特許第6616797号(P6616797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6616797緊急搬送手配装置、緊急搬送手配システムおよび緊急搬送手配方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616797
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】緊急搬送手配装置、緊急搬送手配システムおよび緊急搬送手配方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/137 20060101AFI20191125BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20191125BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20191125BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20191125BHJP
   G08G 1/0965 20060101ALI20191125BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   G08G1/137
   G08B25/08 A
   G01C21/34
   G08G1/09 V
   G08G1/0965
   H04M11/00 301
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-91306(P2017-91306)
(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公開番号】特開2018-190142(P2018-190142A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(72)【発明者】
【氏名】北村 史郎
(72)【発明者】
【氏名】日下 公義
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 茂憲
【審査官】 上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−092930(JP,A)
【文献】 特開2001−325689(JP,A)
【文献】 特開2013−200154(JP,A)
【文献】 特開2002−251433(JP,A)
【文献】 特開平11−120494(JP,A)
【文献】 特開平06−251286(JP,A)
【文献】 特開2009−071669(JP,A)
【文献】 特開2010−249681(JP,A)
【文献】 特開平10−302188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
G01C 21/00−21/36
23/00−25/00
G08B 23/00−31/00
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関への緊急搬送を要する患者からの搬送要求を受け付ける要求受付部と、
前記要求受付部により前記搬送要求が受け付けられた患者の位置情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部により取得された患者情報に基づき、患者の緊急搬送先の医療機関を決定する医療機関決定部と、
予め患者を医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の一般車両を登録する車両登録部と、
前記車両登録部に登録された複数の一般車両の位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記要求受付部により前記搬送要求が受け付けられると、前記患者情報取得部により取得された患者情報と前記車両情報取得部により取得された車両情報とに基づき、前記車両登録部に登録された複数の一般車両のうち前記患者から所定範囲内に位置する一般車両を前記臨時緊急車両に認定する車両認定部と、
前記車両認定部により前記臨時緊急車両に認定された一般車両に搭載された車載端末、および該一般車両のユーザにより携帯された携帯端末に対し、前記患者情報取得部により取得された患者情報および前記医療機関決定部により決定された医療機関の情報とともに、前記医療機関への患者の搬送指令を出力する出力部と、を備えることを特徴とする緊急搬送手配装置。
【請求項2】
請求項1に記載の緊急搬送手配装置において、
前記臨時緊急車両は、自動運転で走行可能な自動運転車両を含み、前記車両登録部は、前記自動運転車両を前記臨時緊急車両として登録することを特徴とする緊急搬送手配装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の緊急搬送手配装置において、
前記車両認定部は、前記患者情報取得部により取得された患者情報に基づいて、前記臨時緊急車両に認定する一般車両のタイプを変更することを特徴とする緊急搬送手配装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の緊急搬送手配装置において、
前記出力部は、前記車両認定部により認定された一般車両が前記患者から所定距離以上離れているとき、該一般車両から患者に至るまでの径路情報を併せて出力することを特徴とする緊急搬送手配装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の緊急搬送手配装置において、
前記車両認定部は、前記患者から前記所定範囲内に位置する一般車両が複数あるとき、これら複数の一般車両を前記臨時緊急車両に認定し、
前記出力部は、前記車両認定部により認定された複数の一般車両に搭載された、または該一般車両のユーザにより携帯された車両側装置に対し、前記患者情報と前記搬送指令とを出力することを特徴とする緊急搬送手配装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の緊急搬送手配装置において、
