(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616987
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】インピーダンス測定装置およびインピーダンス測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
G01R27/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-181613(P2015-181613)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-58176(P2017-58176A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淳司
(72)【発明者】
【氏名】長井 秀行
【審査官】
山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−006144(JP,A)
【文献】
特開2006−266960(JP,A)
【文献】
特開2007−132806(JP,A)
【文献】
特開2008−175687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給する交流源と、
前記測定信号に同期する基準信号を生成する基準信号生成部と、
前記試料に現れる検出信号を前記基準信号で同期検波する同期検波部と、
前記同期検波部で同期検波された信号の直流成分を抽出して前記試料の交流インピーダンスを測定する手段と
を備えたインピーダンス測定装置であって、
前記基準信号生成部は、
前記試料に測定信号を供給しない状態で、所定の測定用周波数であって、位相が直交する二つの基準信号を生成する手段を備え、
前記同期検波部は、
測定信号を供給しない状態の試料に現れる検出信号を前記二つの基準信号でそれぞれ同期検波する手段を備えた
ことを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のインピーダンス測定装置であって、
前記同期検波部は、
通過周波数が異なる複数のバンドパスフィルタと、
前記交流源が与える測定信号の周波数により前記複数のバンドパスフィルタを選択する選択手段と
を備えることを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のインピーダンス測定装置であって、
前記交流源は、前記試料のインピーダンス測定を行うときは、前記試料に現れたノイズレベルが低い周波数の測定信号を供給する
ことを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のインピーダンス測定装置であって、
前記試料は、電池であって、前記交流源は、定電流源である
ことを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項5】
測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給し、前記試料に現れる検出信号を前記測定信号に同期する基準信号で同期検波し、同期検波された信号の直流成分を抽出して前記試料の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、
前記試料に測定信号を供給しない状態で前記試料に現れる検出信号を直交する位相の第一と第二の基準信号でそれぞれ同期検波を行って、測定信号が供給されない状態で前記試料に現れるノイズレベルを測定する第一の測定ステップを複数周波数の測定信号で実行し、
前記第一測定ステップで測定した複数周波数の測定信号のうち、ノイズレベルの小さい周波数を選択して前記試料に測定信号を供給して前記試料のインピーダンスを測定する第二の測定ステップを実行する
ことを特徴とするインピーダンス測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載のインピーダンス測定方法であって、
前記試料に現れる検出信号を通過させる複数のバンドパスフィルタを備え、
前記第一の測定ステップで、複数のバンドバスフィルタを選択して、複数周波数の測定信号について、ノイズレベルを測定し、
前記第二の測定ステップで、ノイズレベルの少ない周波数のバンドパスフィルタを選択して前記試料のインピーダンス測定を実行する
ことを特徴とするインピーダンス測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス測定装置およびインピーダンス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路を構成する素子がもつ内部インピーダンスを測定する方法として、測定対象である試料に交流信号を与えてその電気応答を測定する交流インピーダンス測定法がある。この方法では、試料がもつ抵抗成分、キャパシタンス成分、インダクタンス成分の大きさを調べることができる。また、それらの成分が試料内でどのような等価回路を構成しているか、あるいは、その等価回路のパラメータを求めることができる。
