(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1はこの発明に実施の形態である成膜装置の概略構成を示す説明図である。同図に示すように、基板積載ステージ3A及び3B(第1及び第2の基板載置部)はそれぞれ上面に複数の基板10を載置している。なお、
図1及び以降で示す
図2〜
図17及び
図19にはXYZ直交座標系を示している。
【0018】
基板積載ステージ3A及び3Bはそれぞれ真空吸着による吸着機構31を有し、この吸着機構31により、載置した複数の基板10それぞれの下面全体を、基板積載ステージ3A及び3Bそれぞれの上面上に吸着することができる。さらに、基板積載ステージ3A及び3Bはそれぞれ吸着機構31の下方に加熱機構32が設けられており、この加熱機構32により上面に載置した複数の基板10に対する加熱処理を実行することができる。
【0019】
以下、基板積載ステージ3A及び3Bを総称し「基板積載ステージ3」と称して説明する場合がある。
【0020】
成膜処理実行部として機能する薄膜形成ノズル1(ミスト噴射部)は噴射面1Sに設けられた噴射口から下方に原料ミストMTを噴射することにより、噴射領域R1(成膜処理領域)内の基板積載ステージ3の上面に載置された基板10上に薄膜を成膜する成膜処理を実行する。この際、噴射面1Sと基板10との距離であるミスト噴射距離D1は1mm以上30mm以下に設定される。なお、噴射領域R1の周辺は図示しないチャンバ等で覆われているのが一般的である。
【0021】
なお、成膜処理及びその前後の期間で基板積載ステージ3の加熱機構32(主要加熱機構)による主要加熱処理が併せて実行される。本実施の形態では、加熱機構32による加熱処理時における加熱温度として400℃程度としている。
【0022】
なお、原料ミストMTは原料溶液をミスト化して得られるミストであり、原料ミストMTを大気中に噴射することができる。
【0023】
基板積載ステージ3A及び3Bは後述する基板移載機構8(基板載置部移載装置)によって搬送される。基板移載機構8は基板積載ステージ3A及び3Bを移動させて噴射領域R1内を速度V0(成膜時移動速度)で順次通過させる搬送動作を実行する。
【0024】
上記搬送動作は、基板積載ステージ3A及び3Bのうち、載置した全ての基板10が噴射領域R1を通過した基板載置部である一方の基板載置ステージ(例えば、基板積載ステージ3A)を、巡回速度で他方の基板載置ステージ(例えば、基板積載ステージ3B)の後方に巡回配置させる巡回搬送処理を含んでいる。
【0025】
なお、薄膜形成ノズル1の上流側に設けられた基板投入部5は成膜処理前の基板10を上部に載置しており、後述する吸着把持器4Aによる基板投入動作M5によって、基板投入部5上の基板10が基板積載ステージ3の上面上に配置される。
【0026】
また、薄膜形成ノズル1の下流側に基板取出部6が設けられており、後述する吸着把持器4B(第2の把持器)による基板取出動作M6によって、基板積載ステージ3上の成膜処理後の基板10が基板取出部6上に配置される。
【0027】
なお、本明細書において、薄膜形成ノズル1に対して、基板積載ステージ3A及び3Bが噴射領域R1を通過する際の搬送方向(+X方向)側を下流側とし、搬送方向と反対方向となる反搬送方向(−X方向)側を上流側としている。
【0028】
図2は
図1のA−A断面における基板移載機構8及びその周辺を模式的に示す断面図である。支持板85上に設けられた基板移載機構8は、互いに独立した動作する一方移載機構8L及び他方移載機構8Rの組み合わせにより構成され、他方移載機構8Rは基板積載ステージ3Aの搬送用に設けられ、一方移載機構8Lは基板積載ステージ3Bの搬送用に設けられる。なお、支持板85は基板投入部5による搬送動作が必要なXY平面で規定される搬送平面領域を少なくとも含んだ平面形状を呈している。
【0029】
一方移載機構8Lは昇降機構81及び横行機構82により構成される。横行機構82は断面視L字状の支持部材82sと、支持部材82sの水平板82sh(L字の横棒部分)の下面に設けられた移動機構82mとにより構成される。移動機構82mは例えば直動ガイドと動力伝達ネジで構成されており、モータの駆動力によって支持板85上をX方向に沿って移動可能に設けられる。
【0030】
昇降機構81は昇降部材81m及び昇降軸81xより構成され、昇降軸81xは支持部材82sの垂直板82sv(L字の縦棒部分)に固着して立設され、昇降部材81mは昇降軸81xに対し昇降自在に取り付けられている。そして、昇降部材81mに連結してステージ固定部材80が設けられ、ステージ固定部材80の上面上に基板積載ステージ3Bの下面が固定される。
【0031】
なお、昇降部材81mの昇降動作は、例えば、図示しない回転駆動部の回転駆動力を、昇降軸81x内に設けられ昇降部材81mに連結された図示しないチェーン等の伝達機構に上下運動として伝達する態様が考えられる。その結果、上述した伝達機構の上下運動によって昇降部材81mの昇降動作を実現することができる。
