(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
  以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
 
【0013】
  <第1実施形態>
  本発明に係る第1実施形態の検査装置1について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態の検査装置1を示す概略図である。検査装置1は、例えば、工業製品に利用される金属部品や樹脂部品などの物品2の外観検査を行う。物品2の表面には、キズやムラ(例えば色ムラ)、凹凸などの欠陥が生じていることがあり、検査装置1は、物品2の画像に基づいて物品2の表面に生じている欠陥を検出し、当該物品2を複数のグループのいずれかに分類する。第1実施形態では、複数のグループに良品グループ(第1グループ)および不良品グループ(第2グループ)が含まれ、検査装置1によって物品2を良品グループおよび不良品グループのいずれかに分類する例について説明する。また、第1実施形態は、検査装置1によって物品2の外観(物品2の表面)を検査する例について説明するが、X線などを用いて物品2の内部を検査する場合においても本実施形態を適用することができる。
 
【0014】
  検査装置1は、撮像部11と、処理部12と、表示部13と、入力部14とを含みうる。撮像部11は、例えば照明部やカメラなどを含み、物品2を撮像して物品2の画像(対象画像)を取得する。撮像部11によって取得された物品2の画像は、処理部12に転送される。処理部12は、例えば、CPU12a(Central Processing Unit)、RAM12b(Random
 AccessMemory)、およびHDD12c(Hard Disk Drive)を含む情報処理装置から成りうる。処理部12は、撮像部11によって取得された対象画像についての評価値を求め、求めた評価値と各グループにおける評価値の範囲(閾値)とに基づいて物品2を複数のグループのいずれかに分類する処理(分類処理)を実行する。CPU12aは、物品2を複数のグループに分類するためのプログラムを実行し、RAM12b、HDD12cは、当該プログラムやデータを格納する。表示部13は、例えばモニタを含み、処理部12によって実行された分類処理の結果を表示する。また、入力部14は、例えばキーボードやマウスなどを含み、ユーザからの指示を処理部12に送信する。
 
【0015】
  [処理部12における分類処理について]
  次に、処理部12における分類処理について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、処理部12における分類処理の方法を示すフローチャートである。S1では、処理部12は、物品2の表面における欠陥の可視化された画像が取得されるように、物品2を撮像するときの撮像部11の条件を設定する。当該条件は、例えば照明の角度やカメラの露光時間、フォーカスや絞りなどを含みうる。S2では、処理部12は、複数のグループのいずれかに既に分類された複数のサンプルそれぞれの画像(学習用画像)を取得する。複数の学習用画像は、今までに撮像部11によって撮像されて保存された画像であってもよいし、保存された画像が無い場合は、複数のサンプルそれぞれを撮像部11に撮像させることによって新たに取得されてもよい。また、複数のサンプルそれぞれは、それらの学習用画像に基づいて、例えばユーザによって複数のグループ(良品グループおよび不良品グループ)のいずれかに分類されている。ここで、第1実施形態では、2つのグループ(良品グループおよび不良品グループ)のいずれかに分類されたサンプルの画像を学習用画像として用いているが、それに限られるものではない。例えば、不良品の種類(キズやムラなど)に応じて更に細かく分類されたサンプルの画像を学習用画像として用いてもよい。
 
【0016】
  S3では、処理部12は、S2で取得した複数の学習用画像の少なくとも一部を用いて、対象画像を分類するための情報(以下、分類情報)を取得する、いわゆる「学習」を行う。分類情報は、画像の評価値を求めるための評価方法、および物品を分類するための評価値の閾値を含みうる。評価方法は、例えば、画像の評価値を求めるための関数であり、画像における少なくとも1つの特徴量をパラメータとして使用する評価方法に当該少なくとも1つの特徴量を代入することにより画像の評価値を求めることができる。特徴量とは、画像における特徴(以下、画像特徴)の大きさを表す。S3において、処理部12は、例えば、多数の画像特徴の中から、各学習用画像を良品グループおよび不良品グループのいずれかに分類するために用いられたと推定される複数の画像特徴を自動的に抽出して特徴リストを作成する。そして、当該特徴リストに含まれる複数の画像特徴の各々についての特徴量をパラメータとする評価方法を分類情報として決定する。分類情報を取得する方法の詳細については後述する。S4では、処理部12は、撮像部11に物品2を撮像させ、それにより得られた物品2の画像(対象画像)をS3で取得した分類情報に基づいて良品グループおよび不良品グループのいずれかに分類する。処理部12は、例えば、S3で決定した評価方法を用いて対象画像の評価値を求め、当該評価値と閾値とを比較することによって物品を分類するグループを決定する。S5では、処理部12は、検査結果を表示部13に表示させる。処理部12は、物品2に対する良品または不良品の判定だけでなく、例えば、物品2に生じている欠陥部分の画像や、特徴リストに含まれる各画像特徴についての特徴量および評価値などを検査結果として表示部13に表示させてもよい。
 
