特許第6616904号(P6616904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6616904電池残量推定装置、電池残量推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616904
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】電池残量推定装置、電池残量推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/374 20190101AFI20191125BHJP
   G01R 31/3842 20190101ALI20191125BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20191125BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   G01R31/374
   G01R31/3842
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H02J7/00 X
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-538008(P2018-538008)
(86)(22)【出願日】2017年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2017008987
(87)【国際公開番号】WO2018047376
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2019年1月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-177614(P2016-177614)
(32)【優先日】2016年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】松下 修平
(72)【発明者】
【氏名】奥野 東一
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−183370(JP,A)
【文献】 特開2009−063502(JP,A)
【文献】 特開2012−070474(JP,A)
【文献】 特開2010−283922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/374
G01R 31/3842
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置へ電力を供給する電池の残量を推定する電池残量推定装置であって、
前記電子装置の所定時間毎の稼働状態に関する稼働状態情報に基づいて、前記電池の前記所定時間あたりの放電電荷量を算出する放電電荷量算出部と、
前記所定時間あたりの放電電荷量に基づいて、前記電池からの放電電荷の総量を算出し、当該放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量を推定する残量推定部と
前記電池の電圧に関する電圧情報及び前記電池の温度に関する温度情報を取得する情報取得部と、
前記温度情報に基づいて、前記電池の温度の平均値を算出する温度平均値算出部と、
前記電圧情報に基づいて、前記電池の電圧の平均値を算出する電圧平均値算出部と、
前記電圧の平均値に基づいて、前記電池の電圧が急速に低下する前の当該電圧の基準値を算出する電圧基準値算出部と、
前記電圧の平均値と前記電圧の基準値との電圧差を第1しきい値と比較し、当該電圧差が第1しきい値より小さい場合、前記放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量を推定する第1推定方式が適切であると判定し、当該電圧差が前記第1しきい値を超える場合、前記電圧の平均値及び前記温度の平均値に基づいて前記電池の残量を推定する第2推定方式が適切であると判定する第1判定部とを有し、
前記残量推定部は、
前記第1推定方式により前記電池の残量を推定する第1推定部と、
前記第2推定方式により前記電池の残量を推定する第2推定部とを含む、
電池残量推定装置。
【請求項2】
前記電圧平均値算出部は、前記第1推定部において算出される前記放電電荷の総量が所定の最小値を超えた後の前記電圧情報に基づいて前記平均値を算出する、
請求項1に記載の電池残量推定装置。
【請求項3】
前記電子装置を制御する制御部と、
前記電圧の平均値と前記電圧の基準値との電圧差が、前記第1しきい値より小さい第2しきい値に比べて大きくなったか否かを判定する第2判定部とを有し、
前記第2判定部において前記電圧差が前記第2しきい値より大きいと判定された場合、
前記制御部は、前記電池の電圧の測定頻度を増やすように前記電子装置を制御し、
前記情報取得部は、前記電子装置による電圧測定値を前記電圧情報として取得する頻度を増やし、
前記電圧平均値算出部は、前記電圧の平均値の算出頻度を増やし、
前記電圧基準値算出部は、前記電圧の基準値の算出頻度を増やし、
前記第1判定部は、前記推定方式の判定の頻度を増やす、
請求項1又は2に記載の電池残量推定装置。
【請求項4】
前記温度平均値算出部は、所定の平均化時間における前記温度の平均値を算出し、
前記電圧平均値算出部は、前記平均化時間における前記電圧の平均値を前記温度の平均値に応じて補正する、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電池残量推定装置。
【請求項5】
前記電圧平均値算出部は、前記温度の平均値と基準温度との差に応じた補正値と前記電圧の平均値との和を算出する、
請求項4に記載の電池残量推定装置。
【請求項6】
前記電圧平均値算出部は、前記残量推定部において推定された前記電池の残量に応じて、前記温度の平均値と前記基準温度との差に対する前記補正値の補正係数を変更する、
請求項5に記載の電池残量推定装置。
【請求項7】
前記電圧基準値算出部は、最新の電池残量の推定値に比べて所定値だけ異なる推定値が前記第1推定部において得られた時点に対応する前記平均化時間を特定し、当該特定した平均化時間において前記電圧平均値算出部が算出した平均値を前記電圧の基準値として取得する、
請求項4乃至6の何れか一項に記載の電池残量推定装置。
【請求項8】
前記電圧基準値算出部は、複数の所定の電池残量に一致する推定値が前記第1推定部において得られた複数の時点に対応する複数の前記平均化時間を特定し、当該特定した複数の平均化時間において前記電圧平均値算出部が算出した複数の平均値を更に平均し、当該平均の結果を前記電圧の基準値として取得する、
請求項4乃至6の何れか一項に記載の電池残量推定装置。
【請求項9】
前記稼働状態情報は、前記電子装置の動作が前記所定時間内に実行された回数に関する情報を前記動作の種類ごとに含んでおり、
前記放電電荷量算出部は、1回の前記動作で前記電池から放電される第1電荷量に関する情報を前記動作の種類ごとに含んだ第1電荷量情報と、前記稼働状態情報とに基づいて、前記所定時間内における前記電子装置の動作期間の第1放電電荷量を算出する、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の電池残量推定装置。
【請求項10】
前記電池の温度に関する温度情報を取得する情報取得部を有し、
前記第1電荷量情報は、前記第1電荷量の温度特性に関する情報を含んでおり、
前記放電電荷量算出部は、前記第1放電電荷量の算出に用いる前記第1電荷量を、前記第1電荷量の前記温度特性に関する情報と、前記温度情報が示す前記電池の温度とに応じて変更する、
請求項9に記載の電池残量推定装置。
【請求項11】
