(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1には、操作用ロープ2が示されている。この操作用ロープ2は、金属材料から形成されている。この操作用ロープ2は、長尺である。この操作用ロープ2が所定長さに切断され、医療機器の部材として用いられる。例えば、その基端部が医療機器の手元操作部に連結され、その先端部が処置部に連結される。基端部に加えられた押し力、引き力及びトルクが、操作用ロープ2を介して先端部に伝わる。これにより、処置部が処置動作を起こす。
【0018】
図2は、この操作用ロープ2の拡大断面図である。
図2には、操作用ロープ2の長さ方向に対して垂直な断面が示されている。この操作用ロープ2は、1本のコア素線4と、6本の側素線6とを有している。具体的には、この操作用ロープ2は、第一側素線6a、第二側素線6b、第三側素線6c、第四側素線6d、第五側素線6e及び第六側素線6fを有している。
図2において矢印Dで示されているのは、操作用ロープ2の直径である。一般的な直径Dは、0.3mmから5mmである。
【0019】
それぞれの側素線6は、コア素線4の周りを螺旋状に巻かれている。この実施形態では、
図1の左側から右側に向かって反時計回りに、側素線6が撚られている。この操作用ロープ2は、いわゆる層撚り構造を有する。この実施形態では、操作用ロープ2は、「1+6」の層撚り構造を有している。6本の側素線(6a−6f)は、この層撚り構造における最外層を形成している。
図1において符号αで示されているのは、側素線6の撚り角度(絶対値)である。
【0020】
図3は、
図1の操作用ロープ2の側素線6の一部が示された斜視図である。
図3には、
図1に示された状態の操作用ロープ2からほぐされた側素線6が示されている。この側素線6は、型付けされている。従って、
図3に示されるように、側素線6は、ほぐされた状態において実質的に螺旋形状を呈している。
図3における左右方向は、螺旋の軸方向である。
【0021】
図3には、複数のダイスマーク8が示されている。それぞれのダイスマーク8は、伸線加工によって側素線6が製作されるときに形成される。このダイスマーク8は、伸線用ダイスに起因した線模様である。ダイスマーク8は、側素線6の表面に存在している。ダイスマーク8は、伸線方向に延在している。
図3では、ダイスマーク8は、側素線6の全長にわたって形成されている。ダイスマーク8が、側素線6の一部に形成されることもある。側素線6にダイスマーク8が形成されないこともある。
【0022】
図4は、
図3の側素線6が示された拡大右側面図である。換言すれば、
図4では、側素線6の螺旋の軸方向から、この側素線6が見られている。
図4から明らかなように、この側素線6の輪郭形状は、長円である。この操作用ロープ2では、側素線6とコア素線4との間の摩擦力が大きい。従ってこの操作用ロープ2では、回転時のエネルギーロスが小さい。この操作用ロープ2は、トルク伝達性に優れる。
【0023】
長円には、曲線のみを有するものと、曲線及び直線を有するものとが存在する。いずれの場合も、長円は、内向きに凸な部分を有さない。さらに、長円は、頂点を有さない。長円の概念には、楕円が含まれる。幾何学的に完全な楕円でない図形であって、楕円に近いものも、長円の概念に含まれる。理想的な長円は、楕円である。
【0024】
図4では、側素線6が台10の上に置かれている。この台10の上面12は、水平である。この台10は硬質材料から形成されており、側素線6の質量では変形しない。この台10の上面12の上に置かれた側素線6は、自重により転動し、
図4に示されるように長軸が水平となる姿勢を呈する。
図4において、符号L1で示されているのは長軸の長さ(すなわち長径)であり、符号L2で示されているのは短軸の長さ(すなわち短径)である。短軸は、長軸と直交する。長径L1は、水平方向に沿って測定される。短径L2は、鉛直方向に沿って測定される。
【0025】
トルク伝達性の観点から、長円の偏平率(L1/L2)は1.01以上が好ましく、1.02以上が特に好ましい。側素線6とコア素線4との間の隙間が抑制されるとの観点から、偏平率(L1/L2)は1.10以下が好ましく、1.08以下がより好ましく、1.05以下が特に好ましい。
【0026】
図5は、
図4の側素線6の一部が示された拡大正面図である。
図3及び5から明らかなように、ダイスマーク8は、螺旋状である。このことは、側素線6がネジレを有することを示している。ネジレは、意図的に形成されている。この実施形態では、
