【実施例】
【0035】
以下、下地皮膜(ニッケル系皮膜)を形成するための電気ニッケル系メッキ浴、導電性皮膜を形成するためのメッキ浴、並びに透明導電膜(ITO膜)上に当該ニッケル系皮膜を介して導電性皮膜を形成する方法の実施例を述べるとともに、ITO膜に対するニッケル系皮膜の密着性の評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0036】
《ITO膜上に導電性皮膜を形成する方法の実施例》
下記の実施例1〜22のうち、実施例1〜10、15、20〜22はニッケル−リン皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)、実施例11はニッケル−モリブデン皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)、実施例12はニッケル−タングステン皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)、実施例13はニッケル−コバルト皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)、実施例14はニッケル−ホウ素皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)、実施例18はニッケル−リン皮膜(下地皮膜)/スズ皮膜(導電性皮膜)、実施例19はニッケル−リン皮膜(下地皮膜)/銀皮膜(導電性皮膜)の各例である。
実施例15は下地皮膜を熱処理しない例、他の実施例は下地皮膜を熱処理した例である。
実施例3はニッケル系メッキ浴の錯化剤にアミノカルボン酸を用いた例、実施例4は同じく糖質を用いた例、実施例5はポリカルボン酸を用いた例、他の実施例はオキシカルボン酸又はその塩を用いた例である。
実施例3〜5はニッケル系メッキ浴の界面活性剤に両性界面活性剤を用いた例、他の実施例は同じくノニオン性界面活性剤を用いた例である。
【0037】
一方、下記の比較例1〜8のうち、比較例1はITO基板の上に下地皮膜を形成せずに、導電性皮膜形成用のメッキ浴を用いて直接に電気メッキした例である。比較例2は実施例1を基本として、下地形成用のニッケル系メッキ浴に公知のワット浴を用いた例である。 比較例3〜5は下地皮膜がニッケル−リン皮膜の例であり、比較例3は実施例1を基本として、下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の錯化剤を欠く例である。比較例4は実施例1を基本として、下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の界面活性剤を欠く例である。比較例5は実施例1を基本として、下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の界面活性剤に替えてカチオン性界面活性剤を用いた例である。
比較例6〜7は下地皮膜がニッケル−モリブデン皮膜の例であり、比較例6は実施例11を基本として、下地皮膜を熱処理しなかった例である。比較例7は実施例11を基本として、下地皮膜を熱処理したが、下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の錯化剤を欠く例である。
比較例8は下地皮膜がニッケル−コバルト皮膜の例であり、実施例13を基本として、下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の錯化剤を欠く例である。
【0038】
(1)実施例1
ITO膜上に下地皮膜(ニッケル系皮膜)を介して導電性皮膜を形成する場合、ITO膜の電気抵抗率が増すほど、下地皮膜の密着性は低下する。
従って、先ず、5cm×5cm角のガラス板に、2種の電気抵抗率50Ω/cm2、400Ω/cm2を有するITO膜を形成した各基板を準備し、透明導電膜の試料とした。電気抵抗率が増しても、下地皮膜を密着性良く下張りできるか否かを検証するためである。
下記(a)はITO基板上に形成する下地皮膜(ニッケル系皮膜)と、当該下地皮膜を形成するために建浴した電気ニッケル系メッキ浴の組成を表す。下記(c)は下地皮膜上に形成する導電性皮膜と、当該導電性皮膜を形成するための電気又は無電解メッキ浴の組成を表す。下記(b)はITO基板に下地皮膜を形成した後、熱処理し又はしないで、下地皮膜上に導電性皮膜をメッキ形成する工程での具体的条件を表す。
【0039】
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ポリオキシエチレンクミルフェノールエーテル(EO10モル) 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記(a)のニッケル系メッキ浴を用いて各ITO基板上に下地皮膜を形成し、25℃、約30秒の条件で水洗した後、50℃、3分の条件で湯煎し、下記(c)の電気銅メッキ浴を用いて下地皮膜上に導電性皮膜を形成した。
(c)導電性皮膜:銅
電気銅メッキ浴を次の組成で建浴した。
硫酸銅5水和物 0.8モル/L
硫酸 1.0モル/L
塩酸 1.8モル/L
ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド 1.0mg/L
ポリエチレングリコール(分子量4000) 1.0g/L
ポリエチレンイミン 3.0mg/L
[電気メッキ条件]
浴温:25℃
電流密度:5A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:10μm
【0040】
(2)実施例2
実施例1を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴のニッケル塩を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
硫酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
エチレンジアミンテトラポリオキシエチレン(EO15モル)