前記放電電荷量算出部は、前記動作の1回あたりの実行時間に関する情報を前記動作の種類ごとに含んだ時間情報と、前記稼働状態情報と、前記電子装置が待機状態のときに前記電池から単位時間あたりに放電される第2電荷量に関する第2電荷量情報とに基づいて、前記所定時間内における前記電子装置の待機期間の第2放電電荷量を算出する、
請求項9又は10に記載の電池残量推定装置。
【請求項12】
前記電池の温度に関する温度情報を取得する情報取得部を有し、
前記第2電荷量情報は、前記第2電荷量の温度特性に関する情報を含んでおり、
前記放電電荷量算出部は、前記第2放電電荷量の算出に用いる前記第2電荷量を、前記第2電荷量の前記温度特性に関する情報と、前記温度情報が示す前記電池の温度とに応じて変更する、
請求項11に記載の電池残量推定装置。
【請求項13】
前記電池の放電電流の推定値と、前記残量推定部において推定された前記電池の残量とに基づいて、前記電子装置が稼働可能な時間を推定する稼働時間推定部を有する、
請求項1乃至12の何れか一項に記載の電池残量推定装置。
【請求項14】
前記電子装置の所定時間毎の推定の稼働状態に関する推定稼働状態情報に基づいて、前記電池の前記所定時間毎の推定放電電荷量を算出する推定放電電荷量算出部と、
前記所定時間毎の推定放電電荷量と、前記残量推定部において推定された前記電池の残
量とに基づいて、前記電子装置が稼働可能な時間を推定する稼働時間推定部とを有する、
請求項1乃至12の何れか一項に記載の電池残量推定装置。
【請求項15】
電子装置へ電力を供給する電池の残量を推定する電池残量推定方法であって、
前記電子装置の所定時間毎の稼働状態に関する稼働状態情報に基づいて、前記電池の前記所定時間あたりの放電電荷量を算出する工程と、
前記所定時間あたりの放電電荷量に基づいて、前記電池からの放電電荷の総量を算出し、当該放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量を推定する工程と
前記電池の電圧に関する電圧情報を取得する工程と、
前記電池の温度に関する温度情報を取得する工程と、
前記温度情報に基づいて、前記電池の温度の平均値を算出する工程と、
前記電圧情報に基づいて、前記電池の電圧の平均値を算出する工程と、
前記電圧の平均値に基づいて、前記電池の電圧が急速に低下する前の当該電圧の基準値を算出する工程と、
前記電圧の平均値と前記電圧の基準値との電圧差を第1しきい値と比較し、当該電圧差が第1しきい値より小さい場合、前記放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量を推定する第1推定方式が適切であると判定し、当該電圧差が前記第1しきい値を超える場合、前記電圧の平均値及び前記温度の平均値に基づいて前記電池の残量を推定する第2推定方式が適切であると判定する工程とを有し、
前記電池の残量を推定する工程は、
前記第1推定方式により前記電池の残量を推定する工程と、
前記第2推定方式により前記電池の残量を推定する工程とを含む、
電池残量推定方法。
【請求項16】
請求項15に記載の電池残量推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の電源として使用される電池の残量を推定する電池残量推定装置とその方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池の残量を推定する方法として、電池の放電電流を積分することにより求めた総放電電荷量から残量を推定する方法と、電池の端子電圧と実測データとに基づいて残量を推定する方法が従来より知られている。下記の特許文献1には、この2つの方法を組み合わせて二次電池の残容量率を算出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−315730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、IOT(Internet of Things)が大きな注目を集めており、これを実現するための電子装置には小型化と省電力化が求められている。しかしながら、電池の放電電流を積分する従来の電池残量推定方法では、電池に流れる電流を測定するための専用の回路が必要である。電流測定用の回路には、例えば電流を電圧に変換するシャント抵抗や、シャント抵抗に生じる電圧を増幅するアンプ、アンプの出力信号をデジタル値に変換するADコンバータなどが含まれる。このような電流測定用の回路を設けると、電子装置のサイズが大きくなってしまうという不利益がある。また、電流測定用の回路を常時動作させることによって消費電力が大きくなり、電子装置の稼働時間が短くなるという不利益もある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流測定用の回路を設けることなく電池の残量を推定できる電池残量推定装置とその方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電子装置へ電力を供給する電池の残量を推定する電池残量推定装置に関する。この電池残量推定装置は、前記電子装置の所定時間毎の稼働状態に関する稼働状態情報に基づいて、前記電池の前記所定時間あたりの放電電荷量を算出する放電電荷量算出部と、前記所定時間あたりの放電電荷量に基づいて、前記電池からの放電電荷の総量を算出し、当該放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量を推定する残量推定部と、前記電池の電圧に関する電圧情報及び前記電池の温度に関する温度情報を取得する情報取得部と、前記温度情報に基づいて、前記電池の温度の平均値を算出する温度平均値算出部と、前記電圧情報に基づいて、前記電池の電圧の平均値を算出する電圧平均値算出部と、前記電圧の平均値に基づいて、前記電池の電圧が急速に低下する前の当該電圧の基準値を算出する電圧基準値算出部と、前記電圧の平均値と前記電圧の基準値との電圧差を第1しきい値と比較し、当該電圧差が第1しきい値より小さい場合、前記放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量を推定する第1推定方式が適切であると判定し、当該電圧差が前記第1しきい値を超える場合、前記電圧の平均値及び前記温度の平均値に基づいて前記電池の残量を推定する第2推定方式が適切であると判定する第1判定部とを有する。前記残量推定部は、前記第1推定方式により前記電池の残量を推定する第1推定部と、前記第2推定方式により前記電池の残量を推定する第2推定部とを含む。
【0007】
この構成によれば、前記稼働状態情報に基づいて前記所定時間あたりの放電電荷量が算出され、前記所定時間あたりの放電電荷量に基づいて前記放電電荷の総量が算出され、前記放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量が推定されるため、電流測定用の回路が不要である。
また、この構成によれば、前記放電電荷の総量に基づく前記第1推定方式、及び、前記電圧の平均値及び前記温度の平均値に基づく前記第2推定方式により、前記電池の残量が推定される。前記電池の電圧が急速に低下する前の前記電圧の基準値と前記電圧の平均値との電圧差が前記第1しきい値より小さい場合は、前記第1推定方式が適切であると判定され、当該電圧差が前記第1しきい値を超える場合は、前記第2推定方式が適切であると判定される。これにより、前記電池の電圧が急速に低下する前の状態では、前記第1推定方式が適切であると判定され、前記電池の電圧が急速に低下する状態では、前記第2推定方式が適切であると判定される。従って、前記電池の残量の推定結果として、前記第1推定方式による推定結果、又は、前記第2推定方式による推定結果を適切に選択することが可能となる。また、前記電圧の基準値が前記電圧の平均値に基づいて算出されるため、前記電池の特性の個体ばらつきが存在する場合でも、そのばらつきに応じた適切な基準値が得られる。
【0008】
