特許第6616702号(P6616702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616702
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】リニアゲージ、及び有限直動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/04 20060101AFI20191125BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20191125BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   F16C29/04
   F16C33/58
   G01B5/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-18424(P2016-18424)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-137923(P2017-137923A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】鍛代 敏行
(72)【発明者】
【氏名】松田 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徹也
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−53046(JP,A)
【文献】 特開2004−117060(JP,A)
【文献】 特開2005−83532(JP,A)
【文献】 特開2007−16951(JP,A)
【文献】 実開平5−32228(JP,U)
【文献】 特開2016−94961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00−31/06
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
G01B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測物の一軸方向の変位を計測するリニアゲージであって、
少なくとも2つのボール溝が外周面の互いに対向する位置に長手方向に沿って設けられるスピンドルと、
前記ボール溝に接触する複数のボールを回動自在に保持しながら前記スピンドルの前記長手方向に沿って摺動可能に設けられるリテーナと、
前記リテーナがその外側に装着された前記スピンドルを前記長手方向に沿って摺動可能に支持するスプラインナットと、を備え、
前記スプラインナットの内周面には、前記スピンドルに設けられる前記ボール溝のそれぞれに対向する位置にスプライン溝が前記長手方向に沿ってそれぞれ設けられ、該スプライン溝は、その底面が前記スプラインナットの両端から中央に向けて前記スピンドルの中心軸からの距離が遠くなるように凹状に形成されることを特徴とするリニアゲージ。
【請求項2】
前記スピンドルの前記外周面には、4つの前記ボール溝が互いに対向する位置に前記長手方向に沿って設けられ、
前記スプラインナットの前記内周面には、4つの前記スプライン溝が前記ボール溝に対向する位置に前記長手方向に沿って設けられることを特徴とする請求項1に記載のリニアゲージ。
【請求項3】
前記ボールの外径は、前記リテーナの摺動に伴って前記ボールが前記スプラインナットの前記中央に配置された際に、前記スプライン溝に対して所定の大きさ以上の予圧を確保可能な大きさであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリニアゲージ。
【請求項4】
前記ボールは、前記リテーナの前記長手方向における端部側には、設けられ、かつ、前記リテーナの前記長手方向の中央側には、設けられていないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のリニアゲージ。
【請求項5】
前記ボールは、前記リテーナの前記長手方向の端部側におけるボール溝に対向する位置にそれぞれ2つずつ設けられることを特徴とする請求項4に記載のリニアゲージ。
【請求項6】
有限直動案内装置であって、
少なくとも2つのボール溝が外周面の互いに対向する位置に長手方向に沿って設けられるスピンドルと、
前記ボール溝に接触する複数のボールを回動自在に保持しながら前記スピンドルの前記長手方向に沿って摺動可能に設けられるリテーナと、
前記リテーナがその外側に装着された前記スピンドルを前記長手方向に沿って摺動可能に支持するスプラインナットと、を備え、