【0003】
このようなインピーダンス測定法として、定電流源から試料に正弦波の測定交流電流を供給し、試料に現れる電圧信号を、供給する測定交流電流に同期する同一周波数の基準信号(または参照信号ともいう)で同期検波することで、試料に現れるノイズ成分の影響を小さくする同期検波を用いたインピーダンス測定方法がある。
同期検波によるインピーダンス測定装置については、以下の先行技術文献がある。
【0004】
以下図面を参照して同期検波によるインピーダンス測定を説明する。
図6は、従来の同期検波によるインピーダンス測定装置を説明する図である。
測定交流電流iは、定電流源10から、試料11(DUT:device under testの略)に供給される。なお、ここでは、試料11は、内部抵抗Rxをもつ電池である。抵抗(Rs)12は、測定交流電流iの電流値を検出するための電流検出用抵抗であり、定電流源10、試料11に直列に挿入されている。符号15は、測定交流電流iに応じて試料11に現れた検出信号(電圧信号)を増幅する増幅器である。同様に、符号16は、電流検出用抵抗(Rs)12で検出された電圧信号を増幅する増幅器である。増幅器15で増幅された電圧検出信号v
1は、測定周波数を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)17を通して同期検波器20に入力される。また、測定交流電流iに同期する基準信号v
2は増幅器16で増幅され同期検波器20に入力される。同期検波器20は、電圧検出信号v
1を基準信号v
2で同期検波し、その検波出力は、交流成分を除去するためのローパスフィルタ(LPF)22に入力され交流成分が除去されて、アナログデジタルコンバータ(ADC)23に入力される。アナログデジタルコンバータ23は、同期検波出力をデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、図示されない演算装置に入力され、試料11の交流インピーダンス値、等価回路のパラメメータ等が演算され、これらの値は、図示しない表示装置等に表示され、あるいはプリントされて出力される。
【0005】
次に
図7の波形図を参照して、
図6のインピーダンス測定装置でのインピーダンス測定動作を説明する。
定電流源10からは、測定交流電流として、i=Isin(ω
1t)の正弦波が試料11に印加される。試料11の両端には、電池の内部抵抗R
xに対応した電圧が発生し、その電圧は増幅器15で増幅されてv
1=iR
xとして出力される。また、増幅器16からは、電流検出抵抗R
sに対応したv
2=iRsが出力され、同期検波器20で同期検波される。ここで、v
1、v
2は、
v
1=Vsin(ω
1t)=IR
xsin(ω
1t)
v
2=iRs=IR
ssin(ω
1t)=ksin(ω
1t)
である。なお、kは定数とする(IとRsは一定であるとする)
同期検波出力は、
v
1×v
2=kIR
xsin(ω
1t)sin(ω
1t)
=1/2・kIR
x[cos(0)−cos(2ω
1t)]
交流成分をローパスフィルタで遮断すると、アナログデジタル変換器23の入力は、
V
AD=1/2・kIR
xcos(0)=1/2・kIR
x
となり、これにより、試料の抵抗値Rxは、
R
x=2/k・(V
AD/I)
により求めることができる。
図7のv
1、v
2、v
1×v
2、v
ADの波形がそれぞれ、
図6の信号v
1、v
2、v
1×v
2、v
ADの信号波形になる。
【0006】
このように、試料の両端の電圧検出信号を測定交流電流と同位相の基準信号で同期検波し、ローパスフィルタにより交流成分(cos(2ω
1t))を除去することにより、直流成分のみが抽出されるので、電池など純抵抗以外の成分を含む測定対象の試料の実効インピーダンスを求めることができる。また、同期検波で現れた交流成分はローパスフィルタで除去されるため、交流であるノイズの影響を除去でき、ノイズに埋もれた微小信号を取り出すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−132806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
測定対象となる試料は、電気回路を構成する要素であるため、ノイズが重畳されるものがあり、そのノイズがインピーダンス測定に影響を与える。例えば、UPS(無停電電源装置)に装備されているバッテリを測定試料とする場合である。UPSは、常時稼働している必要があるため、インバータやコンバータが稼働して充電あるいは放電を行っている。このため、インバータやコンバータから生ずるノイズがバッテリに印加されていることが多い。また、負荷が接続されているため、負荷側からもノイズが入り込むことが多い。このように、UPSのバッテリを試料としてインピーダンス測定しようとすると、測定交流電流が印加された試料からノイズ成分を検出することになる。