好適に、前記稼働状態情報は、前記電子装置の動作が前記所定時間内に実行された回数に関する情報を前記動作の種類ごとに含んでよい。前記放電電荷量算出部は、1回の前記動作で前記電池から放電される第1電荷量に関する情報を前記動作の種類ごとに含んだ第1電荷量情報と、前記稼働状態情報とに基づいて、前記所定時間内における前記電子装置の動作期間の第1放電電荷量を算出してよい。
【0009】
この構成によれば、1回の前記動作で前記電池から放電される第1電荷量と、前記所定時間内に実行された前記動作の回数とに基づいて、前記動作の種類ごとに、前記所定時間内における放電電荷量が得られる。前記動作の種類ごとに得られる放電電荷量から、前記所定時間内における前記電子装置の動作期間の第1放電電荷量が算出される。
【0010】
好適に、上記電池残量推定装置は、前記電池の温度に関する温度情報を取得する情報取得部を有してよい。前記第1電荷量情報は、前記第1電荷量の温度特性に関する情報を含んでよい。前記放電電荷量算出部は、前記第1放電電荷量の算出に用いる前記第1電荷量を、前記第1電荷量の前記温度特性に関する情報と、前記温度情報が示す前記電池の温度とに応じて変更してよい。
【0011】
この構成によれば、前記第1放電電荷量の算出に用いる前記第1電荷量が、前記第1電荷量の温度特性と前記温度情報が示す前記電池の温度とに応じて変更される。これにより、前記電池の温度に合わせた適切な前記第1電荷量を用いて前記第1放電電荷量が算出されるため、前記第1放電電荷量の精度が向上する。
【0012】
好適に、前記放電電荷量算出部は、前記動作の1回あたりの実行時間に関する情報を前記動作の種類ごとに含んだ時間情報と、前記稼働状態情報と、前記電子装置が待機状態のときに前記電池から単位時間あたりに放電される第2電荷量に関する第2電荷量情報とに基づいて、前記所定時間内における前記電子装置の待機期間の第2放電電荷量を算出してよい。
【0013】
この構成によれば、前記動作の1回あたりの実行時間と、前記所定時間内に実行された前記動作の回数とに基づいて、前記動作の種類ごとに、前記所定時間内における動作期間が求められる。前記所定時間内における前記動作の種類ごとの動作期間から、前記所定時間内における前記電子装置の待機期間が求められる。前記電子装置が待機状態のときに前記電池から単位時間あたりに放電される第2電荷量と、前記待機期間とに基づいて、前記待機期間における前記第2放電電荷量が算出される。
【0014】
好適に、上記電池残量推定装置は、前記電池の温度に関する温度情報を取得する情報取得部を有してよい。前記第2電荷量情報は、前記第2電荷量の温度特性に関する情報を含んでよい。前記放電電荷量算出部は、前記第2放電電荷量の算出に用いる前記第2電荷量を、前記第2電荷量の前記温度特性に関する情報と、前記温度情報が示す前記電池の温度とに応じて変更してよい。
【0015】
この構成によれば、前記第2放電電荷量の算出に用いる前記第2電荷量が、前記第2電荷量の温度特性と前記温度情報が示す前記電池の温度とに応じて変更される。これにより、前記電池の温度に合わせた適切な前記第2電荷量を用いて前記第2放電電荷量が算出されるため、前記第2放電電荷量の精度が向上する。
【0018】
好適に、前記電圧平均値算出部は、前記第1推定部において算出される前記放電電荷の総量が所定の最小値を超えた後の前記電圧情報に基づいて前記平均値を算出してよい。
【0019】
この構成によれば、前記電池からの放電電荷の総量が微小な状態において前記電池の電圧が急激に低下する場合に、その電圧の急激な変化が前記電圧平均値算出部の算出結果に影響を与え難くなるため、安定した精度のよい前記電圧の平均値が得られる。
【0020】
好適に、上記電池残量推定装置は、前記電子装置を制御する制御部と、前記電圧の平均値と前記電圧の基準値との電圧差が、前記第1しきい値より小さい第2しきい値に比べて大きくなったか否かを判定する第2判定部とを有してよい。前記第2判定部において前記電圧差が前記第2しきい値より大きいと判定された場合、前記制御部は、前記電池の電圧の測定頻度を増やすように前記電子装置を制御し、前記情報取得部は、前記電子装置による電圧測定値を前記電圧情報として取得する頻度を増やし、前記電圧平均値算出部は、前記電圧の平均値の算出頻度を増やし、前記電圧基準値算出部は、前記電圧の基準値の算出頻度を増やし、前記第1判定部は、前記推定方式の判定の頻度を増やしてよい。
【0021】
この構成によれば、前記電圧の平均値と前記電圧の基準値との電圧差が、前記第1しきい値を超える状態に近づいた場合に、前記第1判定部における前記推定方式の判定の頻度が増えるため、当該判定の精度が向上し、前記電池の残量の推定結果をより適切に選択することが可能となる。
【0022】
好適に、前記温度平均値算出部は、所定の平均化時間における前記温度の平均値を算出してよい。前記電圧平均値算出部は、前記平均化時間における前記電圧の平均値を前記温度の平均値に応じて補正してよい。
例えば、前記電圧平均値算出部は、前記温度の平均値と基準温度との差に応じた補正値と前記電圧の平均値との和を算出してよい。
【0023】
この構成によれば、前記平均化時間における前記電圧の平均値が、前記平均化時間における前記温度の平均値に応じて補正されるため、前記電池の温度の影響が加味された前記電圧の平均値が得られる。
【0024】
好適に、前記電圧平均値算出部は、前記残量推定部において推定された前記電池の残量に応じて、前記温度の平均値と前記基準温度との差に対する前記補正値の補正係数を変更してよい。
【0025】
この構成によれば、前記電池の残量の影響が加味された前記電圧の平均値が得られる。
【0026】
好適に、前記電圧基準値算出部は、最新の電池残量の推定値に比べて所定値だけ異なる推定値が前記第1推定部において得られた時点に対応する前記平均化時間を特定し、当該特定した平均化時間において前記電圧平均値算出部が算出した平均値を前記電圧の基準値として取得してよい。
【0027】
この構成によれば、最新の電池残量の推定値に比べて所定値だけ異なる推定値が前記第1推定部において得られた前記電池の状態を基準として、その状態において算出された前記電圧の平均値が前記電圧の基準値として取得される。これにより、前記電池の特性の個体ばらつきが存在する場合でも、そのばらつきに応じた適切な基準値が得られる。
【0028】
好適に、前記電圧基準値算出部は、複数の所定の電池残量に一致する推定値が前記第1推定部において得られた複数の時点に対応する複数の前記平均化時間を特定し、当該特定した複数の平均化時間において前記電圧平均値算出部が算出した複数の平均値を更に平均し、当該平均の結果を前記電圧の基準値として取得してよい。
【0029】
この構成によれば、複数の所定の電池残量に一致する推定値が得られた複数の前記電池の状態を基準として、それぞれの状態において算出された前記電圧の平均値を更に平均することにより、前記電圧の基準値として取得される。これにより、前記電池の特性の個体ばらつきが存在する場合でも、そのばらつきに応じた適切な基準値が得られる。
【0030】
好適に、上記電池残量推定装置は、前記電池の放電電流の推定値と、前記残量推定部において推定された前記電池の残量とに基づいて、前記電子装置が稼働可能な時間を推定する稼働時間推定部を有してよい。
【0031】
この構成によれば、前記推定された前記電池の残量と前記放電電流の推定値とに基づいて、比較的簡単な演算により前記電子装置の稼働可能な時間が推定される。
【0032】
好適に、前記電子装置の所定時間毎の推定の稼働状態に関する推定稼働状態情報に基づいて、前記電池の前記所定時間毎の推定放電電荷量を算出する推定放電電荷量算出部と、前記所定時間毎の推定放電電荷量と、前記残量推定部において推定された前記電池の残量とに基づいて、前記電子装置が稼働可能な時間を推定する稼働時間推定部とを有してよい。
【0033】
この構成によれば、前記電池の前記所定時間毎の推定放電電荷量と、前記推定された前記電池の残量とに基づいて、前記電子装置の稼働可能な時間が精度よく推定される。
【0034】