前記スプラインナットの内周面には、前記スピンドルに設けられる前記ボール溝のそれぞれに対向する位置にスプライン溝が前記長手方向に沿ってそれぞれ設けられ、該スプライン溝は、その底面が前記スプラインナットの両端から中央に向けて前記スピンドルの中心軸からの距離が遠くなるように凹状に形成されることを特徴とする有限直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測物の一軸方向の変位を計測するリニアゲージ、及び所定の範囲内で摺動部材を直動するように案内する有限直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被計測物の一軸方向の変位を計測するリニアゲージとして、ボールスプライン構造が応用されたリニアゲージが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたリニアゲージは、スプライン溝を有するスピンドルと、スピンドルに設けられたスケールと、ボールスプライン軸受構造によりスピンドルが開口端部の開口を介してスライドするようにスピンドルを支持する本体と、本体内に配置されてスケールを読み取るセンサと、スプライン溝に接触する凸部を有して本体の開口端部に設けられたパッキン材とを具備する。リニアゲージを係る構成とすることにより、リニアゲージ内にダスト等の異物侵入が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−223906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リニアゲージでの一軸方向での変位計測を繰り返すことによって、使用中にリニアゲージのスピンドルが全長まで伸びきらずに、途中で引っかかる不具合が発生していた。かかる不具合は、スピンドルの可動長の中間部で連続摺動させた際に、ボールがスリップしてリテーナがずれることによって、スピンドルの全長摺動より先にリテーナが本体の先端側に設けられるストッパーに接触して、スピンドルが全長まで伸びないことがその原因として考えられていた。すなわち、リニアゲージでの変位計測の精度を上げるために、リニアゲージを使用中にスピンドルの摺動に起因するリテーナずれの不具合の発生を防止する必要があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、スピンドルの摺動に起因するリテーナずれの不具合の発生を低減することの可能な、新規かつ改良されたリニアゲージ、及び有限直動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、被計測物の一軸方向の変位を計測するリニアゲージであって、少なくとも2つのボール溝が外周面の互いに対向する位置に長手方向に沿って設けられるスピンドルと、前記ボール溝に接触する複数のボールを回動自在に保持しながら前記スピンドルの前記長手方向に沿って摺動可能に設けられるリテーナと、前記リテーナがその外側に装着された前記スピンドルを前記長手方向に沿って摺動可能に支持するスプラインナットと、を備え、前記スプラインナットの内周面には、前記スピンドルに設けられる前記ボール溝のそれぞれに対向する位置にスプライン溝が前記長手方向に沿ってそれぞれ設けられ、該スプライン溝は、その底面が前記スプラインナットの両端から中央に向けて前記スピンドルの中心軸からの距離が遠くなるように凹状に形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様によれば、スプライン溝の底面がスプラインナットの両端から中央に向けてスピンドルの中心軸からの距離が遠くなるように凹状に形成されることによって、リテーナの可動範囲におけるボールにかかる予圧の不均一の影響を軽減できるので、スピンドルの摺動に起因するリテーナずれの不具合の発生を低減できる。
【0008】
このとき、本発明の一態様では、前記スピンドルの前記外周面には、4つの前記ボール溝が互いに対向する位置に前記長手方向に沿って設けられ、前記スプラインナットの前記内周面には、4つの前記スプライン溝が前記ボール溝に対向する位置に前記長手方向に沿って設けられることとしてもよい。
【0009】
このようにすれば、スピンドルの摺動に伴う安定したボールスプライン動作を確保することができる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記ボールの外径は、前記リテーナの摺動に伴って前記ボールが前記スプラインナットの前記中央に配置された際に、前記スプライン溝に対して所定の大きさ以上の予圧を確保可能な大きさであることとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、ボールによる予圧を高めることによってリテーナのスリップ発生を低減するので、リテーナずれを防止できる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記ボールは、前記リテーナの前記長手方向における端部側には、設けられ、かつ、前記リテーナの前記長手方向の中央側には、設けられていないこととしてもよい。
【0013】