【0009】
しかしながら、測定交流電流と同位相の基準信号を用いて同期検波を行い、ローパスフィルタで交流成分を除去してもノイズを取りきることができない場合がある。
【0010】
ノイズとして測定周波数と同一周波数のノイズが検出信号に入ると、同期検波出力の直流成分に重畳されているため、ローパスフィルタでは除去することはできない。また、測定周波数に近い周波数のノイズであると、ローパスフィルタの特性から、すべてを除去することは難しい。
例えば、測定周波数が1kHzであり、ノイズの周波数が1.01kHzであった場合、直流ではない低い交流成分は、除去できても少しであって、すべてを除くことはできない。また、バンドパスフィルタも測定周波数である中心周波数の近傍の周波数のノイズを除くことはできないから、測定周波数近傍のノイズを除去することは難しい。
例えば、ローパスフィルタは、
図8に示すような周波数特性を有しており、高い周波数については十分取り除くことができるが、低い周波数は除去できない部分が残る。
【0011】
このため、ノイズが検出信号に入り込むと、測定誤差が生じ、また、測定したインピーダンス値もばらつきが生ずるので、測定値が安定しない問題が生ずる。
本発明は、このような、測定交流電流と同一あるいは近い周波数のノイズ成分から生ずる影響を小さくして、測定誤差を少なくし、安定した測定が可能なインピーダンス測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の側面は、インピーダンス測定装置であって、測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給する交流源と、測定信号に同期する基準信号を生成する基準信号生成部と、試料に現れる検出信号を基準信号で同期検波する同期検波部と、
同期検波部で同期検波された信号の直流成分を抽出して試料の交流インピーダンスを測定する手段とを備えたインピーダンス測定装置であって、基準信号生成部は、試料に測定信号を供給しない状態で、所定の測定用周波数であって、位相が直交する二つの基準信号を生成する手段を備え、同期検波部は、測定信号を供給しない状態の試料に現れる検出信号を二つの基準信号でそれぞれ同期検波する手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
なお、同期検波部は、通過周波数が異なる複数のバンドパスフィルタと、交流源が与える測定信号の周波数により複数のバンドパスフィルタを選択する選択手段とを備えることができる。
【0014】
交流源は、試料のインピーダンス測定を行うときは、試料に現れたノイズレベルが低い周波数の測定信号を供給することが好ましい。また、試料は、電池であって、交流源は、定電流源であることができる。
【0015】
本発明の他の側面は、インピーダンス測定方法であって、測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給し、試料に現れる検出信号を測定信号に同期する基準信号で同期検波し、同期検波された信号の直流成分を抽出して試料の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、試料に測定信号を供給しない状態で試料に現れる検出信号を直交する位相の第一と第二の基準信号でそれぞれ同期検波を行って、測定信号が供給されない状態で試料に現れるノイズレベルを測定する第一の測定ステップを複数周波数の測定信号で実行し、第一測定ステップで測定した複数周波数の測定信号のうち、ノイズレベルの小さい周波数を選択して試料に測定信号を供給して試料のインピーダンスを測定する第二の測定ステップを実行することを特徴とする。
【0016】
なお、試料に現れる検出信号を通過させる複数のバンドパスフィルタを備え、第一の測定ステップで、複数のバンドバスフィルタを選択して、複数周波数の測定信号について、ノイズレベルを測定し、第二の測定ステップで、ノイズレベルの少ない周波数のバンドパスフィルタを選択して試料のインピーダンス測定を実行することができる。
【発明の効果】
【0017】
測定信号と同一周波数あるいは近い周波数のノイズが混入しても、ノイズ成分を除去することが可能であるため、インピーダンス測定誤差を少なくできる。また、安定した測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態でノイズの影響の小さい測定周波数を求めているときのインピーダンス測定装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態で、ノイズの影響の小さい測定周波数で試料のインピーダンス測定を行っているときのインピーダンス測定装置の構成を示す図である。
【
