(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記第1のコンデンサに充電された電荷は、前記第2のモードにおいて前記発振手段の発振動作を停止させている間は放電させることを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
  前記画像形成装置に交流電源を投入した場合、前記電源装置を前記第2のモードで動作させて前記制御手段を初期化し、当該初期化の後、前記画像形成装置が印刷命令を受信したことに応じて前記電源装置を前記第1のモードで動作させるよう切替える切替手段をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
  前記切替手段は、前記印刷命令に基づく印刷動作が完了した後、所定時間にわたって印刷命令の受信がない場合、前記電源装置を前記第2のモードに切替えることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
  <第一の実施形態>
  [電源装置の構成]
  
図1は、本発明の第一の実施形態に係る構成例を示す図である。
図1に基づいて、本実施形態に係る電源装置101全体の構成例について説明する。
 
【0011】
  図1中、電源装置101は、AC入力部1、整流部2、発振部3、駆動部4、電流共振回路を含むトランス(以降は単にトランスと表記)5、二次側整流器6、および二次側コンデンサ7を含む。更に電源装置101は、第1の基準電圧源8、第2の基準電圧源9、エラーアンプ10、第1のフォトカプラ11、第1のコンパレータ12、および第2のコンパレータ13である。更に電源装置101は、ラッチ回路14、第2のフォトカプラ15、第3のフォトカプラ16、電流電圧変換制御部17、二次側出力電圧18、および二次側出力端子に接続された負荷19を含む。
 
【0012】
  次に各構成要素について詳細(動作)を説明する。AC入力部1は、一般に配電される一次交流電圧(例えば日本国内ではAC100V(50Hz/60Hz)を受ける。AC入力部1には、図示しないが、安全確保のためのヒューズや、ノイズフィルタ、突入電流緩和回路などを併用する。整流部2は、本実施形態ではダイオードブリッジを有し、交流電圧を整流し、一次側電解コンデンサを併用して平滑化されたDC電圧(直流電圧)を得る。
 
【0013】
  発振部3は、電流電圧変換制御部17から出力された発振制御電圧に応じて自身の発振周波数を制御しつつ、発振および発振停止の動作を行う。ここでは一事例として、発振部3において、制御電圧が0.5V未満では発振が停止し、0.5V時に最高周波数で発振を開始し、0.5Vから5Vへと上昇するにつれて発振周波数が最低周波数へと徐々に低下するものとする。同じく一事例として、発振部3において、最高周波数は333KHz、最低周波数は33KHzであるとする。
 
【0014】
  駆動部4は、発振部3の出力に応じて、整流部2で得た出力DC電圧をスイッチングしながら後段のトランス5に印加する。電流共振型の構成と動作については公知であるため、ここでは簡単な説明に留める。駆動部4は、ハイサイドとローサイドの二つの電流スイッチを有し、貫通電流を防止するための適切なデッドタイムを設けて排他的に電流スイッチがオンオフされる。ハイサイドスイッチがオンの時は、上記のDC電圧をトランス5に印加し、ローサイドスイッチがオンの時はトランス5には0Vを印加する。
 
【0015】
  トランス5は、電流共振用の直列コンデンサとトランスを有し、該トランスは、適切に設計されたリーケージインダクタンスを有する。二次側整流器6は、トランス5の二次側巻き線に生じる交流出力を整流する。本実施形態では、二次側整流器6は、逆電圧が比較的低いことから低損失なショットキーダイオードを使用し、両波整流を行う。二次側コンデンサ7は、二次側整流器6で整流された出力を平滑化する。また、発振部3の発振が停止しているときは、二次側コンデンサ7の放電によって、負荷電流が賄われる。二次側出力電圧18は、電流共振型の特性として、整流部2で得た出力DC電圧に比例し、また、使用される誘導性周波数領域内において発振周波数が低くなるほど高くなる。
 
【0016】
  第1の基準電圧源8は、通常モード時の二次側出力電圧18の目標値と、バーストモード時の二次側出力電圧18の上限値となる電圧を生成する。第1の基準電圧源8により生成される出力電圧は、一例として、ここでは30Vである。第2の基準電圧源9は、第1の基準電圧源8の出力電圧より低く設定され、バーストモード時の二次側出力電圧18の下限値となる電圧を生成する。第2の基準電圧源9により生成される出力電圧は、一例として、ここでは29Vである。なお、本明細書において、通常モードを「第一のモード」、バーストモードを「第二のモード」とも記載する。ここで、通常モードとは、連続的に発振するモードである。一方、バーストモードとは、発振器が、一定時間の発振動作の実行と発振動作の停止を繰り返すことで供給電力を制御するモードである。バーストモードは、通常モードと比較して電力消費量が少ないモードである。
 
【0017】
  エラーアンプ10は、二次側出力電圧18と第1の基準電圧源8との差分を演算し、適切なフィルタ特性をかけて電流出力する。二次側出力電圧18が第1の基準電圧源8の出力電圧よりも高まるほど、エラーアンプ10の電流出力は増大するように構成される。
 
【0018】
  第1のフォトカプラ11は、エラーアンプの10の電流出力を受けて、電流電圧変換制御部17に電流伝達する。第1のコンパレータ12は、二次側出力電圧18を第1の基準電圧源8の出力電圧と比較し、その結果をラッチ回路14に伝達する。第1のコンパレータ12は、二次側出力電圧18が第1の基準電圧源8の出力電圧より高い場合にハイレベルを出力する。第2のコンパレータ13は、二次側出力電圧18を第2の基準電圧源9の出力電圧と比較して、その結果をラッチ回路14に伝達する。第2のコンパレータ13は、二次側出力電圧18が第2の基準電圧源9の出力電圧より低い場合にローレベルを出力する。
 
【0019】
  ラッチ回路14は、第1のコンパレータ12の出力がハイレベルとなった時にハイレベルを保持し、第2のコンパレータ13の出力がローレベルになった時にラッチが解除され、ローレベルとなる。また、第3のフォトカプラ16への入力信号に相当する制御信号により、通常モード時には、無条件でラッチが解除され、ラッチ回路14はローレベルとなる。第2のフォトカプラ15は、ラッチ回路14がハイレベルに保持されているときに点灯し、それに相当する電流を電流電圧変換制御部17に伝達する。一方、ラッチ回路14がローレベル状態の時は、第2のフォトカプラ15は消灯し、電流0Aを電流電圧変換制御部17に伝達する。
 
【0020】
  第3のフォトカプラ16は、外部からの制御信号に基づいて、通常モード時に点灯し、バーストモード時には消灯して、いずれのモードであるかを電流電圧変換制御部17に伝達する。因みに、AC入力の投入開始時のように二次側の電源の供給源がない場合は、第3のフォトカプラ16は必然的に消灯していて、これはバーストモードと等価な状態である。
 
【0021】
  負荷19は、モータやアクチュエータ、画像形成手段、および、低電圧に変換する降圧型DC−DCコンバータを一括して表している。負荷19を構成する各要素の稼働に好適な電圧と、第1の基準電圧源8および第2の基準電圧源9の電圧値との関係については、次の通りである。即ち、通常動作時に動作すべき、例えばモータやアクチュエータ、画像形成手段は、それらの稼働に好適な電圧が第1の基準電圧源8の電圧に合致している。従って、上記の設計例の場合、負荷19の稼働に対する好適な電圧は30Vとなる。一方、降圧型DC−DCコンバータについては、その出力電圧に依存した入力下限電圧を下回らないように第2の基準電圧源9の電圧値は設定されている。また、降圧型DC−DCコンバータは、バースト動作による入力電圧変動が出力に影響しない応答特性を有する。なお、一次側とは、トランスとフォトカプラを境にした入力側であり、二次側とは、トランスとフォトカプラを境にした出力側である。
 
【0022】
  [電流電圧制御部の構成]
  電流電圧変換制御部17について、
図2を用いて内部構成の説明を行う。
図2中、電流電圧変換制御部17は、第1のプルアップ抵抗21、第2のプルアップ抵抗22、切り替えスイッチ23、インピーダンス素子24、コンデンサ25、およびワンショットマルチバイブレータ26を含む。更に電流電圧変換制御部17は、第1のスイッチ27、放電抵抗28、電流源29、電流スイッチ30、第2のスイッチ31、およびプルダウン抵抗32を含む。更に電流電圧変換制御部17は、第1の切り替え信号線33、第2の切り替え信号線34、および発振制御のための制御信号を出力する出力信号線35を含む。また、電流電圧変換制御部17は、第1〜第3のフォトカプラ11、15、16、および発振部3に接続され、
図1と同一の周辺要素については同一番号を付して記載している。電流電圧変換制御部17に接続される第1〜第3のフォトカプラ11、15、16はいずれも、発光部(不図示)が点灯した時に、電流電圧変換制御部17から電荷を引き抜く方向に作用するように接続されている。
 
【0023】
  第1のプルアップ抵抗21には第3のフォトカプラ16が外部電流源として接続されており、バーストモード時には第3のフォトカプラ16はオフ状態となり、第1の切り替え信号線33上にはハイレベルが出力される。一方、通常モード時には第3のフォトカプラ16はオン状態となり、第1の切り替え信号線33上にはローレベルが出力される。
 
【0024】
  切り替えスイッチ23は、第1の切り替え信号線33の電圧レベルによって制御され、第1の切り替え信号線33の電圧レベルがローレベルの時、即ち通常モード時にはインピーダンス素子24を選択する。また、切り替えスイッチ23は、第1の切り替え信号線33の電圧レベルがハイレベルの時、即ちバーストモード時にはコンデンサ25を選択する。インピーダンス素子24には第1のフォトカプラ11が外部電流源として接続されており、電流源29と相俟って帰還ループの位相補償器として機能する。
 
【0025】
  第2のプルアップ抵抗22には第2のフォトカプラ15が外部電流源として接続されており、
図1におけるラッチ回路14がハイレベルの時は、第2のフォトカプラ15はオン状態となり、第2の切り替え信号線34上にはローレベルが出力される。一方、ラッチ回路14がローレベルの時は、第2のフォトカプラ15はオフ状態となり、第2の切り替え信号線34上にはハイレベルが出力される。ワンショットマルチバイブレータ26は第2の切り替え信号線34の電圧レベルが、ハイレベルからローレベルに切り替わった事象、即ちラッチ回路14がハイレベルをラッチした事象に同期して所定の時間だけハイレベルのパルス信号を発生する。第1のスイッチ27は、ワンショットマルチバイブレータ26の出力がハイレベルの時にオン状態となり、放電抵抗28を介してコンデンサ25の電荷を放電させる。
 
【0026】
  電流源29は、電流スイッチ30がオン状態の時に、切り替えスイッチ23に応じてインピーダンス素子24もしくはコンデンサ25に電流を出力する。ただし、有限な電圧源で実現されているため、励起される電圧は或るレベルで飽和する。電流スイッチ30は、第2の切り替え信号線34の電圧レベルがハイレベルの時にオン状態となる。第2のスイッチ31は、第2の切り替え信号線34の電圧レベルがハイレベルの時にオン状態となり、切り替えスイッチ23で選択された信号を出力信号線35に伝達する。
 
【0027】
  プルダウン抵抗32は出力信号線35に接続され、第2のスイッチ31がオフ状態の時に出力信号線35を0Vに確定させるが、その抵抗値は十分に大きい。従って、第2のスイッチ31がオン状態の時に、電流源29とインピーダンス素子24またはコンデンサ25とによって機能する充電作用への影響は無視できる。出力信号線35は発振部3に接続される。
 