このようにすれば、リテーナの長手方向における中央側でボールに余分な予圧がかからなくなるので、ボール予圧の不均一によるリテーナずれ発生のリスクを低減できる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記ボールは、前記リテーナの前記長手方向の端部側におけるボール溝に対向する位置にそれぞれ2つずつ設けられることとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、ボールスプライン動作の安定したストロークを確保しながら、ボール予圧の不均一によるリテーナずれのリスクを低減できる。
【0016】
本発明の他の態様によれば、有限直動案内装置であって、少なくとも2つのボール溝が外周面の互いに対向する位置に長手方向に沿って設けられるスピンドルと、前記ボール溝に接触する複数のボールを回動自在に保持しながら前記スピンドルの前記長手方向に沿って摺動可能に設けられるリテーナと、前記リテーナがその外側に装着された前記スピンドルを前記長手方向に沿って摺動可能に支持するスプラインナットと、を備え、前記スプラインナットの内周面には、前記スピンドルに設けられる前記ボール溝のそれぞれに対向する位置にスプライン溝が前記長手方向に沿ってそれぞれ設けられ、該スプライン溝は、その底面が前記スプラインナットの両端から中央に向けて前記スピンドルの中心軸からの距離が遠くなるように凹状に形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様によれば、スプライン溝の底面がスプラインナットの両端から中央に向けてスピンドルの中心軸からの距離が遠くなるように凹状に形成されることによって、リテーナの可動範囲におけるボールにかかる予圧の不均一の影響を軽減できるので、スピンドルの摺動に起因するリテーナずれの不具合の発生を低減できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、リニアゲージのスプラインナットにおける対向するボール溝で形成される断面形状を太鼓型にすることで、スピンドルの摺動に起因するリテーナずれの不具合の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るリニアゲージの長手方向における断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリニアゲージに備わるボールスプライン構造を示す斜視図である。
図3図2のC−C断面図である。
図4】(A)は、本発明の一実施形態に係るリニアゲージに備わるスプラインナットに設けられるスプライン溝の長手方向における断面図であり、(B)及び(C)は、従来のリニアゲージに備わるスプラインナットに設けられるスプライン溝の長手方向における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0021】
まず、本発明の一実施形態に係るリニアゲージの構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るリニアゲージの長手方向における断面図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るリニアゲージに備わるボールスプライン構造を示す斜視図であり、図3は、図2のC−C断面図である。
【0022】
本発明の一実施形態に係るリニアゲージ100は、所定の範囲内で摺動部材を直動するように案内する有限直動案内装置であって、軸体となるスピンドル3と、ボールスプライン軸受構造20により摺動部材となるスピンドル3の長手方向(軸方向)にスピンドル3がスライドするように、スピンドル3を支持する本体1とを備える。スピンドル3及びボールスプライン軸受構造20により構成されるボールスプラインの材質は、例えば、鉄、ステンレス、その他の合金、又は、樹脂等から形成される。
【0023】
本体1は、外筒となるスプラインナット11と、当該スプラインナット11の基端側に取り付けられ、スピンドル3を駆動するためのエアシリンダ機構25と、当該エアシリンダ機構25の基端側に取り付けられたカバーケース12とを有し、スプラインナット11にボールスプライン軸受構造20が設けられている。スピンドル3は、本体1のスプラインナット11の開口端部11aを介して、本体1に対して伸縮可能にスライドするようになっている。
【0024】
スピンドル3の先端側には、被計測物の一軸方向の変位を計測する際に、当該被計測物に当接する接触子9が設けられており、スピンドル3の基端側には、スケール4がスピンドル3と一体成型で設けられている。なお、スケール4は、スピンドル3と別体の構成要素として、スピンドル3の基端側にネジ等の接続部材を介して取り付けられる構成としてもよい。スケール4は、カバーケース12内に配置されており、スケール台4aと、スケール台4aに微細なピッチでパターンが刻まれて構成された位置情報とを有している。本体1内のスケール台4aに対面する位置には、センサ5が配置されている。
