(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の現像ローラを、その一例を挙げて、説明する。
本発明の現像ローラの一例である現像ローラ1は、
図1に示されるように、軸体2と弾性層3とコート層4とを備えている。
現像ローラ1において、コート層4の粗さ曲線のクルトシスRku(以下、単にクルトシスRkuということがある)は、2.00〜3.50の範囲にある。ここで、クルトシスRkuは、JIS B0601:2001に記載の方法により測定、算出される値である。
コート層4、すなわち現像ローラ1の表面において、クルトシスRkuが小さいと、コート層4の表面性状は凹凸の高さ分布がつぶれているような形状となる。その結果、例えば感光体等と圧接状態で画像形成装置等に装着されると、コート層4の摩耗が進行しやすく、十分な耐久性を発揮できないことがある。一方、クルトシスRkuが大きいと、コート層4の表面性状は、逆に、高さ分布が尖った形状となる。この場合も、同様に圧接状態で尖った形状先端に力を受けやすいから、やはり、コート層4の摩耗が進行しやすく、十分な耐久性を発揮できないことがある。
【0012】
クルトシスRkuは、JIS B0601:2001に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計:サーフコム1400(商品名、東京精密社製)に現像ローラをセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.15mm/min、カットオフ種別ガウシアンにより、下記測定点それぞれを測定した値の平均値とする。測定点は、コート層4の外周面をその周方向に沿って等間隔の5点とする。
【0013】
クルトシスRkuは、耐久性の点で、2.2〜3.0が好ましく、2.3〜2.7がより好ましい。
【0014】
クルトシスRkuは、コート層4の形成条件、特にコート層形成用の樹脂組成物の加熱条件、コート層4の層厚、コート層4に粒子を含有する場合はその粒子の粒径若しくは含有量、弾性層3の研磨条件、砥粒の種類若しくは粒度の変更等によって、所定の範囲に設定できる。
【0015】
コート層4は、クルトシスRkuに加えて、以下の表面特性をさらに有していると、コート層4の耐久性の点で、さらに好ましい。
粗さ曲線のスキューネスRskは、−1.50〜1.00μmが好ましく、−1.00〜0.90μmがより好ましく、−0.50〜0.80μmがさらに好ましい。スキューネスRskが上記範囲にあると、コート層4の表面性状は微少な凸凹となる。その結果、耐久性がさらに向上する。
粗さ曲線の二乗平均平方根傾斜RΔqは、0〜0.7μmが好ましく、0〜0.6μmがより好ましく、0〜0.5μmがさらに好ましい。二乗平均平方根傾斜RΔqが上記範囲にあると、コート層4の表面性状は傾斜が小さくなる。その結果、耐久性がさらに向上する。
【0016】
輪郭曲線の算術平均高さRaは、0〜2.0μmが好ましく、0.1〜2.0μmがより好ましく、0.2〜2.0μmがさらに好ましい。
十点平均粗さRz
JISは、0〜20.0μmが好ましく、0.5〜17.5μmがより好ましく、1.0〜15.0μmがさらに好ましい。
【0017】
スキューネスRsk、二乗平均平方根傾斜RΔq、算術平均高さRa及び十点平均粗さRz
JISは、それぞれ、クルトシスRkuと同様に、JIS B0601:2001に準じ、上記測定条件により、測定された値とする。
スキューネスRsk、二乗平均平方根傾斜RΔq、算術平均高さRa及び十点平均粗さRz
JISは、いずれも、クルトシスRkuと同様にして、所定の範囲に設定できる。
【0018】
現像ローラ1は、好ましくは軸体2を備えている。軸体2は従来公知の現像ローラにおける軸体と基本的に同様のものを備えているのが好ましい。この軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体であり、良好な導電特性を有しているのが好ましい。軸体2は熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよい。
【0019】
現像ローラ1は、好ましくは弾性層3を備えている。弾性層3は、従来公知の現像ローラにおける弾性層と同様の弾性層を特に限定されずに用いることができる。この弾性層3は、軸体2の外周面に後述するゴム組成物の硬化物で形成され、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が20〜70のJIS A硬度(JIS K 6301)を有していると、現像ローラ1と感光体等との接触面積を大きくすることができる。弾性層3は、感光体等との当接状態において感光体等と弾性層3との均一なニップ幅を確保することができる等の点で、その厚さは1〜30mmであるのが好ましく、5〜20mmであるのが特に好ましい。
【0020】
弾性層3は、導電性付与剤及び所望により各種添加剤を含有する。弾性層3を形成するゴム、導電性付与剤及び添加剤については、後述する。
【0021】
コート層4は、弾性層3の外周面に配置されている。
コート層4は、通常、5〜25μmの層厚を有しているのが好ましい。本発明において、コート層4は、高耐久性を発揮するから、層厚を薄くすることもできる。例えば、層厚を20μm未満にすることができる。十分な耐久性は、層厚を、3μm以上23μm未満にしても発揮され、さらに2〜20μmにしても発揮される。
【0022】
コート層4は、樹脂、好ましくはウレタン樹脂で形成され、好ましくは、イオン液体、充填剤を含有している。また、所望により、導電性付与剤、樹脂粒子又は各種添加剤等を含有していてもよい。
【0023】
コート層4を形成する、バインダー樹脂としてのウレタン樹脂は、公知のウレタン樹脂を特に限定されることなく用いることができる。
【0024】