本発明の第2の観点は、電子装置へ電力を供給する電池の残量を推定する電池残量推定方法に関する。この電池残量推定方法は、前記電子装置の所定時間毎の稼働状態に関する稼働状態情報に基づいて、前記電池の前記所定時間あたりの放電電荷量を算出する工程と、前記所定時間あたりの放電電荷量に基づいて、前記電池からの放電電荷の総量を算出し、当該放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量を推定する工程と、前記電池の電圧に関する電圧情報を取得する工程と、前記電池の温度に関する温度情報を取得する工程と、前記温度情報に基づいて、前記電池の温度の平均値を算出する工程と、前記電圧情報に基づいて、前記電池の電圧の平均値を算出する工程と、前記電圧の平均値に基づいて、前記電池の電圧が急速に低下する前の当該電圧の基準値を算出する工程と、前記電圧の平均値と前記電圧の基準値との電圧差を第1しきい値と比較し、当該電圧差が第1しきい値より小さい場合、前記放電電荷の総量に基づいて前記電池の残量を推定する第1推定方式が適切であると判定し、当該電圧差が前記第1しきい値を超える場合、前記電圧の平均値及び前記温度の平均値に基づいて前記電池の残量を推定する第2推定方式が適切であると判定する工程とを有する。前記電池の残量を推定する工程は、前記第1推定方式により前記電池の残量を推定する工程と、前記第2推定方式により前記電池の残量を推定する工程とを含む。
【0036】
本発明の第3の観点は、上記第2の観点に係る電池残量推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、電流測定用の回路を設けることなく電池の残量を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る電池残量推定装置を含んだシステムの構成の一例を示す図である。
図2】電子装置の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る電池残量推定装置の構成の一例を示す図である。
図4】稼働状態情報、第1電荷量情報及び時間情報の一例を示す図である。図4Aは稼働状態情報の例を示し、図4Bは第1電荷量情報の例を示し、図4Cは時間情報の例を示す。
図5】電子装置の稼働状態の例を示す図である。
図6】電圧の平均値の温度補正に用いられる補正係数が、電池の残量の推定値に応じて異なる値に設定される例を示す図である。
図7】一定の電流で電池を放電した場合における電圧の変化の例を示す図である。
図8】第2推定方式において電池の残量を推定するために使用されるデータテーブルの例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る電池残量推定装置において電池の残量を推定する処理及び電子装置の稼働時間を推定する処理を説明するためのフローチャートである。
図10】電池の電圧の平均値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
図11】電池の電圧の基準値を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
図12】電池の電圧の基準値を算出する処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
図13】電池残量推定装置の変形例の構成を示す図である。
図14】電池残量推定装置の他の変形例の構成を示す図である。
図15】第1電荷量情報及び第2電荷量情報の変形例を示す図である。図15Aは第1電荷量情報の変形例を示し、図15Bは第2電荷量情報の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明の実施形態に係る電池残量推定装置2を含んだシステムの構成例を示す図である。図1に示すシステムにおいて、電池残量推定装置2は、LANやWAN、インターネットなどのネットワーク9を介して複数の電子装置1と通信を行う。各電子装置1は所定のセンサ機能を備えており、そのセンシング結果を電池残量推定装置2や他のサーバ装置へ送信する。なお、図1のシステムは一例であり、本発明の他の実施形態では、電池残量推定装置2における後述の演算処理の少なくとも一部を電子装置1において実行してもよい。
【0040】
図2は、電子装置1の構成の一例を示す図である。図2に示す電子装置1は、電池11と、電圧測定部12と、温度測定部13と、通信部14と、センサ部15と、処理部16と、記憶部17を有する。
【0041】
電池11は、電子装置1の各回路に電源として電圧Vbatを供給する。例えば電池11はボタン電池などの一次電池である。なお、本発明の他の実施形態において、電池11は充電可能な二次電池でもよい。また、電子装置1は、電池11の電圧Vbatを降圧若しくは昇圧して各回路に供給するレギュレータ回路を備えていてもよい。
【0042】
電圧測定部12は、電池11の電圧Vbatを測定する回路であり、例えば電圧Vbatを一定のゲインで増幅して出力するアンプ回路と、アンプ回路の出力をデジタル値に変換するADコンバータを含む。
【0043】
温度測定部13は、電池11の温度を測定する回路であり、例えば半導体温度センサやサーミスタなどを含んで構成される。
【0044】
通信部14は、ネットワーク9を介して電池残量推定装置2と通信を行う回路であり、例えばネットワーク9につながる無線LANのアクセスポイントとの間で無線通信を行うためのアンテナと送受信機を含む。
【0045】
センサ部15は、地磁気センサなどの各種のセンサを含んでおり、処理部16の制御に従ってセンシングを行う。
【0046】
処理部16は、電子装置1の全体的な動作を制御する回路であり、例えばコンピュータ(マイクロプロセッサなど)を含む。コンピュータは、記憶部17に格納されるプログラムの命令コードに従って処理を実行する。なお、処理部16は、全ての処理をコンピュータにより実行してもよいし、少なくとも一部の処理を専用のハードウェアによって実行してもよい。
【0047】
処理部16は、通信部14において上位装置から受信したコマンドに従って、センサ部15のセンシング動作を制御し、そのセンシング結果を通信部14から上位装置へ送信する。また処理部16は、電圧測定部12の電圧測定値及び温度測定部13の温度測定値を定期的に取得し、これらを電圧情報及び温度情報として電池残量推定装置2に送信する。この場合、処理部16は、一定期間内における複数の測定値(電圧,温度)をまとめて電池残量推定装置2に送信してもよいし、測定が行われる度にその測定値を電池残量推定装置2に送信してもよい。
【0048】
記憶部17は、処理部16において処理に使用される定数データや変数データを記憶する。記憶部17は、例えば、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、ハードディスクなどを含んで構成される。
【0049】
図3は、本発明の実施形態に係る電池残量推定装置の構成の一例を示す図である。図3に示す電池残量推定装置2は、通信部21と、表示部22と、入力部23と、処理部24と、記憶部25を有する。
【0050】
通信部21は、ネットワーク9を介して電子装置1と通信を行う回路であり、例えばネットワーク9に接続可能な有線の通信インターフェース装置や無線の送受信機を含む。
【0051】
表示部22と入力部23は、電池残量推定装置2のユーザーインターフェース装置である。表示部22は、処理部24から出力される映像信号に応じた映像(静止画や動画)を表示する装置であり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを含む。入力部23は、ユーザーの操作に応じた情報を処理部24に入力する装置であり、例えばキーボード、マウス、タッチパネルなどを含む。
【0052】
処理部24は、電池残量推定装置2の全体的な動作を制御する回路であり、例えばコンピュータ(マイクロプロセッサなど)を含む。コンピュータは、記憶部25に格納されるプログラム251の命令コードに従って処理を実行する。なお、処理部24は、全ての処理をコンピュータにより実行してもよいし、少なくとも一部の処理を専用のハードウェアによって実行してもよい。
