特許第6616650号(P6616650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616650
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】距離測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
   G01B11/00 G
   G01B11/00 B
【請求項の数】14
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-202899(P2015-202899)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2017-75829(P2017-75829A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久利
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−061920(JP,A)
【文献】 特開2012−145555(JP,A)
【文献】 特表2014−531578(JP,A)
【文献】 特開2014−055860(JP,A)
【文献】 特開平03−269309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて当該物体までの対物距離を測定する距離測定装置であって、
前記物体に照射される光を発する光源と、
前記物体からの前記反射光を回折させる回折格子と、
前記回折格子からの回折光を結像面に集光させる集光レンズと、
前記結像面上に配置されて、前記回折光のうち、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを通過させ、他の次数の回折光を遮断するスペイシアルフィルタと、
前記スペイシアルフィルタを通過した異なる2つの次数の回折光により検出面に生じた干渉縞を検出する光検出素子と、
前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出部とを備え、
前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する回折光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの次数の回折光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて当該物体までの対物距離を測定する距離測定装置であって、
前記物体に照射される光を発する光源と、
前記物体からの前記反射光を第1の虚スポットに集光させる集光レンズと、
前記第1の虚スポットを通過した前記反射光を内部で2つの出力光に分離して、当該反射光が入射される第1面と対向する第2面から出力する両面ハーフミラーと、
前記両面ハーフミラーからの2つの出力光により検出面に生じた干渉縞を検出する光検出素子と、
前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出部とを備え、
前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する出力光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの出力光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とする距離測定装置。
【請求項3】
物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて当該物体までの対物距離を測定する距離測定装置であって、
前記物体に照射される光を発する光源と、
前記物体からの前記反射光を第1の虚スポットに集光させる集光レンズと、
前記第1の虚スポットを通過した前記反射光を2つの出力光に分離して、当該反射光が入射される第1面から出力する両面ハーフミラーと、
前記両面ハーフミラーから出力された2つの出力光により検出面に生じた干渉縞を検出する光検出素子と、
前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出部とを備え、
前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する出力光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの出力光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて当該物体までの対物距離を測定する距離測定装置であって、
前記物体に照射される光を発する光源と、
前記物体からの前記反射光を回折させる回折格子と、
前記物体と前記回折格子との間に配置され、前記物体からの前記反射光が前記回折格子で回折された後に結像面に結像するように前記反射光を集光する集光レンズと、
前記結像面上に配置されて、前記回折格子からの回折光のうち、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを通過させ、他の次数の回折光を遮断するスペイシアルフィルタと、
前記スペイシアルフィルタを通過した異なる2つの次数の回折光により検出面に生じた干渉縞を検出する光検出素子と、
前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出部とを備え、
前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する回折光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの次数の回折光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とする距離測定装置。
【請求項5】
請求項1または4に記載の距離測定装置において、
前記集光レンズの焦点距離をfとし、前記集光レンズから前記検出面までの距離をLとし、前記回折格子の格子の間隔をdとし、前記スペイシアルフィルタを通過する回折光の次数差をmとし、前記干渉縞のピッチをpとした場合、前記集光レンズから前記物体までの対物距離aは、次の式
【数1】
で求められることを特徴とする距離測定装置。
【請求項6】
請求項1、4、5のいずれか1つに記載の距離測定装置において、
前記物体からの前記反射光を平行光とする対物レンズをさらに備え、
前記回折格子は、前記対物レンズからの前記平行光を回折させることを特徴とする距離測定装置。
【請求項7】
請求項2に記載の距離測定装置において、
前記両面ハーフミラーは、互いに平行配置された半透光性を持つ前記第1面および前記第2面を有し、集光光学系の光軸に対して傾きを持って配置されて、前記反射光が当該第1面を透過した後に当該第2面を透過した第1の出力光と、当該反射光が当該第1面を透過した後に当該第2面で反射し、その後当該第1面で再び反射した後に当該第2面を透過した第2の出力光とを、前記2つの出力光として出力することを特徴とする距離測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の距離測定装置において、
前記複数のコヒーレント光源から出射する複数の光の波長をλとし、前記集光レンズの焦点距離をfとし、当該集光レンズから前記第1の虚スポットまでの距離と前記第1の出力光の仮想的な光源点である第2の虚スポットから前記検出面までの距離との和をgとし、当該第2の虚スポットと前記第2の出力光の仮想的な光源点である第3の虚スポットとの前記集光光学系の光軸と直交する方向における距離をΔxとし、前記両面ハーフミラーの厚さをtとし、前記両面ハーフミラーの傾き角度をθ1とし、前記両面ハーフミラーの屈折率をnとし、前記干渉縞のピッチをpとした場合、前記集光レンズから前記物体までの対物距離aを、次の式
【数2】
で求めることを特徴とする距離測定装置。
【請求項9】
請求項3に記載の距離測定装置において、
前記両面ハーフミラーは、互いに平行配置された半透光性を持つ前記第1面および第2面を有し、集光光学系の光軸に対して傾きを持って配置されて、前記反射光が前記第1面で反射された第1の出力光と、当該反射光が当該第1面を透過した後に当該第2面で反射し、その後当該第1面を透過した第2の出力光とを、前記2つの出力光として出力することを特徴とする距離測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の距離測定装置において、
前記複数のコヒーレント光源から出射する複数の光の波長をλとし、前記集光レンズの焦点距離をfとし、当該集光レンズから前記第1の虚スポットまでの距離と前記第1の出力光の仮想的な光源点である第2の虚スポットから前記検出面までの距離との和をgとし、当該第2の虚スポットと前記第2の出力光の仮想的な光源点である第3の虚スポットとの前記集光光学系の光軸と直交する方向における距離をΔxとし、前記両面ハーフミラーの厚さをtとし、前記両面ハーフミラーの傾き角度をθ1とし、前記両面ハーフミラーの屈折率をnとし、前記干渉縞のピッチをpとした場合、前記集光レンズから前記物体までの対物距離aを、次の式
【数3】
で求めることを特徴とする距離測定装置。
【請求項11】
請求項2、3、7〜10のいずれか1つに記載の距離測定装置において、
前記物体からの前記反射光を平行光とする対物レンズをさらに備え、
前記集光レンズは、前記対物レンズからの前記平行光を前記第1の虚スポットに集光させることを特徴とする距離測定装置。
【請求項12】
物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて当該物体までの対物距離を測定する距離測定方法であって、
光源から前記物体に光を照射する照射ステップと、
前記物体からの前記反射光を回折格子によって回折させる回折ステップと、
前記回折格子からの回折光を集光レンズによって結像面に集光させる集光ステップと、
前記結像面上に集光した前記回折光のうち、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを通過させ、他の次数の回折光を遮断する回折光選択ステップと、
選択された前記異なる2つの次数の回折光により検出面に生じた干渉縞を光検出素子によって検出する光検出ステップと、
前記光検出ステップにより得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出ステップとを含み、
前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する回折光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの次数の回折光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とする距離測定方法。
【請求項13】