【0032】
したがって、一方移載機構8Lは、移動機構82mのX方向(+X方向あるいは−X方向)に沿った横行動作により、基板積載ステージ3Bを搬送方向(+X方向)に沿って移動させたり、反搬送方向(−X方向)に沿って移動させたりすることができる。
【0033】
さらに、一方移載機構8Lは、昇降部材81mのZ方向(+Z方向あるいは−Z方向)に沿った昇降動作により、基板積載ステージ3Bを上昇及び下降させることができる。
【0034】
他方移載機構8Rは
図2のZX平面に対して一方移載機構8Lと対称に設けられ、一方移載機構8Lと等価な構成を有している。したがって、他方移載機構8Rは、一方移載機構8Lと同様に、横行機構82の横行動作によって基板積載ステージ3Aを搬送方向及び反搬送方向に沿って移動させたり、昇降機構81の昇降動作によって基板積載ステージ3Aを上昇及び下降させたりすることができる。なお、上述した移載機構8L及び8Rの横行動作及び昇降動作によって、基板積載ステージ3A及び3BのY方向における位置は変化しない。
【0035】
このように、一方移載機構8L及び他方移載機構8Rは、支持部材82sの垂直板82sv及び昇降軸81xのY方向の形成位置が互いに異なるものの、共に片持ち支持構造によって、基板積載ステージ3B及び基板積載ステージ3Aを支持しているため、上述した横行動作及び昇降動作を適切に組み合わせることにより、基板積載ステージ3A及び3B間で干渉を生じさせることなく、互いに独立した搬送動作(巡回搬送処理を含む)を実行することができる。
【0036】
なお、
図2に示す例では、基板積載ステージ3上においてY方向に沿って2個の基板10が載置可能な構成を示している。
【0037】
図3〜
図17は本実施の形態の成膜装置による基板積載ステージ3A及び3Bの搬送動作を示す説明図である。なお、搬送動作は
図2で示した基板移載機構8(一方移載機構8L+他方移載機構8R)によって行われる。
【0038】
図3に示すように、移載機構8R及び8Lの横行動作によって、基板積載ステージ3A及び3Bは共に速度V0で搬送方向(+X方向)に搬送されており、噴射領域R1にある基板積載ステージ3A及び3Bの上面上の基板10に対して原料ミストMTが噴射され、当該基板10の上面に薄膜を成膜する成膜処理が実行される。なお、
図3及び以降の
図4〜
図17において、噴射領域R1よりさらに上流側の領域を成膜準備領域R2とする。
【0039】
図3で示す状態は、基板積載ステージ3Aの最後尾の基板10xと、基板積載ステージ3Bの最前部の基板10yが共に噴射領域R1に存在しており、基板積載ステージ3Bの上面上において基板10yより上流側の基板10は成膜準備領域R2に存在し、成膜処理前の状態である。
【0040】
ただし、基板積載ステージ3Bは加熱機構32を有しているため、基板10が成膜準備領域R2に存在する状況下においても加熱処理を実行することができ、この際、吸着機構31により基板10の下面全体が基板積載ステージ3Bの上面上に吸着されているため、加熱処理によって基板10に多少の温度勾配が生じても、基板10に反りや割れが生じることはない。
【0041】
なお、基板投入部5上に載置された成膜処理前の基板10は吸着把持器4A(第1の把持器)による基板投入動作M5によって、適宜、基板積載ステージ3Bの上面上(成膜準備領域R2に存在)に配置され、吸着把持器4Bによる基板取出動作M6によって、基板積載ステージ3A上において、噴射領域R1を通過した成膜処理後の基板10が基板取出部6上に配置される。
【0042】
図18は吸着把持器4Aの基板投入動作M5の詳細を示す説明図である。以下、
図18を参照しつつ、基板投入動作M5について詳述する。
【0043】
まず、
図18(a),(b) に示すように、吸着把持器4A(第1の把持器)は基板投入部5の上部に載置された基板10の上方に接近した後、吸着機構41Aにより基板10の上面を把持面41Sに吸着し把持する。
【0044】
そして、基板10を把持した状態で吸着把持器4Aを基板積載ステージ3の上面における基板10が載置されていない基板未載領域の上方(後述する移動距離条件を満足する解放時移動距離分、上方)に移動させる。
【0045】
そして、
図18(c) に示すように、上記状態で吸着把持器4Aの吸着機構41Aによる基板10の把持面41Sでの把持状態を解放する基板解放処理を実行し、基板積載ステージ3の上記基板未載領域上に基板10を配置する。以上の動作が基板投入動作M5である。
【0046】
なお、基板投入動作M5の実行後は、
図18(d) に示すように、吸着把持器4Aは基板投入部5の上方に移動する。また、吸着機構41Aは真空吸着によって基板10を吸着し、基板解放処理は吸着機構41Aから解放用ガスを基板10の上面に吹き出すことにより行われる。
【0047】
次に、基板取出動作M6について詳述する。まず、噴射領域R1を通過した成膜処理後の基板10の上方に吸着把持器4B(第2の把持器)を移動させ、この状態で吸着機構41Bにより、基板積載ステージ3上の基板10の上面を把持面41S(