イオン液体は、オニウム塩の1種であり、少なくとも室温付近の温度で液体状態にある高導電率を有する液体化合物であれば特に限定されない。イオン液体としては、例えば、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体又はイミダゾリウム系イオン液体等が挙げられる。コート層4が含有するイオン液体は、各種のイオン液体の中でも、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及びイミダゾリウム系イオン液体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ピリジニウム系イオン液体及びアミン系イオン液体よりなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0025】
ピリジニウム系イオン液体は、陽イオンとして、ピリジン環を構成する窒素原子にアルキル基等が結合してなるピリジニウムイオンを基本骨格とするイオン液体である。ピリジニウム系イオン液体は、特許第5548544号公報に記載の「ピリジニウム系イオン液体」を用いることができ、この公報に記載された内容は本明細書に組み込まれる。
なかでも、N−プロピルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0026】
アミン系イオン液体は、陽イオンとして、脂肪族系アミン化合物の窒素原子にアルキル基等が結合して成るアンモニウムイオンを基本骨格とする脂肪族のアミン系イオン液体である。アミン系イオン液体は、特許第5548544号公報に記載の「アミン系イオン液体」を用いることができ、この公報に記載された内容は本明細書に組み込まれる。
なかでも、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0027】
イミダゾリウム系イオン液体は、陽イオンとして、イミダゾリウムの一方又は両方の窒素原子にアルキル基等が結合して成るイミダゾリウムイオンを基本骨格とするイオン液体である。イミダゾリウム系イオン液体は、特開2008−129481公報に記載の「イミダゾリウム系イオン液体」を用いることができ、この公報に記載された内容は本明細書に組み込まれる。
なかでも、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,3−ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0028】
コート層4は、ウレタン樹脂100質量部に対して、イオン液体を、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは1〜18質量部の割合で含有している。
【0029】
充填剤は、粒子として含有されることが好ましい。このような充填剤の粒子としては、無機充填剤の粒子又は有機充填剤の粒子等が挙げられ、無機充填剤の粒子であるのが好ましい。無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク等が挙げられる。これらの中でも、無機充填剤の粒子はシリカ粒子であるのが特に好ましい。有機充填剤の粒子としては、例えば、シリコーンレジン、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリメタクリル酸ブチル、架橋ポリアクリル酸エステル、架橋アクリル等の粒状物等が挙げられる。
充填剤粒子の平均粒径は、0.5〜7μmであるのが好ましく、1〜5μmであるのが特に好ましい。平均粒径はコールカウンター法によって測定した値である。
コート層4は、ウレタン樹脂100質量部に対して、充填剤を、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは1〜13質量部の割合で、含有している。
【0030】
樹脂粒子は、上記有機充填剤の粒子以外の粒子であって、樹脂からなる粒子であれば特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂からなる粒子が挙げられる。ウレタン樹脂粒子は、例えば、根上工業社製の「アートパール」(商品名)等が挙げられる。
コート層中の、樹脂粒子の含有量は、コート層を形成する樹脂100質量部に対して好ましくは1〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは1〜13質量部である。
【0031】
導電性付与剤及び各種添加剤については後述する。
【0032】
本発明の現像ローラは、軸体又は弾性層の外周面にコート層を形成して、製造される。
例えば、現像ローラ1は、軸体2の外周面に弾性層3を形成し、さらに弾性層3の外周面にコート層4を形成して、製造される。
【0033】
現像ローラ1を製造するには、まず、軸体2を準備する。例えば、軸体2は公知の方法により所望の形状に調製される。この軸体2は、弾性層3が形成される前にプライマーが塗布されてもよい。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はないが、前記弾性層3とコート層4とを接着又は密着させるプライマー層とを形成する材料と同様の樹脂及び架橋剤が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。
【0034】
