が増加することが確かめられた。図4、5より、1,4−ジオキサンの吸着量は、酸性官能基量よりも塩基性官能基量と高い相関関係を示し、1,4−ジオキサンの吸着には塩基性官能基が寄与していた。特に、塩基性官能基量が190μmol/g以上であれば、4.0μmol/g以上の吸着量(q500)を有し、1,4−ジオキサン吸着用活性炭として好適に用いられることが確認できた。
【0057】
商品名A−7を用いた活性炭は、比表面積が700〜1000m/gの範囲内であったことから、ジオキサン吸着能を優れたものとしつつ、活性炭の強度がより一層優れたものであった。
また、全細孔容積Vftotalに対する細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合が40〜60%の範囲内であるW−15W未処理は、全細孔容積Vftotalに対する細孔直径20Å以上500Å未満の範囲のメソ細孔容積Vfmesoの割合が1〜10%の範囲内であるA−7未処理と比較して、塩基性官能基量が小さいにも関わらず、1,4−ジオキサンの吸着量が同等であった。また、図5において、W−15Wを用いた活性炭は、A−7を用いた活性炭と比較して、近似直線が上に位置し、ジオキサン吸着能に優れていた。ジオキサン吸着能をより一層優れたものとする観点からは、上記割合が40〜60%であることが特に好ましいことが明らかとなった。
【0058】
「実験3」
活性炭(商品名:A−7)に、上記実験2で行った加熱処理と同様にして、600℃から1000℃まで200℃毎に加熱処理を行った。加熱処理を行った活性炭について、上記実験2と同様にして塩基性官能基量の測定と、上記実験1と同様に吸着量(q500)の測定を行った。各活性炭における吸着等温線を図6に、測定結果を表2に、塩基性官能基量と吸着量との関係を図7に示す。なお、上記実験2のA−7未処理と比較すると、塩基性官能基量の値が異なるが、これは製造ロットの違いによる。
【0059】
【表2】
【0060】
加熱温度が上昇するほど、塩基性官能基量、及び吸着量(q500)が上昇することが確かめられた。
【0061】
「実験4」
活性炭(商品名:A−7)に、上記実験2と同様にして、1200℃、1400℃で加熱処理を行った。上記実験2と同様にして塩基性官能基量の測定を行った。上記実験3で600℃〜1000℃で加熱処理を行った活性炭と合わせて、加熱処理温度と、未処理の活性炭に対する塩基性官能基量の増加割合との関係を図8に示す。
【0062】
600℃から1000℃では、加熱処理温度が上昇するにつれて塩基性官能基量が増加することが確かめられた。また、1200℃、1400℃では塩基性官能基量が減少した。このことから、加熱処理温度は700〜1100度の範囲が好ましいことが確かめられた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8