図18で示した吸着把持器4Aの把持面41Sと同様に形成)に吸着して把持する。そして、基板10を把持した状態で吸着把持器4Bを基板取出部6の基板が載置されていない基板未載領域の上方(吸着機構41Bによる基板10の吸着が可能な位置)に移動させ、この状態で吸着把持器4Bの吸着機構41Bによる把持面41Sでの基板10の把持状態を解放する基板解放処理を実行し、基板取出部6の上記基板未載領域上に基板10を配置する。以上の動作が基板取出動作M6である。なお、吸着機構41Bは真空吸着によって基板10を吸着し、基板解放処理は吸着機構41Bから解放用ガスを基板の上面に吹き出すことにより行われる。
【0048】
吸着把持器4A及び4Bは吸着機構41A及び41Bの上方に加熱機構42A及び42B(第1及び第2の予備加熱機構)をさらに有している。したがって、基板投入動作M5及び基板取出動作M6それぞれにおいて、吸着把持器4A及び4Bによる基板10の把持状態時においても、加熱機構42A及び42Bによって基板10を加熱する第1及び第2の予備加熱処理を行うことができる。
【0049】
なお、本実施の形態では、吸着把持器4Aは基板投入動作M5の実行時に、加熱機構42Aによって180℃程度の投入把持温度で第1の予備加熱処理を実行する。一方、吸着把持器4Bは基板取出動作M6の実行時に、加熱機構42Bによって240℃程度の取出把持温度で第2の予備加熱処理を実行する。
【0050】
その後、
図4に示すように、基板積載ステージ3Aの上面上の最後尾の基板10xが噴射領域R1を通過すると、基板積載ステージ3Aの上面上に載置した全ての基板10が噴射領域R1を通過したことになる。
【0051】
この状態の基板積載ステージ3Aに対し、速度V1〜V5(巡回速度)による巡回搬送処理が実行される。まず、他方移載機構8Rは横行動作による搬送速度を速度V0から速度V1(>V0)に上昇させる。この際、基板積載ステージ3Aの上面上の全ての基板10が吸着把持器4Bによる基板取出動作M6によって基板取出部6上に移動される。
【0052】
一方、基板積載ステージ3Bは、一方移載機構8Lの横行動作によって、速度V0の搬送速度を維持する。
【0053】
その後、
図5に示すように、基板積載ステージ3Aの上面上の基板10が全て取り出された後、他方移載機構8Rは横行動作から昇降動作に切り替え、基板積載ステージ3Aを速度V2(>V0)で下降させる。一方、噴射領域R1内に基板10が存在する基板積載ステージ3Bは、一方移載機構8Lの横行動作によって速度V0で搬送方向に沿って搬送される。
【0054】
その後、
図6に示すように、基板積載ステージ3Aを下降させることにより、基板積載ステージ3A及び3B間にZ方向において互いに干渉しない高低差を設けた後、他方移載機構8Rは昇降動作から横行動作に切り替える。
【0055】
そして、他方移載機構8Rの横行動作によって、基板積載ステージ3Aを速度V3(>V0)で反搬送方向(−X方向)に沿って水平移動させる。一方、噴射領域R1内に基板10が存在する基板積載ステージ3Bは速度V0で搬送方向に沿った搬送が維持される。
【0056】
その後、
図7に示すように、基板積載ステージ3BとX方向において干渉しない上流側に基板積載ステージ3Aを水平移動させた後、他方移載機構8Rは横行動作から昇降動作に切り替える。
【0057】
そして、他方移載機構8Rの昇降動作によって、基板積載ステージ3Aを速度V4(>V0)で上昇させる。一方、噴射領域R1内に基板10が存在する基板積載ステージ3Bは速度V0で搬送方向に沿って搬送が維持される。
【0058】
次に、
図8に示すように、基板積載ステージ3Aが基板積載ステージ3Bと同一高さに達した後、他方移載機構8Rは昇降動作から横行動作に切り替える。
【0059】
そして、他方移載機構8Rの横行動作によって、基板積載ステージ3Aを速度V5(>V0)で搬送方向に沿って搬送させる。
【0060】
並行して、
図8に示すように、吸着把持器4Aによる基板投入動作M5が実行される。具体的には、吸着把持器4Aは基板投入部5から成膜処理前の基板10を把持し、把持した基板10が基板積載ステージ3Aと干渉しない高低差(距離L12(
図10参照))を維持しつつ速度V11(>V5)で距離L11分、搬送方向に沿って水平移動する。
【0061】
その後、
図9に示すように、基板積載ステージ3Aの搬送方向先端領域の上方に達すると、速度V11から速度V5に落とし、基板積載ステージ3Aと同じ速度で搬送方向に沿って水平移動する。
【0062】
そして、
図10に示すように、吸着把持器4Aは搬送方向への速度V5の水平移動と併せて、速度V12の下降動作を行い、把持した基板10の下面と基板積載ステージ3Aの上面との(Z方向に沿った垂直)距離である解放時移動距離が、吸着把持器4Aによる基板10の基板解放処理を精度良く実行可能な移動距離条件{0mmを超え、10mm以下である}を満足すると、下降動作を止め基板解放処理を実行する。その後、速度V13で上昇動作を行い、基板積載ステージ3Aとの干渉しない十分な高低差(距離L12)に戻す。したがって、上記移動距離条件を満足して吸着把持器4Aの下降動作が停止した時の解放時移動距離が、基板解放処理の実行直前における解放時移動距離となる。