【0025】
センサ5は、本体1に対して固定されており、例えば、カバーケース12内に設けられる不図示の固定部材に設置されている。センサ5の検出面とスケール台4aの表面とのギャップは、約20μm±5μmに設定されている。
【0026】
このようにセンサ5を設けることによって、スピンドル3がスライドする際に、センサ5が位置情報となるスケール4を読み取るようになっている。センサ5は、フレキシブルプリント基板6及びコネクタ7を介して電気ケーブル8に接続されている。センサ5としては、典型的には磁気式が用いられるが、光学式または静電式等が用いられてもよい。
【0027】
本実施形態では、スケール台4aの軸方向に垂直な断面の形状は、D字状となっている。このため、当該スケール台4aの加工が容易となり、スケール台4aの表面上に位置情報を形成し易くなる。また、本実施形態では、センサ5の検出面とスケール台4aの表面の間の領域、すなわちセンシング領域が実質的にスピンドル3と同軸上に配置されているため、アッベ誤差を少なくし、検出精度を高めることができる。
【0028】
スピンドル3は、図2に示すように、その軸方向に形成されたボール溝3aを有する。本実施形態では、図2及び図3に示すように、ボール溝3aは、スピンドル3の外周面3bの互いに対向する位置に合計4本形成されている。各ボール溝3aのスピンドル3の外周面3b上の周方向での配置の角度間隔は、図3において上の2つについて60〜70°であり、下の2つも同様である。これら4つのボール溝3aは、90°に円周方向に均等な間隔で設けられていてもよい。
【0029】
なお、ボール溝3aは、3本設けられていてもよいし、180度間隔で2本設けられていてもよい。すなわち、スピンドル3の外周面3aに少なくとも2本以上のボール溝3aが長手方向に沿うように設けられていればよい。ボール溝3aが2本または4本のように偶数となる場合、当該ボール溝3aは、図3に示すように、上下対象(または左右対称)となるので、ボール溝3aを形成するときのスピンドル3の加工精度が向上する。特に、ボール溝3aが4本の場合には、スピンドル3の摺動に伴う安定したボールスプライン動作を確保することができる。
【0030】
ボールスプライン軸受構造20は、図2に示すように、複数のボール21と、これらのボール21を回動自在に保持しながら、スピンドル3の長手方向に沿って摺動可能に設けられる筒形状のリテーナ22とを備える。リテーナ22は、スプラインナット11の内周面11dとスピンドル3の外周面3bとの間に摺動可能に設けられている。当該リテーナ22には、スピンドル3のボール溝3aに対応するように軸方向に沿って複数の貫通穴22aが形成されている。これらの貫通穴22a内にボール21が回転自在にそれぞれ配置されている。
【0031】
本実施形態では、図2に示すように、リテーナ22には、ボール21がリテーナ22の長手方向の端部側にのみ設けられ、中央側には、設けられていないことを特徴とする。具体的には、リテーナ22には、ボール21がリテーナ22の長手方向の端部側におけるボール溝3aに対向する位置にそれぞれ2つずつ設けられる。
【0032】
このように、リテーナ22の端部側にのみボール21を設け、複数のボールをリテーナの長手方向に均等に設けられていた従来のものよりもボール21の数を減らすことによって、リテーナ22の長手方向における中央側でボール21による余分な予圧がかからなくなる。このため、ボール21の予圧の不均一によって誘発されるリテーナ22のスリップが発生し難くなるので、リテーナずれ発生のリスクを低減できる。特に、ボール21がリテーナ22の長手方向の端部側におけるボール溝3aに対向する位置にそれぞれ2つずつ設けられることによって、ボールスプライン動作の安定したストロークを確保しながら、ボール21の予圧の不均一によるリテーナ22がずれるリスクを低減できる。
【0033】
また、本実施形態では、ボール21による予圧を高めることによって、リテーナ22のスリップ発生を低減するために、ボール21の外径は、リテーナ22の摺動に伴ってボール21がスプラインナット11の中央に配置された際に、スプライン溝11cに対して所定の大きさ以上の予圧を確保可能な大きさとすることが好ましい。具体的には、従来のボール径が1.0mmとした場合に、ボール径を0.5μm大きくする。このように、ボール径を従来よりも拡大することによって、ボール21による予圧が高まるので、リテーナ22が後述するスプラインナット11の内周面11dに設けられるスプライン溝11cに対して、スリップし難くなる。
【0034】
スプラインナット11の内周面11dには、スピンドル3のボール溝3aに対向する位置にスプライン溝11cが長手方向に沿ってそれぞれ設けられている。本実施形態では、スプライン溝11cは、その底面11c1がスプラインナット11の両端11a、11eから中央に向けて、スピンドル11の中心軸X(図4(A)参照)からの距離が遠くなるように凹状に形成されることを特徴とする。なお、スプライン溝11cの形状の詳細については、後述する。