物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて当該物体までの対物距離を測定する距離測定方法であって、
光源から前記物体に光を照射する照射ステップと、
前記物体からの前記反射光を集光レンズによって第1の虚スポットに集光させる集光ステップと、
前記第1の虚スポットを通過した前記反射光を両面ハーフミラーの内部で2つの出力光に分離して、当該反射光が入射される前記両面ハーフミラーの第1面と対向する前記両面ハーフミラーの第2面から出力する光分離ステップと、
前記両面ハーフミラーからの2つの出力光により検出面に生じた干渉縞を光検出素子によって検出する光検出ステップと、
前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出ステップとを含み、
前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する出力光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの出力光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とする距離測定方法。
【請求項14】
物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて当該物体までの対物距離を測定する距離測定方法であって、
光源から前記物体に光を照射する照射ステップと、
前記物体からの前記反射光を集光レンズによって第1の虚スポットに集光させる集光ステップと、
前記第1の虚スポットを通過した前記反射光を両面ハーフミラーによって2つの出力光に分離して、当該反射光が入射される前記両面ハーフミラーの第1面から出力する光分離ステップと、
前記両面ハーフミラーから出力された2つの出力光により検出面に生じた干渉縞を光検出素子によって検出する光検出ステップと、
前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出ステップとを含み、
前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する出力光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの出力光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とする距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定技術に関し、特に物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて物体までの対物距離を測定する光学的距離測定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光等の光を用いて、物体までの対物距離を非接触で測定できる光学的測定装置が知られている。このような光学的測定装置は、単に物体までの対物距離を測定するだけではなく、物体の表面形状測定や、薄膜の厚さ測定等、様々な用途への応用が考えられている。
【0003】
このような光学的測定装置としては、例えば、レーザ光を物体の表面に対して斜めに照射し、その反射光が到達した位置に基づいて、表面までの距離を三角測量の原理で算出するものが知られている。このような方式の光学的測定装置は装置構成が比較的単純であるため、安価な測定装置として広く普及している。しかしながら、反射面の傾きが距離の測定値に直接影響してしまう方式であるため、測定対象である物体の表面が平坦でない場合には測定誤差が大きくなる。
【0004】
これに対し、物体の表面が平坦でない場合にも適用できる距離測定装置として、光の干渉を利用する方式の光学的測定装置が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載された光学的測定装置では、物体の被測定点に光を照射して反射させ、その反射光が、干渉縞の検出面であるCCDイメージセンサに到達するような構成となっている。
【0005】
被測定点とCCDイメージセンサとの間には光学レンズ系が配置されており、反射光は当該光学レンズ系を通ってCCDイメージセンサに到達する。光学レンズ系は、被測定点からの反射光が複数の光路をそれぞれ通過した後、CCDイメージセンサに重ねて照射されるように構成されたものである。それぞれの光路の光路長は互いに異なっているため、CCDイメージセンサ上には光路差に起因して干渉縞が生じる。
【0006】
当該干渉縞の縞間隔は、被測定点とCCDイメージセンサとの対物距離に応じて変化する。従って、この光学的測定装置では、CCDイメージセンサの出力から得られた縞間隔に基づいて、被測定点までの対物距離が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−28977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来技術では、互いに光路長の異なる複数の光路を生じさせるため、光学レンズ系を配置する必要があるが、このような光学レンズ系は、精密な研磨加工を要する多重焦点レンズや球体レンズ等によって構成される。したがって、このような光学レンズ系は、一般に高価となり、また精密な組み立てを必要とする。このため、距離測定装置のコストが増大するという問題点があった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、簡素な構成の光学レンズ系により、物体までの対物距離を正確に測定することができる距離測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて当該物体までの対物距離を測定する距離測定装置であって、前記物体に照射される光を発する光源と、前記物体からの前記反射光を回折させる回折格子と、前記回折格子からの回折光を結像面に集光させる集光レンズと、前記結像面上に配置されて、前記回折光のうち、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを通過させ、他の次数の回折光を遮断するスペイシアルフィルタと、前記スペイシアルフィルタを通過した異なる2つの次数の回折光により検出面に生じた干渉縞を検出する光検出素子と、前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出部とを備え、前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する回折光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの次数の回折光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の距離測定装置は、前記物体に照射される光を発する光源と、前記物体からの前記反射光を第1の虚スポットに集光させる集光レンズと、前記第1の虚スポットを通過した前記反射光を内部で2つの出力光に分離して、当該反射光が入射される第1面と対向する第2面から出力する両面ハーフミラーと、前記両面ハーフミラーからの2つの出力光により検出面に生じた干渉縞を検出する光検出素子と、前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出部とを備え、前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する出力光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの出力光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の距離測定装置は、前記物体に照射される光を発する光源と、前記物体からの前記反射光を第1の虚スポットに集光させる集光レンズと、前記第1の虚スポットを通過した前記反射光を2つの出力光に分離して、当該反射光が入射される第1面から出力する両面ハーフミラーと、前記両面ハーフミラーから出力された2つの出力光により検出面に生じた干渉縞を検出する光検出素子と、前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出部とを備え、前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する出力光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの出力光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とするものである。
また、本発明の距離測定装置は、前記物体に照射される光を発する光源と、前記物体からの前記反射光を回折させる回折格子と、前記物体と前記回折格子との間に配置され、前記物体からの前記反射光が前記回折格子で回折された後に結像面に結像するように前記反射光を集光する集光レンズと、前記結像面上に配置されて、前記回折格子からの回折光のうち、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを通過させ、他の次数の回折光を遮断するスペイシアルフィルタと、前記スペイシアルフィルタを通過した異なる2つの次数の回折光により検出面に生じた干渉縞を検出する光検出素子と、前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出部とを備え、前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する回折光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの次数の回折光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の距離測定方法は、光源から前記物体に光を照射する照射ステップと、前記物体からの前記反射光を回折格子によって回折させる回折ステップと、前記回折格子からの回折光を集光レンズによって結像面に集光させる集光ステップと、前記結像面上に集光した前記回折光のうち、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを通過させ、他の次数の回折光を遮断する回折光選択ステップと、選択された前記異なる2つの次数の回折光により検出面に生じた干渉縞を光検出素子によって検出する光検出ステップと、前記光検出ステップにより得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出ステップとを含み、前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する回折光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの次数の回折光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の距離測定方法は、光源から前記物体に光を照射する照射ステップと、前記物体からの前記反射光を集光レンズによって第1の虚スポットに集光させる集光ステップと、前記第1の虚スポットを通過した前記反射光を両面ハーフミラーの内部で2つの出力光に分離して、当該反射光が入射される前記両面ハーフミラーの第1面と対向する前記両面ハーフミラーの第2面から出力する光分離ステップと、前記両面ハーフミラーからの2つの出力光により検出面に生じた干渉縞を光検出素子によって検出する光検出ステップと、前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出ステップとを含み、前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する出力光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの出力光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の距離測定方法は、光源から前記物体に光を照射する照射ステップと、前記物体からの前記反射光を集光レンズによって第1の虚スポットに集光させる集光ステップと、前記第1の虚スポットを通過した前記反射光を両面ハーフミラーによって2つの出力光に分離して、当該反射光が入射される前記両面ハーフミラーの第1面から出力する光分離ステップと、前記両面ハーフミラーから出力された2つの出力光により検出面に生じた干渉縞を光検出素子によって検出する光検出ステップと、前記光検出素子で得られた検出結果を演算処理して前記干渉縞のピッチを抽出し、このピッチに基づいて前記集光レンズから前記物体までの対物距離を算出する距離算出ステップとを含み、前記光源は、複数のコヒーレント光源からなり、この複数のコヒーレント光源は、前記光検出素子に入射する出力光の光軸に対して垂直な方向で、かつ前記反射光を前記2つの出力光に分割するシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回折格子とスペイシアルフィルタという極めて簡素な光学要素で、物体からの反射光から異なる2つの次数の回折光が選択されて、対物距離に応じて干渉縞ピッチが変化する干渉縞が、検出面上に発生する。したがって、従来の精密な研磨加工を要する多重焦点レンズや球体レンズを用いる必要がなくなり、高価な光学系レンズやその精密な組み立てを省くことができる。このため、比較的安価なコストで、物体までの距離を正確に測定することができる距離測定装置を実現することができる。また、本発明では、光源として複数のコヒーレント光源を使用することにより、物体の表面が粗面であっても、簡便かつ安価な方法で、干渉縞のコントラストの低下を抑えつつ、干渉縞の波面の乱れを低減することができ、距離計測の誤差の発生を抑えることができる。
【0017】
また、本発明では、両面ハーフミラーという極めて簡素な既存の光学要素で、物体からの反射光が、仮想的な光源点である虚スポットの位置が互いに異なる2つの出力光に分離され、これら出力光により対物距離に応じてピッチが変化する干渉縞が検出面に発生する。このため、従来の精密な研磨加工を要する多重焦点レンズや球体レンズを用いる必要がなくなり、高価な光学系レンズやその精密な組み立てを省くことができる。したがって、比較的安価なコストで、物体までの対物距離を正確に測定することができる距離測定装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態にかかる距離測定装置の構成を示す説明図である。
図2】本発明の第1の実施の形態において物体側から光源を見た図である。
図3】スペイシアルフィルタの構成例である。
図4】本発明の第1の実施の形態にかかる距離計測原理を示す説明図である。
図5】回折格子での回折を示す説明図である。
図6】異なる次数の回折光と光スポット間隔との関係を示す説明図である。
図7】光スポット間隔と光路差との関係を示す説明図である。
図8】検出面に生じた干渉縞を示す画像例である。
図9】光検出素子で得られた検出結果の解析例である。
図10】本発明の第2の実施の形態にかかる距離測定装置の構成を示す説明図である。
図11】対物距離と干渉縞ピッチとの関係を示すグラフである。
図12】本発明の第3の実施の形態にかかる距離測定装置の構成を示す説明図である。
図13】両面ハーフミラーにより発生する2つの虚スポットの間隔を示す説明図である。
図14】両面ハーフミラーによる結像点の延長を示す説明図である。
図15】両面ハーフミラーによる光のずれを示す説明図である。
図16】第1の出力光の主光線を示す説明図である。
図17】第2の出力光の主光線を示す説明図である。
図18】光スポット間隔と光路差との関係を示す説明図である。
図19】本発明の第3の実施の形態にかかる距離計測原理を示す説明図である。
図20】本発明の第4の実施の形態にかかる距離測定装置の構成を示す説明図である。
図21】本発明の第5の実施の形態にかかる距離測定装置の構成を示す説明図である。
図22】両面ハーフミラーにより発生する2つの虚スポットの間隔を示す説明図である。
図23】第1の出力光および第2の出力光の主光線を示す説明図である。
図24】本発明の第5の実施の形態にかかる距離計測原理を示す説明図である。
図25】本発明の第6の実施の形態にかかる距離測定装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる距離測定装置10について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる距離測定装置の構成を示す説明図である。
【0020】
この距離測定装置10は、距離の測定対象となる物体Tに光を照射して反射させ、その反射光に基づいて物体Tまでの対物距離を測定する機能を有している。
図1に示すように、距離測定装置10には、主な構成として、光源11、光源レンズ12、ビームスプリッタ13、回折格子14、集光レンズ15、スペイシアルフィルタ16、光検出素子17、および距離算出部18が設けられており、これらがケーシング(図示せず)内部に収納されている。
【0021】
本実施の形態では、光源11として、複数の半導体レーザ(コヒーレント光源)を用いる。複数の半導体レーザが発する光の波長は同一で、光量も同一であることが望ましい。この複数の半導体レーザは、光検出素子17に入射する回折光の光軸(後述する光路O)に対して垂直な方向で、かつレーザ光を後述のように2つの回折光に分割するシア方向(図1の上下方向)に対して垂直な方向(図1の紙面に垂直な方向)に沿って発光点が並ぶように配置される。図2は物体T側から光源11を見た図であり、図2の左右方向は図1の紙面に垂直な方向に相当する。図2の例は、光源11が、2つの半導体レーザ21−1,21−2で構成される例を示している。
【0022】
このような複数の半導体レーザの好適な例としては、例えばレーザプリンタ用のマルチビーム半導体レーザがある。本実施の形態では、物体T上の互いに近接した複数の点に複数の半導体レーザからのレーザ光が入射することが望ましいので、複数の半導体レーザの発光点間の距離が小さい(例えば数十μm程度)ことが望ましい。光源11として、マルチビーム半導体レーザを使用すれば、同一ウエハプロセスで作製できるうえ、パッケージも一つで済むため、低コストであると共に、発光点間距離を小さくできるので、光学系を簡便にできる。
【0023】
光源レンズ12は、光源11から発せられた光を集光してビームスプリッタ13へ出力する機能を有している。
ビームスプリッタ13は、集光学系の光路O上に配置されて、光源レンズ12で集光された光源11からの光を反射して、光路Oに沿って物体Tの光スポットAに照射する機能と、光スポットAで拡散反射された反射光のうち、光路O方向に反射された反射光を集光レンズ15へ透過させる機能を有している。
【0024】
回折格子14は、光路O上に配置されて、ビームスプリッタ13を透過した物体Tからの反射光を回折する機能を有している。
集光レンズ15は、例えば凸レンズからなり、光路O上に配置されて、ビームスプリッタ13を透過した物体Tからの反射光または回折格子14からの回折光を結像面Qに集光する機能を有している。
【0025】
集光レンズ15の位置については、ビームスプリッタ13から結像面Qまでの範囲であれば、集光レンズ15の前後、いずれの位置に配置してもよい。例えば、回折格子14がビームスプリッタ13と集光レンズ15との間に配置されている場合、回折格子14からの回折光が集光レンズ15を介して結像面Qに結像される。また、回折格子14が集光レンズ15とスペイシアルフィルタ16との間に配置されている場合、集光レンズ15で集光された反射光が回折格子14で回折された後、結像面Qに結像される。
【0026】
スペイシアルフィルタ16は、結像面Q上に配置されて、回折格子14からの回折光のうち、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを選択的に通過させ、他の次数の回折光を遮断する機能を有している。
【0027】
図3は、スペイシアルフィルタの構成例である。回折格子14からの回折光は、集光レンズ15により結像面Q上にそれぞれの次数に応じた光スポットSPに結像する。スペイシアルフィルタ16は、全体として光を遮光する平板形状の遮光板からなり、結像面Q上の光スポットSPを利用して、予め設定された異なる2つの次数に応じた光スポットSPの位置にそれぞれ透光穴H1,H2を設けたものである。
【0028】
これら透光穴H1,H2は、測定可能な対物距離aの範囲を示す測定スパンに基づいて、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを通過させる位置および大きさで形成されている。これにより、予め設定された異なる2つの次数の回折光だけがスペイシアルフィルタ16の透光穴を通過し、他の次数の回折光が遮断されることになる。
【0029】
光検出素子17は、検出面Iに生じた、スペイシアルフィルタ16を通過した2つの次数の回折光からなる干渉縞を検出し、検出結果を出力する機能を有している。光検出素子17としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)リニアイメージセンサや、フォトダイオードアレイなどの一次元上に配置した受光素子が利用できる。
【0030】
距離算出部18は、CPU(Central Processing Unit)を用いた演算処理回路からなり、光検出素子17で得られた検出結果を演算処理して干渉縞のピッチ(周期長)を抽出し、得られたピッチに基づいて集光レンズ15から物体Tまでの対物距離を算出する機能を有している。距離算出部18を構成する演算処理回路は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータである。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明する処理を実行する。
【0031】
[距離計測の原理]