【0063】
そして、
図11に示すように、吸着把持器4Aは速度V14で距離L14分、反搬送方向に水平移動し基板投入部5の上方の初期位置に戻る。その結果、1つ目の基板10に対する基板投入動作M5が終了する。
【0064】
続いて、
図12に示すように、吸着把持器4Aは基板投入部5から成膜処理前の基板10を把持し、基板積載ステージ3Aと干渉しない高低差(距離L12(
図14参照))を維持しつつ速度V15(>V5)で距離L15分、搬送方向に沿って水平移動する。
【0065】
その後、
図13に示すように、基板積載ステージ3Aの搬送方向先端領域上に載置された基板10αの隣接領域の上方に達すると、速度V15から速度V5に落とし、基板積載ステージ3Aと同じ速度で搬送方向に沿って水平移動する。
【0066】
そして、
図14に示すように、吸着把持器4Aは搬送方向への速度V5の水平移動と併せて、速度V12の下降動作を行い、上記解放時移動距離が上述した移動距離条件を満足すると、下降動作を止め基板解放処理を実行する。その後、速度V13で上昇動作を行い、基板積載ステージ3Aとの干渉しない十分な高低差(距離L12)に戻す。
【0067】
その後、
図15に示すように、吸着把持器4Aは速度V16で距離L16分、反搬送方向に水平移動し、
図16に示すように、基板投入部5の上方の初期位置に戻る。その結果、2つ目の基板10に対する基板投入動作M5が終了する。
【0068】
以降、
図8〜
図16で示した基板投入動作M5を3つ目以降の基板10に対しても繰り返し実行し、基板積載ステージ3Aの上面上の載置予定領域に予定された基板載置枚数の基板10を載置する。
【0069】
なお、基板投入動作M5は、少なくとも基板積載ステージ3A上の載置予定領域が噴射領域R1に到達する前に基板10を基板積載ステージ3A上に載置できるように実行する必要がある。
【0070】
また、
図8〜
図16で示した状況化では、噴射領域R1内に基板10が存在する基板積載ステージ3Bは速度V0で搬送方向に沿った搬送が維持され、巡回搬送処理を終えていない基板積載ステージ3Aは速度V5で搬送方向に水平移動されている。
【0071】
そして、
図16に示すように、基板積載ステージ3Aが基板積載ステージ3Bの後方に必要最小限の間隔を隔てて配置されると、基板積載ステージ3Aの巡回搬送処理が完了する。
【0072】
このように、巡回搬送処理は、速度V1の+X方向移動(搬送方向への水平移動)、速度V2の−Z方向移動(下降移動)、速度V3の−X方向移動(反搬送方向への水平移動)、速度V4の+Z方向移動(上昇移動)及び速度V5の+X方向の移動(搬送方向への水平移動)の組み合わせによって実行され、基板積載ステージ3B(他方の基板載置部)の上面上の複数の基板10が全て噴射領域R1を通過するまでに完了する。
【0073】
その後、
図17に示すように、巡回搬送処理が完了した基板積載ステージ3Aに対し、他方移載機構8Rは横行動作による搬送速度を速度V5から速度V0に低下させる。
【0074】
その結果、基板積載ステージ3Aは速度V0(成膜時移動速度)で搬送方向に沿って搬送される。以降、基板積載ステージ3Aに基板10をさらに載置する必要がある場合、吸着把持器4Aによる基板投入動作M5によって、適宜、基板積載ステージ3Aの上面上(成膜準備領域R2内に存在)に成膜処理前の基板10が配置される。
【0075】
一方、噴射領域R1内に一部が存在する基板積載ステージ3Bは速度V0で搬送方向に沿って搬送される。
【0076】
以降、基板積載ステージ3Bの上面上の全ての基板10が噴射領域R1を通過した後、基板積載ステージ3Bに対し、
図4〜
図16で示した基板積載ステージ3Aと同様に巡回搬送処理が実行される。この際、基板積載ステージ3Aは搬送方向に沿って速度V0で搬送される。
【0077】
このように、移載機構8L及び8Rからなる基板移載機構8によって、2つの基板積載ステージ3A及び3Bを順次巡回させながら、噴射領域R1内に常に成膜処理前の基板10が存在するように、基板積載ステージ3A及び3Bに対する搬送動作(巡回搬送処理を含む)が実行される。
【0078】
本実施の形態の成膜装置における基板積載ステージ3(基板載置部)は主要加熱温度で加熱する加熱機構32(主要加熱機構)を有するため、載置した基板10を加熱することができる。加えて、吸着把持器4A及び4B(第1及び第2の把持器)は、共に基板10の把持状態の時、把持した基板10を第1及び第2の予備加熱温度で加熱する加熱機構42A及び42B(第1及び第2の予備加熱機構)を有しているため、基板投入動作M5及び基板取出動作M6の動作中においても把持状態の基板10を加熱することができる。
【0079】