【0028】
  続けて、電流電圧変換制御部17の動作について説明する。理解を助けるため、具体的な設計例を先に示す。電流源29の値は200μAであり、その出力は5Vで飽和する。インピーダンス素子24はラグリード型フィルタを形成するべく10KΩの抵抗と0.022μFのコンデンサの直列接続によって構成される。コンデンサ25の容量は0.1μFである。ワンショットマルチバイブレータ26のオン期間は10μ秒、放電抵抗28は820Ωである。プルダウン抵抗32は2MΩである。
 
【0029】
  通常モード時は、第1の切り替え信号線33の電圧レベルがローレベルとなり、また、
図1のラッチ回路14は無条件にリセットされ、第2の切り替え信号線34の電圧レベルはハイレベルとなっている。従って、電流スイッチ30と第2のスイッチ31はオン状態となり、切り替えスイッチ23は、インピーダンス素子24を選択する。この結果、電流源29と第1のフォトカプラ11の出力電流の差がインピーダンス素子24に印加され、そこに励起した電圧が出力信号線35を介して発振部3へ発振制御電圧として出力される。
 
【0030】
  一方、バーストモード時は、第1の切り替え信号線33の電圧レベルがハイレベルとなり、切り替えスイッチ23は、コンデンサ25を選択する。バーストモードにおいて第2のフォトカプラ15がオフ状態の時は、第2の切り替え信号線34の電圧レベルはハイレベルとなり、電流スイッチ30と第2のスイッチ31がともにオン状態となる。この結果、電流源29によってコンデンサ25が充電され、そこに励起した電圧が発振部3へ発振制御電圧として出力される。
 
【0031】
  また、バーストモードにおいて第2のフォトカプラ15がオフ状態からオン状態に遷移すると、第2の切り替え信号線34の電圧レベルはハイレベルからローレベルに遷移して、電流スイッチ30と第2のスイッチ31がともにオフ状態となる。この結果、電流源29によるコンデンサ25への充電は停止し、発振部3へは0Vが出力される。また同時にワンショットマルチバイブレータ26が発生するパルス信号によって、コンデンサ25の電荷が放電抵抗28を介して所定時間にわたって放電される。コンデンサ25は、発振終了時の電圧値、本実施形態では、第2の切り替え信号線34がローレベルに切り替わる直前の電圧値から所定量だけ下がった電圧値を保持する。コンデンサ25が保持する電圧値を以後、「保持電圧」と呼ぶ。
 
【0032】
  第2のフォトカプラ15がオン状態から再びオフ状態に遷移すると、第2の切り替え信号線34はハイレベルとなり、電流スイッチ30と第2のスイッチ31がともにオン状態となる。この結果、電流源29によるコンデンサ25への充電が再開され、そこに励起した電圧が発振部3へ出力される。ただし、この時の初期値は、上述した保持電圧となる。
 
【0033】
  上記の設計例にて、第2の切り替え信号線34の電圧レベルがローレベルからハイレベルに遷移し、発振制御出力信号線35の電圧が4Vになるまでの時間を算出すると、コンデンサ25の電圧の初期値が0Vの場合、2ミリ秒かかる。しかし、4Vに達した直後に第2の切り替え信号線34の電圧レベルをローレベルに保持し、再びハイレベルに切り替えた場合は、切り替わり時のワンショット放電によって低下させた0.49Vを補えばよいので、0.2ミリ秒強の時間で4Vに到達する。つまり、0から電圧を充電させるよりも、前回の発振終了時の発振周波数に対応する電圧に対して電圧降下が起こった電圧を起点として充電を開始させることで、充電の時間を短縮することができる。
 
【0034】
  [動作説明]
  電源装置101全体としての動作を説明する。AC入力電圧が投入されてから、電源の制御が開始されるまでの動きは次の通りである。この動きの内容をフローチャートとして
図3に示す。
図3では、S301〜S313の工程により、動作の流れを示している。
 
【0035】
  AC入力部1に商用電源が印加されると、後段の整流部2で平滑化された高圧のDC電圧を生成する(S301)。ここでは図示していないが、発振部3、駆動部4の一部、および電流電圧変換制御部17を動作させるための電源は、以下のようにして供給する。即ち、起動時には上述したDC電圧から高抵抗によって起動電流を得て、それをコンデンサ(不図示)に蓄え、該コンデンサに発生した電圧が所定値以上になった際に、該コンデンサに蓄電された電荷を電源として制御動作が開始される。そして、発振部3の発振動作が正常に開始されるとトランス5に降圧された電圧が生じるため、今度はそれを整流して電流電圧変換制御部17等の電源として使用し、DC電圧からの起動電流の経路は遮断する。
 
【0036】
  電源の制御が開始されると、まずバーストモードにて動作が行われるが、バーストモードの定常動作状態に移行するまでの動きは次の通りである。初期状態において、第1〜第3のフォトカプラ11、15、16は、二次側に電源が生じていないため、いずれもオフ状態、即ち、電流電圧変換制御部17から電流の引き込みを行わない状態である。これにより、切り替え信号線33、34の電圧レベルはいずれもハイレベルとなり、従って、切り替えスイッチ23はコンデンサ25を選択し、電流スイッチ30と第2のスイッチ31は共にオン状態となる。コンデンサ25、および二次側コンデンサ7の電荷は0であり、電圧は0Vである。ラッチ回路14はローレベル状態である(S302、S303)。
 
【0037】
  この初期状態から、コンデンサ25は電流源29からの電流によって充電され、出力信号線35を介して制御信号として出力される発振制御電圧が0Vから徐々に増加する。そして、発振制御電圧が0.5Vに達すると、発振部3は最高周波数である333KHzで発振を開始する。この発振周波数においてはトランス5の二次側に励起される電圧は第1の基準電圧源8の値に対して十分小さい値である。しかし、二次側コンデンサ7の電圧の初期値は0Vであるため、二次側整流器6を介した充電は即時に開始され、そして、二次側出力電圧18は0Vから上昇する(S304、S305)。
 