【0017】
  [分類情報の取得について]
  
図2のフローチャートにおけるS3の工程で行われる分類情報の取得(学習)について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、分類情報を取得する方法(学習方法)を示すフローチャートである。
 
【0018】
  S3−11では、処理部12は、S2で取得した複数の学習用画像を読み込む。S3−12では、処理部12は、複数の学習用画像の少なくとも一部を用いて特徴リストを作成し、当該特徴リストに含まれる複数の画像特徴の各々についての特徴量をパラメータとする評価方法を決定する。以下では、n枚の学習用画像を用いて特徴リストを作成し、評価方法としてマハラノビス距離を用いる例について説明する。例えば、処理部12は、複数の学習用画像の各々における欠陥を強調するため、各学習用画像に対し、周波数ドメインへの変換手法としてのウェーブレット変換のひとつであるハール・ウェーブレット変換を行う。ハール・ウェーブレット変換は、位置情報を保持したまま周波数変換を行うことが可能な処理である。まず、処理部12は、複数の学習用画像の各々に対し、式(1)で示す第1フィルタから第4フィルタまでの4種類のフィルタを用いて内積演算を行う。式(1)において、第1フィルタは、縦方向の高周波成分を抽出するためのフィルタであり、第2フィルタは、対角方向の高周波成分を抽出するためのフィルタである。また、第3フィルタは横方向の高周波成分を抽出するためのフィルタであり、第4フィルタは低周波成分を抽出するためのフィルタである。
 
【0020】
  これにより、処理部12は、縦方向の高周波成分を抽出した画像、対角方向の高周波成分を抽出した画像、横方向の高周波成分を抽出した画像、および低周波成分を抽出した画像の4種類の画像を得ることができる。このように得られた4種類の画像はそれぞれ、変換前の画像と比べて解像度が2分の1になる。処理部12は、低周波成分を抽出した画像に対してハール・ウェーブレット変換を行い、解像度を2分の1にした4種類の画像を更に得る工程を繰り返すことにより、階層的に周波数が低くなる複数の画像を得る。
 
【0021】
  そして、処理部12は、ハール・ウェーブレット変換により得られた各階層の画像および変換前の画像のそれぞれから、全画素値の最大値、平均値、分散値、尖度、歪度、相乗平均などのマクロな画像特徴を抽出する。処理部12は、マクロな画像特徴として、コントラスト、最大値と最小値との差、標準偏差などの統計値を抽出してもよい。このような処理を行うことにより、処理部12は、複数の学習用画像から多数の画像特徴を抽出することができる。ここで、本実施形態では、ハール・ウェーブレット変換を用いて多数の画像特徴を得たが、例えば、その他のウェーブレット変換やエッジ抽出、フーリエ変換、ガボール変換といったその他の変換手法を用いて多数の画像特徴を得てもよい。また、多数の画像特徴には、マクロな画像特徴だけでなく、フィルタリング処理によって算出された局所的な画像特徴が含まれてもよい。
 
【0022】
  次に、処理部12は、例えば、良品グループにおける学習用画像を用いて、抽出した画像特徴ごとにスコアを算出し、抽出された多数の画像特徴から分類処理に用いる画像特徴を選択して特徴リストを作成する。画像特徴を選択する方法としては、例えば、特許文献1に示すように、良品グループにおける学習用画像を用いて画像特徴の組み合わせの相性を評価する方法がある。本実施形態では、当該方法を用いて分類処理に用いる画像特徴を選択するが、例えば主成分分析法など他の方法を用いてもよい。主成分分析法は、複数の画像特徴における冗長性を省くため、固有分解によって固有値が高い画像特徴を選択する方法である。この方法を用いることにより、冗長な画像特徴が選択されることを防ぐことができる。ここで、上記では、良品グループにおける学習用画像を用いて画像特徴を選択する例を説明したが、それに限られるものではない。例えば、不良品グループにおける学習用画像を用いて画像特徴を選択してもよいし、双方における学習用画像を用いて画像特徴を選択してもよい。
 
