【発明が解決しようとする課題】
【0004】
睡眠中に気道を確保することを目的とする様々な手法が知られている。
【0005】
例えば、持続性気道陽圧(CPAP)装置は、OSAに対する第1選択の治療としてしばしば使用されている。これらの装置は、気流を僅かに高い圧力で生じさせ、気道内の空気陽圧を維持するように働くシールドマスク(sealed mask)を使用する。この手法は、マスクが着用される必要があり、これはユーザーの不快の原因となる。
【0006】
故に、他の治療手法が考えられていて、これらの手法は、軟口蓋、顎又は舌の位置を変更することを目的としている。
【0007】
舌の位置を制御することを目的とする例は、舌懸架技術として知られている。舌懸架装置は、舌の位置の純粋な機械制御を行う。この装置は、患者に対し外科的に取り付けられる舌アンカーを有する。この装置は、骨アンカーが取り付けられる下顎骨前部の方向に舌を進め、舌根を安定化させるので、舌はもはや自由に戻ることができない。
【0008】
他の手法は、舌の電気治療に基づいている。
【0009】
舌のアブレーション(切除)は、舌の組織を取り除く又は舌の組織の体積を減らすための既知の処置である。組織は、この組織が変性を始める温度に加熱され、より高い組織の密度を持つ堅い瘢痕組織の形成となる。これらの性質が共に有益な効果を持つ、つまりより高い密度は、組織の体積を減らすことになるのに対し、堅い組織は、気道を容易に変形及び崩壊させず、舌が崩壊する可能性を減らすので、OSAの患者を治療するのにこの手法がとられる。
【0010】
例として、米国特許公開番号US2009/0149849号は、アブレーションにより舌組織の性質を変更するための装置を開示している。電極は、患者の体外に置かれる電源に接続される。これら電極は、患者の舌の両側に置かれ、舌に電流を加える。
【0011】
神経筋電気刺激法(NMES)は、可逆的及び断続的な筋肉の収縮並びに緩和を容易にする。この手法は、オトガイ舌筋の筋肉内電気刺激を与え、上気道の開存性を増大させる。
【0012】
他の手法、例えば舌下神経刺激(HGNS)又は直接神経刺激が存在する。しかしながら、これらは、筋肉内刺激よりも高いリスクを持っている。
【0013】
これら異なる手法の問題は、これらの手法が患者に対し異なる種類のインターベンションを各々必要とするので、複数の治療が調べられる場合、患者にとってかなり苦痛となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に従って、独立請求項に記載されるような装置を供給する。
【0015】
本発明の例は、舌組織に電気療法を行うための舌治療装置に使用する電極を提供し、この電極は、永久に固定されるインプラントを舌に
設けるためのものである。
【0016】
本発明は、永久に固定されるインプラントを舌に
設けるため及び電気療法を行うのに使用するための電極を提供する。
【0017】
この電極は故に、この電極を舌に永久に固定することにより、機械的治療だけでなく電気的治療にも使用されることができる。別の電気的治療にも使用されることができる一方、必要とされる外科的インターベンションの量を減らす。永久に埋め込むことにより、アンカーは、最初の電気治療(例えばアブレーション)が終えた後でさえも所定の位置に留まることができることを意味する。従って、長期にわたる電気治療及び長期わたる機械的な舌の再形成(remodeling)に使用されることができる。
【0018】
ある例において、前記電極は、第1の舌挿入形態から第2の配備形態に展開する埋め込み可能で、展開可能なアンカーを有し、この第2の配備形態は、永久に固定されるインプラントを舌に
設けるためである。
【0019】
電極は、折り畳まれた状態で配備されてもよく、一旦配備されると、舌組織に固定するための配備状態に展開されてもよい。埋め込み可能な舌電極は従って、容易に舌筋内に埋め込むことができる。電極が一旦配備されると、電極は展開形式を成すので、埋め込まれた電極は、舌にアンカーを設ける。
【0020】
電極が展開した形式において、電極は、永久に固定されるインプラントを設けるので、従来のインプラントよりも移動することができなくなる。この展開した形式において、(電極が収縮した形式であった)電極を埋め込むのに使用した送達システムは、完全に引っ込められ、所定の位置に留まっていない。故に、全ての外科的処置が終えた後、電極が所定の位置に留まっている。この電極は、電極を埋め込むのに使用した工具から完全に分離可能である。
【0021】
もう1つの例において、電極は導電性ループを有する。これは、縫合処理を用いて埋め込まれることができる。
【0022】