例えば、第1の予備加熱温度及び主要加熱温度により加熱処理が実現される場合は比較的緩やかな温度変化で基板10の温度を高めることができ、主要加熱温度及び第2の予備加熱温度による加熱処理が実現される場合は比較的緩やかな温度変化で基板10の温度を低くすることができる結果、基板10内に発生する温度勾配を効果的に抑制できるため、基板10が反って最悪割れる現象を効果的に回避することができる。
【0080】
その結果、長期間に亘って基板10に対する加熱処理(第1及び第2の予備加熱温度並びに主要加熱温度による加熱処理)を実行することができるため、加熱処理を急速に行う必要性がなくなる結果、加熱処理を短期間で行うことによって基板10に発生する温度勾配を抑制し、基板10に反りや割れが発生する現象を効果的に抑制することができる。
【0081】
また、基板10に発生する温度勾配の抑制に関し、本実施の形態の成膜装置の主要な追加構成箇所は、基板投入動作M5及び基板取出動作M6用に元々必要な吸着把持器4A及び4Bのうち少なくとも一つにおいて、加熱機構42Aあるいは加熱機構42Bを追加するだけであるため、装置コストを最小限に抑えることができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、吸着把持器4A及び4Bに加熱機構42A及び42Bを設けたが、吸着把持器4A及び4Bのうち一方の把持器のみに加熱機構42Aあるいは加熱機構42Bを設ける変形構成も可能である。上記変形構成の場合、基板積載ステージ3による主要加熱温度での基板10の加熱に加え、基板投入動作M5及び基板取出動作M6のうち一方の動作中において基板10を加熱することができるため、加熱処理を基板積載ステージ3のみで行う場合に比べ、長期間に亘って加熱処理を行うことができる。このため、基板10に発生する温度勾配を低く抑え、基板10に反りや割れが発生する現象を抑制する効果を発揮できる。また、上記変形構成は加熱機構42Aあるいは加熱機構42Bを省略できる分、装置コストのさらなる低減化を図ることができる。
【0083】
なお、吸着把持器4Aの加熱機構42Aよる第1の予備加熱温度を180℃程度、吸着把持器4Bによる第2の加熱温度を240℃程度にして、基板投入部5に載置された基板10の初期温度(常温:外気温程度)より低下させず、かつ主要加熱温度(400℃程度)以上に基板10を上昇させることなく、基板投入動作M5及び基板取出動作M6の動作を実行することができる。
【0084】
さらに、主要加熱温度(400℃)より第1及び第2の予備加熱温度を低くし、吸着把持器4Aの加熱機構42Aによる第1の予備加熱温度(180℃)と吸着把持器4Bの加熱機構42Bによる第2の予備加熱温度(240℃>180℃)と異なる温度に設定することにより、第1の予備加熱温度、主要加熱温度及び第2の予備加熱温度をそれぞれ基板10上への薄膜の成膜に適した温度に設定することができる。
【0085】
なお、本実施の形態では、
図18で示したように、吸着把持器4A及び4Bの吸着機構41A及び41Bそれぞれの把持面41Sは基板10の上面全体を覆い(平面視完全重複し)、基板10の上面より広い形状で形成されている。
【0086】
したがって、吸着把持器4A及び4B(第1及び第2の把持器)による把持面41Sでの基板10の把持状態時における第1及び第2の予備加熱温度での加熱処理時を保温性良く行うことができる。
【0087】
なお、保温性効果を達成するには、少なくとも、把持面41Sは基板10の把持状態時において、基板の上面が把持面41Sからはみ出る最大寸法が10mm以内になる形状で、把持面41Sを形成することが望ましい。
【0088】
本実施の形態の成膜装置における基板積載ステージ3(基板載置部)は吸着機構31をさらに有しているため、主要加熱温度による加熱処理を基板10の下面を吸着した状態で行うことができる。加えて、吸着把持器4A及び4B(第1及び第2の把持器)は基板10の上面を把持面41Sで吸着して把持する吸着機構41A及び41Bをさらに有するため、第1及び第2の予備加熱温度による加熱処理を基板10を吸着した状態で行うことができる。
【0089】
その結果、第1及び第2の予備加熱温度並びに主要加熱温度による加熱処理時に基板10内に多少の温度勾配が生じても、反りが発生する現象を効果的に抑制することができる。
【0090】
吸着把持器4Aは基板投入動作M5の実行時に基板10を把持状態から解放する基板解放処理を、吸着機構41Aから基板10の上面に解放用ガスを吹き出すことにより行っている。この際、解放用ガスのガス温度を第1の予備加熱温度以上で主要加熱温度以下に設定することが望ましい。
【0091】
上記のように解放用ガスのガス温度を設定することにより、吸着把持器4Aによる基板解放処理の実行に伴い、基板10の温度が第1の予備加熱温度以下に低下したり、主要加熱温度以上に上昇したりすることはない。このため、本実施の形態では、解放用ガスによる急激な冷却で、基板10が割れることを確実に防止でき、成膜処理に何ら悪影響を及ぼすことなく基板解放処理を実行することができる。
【0092】
なお、
図10で示したように、吸着把持器4Aによる基板10の基板解放処理を行う際の解放時移動距離は、移動距離条件{0mmを超え10mm以下である}を満足している。