【0053】
処理部24は、図3の例において、情報取得部201と、放電電荷量算出部202と温度平均値算出部203と、電圧平均値算出部204と、電圧基準値算出部205と、電池残量推定部206と、第1判定部209と、稼働時間推定部212とを含む。
【0054】
[情報取得部201]
情報取得部201は、通信部21において電子装置1と通信を行い、電子装置1における電池11の電圧に関する電圧情報及び電池11の温度に関する温度情報を取得する。電圧情報は1つ以上の電圧測定値を含み、温度情報は1つ以上の温度測定値を含む。情報取得部201は、取得した電圧情報及び温度情報を記憶部25に格納する。
【0055】
[放電電荷量算出部202]
放電電荷量算出部202は、電子装置1の所定時間TRごとの稼働状態に関する稼働状態情報に基づいて、電池11の所定時間TRあたりの放電電荷量Dを算出する。例えば、放電電荷量算出部202は、電子装置1が所定の動作を実行する期間(動作期間)における第1放電電荷量DXと、電子装置1が待機状態となる期間(待機期間)における第2放電電荷量DSとの和を、放電電荷量Dとして算出する。
【0056】
放電電荷量算出部202は、所定時間TR内の動作期間における第1放電電荷量DXを、次に述べる稼働状態情報と第1電荷量情報とに基づいて算出する。
【0057】
図4Aは、稼働状態情報の例を示す。稼働状態情報は、電子装置1の所定の動作Xが所定時間TR内に実行された回数Kに関する情報を、動作の種類ごとに含んでいる。図4Aの例では、動作の種類として、通信部14における無線通信X(1)と、センサ部15における計測X(2)とが含まれている。所定時間TRにおいて、無線通信X(1)の実行回数が「K(1)」、計測X(2)の実行回数が「K(2)」となっている。
【0058】
稼働状態情報は、例えば、電子装置1の動作を制御する図示しないサーバ装置から取得してもよいし、電子装置1自身から取得してもよい。また、電子装置1の動作を電池残量推定装置2が制御する場合には、その制御の結果若しくは制御の予定として記憶部25に格納される情報を稼働状態情報として用いてもよい。
【0059】
図4Bは、第1電荷量情報の例を示す。第1電荷量情報は、1回の動作Xで電池11から放電される第1電荷量QXに関する情報を、動作の種類ごとに含んでいる。図4Bの例では、無線通信X(1)の1回あたりの放電電荷量(第1電荷量)が「QX(1)」、計測X(2)の1回あたりの放電電荷量(第1電荷量)が「QX(2)」となっている。第1電荷量情報は、例えば各動作の1回あたりの放電電荷量を実測するか、あるいは、シミュレーションで計算することにより取得され、予め記憶部25に格納される。
【0060】
電子装置1の動作がN種類あるものとし、「i」を1からNまでの任意の整数とする。動作X(i)の所定時間TRにおける実行回数を「K(i)」、動作X(i)の1回あたりの放電電荷量(第1電荷量)を「QX(i)」で表すと、所定時間TR内の動作期間における第1放電電荷量DXは次の式で求められる。
【0061】
【数1】
【0062】
放電電荷量算出部202は、所定時間TR内の待機期間における第2放電電荷量DSを、上述した稼働状態情報と、各動作の1回あたりの実行時間に関する時間情報と、待機状態での放電電荷量に関する第2電荷量情報とに基づいて算出する。
【0063】
図4Cは、時間情報の例を示す。時間情報は、電子装置1による動作の1回あたりの実行時間に関する情報を、動作の種類ごとに含んでいる。図4Cの例では、無線通信X(1)の1回あたりの実行時間が「TX(1)」、計測X(2)の1回あたりの実行時間が「TX(2)」となっている。時間情報は、例えば各動作の1回あたりの実行時間を実測するか、あるいは、シミュレーションで計算することにより取得され、予め記憶部25に格納される。
【0064】
第2電荷量情報は、電子装置1が待機状態のときに電池11から単位時間あたりに放電される第2電荷量QSに関する情報である。第2電荷量QSは、待機状態における単位時間あたりの放電電荷量(放電電流)を実測するか、あるいは、シミュレーションで計算することにより取得され、予め記憶部25に格納される。
【0065】
図5は、電子装置1の稼働状態の例を示す図である。この図5から分かるように、所定時間TR内における待機期間TSは、所定時間TR内における全ての動作の実行時間を所定時間TRから引いた残りの期間に相当する。動作X(i)の1回あたりの実行時間を「TX(i)」と表すと、待機期間TSは次の式で求められる。
【0066】
【数2】
【0067】
所定時間TR内の待機期間における第2放電電荷量DSは、第2電荷量QSと待機期間TSを用いて、次の式で求められる。
【0068】
【数3】
【0069】
電池11の所定時間TRあたりの放電電荷量Dは、第1放電電荷量DXと第2放電電荷量DSとの和であるため、式(1)〜(3)を用いて次の式で求められる。
【0070】
【数4】
【0071】
従って放電電荷量算出部202は、稼働状態情報と、第1電荷量情報と、時間情報と、第2電荷量情報とに基づいて、式(4)により、所定時間TRあたりの放電電荷量Dを算出する。
【0072】
[温度平均値算出部203]
温度平均値算出部203は、電子装置1から取得した温度情報(電池11の温度計測値)に基づいて、所定の平均化時間TAにおける電池11の温度の平均値を算出する。例えば温度平均値算出部203は、現在の時刻から平均化時間TA前までの温度計測値の時系列データを記憶部25から読み出して、その平均値を算出する。
【0073】
[電圧平均値算出部204]
電圧平均値算出部204は、電子装置1から取得した電圧情報(電池11の電圧計測値)に基づいて、平均化時間TAにおける電池11の電圧の平均値を算出する。例えば、電圧平均値算出部204は、現在の時刻から平均化時間TA前までの電圧計測値の時系列データを記憶部25から読み出して、その平均値を算出する。
【0074】
また、電圧平均値算出部204は、平均化時間TAにおける電圧の平均値を、温度平均値算出部203で得られた温度の平均値に応じて補正する。平均化時間TAにおける電圧の平均値を「Va」、温度の平均値を「Ma」、補正後の電圧の平均値を「Vb」、補正係数を「α」、基準温度を「Ms」とすると、補正後の電圧の平均値Vbは次の式で表される。
【0075】
【数5】
【0076】
式(5)における右辺の第2項は、温度に応じて変化する補正値Vcであり、温度の平均値Maと基準温度Msとの差に応じた値を持つ。電圧平均値算出部204は、この補正値Vcと電圧の平均値Vaとの和を、補正後の電圧の平均値Vbとして算出する。
【0077】
また、電圧平均値算出部204は、後述する電池残量推定部206で推定された電池11の残量に応じて、温度の平均値Maと基準温度Msとの差に対する補正値Vcの補正係数αを変更する。図6は、補正係数αが電池の残量の推定値に応じて異なる値に設定される例を示す図である。図6において、「α(90%)」は残量の推定値が90%の場合における補正係数を示し、「α(80%)」は残量の推定値が80%の場合における補正係数を示す。残量の推定値は、例えば、後述する第1判定部209において適切と判定された推定方式により得られた推定値である。
【0078】
図7は、一定の電流で電池11を放電した場合における電圧の変化の例を示す図である。縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。図7において示すように、電池11の電圧は温度に応じて変動する。式(5)の第2項の補正値Vcは、温度に応じて変化する電圧の平均値Vaを、基準温度Msの電圧に換算するためのものであり、基準温度Msからの温度のずれ(Ms−Ma)と電圧のずれ(Vb−Va)から補正係数を用いて近似的に得られた値である。補正係数αは、実際の測定結果やシミュレーションの計算に基づいて取得され、記憶部25に予め格納される。