図5の左側から右側に向かって反時計回りに、ネジレが形成されている。
図5において符号βで示されているのは、ネジレ角度(絶対値)である。
【0027】
側素線6(すなわち最外層)がネジレを有するので、この操作用ロープ2の捻回剛性は高い。この操作用ロープ2では、トルクの伝達時に、捻り溜まりが生じにくい。この操作用ロープ2は、トルク伝達性に優れる。この操作用ロープ2は、医療機器に適している。
【0028】
トルク伝達性の観点から、ネジレ角度βは5°(degree)以上が好ましく、8°以上がより好ましく、10°以上が特に好ましい。製作時に側素線6の断線が生じにくいとの観点から、ネジレ角度βは30°以下が好ましく、25°以下がより好ましく、15°以下が特に好ましい。
【0029】
トルク伝達性の観点から、ネジレ角度βが撚り角度αと同一か、又は大きいことが好ましい。
【0030】
この実施形態では、操作用ロープ2は、同じ方向のネジレを有する6本の側素線(6a−6f)を有する。この操作用ロープ2は、容易に製造されうる。
【0031】
操作用ロープ2が、互いのネジレ方向が異なる側素線6を有してもよい。例えば、第一側素線6a、第三側素線6c及び第五側素線6eが反時計回りのネジレを有し、第二側素線6b、第四側素線6d及び第六側素線6fが時計回りのネジレを有してもよい。この操作用ロープ2では、反時計回りのネジレを有する側素線6の残留応力と、時計回りのネジレを有する側素線6の残留応力とが相殺されうる。反時計回りのネジレを有する側素線(6a、6c、6e)と、時計回りのネジレを有する側素線(6b、6d、6f)とが、交互に配置されることが好ましい。
【0032】
この実施形態では、撚りの方向は反時計回りであり、全ての側素線6のネジレの方向も反時計回りである。この操作用ロープ2は、容易に製造されうる。撚りの方向がネジレの方向と異なっても良い。
【0033】
長径L1の型付け率Pは、101%以上が好ましい。型付け率Pが101%以上である操作用ロープ2では、側素線6とこれに隣接する側素線6との間の摩擦力が大きい。一方、この操作用ロープ2では、側素線6とコア素線4との間の摩擦力は小さい。この操作用ロープ2では、回転時のエネルギーロスが小さい。従ってこの操作用ロープ2は、トルク伝達性に優れる。しかも、型付け率Pが101%以上である操作用ロープ2は、しなやかである。トルク伝達性及びしなやかさの観点から、型付け率Pは102%以上が特に好ましい。側素線6とこれに隣接する側素線6との間の隙間が抑制されるとの観点から、型付け率Pは110%以下が好ましく、105%以下が特に好ましい。型付け率Pは、操作用ロープ2の直径Dに対する長径L1の比率である。型付け率Pは、下記の数式によって算出される。
P = (L1 / D) * 100
【0034】
この実施形態では、コア素線4は、ネジレを有している。この操作用ロープ2は、トルク伝達性に優れる。コア素線4のネジレの方向は、側素線6のネジレの方向と同一である。コア素線4のネジレの方向が、側素線6のネジレの方向と異なってもよい。コア素線4がネジレを有さなくてもよい。
【0035】
トルク伝達性の観点から、コア素線4のネジレ角度は5°以上が好ましく、8°以上がより好ましく、10°以上が特に好ましい。製作時にコア素線4の断線が生じにくいとの観点から、ネジレ角度は30°以下が好ましく、25°以下がより好ましく、15°以下が特に好ましい。コア素線4のネジレ角度は、側素線6のネジレ角度βと同様の方法で測定されうる。
【0036】
前述の通り、この操作用ロープ2は金属材料から形成されている。好ましい金属材料として、ステンレス鋼及びニッケル−チタン合金が挙げられる。好ましいステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼である。オーステナイト系ステンレス鋼の具体例として、SUS304及びSUS316が例示される。
【0037】
側素線6の材質が、コア素線4の材質と同一であってもよく、異なってもよい。側素線6の引張強さは2000MPa以上が好ましく、2500MPa以上がより好ましく、2800MPa以上が特に好ましい。コア素線4の引張強さは2000MPa以上が好ましく、2500MPa以上がより好ましく、2800MPa以上が特に好ましい。
【0038】
操作用ロープ2の初期伸び率は、0.04%以上0.10%以下が好ましい。初期伸び率が0.04%以上である操作用ロープ2は、しなやかである。この操作用ロープ2は、容易に湾曲しうる。この観点から、初期伸び率は0.05%以上がより好ましく、0.06%以上が特に好ましい。初期伸び率が0.10%以下である操作用ロープ2は、強度に優れる。この観点から、初期伸び率は0.09%以下がより好ましく、0.08%以下が特に好ましい。
【0039】
初期伸び率は、「JIS Z 2241(2011)」の規定に規定された引張試験によって測定される。この引張試験において、破断荷重の1.0%である荷重が操作用ロープ2にかかったときの伸び率が、初期伸び率である。
【0040】
しなやかさの観点から、操作用ロープ2の撚り角度αは5°以上が好ましく、8°以上がより好ましく、10°以上が特に好ましい。操作用ロープ2の製造の容易の観点から、撚り角度αは30°以下が好ましく、25°以下がより好ましく、15°以下が特に好ましい。
【0041】
図6は、
図1の操作用ロープ2の真直度の測定方法が示された説明図である。この測定では、操作用ロープ2の上端近傍が治具14でチャックされる。操作用ロープ2のうちチャックされていない部分は、フリー部16と称される。フリー部16に働く力は、重力のみである。
図6において、点P1で示されているのはフリー部16の上端であり、点P2で示されているのはフリー部16の下端である。上端P1から下端P2までの距離は、2.00mである。
図6における二点鎖線は、鉛直方向に延びている。
図6において符号Sで示されているのは、下端P2と二点鎖線との距離(mm)である。この距離Sは、操作用ロープ2の下端P2の、鉛直線からのずれである。この距離Sは、真直度である。距離Sが小さい操作用ロープ2は、真直性に優れている。真直性に劣る操作用ロープ2は、この操作用ロープ2の湾曲に起因して、距離Sが大きな値となる。
【0042】
この操作用ロープ2の真直度Sは、3.0mm以下が好ましい。真直度Sが3.0mm以下である操作用ロープ2は、トルク伝達性に優れる。この観点から、真直度Sは2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が特に好ましい。理想的には、真直度Sは、ゼロである。
【0043】
この操作用ロープ2の製造に適した装置として、チューブラータイプ撚り線機が挙げられる。チューブラータイプ撚り線機が用いられた製造方法では、あらかじめ任意の角度βのネジレが付与された6本の側素線6が準備される。さらに、コア素線4も準備される。このコア素線4は、ネジレを有してもよく、有さなくてもよい。側素線6及びコア素線4が、チューブラータイプ撚り線機に供給される。このチューブラータイプ撚り線機にて、コア素線4の周りに側素線6が螺旋状に巻かれることで、撚り線が得られる。この撚り線が、リールに巻き取られる。この撚り線に、熱処理が施される。熱処理は、撚り線がリールに巻かれた状態でなされる。この熱処理により、リールに巻かれた操作用ロープ2が得られる。この操作用ロープ2は、長尺である。この操作用ロープ2とリールとの組み合わせは、使い勝手に優れる。
【0044】
チューブラータイプ撚り線機が用いられた製造方法では、撚り角度αの影響を受けることなく、ネジレ角度βの調整が可能である。
【0045】
操作用ロープ2の製造に、バンチャータイプ撚り線機が用いられてもよい。このバンチャータイプ撚り線機では、撚りと同時に側素線6にネジレが付与される。従って、バンチャータイプ撚り線機に、ネジレを有さない側素線6が供給されうる。あらかじめ任意の角度のネジレが付与された側素線6が、バンチャータイプ撚り線機に供給されてもよい。ネジレを有する側素線6に、バンチャータイプ撚り線機によってさらにネジレが付与されうる。
【0046】
図7は、本発明の他の実施形態に係る医療機器の操作用ロープ18が示された断面図である。図示されていないが、この操作用ロープ18は、
図1及び2に示された操作用ロープ2と同様、長尺である。
図7には、操作用ロープ18の長さ方向に対して垂直な断面が示されている。
【0047】
この操作用ロープ18は、コアストランド20と、9本の側素線22とを有している。コアストランド20は、3本のコア素線24が撚られることで形成されている。図示されていないが、それぞれの側素線22は、コアストランド20の周りを螺旋状に巻かれている。この操作用ロープ18は、いわゆる層撚り構造を有する。この実施形態では、操作用ロープ18は、「3+9」の層撚り構造を有している。9本の側素線22は、層撚り構造における最外層を形成している。
図7において矢印Dで示されているのは、操作用ロープ18の直径である。一般的な直径Dは、0.3mmから5mmである。
【0048】
操作用ロープ18からほぐされた側素線22は、