前記出力部は、さらに信号機の切換を行う交通制御装置を含む交通システムに対し、前記車両情報取得部により取得された車両情報と、該車両情報を有する一般車両から前記医療機関決定部により決定された医療機関に至るまでの径路情報とを出力することを特徴とする緊急搬送手配装置。
【請求項7】
予め患者を医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の一般車両に搭載された車載端末、および該一般車両のユーザにより携帯された携帯端末からなる車両側装置と、患者により携帯された患者側装置と、前記車両側装置および前記患者側装置と通信可能に設けられた緊急搬送手配装置と、を備える緊急搬送手配システムであって、
前記車両側装置は、一般車両の位置を検出する車両位置検出部を有し、
前記患者側装置は、医療機関への患者の搬送要求を指令する搬送要求指令部と、前記搬送要求が指令された患者の位置を検出する患者位置検出部と、を有し、
前記緊急搬送手配装置は、
前記搬送要求指令部より指令された搬送要求を受け付ける要求受付部と、
前記患者位置検出部により検出された患者の位置情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、
前記患者情報取得部により取得された患者情報に基づき、患者の緊急搬送先の医療機関を決定する医療機関決定部と、
予め前記臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された前記複数の一般車両を登録する車両登録部と、
前記車両登録部に登録された複数の一般車両の位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記要求受付部により前記搬送要求が受け付けられると、前記患者情報取得部により取得された患者情報と前記車両情報取得部により取得された車両情報とに基づき、前記車両登録部に登録された複数の一般車両のうち前記患者から所定範囲内に位置する一般車両を前記臨時緊急車両に認定する車両認定部と、
前記車両認定部により前記臨時緊急車両に認定された一般車両に搭載された車載端末、および該一般車両のユーザにより携帯された携帯端末に対し、前記患者情報取得部により取得された患者情報および前記医療機関決定部により決定された医療機関の情報とともに、前記医療機関への患者の搬送指令を出力する出力部と、を備えることを特徴とする緊急搬送手配システム。
【請求項8】
請求項7に記載の緊急搬送手配システムにおいて、
前記患者側装置は、患者の健康状態を計測可能なセンサを備え、前記搬送要求指令部は、前記センサによる計測結果に基づいて、自動的に医療機関への患者の搬送要求を指令することを特徴とする緊急搬送手配システム。
【請求項9】
緊急搬送手配装置が、
医療機関への緊急搬送を要する患者からの搬送要求を受け付けるステップと、
前記搬送要求が受け付けられた患者の位置情報を含む患者情報を取得するステップと、
取得された患者情報に基づき、患者を緊急搬送する医療機関を決定するステップと、
予め患者を医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の一般車両を登録するステップと、
登録された複数の一般車両の位置情報を含む車両情報を取得するステップと、
前記搬送要求が受け付けられると、前記取得された患者情報と前記取得された車両情報とに基づき、前記登録された複数の一般車両のうち前記患者から所定範囲内に位置する一般車両を前記臨時緊急車両に認定するステップと、
前記臨時緊急車両に認定された一般車両に搭載された車載端末、および該一般車両のユーザにより携帯された携帯端末に対し、前記取得された患者情報および前記決定された医療機関の情報とともに、前記医療機関への患者の搬送指令を出力するステップと、を実行することを特徴とする緊急搬送手配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関へ患者を搬送するための臨時の緊急車両を手配する緊急搬送手配装置、緊急搬送手配システムおよび緊急搬送手配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関へ緊急搬送される患者数の増加によって救急車の出動回数が増加し、それに伴い救急車の数が不足して、患者を医療機関まで搬送するまでに要する時間が長くなる傾向にある。この点に関し、従来、管轄内の緊急車両(救急車等)の不足に応じて他の管轄に緊急車両の応援を要請するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−134490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置のように他の管轄に緊急車両の応援を要請したとしても、所定時間内に患者のもとに直行できる緊急車両は限られており、緊急車両の不足に対し十分に対処することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である緊急搬送手配装置は、医療機関への緊急搬送を要する患者からの搬送要求を受け付ける要求受付部と、要求受付部により搬送要求が受け付けられた患者の位置情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、患者情報取得部により取得された患者情報に基づき、患者の緊急搬送先の医療機関を決定する医療機関決定部と、予め患者を医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の一般車両を登録する車両登録部と、車両登録部に登録された複数の一般車両の位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、要求受付部により搬送要求が受け付けられると、患者情報取得部により取得された患者情報と車両情報取得部により取得された車両情報とに基づき、車両登録部に登録された複数の一般車両のうち患者から所定範囲内に位置する一般車両を臨時緊急車両に認定する車両認定部と、車両認定部により臨時緊急車両に認定された一般車両に搭載された車載端末、および一般車両のユーザにより携帯された携帯端末に対し、患者情報取得部により取得された患者情報および医療機関決定部により決定された医療機関の情報とともに、医療機関への患者の搬送指令を出力する出力部と、を備える。