−ポリオキシプロピレン(PO15モル) 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0041】
(3)実施例3
実施例1を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴の錯化剤及び界面活性剤を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
ニトリロ三酢酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0042】
(4)実施例4
実施例1を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴の錯化剤及び界面活性剤を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0043】
(5)実施例5
実施例1を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴の錯化剤及び界面活性剤を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
コハク酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0044】
(6)実施例6
実施例1を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴のリン含有化合物の含有量を増量した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.5モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ポリオキシエチレンクミルフェノールエーテル(EO10モル) 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:15%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0045】
(7)実施例7
実施例1を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴の光沢剤(サッカリン)の含有量を増量した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.04モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO12モル) 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:12%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0046】
(8)実施例8
実施例2を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴の光沢剤(サッカリン)の含有量を増量した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.04モル/L
エチレンジアミンテトラポリオキシエチレン(EO15モル)
−ポリオキシプロピレン(PO15モル) 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0047】
(9)実施例9
実施例1を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴のリン含有化合物を変更した(亜リン酸→次亜リン酸)。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
次亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
エチレンジアミンテトラポリオキシエチレン(EO2モル)
−ポリオキシプロピレン(PO10モル) 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:10%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0048】
(10)実施例10
実施例1を基本として、電気ニッケル−リンメッキ浴のノニオン性界面活性剤の含有量を減量した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ポリオキシエチレンクミルフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0049】
(11)実施例11
電気ニッケル系メッキ浴をニッケル−リンメッキ浴からニッケル−モリブデン合金メッキ浴に変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−モリブデン皮膜
電気ニッケル−モリブデンメッキ浴を次の組成で建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.2モル/L
モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O) 0.05モル/L
グルコン酸ナトリウム 0.2モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 8.0
[電気メッキ条件]
浴温:25℃
電流密度:0.15A/dm2
メッキ時間:20分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.05μm
Moの含有率:40%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0050】
(12)実施例12
電気ニッケル系メッキ浴をニッケル−リンメッキ浴からニッケル−タングステン合金メッキ浴に変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−タングステン皮膜
電気ニッケル−タングステンメッキ浴を次の組成で建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.1モル/L