【0038】
  そして、第1の基準電圧を超えたか判定する(S306)。発振制御電圧が徐々に上昇して例えば2Vに達した時は、発振部3の発振周波数は低下して、例えば83KHzになっている。この発振周波数の低下に伴って、トランス5の二次側に励起される電圧は相当に上昇しているが、未だ第1の基準電圧源8の値には至っておらず、ラッチ回路14はローレベルのままである。
 
【0039】
  二次側出力電圧18が、第1の基準電圧源8の値と略等しい値まで上昇した時点では、発振制御電圧は4.5V、発振周波数は37KHzとなり、これは後述する通常モード時の平衡状態と略等しい。ここから更に上昇し、二次側出力電圧18が第1の基準電圧源8の値を超えた瞬間、第1のコンパレータ12がハイレベルを出力し、ラッチ回路14はセットされ、ハイレベル出力に切り替わる(S306にてYES)。この場合、第2のフォトカプラ15の出力電流によって第2の切り替え信号線34の電圧レベルがハイレベルからローレベルに遷移し、第2のスイッチ31がオフ状態となり、発振制御電圧は0Vになる(S307、S309)。この発振制御電圧を受けて発振部3は発振を停止し、その結果、二次側出力電圧18の上昇は止まる。
 
【0040】
  この第2の切り替え信号線34の電圧レベルの反転と同時に、ワンショットマルチバイブレータ26が単パルスを発生し、コンデンサ25の電圧は、放電抵抗28を介した放電によって所定量が低下される(S308)。上記の設計例によれば4.5Vから0.55V低下して、3.95Vとなる。電流スイッチ30はオフ状態となるため、コンデンサ25はこの電圧を保持する。こうして発振が停止した結果、二次側出力電圧18は負荷電流による二次側コンデンサ7の放電によって徐々にその値を低下させる(S310)。
 
【0041】
  その後、第2の基準電圧を下回ったか判定する(S311)。二次側出力電圧18の低下が継続して、今度は二次側出力電圧18が第2の基準電圧源9の値を下回ったと判定すると(S311にてYES)、第2のコンパレータ13がローレベルを出力し、ラッチ回路14はリセットされ、ローレベル出力に切り替わる。この場合、第2のフォトカプラ15の出力電流がオフして第2の切り替え信号線34の電圧レベルがローレベルからハイレベルに遷移し、電流スイッチ30と第2のスイッチ31が共にオン状態となる(S312)。また、コンデンサ25に保持されている保持電圧を取得する。発振制御電圧はコンデンサ25が保持していた保持電圧に転じ、そしてそこから電流源29による充電によって上昇を開始する(S313)。これを受けて、発振部3は発振を再開するが、その時の発振周波数は42KHzでトランス5の二次側に励起される電圧は第2の基準電圧源9に満たない。従って、この時点ではまだ二次側コンデンサ7への充電は開始されない。
 
【0042】
  そして、発振制御電圧が上昇し、それに伴い発振周波数が低下し、トランス5の二次側に励起される電圧が第2の基準電圧源9(ここでは29V)を超えた時点で二次側コンデンサ7への充電が始まる。本事例によれば、この時の発振制御電圧は4.4Vであり、発振周波数は38KHzである。さらに発振制御電圧が上昇し、二次側出力電圧18が基準電圧源8の値を超えた瞬間からの動作については既述の通りである。また、その後の繰り返し動作も同様である。
 
【0043】
  バーストモードから通常モードに移行した場合は、
図3に示す処理が終了し、第1のフォトカプラ11からのフィードバック系が選択され、これに基づいた一般的なアナログフィードバック制御が行われる。通常モード時にはラッチ回路14を強制的にリセットしてローレベル出力状態とすることで、電流スイッチ30と第2のスイッチ31を共にオン状態にさせ、選択された系を導通させている。
 
【0044】
  モードの切り替わり時には、二次側出力電圧18は29Vから30Vの間にある。また、素子そのものが持つリークによって、発振制御電圧の初期値となるところのインピーダンス素子24の電圧は平衡状態の時の値より低くなっている。従って、通常モードへの切り替わりの瞬間にオーバードライブによる過度の電流が生じることはなく、フィードバックの応答特性に基づいて目標電圧に静定する。
 
【0045】
  アナログフィードバック制御に関する動作原理および一巡特性に代表される最適な設計手法については、公知の手法を用いることが可能である。ここでは、平衡状態における各構成要素の静定状態と、変位が生じた時の補正動作の向きの説明に留める。
 
【0046】
  平衡状態、すなわち、フィードバック動作によって系が安定状態にある時、電流電圧変換制御部17から出力される発振制御電圧は、ここで示す設計例によれば4.5Vであり、発振周波数は37KHzである。電流源29の出力電流と第1のフォトカプラ11の出力電流(引き込み電流)は同値となっていて、インピーダンス素子24への印加電流は0Aであり、インピーダンス素子24に励起される電圧は4.5Vのまま変化はない。エラーアンプ10のDC利得は極めて高く、従って二次側出力電圧18と第1の基準電圧源8は同値となる。
 
【0047】
  ここで負荷変動など、何らかの理由で二次側出力電圧18が第1の基準電圧源8の電圧値に対して上昇した場合、エラーアンプ10の出力電流は上記の平衡状態に対して増加する。すると、第1のフォトカプラ11の出力電流(引き込み電流)は同じく上記の平衡状態に対して増加する。すると、インピーダンス素子24からの放電が生じ、発振制御電圧は上記の4.5Vから低下する。これに伴い、発振部3の発振周波数は高まり、二次側への電圧供給能力が低下する。このようにして、何らかの変動が生じてもそれを抑制する方向にフィードバック制御が働き、結果的に二次側出力電圧18は第1の基準電圧源8を目標値として安定化される。
 
【0048】
  通常モードからバーストモードに移行した場合は、第2のフォトカプラ15からのフィードバック系が選択され、バーストモード制御が再開される。前回のバーストモードから通常モードに切り替わったタイミングと、バーストモードに移行した直後にラッチ回路14がラッチされるか否かによって、バーストサイクルの初回のみ、定常状態とは異なる動作が生じる。
 