【0006】
本発明の他の態様は、予め患者を所定の医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の一般車両に搭載された車載端末、および一般車両のユーザにより携帯された携帯端末からなる車両側装置と、患者により携帯された患者側装置と、車両側装置および患者側装置と通信可能に設けられた緊急搬送手配装置と、を備える緊急搬送手配システムである。車両側装置は、一般車両の位置を検出する車両位置検出部を有し、患者側装置は、医療機関への患者の搬送要求を指令する搬送要求指令部と、搬送要求が指令された患者の位置を検出する患者位置検出部と、を有し、緊急搬送手配装置は、搬送要求指令部より指令された搬送要求を受け付ける要求受付部と、患者位置検出部により検出された患者の位置情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部と、患者情報取得部により取得された患者情報に基づき、患者の緊急搬送先の医療機関を決定する医療機関決定部と、予め臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の一般車両を登録する車両登録部と、車両登録部に登録された複数の一般車両の位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、要求受付部により搬送要求が受け付けられると、患者情報取得部により取得された患者情報と車両情報取得部により取得された車両情報とに基づき、車両登録部に登録された複数の一般車両のうち患者から所定範囲内に位置する一般車両を臨時緊急車両に認定する車両認定部と、車両認定部により臨時緊急車両に認定された一般車両に搭載された車載端末、および一般車両のユーザにより携帯された携帯端末に対し、患者情報取得部により取得された患者情報および医療機関決定部により決定された医療機関の情報とともに、医療機関への患者の搬送指令を出力する出力部と、を備える。
【0007】
本発明のさらに他の態様である緊急搬送手配方法は、緊急搬送手配装置が、医療機関への緊急搬送を要する患者からの搬送要求を受け付けるステップと、搬送要求が受け付けられた患者の位置情報を含む患者情報を取得するステップと、取得された患者情報に基づき、患者を緊急搬送する医療機関を決定するステップと、予め患者を医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の一般車両を登録するステップと、登録された複数の一般車両の位置情報を含む車両情報を取得するステップと、搬送要求が受け付けられると、取得された患者情報と取得された車両情報とに基づき、登録された複数の一般車両のうち患者から所定範囲内に位置する一般車両を臨時緊急車両に認定するステップと、臨時緊急車両に認定された一般車両に搭載された車載端末、および該一般車両のユーザにより携帯された携帯端末に対し、取得された患者情報および決定された医療機関の情報とともに、医療機関への患者の搬送指令を出力するステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予め登録された一般車両の中から患者の位置等を考慮して臨時緊急車両を認定し、臨時緊急車両に医療機関への患者の搬送指令を出力するので、緊急車両の不足に対し十分に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る緊急搬送手配システムの全体構成を概略的に示す図。
図2図1の車載端末の概略構成を示すブロック図。
図3図1の緊急搬送手配装置の概略構成を示すブロック図。
図4図3の緊急搬送手配装置の動作の一例を説明する図。
図5図3の緊急搬送手配装置で実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図5を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る緊急搬送手配装置は、例えば路上等で具合が悪くなって病院等の医療機関ないし医療施設での手当が必要になった人(患者)を、救急車等の専用の緊急車両を用いる代わりに一般車両を用いて医療機関に搬送するように構成される。すなわち、本実施形態では、救急車等の不足に対処するため、一般車両が臨時の緊急車両として用いられる。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る緊急搬送手配システム100の全体構成を概略的に示す図である。図1に示すように、緊急搬送手配システム100は、予め臨時緊急車両として登録された複数の車両1にそれぞれ搭載された車載端末2と、患者3が携帯する携帯端末4と、医療機関5に設けられた病院用端末6と、緊急搬送手配装置(サーバ)10とを備える。これら車載端末2、携帯端末4、病院用端末6および緊急搬送手配装置10は、無線通信網を含むネットワーク7に接続される。
【0012】
車両1は、自動運転機能を有する自動運転車両であり、車両1には、セダン、ミニバン、ワンボックスカー、ワゴン、トラック等の種々のタイプの四輪車両が含まれる。このうち、例えば患者3を寝かせた状態で乗車させるときには、ワンボックスカーやワゴンを用いることが好ましい。
【0013】
図2は、車載端末2の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、車載端末2は、ECU(電子制御ユニット)20と、それぞれECU20に接続された無線部21と、センサ群22と、ナビゲーション装置23と、アクチュエータ24と、報知器25とを有する。
【0014】