前記電極は好ましくは、電気療法に関する電気信号を受信するための1つ以上の電気接続端末を有する。このように、前記アンカーは、この受信した電気信号を舌組織に送るのに使用される。電極は好ましくは、舌の位置を制御するための機械的な係留ロープに接続するための機械接続端末も持つ。このように、前記アンカーは、例えば舌の動きを制限するために、舌の位置又は運動の機械的制御に使用される。これら電気接続端末及び機械接続端末は同じでもよいし、別でもよい。
【0023】
本発明は、
上述したような電極、
電子ドライバー機構、
前記電極に電力を送出するための、電子ドライバー機構と電極との間に設けられる電気供給ライン、及び
下顎骨前部に取り付けるための骨アンカー
を有する舌治療装置を提供することでもあり、ここで電気供給ラインは、電極を骨アンカーに結合する機械的な係留ロープを有するのか、或いは電極を骨アンカーに結合する他の接続ラインが設けられる。
【0024】
舌治療装置を使用する時、電極は、患者の舌に埋め込まれ、電子ドライバー機構は、電極が周囲の舌組織に電気エネルギーを移すように、電気供給ラインを介して電極に給電してもよい。
【0025】
例として、固定された電極は、幾つかの実施例において、舌再形成システムにおける組織アンカーとして使用される。電極に電気エネルギーを供給する追加の機能は、電極が舌の再形成だけでなく、例えば筋肉内刺激及び/又はアブレーションのような舌組織に電気エネルギーを送ることを含む治療も提供するのに使用されることを意味する。これらは、舌組織に電気療法を施すことを含む。
【0026】
例えば、舌組織のアブレーションは、舌再形成システムの一部又は実際は舌筋刺激システムの一部とする後の使用のための電極のよりしっかりした固定となることができる。
【0027】
骨アンカーは、ねじにより患者の下顎骨前部に固定されてもよい。この骨アンカーは、舌再形成システムの一部として使用されることができ、この骨アンカーは、電子ドライバー機構を取り付けるのに使用されることができる。
【0028】
舌治療装置の電子ドライバー機構は従って、例えば骨アンカーにある、例えば骨アンカーに取り付けられる。このドライバーは次いで、舌を電気刺激するための電力を電極に与える。このドライバーは従って、患者の体内にあり、故にマスク又は他の外部装備に関連する不快を引き起こすことなく、患者により使用されることができる。
【0029】
ある応用において、電子ドライバー機構は、アブレーションを実行するのに適した信号を電極に供給するのに適応する。例えば、抵抗性アブレーション(resistive ablation)にとって、電子ドライバー機構は、10Wから50Wまでの間のエネルギーのパルスを100kHzから500kHzの周波数で送出するように電極に電力を供給する。電子ドライバー機構は、電極が1×10
−3秒から1秒までの間の期間(幅)を持つパルスを送出するように電極に給電するように適応する。アブレーション治療を実行するために、前記電子ドライバーは、電極を治療当たり1から10までのパルスを送出するように電極を駆動させる。これらの信号は、舌組織をアブレーションするのに適している。蓄積されるエネルギーの量が組織の温度及び治療される組織の大きさを決定する。周囲組織のアポトーシス(細胞の死)を補償する温度まで組織を加熱する一方、組織の加熱のし過ぎを避けることが好ましい。例えば、80°までの加熱が適切である。
【0030】
電子ドライバー機構は代わりに、誘電性アブレーション(dielectric ablation)に適した信号を例えば10MHzより高い周波数で供給するのに適応してもよい。
【0031】
もう1つの応用において、電子ドライバー機構は、筋肉内刺激を実行するのに適した信号を電極に供給するように適応する。例えば、電子ドライバー機構は、1から100mAまでの電流を電極に供給し、1から25Hzまでの周波数及び1×10
−6から1×10
−3までのパルス幅を持つ電力のパルスを送出するように電極に給電する。これらの信号は、収縮及び緩和を生じさせるために舌を刺激するのに適している。刺激システムは、例えば睡眠中の患者により使用されることができる。
【0032】
前記ドライバーが舌のアブレーションを実行するとき、このドライバーは(骨アンカーに取り付けるよりむしろ)患者の身体の外側にあってもよい。特に、舌アブレーション治療は一般に、全身麻酔の下で実行される一度限りの処置である。
【0033】
従って、電子ドライバー機構は、2つの別個のユニット、刺激信号を供給する及び骨アンカーに取り付けるためのユニット、並びに外部の(より高電力の)ドライバーからアブレーション信号を供給するためのユニットを有する。しかしながら、1つのドライバーユニットが両方の種類の信号を供給することも可能である。
【0034】
電子ドライバー機構は次いで、舌治療装置が舌組織のアブレーションを提供するのに適応する第1のモード、及び舌治療装置が筋肉内刺激を提供するのに適応する第2のモードで動作するように構成可能である。
【0035】