タングステン酸ナトリウム(Wイオンとして) 0.2モル/L
クエン酸3ナトリウム2水和物 0.3モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 7.0
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.7A/dm2
メッキ時間:20分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.05μm
Wの含有率:43%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0051】
(13)実施例13
電気ニッケル系メッキ浴をニッケル−リンメッキ浴からニッケル−コバルト合金メッキ浴に変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−コバルト皮膜
電気ニッケル−コバルトメッキ浴を次の組成で建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.75モル/L
硫酸コバルト7水和物(Co2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.01モル/L
塩化ナトリウム 0.25モル/L
ホウ酸 0.5モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 5.6
[電気メッキ条件]
浴温:20℃
電流密度:1.0A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.05μm
Coの含有率:35%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0052】
(14)実施例14
電気ニッケル系メッキ浴をニッケル−リンメッキ浴からニッケル−ホウ素メッキ浴に変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−ホウ素皮膜
電気ニッケル−ホウ素メッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 1.20モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.04モル/L
クエン酸3ナトリウム2水和物 0.01モル/L
ホウ酸 0.5モル/L
サッカリン 0.02モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.3
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:1.0A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.1μm
Bの含有率:15%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0053】
(15)実施例15
実施例1を基本として、下地皮膜を熱処理せずに導電性皮膜を形成した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
実施例1と同じ。
(b)工程
上記実施例1の(a)に記載のニッケル系メッキ浴を用いて各ITO基板上に下地皮膜を形成し、25℃、約30秒の条件で水洗した後、熱処理することなく、実施例1の(c)に記載の電気銅メッキ浴を用いて下地皮膜上に導電性皮膜を形成した。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0054】
(16)実施例16
実施例1を基本として、下地皮膜の熱処理の条件を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
実施例1と同じ。
(b)工程
上記実施例1の(a)に記載のニッケル系メッキ浴を用いて各ITO基板上に下地皮膜を形成し、25℃、約30秒の条件で水洗した後、オーブンで150℃、20分の条件で加熱を行い、実施例1の(c)に記載の電気銅メッキ浴を用いて下地皮膜上に導電性皮膜を形成した。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0055】
(17)実施例17
実施例1を基本として、導電性皮膜を形成するための電気銅メッキ浴を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
実施例1と同じ。
(b)工程
実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
電気銅メッキ浴を次の組成で建浴した。
硫酸銅5水和物(Cu2+として) 0.1モル/L
エチレンジアミン 0.3モル/L
硫酸アンモニウム 1.5モル/L
グリシン 0.3モル/L
α,α′−ビピリジル 30mg/L
pH(28%アンモニアで調整) 7.0
[電気メッキ条件]
浴温:50℃
電流密度:1A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:10μm
【0056】
(18)実施例18
実施例1を基本として、導電性皮膜を銅皮膜からスズ皮膜に変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
実施例1と同じ。
(b)工程
実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:スズ
電気スズメッキ浴を次の組成で建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.5モル/L
メタンスルホン酸 1.0モル/L
ポリオキシエチレンクミルフェノールエーテル(EO10モル) 10g/L
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:2A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:10μm
【0057】