次に、図4図7を参照して、本実施の形態にかかる距離計測装置10で用いる距離計測の原理について説明する。図4は、本実施の形態にかかる距離計測原理を示す説明図である。図5は、回折格子での回折を示す説明図である。図6は、異なる次数の回折光と光スポット間隔との関係を示す説明図である。図7は、光スポット間隔と光路差との関係を示す説明図である。
【0032】
なお、図4では、距離計測装置10のうち、集光学系のみを要部として示し、投影光学系については省略してある。また、図4図7において、回折格子14における格子の長手方向(紙面垂直方向)をX方向とし、格子の周期方向(紙面上下方向)をY方向とし、格子面に垂直な方向(紙面左右方向)をZ方向とする。
また、本来、レンズには光の入射方向に応じて2つの主点があり、それぞれの位置が異なるが、以下では、数式の複雑化を避けるため、集光レンズ15が薄肉単レンズからなり、主点がレンズ中心に1つだけ存在すると仮定して、各式を導出した。
【0033】
図4に示すように、物体Tから主点Mすなわち集光レンズ15の位置までの対物距離をaとし、主点から結像面Qすなわちスペイシアルフィルタ16までの距離をbとし、集光レンズ15の焦点距離をfとした場合、これらの関係は、結像の公式(レンズの公式)により、次の式(1)で表される。
【数1】
【0034】
この式(1)からも分かるように、集光レンズ15から物体Tまでの対物距離aの変化に応じて、結像面Qの位置も変化するものとなる。
また、図5に示すように、回折格子14の回折格子間隔をdとし、回折次数をn(n=0,±1,±2,…)とし、光源波長をλとし、各回折光の回折角θnとした場合、隣接する回折光間の光路差ΔLは、次の式(2)で表される。
【数2】
【0035】
さらに、図6に示すように、格子により回折を受けた回折光は、集光レンズ15により、結像面Q上のY方向に複数の光スポットを形成する。ここで、異なる2つの次数n,n’の回折光の回折角をθn,θn’とし、これら回折光による光スポットをAn,An’とし、結像面Q上における次数0の回折光による光スポットA0から光スポットAn,An’までのY方向に沿った距離をW1,W2とした場合、これら光スポットAn,An’のY方向のずれ幅Wは、次の式(3)で表される。
【数3】
【0036】
ここで、式(3)において、実際の回折格子間隔dはnλ,n’ λに比べて十分大きく、nλ/dおよびn’λ/dが十分小さい値となるため、式(3)は次の式(4)のように近似される。
【数4】
【0037】
一方、図7に示すように、結像面Q上の光スポットAn,An’の光スポット間隔をWとし、光スポットAn,An’からの回折光が光検出素子17の検出面I上に到達した到達点をVとし、光スポットAn,An’の中間点からZ方向に伸ばした線と検出面Iとが交わる点をV0とし、検出面I上でY方向に沿ったV0からVまでの距離をPとし、結像面Qから検出面Iまでの距離をcとした場合、光スポットAnから到達点Vへの回折光の光路長Lnは三平方の定理により求められるが、距離cに比較して光スポット間隔Wと距離Pとが十分小さいため、次の式(5)のように近似できる。
【数5】
【0038】
また、光スポットAnから到達点Vへの回折光の光路長Ln’も、光路長Lnと同様にして、次の式(6)のように近似できる。
【数6】
【0039】
したがって、これら光路長Ln,Ln’の光路差ΔLは、次の式(7)で求められる。検出面I上では、この光路差ΔLにより干渉縞が生じ、具体的には、光路差ΔLが光の波長λの整数m(mは、0以上の整数)倍となる場合、検出面Iにおいて明線が生じる。
【数7】
【0040】
ここで、検出面I上に生じた各明線のうち、隣接する明線の間隔が干渉縞ピッチpとなり、式(7)のm=1の場合に相当する。よって、検出面I上に生じた干渉縞の干渉縞ピッチpは、式(7)を変形することにより、次の式(8)で求められる。
【数8】
【0041】
この際、光スポット間隔Wは式(4)で求められているため、これを式(8)に代入すれば、式(9)となる。
【数9】
【0042】
さらに、回折次数n,n’の次数差をmとし、集光レンズ15の主点から結像面Qまでの距離bと、結像面Qから検出面Iまでの距離cを、集光レンズ15の主点から検出面Iまでの距離Lで置換した場合、式(9)は、次の式(10)となる。
【数10】
【0043】
したがって、干渉縞ピッチpは、集光レンズ15の主点から検出面Iまでの距離Lに依存する関数で求められることが分かる。
この際、集光レンズ15の主点から結像面Qまでの距離bは、前述した式(1)に示したように、物体Tから主点Mすなわち集光レンズ15の位置までの対物距離aと、集光レンズ15の焦点距離fとで表され、式(10)は式(11)のように変形できる。
【数11】
【0044】
ここで、集光レンズ15の焦点距離f、集光レンズ15の主点から検出面Iまでの距離L、および回折次数n,n’の次数差mは、それぞれ既知の値であることから、結果として、干渉縞ピッチpは、物体Tから主点Mすなわち集光レンズ15の位置までの対物距離aの関数となることが分かる。このため、検出面Iに生じた干渉縞のピッチpを測定することにより、次の式(12)により、物体Tまでの対物距離aを求めることができる。
【数12】
【0045】
図8は、検出面に生じた干渉縞を示す画像例である。干渉縞は、輝度の高い明線と輝度の低い暗線とが縞状に繰り返されて形成されている。したがって、互いに隣接する明線(または暗線)の間隔が干渉縞ピッチpに相当する。
【0046】
図9は、光検出素子17で得られた検出結果の解析例である。ここでは、横軸が干渉縞に直行するX方向に沿った画像のピクセル位置[pic]を示し、縦軸が各ピクセル位置における光強度(無単位)である。得られた検出結果は、ほぼ正弦波形状をなしており、そのピーク位置が明線に相当している。したがって、ピーク位置間に存在するピクセル数から干渉縞ピッチpを示す実際の距離を算出できる。
【0047】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、物体Tからの反射光を回折格子14で回折させた後、集光レンズ15によりその回折光を結像面Qに集光させ、結像面Q上に配置されたスペイシアルフィルタ16で、これら回折光のうち、予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを通過させ、他の次数の回折光を遮断し、スペイシアルフィルタ16を通過した異なる2つの次数の回折光の重ね合わせにより検出面Iに生じた干渉縞を光検出素子17で検出し、得られた検出結果を演算処理して干渉縞のピッチを抽出し、距離算出部18でこのピッチに基づいて集光レンズ15から物体Tまでの対物距離aを算出するようにしたものである。
【0048】
これにより、回折格子14とスペイシアルフィルタ16という極めて簡素な光学要素で、物体Tからの反射光から異なる2つの次数の回折光が選択されて、対物距離aに応じて干渉縞ピッチpが変化する干渉縞が、検出面I上に発生する。
したがって、従来の精密な研磨加工を要する多重焦点レンズや球体レンズを用いる必要がなくなり、高価な光学系レンズやその精密な組み立てを省くことができる。このため、比較的安価なコストで、物体Tまでの対物距離aを正確に測定することができる距離測定装置を実現することができる。
【0049】
この際、異なる2つの次数の回折光の選択にスペイシアルフィルタ16を用いたので、回折格子14の透過率分布が矩形状でも干渉縞は正弦波形状となるため、干渉縞ピッチpの測定が容易となるとともに、回折格子14の製作も容易となる。また、干渉縞の局在化、すなわち周期的な特定の距離近辺にのみ干渉縞が現れる現象が発生しないため、対物距離aの測定スパンを広くすることができる。さらに、干渉縞ピッチpが検出面I上で一定となるため、光検出素子17の検出結果を補正する必要がなく、演算処理を簡素化できるとともに干渉縞ピッチpの測定誤差を低減できる。
【0050】
また、本実施の形態では、上記のとおり、光源11として複数の半導体レーザを使用している。光源11に半導体レーザなどのコヒーレント光源を用いると、可干渉性が高いために、光干渉を使った計測では、高感度に干渉縞を計測するのに適している。しかし、物体Tの表面が紙のような粗面(表面の凹凸がランダム)の場合、表面の凹凸により光の波面が乱れることにより、干渉縞に歪みが生じ、距離計測に誤差が生じる。
【0051】
波面の乱れを低減する方法としては、光源として、白熱電球とバンドパスフィルタの組み合わせを使用したり、LEDなどのインコヒーレント光源を使用したりする方法がある。しかしながら、白熱電球は寿命が短いという問題があり、LEDの場合には、面発光なので、物体Tに照射される光のビームウエストが大きくなり、干渉縞のコントラストが低下するという問題がある。また、波面の乱れを低減する別の方法として、縦マルチモード半導体レーザを使用したり、半導体レーザに高周波を重畳させたりする方法があるが、縦マルチモード半導体レーザは、低出力タイプの製作がプロセス上難しく、高価になるという問題がある。また、半導体レーザに高周波を重畳させる方法は、半導体レーザへの数百MHzの電気的な信号印加が、他の電子回路にノイズとして影響を与え易いという問題がある。
【0052】
そこで、本実施の形態では、半導体レーザを複数個用いることにより空間コヒーレンシーを低下させる。コヒーレンシーを落とすことにより光源11の波面が揃わなくなり、波面の乱れを平均化するという効果が得られ、この波面の平均化により、干渉縞の波面歪みを低減することができる。半導体レーザの個数をN(Nは2以上の整数)とすると、波面の乱れは1/√N倍になる。したがって、例えば光源11として2つの半導体レーザを用いた場合、波面の歪みは1/√2倍になる。以上のように、本実施の形態では、物体Tの表面が粗面であっても、簡便かつ安価な方法で、干渉縞のコントラストの低下を抑えつつ、干渉縞の波面の乱れを低減することができ、距離計測の誤差の発生を抑えることができる。複数の半導体レーザを、光軸に対して垂直な方向で、かつシア方向に対して垂直な方向に沿って発光点が並ぶように配置することにより、干渉縞の位相が変化することはなく、干渉縞の強度が減衰することはない。
【0053】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10は、本発明の第2の実施の形態にかかる距離測定装置10の構成を示す説明図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。
本実施の形態では、前述した第1の実施の形態において、集光光学系に対物レンズ20を設け、対物レンズ20と集光レンズ15との間の区間において、物体Tからの反射光を平行光に変換する場合について説明する。
【0054】
本実施の形態において、対物レンズ20は、物体Tからの反射光を平行光に変換して、集光レンズ15に出力する機能を有している。
図10の例では、対物レンズ20と集光レンズ15との間にビームスプリッタ13および回折格子14が配置されている。これにより、光源11から発せられた光は、光源レンズ12で平行光に変換された後、ビームスプリッタ13で反射され、この後、対物レンズ20により集光されて物体Tに照射される。
【0055】