無線部21は、携帯電話網や無線LAN等に代表される無線通信網を介し、緊急搬送手配装置10(図1)と無線通信可能に構成される。無線部21は、例えばWi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の近接無線通信技術を適用可能な近接無線通信部(図示せず)を含むように構成されてもよい。無線部21は、車両の起動スイッチ(イグニッションスイッチ)のオンオフ状態、現在位置、車速等の情報、すなわち車両情報を緊急搬送手配装置10に送信し、患者の搬送指令、患者の位置情報、医療機関の位置情報等を緊急搬送手配装置10から受信することができる。
【0015】
センサ群22は、車両の周辺状況を検出する複数の検出機器、例えば障害物検出器221とカメラ222とを含んで構成される。センサ群22は、車両の周辺状況だけでなく、車両の走行状態に応じた情報を検出する各種検出機器、例えば車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等も含む。さらにセンサ群22は、着座センサ等、患者の乗車の有無を検知する乗車検知部も含む。
【0016】
ナビゲーション装置23は、GPS衛星から信号を受信して車両の現在位置を測定するGPS受信部(GPSセンサ)231と、地図情報を記憶した地図データベース232と、運転席の前方に設けられ、地図上の車両の位置情報を表示する表示部233と、ドライバに各種情報を音声で報知するスピーカ234と、目標径路を演算する演算部235とを有する。地図データベース232に記憶される地図情報には、道路の位置や形状等の情報の他、病院などの各種施設の位置や形状等の情報が含まれる。地図情報は、無線部21を介して外部(緊急搬送手配装置10等)から取得することもできる。
【0017】
演算部235は、GPSセンサ231によって測定された車両の現在位置と地図データベース232の地図情報とに基づいて、現在位置から目標地点(目的地)に至るまでの目標経路を演算し、車両の現在位置情報とともに目標経路情報をECU20に出力する。さらに演算部235は、車両の現在位置と目標経路とを表示部233に表示させるとともに、目標経路情報をスピーカ234から音声で出力させる。なお、表示部233は、例えばタッチパネルにより構成され、経路探索に関する各種情報を入力する入力部としても機能する。目標地点はタッチパネルを介して入力することができ、さらには無線部21を介して緊急搬送手配装置10から取得することもできる。
【0018】
アクチュエータ24は、ECU20から出力される制御信号により駆動し、走る、曲がる、止まるといった車両1の基本動作を含む走行動作を実現する。アクチュエータ24は、走行駆動力を発生する駆動アクチュエータと、制動力を発生する制動アクチュエータと、操舵力を発生する操舵アクチュエータとを含む。駆動アクチュエータは、車両が電気自動車両やハイブリッド車両である場合、例えば走行モータにより構成される。なお、車両がエンジンで駆動する車両である場合、駆動アクチュエータは例えばスロットル開度を制御するスロットルアクチュエータにより構成される。制動アクチュエータは、例えばブレーキディスクに油圧を供給する油圧機器により構成される。操舵アクチュエータは、例えば電動パワーステアリングのステアリングトルクを制御するステアリングモータにより構成される。
【0019】
報知器25は、車両が臨時緊急車両であることを外部に報知するためのものであり、救急車のサイレンや回転灯に相当する。報知器25は、例えば警音器(クラクション)、ライト、ウィンカー等、車両状態を外部に報知することが可能な各種機器により構成することができる。
【0020】
ECU20は、プロセッサやメモリ等、すなわちCPU,ROM,RAMその他の周辺回路を有する演算処理装置を含んで構成される。ECU20は、機能的構成として、運転モード設定部201と、走行計画作成部202と、走行制御部203とを有する。
【0021】
運転モード設定部201は、ドライバにより操作される図示しないモード切換スイッチの操作に応じて手動運転モードおよび自動運転モードのいずれかの運転モードを設定する。手動運転モードは、ドライバ自身がアクセルペダル、ブレーキペダルペダル、ステアリングハンドル等を操作し、その操作に応じてアクチュエータ24を駆動して車両走行するモードである。自動運転モードは、センサ群22等からの信号に基づいてECU20(走行制御部203)がアクチュエータ24に自動的に制御信号を出力し、車両1を目標地点に向けて自動走行させるモードである。自動運転モードは、ドライバが乗車した有人自動運転モードと、ドライバが乗車しない無人自動運転モードとに大別される。
【0022】
走行計画作成部202は、自動運転モードが設定されたとき、ナビゲーション装置23により取得した目標地点までの目標経路を含む走行計画を作成する。目標径路を、無線部21を介して緊急搬送手配装置10から取得することもできる。走行計画には、目標経路の他、目標走行速度や目標走行加速度等の情報も含まれる。走行計画作成部202は、センサ群22により患者の乗車が検知されるまでは、患者の位置を目標地点として走行計画を作成する。患者の乗車が検知された後は、所定の医療機関を目標地点として走行計画を作成する。
【0023】
走行制御部203は、運転モードに応じた態様でアクチュエータ24に制御信号を出力し、車両を走行させる。例えば自動運転モードのときは、走行計画作成部202で作成した走行計画に基づいてアクチュエータ24に制御信号を出力し、車両を自動運転で目標地点に向け目標径路に沿って走行させる。このとき、センサ群22からの信号に基づき車両周囲の障害物の有無を確認し、障害物との接触を回避するようにアクチュエータ24に制御信号を出力して車両の走行動作を制御する。なお、手動運転モードのときは、センサ群22(アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ等の操作検知部)で検出された走行指令に基づいてアクチュエータ24に制御信号を出力し、車両を手動運転で走行させる。
【0024】
図示は省略するが、ECU20は、無線部21を介して入力された指令により、車両の起動スイッチに自動的に制御信号を出力し、起動スイッチのオンにより車両を自動的に起動(例えばイグニッションスイッチをオン)することができる。車両起動後に、走行制御部203がアクチュエータ24に制御信号を出力することで、車両を無人で走行、すなわち無人自動運転モードで走行させることができる。臨時緊急車両として車両が走行するときは、走行制御部203は報知器25に制御信号を出力し、報知器25を作動させる。