(19)実施例19
実施例1を基本として、導電性皮膜を銅皮膜から銀皮膜に変更し、無電解メッキにより形成した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
実施例1と同じ。
(b)工程
実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銀
無電解銀メッキ浴を次の組成で建浴した。
硝酸銀(Ag+として) 0.01モル/L
コハク酸イミド 0.05モル/L
イミダゾール 0.05モル/L
[電気メッキ条件]
浴温:50℃
メッキ時間:60分
[メッキ皮膜]
膜厚:1μm
【0058】
(20)実施例20
実施例2を基本として、下地皮膜の熱処理の条件を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
実施例2と同じ。
(b)工程
上記実施例2の(a)に記載のニッケル系メッキ浴を用いて各ITO基板上に下地皮膜を形成し、25℃、約30秒の条件で水洗した後、ドライヤーで100℃、5分の条件で加熱を行い、実施例1の(c)に記載の電気銅メッキ浴を用いて下地皮膜上に導電性皮膜を形成した。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0059】
(21)実施例21
実施例5を基本として、下地皮膜の熱処理の条件を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
実施例5と同じ。
(b)工程
上記実施例5の(a)に記載のニッケル系メッキ浴を用いて各ITO基板上に下地皮膜を形成し、25℃、約30秒の条件で水洗した後、ドライヤーで100℃、5分の条件で加熱を行い、実施例1の(c)に記載の電気銅メッキ浴を用いて下地皮膜上に導電性皮膜を形成した。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0060】
(22)実施例22
実施例7を基本として、下地皮膜の熱処理の条件を変更した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
実施例7と同じ。
(b)工程
上記実施例5の(a)に記載のニッケル系メッキ浴を用いて各ITO基板上に下地皮膜を形成し、25℃、約30秒の条件で水洗した後、ドライヤーで100℃、5分の条件で加熱を行い、実施例1の(c)に記載の電気銅メッキ浴を用いて下地皮膜上に導電性皮膜を形成した。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0061】
(23)比較例1
前記実施例1を基本として、(a)の下地皮膜を形成せず、ITO基板上に直接、実施例1の(c)に記載の銅メッキ浴を用いて(同(c)のメッキ条件で)電気メッキを行った。
その結果、ITO基板上への導電性皮膜(銅皮膜)の形成を試みたが、粉状の析出物が生成しただけで、銅メッキ皮膜は形成されなかった。
【0062】
(24)比較例2
実施例1を基本として、下地皮膜を公知のワット浴で形成した。
(a)下地皮膜:ニッケル皮膜
実施例1の(a)に記載のニッケル系メッキ浴に替えて、公知のワット浴を用いた。
ワット浴の組成は次の通りである。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 1.15モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.5モル/L
ホウ酸 0.7モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.0
[電気メッキ条件]
浴温:60℃
電流密度:2A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0063】
(25)比較例3
実施例1を基本として、下地皮膜形成用のメッキ浴に錯化剤を含有しなかった。下地皮膜は熱処理した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ポリオキシエチレンクミルフェノールエーテル(EO10モル) 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:10%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0064】
(26)比較例4
実施例1を基本として、下地皮膜形成用のメッキ浴にノニオン性界面活性剤を含有しなかった。下地皮膜は熱処理した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0065】
(27)比較例5
実施例1を基本として、下地皮膜形成用のメッキ浴にノニオン性に替えて、カチオン性界面活性剤を含有した。下地皮膜は熱処理した。
(a)下地皮膜:ニッケル−リン皮膜
電気ニッケル−リンメッキ浴を次の組成で建浴した。
スルファミン酸ニッケル(Ni2+として) 0.25モル/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.03モル/L
ホウ酸 0.2モル/L
亜リン酸 0.4モル/L
クエン酸3ナトリウム2水和物 0.3モル/L
サッカリン 0.02モル/L
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体 20g/L
pH(28%アンモニアで調整) 4.5
[電気メッキ条件]
浴温:40℃
電流密度:0.3A/dm2
メッキ時間:15分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.2μm
リンの含有率:11%
(b)工程
上記実施例1と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0066】
(28)比較例6
実施例11を基本として、下地皮膜を熱処理せずに導電性皮膜を形成した。
(a)下地皮膜:ニッケル−モリブデン皮膜
電気ニッケル−モリブデンメッキ浴を次の組成で建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.2モル/L
モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O) 0.05モル/L
グルコン酸ナトリウム 0.2モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 8.0
[電気メッキ条件]
浴温:25℃
電流密度:0.15A/dm2
メッキ時間:20分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.05μm
Moの含有率:40%
(b)工程
上記実施例11の(a)に記載のニッケル系メッキ浴を用いて各ITO基板上に下地皮膜を形成し、25℃、約30秒の条件で水洗した後、熱処理することなく、実施例11の(c)に記載の電気銅メッキ浴を用いて下地皮膜上に導電性皮膜を形成した。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例11(即ち、実施例1)と同じ。
【0067】
(29)比較例7
実施例11を基本として、下地皮膜形成用のメッキ浴に錯化剤を含有しなかった。下地皮膜は熱処理した。
(a)下地皮膜:ニッケル−モリブデン皮膜
電気ニッケル−モリブデンメッキ浴を次の組成で建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.2モル/L
モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O) 0.05モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 8.0
[電気メッキ条件]
浴温:25℃
電流密度:0.15A/dm2
メッキ時間:20分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.05μm
Moの含有率:40%
(b)工程
上記実施例11と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例11(即ち、実施例1)と同じ。
【0068】
(30)比較例8
実施例13を基本として、下地皮膜形成用のメッキ浴に錯化剤を含有しなかった。下地皮膜は熱処理した。
(a)下地皮膜:ニッケル−コバルト皮膜
実施例13の(a)に記載のニッケル−コバルトメッキ浴を基本として、次の通り、本発明の錯化剤を含まないニッケル系メッキ浴を建浴した。
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.75モル/L
硫酸コバルト7水和物(Co2+として) 0.1モル/L
塩化ナトリウム 0.25モル/L
ホウ酸 0.5モル/L
pH(28%アンモニアで調整) 5.6
[電気メッキ条件]
浴温:20℃
電流密度:1.0A/dm2
メッキ時間:10分
[メッキ皮膜]
膜厚:0.05μm
Coの含有率:35%
(b)工程
上記実施例13(即ち、実施例1)と同じ。
(c)導電性皮膜:銅
上記実施例1と同じ。
【0069】
《ITO膜に対する下地皮膜の密着性の評価試験例》
そこで、上記実施例1〜22並びに比較例1〜8の各導電性皮膜の形成方法をITO基板に適用して、得られた導電性皮膜に粘着テープを貼り付けて、粘着テープを剥離した場合に、当該導電性皮膜と一体に密着形成された下地皮膜とITO基板との境界に着目して、当該境界を起点として下地皮膜がITO基板から剥離するか否かを観察し、ITO基板に対する密着性の優劣を下記の基準に基づいて評価した。
○:下地皮膜はITO基板から剥離しなかった。
△:下地皮膜はITO基板から部分的に剥離した。
×:下地皮膜はITO基板から全面的に剥離した。
【0070】
下表はその試験結果である。但し、比較例1ではITO基板上に下地皮膜を形成しなかったので、下表の「−−」は下地皮膜の剥離試験自体を行わなかったことを示す。
電気抵抗率Rの単位はΩ/cm2である。
R=50 R=400 R=50 R=400
実施例1 ○ ○ 実施例17 ○ ○
実施例2 ○ ○ 実施例18 ○ ○
実施例3 ○ ○ 実施例19 ○ ○
実施例4 ○ ○ 実施例20 ○ ○
実施例5 ○ ○ 実施例21 ○ ○
実施例6 ○ ○ 実施例22 ○ ○
実施例7 ○ ○
実施例8 ○ ○ 比較例1 −− −−
実施例9 ○ ○ 比較例2 × ×
実施例10 ○ ○ 比較例3 × ×
実施例11 ○ ○ 比較例4 × ×
実施例12 ○ △ 比較例5 × ×
実施例13 ○ △ 比較例6 × ×
実施例14 ○ △ 比較例7 × ×
実施例15 ○ △ 比較例8 × ×
実施例16 ○ ○
【0071】
《試験結果の評価》
上表によると、比較例1では下地皮膜を形成せずにITO基板上に直接に導電性皮膜(銅皮膜)を形成しようとしたが、銅皮膜は得られず、粉状の析出物が得られたのみであった。
これに対して、下地皮膜を介してITO基板上に導電性皮膜を形成した実施例1〜22では、いずれも下地皮膜はITO基板に強固に密着しており、特に、400Ω/cm2の大きな電気抵抗率を示すITO基板に対しても下地皮膜は良好な密着性を示した(但し、実施例12〜15の評価は△であった)。従って、実施例1〜22では、ITO基板上に下地皮膜を介して導電性皮膜を密着性良く形成できた。
一方、公知のワット浴を用いてITO基板上にニッケル皮膜を形成した比較例2では、ITO基板に対するニッケル皮膜の密着性に劣り、従って、ITO基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成することはできなかった。
【0072】
上記比較例3〜5は下地皮膜がニッケル−リン皮膜の例である。
下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の錯化剤を欠いた比較例3では、ITO基板に対するニッケル−リン皮膜(下地皮膜)の密着性に劣り、従って、ITO基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できなかった。