【0035】
リテーナ22の厚さt1は、ボール21の直径t2より小さく形成されている。具体的には、ボール21の直径t2は、ボール21が貫通穴22a内に配置された状態で、スピンドル3のボール溝3aとスプラインナット11のスプライン溝11cに接触するような値に設定されている。典型的には、リテーナ22の厚さt1は、0.3〜0.7mmであり、ボール21の直径t2は、1mmとされる。また、スプラインナット11の外径は、例えば、8mmとされている。
【0036】
このように、本体1のスプラインナット11の内周面11d側にスプライン溝11cが形成されることにより、少なくともボールスプライン軸受構造20が設けられる部分のスプラインナット11の外径を小さくすることができる。その結果、リニアゲージ100の小型化を実現することができる。
【0037】
図3の点Aで示すように、ボールスプライン軸受構造20のボール21と、スピンドル3のボール溝3aとの接触は、一点接触とされている。また、これらのボール21とスプラインナット11のスプライン溝11cとの接触も一点接触(点B)とされている。つまり、これらのボール21は、それぞれ二点接触とされる。これにより、一般的なボールスプラインの4点接触に比べ、スピンドル3の摺動抵抗を減らすことができる。
【0038】
スピンドル3の摺動抵抗が小さいほど、スピンドル3がスムーズに動くので、例えば、後述するエアシリンダ機構25のエア圧力は、大きいものを必要としない。従って、エアシリンダ機構25の駆動エネルギーを低減でき、また、スピンドル3の先端部側に設けられた接触子9が不図示の被計測物に接触するときの被計測物の変形量を最小限に抑制することができる。
【0039】
このように、リニアゲージ100にボールスプラインが採用されることにより、スピンドル3の軸方向を中心としてトルクがスピンドル3に加えられても、スピンドル3の回転を防止することができる。スピンドル3の回転が防止されることにより、スケール台4aの面と、センサ5の検出面との距離が一定に維持されながら、スピンドル3がスライド可能となる。従って、センサ5の検出精度が低下することがない。
【0040】
スプラインナット11のボールスプライン軸受構造20が設けられる側と反対側には、スピンドル3を駆動するためのエアシリンダ機構25が設けられている。エアシリンダ機構25では、外筒となる筒状のケーシング28内でスピンドル3に固定されたカラー26がケーシング28の長さ方向に移動可能に設けられている。そして、カラー26とケーシング28の基端側に設けられる内側凸部28bとの間には、バネ27を介して接続されて、エア領域29が形成されている。
【0041】
このようにして、本実施形態では、スピンドル3に固定されたカラー26は、エアシリンダ機構25のケーシング28のエア領域29内、すなわち、ケーシング28の先端側に設けられるスプラインナット11の基端部11eとケーシング28の基端側に設けられる内側凸部28bとの間を、バネ27を介して弾性的に移動可能になっている。また、本実施形態では、リニアゲージ100がボールスプラインを採用されることにより、上記同様に、本体1内のスペースに余裕ができるので、従来品のようにエアにより伸縮するベローズ等を設ける代わりに、本体1と一体となったエアシリンダ機構25を設けることができる。これによりリニアゲージ100を小型化することができる。
【0042】
スプラインナット11の開口端部11aには、本体1からのスピンドル3の抜けを防止するために、ニトリルゴム、シリコン樹脂、又はジュラコン(登録商標)POM等から形成されるパッキン材10が装着されている。そして、スプラインナット11とパッキン材10との固定を確実にするために、リング状の固定部材15がパッキン材10の位置よりスピンドル3の先端部側に配置されるようにして設けられている。
【0043】
本実施形態のリニアゲージ100は、接触子9を被計測物に当接させてスピンドル3を一軸方向に変位させることによって、エアシリンダ機構25において、領域28内のエアが減圧されることにより、カラー26がバネ27の弾性力に抗して図1中右側に移動し、これによりスピンドル3が本体1内に後退するように移動する。一方、エア領域28のエアの減圧状態が解除されることにより、バネ27の戻り力によって本体1からスピンドル3が進出して元の位置に戻る。これにより、測定対象物の位置や変位量が自動測定される。
【0044】
次に、本発明の一実施形態に係るリニアゲージに備わるスプラインナットに設けられるスプライン溝の形状について、図面を使用しながら説明する。図4(A)は、本発明の一実施形態に係るリニアゲージに備わるスプラインナットに設けられるスプライン溝の長手方向における断面図であり、図4(B)及び(C)は、従来のリニアゲージに備わるスプラインナットに設けられるスプライン溝の長手方向における断面図である。