【0093】
距離L12が上記移動距離条件を満足することにより、吸着把持器4Aの基板投入動作M5によって、基板積載ステージ3上に位置ズレなく基板10を載置することができる。
【0094】
なお、同様に、吸着把持器4Bによる基板10の基板解放処理時の解放時移動距離も上記移動距離条件を満足させることにより、吸着把持器4Bの基板取出動作M6によって、基板取出部6上に位置ズレなく基板10を載置することができる。
【0095】
また、吸着把持器4B(第2の把持器)において、基板10の上面を把持する把持面41Sの材質が、基板10に成膜される薄膜と同一の材質である第1の材質条件を満足することが望ましい。例えば、薄膜として酸化アルミウムを成膜する場合、把持面41Sの材質を酸化アルミニウムにすることが望ましい。
【0096】
吸着把持器4Bの把持面41Sは上記第1の材質条件を満足することにより、吸着把持器4Bによる基板取出動作M6の実行時に基板10上に形成された薄膜に異物が混入するコンタミ(contamination)の発生を効果的に抑制することができる。
【0097】
また、吸着把持器4A及び4Bにおける把持面41Sの材質は、第1及び第2の予備加熱温度以上の耐熱温度を有する非金属材(第1及び第2の非金属材)であるという第2の材質条件を満足することが望ましい。
【0098】
吸着把持器4A及び4Bは、上記第2の材質条件を満足することにより、第1及び第2の予備加熱温度による加熱処理時に把持面41Sに支障を生じさせることなく基板投入動作M5及び基板取出動作M6を実行することができる。
【0099】
また、基板10としてシリコン基板が考えられる。この場合、本実施の形態の成膜装置は成膜処理時において、シリコン基板への加熱処理を比較的長期間で行い、かつ、シリコン基板に対し吸着した状態で加熱処理を行うことによって、シリコン基板に反りや割れが発生する現象を効果的に抑制することができる。
【0100】
本実施の形態では、成膜処理実行部として薄膜形成ノズル1(ミスト噴射部)を用い、成膜処理領域を噴射領域R1としている。
【0101】
このため、実施の形態の成膜装置は、原料ミストMTの噴射による成膜処理時において、基板10への加熱処理を比較的長期間で行い、かつ、基板10に対し吸着した状態で加熱処理を行うことによって、基板10に反りや割れが発生する現象を効果的に抑制し、かつ、原料ミストMTの噴射による成膜処理における処理能力の向上を図ることができる。
【0102】
また、本実施の形態の成膜装置における基板積載ステージ3A及び3B(第1及び第2の基板載置部)はそれぞれ吸着機構31及び加熱機構32を有しており、基板積載ステージ3A及び3Bがそれぞれ噴射領域R1(成膜処理領域)に達するまでの、成膜準備領域R2に存在する準備期間に載置した成膜処理前の基板10を加熱することにより基板10を急速に加熱する必要性をなくしている。加えて、基板積載ステージ3が内蔵する吸着機構31により基板10の下面を吸着した状態で加熱処理を実行している。その結果、本実施の形態の成膜装置は、仮に吸着把持器4A及び4Bが共に加熱機構42A及び42Bを有さない場合であっても、加熱処理時に基板10内に発生する温度勾配を低く抑え、さらに、吸着状態で基板10を加熱することによって、基板10に反りや割れが発生する現象を抑制する効果を発揮することができる。
【0103】
加えて、移載機構8L及び8Rからなる基板移載機構8(基板載置部移載装置)は、噴射領域R1を通過した一方の基板積載ステージ3(
図3〜
図16の基板積載ステージ3A)を、巡回速度V1〜V5で他方の基板積載ステージ3(
図3〜
図16の基板積載ステージ3B)の後方に配置させる巡回搬送処理を実行している。その結果、基板積載ステージ3A及び3Bを巡回させながら、基板積載ステージ3A及び3Bを効率的に移動させて、載置した基板10を噴射領域R1内に順次通過させることができるため、成膜処理における処理能力の向上を図ることができる。
【0104】
さらに、本実施の形態では、各々が吸着機構31及び加熱機構32を有する基板積載ステージ3の数を必要最小限の2つ(基板積載ステージ3A及び3B)に抑えており、基板移載機構8は基板積載ステージ3A及び3Bそれぞれを独立に移動させる移載機構8R及び8Lからなる比較的簡単な構成で実現できる。したがって、本実施の形態の成膜装置はフットプリントを抑制しつつ、装置コストを最小限に抑えることができる。
【0105】
図19は複数の基板10を従来のコンベア53による搬送処理で行った場合の従来の成膜装置の構成を模式的に示す説明図である。
【0106】
同図に示すように、ローラ51及びベルト52からなるコンベア53によってベルト52上の複数の基板10を搬送方向(X方向)に沿って搬送している。従来の成膜装置では、ベルト52の下方に3台の加熱ステージ50A〜50Cを設けることにより、ベルト52を介して基板10を加熱する加熱処理を行っている。
【0107】