【0049】
  留意すべき条件の一つとしては、先だってのバーストモードから通常モードへの切り替わりのタイミングが発振停止時であって、かつ、バーストモードに復帰した直後にラッチされた場合である。この場合は、保持電圧がもう一度の放電でさらに所定量低下してから保持され直すため、その分だけ発振部3の発振の再開が遅れる。従って、この遅れ時間によって生じる出力電圧の低下分を加味して設計しなくてはならない。しかし、本実施形態では、そもそもの遅れ時間が従来と比べて格段に短く改善されているので、設計上は然したる問題とはならない。
 
【0050】
  他の留意すべき条件としては、前回のバーストモードから通常モードへの切り替わりのタイミングが発振時の特に発振停止の直前であった場合である。この場合は、所定量の放電を経ずに発振制御電圧が保持されているので、当該発振制御電圧で発振を開始した時にトランス5の二次側に励起される電圧が二次側コンデンサ7に充電された電圧と略等しくなる。そのため、十分なソフトスタート特性が得られず、入力電圧の上昇によっては、若干のオーバードライブが生じる可能性がある。従って、電流共振型で一般的な、共振外れ防止機能を併用することが望ましい。
 
【0051】
  図4(a)は、以上説明した、AC入力電圧を投入してからバーストモードの定常状態に移行し、その後、通常モードに移行し、再びバーストモードに移行した時の、各電圧波形を示す。
図4(a)において、波形41は、AC入力電圧レベルを示す。波形42は、第3のフォトカプラ16の出力であり、バーストモードか通常モードかを示す。ハイレベル時が通常モードに対応し、ローレベル時がバーストモードに対応する。波形43は、ラッチ回路14の出力を示す。波形44は、二次側出力電圧18を示す。
 
【0052】
  図4(b)は、
図4(a)からバーストモードにおける発振動作期間中の動作波形を切り出し、比較のため、従来例を一点鎖線で重ねて示したものである。
図4(b)において、波形45aはラッチ回路14の出力を示し、
図4(a)の波形43に対応する。また、波形45bはラッチ回路の出力の従来例を示す。波形46aは、二次側出力電圧18を示し、
図4(a)の波形44に対応する。また、波形46bは、二次側出力電圧の従来例を示す。波形47aは、電流電圧変換制御部17からの発振制御電圧を示し、波形47bは、発振制御電圧の従来例を示す。波形48aは、発振部3の発振動作期間を示し、ハイレベルが発振中を意味する。波形48bは、発振動作期間の従来例を示す。本実施形態では、発振部の発振開始時もしくは発振開始の初期の発振周波数を、発振制御電圧を前回の発振終了時の電圧に近い値から開始させることにより、目的とする発振周波数に達するまでの時間を短縮化する。これにより、同等のソフトスタート特性を維持しながら、二次側の充電に寄与しない、即ち二次側出力電圧が上昇を見せない無為な発振動作期間が大幅に短縮され、第2の基準電圧源9の値に対する二次側出力電圧の誤差(下限値)についても、改善される。
 
【0053】
  ここで、ワンショットマルチバイブレータ26、第1のスイッチ27、放電抵抗28からなる放電機能について、好ましい設計の指標を解説しておく。まず、ワンショットマルチバイブレータ26のオン期間は、負荷が増大してバースト周期が短くなった場合を想定して、バースト周期よりも十分短くする。そして、オン期間、放電抵抗28の値、およびコンデンサ25の電圧により、放電量が決定されるが、その放電量は以下の条件を満足するようにする。即ち、放電後の保持電圧にて発振が再開された時に、トランス5の二次側に励起される電圧がマージンを持って第2の基準電圧源9の値を下回るようにする。マージンについては、バースト周期の間に生じ得る、整流部2の出力電圧変動(上昇分のみ)を考慮すればよい。
 
【0054】
  以上、本発明の第一の実施形態について説明した。文中では一例として、電圧制御式の発振部を前提に、その制御電圧の制御方法を説明したが、電流制御式の発振部であっても、あるいは容量制御式の発振部であっても構わない。この場合は、電流電圧変換制御部17は、発振部を制御するための制御電流を出力する。更には、デジタル制御の場合であれば、発振周期を決定するカウント値であってもよい。電流共振型において、二次側への出力電圧は発振周波数に依存しており、制御パラメータを用いて既述の説明と同等の発振周波数制御がなされれば、いずれの制御パラメータを用いるものであっても同様の効果が得られる。
 
【0055】
  本実施形態によれば、バースト動作のうち二次側への電力供給に寄与しない発振動作期間を大幅に短縮することができる。したがって、バースト動作における効率が向上する。また、応答性が早まることにより、出力電圧の精度を向上させることができる。すなわち、二次側の電圧を検知してから電力供給を開始するまでの時間が短縮されることにより、出力電圧の精度を向上させることができる。
 
【0056】
  また、本実施形態によれば、単一のコンバータで、大電力供給を実現しつつ軽負荷時の効率を向上させることができる。
 
【0057】
  <第二の実施形態>
  
図5は、本発明の第二の実施形態を説明するための図である。第一の実施形態と異なる部分である、本実施形態に係る電流電圧変換制御部17の内部構成を示す。
図5中、電流電圧変換制御部17は、プルアップ抵抗501、切り替えスイッチ502、位相補償抵抗503、位相補償コンデンサ504、ダイオード505、コンデンサ506、および放電抵抗507を有する。また、電流電圧変換制御部17は、電流源508、およびノイズ除去のためのコンデンサ509を有する。コンデンサ509の電圧、即ち、発振部3へと出力される電圧を、ここでも発振制御電圧と呼ぶこととする。以下、理解を容易にするため、設計事例を示しながら具体的に説明を行う。
 