弾性層3は、ゴム組成物を軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。例えば、弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の硬化方法はゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、ゴム組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、ゴム組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。ゴム組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は5分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、二次加硫してもよい。付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、例えば、100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件が選択される。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、例えば、120〜250℃で2〜70時間程度の硬化条件が選択される。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
【0035】
弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有するのが好ましい。
【0036】
ゴムとしては、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられる。シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン又はシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。これらのゴムは、液状型であってもミラブル型であってもよい。
【0037】
導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等の導電性粉末が挙げられる。
各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0038】
ゴム組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物等を好適に挙げることができる。
【0039】
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物としては、例えば、(A)平均組成式:RnSiO
(4−n)/2(Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物において、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、充填材(B)は11〜39質量部、導電性材料(C)は2〜80質量部が好ましい。
この付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物」を用いることができ、これに記載された内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cm
3である無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物において、オルガノポリシロキサン(D)100質量部に対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)は0.1〜30質量部、無機質充填材(F)は5〜100質量部、導電性付与剤(G)は2〜80質量部が好ましく、付加反応触媒(H)はオルガノポリシロキサン(D)及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)の合計質量に対して0.5〜1,000ppmが好ましい。
この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物」を用いることができ、これに記載された内容は本明細書に組み込まれる。
【0041】
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。また、弾性層3はコート層4が形成される前にその外周面にプライマー層が形成されてもよい。
【0042】
コート層4は、このようにして形成された弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、樹脂組成物を塗工し、次いで、塗工された樹脂組成物を加熱硬化させて、形成される。樹脂組成物の塗工は、例えば、樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。
【0043】
このようにして塗工された樹脂組成物を硬化する方法は、樹脂組成物の硬化等に必要な熱又は水分を加えられる方法であればよく、例えば、樹脂組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法、樹脂組成物が塗工された弾性層3等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100〜200℃、特に120〜160℃、加熱時間は10〜120分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。
特に、樹脂組成物の加熱硬化において、クルトシスRkuを所定の範囲に設定する場合には、樹脂組成物の加熱条件として、加熱温度を、好ましくは120〜180℃、より好ましくは150〜160℃に設定し、加熱時間を、好ましくは20〜60分、より好ましくは25〜35分に設定する。このように樹脂組成物の加熱硬化条件を設定することにより、樹脂組成物の硬化具合を変更させて、クルトシスRkuを所定の範囲に設定することができる。
なお、塗工に代えて、樹脂組成物を弾性層3又はプライマー層の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層するとともに、又は、積層した後に、積層された樹脂組成物を硬化させてもよい。
【0044】