また、下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の界面活性剤を欠いた比較例4でも、やはりITO基板に対するニッケル−リン皮膜(下地皮膜)の密着性に劣り、従って、ITO基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できなかった。
下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明で特定された界面活性剤に替えてカチオン性界面活性剤を使用した比較例5では、上記比較例4と同じく、ITO基板に対するニッケル−リン皮膜(下地皮膜)の密着性に劣り、ITO基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できなかった。
これにより、下地皮膜がニッケル−リン皮膜の場合、ITO基板に対する下地皮膜の密着性を強固に確保する点で、下地形成用の電気メッキ浴に所定の錯化剤と界面活性剤の両成分を併用添加した上記実施例1〜10、15、20〜22の比較例3〜5に対する優位性が裏付けられた。
【0073】
上記比較例6〜7は下地皮膜がニッケル−モリブデン皮膜の例、同じく比較例8はニッケル−コバルト皮膜の例である。
上記実施例11(下地皮膜がニッケル−モリブデン皮膜の例)を基本として、下地皮膜を熱処理しなかった比較例6では、ITO基板に対するニッケル−モリブデン皮膜(下地皮膜)の密着性に劣り、ITO基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できなかった。
また、下地皮膜を熱処理したが、下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の錯化剤を欠いた比較例7では、やはりITO基板に対するニッケル−モリブデン皮膜(下地皮膜)の密着性に劣り、ITO基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できなかった。
上記実施例13(下地皮膜がニッケル−コバルト皮膜の例)を基本として、下地皮膜形成用の電気メッキ浴に本発明の錯化剤を欠いた比較例8では、やはりITO基板に対するニッケル−コバルト皮膜(下地皮膜)の密着性に劣り、ITO基板上に導電性皮膜(銅皮膜)を密着性良く形成できなかった。
これにより、ニッケル−リン以外のニッケル系皮膜が下地皮膜の場合、ITO基板に対する下地皮膜の密着性を強固に確保する点で、下地皮膜を熱処理し、且つ、下地形成用の電気メッキ浴に所定の錯化剤を含有した上記実施例11〜14の比較例6〜8に対する優位性が裏付けられた。
【0074】
そこで、実施例1〜22を詳細に説明する。
実施例1〜10、15〜17、20〜22はニッケル−リン皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)の例であり、実施例18はニッケル−リン皮膜(下地皮膜)/スズ皮膜(導電性皮膜)、実施例19はニッケル−リン皮膜(下地皮膜)/銀皮膜(導電性皮膜)の各例である。本発明の錯化剤と界面活性剤を併用添加した電気メッキ浴で形成した下地皮膜(ニッケル−リン皮膜)はITO基板に強固に密着するため、この下地皮膜を介在させることで、ITO基板上に銅、銀、スズの各種の導電性皮膜を密着性良く形成できた。
実施例3は下地形成用の電気メッキ浴に含有する錯化剤にアミノカルボン酸を用いた例、実施例4は同じく糖質を用いた例、実施例5はポリカルボン酸を用いた例、他の実施例はオキシカルボン酸又はその塩を用いた例であるが、特定の錯化剤のうちのいずれを選択しても、ITO基板に対する下地皮膜の密着性を良好に確保できた。
また、実施例3〜5は下地形成用の電気メッキ浴に含有する界面活性剤に両性界面活性剤を用いた例、他の実施例は同じくノニオン性界面活性剤を用いた例であるが、ノニオン性及び両性のいずれの界面活性剤を選択しても、ITO基板に対する下地皮膜の密着性を良好に確保できた。
次いで、下地皮膜がニッケル−リン皮膜である上記実施例のうち、下地皮膜を熱処理しない実施例15では、50Ω/cm2の相対的に小さな電気抵抗率を示すITO基板への下地皮膜の密着性は強固であった一方で、400Ω/cm2の大きな電気抵抗率を示すITO基板に対しては一部に剥離が見られて評価は一歩譲ったが、比較例1〜8に対する優位性は明らかであった。
実施例16は実施例1を基本として下地皮膜の熱処理条件を50℃、3分の湯煎から150℃、20分のオーブン加熱に変更した例であるが、密着性の評価は両者で変わらないため、相対的に高温のオーブン加熱に拠ることなく、実施例1のような省エネ条件の熱処理(短時間の湯煎)でも下地皮膜を強固に密着できることが判断できる。
また、実施例17は導電性皮膜を構成する銅のメッキ浴組成を実施例1から変更した例であり、銅メッキ浴の組成を自由に選択しても、密着性を高く保持できることが判断できる。
尚、実施例6は亜リン酸(リン含有化合物)の含有量を実施例1より増した例であるが、下地皮膜(ニッケル−リン皮膜)のリン含有率は11%から15%に増していた。
【0075】
他方、実施例11はニッケル−モリブデン皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)、実施例12はニッケル−タングステン皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)、実施例13はニッケル−コバルト皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)、実施例14はニッケル−ホウ素皮膜(下地皮膜)/銅皮膜(導電性皮膜)の各例であり、本発明の錯化剤を含む電気メッキ浴で下地皮膜を形成するとともに、当該下地皮膜を熱処理するため、電気抵抗率=50Ω/cm2のITO基板では強固な密着性を示した。
その一方で、電気抵抗率=400Ω/cm2のITO基板に対しては、下地皮膜の一部に剥離が見られたが、比較例1〜8に対する優位性は明らかであった。
尚、実施例14は下地皮膜がニッケル−ホウ素の例であるが、例えば、実施例1に比べて下地皮膜の膜厚を半分に薄く形成したため、下地皮膜(ニッケル−ホウ素皮膜)のホウ素含有率は実施例1に比べて相対的に高かった。