【0079】
なお、図7に示すように、電池からの放電電荷の総量(総放電電荷量)が微小な初期状態においては、電池11の電圧が急激に低下する傾向がある。そのため、電圧平均値算出部204は、後述する第1推定部207において算出される放電電荷の総量が所定の最小値を超えた後の電圧情報(電圧測定値)に基づいて、電圧の平均値Vbを算出する。これにより、総放電電荷量が微小な初期状態における電圧の急激な変化が電圧の平均値Vbの算出結果に影響を与え難くなるため、安定した精度のよい電圧の平均値Vbが得られる。
【0080】
[電圧基準値算出部205]
電圧基準値算出部205は、電圧平均値算出部204で算出された電圧の平均値Vbに基づいて、電池11の電圧が急速に低下する前の当該電圧の基準値Vsを算出する。具体的には、電圧基準値算出部205は、最新の電池残量の推定値Uに比べて所定値ΔUだけ異なる推定値U+ΔUが後述の第1推定部207において得られた時点に対応する平均化時間TAを特定し、当該特定した平均化時間TAにおいて電圧平均値算出部204が算出した平均値Vbを、電圧の基準値Vsとして取得する。例えば、電圧平均値算出部204と第1推定部207が同じ周期で処理を繰り返すものとすると、電圧基準値算出部205は、第1推定部207において推定値U+ΔUに最も近い推定結果が得られた処理サイクルと同一若しくは隣接する処理サイクルにおいて電圧平均値算出部204が算出した平均値Vbを、電圧の基準値Vsとして取得する。電圧の基準値Vsは、後述する第1判定部209における電池残量の推定方式の判定に使用される。
【0081】
[電池残量推定部206]
電池残量推定部206は、電池11の残量を推定する。ここでいう「残量」は、電池11から取り出し得る最大の電荷量(公称容量若しくは実効容量)と、現実に放電された電荷量との関係を表す数値であり、例えば、最大の電荷量(公称容量若しくは実効容量)から現実の放電電荷量を引いた残りの電荷量、あるいは、この残りの電荷量を最大の電荷量(公称容量若しくは実効容量)で除した割合である。ここでは一例として、「残量」を割合の意味で使用するが、電池残量推定部206において算出される数値はこの割合に限定されず、電池11から取り出し得る最大の電荷量と現実の放電電荷量との関係を表す他の数値でもよい。
【0082】
電池残量推定部206は、異なる推定方式によって電池11の残量を推定する2つの推定部(第1推定部207、第2推定部208)を含む。
【0083】
第1推定部207は、第1推定方式により電池11の残量を推定する。第1推定方式では、放電電荷量算出部202において算出された所定時間TRあたりの放電電荷量Dに基づいて、電池11からの放電電荷の総量を算出し、この放電電荷の総量に基づいて電池11の残量の推定値Uを算出する。
【0084】
例えば、放電電荷量算出部202が所定時間TRと同じ周期で放電電荷量Dを算出する場合、第1推定部207は、放電電荷量Dを積算することによって、放電電荷の総量を算出する。
【0085】
また、放電電荷量算出部202が所定時間TRより長い周期TLで放電電荷量Dを算出する場合、第1推定部207は、1周期TLにおける推定平均電流IFを「IF=D/TR」とし、1周期TLあたりの放電電荷量DLを「DL=IF×TL」により算出する。第1推定部207は、この放電電荷量DLを積算することにより、放電電荷の総量を算出する。
【0086】
第1推定部207は、電池11から取り出し得る最大の電荷量(公称容量若しくは実効容量)を「B」、放電電荷の総量を「S」、電池11の残量の推定値を「U」とした場合に、電池11の残量の推定値Uを「U=(B−S)/B」により算出する。
【0087】
他方、第2推定部208は、第2推定方式により電池11の残量を推定する。第2推定方式では、電圧平均値算出部204で算出された電圧の平均値Vbと、温度平均値算出部203で算出された温度の平均値Maに基づいて、電池11の残量を推定する。
【0088】
図8は、第2推定方式において電池11の残量を推定するために使用されるデータテーブルの例を示す図である。図8に示すテーブルの各数値は、電池11の電圧を示す。データテーブルの各行は、温度が同一の場合における電池11の電圧と残量との関係を表す。このデータテーブルの数値は、実際の測定結果やシミュレーションの計算に基づいて取得され、記憶部25に予め格納される。第2推定部208は、この図8に示すようなデータテーブルを参照して、温度の平均値Maと電圧の平均値Vbとに対応する残量の推定値Uを取得する。
【0089】
[第1判定部209]
第1判定部209は、電圧平均値算出部204で算出された電圧の平均値Vbと電圧基準値算出部205で算出された電圧の基準値Vsとの電圧差(Vs−Vb)に基づいて、上述した第1推定方式と第2推定方式のどちらが適切かを判定する。すなわち、第1判定部209は、電圧差(Vs−Vb)を第1しきい値Th1と比較し、電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1より小さい場合は第1推定方式が適切であると判定し、電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1より大きい場合は第2推定方式が適切であると判定する。
【0090】
図7において示すように、電池11の電圧は、残量が比較的大きい場合は概ね一定の電圧に保たれるが、残量があるレベルより小さくなると急速に低下する。電池11の電圧が概ね一定となる範囲では、電圧に基づく第2推定方式を用いると誤差が大きくなるため、放電電荷の総量に基づく第1推定方式が適切である。電池11の電圧が急速に低下する範囲では、放電電荷の総量の変化に比べて電圧の変化の方が顕著になることや、放電電荷の総量に含まれる累積的な誤差が大きくなることから、第2推定方式が適切である。
【0091】
電圧の平均値Vbと基準値Vsとの電圧差(Vs−Vb)は、電池11の電圧の急速な低下に伴って増大する。従って、電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1より小さい場合は、電池11の電圧が概ね一定となる範囲であり、第1推定方式が適切である。電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1より大きくなった場合は、電池11の電圧が急速に低下する範囲に入ったと判断できるため、第2推定方式が適切である。
【0092】
[稼働時間推定部212]
稼働時間推定部212は、電池11の放電電流の推定値と、電池残量推定部206において推定された電池11の残量とに基づいて、電子装置1が稼働可能な時間を推定する。電池11の放電電流の推定値は、例えば、放電電荷量算出部202において算出された最新の所定時間TRあたりの放電電荷量Dから、「D/TR」によって表される値である。稼働時間推定部212は、電池残量推定部206において推定された電池11の残量に対応する電荷量(電池11から取り出し可能な残りの電荷量)を、放電電流の推定値で割り算することにより、電子装置1が稼働可能な時間の推定値を算出する。
【0093】
なお、電子装置1の稼働予定が決まっている場合には、その稼働予定に対応した電池11の放電電流の推定値を用いて稼働時間の推定値を算出してもよい。
【0094】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る電池残量推定装置2の動作について、図9図11のフローチャートを参照して説明する。
【0095】
図9は、本発明の実施形態に係る電池残量推定装置2において電池11の残量を推定する処理及び電子装置1の稼働時間を推定する処理を説明するためのフローチャートである。電池残量推定装置2は、図9に示す処理を一定の周期で(例えば所定時間TRごとに)繰り返し実行する。
【0096】
ST100:
情報取得部201は、電子装置1から電圧情報(電圧測定値)及び温度情報(温度測定値)を取得する。
【0097】
ST105:
放電電荷量算出部202は、所定時間TRあたりの稼働状態情報(図4A)と、第1電荷量情報(図4B)と、時間情報(図4C)と、第2電荷量情報とに基づいて、式(4)により、所定時間TRあたりの放電電荷量Dを算出する。
【0098】
ST110:
第1推定部207は、放電電荷量算出部202において算出された所定時間TRあたりの放電電荷量Dに基づいて、電池11からの放電電荷の総量Sを算出する。例えば第1推定部207は、放電電荷量算出部202において所定時間TRごとに算出される放電電荷量Dを積算する。
【0099】
ST115:
第1推定部207は、ステップST110で算出した放電電荷の総量Sと、電池11から取り出し得る最大の電荷量Bとに基づいて、電池11の残量の推定値Uを「U=(B−S)/B」により算出する。
【0100】
ST120:
温度平均値算出部203は、ステップST100において取得された温度情報(温度測定値)に基づいて、平均化時間TA(例えば直近の24時間)における温度の平均値Maを算出する。
また、電圧平均値算出部204は、ステップST100において取得された電圧情報(電圧測定値)と、温度平均値算出部203で算出された温度の平均値Maとに基づいて、温度補正された電圧の平均値Vbを算出する。
【0101】
図10は、電圧平均値算出部204において電圧の平均値Vbを算出する処理を説明するためのフローチャートである。電圧平均値算出部204は、ステップST100において取得された電圧情報(電圧計測値)に基づいて、平均化時間TAにおける電池11の電圧の平均値Vaを算出する(ST200)。また電圧平均値算出部204は、電池残量推定部206で推定された電池11の残量に対応する補正係数αを、記憶部25に予め格納されたデータテーブル(図6)から読み出す(ST205)。電圧平均値算出部204は、ステップST200で算出した電圧の平均値Vaに対して、温度の平均値Maと補正係数αとを用いて式(5)の温度補正を行い、電圧の平均値Vbを算出する(ステップST210)。
【0102】
ST125:
第2推定部208は、電圧平均値算出部204で算出された電圧の平均値Vbと、温度平均値算出部203で算出された温度の平均値Maに基づいて、記憶部25のデータテーブル(図8)を参照することにより、電池11の残量を推定する。
【0103】
ST130:
電圧基準値算出部205は、ステップST120で算出された電圧の平均値Vbに基づいて、電池11の電圧が急速に低下する前の当該電圧の基準値Vsを算出する。
【0104】
図11は、電池11の電圧の基準値Vsを算出する処理を説明するためのフローチャートである。電圧基準値算出部205は、最新の電池残量の推定値Uに比べて所定値ΔUだけ異なる推定値U+ΔUが第1推定部207において得られた過去の平均化時間TAを特定する(ST300)。例えば電圧基準値算出部205は、第1推定部207によって記憶部25に保存された過去の推定結果の中から、推定値U+ΔUに最も近い推定結果を検索し、この検索した推定結果が得られた処理サイクル(図9に示す処理フローの1回分のサイクル)を特定する。処理サイクル毎に平均化時間TAの始まりと終わりの時刻が異なるため、処理サイクルを特定することは平均化時間TAを特定することと等価である。電圧基準値算出部205は、特定した処理サイクルに対応する平均化時間TAにおいて電圧平均値算出部204が算出した平均値Vbを、電圧の基準値Vsとして取得する(ST305)。
【0105】
ST135:
第1判定部209は、ステップST120で算出された電圧の平均値VbとステップST130で算出された電圧の基準値Vsとの電圧差(Vs−Vb)を第1しきい値Th1と比較し、電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1より小さい場合は第1推定方式(ステップST115)が適切であると判定し、電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1より大きい場合は第2推定方式(ステップST125)が適切であると判定する。
【0106】
ST140:
稼働時間推定部212は、ステップST135で適切と判定された推定方式による電池11の残量の推定値(ステップST115の推定値又はステップST125の推定値)と、電池11の放電電流の推定値とに基づいて、電子装置1が稼働可能な時間を推定する。例えば、稼働時間推定部212は、ステップST105で算出された最新の放電電荷量Dを所定時間TRから得られる「D/TR」を推定平均電流とし、電池残量推定部206において推定された電池11の残量に対応する残りの電荷量を、この推定平均電流で割り算することにより、電子装置1が稼働可能な時間の推定値を算出する。
【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、稼働状態情報に基づいて所定時間TRあたりの放電電荷量Dが算出され、この放電電荷量DRに基づいて放電電荷の総量Sが算出され、放電電荷の総量Sに基づいて電池11の残量が推定されるため、電流測定用の回路が不要である。従って、電流測定用の回路が必要な従来の装置に比べてサイズを小型化できるとともに、消費電力を低減して稼働時間を長くすることができる。
【0108】
本実施形態によれば、放電電荷の総量Sに基づく第1推定方式、及び、電圧の平均値Vb及び温度の平均値Maに基づく第2推定方式により電池11の残量が推定される。電池11の電圧が急速に低下する前の電圧の基準値Vsと電圧の平均値Vbとの電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1より小さい場合は、第1推定方式が適切であると判定され、電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1を超える場合は、第2推定方式が適切であると判定される。これにより、電池11の電圧が急速に低下する前の状態では、第1推定方式が適切であると判定され、電池11の電圧が急速に低下する状態では、第2推定方式が適切であると判定される。従って、電池11の残量の推定結果として、第1推定方式による推定結果、又は、第2推定方式による推定結果を適切に選択できる。また、電圧の基準値Vsが電圧の平均値Vbに基づいて算出されるため、電池の特性の個体ばらつきが存在する場合でも、そのばらつきに応じた適切な基準値Vsを得ることができ、推定方式の判定を正確に行うことができる。
【0109】
本実施形態によれば、最新の電池残量の推定値Uに比べて所定値ΔUだけ異なる推定値U+ΔUが第1推定部207において得られた電池11の状態を基準として、その状態において算出された電圧の平均値Vbが電圧の基準値Vsとして取得される。これにより、電池の特性の個体ばらつきが存在する場合でも、そのばらつきに応じた適切な基準値を得ることができる。
【0110】
本実施形態によれば、平均化時間TAにおける電圧の平均値Vaが、平均化時間TAにおける温度の平均値Maに応じて補正されるため(式(5))、電池11の温度の影響が加味された適切な電圧の平均値Vbを得ることができる。また、電池残量推定部206において推定された電池11の残量に応じて、電圧の平均値Vaを温度の平均値Maと基準温度Msとの差(Ms−Ma)に対する補正値Vcの補正係数αが変更されるため(図6)、電池11の残量の影響が加味された電圧の平均値Vbを得ることができる。従って、推定方式の判定を正確に行うことができるとともに、第2推定方式において電池11の残量を精度よく推定できる。
【0111】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば以下に挙げるような種々のバリエーションを含んでいる。
【0112】
(変形例1)