【0023】
  次に、作成された特徴リストに含まれる各画像特徴についての特徴量の重みを決定する方法について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、複数の学習用画像の各々について、特徴リストに含まれる各画像特徴についての特徴量を抽出した結果を示す図である。
図4では、複数の学習用画像の各々における各特徴量をX
ijで表す。iは学習用画像の番号を示し(i=1,2,・・・,n)、jは特徴リストに含まれる特徴の番号を示している(j=1,2,・・・,k)。nは学習用画像の数であり、kは特徴リストに含まれている画像特徴の数である。ただし、nとkとの関係はn≧kであることが好ましい。また、M
jは複数の学習用画像における特徴量X
ijの平均値であり、σ
jは複数の学習用画像における特徴量X
ijの標準偏差である。ここで、分類処理に用いる画像特徴として選択されなかった画像特徴についても、特徴量、平均値および標準偏差を求めておくことが好ましい。それらの結果を後述の工程(S3−16)で用いるからである。
 
【0024】
  処理部12は、式(2)により、複数の学習用画像の各々における各特徴量X
ijの正規化を行う。Y
ijは、正規化された各特徴量を表す。また、処理部12は、式(3)により相関係数r
pqを求め、式(4)に示すように各相関係数r
11〜r
kkによって構成された相関行列Rの逆行列Aを求める。この逆行列Aが特徴リストに含まれる各画像特徴についての特徴量の重みに相当する。これにより、処理部12は、評価方法を、特徴リストに含まれる各画像特徴についての特徴量(正規化された特徴量)をパラメータとした、例えば式(5)によって表されるマハラノビス距離MD
iに決定することができる。
 
【0029】
  図3のフローチャートに戻り、S3−13では、処理部12は、S3−12で決定した評価方法(マハラノビス距離MD
i)により、複数の学習用画像の各々について評価値を求める。処理部12は、特徴リストに従って複数の学習用画像の各々から複数の特徴量を抽出し、当該複数の特徴量を評価方法に代入することにより各学習用画像についての評価値を求める。第1実施形態では、各学習用画像の評価値として異常度を用いる例について説明する。本実施形態では、異常度(評価値)をマハラノビス距離MD
iによって求めたが、ユークリッド距離や部分空間法の一種である投影距離によって求めてもよい。
 
【0030】
  S3−14では、処理部12は、複数の学習用画像の各々における異常度(評価値)の分布を各グループについて生成するとともに表示部13に表示する。S3−15では、処理部12は、サンプルの画像についての評価値の範囲が複数のグループにおいて互いに相違する度合(以下、相違度)が許容値を満たしているか否かを判断する。相違度が許容値を満たしていない場合はS3−16に進み、相違度が許容値を満たしている場合は分類情報の取得(学習)を終了する。許容値は、例えば、ユーザによって予め設定されうる。
 
【0031】
  図5は、表示部13の画面における表示例を示す図である。表示部13の領域13aには、各学習用画像における異常度(評価値)の分布(ヒストグラム)が各グループについて表示されている。当該ヒストグラムにおいて、白い棒が良品グループにおける学習用画像の枚数を表し、黒い棒が不良品グループにおける学習用画像の枚数を表している。また、表示部13の領域13bには、対象画像を分類するための評価値の閾値を決定するための不良品検出率と、相違度としての直交率とが表示されている。
 
【0032】
  不良品検出率とは、複数のグループのうち所定のグループの分類されるべきサンプルを当該所定のグループに分類させる比率のことであり、例えば、不良品を不良品として分類させる比率のことである。この不良品検出率に応じて閾値が決定されうる。不良品検出率は、ユーザによって任意に設定可能であるが、一般に、不良品が良品に分類されることがないように100%に設定される。不良品検出率が100%の場合、処理部12は、不良品グループにおける学習用画像の異常度の最小値より小さい値に閾値を設定する。つまり、処理部12は、
図5に示すヒストグラムにおいて、不良品グループにおける学習用画像の全てが閾値より右側になるように閾値を設定する。
図5に示す例では、不良品グループにおいて異常度が最小となる学習用画像13hの異常度より小さい値になるように閾値13cが処理部12によって設定される。
 