【0058】
  例えば、コンデンサ506は0.1uF、放電抵抗507は820KΩ、電流源508は200uA、コンデンサ509は1000pFとする。また、ダイオード505は低Vfで高速なショットキーダイオードとし、Vfは0.2Vである。バースト動作の周期は、出力コンデンサ容量、負荷電流、および出力電圧変動幅(ここでは1V)によって決定されるが、ここでは、これを10m秒であるものとする。また、電流電圧変換制御部17の内部以外は、第一の実施形態と同じであるものとする。
 
【0059】
  AC電源投入後、電流電圧変換制御部17が初めて動作を開始するときの初期値は、コンデンサ506、およびコンデンサ509の電圧は共に0Vである。また、モードはバーストモードであり、切り替えスイッチ502は第2のフォトカプラ15の出力を選択している。第2のフォトカプラ15は、オフ、即ち出力が解放されている状態である。
 
【0060】
  この初期状態から動作が開始されると、まず、コンデンサ509が電流源508によって充電される。そして、その電圧、即ち発振制御電圧がダイオード505のVfを超えた時点でダイオード505がオン状態となり、コンデンサ506への充電が開始される。コンデンサ506の容量は、コンデンサ509の容量と比べて十分大きく、また、電流源508の値と比べて放電抵抗507に流れる電流は十分小さいので、発振制御電圧の上昇カーブは電流源508とコンデンサ506によって支配される。
 
【0061】
  発振制御電圧が上昇して4.5Vを超えると発振周波数が37KHzを下回り、二次側出力電圧18が第1の基準電圧源8の電圧値を超える。すると、第1のコンパレータ12がハイレベルを出力し、ラッチ回路14はセットされ、ハイレベル出力に切り替わる。すると、第2のフォトカプラ15がオン状態となり、電流源508の出力電流とコンデンサ509の電荷は高速に引き抜かれ、発振制御電圧は0Vになる。これによって発振部3の発振は停止する。この時、コンデンサ506は4.5Vからダイオード505のVf分低下した4.3Vの電圧となっており、また、ダイオード505のために、フォトカプラ15側への逆流は抑止されている。
 
【0062】
  発振部3の発振停止期間中は、二次側コンデンサ7に蓄えられた電荷で負荷電流が賄われる。また、その間、コンデンサ506の電圧は、放電抵抗507による放電で徐々に低下する。放電抵抗507に流れる電流は、電圧4.3Vを抵抗値(820KΩ)で除した5μA強である。
 
【0063】
  二次側出力電圧18が低下して第2の基準電圧源9の値を下回ると、第2のコンパレータ13がローレベルを出力し、ラッチ回路14はリセットされ、ローレベル出力に切り替わる。すると、第2のフォトカプラ15がオフ状態となり、電流源508によるコンデンサ509への充電が再開される。この時、コンデンサ506の電圧は、保持開始時の4.3Vから既述のバースト周期10m秒の間に放電によって0.5V強程度電圧降下し、約3.8Vとなる。
 
【0064】
  充電再開の当初は、コンデンサ509のみの充電なので発振制御電圧は速やかに上昇する。しかし、コンデンサ506の保持電圧とダイオード505のVfの和の値、即ちここでは4.0Vを超えるとダイオード505がオン状態となり、コンデンサ506への充電が開始される。その後の発振制御電圧の上昇カーブは、既述の通り、電流源508とコンデンサ506によって支配された緩慢なものとなる。あとは本動作の繰り返しとなる。この上昇カーブの変化点を以後、変速点と呼ぶ。
 
【0065】
  発振周波数に着目して整理すると、次のように制御される。即ち、発振制御電圧が0Vからスタートして0.5Vに達した段階で最高周波数にて発振が開始され、その後、変速点までは速やかに周波数は低下し、変速点以降は緩慢に低下する。変速点は前回のバースト発振終了時の周波数に依存し、それよりは高く、かつその近傍にある。変速点の発振周波数では、二次側コンデンサ7への充電は開始されていない。
 
【0066】
  図6は、第二の実施形態についての動作波形を示す。
図6中、波形601は、第2のフォトカプラ15の状態を示し、ハイレベルがオン状態を示している。波形602は、発振制御電圧を示す。波形603(一点鎖線)は、コンデンサ506の保持電圧を示す。波形604は、二次側出力電圧18を示す。
 
【0067】
  以上、第二の実施形態によれば、ソフトスタート特性を従来同様に確保しつつ、極めて簡略化した回路でアダプティブに、二次側の充電に寄与しない無駄な発振動作期間を短縮できる。
 
【0068】
  <第三の実施形態>
  第二の実施形態の回路によれば、通常モードでの動作期間中もコンデンサ506の放電が継続されるため、短期間でない場合、変速点は0V近くまで低下する。これにより、バーストモードに切り替わった初回のみではあるが、二次側出力電圧18が第2の基準電圧源9の値を下回ってから回復するまでの誤差量の増大が生じることとなる。ここでの初回とは、すなわち、通常モードにおいて長期間にわたってコンデンサ506の放電が継続された後の最初のバーストモードへの切り替え時を意味する。
 
【0069】
  図7は、この課題をさらに解決した第三の実施形態を説明するものであって、第二の実施形態に対して回路素子を追加した電流電圧変換制御部17の内部構成を示す。
図7中、第二の実施形態と同じ機能を果たす部品については
図5と同じ番号を付し、説明を省略する。本実施形態に係る電流電圧変換制御部17は更に、バッファーアンプ701、抵抗702、およびダイオード703を有する。バッファーアンプ701は、高い入力インピーダンスを有し、入力と同じ電圧を出力する。抵抗702は、制限抵抗であって、ここでは設計例として、91KΩとする。ダイオード703は、逆流防止用のダイオードであって、ダイオード505と同じくショットキーダイオードである。
 