コート層を形成する樹脂組成物は、樹脂を形成する前駆体である樹脂調製成分を含有し、好ましくは、イオン液体又は充填剤を含有する。また、所望により、導電性付与剤、樹脂粒子又は各種添加剤等を含有していてもよい。
イオン液体、充填剤及び樹脂粒子は上記した通りであり、導電性付与剤はゴム組成物のものと同じである。
【0045】
樹脂としては、特に限定されないが、ウレタン樹脂が好ましい。ウレタン樹脂の調製成分(ウレタン調製成分)は、ウレタン樹脂を形成できるものであればよく、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物、又は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマーが挙げられる。
【0046】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物におけるポリオールは、ウレタン樹脂の調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール等が挙げられる。ポリオールとしては、特許第5548544号公報に記載の「ポリオール」を特に限定されることなく用いることができ、この公報に記載された内容は本明細書に組み込まれる。また、混合物におけるポリイソシアネートも、同様に、ウレタン樹脂の調製に通常使用される各種のポリイソシアネートであればよく、芳香族、脂肪族、脂環族の各ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、特許第5548544号公報に記載の「ポリイソシアネート」を特に限定されることなく用いることができ、この公報に記載された内容は本明細書に組み込まれる。ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物におけるこれらの混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO、ブッロクポリイソシアネートの場合は遊離し得るイソシアネート基)とのモル比(NCO/OH)が0.7〜1.15であるのが、好ましい。このモル比(NCO/OH)はウレタン樹脂の加水分解を防止することができる点で0.85〜1.10であるのがより好ましい。
【0047】
ウレタン樹脂調製成分がポリオールとポリイソシアネートとの混合物である場合には、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を含有してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0048】
ウレタン樹脂調製成分としてのプレポリマーは、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマーであればよく、それらの分子量等も特に限定されない。プレポリマーは、所望により、上記助剤等の存在下、ワンショット法又はプレポリマー法等によって、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して、得られる。
【0049】
ウレタン樹脂調製成分は、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが好ましく、特に、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが特に好ましい。
【0050】
各種添加剤としては、特に限定されないが、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常樹脂組成物に用いられる添加剤であってもよく用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0051】
樹脂組成物中の、イオン液体、充填剤及び樹脂粒子の含有量は、それぞれ、コート層中の上記各含有量となるように、設定される。
導電性付与剤を含有する場合、樹脂組成物中の、導電性付与剤の含有量は、ウレタン調製成分100質量部に対して、好ましくは1〜9質量部、より好ましくは3〜8.5質量部、さらに好ましくは6〜8質量部である。
各種添加剤の含有量は、適宜に設定される。
【0052】
樹脂組成物は、上記成分を常法により混合して、調製できる。
樹脂組成物は、弾性層3の外周面に容易に形成することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。樹脂組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって所定の範囲に設定することができる。また、必要により、溶剤等により、粘度を所定の範囲に設定することもできる。
【0053】
このようにして現像ローラ1を製造できる。
【0054】
本発明の現像ローラは、粗さ曲線のクルトシスRkuが2.00〜3.50であるコート層を備えていることにより、高い耐久性を発揮する。
【0055】
次に、本発明の現像装置、及び、本発明の画像形成装置の一例を、
図2を参照して、説明する。
本発明の画像形成装置は、本発明の現像ローラを備えている。
【0056】
画像形成装置10は、
図2に示されるように、各色の現像ユニットに装備された複数の感光体11を転写搬送ベルト30上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットBK、C、M及びYが転写搬送ベルト30上に直列に配置されている。これらの現像ユニットはそれぞれ、静電潜像が形成される回転可能な感光体11と、感光体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、感光体11を帯電させる帯電手段12と、感光体11の上方に設けられ、感光体11に静電潜像を形成する露光手段13と、感光体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、感光体11に一定の層厚でトナー22を供給し、静電潜像を現像する現像手段20と、感光体11の下方に転写搬送ベルト30を介して圧接するように設けられ、感光体11から転写搬送ベルト30で搬送される転写体16上に現像された静電潜像を転写する転写手段14と、転写体16に転写されず感光体11に残留したトナー22等を除去するクリーニング手段15とを備えている。