【0033】
  また、相違度としての直交率とは、良品グループにおける学習用画像の全てに対する、閾値より異常度の小さい学習用画像の割合のことである。直交率は一般に高い方が好ましく、直交率が100%のときが、良品グループにおける学習用画像の全てが閾値より左側に配置され、不良品グループにおける学習用画像の全てが閾値より右側に配置される理想的な状態となる。
 
【0034】
  ここで、本実施形態では、相違度が許容値を満たしているか否かの判断が処理部12によって行われるが、例えばユーザによって行われてもよい。この場合、ユーザは、相違度(直交率)が許容値を満たしていないと判断したときには「追加学習」ボタン13dを、相違度が許容値を満たしていると判断したときには「学習の終了」ボタン13eを入力部14を介して押す。処理部12は、「追加学習」ボタン13dがユーザによって押された場合にはS3−16に進み、「学習の終了」ボタン13eがユーザによって押された場合には分類情報の取得(学習)を終了する。
 
【0035】
  S3−16では、処理部12は、複数の学習用画像の各々についての異常度(評価値)をグループごとに表した情報に基づいて、複数の学習用画像の各々についての異常度において特異な異常度を有する少なくとも1つのサンプルを特定する。第1実施形態では、当該情報として、各グループにおける異常度のヒストグラムが用いられる。処理部12は、サンプルの画像についての評価値の範囲が良品グループと不良品グループとで互いに重なり合っている部分(以下、重複部分)に属するサンプルから、特異な評価値を有する少なくとも1つのサンプルを選択するとよい。重複部分とは、例えば、表示部13の領域13aに表示されたヒストグラムにおける異常度の範囲13fのことである。例えば、処理部12は、不良品グループおよび重複部分の双方に含まれるサンプルのうち、異常度の低い方から順に少なくとも1つのサンプルを特定する。もしくは、処理部12は、良品グループおよび重複部分の双方に含まれるサンプルのうち、異常度の高い方から順に少なくとも1つのサンプルを特定する。特定するサンプルの数は、例えば、ユーザによって予め設定されうる。また、処理部12は、特定されたサンプルの学習用画像を表示部13の領域13gに表示させてもよい。ここで、本実施形態では、特異な評価値を有する少なくとも1つのサンプルの特定が処理部12によって行われるが、例えばユーザによって行われてもよい。この場合、ユーザは、表示部13の領域13aに表示されたヒストグラムにおいて、特異な評価値を有する学習用画像を入力部14を介して選択することにより、当該少なくとも1つのサンプルを特定しうる。
 
【0036】
  S3−12において作成された特徴リストでは、例えば、小さい欠陥や低コントラストの欠陥などを含む画像を不良品グループに分類するように評価方法が決定されないことがある。そのため、S3−13からS3−15の工程において、相違度が許容値を満たしているか否かを判断し、S3−16の工程において、複数の学習用画像の各々についての異常度(評価値)の分布から特異な評価値を有するサンプルを特定している。
 
【0037】
  そして、S3−17では、処理部12は、S3−16で特定された少なくとも1つのサンプルの学習用画像についての評価値を変化させて相違度(直交率)が高まるように(許容値を満たすように)、画像特徴を特徴リストに追加して、評価方法を変更する。このとき、処理部12は、当該少なくとも1つのサンプルの学習用画像についての評価値の変化が、複数の学習用画像の各々についての評価値の変化の平均に比べて大きくなるように評価方法を変更するとよい。
 
【0038】
  例えば、処理部12は、S3−16で特定された少なくとも1つのサンプルの学習用画像について、特徴リストに含まれていない画像特徴についての特徴量X
sを求める。sは特徴リストに含まれていない画像特徴の番号を示している(s=k+1,k+2,・・・,N)。Nは、S3−12において複数の学習用画像から抽出された画像特徴の全数である。そして、処理部12は、式(6)により特徴量X
sの正規化を行う。Y
sは、正規化された特徴量を表す。式(6)において、M
sは複数の学習用画像における特徴量X
sの平均値であり、σ
sは複数の学習用画像における特徴量X
sの標準偏差である。平均値M
sおよび標準偏差σ
sは、S3−11で読み込まれた複数の学習用画像を用いて算出されうる。
 