【0045】
本発明者は、前述した本発明の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、図4(A)に示すように、スプラインナット11のスプライン溝11cの底面11c1がスプラインナット11の両端11a、11eから中央に向けて、スピンドル3の中心軸Xからの距離が遠くなるように凹状に形成されることによって、スピンドル3の摺動に起因するリテーナ22がずれる不具合の発生を低減できることを見出した。このため、本実施形態では、スプラインナット11のスプライン溝11cの形状が両端11a、11eから中央に向けて、底部11c1が凹状となるように形成している。
【0046】
従来では、図4(B)に示すように、スプラインナット111のスプライン溝111cの底面111c1が先端部111aから基端部11eにかけて水平であるか、図4(C)に示すように、スプラインナット211のスプライン溝211cの底面211c1が両端211a、211eから中央に向けて凸状に形成されていた。このような形状とした場合には、リニアゲージ100を使用する際に、スピンドル3を摺動させると、リテーナ22に回動自在に取り付けられたボール21が滑ることによって、リテーナ22がずれてスピンドル3にひっかかってしまい、スピンドル3が全長まで伸びきらない不具合が発生していた。
【0047】
このため、本実施形態では、スプラインナット11に設けられるスプライン溝11cの底面11c1がスプラインナット11の両端11a、11eから中央に向けてスピンドル3(図1参照)の中心軸Xからの距離が遠くなるように凹状に形成される構成としている。このように、スプライン溝11cの底面11c1を凹状に形成することによって、リテーナ22の可動範囲におけるボール21にかかる予圧の不均一の影響を軽減できるので、スピンドル3の摺動に起因するリテーナ22がずれる不具合の発生を低減できる。
【0048】
また、本実施形態では、リテーナ22の長手方向における端部側にのみボール21を設けて、かつ、リテーナ22の長手方向の中央側には、設けない構成としている。このため、ボール21による予圧の不均一に起因するボール21のスリップによって、リテーナ22がずれる不具合の発生のリスクを低減している。
【0049】
特に、ボール21をリテーナ22の長手方向の端部側におけるボール溝3cに対向する位置にそれぞれ2つずつ設けることによって、ボールスプライン動作の安定したストロークを確保しながら、ボール21の予圧の不均一によるリテーナずれのリスクが低減されるようになる。このため、リニアゲージ100での変位計測の精度が向上するようになる。
【0050】
さらに、本実施形態では、リテーナ22に取り付けられるボール21の外径は、リテーナ22の摺動に伴ってボール21がスプラインナット11の中央に配置された際に、スプライン溝11cに対して所定の大きさ以上の予圧を確保可能な大きさとしている。具体的には、従来のボール径を1.0mmとした場合に、ボール径を0.5μm大きくして、リテーナ22のボール21がスプラインナット11の中央に配置された場合でも、スプライン溝11cの底部11c1にボール21からの予圧がかかるようにしている。
【0051】
すなわち、スプライン溝11cの長手方向における中央側の深さがボール21の外径を拡大した分の大きさの深さとなるように、スプライン溝11cの底面11c1を凹状に形成することによって、リテーナ22の摺動に必要なボール21の予圧を確保した上で過剰な予圧とならないようになる。このため、リテーナ22がスプラインナット11のスプライン溝11cに対して、スリップし難くなるので、リテーナずれの不具合を防止できる。
【0052】
なお、上記のように本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0053】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、リニアゲージの構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。さらに、本発明は、リニアゲージ以外の有限直動案内装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 本体、3 スピンドル、3a ボール溝、3b 外周面、4 スケール、5 センサ、6 フレキシブルプリント基板、7 コネクタ、8 電気ケーブル、10 パッキン材、11 スプラインナット、11a 開口端部(両端)、11c スプライン溝、11c1 底面、11d 内周面、11e 基端部(両端)、15 固定部材、20 ボールスプライン軸受構造、21 ボール、22 リテーナ、22a 貫通穴、25 エアシリンダ機構、26 カラー、27 ばね、28 ケーシング、28b 内側凸部、29 エア領域、100 リニアゲージ(有限直動案内装置)
図1
図2
図3
図4