【0070】
  通常モードにおいては、第1のフォトカプラ11の出力端に生じた電圧からダイオードの703のVfを減じ、それを抵抗702と放電抵抗507によって分圧した電圧で、コンデンサ506の充電が行われる。因みに、既述の設計事例によれば、発振制御電圧4.5Vの時の充電電圧は3.9Vである。バーストモードにおいては、ダイオード703からの供給は断たれ、また逆流も防止されるため、追加された回路の影響はない。
 
【0071】
  本実施形態では、通常モードからバーストモードに切り替わった初回の変速点の低下が防止され、回復までの誤差量を小さく抑えることができる。なお、モード切替信号でコンデンサ506の回路を断ち、電圧を保持する方法も考えられるが、コンデンサ素子の自己放電があるため現実的ではない。また、ここでは適切な減圧を抵抗702によって行っているが、ダイオード703を通常のVfの高いダイオードに置き換えて兼用して実現してもよい。あるいは、トランジスタのエミッタフォロワ回路を用いて、バッファー機能と減圧機能とを兼用して実現してもよい。
 
【0072】
  <第四の実施形態>
  
図8は、ユニバーサル電源に好適な、本発明の第四の実施形態を説明するものであって、第二の実施形態に対して回路の変更を行った電流電圧変換制御部17の内部構成と、その周辺を示す。
図8中、第二の実施形態と同じ機能を果たす部品については
図5と同じ番号を付し、説明を省略する。本実施形態に係る電流電圧変換制御部17は更に、放電抵抗801、802、および切り替えスイッチ803を有する。放電抵抗801は第1の放電抵抗であり、放電抵抗802は第2の放電抵抗である。切り替えスイッチ803は、整流部2の出力電圧によって制御され、210V以下(AC入力電圧で150Vに相当)の場合は放電抵抗801を選択し、210Vを超える場合は放電抵抗802を選択する。
 
【0073】
  この構成により、例えば日本国内や米国のように、商用のAC入力電圧が、100V〜120Vの場合は、整流部2のDC出力電圧が210V以下であるので、放電抵抗801が選択されて動作する。一方、欧州のように商用のAC入力電圧が220V〜240Vの場合は、整流部2のDC出力電圧が210Vを超えるので、放電抵抗802が選択されて動作する。それ以外については第二の実施形態と同様である。
 
【0074】
  以下、本実施形態のメカニズムを具体例を挙げて説明する。
図9は、電流共振型スイッチング電源の発振周期と一次側から二次側への電圧増幅度との関係を、トランスでの降圧比を1として示す。ただし、横軸である発振周期の具体的な値は共振周波数に依存し、また増幅度のカーブも、設計によって様々な形を取り得るものであり、これはあくまで一事例である。因みに、増幅度特性は、文献等で広く技術開示されている通り、解析的に求められる。
図9の通り、横軸を発振周期とすると、使用領域内(誘導性周波数領域内)では単調増加ではあるが、しかし線形ではない。
 
【0075】
  図1における発振部3は、定電流源とコンデンサとで構成された波形発生器、波形発生器と発振制御電圧とを電圧比較する比較器、比較器の出力をトリガーとするトグルフリップフロップ等を用いて実現される。これにより、回路の実現が容易となる。この構成(以後、周期制御方式と呼ぶ)を採用すれば、制御電圧に比例した発振周期が得られる。
 
【0076】
  周期制御方式を採用した場合、
図9の横軸は発振制御電圧とみなせる。そして、ユニバーサル対応の場合は、入力電圧が100V〜240Vの間で同一の二次側出力電圧を得るべく、2.4倍の増幅度の変化が得られる領域を用いることが求められる。この条件を満足する一設計事例を示すと、
図9において、動作点901は、入力電圧がAC100Vの時の動作点であり、動作点902は、入力電圧がAC230Vの時の動作点である。動作点901における発振周期は27μ秒であり、増幅度は2.1である。動作点902における発振周期は12μ秒であり、増幅度は0.9である。両者の増幅度の比率は2.3であり、この動作点設定にて、100V〜240Vの入力電圧幅に対応できる。
 
【0077】
  ここで変速点の増幅度を発振終了時に対して10%低下させておけば必要十分であると仮定する。必要以上に低下させると、二次側の充電に寄与しない無為な発振動作期間が増大し、また、低下量が不十分だと、入力電圧変動が生じた時に十分なソフトスタート特性が得られない。実際は、これに諸々のばらつき要因をも考慮して最適な設計を行うべきであるが、上記の仮定に従って説明を続ける。
 
【0078】
  動作点901における増幅度は既述の通り2.1であり、10%低下させた1.9にするためには、発振周期は25.7μ秒に低下させればよい。これは元の27μ秒に対して、5%減である。一方、動作点902における増幅度は既述の通り0.9であり、10%低下させた0.8にするためには、発振周期は8μ秒に低下させればよい。これは元の12μ秒に対して、33%減である。
 
【0079】
  以上のことを、発振周期27μ秒が発振制御電圧4.5Vに相当するものとして、発振制御電圧に換算して表現し直すと次の通りである。即ち、AC100V入力時は、発振停止期間中に、発振制御電圧を4.5Vから4.3Vまで放電させることが適切であり、AC230V入力時は、同期間中に発振制御電圧を2.0Vから1.3Vまで放電させることが適切であるということになる。バースト周期を10m秒と仮定すると、コンデンサ506の容量が0.1μFの場合、本条件を満足する放電抵抗801の値は2.2MΩ、放電抵抗802の値は240KΩと算出される。
 
【0080】
  このように入力電圧に応じて放電回路の定数を変更し、それぞれに最適な制御を行うことでソフトスタート特性を確保しながら一層、既述の無為な発振動作期間を短縮することができる。ここで説明したような放電抵抗の切り替え方法のほか、入力電圧に応じて放電電流を切り替える、あるいは可変にしてもよい。つまり、コンデンサ506に関する放電特性を入力電圧に応じて切り替えている。また、第一の実施形態にて述べた
図2の構成においては、ワンショットマルチバイブレータ26のオン期間を可変として放電量を制御してもよい。
 