図2及び3に示された側素線6と同様、実質的に螺旋形状を呈している。この側素線22の輪郭形状は、長円である。この操作用ロープ18は、トルク伝達性に優れる。長円の偏平率は、
図2−4に示された側素線6のそれと同等である。
【0049】
側素線22は、
図2及び3に示された側素線6と同様、ネジレを有する。この操作用ロープ18は、トルク伝達性に優れる。ネジレの角度及び方向は、
図2及び3に示された側素線6のそれらと同等である。ネジレ角度は、撚り角度と同一か又は大きいことが好ましい。
【0050】
側素線22の長径の型付け率は、
図2及び3に示された側素線6のそれと同等である。
【0051】
コア素線24は、ネジレを有している。ネジレの方向及び角度は、
図2に示されたコア素線4のそれらと同等である。コア素線24が、ネジレを有さなくてもよい。
【0052】
この操作用ロープ18の材質、初期伸び率、撚り角度及び真直度は、
図1及び2に示された操作用ロープ2のそれらと同等である。
【0053】
この操作用ロープ18の製造には、チューブラータイプ撚り線機及びバンチャータイプ撚り線機が用いられうる。この撚り線機によって得られた撚り線がリールに巻き取られ、この撚り線に熱処理が施される。
【0054】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る医療機器の操作用ロープ26が示された断面図である。図示されていないが、この操作用ロープ26は、
図1及び2に示された操作用ロープ2と同様、長尺である。
図8には、操作用ロープ26の長さ方向に対して垂直な断面が示されている。
【0055】
この操作用ロープ26は、コアストランド28と、6本の大径側素線30と、6本の小径側素線32とを有している。コアストランド28は、1本のコア素線34と、6本の中間素線36とを有している。図示されていないが、それぞれの中間素線36は、コア素線34の周りを螺旋状に巻かれている。このコアストランド28は、「1+6」の構造を有している。
【0056】
図示されていないが、それぞれの大径側素線30は、コアストランド28の周りを螺旋状に巻かれている。それぞれの小径側素線32は、コアストランド28の周りを螺旋状に巻かれている。大径側素線30と小径側素線32とは、周方向に沿って交互に配置されている。この操作用ロープ26は、いわゆる層撚り構造を有する。この実施形態では、操作用ロープ26は、「1+6+12」の層撚り構造を有している。6本の大径側素線30及び6本の小径側素線32は、層撚り構造における最外層を形成している。
図8において矢印Dで示されているのは、操作用ロープ26の直径である。一般的な直径Dは、0.3mmから5mmである。
【0057】
操作用ロープ26からほぐされた大径側素線30は、
図2及び3に示された側素線6と同様、実質的に螺旋形状を呈している。この大径側素線30の輪郭形状は、長円である。操作用ロープ26からほぐされた小径側素線32は、
図2及び3に示された側素線6と同様、実質的に螺旋形状を呈している。この小径側素線32の輪郭形状は、長円である。この操作用ロープ26は、トルク伝達性に優れる。長円の偏平率は、
図2−4に示された側素線6のそれと同等である。
【0058】
大径側素線30は、
図2及び3に示された側素線6と同様、ネジレを有する。小径側素線32は、
図2及び3に示された側素線6と同様、ネジレを有する。この操作用ロープ26は、トルク伝達性に優れる。ネジレの角度及び方向は、
図2及び3に示された側素線6のそれらと同等である。ネジレ角度は、撚り角度と同一か又は大きいことが好ましい。
【0059】
大径側素線30の長径の型付け率は、
図2−4に示された側素線6のそれと同等である。小径側素線32の長径の型付け率は、
図2−4に示された側素線6のそれと同等である。
【0060】
コア素線34は、ネジレを有している。ネジレの方向及び角度は、
図2に示されたコア素線のそれらと同等である。コア素線34が、ネジレを有さなくてもよい。
【0061】
中間素線36は、ネジレを有している。ネジレの方向及び角度は、
図2及び3に示された側素線6のそれらと同等である。中間素線36が、ネジレを有さなくてもよい。
【0062】
この操作用ロープ26の材質、初期伸び率、撚り角度及び真直度は、
図1に示された操作用ロープ2のそれらと同等である。
【0063】
この操作用ロープ26の製造には、チューブラータイプ撚り線機及びバンチャータイプ撚り線機が用いられうる。この撚り線機によって得られた撚り線がリールに巻き取られ、この撚り線に熱処理が施される。