【0025】
図1に示す携帯端末4は、患者3により携帯して使用されるスマートフォンやタブレット端末、携帯電話、さらには各種ウェアラブル端末等により構成され、無線部41を介して公衆無線通信網に接続可能である。携帯端末4は、GPS受信部(GPSセンサ)42を有し、GPSセンサ42により患者の現在位置情報を得ることができる。さらに携帯端末4は、医療機関への搬送要求を指令する入力部43を有する。入力部43は、押圧操作可能な物理的スイッチ等により構成される。入力部43が操作されると、無線部41を介して緊急搬送手配装置10に、患者3の識別IDと、搬送要求と、GPSセンサ42により得られた患者(携帯端末4)の位置情報とが送信される。
【0026】
緊急搬送手配装置10は、患者3からの搬送要求と患者3の位置情報とを受信すると、複数の医療機関5の中から患者3の位置情報を含む患者情報に基づいて適切な医療機関5を選択し、選択した医療機関5の端末(病院用端末6)に患者3の受け入れ要求を送信する。病院用端末6は、受信した患者情報に基づいて患者3を受け入れ可能か否かを判定し、受け入れ可能と判定すると、患者3の予約を受け付けるとともに、その判定結果を緊急搬送手配装置10に送信する。一方、病院用端末6は、受け入れ不可能と判定すると、その判定結果を緊急搬送手配装置10に送信する。緊急搬送手配装置10は、病院用端末6から受け入れ不可能の判定結果を受信すると、別の医療機関を選択し、選択した医療機関5の病院用端末に同様に受け入れ要求を送信する。
【0027】
緊急搬送手配装置10は、種々の機能を有するサーバである。なお、以下では、緊急搬送手配装置10を単一のサーバとして説明するが、機能毎に別々のサーバから構成される分散サーバであってもよく、またクラウドサーバと呼ばれる分散型の(仮想サーバを含む)サーバで実現されてもよい。
【0028】
図3は、緊急搬送手配装置10の概略構成を示すブロック図である。緊急搬送手配装置10は、プロセッサやメモリ等、すなわちCPU,ROM,RAMその他の周辺回路を有する演算処理装置を含んで構成され、無線部11を介して車載端末2、携帯端末4、および病院用端末6と通信可能である。図3に示すように、緊急搬送手配装置10は、機能的構成として、記憶部12と、要求受付部13と、患者情報取得部14と、医療機関決定部15と、車両登録部16と、車両情報取得部17と、車両認定部18と、出力部19とを有する。
【0029】
記憶部12は、患者の識別ID毎に患者の年齢、性別、既往歴等の患者固有の情報(患者情報)と、患者を緊急搬送可能な医療機関の住所、診療時間、休診日、診療科目等の医療機関情報と、医療機関の周辺の道路地図や医療機関の駐車場等を含む地図情報とを記憶するデータベースとして構成される。
【0030】
要求受付部13は、携帯端末4との通信により、携帯端末4の入力部43を介して入力された搬送要求、すなわち医療機関への緊急搬送を要する患者からの搬送要求を受け付ける。
【0031】
患者情報取得部14は、携帯端末4との通信により、患者の識別IDとGPSセンサ231により検知された患者(携帯端末4)の位置情報とを取得する。
【0032】
医療機関決定部15は、患者情報取得部14により取得された患者の識別IDおよび位置情報と、予め記憶部12に記憶された患者情報および医療機関情報とに基づき、病院用端末6と通信を行って、患者の緊急搬送先の医療機関を決定する。例えば患者情報に対応する緊急搬送先として複数の候補がある場合には、医療機関決定部15は、患者に最も近い医療機関を選択するとともに、選択した医療機関の病院用端末6に患者の受け入れ要求を送信する。この受け入れ要求に対し、医療機関決定部15が病院用端末6から受け入れ可能の判定結果を受信すると、その医療機関を緊急搬送先の医療機関に決定する。医療機関決定部15は、受け入れ不可能の判定結果を受信したときは、別の医療機関に受け入れ要求を送信し、緊急搬送先の医療機関が決定されるまで同様の処理を繰り返す。
【0033】
車両登録部16は、予め患者を所定の医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の車両と、それらの車両情報とを登録する。車両は、例えば自動運転機能を有する車両であり、車両情報には、車両ユーザの氏名、住所、連絡先等の車両ユーザの情報の他、セダンやワンボックス等の車両のタイプを識別する情報が含まれる。なお、自動運転機能を有しない車両を登録してもよい。
【0034】
車両情報取得部17は、要求受付部13が搬送要求を受け付けると、車両登録部16に登録された各車両の車載端末2に位置情報送信指令を出力する。位置情報送信指令を受信した車載端末2は、GPSセンサ231により検知された車両の位置情報を送信する。これにより車両情報取得部17は、車載端末2との通信により、車両登録部16に登録された各車両の位置情報を取得する。
【0035】
車両認定部18は、患者情報取得部14により取得された患者の位置情報(患者情報の一部)と、車両情報取得部17により取得された車両の位置情報(車両情報の一部)とに基づき、車両登録部16に登録された複数の車両の中から、患者から第1所定範囲内に位置する車両を検索する。
【0036】
図4は、患者3と、患者3の周囲の車両1(1a〜1f)と、医療機関5の配置の一例を示す図である。図4に示すように、第1所定範囲AR1は、例えば患者3の位置を中心とした半径が第1所定距離R1内の範囲である。なお、患者3の位置に到着するまでの時間が所定時間以内となるように、道路の混雑状況等を考慮して第1所定範囲AR1を設定することもできる。図4では、第1所定範囲AR1内に複数の車両1a〜1dが位置している。車両認定部18は、これら複数の車両1a〜1dを検索し、それぞれを臨時緊急車両に認定する。
【0037】