また、物体Tからの反射光は、対物レンズ20で平行光に変換された後、ビームスプリッタ13を通過して回折格子14で回折される。回折格子14からの回折光は、第1の実施の形態と同様に、集光レンズ15により結像面Q上に集光された後、結像面Q上のスペイシアルフィルタ16で予め設定された異なる2つの次数の回折光だけが選択されて、検出面Iに照射される。
【0056】
これにより、第1の実施の形態と同様、対物レンズ20から物体Tまでの対物距離に応じてピッチが変化する干渉縞が検出面I上に生じるため、このピッチから対物距離を算出することができる。
【0057】
図11は、対物距離と干渉縞ピッチとの関係を示すグラフである。本実施の形態に基づいて、対物距離aと干渉縞ピッチpとの関係をシミュレーションにより求めた。この際、対物レンズ20の焦点距離をf’=30mmとし、集光レンズ15の焦点距離をf=9mmとし、集光レンズ15から光検出素子17までの距離をL=60mmとし、回折格子14の回折格子間隔をd=0.02mmとした。
図11のグラフによれば、対物距離aの増加に応じて干渉縞ピッチpが単調増加していることがわかる。
【0058】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、集光光学系に対物レンズ20を設け、対物レンズ20と集光レンズ15との間の区間において、物体Tからの反射光を平行光に変換するようにしたので、物体Tまでの対物距離aが変化しても、その対物距離aに応じた焦点距離を持つ対物レンズ20に取り換えることにより、対物レンズ20から検出面Iまでの区間においては、光路が一定となる。
このため、広範囲の対物距離aに対応することができ、測定レンジを大幅に拡大することが可能となる。
【0059】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図12は、本発明の第3の実施の形態にかかる距離測定装置10aの構成を示す説明図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。
【0060】
図12に示すように、距離測定装置10aには、主な構成として、光源11、光源レンズ12、ビームスプリッタ13、集光レンズ24、両面ハーフミラー25、光検出素子17、および距離算出部18が設けられており、これらがケーシング(図示せず)内部に収納されている。
【0061】
第1、第2の実施の形態と同様に、光源11は複数の半導体レーザからなる。複数の半導体レーザは、光検出素子17に入射する出力光の光軸Oに対して垂直な方向で、かつレーザ光を後述のように2つの出力光に分割するシア方向(図12の上下方向)に対して垂直な方向(図12の紙面に垂直な方向)に沿って発光点が並ぶように配置される。
光源レンズ12は、光源11から発せられた光を集光してビームスプリッタ13へ出力する。
【0062】
ビームスプリッタ13は、集光光学系の光軸O上に配置されて、光源レンズ12で集光された光源11からの光を反射して、光軸Oに沿って物体Tの光スポットAに照射する機能と、光スポットAで拡散反射された反射光のうち、光軸O方向に反射された反射光を集光レンズ24へ透過させる機能を有している。なお、本実施の形態において、光スポットAが光軸O上にない場合は、光軸を主光線と読み替るものとする。
集光レンズ24は、例えば凸レンズからなり、光軸O上に配置されて、ビームスプリッタ13を透過した物体Tからの反射光を虚スポットUに集光させる機能を有している。
【0063】
両面ハーフミラー25は、全体として透明の平行平板からなり、互いに平行配置された、ハーフミラーコーティングなどの処理が施された半透光性を持つ第1面25Aおよび第2面25Bを有し、集光光学系の光軸Oに対して傾きを持って配置されて、虚スポットUを通過した反射光である主光線Sを内部で2つの出力光S1,S2に分離して、当該反射光が入射される第1面25Aと対向する第2面25Bから出力する機能を有している。
【0064】
これにより、入射された主光線Sは、主に、第1面25Aを透過した後に第2面25Bを透過した第1の出力光と、入射された主光線Sが第1面25Aを透過した後に第2面25Bで反射し、その後第1面25Aで再び反射した後に第2面25Bを透過した第2の出力光S2とに分離されて出力される。
なお、両面ハーフミラー25の第1面25Aおよび第2面25Bにおける透過率と反射率については、1:1に限定されるものではなく、1:1以外であってもよい。
【0065】
光検出素子17は、両面ハーフミラー25を通過した2つの出力光S1,S2により、検出面Iに生じた干渉縞を検出し、検出結果を出力する。
第1の実施の形態と同様に、距離算出部18は、光検出素子17で得られた検出結果を演算処理して干渉縞のピッチ(周期長)を抽出し、得られたピッチに基づいて集光レンズ24から物体Tまでの対物距離を算出する機能を有している。
【0066】
[距離計測の原理]
次に、図13図19を参照して、本実施の形態にかかる距離計測装置10aで用いる距離計測の原理について説明する。なお、図19では、距離計測装置10aのうち、集光光学系のみを要部として示し、投影光学系については省略してある。また、図13図19において、理解を容易とするため、光線については主光線のみを示し、光軸Oと直交する方向のうち紙面上下方向をX方向とし、紙面垂直方向をY方向とし、光軸Oに沿った紙面左右方向をZ方向とした。また、本来、レンズには光の入射方向に応じて2つの主点があり、それぞれの位置が異なるが、以下では、数式の複雑化を避けるため、集光レンズ24が薄肉単レンズからなり、主点がレンズ中心に1つだけ存在すると仮定して、各式を導出した。
【0067】
集光レンズ24で虚スポットUに集光された物体Tからの反射光である主光線Sが、両面ハーフミラー25に入射された場合、主に、第1面25Aを透過した後に第2面25Bで反射させずに透過する第1の出力光S1と、第1面25Aを透過した後に第2面25Bで反射し、さらに第1面25Aで再び反射し第2面25Bを透過する第2の出力光S2とに分離される。したがって、第2の出力光S2は第1の出力光S1と平行であるが、両面ハーフミラー25内部で2回反射するため、第1の出力光S1が第2面25Bから出射する位置とは異なる位置から出射される。
【0068】
ここで、両面ハーフミラー25の存在を無視して、第1の出力光S1と第2の出力光S2の仮想的な集光点(光源点)を虚スポットU1,U2とした場合、両面ハーフミラー25での屈折および反射により、これら虚スポットU1,U2は、実際の主光線Sの虚スポットUからそれぞれずれた互いに異なる位置となる。このため、虚スポットU1,U2からの第1および第2の出力光S1,S2が光検出素子17の検出面Iに投影された場合、検出面I上に干渉縞が発生する。
【0069】
本実施の形態は、この干渉縞のピッチpが、集光レンズ24から物体Tの光スポットAまでの対物距離aに応じて変化することに着目し、検出面I上に発生した干渉縞を光検出素子17で検出して、距離算出部18で、そのピッチpを測定し、得られたピッチpに基づいて集光レンズ24から物体Tまでの対物距離aを算出するようにしたものである。
以下では、両面ハーフミラー25に対する主光線Sの入射角θ1、すなわち両面ハーフミラー25の傾きと、X方向およびZ方向における虚スポットU1,U2の間隔ΔX,ΔZとの関係を説明した上で、これら間隔ΔX,ΔZとピッチp、さらにはピッチpと対物距離aとの関係について説明する。
【0070】
[X方向における虚スポット間隔Δx]
図13に示すように、両面ハーフミラー25の厚さ、すなわち第1面25Aと第2面25Bとの距離をtとし、両面ハーフミラー25に対する光Sの入射角をθ1とし、第1面25Aおよび第2面25Bにおける屈折角をθ2とした場合、第2面25Bにおける第1の出力光S1と第2の出力光S2の出射位置の距離wは、次の式(13)で表される。
【数13】
また、両面ハーフミラー25の相対屈折率をnとした場合、スネルの法則から、θ1とθ2との関係は、次の式(14)で表される。
【数14】
【0071】
したがって、式(14)を式(13)に代入した場合、距離wは、θ1を用いた次の式(15)となり、X方向における虚スポットU1,U2の間隔Δxは、次の式(16)で求められる。
【数15】
【数16】
【0072】
[Z方向における虚スポット間隔ΔZ]
両面ハーフミラー25から出射された第1および第2の出力光S1,S2は、主光線Sが両面ハーフミラー25の法線方向Zgに沿って、検出面I側あるいは集光レンズ24側にそれぞれ平行移動したものと見なすことができる。
したがって、両面ハーフミラー25の法線方向Zgにおける、虚スポットUから虚スポットU1,U2までの距離Ld1,Ld2を算出すれば、これらLd1,Ld2からZ方向における虚スポットU1,U2間の虚スポット間隔ΔZを求めことができる。
【0073】
まず、図14および図15を参照して、光の平行移動について説明する。
図14に示すように、光Saを集光する集光レンズCとその結像点Paとの間に、屈折率の高い両面ハーフミラー25などの平行平板からなる透光性を持つ媒体Gを挿入した場合、光Saが平行移動した状態となり、媒体Gを透過した光Sbの結像点は、媒体Gの法線方向Zgに沿って結像点Paから結像点Pbまで延長されることになる。
【0074】
ここで、図15に示すように、媒体Gの相対屈折率をnとし、媒体Gの厚さをtとし、媒体Gに対する光Saの入射角をθ1とし、媒体G内部での屈折角をθ2とし、法線方向Zgに沿った光Saから光Sbへの平行移動距離をdとした場合、媒体Gの出射面上における、媒体Gに対する光Saの入射位置と媒体Gからの光Sbの出射位置との距離kは、次の式(17)で表され、平行移動距離dは次の式(18)で求められる。
【数17】
【数18】
【0075】
次に、図16を参照して、第1の出力光S1の平行移動について説明する。図16では、理解を容易とするため、光軸Oを傾け、両面ハーフミラー25の法線を基準(水平)としている。
前述した光の平行移動と同様にして、両面ハーフミラー25から出射された第1の出力光S1は、図16に示すように、両面ハーフミラー25に入射した主光線Sが、両面ハーフミラー25の法線方向Zgに沿って、平行移動したものと見なすことができる。
【0076】
まず、入射角θ1で第1面25A上の点Aから入射した主光線Sは、法線方向Zgに対して屈折角θ2の角度で屈折した後、両面ハーフミラー25内部を透過して、第2面25B上の点Cから第1の出力光S1として出射する。
【0077】
この際、点Aを通過する法線が第2面25Bと交差する位置を点Bとし、第1の出力光S1を第1面25A側に延長した場合に第1面25Aと交差する位置を点A’’とし、線分A’’−Cが線分A−Bと交差する位置を点A’とした場合、点A’を通過して点Cから出射する第1の出力光S1は、点Aに入射した主光線Sの直進光S1’が、法線方向Zgに沿って検出面I側に点A’まで平行移動したものと見なすことができ、線分A−A’の距離d1が第1の出力光S1の平行移動距離に相当する。
【0078】
ここで、三角形ABCと三角形A’BCは、辺BCを共通としているため、次の式(19)の関係が得られる。また、両面ハーフミラー25の相対屈折率をnとし,両面ハーフミラー25の厚さをtとして、スネルの法則により、式(19)のθ2をθ1で置換した場合、線分A−A’の距離d1は式(20)で求められる。