図5】ノイズの影響が大きい周波数で測定した場合と小さい周波数を選択して測定した場合のコールコールプロット図の例を示す図である。
【
図6】従来の同期検波を用いたインピーダンス測定装置の構成を示す図である。
【
図8】ローパスフィルタの周波数特性例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態のインピーダンス測定装置の構成を示す図であり、ノイズ成分を測定しているときの接続構成を示している。
【0020】
定電流源10はスイッチSW1を介して測定対象の試料(DUT)11に接続される。本実施の形態では、試料11は、電池であり、内部抵抗としてR
xをもつ。電流検出用抵抗(R
s)12は、定電流源10、スイッチSW1、試料11の直列回路に挿入されている。スイッチSW2は、定電流源10とスイッチSW1、試料11と電流検出用抵抗12との間に挿入されている。試料11の検出信号は、増幅器15を介して複数のバンドパスフィルタ(BPF)17
1、17
2、・・17
nに入力される。スイッチSW3は、バンドパスフィルタ17
1〜17
nのいずれかを選択し、その出力は、同期検波器20、21の双方に入力される。電流検出用抵抗12は、増幅器16に接続され、増幅器16の出力は、同期検波器20に入力されると共に、位相調整器19を介して同期検波器21に入力される。位相調整器19は増幅器16の出力信号の位相が他方の基準信号に対して90°の位相となるように位相調整する。同期検波器20、21の検波出力は、スイッチSW4に入力され、スイッチSW4の出力は、ローパスフィルタ(LPF)22に入力され、ローパスフィルタ22の出力は、アナログデジタル変換器(ADC)23に入力される。
【0021】
次に、本実施の形態によるインピーダンス測定動作を説明する。
本実施の形態では、まず、測定周波数によって、試料に生ずるノイズレベルを測定する第一の測定ステップを実行し、次に測定したノイズレベルによって、ノイズの影響の少ない測定周波数によって試料のインピーダンスを測定する第二の測定ステップを実行する。
【0022】
まず、ノイズレベルの第一の測定ステップの測定動作を説明する。
スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンとする。そして、定電流源10から、測定しようとする周波数f(sin(ω
it))を任意に指定して測定交流電流を電流検出用抵抗12に印加し、試料11には、測定交流電流を印加しない。電流検出用抵抗12に現れた電圧信号は、増幅器16によって増幅され、その出力信号は、分岐されて一方は、そのまま基準信号として同期検波器20に入力される。分岐された出力の他方の基準信号は、位相調整器19で、一方の基準信号に比べて位相が90°異なる基準信号とされて、もうひとつの同期検波器21に入力される。
測定用交流電流が印加されていない状態の試料に現れる検出信号は、増幅器15で増幅され、通過周波数が異なる複数のバンドパスフィルタ17
1〜17
nに入力され、スイッチSW3で定電流源10が入力している測定周波数を通過させるバンドパスフィルタ17
iの出力が選択されその出力が同期検波器20と21の双方に入力される。同期検波器20、21の出力は、スイッチSW4で順次選択されて、ローパスフィルタ22に入力される。ローパスフィルタ22は、スイッチSW4で順次選択された同期検波器20と21の出力のローパスフィルタ22を通して交流成分を除去してアナログデジタル変換器23に出力する。
【0023】
ここで、試料11に測定用交流電流が印加されていない状態では、試料11に現れる検出信号は、ノイズ成分であり、この検出信号をバンドパスフィルタ17
1〜17
nを通して同期検波することにより、測定周波数ごとのノイズレベルを測定することができる。
【0024】
以下、式を用いて試料11の両端に生じているノイズレベルの測定を説明する。
定電流源10で測定周波数を設定して同期検波で参照する基準信号v
2、v
3が生成される。v
3は、位相調整器19によって、v
2とは位相差として90°(π/2)が与えられている。
v
2=IR
ssin(ω
Nt)・・・・・(測定交流電流iと同位相 Nは1〜n)
v
3=IR
ssin(ω
Nt+90°)・(測定交流電流iとの位相差90°)
試料11の両端から検出したv
1をバンドパスフィルタ17のうち測定周波数sin(ω
Nt)を中心周波数とするバンドパスフィルタ17
iを通した後の信号をv1’とする。バンドパスフィルタ17
1〜17
nでは、スイッチSW3で測定周波数に適したバンドパスフィルタを選択して、v
1を通過させる。
【0025】
ここで、v
1’は、
v
1’=G
BPFV
xcos(ω
xt+θ+θ
BPF)
G
BPFは、バンドパスフィルタのゲイン、Vxは、試料(Rx)によって生ずるノイズの電圧、θは、ノイズの位相角、θ
BPFは、バンドパスフィルタによって生ずる位相角とする。
同期検波器20、21で、v
1’をv
2、v
3で同期検波することにより、