【0057】
感光体11、帯電手段12、露光手段13、転写手段14及びクリーニング手段15は、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0058】
現像手段20は、
図2に示されるように、感光体11に対向する位置に開口部を有し、トナー22を収納するトナー収納部21と、トナー収納部21の開口部に、感光体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、感光体11にトナー22を一定の層厚でトナー22を供給する回転可能な現像ローラ23として本発明の現像ローラと、現像ローラ23の上方に設けられ、現像ローラ23に当接してトナー22の層厚を規制するとともに、摩擦帯電によりトナー22を帯電させるトナー規制部材24とを備えている。
【0059】
トナー22は、摩擦により帯電可能で、転写体16に定着可能なトナーであれば、乾式トナーでも湿式トナーでもよく、また、非磁性トナーでも磁性トナーでもよい。現像ユニットBK、C、M及びYはそれぞれ、トナー収納部21内に、黒色トナー、シアントナー、マゼンタトナー及び黄色トナーが収納されている。
【0060】
図2に示されるように、現像ユニットBK、C、M及びYにおける感光体11と転写手段14とは、二本の支持ローラ5に張架された転写搬送ベルト30を介して、当接している。そして、転写体16は、転写搬送ベルト30により、感光体11と転写手段14との当接部を通過するように、搬送される。この転写搬送ベルト30は転写体16を搬送するとともに、転写手段14と協働して感光体11に現像された静電潜像を転写する。
【0061】
図2に示されるように、画像形成装置10の底部には、転写体16として複数枚の転写紙を積層収容してなるカセット31が設置されており、カセット31内の転写紙は給紙ローラ等によって1枚ずつ送り出されて、転写搬送ベルト30上に搬送される。
【0062】
図2に示されるように、画像形成装置10における転写体16の搬送方向下流には、転写体16に転写されたトナー22(静電潜像)を定着させる定着手段32が配置されている。
【0063】
画像形成装置10は、次のように作用する。まず、現像ユニットBKの感光体11が、帯電手段12により一様に帯電され、露光手段13により画像が露光されて、感光体11の表面に静電潜像が形成される。一方、現像手段20において、現像ローラ23及びトナー規制部材24により、黒色トナー22が所望の層厚に規制され、所望のように帯電される。そして、この黒色トナー22が現像ローラ23から感光体11に供給され、感光体11に形成された静電潜像が現像されて、トナー像として可視化される。次いで、このトナー像が、感光体11と転写手段14との間に転写搬送ベルト30により搬送される転写体16上に、転写される。このようにして、トナー像が転写紙16上に黒像に顕像化される。
【0064】
次いで、現像ユニットBKと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、トナー像が黒像に顕像化された転写紙16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。
【0065】
次いで、カラー像が顕像化された転写体16は、定着手段32に搬送され、定着手段32によりカラー像が永久画像として転写体16に定着される。このようにして、転写体16にカラー画像を形成することができる。
【0066】
現像装置20及び画像形成装置10は、本発明の現像ローラを備えているから、優れた耐久性を示し、品質の画像を長期間にわたって形成することができる。
【0067】
本発明の現像ローラ、現像装置及び画像形成装置は、前記した一例に限定されることはなく、本発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、
図1に示す現像ローラ1は、軸体2及び弾性層3を備えているが、本発明において、現像ローラは、軸体及び弾性層の少なくとも一方を備えていなくてもよい。また、軸体と弾性層の間又は弾性層とコート層との間に接着層又はプライマー層等の中間層を有していてもよい。
【0069】
現像装置20は、現像ローラ23と、トナー規制部材24と、トナー22とを備えているが、本発明において、現像装置は、さらに、現像ローラに接触又は圧接するように略平行に軸支され、トナーを現像ローラに供給するトナー供給ローラを備えていてもよい。
【0070】
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置10は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置10は、各色の現像ユニットを備えた複数の感光体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置とされているが、画像形成装置は、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置であっても、感光体上に担持されたトナー像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業社製)を塗布した。プライマー処理した軸体2を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の表面にプライマー層を形成した。
【0072】
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m