【数19】
【数20】
【0079】
したがって、このような第1の出力光S1の平行移動により、主光線Sの光路長が線分A’’−A’の長さLd1だけ検出面I側に短縮されたことを示しており、見かけ上、虚スポットUが法線方向Zgに沿って距離d1だけ検出面I側に虚スポットU1まで移動したことを示している。このLd1は式(20)で求めた距離d1から次の式(21)で求められる。
【数21】
【0080】
次に、図17を参照して、第2の出力光S2の平行移動について説明する。図17では、理解を容易とするため、光軸Oを傾け、両面ハーフミラー25の法線を基準としている。前述した第1の出力光S1の平行移動と同様にして、両面ハーフミラー25から出射された第2の出力光S2は、図17に示すように、両面ハーフミラー25に入射した主光線Sが、両面ハーフミラー25の法線方向Zgに沿って、平行移動したものと見なすことができる。
【0081】
まず、入射角θ1で第1面25A上の点Aから入射した主光線Sは、法線方向Zgに対して屈折角θ2の角度で屈折した後、両面ハーフミラー25内部を透過して、第2面25Bおよび第1面25Aで反射し、第2面25B上の点Eから第1の出力光S1として出射する。
【0082】
この際、点Aから点Eまでの経路は、厚さ3tの両面ハーフミラー25内部を反射せずに透過した経路と等しいものと見なすことかできる。したがって、点Aから点Eまでの経路を第1面25Aの左側に展開し、第1面25Aから距離2tだけ離れた仮想第1面上で、これら展開経路と点Aを通過する法線とが交差する点を点Dとし、第2の出力光S2を仮想第1面側に延長した場合に点Aを通過する法線と交差する点を点D’とした場合、点D’を通過する第2の出力光S2は、点Dに入射した主光線S’の直進光S2’が、法線方向Zgに沿って検出面I側に平行移動したものと見なすことができ、線分D−D’が第2の出力光S2の平行移動距離d2に相当する。
【0083】
ここで、三角形DBEと三角形D’BEは、辺BEを共通としているため、次の式(22)の関係が得られる。また、両面ハーフミラー25の相対屈折率をnとし,両面ハーフミラー25の厚さをtとして、スネルの法則により、式(22)のθ2をθ1で置換した場合、線分D−D’の距離d2は、式(22)に基づき式(23)で求められる。
【数22】
【数23】
【0084】
したがって、第2の出力光S2を仮想第1面側に延長した際に、仮想第1面と交差する点を点D’’とした場合、このような第2の出力光S2の平行移動により、主光線Sの光路長が線分D’’−D’の長さLd2’だけ検出面I側に短縮されたことを示しており、見かけ上、虚スポットUが法線方向Zgに沿って距離d2だけ検出面I側に虚スポットU2まで移動したことを示している。このLd2’は式(23)で求めた距離d2から次の式(24)で求められる。
【数24】
【0085】
ここで、この距離Ld2’には、仮想第1面まで2t分だけ展開した展開距離2t/cosθ1が含まれている。このため、第2の出力光S2を仮想第1面側に延長した場合に第1面25Bと交差する点を点D’’’とした場合、線分D’−D’’’だけ、主光線Sの光路長が集光レンズ24側に延長したものと見なすことができ、この光路長Ld2は、次の式(25)で求められる。
【数25】
【0086】
したがって、Z方向における虚スポットU1,U2の間隔Δzは、第1の出力光S1の光路差Ld1と第2の出力光S2の光路差Ld2に基づいて、次の式(26)で求められる。
【数26】
【0087】
[虚スポット間隔ΔX,ΔZとピッチpとの関係]
次に、図18を参照して、虚スポットU1,U2の間隔ΔX,ΔZと、検出面I上に生じる干渉縞のピッチpとの関係について説明する。図18では、理解を容易とするため、光軸Oを基準(水平)とし、両面ハーフミラー25は無視するものとする。
【0088】
図18において、虚スポットU1,U2は、X方向に間隔ΔXだけ離れるとともに、Z方向に間隔ΔZだけ離れて位置している。ここで、虚スポットU1からの第1の出力光S1と、虚スポットU2からの第2の出力光S2が光検出素子17の検出面I上に到達した到達点をVとし、虚スポットU1を通過するX方向の線と虚スポットU2を通過するZ方向の線との交点を点Dとし、線分U1−Dの中間点D0からZ方向に伸ばした線と検出面Iとが交わる点をV0とし、検出面I上でY方向に沿ったV0からVまでの距離をPとし、虚スポットU1から検出面Iまでの距離をcとする。
【0089】
第1の出力光S1に関する虚スポットU1から到達点Vまでの光路長L1は、三平方の定理により、次の式(27)で求められる。この際、距離cに比較して間隔Δxが非常に小さく、Z方向に対する線分D0−Vの傾きΦに代表される第1の出力光S1および第2の出力光S2の傾きが非常に小さいため、光路長L1は次の式(28)のように近似できる。
【数27】
【数28】
【0090】
一方、線分U2−Vと線分U1−Dとの交点を点U2’とした場合、第2の出力光S2に関する虚スポットU2から到達点Vまでの光路長L2は、線分U2−U2’の光路長L21と線分U2’−Vの光路長L22との和で求められる。
まず、光路長L21については、線分D−U2’の距離をx’とした場合、前述した式(28)と同様にして、次の式(29)により求められる。
【数29】
【0091】
ここで、前述したように、線分U2−U2’の傾きΦが非常に小さく、距離x’/間隔ΔzすなわちtanΦが極めて小さいため、式(29)の右辺第2項は非常に小さい値となる。このため、結果として光路長L21はΔzで近似できることになる。
一方、光路長L22は、光路長L1と同様は、三平方の定理により、次の式(30)で求められる。
【数30】
【0092】
これにより、光路長L2は次の式(31)で求められ、虚スポットU1からの第1の出力光S1と、虚スポットU2からの第2の出力光S2との光路差ΔLは、次の式(32)で求められる。
【数31】
【数32】
【0093】
検出面I上では、この光路差ΔLにより干渉縞が生じ、具体的には、光路差ΔLが光の波長λの整数m(mは、0以上の整数)倍となる場合、検出面Iにおいて明線が生じる。また、光路差ΔLのうち間隔Δzは一定値であり、この値は、干渉縞の初期位相にのみ影響を与えるだけで干渉縞ピッチpには影響を与えるものではない。
【0094】
したがって、検出面I上に生じた各明線のうち、隣接する明線の間隔は干渉縞ピッチpとなり、その値はm=1の場合に相当する。よって、検出面I上に生じた干渉縞の干渉縞ピッチpは、式(32)において光路差ΔL=λとし、間隔Δzを無視することにより、次の式(33)で求められる。
【数33】
【0095】
一方、図19に示すように、物体Tから主点Mすなわち集光レンズ24の位置までの対物距離をaとし、主点から虚スポットUまでの距離をbとし、集光レンズ24の焦点距離をfとした場合、これらの関係は、結像の公式(レンズの公式)により、次の式(34)で表される。
【数34】
【0096】
したがって、主点から虚スポットUまでの距離bと虚スポットU1から検出面Iまでの距離cの和を距離g(g=一定)としてc=g−bとし、これに式(34)から求められる距離bを代入すると、前述した式(33)は次の式(35)となる。したがって、式(23から、物体Tから主点Mすなわち集光レンズ24の位置までの対物距離aは、次の式(36)で求められることになる。
【数35】
【数36】
【0097】
本実施の形態においても、光検出素子17の検出面Iには図8と同様の干渉縞が生じ、光検出素子17で得られる検出結果は、図9と同様に、ほぼ正弦波形状をなしており、そのピーク位置が明線に相当している。したがって、ピーク位置間に存在するピクセル数から干渉縞ピッチpを示す実際の距離を算出できる。
【0098】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、物体Tからの反射光を集光レンズ24により虚スポットUに一旦集光させた後、両面ハーフミラー25により2つの出力光に分離して、反射光が入射される第1面と対向する第2面から出力し、これら2つの出力光により検出面Iに生じた干渉縞を光検出素子17で検出し、得られた検出結果を演算処理して干渉縞のピッチを抽出し、距離算出部18でこのピッチに基づいて集光レンズ24から物体Tまでの対物距離aを算出するようにしたものである。
【0099】
これにより、両面ハーフミラー25という極めて簡素な既存の光学要素で、物体Tからの反射光が、仮想的な集光点である虚スポットU1,U2の位置が互いに異なる2つの出力光S1,S2に分離され、これら出力光S1,S2により対物距離aに応じてピッチpが変化する干渉縞が検出面Iに発生する。
したがって、従来の精密な研磨加工を要する多重焦点レンズや球体レンズを用いる必要がなくなり、高価な光学系レンズやその精密な組み立てを省くことができる。このため、比較的安価なコストで、物体Tまでの対物距離aを正確に測定することができる距離測定装置を実現することが可能となる。
【0100】
また、本実施の形態は、両面ハーフミラー25に、それぞれ半透光性を持つ平行配置された2つの第1面25Aおよび第2面25Bを設け、虚スポットUに一旦集光した反射光のうち、第1面25Aを透過した光を第2面25Bで反射させずに透過させて第1の出力光S1として出力する機能と、第1面25Aを透過した光を第2面25Bで反射した後に第1面25Aで再び反射し第2面25Bを透過させて第2の出力光S2として出力するようにしたものである。
【0101】
これにより、両面ハーフミラー25という極めて簡素な光学要素で、虚スポットUからの反射光Sを、虚スポットU1からの第1の出力光S1と虚スポットU2からの第2の出力光S2とに容易に分離させることができ、効率よく干渉縞を発生させることができる。
また、干渉縞は正弦波形状となるため、干渉縞ピッチpの測定が容易となるとともに、干渉縞の局在化、すなわち周期的な特定の距離近辺にのみ干渉縞が現れる現象が発生しないため、対物距離aの測定スパンを広くすることができる。さらに、干渉縞ピッチpが検出面I上で一定となるため、光検出素子17の検出結果を補正する必要がなく、演算処理を簡素化できるとともに干渉縞ピッチpの測定誤差を低減できる。
【0102】
また、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、光源11として複数の半導体レーザを使用することにより、物体Tの表面が粗面であっても、簡便かつ安価な方法で、干渉縞のコントラストの低下を抑えつつ、干渉縞の波面の乱れを低減することができ、距離計測の誤差の発生を抑えることができる。
【0103】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図20は、本発明の第4の実施の形態にかかる距離測定装置10aの構成を示す説明図であり、図1図12と同様の構成には同一の符号を付してある。
本実施の形態では、前述した第3の実施の形態において、集光光学系に対物レンズ20を設け、対物レンズ20と集光レンズ24との間の区間において、物体Tからの反射光を平行光に変換する場合について説明する。
【0104】