また、薄膜形成ノズル1から原料ミストMTを噴射領域R1内で噴射させ、上流側の基板投入部5上の基板10を基板投入動作M15によりベルト52上に載置し、噴射領域R1を通過後のベルト52上の基板10は基板取出動作M16により下流側の基板取出部6上に取り出される。
【0108】
従来の成膜装置において、コンベア53により複数の基板10が順次、噴射領域R1を通過させることができ、3台の加熱ステージ50A〜50Cを設けることにより、成膜処理前、成膜処理中、成膜処理後における比較的長期間の基板10に対する加熱処理を可能にしている。
【0109】
このように、
図19で示した従来の成膜装置はベルト52上に基板10を載置しているにすぎないため、加熱ステージ50A〜50Cによる加熱処理時に、基板10内に温度勾配が生じると反りが発生するという問題点がある。
【0110】
さらに、基板10に対する長期間の加熱処理を実現するために、比較的大きな加熱ステージ50A〜50Cを3つも設ける必要があり、装置コストが高くなるという問題点もある。
【0111】
このように、本実施の形態の成膜装置は、装置コストを最小限に抑えつつ、成膜対象の基板10に反りや割れを発生させることなく、高い処理能力を発揮できるという、従来の成膜装置から達成不可能な効果を奏している。
【0112】
図20は
図19で示した従来の成膜装置における従来の基板投入動作M15を示す説明図である。なお、
図20において加熱ステージ50A〜50Cを総称して、加熱機構56を有する加熱ステージ50を示している。
【0113】
以下、
図20を参照しつつ、従来の吸着把持部14による基板投入動作M15について詳述する。
【0114】
まず、
図20(a),(b) に示すように、吸着把持部14は基板投入部5の上部に載置された基板10の上方に接近した後、吸着機構44により基板10の上面を把持面44Sに吸着し把持する。そして、基板10を把持した状態で吸着把持部14をベルト52の上面における基板未載領域の上方に移動させる。
【0115】
そして、
図20(c) に示すように、上記状態で吸着把持部14の吸着機構44による基板10の把持面44Sでの把持状態を解放する基板解放処理を実行し、ベルト52の上記基板未載領域上に基板10を配置する。以上の動作が基板投入動作M15である。
【0116】
そして、基板投入動作M15の実行後は、
図20(d) に示すように、吸着把持部14は基板投入部5の上方に移動する。このように、吸着把持部14は加熱機構を有さない場合、基板投入動作M15の実行中は基板10に対する加熱処理を実行することができない。
【0117】
同様にして、加熱機構を有さない従来の吸着把持部14で基板取出動作M16を行う場合においても、基板取出動作M16の実行中は基板10に対する加熱処理を実行することができない。
【0118】
このように、加熱機構を有さない吸着把持部14によって基板投入動作M15及び基板取出動作M16が実行される場合、加熱ステージ50の上方においてベルト52が基板10を載置している期間にのみ、基板10に対する加熱処理が実行されることになる。
【0119】
したがって、
図20(d) に示すように、加熱ステージ50の加熱機構56によって始めて基板10の加熱処理が実行されることになるため、必然的に基板10の加熱処理が短期間で行われる結果、基板10内に比較的高い温度勾配が生じることになり、基板10に反りや割れが発生してしまう可能性が高くなる。
【0120】
一方、
図19に示すような従来の成膜装置においても、基板投入動作M15及び基板取出動作M16に置き換え、加熱機構42A及び42Bを有する吸着把持器4A及び4Bによる基板投入動作M5及び基板取出動作M6を実行するようにすれば、比較的長期間に亘って基板に対する加熱処理(加熱機構42A及び42B並びに加熱機構56による加熱処理)を実行することができる。
【0121】
その結果、加熱処理を急速に行う必要性が低くなるため、従来の成膜装置においても、基板投入動作M5及び基板取出動作M6を実行する吸着把持器4A及び4Bを採用することにより、基板10に発生する温度勾配を低く抑えることができるため、基板10に反りや割れが発生する現象を抑制する効果が期待できる。
【0122】
但し、装置コストの低減化、処理能力の向上、及び基板10を常に吸着した状態で加熱処理を行うことにより基板10に反りや割れが発生するという問題点の確実な解消を図るためには、基板移載機構8(8L、8R)及び基板積載ステージ3A及び3Bを備える本実施の形態の搬送機構を用いることが望ましい。
【0123】
また、実施の形態の成膜装置は、巡回速度V1〜V5を成膜時移動速度V0より高速にすることにより、巡回搬送処理により、一方の基板積載ステージ3を速やかに他方の基板積載ステージ3の後方に配置させることができる。上記効果は、少なくとも巡回速度V1〜V5全体の平均値を成膜時移動速度V0より高速にすることにより達成することができる。
【0124】
以下、速度V0と巡回速度V1〜V5について詳述する。ここで、速度V0〜V5と関連がある距離L0〜L5について説明する。