2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度0.25g/cm
3である珪藻土(オプライトW−3005S、北秋珪藻土社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形により軸体2の外周面に成形した。液体射出成形において、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を10分間150℃に加熱して硬化させた。この成形体を研磨して外径20mmの弾性層3を形成した。この弾性層3のJIS A硬度は43°であった。
【0073】
一方、下記組成を有するコート層形成用のウレタン樹脂組成物を調製した。
(A)ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)14質量部
(B)縮合系ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸との混合モル比[COOH/OH]=12/13)28質量部(イソシアネートとポリエステルポリオールとのモル比[NCO/OH]=1.1/1)
(C)イオン液体として、ピリジニウム系イオン液体である「C
5H
5N
+−C
6H
13[(CF
3SO
2)
2N]
−(N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(関東化学社製)1質量部(ウレタン調整成分であるヘキサメチレンジイソシアネート及び縮合系ポリエステルポリオールの合計100質量部に対して2.4質量部)
(D)カーボンブラック(商品名「トーカブラック#4500」、東海カーボン社製)3質量部
(E)ジブチル錫ジラウレート(商品名「ジ−n−ブチルすずジラウレート」、昭和化学社製)0.03質量部
(F)充填剤粒子として、シリカ(商品名「ACEMATT OK−607」、デグサ社製、平均粒径1.5μm)4質量部(ウレタン調整成分100質量部に対して9.5質量部)
【0074】
このウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で25分間加熱して、層厚15μmのコート層4を形成した。
このようにして実施例1の現像ローラを製造した。
【0075】
(実施例2)
実施例1において、ウレタン樹脂組成物の加熱条件を150℃で30分に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の現像ローラを製造した。
(実施例3)
実施例1において、ウレタン樹脂組成物の加熱条件を160℃で35分に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の現像ローラを製造した。
【0076】
(比較例1)
実施例1において、ウレタン樹脂組成物の加熱条件を140℃で35分に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の現像ローラを製造した。
(比較例2)
実施例1において、ウレタン樹脂組成物の加熱条件を170℃で20分に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の現像ローラを製造した。
(比較例3)
実施例1において、ウレタン樹脂組成物の加熱条件を160℃で30分に変更し、かつウレタンコート層の膜厚を22μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の現像ローラを製造した。
【0077】
(コート層の表面性状の測定)
製造した各現像ローラにおいて、コート層のクルトシスRku、スキューネスRsk、二乗平均平方根傾斜RΔq、算術平均高さRa及び十点平均粗さRz
JISを、それぞれ、JIS B0601:2001に記載の方法に準拠し、上記測定条件で、測定した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
(耐久性試験)
製造した各現像ローラのコート層表面に、直径10mmの円形(リング状)の切り込みを軸線方向の中央に1個入れた。この切り込みは、コート層4が弾性層3から剥がれるきっかけをつくるものであり、本耐久性試験は促進試験である。
次いで、切り込みを入れた現像ローラを、サンドペーパー(商品名:MIRROR FILM MCF 30μm、基材100μm、三共理化学社製、幅50mm)を挟んで、直径80mmのバックアップローラ(材質:ポリウレタン)に、押圧力500gで、圧接させた。このとき、サンドペーパーが挟まれる軸線方向の位置は、切り込みを設けたコート層の表面領域が現像ローラの回転によりサンドペーパー表面を通過する位置とした。具体的には、現像ローラの軸線方向の中央部にサンドペーパーを配置した。
この圧接状態を保持したまま、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、回転速度を1000rpmとして、現像ローラを1分間回転させた。その後、切り込みを設けたコート層の剥離の有無を目視で確認した。
耐久性は、下記基準で、評価した。本試験において、評価が「○」であると合格レベルにある。
○:コート層が弾性層から剥離しなかった場合
△:コート層の一部が弾性層から剥離した場合
×:コート層のほぼ全てが弾性層から剥離した場合
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から明らかなように、粗さ曲線のクルトシスRkuが2.00〜3.50であるコート層を備えた実施例の現像ローラは、いずれも、耐久性試験に合格した。一方、粗さ曲線のクルトシスRkuが小さくても(比較例1及び比較例3)、大きくても(比較例2)、耐久性試験は不合格であった。
以上により、本発明の現像ローラは耐久性に優れていることが分かる。また、本発明の現像ローラを備えた現像装置及び画像形成装置は耐久性に優れることも分かる。