【0064】
以上、「1+6」の層撚り構造を有する操作用ロープ2、「3+9」の層撚り構造を有する操作用ロープ18、及び「1+6+12」の層撚り構造を有する操作用ロープ26が説明された。本発明に係る操作用ロープの層撚り構造は、これらには限られない。種々の層撚り構造が、操作用ロープに採用されうる。いずれの操作用ロープにおいても、最外層に該当する側素線は、コアに螺旋状に撚られ、かつネジレを有する。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0066】
[実施例1]
その材質がSUS304である鋼材に伸線加工を施して、直径が0.25mmであるコア素線を得た。このコア素線の引張強さは、2800MPaであった。その材質がSUS304である鋼材に伸線加工及びネジレ加工を施して、直径が0.23mmである側素線を得た。この側素線のネジレ角度βは、15°であった。この側素線の引張強さは、2800MPaであった。撚り線機に、1本のコア素線と6本の側素線とを供給し、
図1及び2に示された構造を有する撚り線を得た。この撚り線の撚りピッチは、5.5mmであった。この撚り線を、500℃の温度における連続熱処理に供して真直矯正し、実施例1の操作用ロープを得た。
【0067】
[比較例1]
側素線にネジレ加工を施さず、側素線の形状を円とした他は実施例1と同様にして、比較例1の操作用ロープを得た。
【0068】
[実施例2−5]
真直矯正の条件を変更した他は実施例1と同様にして、実施例2−5の操作用ロープを得た。
【0069】
[比較例2]
側素線にネジレ加工を施さず、撚り線機に供給する前に、コア素線にネジレ加工を施した他は実施例1と同様にして、比較例2の操作用ロープを得た。
【0070】
[実施例6及び7]
撚り線機に供給する前に、コア素線にネジレ加工を施した他は実施例1と同様にして、実施例6及び7の操作用ロープを得た。
【0071】
[実施例8−10]
側素線の形状を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8−10の操作用ロープを得た。
【0072】
[実施例11−14及び比較例3]
側素線のネジレ角度βを下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例11−14及び比較例3の操作用ロープを得た。
【0073】
[比較例2]
側素線にネジレ加工を施さず、コア素線にネジレ加工を施した他は実施例1と同様にして、比較例1の操作用ロープを得た。
【0074】
[トルク伝達性の評価]
トルク伝達性は、操作用ロープの基端側を回転させたときの、基端側の回転角と先端側の回転角との差によって評価される。
図9に示されるように、二重スパイラル部38、第一ストレート部40及び第二ストレート部42を有する硬質パイプ44が準備される。二重スパイラル部38の直径は、200mmである。この硬質パイプ44に、操作用ロープ2が通される。この操作用ロープ2の基端側46に、
図9において矢印A1で示される方向に、回転力が負荷される。これにより、操作用ロープ2の先端側48は、矢印A2で示されるように回転する。基端側46の回転角と先端側48の回転角とが、同時に測定される。
【0075】
図10は、
図9の方法で測定されたトルク伝達性の結果が示されたグラフである。
図10では、操作用ロープの基端側の回転角と、同時点の先端側の回転角とが、対応付けて表されている。換言すれば、
図10は、操作用ロープに対する入力回転角と出力回転角との関係を示すグラフである。グラフの中の破線は、全測定角度範囲(入力回転角が0°から約720°までの範囲)において基端側の回転角と先端側の回転角との差がゼロであることを示す直線である。測定対象である操作用ロープの基端側の回転角と先端側の回転角との差は、図中の破線と測定値曲線との縦軸方向の差として表される。入力回転角の0°から720°の範囲において測定された回転角度差のうちの、最大角度差が、トルク伝達性と相関する値である。各ロープの最大角度差が、比較例1の最大角度差が100とされたときの指数として、下記表1−3に示されている。この指数が小さい操作用ロープは、トルク伝達性に優れる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
表1−3に示されるように、各実施例の操作用ロープは、トルク伝達性に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明かである。