上述した実施形態において、電圧基準値算出部205は、最新の残量の推定値Uから相対的に決定される推定値U+ΔUでの電圧の平均値Vbを電圧の基準値Vsとして取得する。これに対し、本変形例の電圧基準値算出部205は、複数の所定の電池残量に一致する推定値が第1推定部207において得られた複数の時点に対応する複数の平均化時間TAを特定し、この複数の平均化時間TAにおいて電圧平均値算出部204が算出した複数の平均値Vbを更に平均し、この平均の結果を電圧の基準値Vsとして取得する。
【0113】
図12は、電池11の電圧の基準値Vsを算出する処理の変形例を説明するためのフローチャートである。電圧基準値算出部205は、所定の複数の推定値(例えば95%,90%,85%,80%,75%,70%)が得られた過去の複数の平均化時間TAを特定する(ST400)。例えば電圧基準値算出部205は、第1推定部207によって記憶部25に保存された過去の推定結果の中から、所定の推定値(95%,90%,…,70%)に最も近い推定結果をそれぞれ検索し、この検索した推定結果が得られた処理サイクル(図9に示す処理フローの1回分のサイクル)をそれぞれ特定する。電圧基準値算出部205は、特定した複数の処理サイクルに対応する複数の平均化時間TAにおいて電圧平均値算出部204が算出した複数の平均値Vbを記憶部25から読み出し(ST405)、これらを更に平均することにより、電圧の基準値Vsを算出する(ST410)。
【0114】
この変形例によれば、所定の複数の推定値に対応する複数の電圧の平均値Vbを平均化することによって電圧の基準値Vsを算出することにより、残量減少時の電圧低下が比較的緩やかな場合でも、電圧の基準値Vsと電圧の平均値Vbとの電圧差(Vs−Vb)が確実に増大する。そのため、第1判定部209において推定方式の判定を正確に行うことができる。
【0115】
(変形例2)
図13は、電池残量推定装置2の変形例の構成を示す図である。この変形例の電池残量推定装置2は、図3に示す電池残量推定装置2の処理部24に第2判定部210と制御部211を追加したものである。
【0116】
第2判定部210は、電圧平均値算出部204において算出される電圧の平均値Vbと電圧基準値算出部205において算出される電圧の基準値Vsとの電圧差(Vs−Vb)を、第1しきい値Th1より小さい第2しきい値Th2と比較する。
【0117】
制御部211は、電子装置1を制御する機能を持ったブロックである。制御部211は、電圧差(Vs−Vb)が第2しきい値Th2より大きいと第2判定部210が判定した場合、電池11の電圧及び温度の測定頻度を増やすように通信部21から電子装置1へ制御信号を送信する。
【0118】
また、この変形例において、情報取得部201、温度平均値算出部203、電圧平均値算出部204、電圧基準値算出部205及び第1判定部209は、電圧差(Vs−Vb)が第2しきい値Th2より大きいと第2判定部210が判定した場合に、それぞれの動作頻度を増やす。すなわち、情報取得部201は電圧情報及び温度情報の取得の頻度を増やし、温度平均値算出部203は温度の平均値Maの算出頻度を増やし、電圧平均値算出部204は電圧の平均値Vbの算出頻度を増やし、電圧基準値算出部205は電圧の基準値Vsの算出頻度を増やし、第1判定部209は推定方式の判定頻度を増やす。
【0119】
この変形例によれば、電圧の平均値Vbと電圧の基準値Vsとの電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1を超える状態に近づいた場合、第1推定部207における推定方式の判定の頻度が増えるため、判定の精度が向上し、電池の残量の推定結果をより適切に選択できる。逆に、電圧差(Vs−Vb)が第1しきい値Th1から離れた状態において、第1推定部207における推定方式の判定の頻度や他のブロックの動作頻度を減らすことができるため、電子装置1や電池残量推定装置2における消費電力を低減できる。
【0120】
(変形例3)
図14は、電池残量推定装置2の変形例の構成を示す図である。この変形例の電池残量推定装置2は、図3に示す電池残量推定装置2の処理部24に推定放電電荷量算出部213を追加したものである。
【0121】
推定放電電荷量算出部213は、電子装置1の所定時間毎の推定の稼働状態に関する推定稼働状態情報に基づいて、電池1の所定時間毎の推定放電電荷量を算出する。推定稼働状態情報は、既に説明した稼働状態情報(図4A)と同様の情報であり、推定放電電荷量の算出方法は、放電電荷量算出部202における放電電荷量Dの算出方法と同様である。放電電荷量算出部202が実際の放電電荷量を算出するのに対して、推定放電電荷量算出部213は現時点より先の放電電荷量を算出する。
【0122】
本変形例の稼働時間推定部212は、電池残量推定部206において推定された電池11の残量と、推定放電電荷量算出部21において算出された所定時間毎の推定放電電荷量とに基づいて、電子装置1が稼働可能な時間を推定する。例えば、稼働時間推定部212は、電池11の残量の推定値に対応する残りの電荷量に到達するまで、所定時間毎の推定放電電荷量の積算を繰り返し、その積算の繰り返し回数に対応する電池11の放電時間を稼働時間の推定結果として取得する。
【0123】
この変形例によれば、所定時間毎の推定放電電荷量に基づいて、より正確な稼働時間を推定できる。
【0124】
(変形例4)
図15Aは、第1電荷量情報の変形例を示す図である。この変形例において、第1電荷量情報は、第1電荷量QXの温度特性に関する情報を含む。図15Aに示す第1電荷量情報は、温度特性に関する情報として、複数の所定の温度にそれぞれに対応した第1電荷量QXを含む。放電電荷量算出部202は、第1放電電荷量DXの算出に用いる第1電荷量QXを、第1電荷量QXの温度特性に関する情報と、温度情報が示す電池11の温度とに応じて変更する。例えば放電電荷量算出部202は、温度の平均値Maに対応した第1電荷量QXをデータテーブル(図15A)から読み出して、第1放電電荷量DXの算出に用いる。
【0125】
この変形例によれば、第1放電電荷量DXの算出に用いる第1電荷量QXが、第1電荷量QXの温度特性と温度情報が示す電池11の温度とに応じて変更される。これにより、電池11の温度に合わせた適切な第1電荷量QXを用いて第1放電電荷量DXが算出されるため、第1放電電荷量DXの精度が向上する。
【0126】
(変形例5)
図15Bは、第2電荷量情報の変形例を示す図である。この変形例において、第2電荷量情報は、第2電荷量QSの温度特性に関する情報を含む。図15Bに示す第2電荷量情報は、温度特性に関する情報として、複数の所定の温度にそれぞれに対応した第2電荷量QSを含む。放電電荷量算出部202は、第2放電電荷量DSの算出に用いる第2電荷量を、第2電荷量QSの温度特性に関する情報と、温度情報が示す電池11の温度とに応じて変更する。すなわち、放電電荷量算出部202は、温度の平均値Maに対応した第2電荷量QSをデータテーブル(図15B)から読み出して、第2放電電荷量DSの算出に用いる。
【0127】
この変形例によれば、第2放電電荷量DXの算出に用いる第2電荷量QSが、第2電荷量QSの温度特性と温度情報が示す電池11の温度とに応じて変更される。これにより、電池11の温度に合わせた適切な第2電荷量QSを用いて第2放電電荷量DSが算出されるため、第2放電電荷量DSの精度が向上する。
【符号の説明】
【0128】
1…電子装置、11…電池、12…電圧測定部、13…温度測定部、14…通信部、15…センサ部、16…処理部、17…記憶部、2…電池残量推定装置、21…通信部、22…表示部、23…入力部、24…処理部、25…記憶部、251…プログラム、201…情報取得部、202…放電電荷量算出部、203…温度平均値算出部、204…電圧平均値算出部、205…電圧基準値算出部、206…電池残量推定部、207…第1推定部、208…第2推定部、209…第1判定部、210…第2判定部、211…制御部、212…稼働時間推定部、213…推定放電電荷量算出部、9…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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図15