従って、舌組織のアブレーション及び筋肉内刺激の両方を実施する総合システムが設けられる。同じ舌アンカー電極が各々の治療に使用されることができる。このように、必要とされる外科的インターベンションの量は減少し、アブレーション及び/又は舌刺激療法が提供されることを可能にする。このように、前記装置は、技術的に簡単である及びコスト効率が良いという両方を持つ手法で、舌の永久的若しくは一時的な前進の何れか一方、又はその両方の組み合わせを提供してもよい。1つの装置を用いてアブレーション及び刺激の治療の両方を提供する機能は、電極が舌の性質を変更するためにアブレーションを用いて最初に舌を治療する、及び舌アンカーが刺激治療を実行するのに良好な環境を作るのに使用されるので、有利である。
【0036】
上述したように、骨アンカーは、特に筋肉刺激治療のための前記電子ドライバーを取り付けるために使用される。
【0037】
骨アンカーは加えて、舌再形成システムの一部として使用される。このために、機械的な係留ロープが設けられる。電気供給ライン自身が舌アンカー電極を骨アンカーに結合する機械的な係留ロープとして機能してもよい。代わりに、別個の機械的な係留ロープが設けられてもよい。この係留ロープは、舌が気道を塞ぐのを防ぐために、舌の動きを制限するのに使用される。このように、電極は、物理的な舌操作装置の舌アンカーとして使用されることができる。
【0038】
この種類の治療は、例えば米国特許公開番号US2008/0023012号から知られている。
【0039】
上述したように、埋め込まれた電極に電力を供給する前記ライン自身は、機械的な係留ロープとして使用されることができる。代わりに、電気供給ラインは、電気治療(アブレーション及び/又は刺激)が終わった後、舌アンカーから外され、機械的なケーブルが次いで舌アンカーに固定され、このケーブルが舌操作装置の一部を形成する。
【0040】
舌再形成システムは、舌を下顎の方向に進めるために、前記係留ロープを巻き取るためのスプール部を骨アンカーに有してもよい。加えて、この骨アンカーは、係留ロープの巻き取りが完了した後、骨アンカーをロックするためのロック機能を有してもよい。
【0041】
これは、前記装置(骨アンカー及び舌アンカー)を装着するために、1回だけ外科的処置を受けなければならず、次いで、さらなる外科的インターベンションを行うことなく舌を治療する異なる可能な方法を実施するために前記装置を使用することが可能であるという点で、ユーザーに利点を提供する。
【0042】
再形成及び刺激のために共用の舌アンカー電極の使用は特に関心がある。これは、同じシステムを使用して、2つの可能な治療を提供する。舌のアブレーション及び刺激の可能性も、舌のアブレーションが舌における電極の改善された固定を生じさせるという点で関心がある。
【0043】
しかしながら、このシステムは刺激のみに使用されてもよい。
【0044】
舌治療装置は、マルチポイントの装置を提供するために複数の電極を有してもよい。このように、RFアブレータのような従来のニードルを用いた場合であるように、小さな領域を加熱するよりむしろ、アブレーションのための組織の大きな体積を円滑に加熱することも可能である。
【0045】
舌アンカー電極は、例えば圧力センサのような筋肉の活動を検知するためのセンサを有してもよい。このセンサは、OSA事象が起こりそうであるかを示す情報を電子ドライバー機構に供給してもよい。電子ドライバー機構は、それに応じて刺激信号を生成してもよい。これは、要求されるとき、前記治療(特に筋肉の刺激)が実行されることを可能にするためのフィードバック信号を供給する。
【0046】
前記圧力センサは、後方への圧力が増大していると判断される場合、又はしきい値よりも大きい場合、電子刺激が引き起こされるような位置を測定するように動作する。
【0047】
電極は超弾性金属合金でもよい。これは、電極の便利な送出を可能にする。例えば電極は、この電極が小さな直径の送出管内に挿入され得るように折り畳まれる。
【0048】
舌治療装置の電極は、係留ロープの材料からなる導電性ループでもよい。例えば、このループは、導電性繊維の材料でもよい。このループは、舌組織に曝されるループの導電性の露出部を持ち、ループの残りは絶縁されるように設計されてもよい。
【0049】
本発明の実施例は、
永久に固定されるインプラントを舌に設けるために、この舌に電極を埋め込むステップ、及び
電子ドライバー機構から、この電子ドライバー機構と前記電極との間に設けられる電気供給ラインに沿って、前記電極に治療信号を供給するステップ、
を有する舌治療方法も提供する。
【0050】
電極の埋め込みは、
埋め込みツールを使用して、第1の舌挿入形態で電極を舌に埋め込むステップ、
前記電極を第2の配備形態に展開し、それにより永久に固定されるインプラントを舌に提供するステップ、及び
前記展開した電極を舌に残すために、前記埋め込みツールを取り除くステップ
を有する。