【0125】
図4に示すように、搬送方向(X方向)における基板積載ステージ3の形成長SL3から噴射領域R1の長さを差し引いた距離を距離L0とし、基板積載ステージ3Aが速度V1の搬送方向への水平移動動作を行う前後における水平距離を距離L1とする。
【0126】
また、
図5に示すように、基板積載ステージ3Aが速度V2の下降動作を行う前後における高低差を距離L2とする。さらに、
図6に示すように、基板積載ステージ3Aが速度V3の反搬送方向への水平移動動作を行う前後における水平距離を距離L3とする。
【0127】
さらに、
図7に示すように、基板積載ステージ3Aが速度V4の上昇動作を行う前後における高低差を距離L4とし、
図17に示すように、基板積載ステージ3Aが速度V5の水平移動動作を行う前後における水平距離を距離L5とする。
【0128】
したがって、
図3〜
図17で示した実施の形態の成膜装置の動作例において、基板積載ステージ3B(他方の基板載置部)に載置した全ての基板10が成膜処理領域である噴射領域R1を通過するまでに、基板積載ステージ3A(一方の基板載置部)の巡回搬送処理が完了するためには、以下の式(1)を満足する必要がある。
【0129】
L0/V0≧L1/V1+L2/V2+L3/V3+L4/V4+L5/V5…(1)
【0130】
この際、距離L0は、噴射領域R1が予め決定されている場合、基板積載ステージ3の搬送方向への形成長SL3によって決定する。そして、基板積載ステージ3の形成長SL3によって上面上に載置する基板10の数(基板載置枚数)が決定する。
【0131】
また、距離L1〜L5、速度V0〜V5を成膜処理時間、成膜装置の規模等を鑑みて、予め設定されている場合、式(1)を満足する最小の形成長SL3の基板積載ステージ3の上面上に最大載置可能な基板10の数が最適基板載置枚数となる。
【0132】
例えば、156mm角形の矩形状の基板10を使用する際、式(1)を満足するX方向に沿った最小の形成長SL3が800mmであったとすると、X方向の形成長SL3が800mmの基板積載ステージ3上にX方向に沿って5個の基板10を載置することができるため、
図2で示したようにY方向に沿って2個の基板10が載置可能な場合、10個(5×2)が最適基板載置枚数となる。
【0133】
このように、本実施の形態の成膜装置の基板積載ステージ3A及び3B(第1及び第2の基板載置部)はそれぞれ上記最適基板載置枚数(所定数)の基板10を搭載している。すなわち、最適基板載置枚数は、他方の基板載置部(
図3〜
図17の基板積載ステージ3B)の全ての基板10が成膜処理領域である噴射領域R1を通過するまでに、一方の基板載置部(
図3〜
図17の基板積載ステージ3A)の巡回搬送処理が完了するように、設定されている。
【0134】
実施の形態は、上記最適基板載置枚数の基板10を基板積載ステージ3A及び3Bそれぞれの上面上に配置することにより、搬送動作によって基板積載ステージ3A及び3Bの上面上に載置した基板10を連続的に噴射領域R1に到達させることができるため、成膜処理における処理能力の向上を最大限に発揮することができる。
【0135】
本実施の形態では、薄膜形成ノズル1から原料ミストを噴射するミスト噴出口が形成される噴射面1Sと基板10の上面との間隔であるミスト噴射距離D1(
図1参照)が、1mm以上30mm以下に設定されている。
【0136】
このように、本実施の形態の成膜装置は、薄膜形成ノズル1のミスト噴射距離D1を1mm以上30mm以下に設定することにより、原料ミストMTの噴射による成膜処理をより精度よく行うことができる。
【0137】
<その他>
なお、本実施の形態では、基板載置部として2つの基板積載ステージ3A及び3Bを示したが、移載機構8L及び8Rにそれぞれ2つの基板積載ステージ3を設ける等の改良により、4つ以上の基板積載ステージ3を用いて成膜装置を実現することも可能である。ただし、本実施の形態のように、2つの基板積載ステージ3A及び3Bのみで成膜装置を実現する方が、基板積載ステージ3の数を最小限に抑え、基板載置部移載装置である基板移載機構8の構成の簡略化、巡回搬送処理の制御内容の容易性等、装置コスト面で優れている。
【0138】
また、本実施の形態の成膜装置による基板10に反りや割れが発生する現象を効果的に抑制することができる効果についての主要構成部は、加熱機構42A及び42Bを有する吸着把持器4A及び4B並びに加熱機構32を有する基板積載ステージ3である。このため、基板移載機構8は少なくとも1つの基板積載ステージ3を移動させて噴射領域R1を通過させる搬送動作を実行すれば、上記効果を達成することができる。
【0139】
但し、装置コストを抑えながら成膜処理における処理能力の向上を図るためには、基板移載機構8(8L、8R)によって、2つの基板積載ステージ3A及び3Bに対し巡回搬送処理を含む搬送動作を実行する本実施の形態の構成が望ましい。
【0140】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。