【0040】
  この正規化された特徴量Y
sは、平均値M
sおよび標準偏差σ
sを用いて正規化されている。そのため、正規化された特徴量Y
sを、複数の学習用画像の各々と、S3−16で特定された少なくとも1つのサンプルの学習用画像とで比較することで、当該少なくともの1つのサンプルの学習用画像への寄与率が大きい画像特徴を選択することができる。即ち、特徴リストに追加する画像特徴についての特徴量Y
sが大きいほど、評価方法を変更したとき、S3−16で特定された少なくとも1つのサンプルの学習用画像についての評価値を、各学習用画像についての評価値の平均より大きく変化させることができる。したがって、処理部12は、特徴リストに含まれていない画像特徴のうち正規化された特徴量Y
sが大きい画像特徴から順に特徴リストに追加して評価方法を変更することが好ましい。特徴リストに追加する画像特徴についての正規化された特徴量Y
sは3以上であるとよい。ここで、処理部12は、上述の方法により、特徴リストに含まれる各画像特徴についての特徴量の重みを再び決定しうる。また、処理部12は、分類処理に要する時間が許容範囲に収まるように、特徴リストに含まれる複数の画像特徴のうち当該少なくとも1つのサンプルの学習用画像の評価値を変化させる寄与率(重み)が最も小さい画像特徴を特徴リストから外してもよい。
 
【0041】
  S3−18では、処理部12は、S3−13の工程と同様に、S3−17で変更した評価方法により、複数の学習用画像の各々について評価値を求める。S3−19では、処理部12は、S3−14の工程と同様に、複数の学習用画像の各々における異常度(評価値)の分布を各グループについて再び生成するとともに表示部13に表示する。S3−20では、処理部12は、相違度(直交率)が許容値を満たしているか否かを判断する。相違度が許容値を満たしていない場合はS3−16に進みS3−16〜S3−19の工程を繰り返し、相違度が許容値を満たしている場合は分類情報の取得(学習)を終了する。
 
【0042】
  上述したように、第1実施形態の検査装置1では、相違度が高まるように(許容値を満たすように)評価方法の変更が処理部12によって行われる。これにより、検査装置1は、高精度な学習を行うことができ、変更した評価方法を用いて対象画像についての評価値を求めることにより、当該物品を複数のグループのいずれかに精度よく分類することができる。
 
【0043】
  <第2実施形態>
  本発明の第2実施形態の検査装置について説明する。第2実施形態の検査装置は、第1実施形態の検査装置1と比べて、
図2におけるS3の工程で行われる分類情報を取得する方法(学習方法)が異なる。以下に、第2実施形態の検査装置における分類情報の取得(学習)について、
図6を参照しながら説明する。
 
【0044】
  S3−21〜S3−29は、
図3のフローチャートにおけるS3−11〜S3−19と同様である。S3−30では、処理部12は、ユーザにより予め設定された条件に従って、S3−26〜S3−29の工程を繰り返すか否かを判断する。S3−26〜S3−29の工程とは、相違度が高まるように(許容値を満たすように)評価方法を変更する工程のことである。処理部12は、例えば、S3−26〜S3−29の工程を、予め設定された回数だけ繰り返す。このようにS3−26〜S3−29の工程を繰り返すことにより、処理部12は、対象画像の評価値を求めるために用いられる評価方法について複数の候補を取得することができる。また、S3−31では、処理部12は、S3−30において取得した複数の候補のうち相違度が最も大きい候補を選択し、選択した候補を、対象画像の評価値を求めるために用いられる評価方法に決定する。本実施形態では、処理部12は、複数の候補のうち相違度が最も大きい候補を選択したが、例えば、分類処理に要する時間が最も短くなる候補を選択してもよいし、相違度および分類処理に要する時間を両立することができる候補を選択してもよい。
 
【0045】
  <第3実施形態>
  第1実施形態では、特異な異常度を有する少なくとも1つのサンプルを特定する際に、各グループにおける異常度のヒストグラムを、複数の学習用画像の各々についての異常度をグループごとに表した情報として用いる例について説明した。第3実施形態では、異常度(評価値)でソートされた良品グループの各学習用画像と、良品グループの各学習用画像の異常度に対応する異常度を有する不良品グループの学習用画像の数との関係を、当該情報として用いる例について説明する。以下では、当該関係を「累積数分布」と称する。
 