【0081】
  <第五の実施形態>
  以下、第一〜第四の実施形態にて説明した電源装置101を画像形成装置(特に大判のインクジェットプリンタ)に適用した場合の構成について第五の実施形態として説明する。
 
【0082】
  なお、以下の説明において、画像形成装置による「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
 
【0083】
  また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
 
【0084】
  また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
 
【0085】
  またさらに、「記録要素」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
 
【0086】
  [記録装置の概要]
  
図10は本発明の代表的な実施形態であるA0やB0サイズなどの大きなサイズの記録媒体を用いる画像形成装置に含まれる記録装置の外観斜視図である。
 
【0087】
  図10に示す記録装置1000は、10インチ〜60インチサイズのロール状の記録媒体(例えば、ロール紙)に記録が可能である。記録装置1000は、本体部を乗せるスタンド1001、排紙された記録紙を積載するスタッカ1002を備える。また、記録装置1000には、種々の記録情報や設定結果などを表示するための表示パネル1003と、記録モードや記録紙などの設定をするための操作パネル1004がその上面に配設されている。また、開閉可能なアッパーカバー1096を備える。
 
【0088】
  さらに、記録装置1000の両脇には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロなどのインクタンクを収容して記録ヘッドにインクを供給するためのインクタンク収容部1005が配置されている。
 
【0089】
  さらに、記録装置1000はロール紙のみならず、カット紙も使用可能である。カット紙は給紙部1007に積載され、記録動作の進行に伴って一枚ずつ記録装置1000の内部へと給紙・搬送される。
 
【0090】
  図11は、本発明の電源装置101を、画像形成装置である大判インクジェットプリンタに適用した場合の構成例を示す図である。
図11に基づいてまず構成について説明する。
図11中、画像形成装置は、電源装置101、DC−DCコンバータ102、コントローラ103、モータドライバ104、モータ105、信号生成手段106、インクジェットヘッド107、および切り替え信号108を備える。DC−DCコンバータ102は降下型であり、入力電圧(VM)をVDDに降圧して出力する。コントローラ103は、ヘッドドライバ(不図示)を介してインクジェットヘッド107の動作を制御する。また、コントローラ103は、切り替え信号108により、バーストモードと通常モードの2つのモードで動作する電源装置101の動作モードの切替えを制御する。信号生成手段106は、画像処理及びヘッド制御の信号を生成する。切り替え信号108は、バーストモードと通常モードの切り替え信号を示す。
 
【0091】
  電源装置101は、PFC(Power  Factor  Correction)を内蔵していてもよい。その場合、バーストモードが指令されているときには、PFCの動作は停止するように構成されることが望ましい。コントローラ103は、省エネモード時のバーストモードへの移行の指令のほか、印刷機能に関わる全体のシーケンス制御を行う。モータドライバ104はコントローラ103の指令に基づきモータ105を駆動するが、もちろんモータ電流を0にすることも可能で、この時、VMが印加され続けた状態でも、モータでの電流消費は略0となる。
 
【0092】
  信号生成手段106は、コントローラ103の制御に基づき、インクジェットヘッド107へ吐出制御信号を出力する。コントローラ103から吐出停止命令が発令されると信号生成手段106は、インクジェットヘッドへの吐出制御を停止する。その結果、インクジェットヘッド107は、VMが印加され続けた状態でも電流消費は略0となる。同時に信号生成手段106の内部動作も停止されることにより信号生成手段106での消費電力は著しく低減される。
 
【0093】
  [動作フロー]
  
図12は、AC入力開始からの本システムの動作フローを示す。
図12に沿って、以下、本実施形態に係るシステムの動作を説明する。
 
【0094】
  S1201にて、AC(交流電源)が電源装置101に対し入力される。
 
【0095】
  S1202にて、電源装置101がバーストモードで起動し、バースト周期に同期して変動するVM電圧が出力される。
 
【0096】
  S1203にて、DC−DCコンバータ102によって安定化されたVDD電圧が出力される。
 
【0097】
  S1204にて、VDD電圧の印加によってコントローラ103が始動し、コントローラ103内部の初期化動作を行う。
 
【0098】
  S1205にて、コントローラ103が印刷命令を受信するまで待機する。印刷命令を受信するとS1206へ進む。
 
【0099】
  S1206にて、コントローラ103は切り替え信号108をバーストモードから通常モードへと切り替える。それによって、電源装置101は内蔵するPFCをオンするとともに、動作を通常モードの動作に切り替える。
 
【0100】
  S1207にて、VMは変動しない安定した電圧が出力される。
 
【0101】
  S1208にて、電圧が安定するまでの所定の待ち時間を経た後、コントローラ103は、信号生成手段106を励起する。
 
【0102】
  S1209にて、コントローラ103は、モータドライバ104に適切に制御信号を発しながら、モータ105を駆動して、印刷動作を遂行する。同じくこの間、信号生成手段106は、インクジェットヘッド107に吐出制御信号を出力し、インクジェットヘッド107はそれに伴ってVM系の電力を消費する。
 
【0103】
  S1210にて、印刷動作が完了すると、次の印刷命令を所定時間待つ。所定時間にわたって次の印刷命令を受信しない場合は(S1210にてNO)、S1211へ進み、印刷命令を受信した場合は(S1210にてYES)、S1208へ戻り、処理を繰り返す。
 
【0104】
  S1211にて、コントローラ103は、切り替え信号108を通常モードからバーストモードに切り替える。
 
【0105】
  S1212にて、S1111の結果、電源装置101は、内蔵するPFCを停止し、自身の動作をバーストモードに切り替える。そして、S1205へ戻り、印刷命令を待つ。
 
【0106】
  上述した実施形態の電源装置は、画像形成装置としてのプリンタだけでなく、省エネモード時に非常に高い電圧変換効率が求められる電子機器、例えば液晶テレビなどにも適用できる。
 
【0107】
  <その他の実施形態>
  本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。