本実施の形態において、対物レンズ20は、物体Tからの反射光を平行光に変換して、集光レンズ24に出力する機能を有している。
図20の例では、対物レンズ20と集光レンズ24との間にビームスプリッタ13が配置されている。これにより、光源11から発せられた光は、光源レンズ12で平行光に変換された後、ビームスプリッタ13で反射され、この後、対物レンズ20により集光されて物体Tに照射される。
【0105】
また、物体Tからの反射光は、対物レンズ20で平行光に変換され、ビームスプリッタ13を通過して集光レンズ24により虚スポットUに一旦集光させた後、虚スポットUから広がり始めた反射光が両面ハーフミラー25を通過して検出面Iに照射される。
【0106】
これにより、第3の実施の形態と同様、対物レンズ20から物体Tまでの対物距離に応じてピッチが変化する干渉縞が検出面I上に生じるため、このピッチから対物距離を算出することができる。
【0107】
[第4の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、集光光学系に対物レンズ20を設け、対物レンズ20と集光レンズ24との間の区間において、物体Tからの反射光を平行光に変換するようにしたので、物体Tまでの対物距離aが変化しても、その対物距離aに応じた焦点距離を持つ対物レンズ20に取り換えることにより、対物レンズ20から検出面Iまでの区間においては、光路が一定となる。
このため、広範囲の対物距離aに対応することができ、測定レンジを大幅に拡大することが可能となる。
【0108】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図21は、本発明の第5の実施の形態にかかる距離測定装置10bの構成を示す説明図であり、図1図12と同様の構成には同一の符号を付してある。
【0109】
図21に示すように、距離測定装置10bには、主な構成として、光源11、光源レンズ12、ビームスプリッタ13、集光レンズ24、両面ハーフミラー35、光検出素子17、および距離算出部18が設けられており、これらがケーシング(図示せず)内部に収納されている。
【0110】
第1〜第4の実施の形態と同様に、光源11は複数の半導体レーザからなる。複数の半導体レーザは、光検出素子17に入射する出力光の光軸(検出面Iの垂線であり、後述する垂線O’)に対して垂直な方向で、かつレーザ光を2つの出力光に分割するシア方向(図21の左右方向)に対して垂直な方向(図21の紙面に垂直な方向)に沿って発光点が並ぶように配置される。
光源レンズ12、ビームスプリッタ13、および集光レンズ24については第3の実施の形態で説明したとおりである。
【0111】
両面ハーフミラー35は、全体として透明の平行平板からなり、互いに平行配置された、ハーフミラーコーティングなどの処理が施された半透光性を持つ第1面35Aおよび第2面35Bを有し、集光光学系の光軸Oに対して傾きを持って配置されて、虚スポットUを通過した反射光である主光線Sを内部で2つの出力光S1,S2に分離して、当該反射光が入射される第1面35Aから出力する機能を有している。
【0112】
これにより、入射された主光線Sは、主に、第1面35Aで反射した第1の出力光と、入射された主光線Sが第1面35Aを透過した後に第2面35Bで反射し、その後第1面35Aを透過した第2の出力光S2とに分離されて出力される。
なお、両面ハーフミラー35の第1面35Aおよび第2面35Bにおける透過率と反射率については、1:1に限定されるものではなく、1:1以外であってもよい。また、第2面35Bについては、光を透過しない全反射ミラーであっても、ハーフミラーの場合と同様の効果が得られる。
【0113】
光検出素子17は、両面ハーフミラー35を通過した2つの出力光S1,S2により、検出面Iに生じた干渉縞を検出し、検出結果を出力する。なお、本実施の形態では、検出面Iの垂線O’が光軸Oとが直交するよう光検出素子17が配置されている場合を例として説明するが、これに限定されるものではなく、両面ハーフミラー35の傾きに応じて光検出素子17を配置すればよい。
【0114】
第1の実施の形態と同様に、距離算出部18は、光検出素子17で得られた検出結果を演算処理して干渉縞のピッチ(周期長)を抽出し、得られたピッチに基づいて集光レンズ24から物体Tまでの対物距離を算出する機能を有している。
【0115】
[距離計測の原理]
次に、図14図15図18図22図24を参照して、本実施の形態にかかる距離計測装置10bで用いる距離計測の原理について説明する。なお、図24では、距離計測装置10bのうち、集光光学系のみを要部として示し、投影光学系については省略してある。また、図14図15図18図22図24において、理解を容易とするため、光線については主光線のみを示し、光軸Oと直交する方向のうち紙面上下方向をX方向とし、紙面垂直方向をY方向とし、光軸Oに沿った紙面左右方向をZ方向とした。また、本来、レンズには光の入射方向に応じて2つの主点があり、それぞれの位置が異なるが、以下では、数式の複雑化を避けるため、集光レンズ24が薄肉単レンズからなり、主点がレンズ中心に1つだけ存在すると仮定して、各式を導出した。
【0116】
集光レンズ24で虚スポットUに集光された物体Tからの反射光である主光線Sが、両面ハーフミラー35に入射された場合、主に、第1面35Aで反射した第1の出力光S1と、第1面35Aを透過した後に第2面35Bで反射し、さらに第1面35Aを透過した第2の出力光S2とに分離される。したがって、第2の出力光S2は第1の出力光S1と平行であるが、両面ハーフミラー35内部で1回反射するため、第1の出力光S1が第1面35Aから出射する位置とは異なる位置から出射される。
【0117】
ここで、両面ハーフミラー35の存在を無視して、第1の出力光S1と第2の出力光S2の仮想的な集光点(光源点)を虚スポットU1,U2とした場合、両面ハーフミラー35での屈折および反射により、U1はUと等しい位置となるが、U2は、実際の主光線Sの虚スポットUからずれた互いに異なる位置となる。このため、虚スポットU1,U2からの第1および第2の出力光S1,S2が光検出素子17の検出面Iに投影された場合、検出面I上に干渉縞が発生する。
【0118】
本実施の形態は、この干渉縞のピッチpが、集光レンズ24から物体Tの光スポットAまでの対物距離aに応じて変化することに着目し、検出面I上に発生した干渉縞を光検出素子17で検出して、距離算出部18で、そのピッチpを測定し、得られたピッチpに基づいて集光レンズ24から物体Tまでの対物距離aを算出するようにしたものである。
以下では、両面ハーフミラー35に対する主光線Sの入射角θ1、すなわち両面ハーフミラー35の傾きと、X方向およびZ方向における虚スポットU1,U2の間隔ΔX,ΔZとの関係を説明した上で、これら間隔ΔX,ΔZとピッチp、さらにはピッチpと対物距離aとの関係について説明する。
【0119】
[X方向における虚スポット間隔Δx]
図22に示すように、両面ハーフミラー35の厚さ、すなわち第1面35Aと第2面35Bとの距離をtとし、両面ハーフミラー35に対する光Sの入射角をθ1とし、第1面35Aおよび第2面35Bにおける屈折角をθ2とした場合、第1面35Bにおける第1の出力光S1と第2の出力光S2の出射位置の距離wは、上記の式(13)で表される。
【0120】
また、両面ハーフミラー35の相対屈折率をnとした場合、スネルの法則から、θ1とθ2との関係は、上記の式(14)で表される。
したがって、式(14)を式(13)に代入した場合、距離wは、θ1を用いた式(15)となり、X方向における虚スポットU1,U2の間隔Δxは、式(16)で求められる。
【0121】
[Z方向における虚スポット間隔ΔZ]
両面ハーフミラー35から出射された第1の出力光S1は第1面35Aで反射した光であるため、S1の虚スポットU1は虚スポットUと等しい。一方、第2の出力光S2は、主光線Sが両面ハーフミラー35の法線方向Zgに沿って、検出面I側あるいは集光レンズ24側にそれぞれ平行移動したものと見なすことができる。
したがって、両面ハーフミラー35の法線方向Zgにおける、虚スポットUから虚スポットU2までの距離Ld2を算出すれば、このLd2からZ方向における虚スポットU1,U2間の虚スポット間隔ΔZを求めことができる。
【0122】
まず、図14および図15を参照して、光の平行移動について説明する。
図14に示したように、光Saを集光する集光レンズCとその結像点Paとの間に、屈折率の高い両面ハーフミラー35などの平行平板からなる透光性を持つ媒体Gを挿入した場合、光Saが平行移動した状態となり、媒体Gを透過した光Sbの結像点は、媒体Gの法線方向Zgに沿って結像点Paから結像点Pbまで延長されることになる。
【0123】
図15に示したように、媒体Gの相対屈折率をnとし、媒体Gの厚さをtとし、媒体Gに対する光Saの入射角をθ1とし、媒体G内部での屈折角をθ2とし、法線方向Zgに沿った光Saから光Sbへの平行移動距離をdとした場合、媒体Gの出射面上における、媒体Gに対する光Saの入射位置と媒体Gからの光Sbの出射位置との距離kは、上記の式(17)で表され、平行移動距離dは上記の式(18)で求められる。
【0124】
次に、図23を参照して、第2の出力光S2の平行移動について説明する。図23では、理解を容易とするため、光軸Oを傾け、両面ハーフミラー35の法線を基準(水平)としている。なお、第1の出力光S1については平行移動していないので、S1に関する光路差Ld1はゼロ(=0)とする。
前述した光の平行移動と同様にして、両面ハーフミラー35から出射された第2の出力光S2は、図23に示すように、両面ハーフミラー35に入射した主光線Sが、両面ハーフミラー35の法線方向Zgに沿って、平行移動したものと見なすことができる。
【0125】
まず、入射角θ1で第1面上の点Aから入射した主光線Sは、法線方向Zgに対して屈折角θ2の角度で屈折した後、両面ハーフミラー35内部を透過して、第2面35B上の点Bで反射した後、第1面35A上の点Cから第2の出力光S2として出射する。
【0126】
この際、点Aから点Cまでの経路は、厚さ2tの両面ハーフミラー35内部を反射せずに透過した経路と等しいものと見なすことかできる。したがって、点Aから点Cまでの経路を第2面35Bの右側に展開し、第1面35Aから距離2tだけ離れた仮想第1面上の点Dから主光線Sが入射角θ1で入射し、第2面35B上の点Bを通過した後、第1面35A上の点Cから出射した場合と同等となる。
【0127】
この場合、第2の出力光S2を仮想第1面側に延長した場合に点Aを通過する法線と交差する点を点D’とした場合、点D’を通過して点Cから出射する第2の出力光S2は、点Dに入射した主光線S’の直進光S2’が、法線方向Zgに沿って集光レンズ24側に平行移動したものと見なすことができ、線分D−D’が第2の出力光S2の平行移動距離d2に相当する。
【0128】
ここで、三角形ADCと三角形AD’Cは、辺ACを共通としているため、次の式(37)の関係が得られる。また、両面ハーフミラー35の相対屈折率をnとし,両面ハーフミラー35の厚さをtとして、スネルの法則により、式(37)のθ2をθ1で置換した場合、線分D−D’の距離d2は式(38)で求められる。