【0046】
  図7は、累積数分布を示す図である。当該累積数分布は、S3−14の工程において処理部12によって生成され、表示部13の領域13aに表示されうる。
図7における横軸は、異常度が少ない順にソートさせた良品グループの各学習用画像の番号を示し、縦軸は、良品グループの各学習用画像の異常度に対応する異常度を有する不良品グループの学習用画像の数(累積数)を示している。
 
【0047】
  例えば、
図7では、良品グループの学習用画像の番号(横軸)が「30」のところで、不良品グループの学習用画像の累積数(縦軸)が1枚目にカウントされている。これは、良品グループの30枚目の学習用画像の異常度に対応する異常度を有する不良品グループの学習用画像が1枚あることを示している。具体的には、不良品グループにおける1枚の学習用画像の異常度が、良品グループにおける30枚目の学習用画像の異常度と31枚目の学習用画像の異常度との間にあることを示している。
 
【0048】
  同様に、
図7では、良品グループの学習用画像の番号(横軸)が「40」のところで、不良品グループの学習用画像の累積数(縦軸)が2枚目にカウントされている。これは、良品グループの40枚目の学習用画像の異常度に対応する異常度を有する不良品グループの学習用画像が1枚あることを示している。具体的には、不良品グループにおける1枚の学習用画像の異常度が、良品グループにおける40枚目の学習用画像の異常度と41枚目の学習用画像の異常度との間にあることを示している。
 
【0049】
  次に、
図7に示す累積数分布を用いる利点について説明する。累積数分布を用いる利点としては主に3点ある。1点目の利点としては、グラフ形状が一意的に決定されることである。例えば、異常度をグループごとに表した情報としてヒストグラムを用いる場合では、ビンの設定を行わないとグラフ形状を決定することができない。それに対し、
図7に示す累積数分布を当該情報として用いる場合では、ビンなどを設定することなく、グラフ形状を一意的に決定することができる。
 
【0050】
  2点目の利点としては、最も異常度が小さい不良品グループの学習用画像を容易に検知することができることである。一般に検査システムにおいては、最も良品に近い不良品を如何に早く且つ正確に検知することができるかが、高精度に画像を分類するうえで大きな課題となる。ヒストグラムを用いる場合では、良品グループおよび不良品グループの2つのヒストグラムを参照しないと、最も異常度が小さい不良品グループの学習用画像を検知することができない。それに対し、
図7に示す累積数分布では、プロット線で表される1つのデータのみを参照することにより、最も異常度が小さい不良品グループの学習用画像を容易に且つ正確に検知することができる。
 
【0051】
  3点目の利点としては、グラフ形状によって学習結果が妥当であるか否かを容易に判断することができることである。即ち、累積数分布では、グラフ形状(プロット線の傾き)から直交率(相違度)を容易に把握することができる。
図8は、累積数分布についての比較例(3つの例)を示す。
図8における実線71は、不良品グループにおける全ての学習用画像の異常度が良品グループにおける学習画像の最大の異常度よりも大きく、良品グループと不良品グループとが完全に分離している場合を示している。また、
図8における破線72は、不良品グループにおける学習用画像の中に、良品グループにおける最大の異常度より小さい異常度を有する学習用画像があるが、良品グループと不良品グループとが十分に分離している場合を示している。さらに、
図8における一点鎖線73は、不良品グループにおける学習用画像の中に、良品グループにおける最大の異常度より特に小さい異常度を有する学習用画像があり、学習が不十分である場合を示している。一点鎖線73に示すようなグラフ形状になる理由としては、例えば、本来は良品グループに分類されるべき学習用画像が不良品グループに分類されていることや、不良品グループを分類するために必要な画像特徴が抽出されていないことなどが挙げられる。
 
【0052】
  ここで、累積数分布では、グラフ形状(プロット線の傾き)から直交率(相違度)が求められ、求められた直交率が許容値を満たしているか否かがS3−15の工程において判断される。また、累積数分布は、累積数分布は、
図7に示す例に限られるものではなく、例えば、
図9に示すように、
図7の縦軸と横軸とを逆にしたものであってもよい。
 
【0053】
  <その他の実施形態>
  本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
 
【0054】
  以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。