出力部19(図3)は、車両認定部18により臨時緊急車両に認定された単一または複数の車両の車載端末2に対し、無線部11を介して、患者情報取得部14で取得された患者の位置情報および医療機関決定部15で決定された医療機関の位置情報とともに、患者をその医療機関へ搬送させる搬送指令を出力(送信)する。搬送指令は、車両を患者のもとに走行させる指令と、患者が乗車した車両を医療機関まで走行させる指令とを含む。なお、緊急搬送手配装置10に目標地点までの目標経路を設定する機能を持たせ、出力部19を通じて車載端末2に対して目標経路を出力(送信)することも可能である。
【0038】
ここで、図4に示すように、第1所定距離R1よりも短い第2所定距離R2を設定し、第1所定範囲AR1内のうち、患者3から遠い第2所定距離R2以上の範囲を第2所定範囲AR2と定義する。出力部19は、記憶部12に記憶された道路情報に基づいて、第2所定範囲AR2内に位置する車両1a,1dから患者3までの目標径路を演算し、その径路情報を併せて該当する車両1a,1dに出力する。なお、車両から患者までの距離の長短に拘らず常に目標径路を演算し、径路情報を各車両1a〜1dに出力するようにしてもよい。さらに出力部19は、患者の位置から搬送先の医療機関に至るまでの目標径路を演算し、径路情報を併せて各車両1a〜1dに出力する。
【0039】
出力部19は、信号機の切換を行う交通制御装置を含む交通システムに対し信号を出力することもできる。具体的には、車両認定部18により臨時緊急車両として認定された車両の位置情報と、その車両から、医療機関決定部15により患者の搬送先として決定された医療機関に至るまでの径路情報とを出力する。この出力信号に応じて交通システムが車両の信号待ち時間を短縮するように信号機の切換を制御することで、車両を医療機関に迅速に到着させることができる。なお、車両から患者の位置に至るまでの径路情報を交通システムに出力し、この径路情報に基づいて交通システムが車両の信号待ち時間を短縮するように信号機の切換を制御することもでき、これにより車両を患者のもとに迅速に到着させることができる。
【0040】
図5は、予めメモリに記憶されたプログラムに従い、緊急搬送手配装置10のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば携帯端末4から出力された搬送要求を緊急搬送手配装置10が受信すると開始される。まず、ステップS1で、要求受付部13での処理により、受信した搬送要求を受け付ける。次いでステップS2で、患者情報取得部14での処理により、患者の識別IDと、GPSセンサ42により検知された患者の位置情報とを含む患者情報を取得する。
【0041】
次いでステップS3で、医療機関決定部15での処理により、患者の識別IDに対応する患者情報と、患者の位置情報と、医療機関情報とに基づき、患者を迅速に受け入れ可能な医療機関を決定する。次いでステップS4で、車両情報取得部17での処理により、GPSセンサ231により検知された車両の位置情報を含む車両情報を取得する。次いで、ステップS5で、車両認定部18での処理により、車両登録部16に登録された各車両につき、第1所定範囲AR1内に位置するか否かを判定する。ステップS5で肯定されるとステップS6に進み、否定されると処理を終了する。ステップS6では、第1所定範囲AR1内に位置すると判定された車両を臨時緊急車両に認定する。
【0042】
次いで、ステップS7で、第1所定範囲AR1内に位置すると判定された車両がさらに第2所定範囲AR2内に位置するか否かを判定する。ステップS7で肯定されるとステップS8に進み、出力部19での処理により、車両から患者に至るまでの目標径路を演算し、第2所定範囲AR2内の車両に対し、患者の位置情報および径路情報と、医療機関の位置情報とを出力するとともに、患者を医療機関へ搬送させる搬送指令を出力する。一方、ステップS7で否定されるとステップS9に進み、第2所定範囲AR2内の車両に対し、患者の位置情報および医療機関の位置情報と搬送指令とを出力する。なお、車両が患者を目標地点として走行するときは医療機関の位置情報を出力せず、車両に患者が乗車した後に、当該車両に医療機関の位置情報を出力するようにしてもよい。ステップS8,ステップS9で、車両から医療機関に至るまでの目標径路を演算し、医療機関の位置情報とともに医療機関に至るまでの径路情報を出力してもよい。
【0043】
次いで、ステップS10で、出力部19での処理により、車両情報取得部17により取得された車両情報と、その車両情報を有する車両から患者の搬送先である医療機関に至るまでの径路情報とを交通システムに対し出力する。なお、臨時緊急車両として複数の車両が認定されたとき、患者が車両に乗車した後は、車両情報として、患者が乗車した車両の車両情報(車両の位置情報)のみを出力する。すなわち、患者が乗車した後は、当該車両のみが医療機関へ向かう臨時緊急車両として動作するので、その車両の位置情報を交通システムに対し出力する。
【0044】
本実施形態に係る緊急搬送手配システム100の動作をまとめると以下のようになる。なお、以下では、無人自動運転モードで車両が走行する場合を例にして説明する。例えば図4に示すように、車両登録部16に登録された車両1a〜1fが患者3の周囲に配置された状態において、患者が携帯端末4の入力部43を操作し、携帯端末4から搬送要求が出力されると、緊急搬送手配装置10は、その搬送要求を受け付け、患者の位置情報を含む患者情報に基づいて患者3の搬送先の医療機関5を決定する(ステップS1〜ステップS3)。さらに緊急搬送手配装置10は、予め車両登録部16に登録された車両1a〜1fの位置情報を取得し、車両1a〜1fが患者を中心とした第1所定範囲AR1内に位置するか否かを判定し、第1所定範囲AR1内の車両1a〜1dを臨時緊急車両に認定する(ステップS4〜ステップS6)。
【0045】
その結果、臨時緊急車両1a〜1dの車載端末2には、患者3を医療機関5に搬送すべき搬送指令が出力される(ステップS8,ステップS9)。これにより車載端末2は、患者3の目標地点として走行計画を作成し、車両1a〜1dは報知器25を作動させながら、図4の矢印に示すように、自動運転により目標地点まで走行する。このとき、患者3から遠い第2所定範囲AR2内の車両1a,1dには、患者3に至るまでの径路情報が併せて出力される(ステップS8)。これにより車載端末2は、目標地点が遠い場合であっても、目標地点までの的確な走行計画を容易に作成することができる。