【数37】
【数38】
【0129】
したがって、第2の出力光S2を仮想第1面側に延長した場合に仮想第1面と交差する点を点D’’とした場合、このような第2の出力光S2の平行移動により、主光線Sの光路長が線分D’’−D’の長さLd2’だけ検出面I側に延長されたことになる。このことは、見かけ上、虚スポットUが法線方向Zgに沿って距離d2だけ集光レンズ24側に虚スポットU1まで移動したことを示している。このため、このLd2’は式(38)で求めた距離d1から次の式(39)で求められる。
【数39】
【0130】
ここで、この距離Ld2’には、仮想第1面まで2t分だけ展開した展開距離2t/cosθ1が含まれている。したがって、第2の出力光S2に関する実際の光路差Ld2は、次の式(40)で求められる。
【数40】
【0131】
したがって、Z方向における虚スポットU1,U2の間隔Δzは、第2の出力光S2の光路差Ld2に基づいて、上記の式(26)で求められる。
【0132】
[虚スポット間隔ΔX,ΔZとピッチpとの関係]
次に、図18を参照して、虚スポットU1,U2の間隔ΔX,ΔZと、検出面I上に生じる干渉縞のピッチpとの関係について説明する。図18では、理解を容易とするため、光軸Oを基準(水平)とし、両面ハーフミラー35は無視するものとする。
【0133】
図18において、虚スポットU1,U2は、X方向に間隔ΔXだけ離れるとともに、Z方向に間隔ΔZだけ離れて位置している。ここで、虚スポットU1からの第1の出力光S1と、虚スポットU2からの第2の出力光S2が光検出素子17の検出面I上に到達した到達点をVとし、虚スポットU1を通過するX方向の線と虚スポットU2を通過するZ方向の線との交点を点Dとし、線分U1−Dの中間点D0からZ方向に伸ばした線と検出面Iとが交わる点をV0とし、検出面I上でY方向に沿ったV0からVまでの距離をPとし、虚スポットU1から検出面Iまでの距離をcとする。
【0134】
第1の出力光S1に関する虚スポットU1から到達点Vまでの光路長L1は、三平方の定理により、上記の式(27)で求められる。この際、距離cに比較して間隔Δxが非常に小さく、Z方向に対する線分D0−Vの傾きΦに代表される第1の出力光S1および第2の出力光S2の傾きが非常に小さいため、光路長L1は上記の式(28)のように近似できる。
【0135】
一方、線分U2−Vと線分U1−Dとの交点を点U2’とした場合、第2の出力光S2に関する虚スポットU2から到達点Vまでの光路長L2は、線分U2−U2’の光路長L21と線分U2’−Vの光路長L22との和で求められる。
まず、光路長L21については、線分D−U2’の距離をx’とした場合、前述した式(28)と同様にして、上記の式(29)により求められる。
【0136】
ここで、前述したように、線分U2−U2’の傾きΦが非常に小さく、距離x’/間隔ΔzすなわちtanΦが極めて小さいため、式(29)の右辺第2項は非常に小さい値となる。このため、結果として光路長L21はΔzで近似できることになる。
一方、光路長L22は、光路長L1と同様は、三平方の定理により、上記の式(30)で求められる。
【0137】
これにより、光路長L2は上記の式(31)で求められ、虚スポットU1からの第1の出力光S1と、虚スポットU2からの第2の出力光S2との光路差ΔLは、上記の式(32)で求められる。
【0138】
検出面I上では、この光路差ΔLにより干渉縞が生じ、具体的には、光路差ΔLが光の波長λの整数m(mは、0以上の整数)倍となる場合、検出面Iにおいて明線が生じる。また、光路差ΔLのうち間隔Δzは一定値であり、この値は、干渉縞の初期位相にのみ影響を与えるだけで干渉縞ピッチpには影響を与えるものではない。
【0139】
したがって、検出面I上に生じた各明線のうち、隣接する明線の間隔は干渉縞ピッチpとなり、その値はm=1の場合に相当する。よって、検出面I上に生じた干渉縞の干渉縞ピッチpは、式(32)において光路差ΔL=λとし、間隔Δzを無視することにより、上記の式(33)で求められる。
【0140】
一方、図24に示すように、物体Tから主点Mすなわち集光レンズ24の位置までの対物距離をaとし、主点から虚スポットUまでの距離をbとし、集光レンズ24の焦点距離をfとした場合、これらの関係は、結像の公式(レンズの公式)により、上記の式(34)で表される。
【0141】
したがって、主点から虚スポットUまでの距離bと虚スポットU1から検出面Iまでの距離c(c=虚スポットU1から第1面35Aまでの距離c1+第1面35Aから検出面Iまでの距離c2)の和を距離g(g=一定)としてc=g−bとし、これに式(34)から求められる距離bを代入すると、前述した式(33)は上記の式(35)となる。したがって、式(35)から、物体Tから主点Mすなわち集光レンズ24の位置までの対物距離aは、上記の式(36)で求められることになる。
【0142】
本実施の形態においても、光検出素子17の検出面Iには図8と同様の干渉縞が生じ、光検出素子17で得られる検出結果は、図9と同様に、ほぼ正弦波形状をなしており、そのピーク位置が明線に相当している。したがって、ピーク位置間に存在するピクセル数から干渉縞ピッチpを示す実際の距離を算出できる。
【0143】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、物体Tからの反射光を集光レンズ24により虚スポットUに一旦集光させた後、両面ハーフミラー35により2つの出力光に分離して、反射光が入射される第1面から出力し、これら2つの出力光により検出面Iに生じた干渉縞を光検出素子17で検出し、得られた検出結果を演算処理して干渉縞のピッチを抽出し、距離算出部18でこのピッチに基づいて集光レンズ24から物体Tまでの対物距離aを算出するようにしたものである。
【0144】
これにより、両面ハーフミラー35により、物体Tからの反射光が集光した虚スポットUが仮想的な2つの虚スポットU1(=U),U2に分離されて、これら虚スポットU1,U2を仮想的な集光点とする反射光により、対物距離aに応じて干渉縞ピッチpが変化する干渉縞が、検出面I上に発生する。
したがって、両面ハーフミラー35という極めて簡素な既存の光学要素で、虚スポットUからの反射光Sを、虚スポットU1からの第1の出力光S1と虚スポットU2からの第2の出力光S2とに容易に分離させることができる。このため、従来の精密な研磨加工を要する多重焦点レンズや球体レンズを用いる必要がなくなり、高価な光学系レンズやその精密な組み立てを省くことができる。これにより、比較的安価なコストで、物体Tまでの対物距離aを正確に測定することができる距離測定装置を実現することが可能となる。
【0145】
また、本実施の形態は、両面ハーフミラー35に、それぞれ半透光性を持つ平行配置された2つの第1面35Aおよび第2面35Bを設け、虚スポットUに一旦集光した反射光のうち、その一部を第1面35Aで反射させて第1の出力光S1として出力する機能と、他の一部を第1面35Aを透過した光を第2面35Bで反射した後に第1面35Aを透過させて第2の出力光S2として出力するようにしたものである。
【0146】
これにより、両面ハーフミラー35という極めて簡素な光学要素で、虚スポットUからの反射光Sを、虚スポットU1からの第1の出力光S1と虚スポットU2からの第2の出力光S2とに容易に分離させることができ、効率よく干渉縞を発生させることができる。
また、干渉縞は正弦波形状となるため、干渉縞ピッチpの測定が容易となるとともに、干渉縞の局在化、すなわち周期的な特定の距離近辺にのみ干渉縞が現れる現象が発生しないため、対物距離aの測定スパンを広くすることができる。さらに、干渉縞ピッチpが検出面I上で一定となるため、光検出素子17の検出結果を補正する必要がなく、演算処理を簡素化できるとともに干渉縞ピッチpの測定誤差を低減できる。
【0147】
また、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、光源11として複数の半導体レーザを使用することにより、物体Tの表面が粗面であっても、簡便かつ安価な方法で、干渉縞のコントラストの低下を抑えつつ、干渉縞の波面の乱れを低減することができ、距離計測の誤差の発生を抑えることができる。
【0148】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。図25は、本発明の第6の実施の形態にかかる距離測定装置10bの構成を示す説明図であり、図1図12図21と同様の構成には同一の符号を付してある。
本実施の形態では、前述した第5の実施の形態において、集光光学系に対物レンズ20を設け、対物レンズ20と集光レンズ24との間の区間において、物体Tからの反射光を平行光に変換する場合について説明する。
【0149】
本実施の形態において、対物レンズ20は、物体Tからの反射光を平行光に変換して、集光レンズ24に出力する機能を有している。
図25の例では、対物レンズ20と集光レンズ24との間にビームスプリッタ13が配置されている。これにより、光源11から発せられた光は、光源レンズ12で平行光に変換された後、ビームスプリッタ13で反射され、この後、対物レンズ20により集光されて物体Tに照射される。
【0150】
また、物体Tからの反射光は、対物レンズ20で平行光に変換され、ビームスプリッタ13を通過して集光レンズ24により虚スポットUに一旦集光させた後、虚スポットUから広がり始めた反射光が両面ハーフミラー35を通過して検出面Iに照射される。
【0151】
これにより、第5の実施の形態と同様、対物レンズ20から物体Tまでの対物距離に応じてピッチが変化する干渉縞が検出面I上に生じるため、このピッチから対物距離を算出することができる。
【0152】
[第6の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、集光光学系に対物レンズ20を設け、対物レンズ20と集光レンズ24との間の区間において、物体Tからの反射光を平行光に変換するようにしたので、物体Tまでの対物距離aが変化しても、その対物距離aに応じた焦点距離を持つ対物レンズ20に取り換えることにより、対物レンズ20から検出面Iまでの区間においては、光路が一定となる。
このため、広範囲の対物距離aに対応することができ、測定レンジを大幅に拡大することが可能となる。
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、物体までの距離を光学的に測定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
10,10a,10b…距離測定装置、11…光源、12…光源レンズ、13…ビームスプリッタ、14…回折格子、15,24…集光レンズ、16…スペイシアルフィルタ、17…光検出素子、18…距離算出部、20…対物レンズ、21…半導体レーザ、25,35……両面ハーフミラー、T…物体、Q…結像面、I…検出面、a…対物距離、p…干渉縞ピッチ、U…虚スポット。
図1
図2
図3
図4
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