【0046】
複数の車両1a〜1dは、報知器25を作動させながら患者3の近傍まで来て停車する。このため、患者3は、臨時緊急車両1a〜1dを容易に認識することができる。患者3が複数の車両の1台(例えば車両1d)に乗車すると、以降、患者の乗車が検知されたその車両1dのみが臨時緊急車両となる。患者の乗車は、例えば着座センサ(センサ群22)からの信号により検知することができる。GPSセンサ42,231により検出された車両の位置と患者の位置との差が所定値以内になったか否かを判定することにより、患者の乗車を検知することもできる。
【0047】
患者が乗車した車両1dの車載端末2は、医療機関5を目標地点とする走行計画を作成し、その走行計画に従いアクチュエータ24に制御信号を出力し、車両1dの走行動作を制御する。さらに車載端末2は、報知器25にも制御信号を出力する。これにより車両1dは、報知器25を作動させながら図4の矢印に示すように自動運転により医療機関5まで走行する。このとき、交通システムには、車両1dの位置情報と車両1dから医療機関5への径路情報とが出力され(ステップS10)、その出力信号に応じて交通システムは信号機の切換を制御する。これにより、車両1dは短時間で医療機関5に到着することができる。
【0048】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)緊急搬送手配装置10は、医療機関への緊急搬送を要する患者からの搬送要求を受け付ける要求受付部13と、要求受付部13により搬送要求が受け付けられた患者の位置情報を含む患者情報を取得する患者情報取得部14と、患者情報取得部14により取得された患者情報に基づき、患者の緊急搬送先の医療機関を決定する医療機関決定部15と、予め患者を医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の車両を登録する車両登録部16と、車両登録部16に登録された複数の車両の位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部17と、要求受付部13により搬送要求が受け付けられると、患者情報取得部14により取得された患者情報と車両情報取得部17により取得された車両情報とに基づき、車両登録部16に登録された複数の車両1a〜1fのうち患者から第1所定範囲AR1内に位置する車両1a〜1dを臨時緊急車両に認定する車両認定部18と、車両認定部18により臨時緊急車両に認定された車両1a〜1dに搭載された車載端末2に対し、患者情報取得部14により取得された患者情報および医療機関決定部15により決定された医療機関の情報とともに、医療機関への患者の搬送指令を出力する出力部19とを備える(図3図4)。
【0049】
これにより、予め車両登録部16に登録された一般車両を、患者を医療機関まで搬送する臨時緊急車両として用いることができる。このため、救急車等の緊急車両の不足に対し十分に対処することができる。この場合、患者から所定範囲内に位置する車両を臨時緊急車両として用いるので、臨時緊急車両は患者のもとに短時間で直行することができ、携帯端末4から搬送要求が出力されてから医療機関へ患者が搬送されるまでの搬送時間を短縮することができる。
【0050】
(2)出力部19は、車両認定部18により認定された車両が患者から所定距離R2以上離れているとき(図4の車両1a,1d)、その車両1a,1dから患者に至るまでの径路情報を併せて出力する(ステップS8)。このとき、車両は径路情報に従って走行計画を作成し、自動運転で走行するので、臨時緊急車両が患者から遠い場合であっても、車両は適確な径路に沿って走行することができ、患者のもとに迅速に到着することができる。
【0051】
(3)車両認定部18は、患者を中心とした第1所定範囲AR1内に位置する車両が複数あるとき(図4の車両1a〜1d)、これら複数の車両1a〜1dを臨時緊急車両として認定する(ステップS6)。出力部19は、車両認定部18により認定された複数の車両1a〜1dに搭載された車載端末2に対し、患者情報と搬送指令とを出力する(ステップS8)。このように複数の車両1a〜1dに搬送指令を出力することで、患者は臨時緊急車両を容易に認識することができる。また、複数の車両1a〜1dの車両タイプが異なるとき、患者は所望のタイプの車両を選択して乗車することができる。
【0052】
(4)出力部19は、さらに信号機の切換を行う交通制御装置を含む交通システムに対し、車両情報取得部17により取得された車両情報と、この車両情報を有する車両から医療機関決定部15により決定された医療機関に至るまでの径路情報とを出力する(ステップS10)。これにより交通システムは、車両の信号待ち時間を短縮するように信号機の切換を制御することができ、車両は効率よく短時間で医療機関に到着することができる。
【0053】
(5)緊急搬送手配システム100は、予め患者を医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の車両1a〜1fに搭載された車載端末2と、患者により携帯された携帯端末4と、車載端末2および携帯端末4と通信可能に設けられた上述の緊急搬送手配装置10とを備える。車載端末2は、車両1の位置を検出するGPSセンサ231を有し、携帯端末4は、医療機関への患者の搬送要求を入力する入力部43と、搬送要求を入力した患者の位置を検出するGPSセンサ42とを有する(図1図2)。このように車載端末2と携帯端末4と緊急搬送手配装置10とにより緊急搬送手配システム100を構成することで、患者が携帯端末4の入力部43を操作するだけで、臨時緊急車両が患者のもとに直行して患者を医療機関まで搬送することができ、患者の搬送時間を短縮することができる。
【0054】
(6)緊急搬送手配方法は、緊急搬送手配装置が、医療機関への緊急搬送を要する患者からの搬送要求を受け付け(ステップS1)、搬送要求が受け付けられた患者の位置情報を含む患者情報を取得し(ステップS2)、取得された患者情報に基づき、患者を緊急搬送する医療機関を決定し(ステップS3)、予め患者を医療機関へ緊急搬送する臨時緊急車両として使用することが車両ユーザにより許可された複数の車両を登録し、登録された複数の車両の位置情報を含む車両情報を取得し(ステップS4)、搬送要求が受け付けられると、取得された患者情報と取得された車両情報とに基づき、登録された複数の車両のうち患者から所定範囲AR1内に位置する車両を臨時緊急車両に認定し(ステップS6)、臨時緊急車両に認定された車両に搭載された車載端末2に対し、患者情報および医療機関の情報とともに、医療機関への患者の搬送指令を出力することを実行する図5)。これにより一般車両を、患者を医療機関まで搬送する臨時緊急車両として用いることができ、救急車等の専用の緊急車両の不足に対処することができる。
【0055】
上記実施形態は、種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、患者の搬送指令を受信した臨時緊急車両が自動運転で患者のもとに直行するようにしたが、患者が乗車するまで臨時緊急車両が駐車場等で待機するとともに、臨時緊急車両は医療機関のみを目標地点として走行計画を作成するようにしてもよい。この場合、患者自身が周囲の臨時緊急車両を探すことになるが、臨時緊急車両が報知器25を作動しながら駐車場で待機していれば、患者は容易に臨時緊急車両を発見することができる。
【0056】
上記実施形態では、緊急搬送手配装置10、緊急搬送手配方法および緊急搬送手配システム100を、無人自動運転モードで走行する車両に適用する例を説明したが、有人自動運転モードや手動運転モードで走行する車両に対しても同様に適用することができる。例えば自動運転モードで走行する車両と手動運転モードで走行する車両の双方に同時に適用することができる。なお、臨時緊急車両として認定された車両が無人自動運転モードで走行するとき、その情報を車両ユーザの携帯端末に送信することが好ましい。
【0057】
緊急搬送手配装置10、緊急搬送手配方法および緊急搬送手配システム100を、手動運転モードで走行する車両に適用する場合、例えば出力部19が、車両認定部18により臨時緊急車両として認定された車両のユーザが携帯する携帯端末等に搬送要求を送信するとともに、当該車両の車載端末2に患者の位置情報と医療機関の位置情報等を送信し、これらの位置情報に基づいて車両のナビゲーション装置23あるいは車両ユーザの携帯端末に目的地を設定するようにしてもよい。これにより車両ユーザは、例えば自宅にいる場合であっても、あるいは車両を運転中であっても、臨時緊急搬送の要求の有無を認識することができ、車両を手動運転して患者のもとへ向かい、患者を医療機関へと搬送することができる。有人自動運転モード時や手動運転モード時には、車両ユーザが乗車しているため、臨時緊急車両として認定された自車への患者の乗車を介助することができる。
【0058】
このように、出力部が搬送指令等を出力する対象である車両側装置は、臨時緊急車両に搭載された車載端末2に限らず、車両ユーザにより携帯されたスマートフォン等の携帯端末であってもよい。すなわち車載端末2のGPSセンサ231でなく、車両ユーザにより携帯された携帯端末のGPSセンサ等により、車両の位置を検出するようにしてもよく、車両位置検出部の構成は上述したものに限らない。
【0059】
上記実施形態では、予め車両登録部16に登録されて患者から所定範囲AR1内に位置する車両を臨時緊急車両に認定するようにしたが、センサ群22で車両状態を検出し、車両の位置だけでなく車両状態に応じて臨時緊急車両の認定を行うようにしてもよい。例えば自動運転モードで走行する車両の場合には、イグニッションスイッチのオフ等により車両が起動停止状態であることを条件として、臨時緊急車両を認定するようにしてもよい。一方、手動運転モードで走行する車両の場合には、イグニッションスイッチがオンであれば、患者のもとに即座に直行することが可能であるため、イグニッションスイッチのオンを、臨時緊急車両に認定するための条件としてもよい。
【0060】
上記実施形態では、携帯端末4の入力部43の操作により搬送要求を指令するようにしたが、患者の健康状態(体温、血圧、心拍、脈拍、脳波等)を計測可能なセンサを設け、センサにより所定の健康状態が計測されたときに、入力部43の操作に拘らず自動的に搬送要求を指令するようにしてもよい。より詳しくは患者の意識レベルを計測可能なセンサを設け、センサにより計測された意識レベルが所定値以下になったときに自動的に搬送要求を指令するようにしてもよい。したがって、搬送要求指令部の構成は入力部43に限らない。この場合、意識レベルに応じて臨時緊急車両に認定する車両のタイプを変更してもよい。すなわち、意識レベルが低いときは、患者を寝かせたまま搬送することが好ましいので、この場合には車両認定部18が、ワンボックスカーやワゴン等を臨時緊急車両に認定するようにしてもよい。センサにより計測された健康状態の状態に基づいて、医療機関決定部が搬送先の医療機関を決定するようにしてもよい。
【0061】
上記実施形態では、GPSセンサ42により携帯端末4を携帯する患者の位置を検出するようにしたが、患者位置検出部の構成はこれに限らない。すなわち、医療機関への患者の搬送要求を指令する搬送要求指令部と、搬送要求が指令された患者の位置を検出する患者位置検出部とを有するのであれば、患者側装置の構成はいかなるものでもよい。上記実施形態では、予め車両登録部16に登録されて患者から所定範囲AR1内に位置する車両が複数あるとき、複数の車両を臨時緊急車両に認定するようにしたが、例えば患者のもとに最も早く到着することが可能な車両等、単一の車両を臨時緊急車両に認定するようにしてもよい。すなわち、少なくとも車両の位置情報と患者の位置情報とに基づき臨時緊急車両を認定するのであれば、車両認定部の構成は上述したものに限らない。
【0062】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
2 車載端末、4 携帯端末、10 緊急搬送手配装置、13 要求受付部、14 患者情報取得部、15 医療機関決定部、16 車両登録部、17 車両情報取得部、18 車両認定部、19 出力部、42 GPSセンサ、43 入力部、100 緊急搬送手配システム、231 GPSセンサ
図1
図2
図3
図4
図5