同期検波器20の検波出力v
1’×v
2、同期検波器21の検波出力v
1’×v
3は、以下のように表される。
v
1’×v
2=1/2・G
BPFv
xIR
s{cos(ω
xt+θ+θ
BPF−ω
Nt
)}−cos(ω
xt+θ+θ
BPF+ω
Nt)
v
1’×v
3=1/2・G
BPFv
xIR
s{cos(ω
xt+θ+θ
BPF−ω
Nt
−90°)}−cos(ω
xt+θ+θ
BPF+ω
Nt+90°)
この同期検波されたv
1’×v
2、v
1’×v
3をローパスフィルタ22に通すことにより、測定周波数成分が除去され、ノイズ成分が残る。アナログデジタル変換された結果は、すべてノイズであり、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタで除去できない成分となる。
同期検波されたv
1’×v
2、v
1’×v
3の二乗和の平方根がノイズレベルとなる。
【0026】
なお、基準信号を直交する位相として同期検波を行うのは、ノイズの位相は不明であって、ひとつの位相のみで検波を行うと、ノイズの位相によりそのレベルが小さくなるからである。同一の検出信号を直交する位相の基準信号により同期検波を行うことにより、正確なノイズレベルを測定することが可能である。
【0027】
測定周波数を変えてノイズレベルを測定した例を
図2に示す。
図2の(a)は、測定周波数をf1とした場合であり、ローパスフィルタの出力のうち基準信号v
2で同期検波した出力をV
AD_v1’×v2、基準信号v
3で同期検波した出力を V
AD_v1’×v2とする。
図2(a)は、ノイズの周波数が測定周波数f
1と等しい場合であり、ローパスフィルタの出力には、直流成分のノイズが出力されている例である。
図2(b)は、ノイズの周波数が測定周波数f
2に近い場合で、ローパスフィルタの出力には、交流成分も現れている。
図2(c)は、ノイズの周波数が測定周波数f
3と相当に離れている場合であり、ローパスフィルタの出力は、ほぼゼロレベルである。
【0028】
このように、順次、定電流源10からの測定周波数を変え、対応するバンドパスフィルタ17
1〜17
nを切り替えてノイズレベルを測定する。
ここで、バンドパスフィルタの切替については、定電流源10の測定周波数の切替に対応するバンドパスフィルタを切り替えるときに、設定された複数の周波数に対応して順次手動で切り替えることも、順次自動で切り替えることも可能である。
そして、試料11に測定交流電流を与えてインピーダンスを測定するときは、
図2の例であると、ノイズレベルの大きいf
1、f
2を避け、ノイズレベルの小さい周波数を選択する。
【0029】
次に、試料11に測定交流電流を与えて、試料11のインピーダンスを測定する。このときは、ノイズ測定で求めたノイズの影響の小さい測定周波数を選び、
図3に示されるように、スイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフ、スイッチSW3は、バンドパスフィルタ17
1〜17
nのうち、測定周波数を通過させるバンドパスフィルタを選択し、定電流源10から試料11に測定交流電流を供給して、従来方法と同一に試料のインピーダンスを測定する。
【0030】
以上のように、まず、試料11に現れるノイズレベルを測定周波数ごとに測定し、ノイズレベルの小さい、すなわち、ノイズの影響の小さい測定周波数により試料のインピーダンスを測定することが可能となる。
【0031】
(本発明による効果)
本発明では、測定対象の試料11にノイズが現れるような場合でも、ノイズレベルが小さく、ノイズの影響が小さい測定周波数によりインピーダンスの測定ができるため、測定誤差を小さくできる。また、ノイズにより測定値にばらつきが生ずることが少なくなるので、出力が安定し、また測定時間を短縮できる。
さらに、UPSのバッテリなど、検出信号にノイズが重畳しているような試料でも、ノイズの影響の小さい周波数を選んで測定することが可能である。
【0032】
バッテリなどの電池のインピーダンスを測定し、電池の特性評価を行うコールコールプロット図を求める場合の例を説明する。
図4の等価回路は、電池の等価回路の一例を示す図である。電池の等価回路のモデルのひとつは、インダクタンスL1と抵抗Rsの直列回路と、抵抗R1とキャパシタンスC1の並列回路とが接続された回路で表すことができる。このとき、周波数の低い領域では、抵抗Rsと抵抗R1に流れる電流が大きく、周波数が高くなると、インダクタンスL1の占めるインピーダンス部分が大きく、キャパシタンスC1のインピーダンスが小さくなる。
【0033】
このような等価回路について、インピーダンスの実数部、虚数部からなる平面に周波数による電池のインピーダンスの変化を描いたのが、コールコールプロット図である。
コールコールプロット図は、測定試料に定電流源から与える周波数を走査して、電池のインピーダンスを測定する。このとき、電池の負荷装置で負荷を変更しながらインピーダンスを測定する場合や、UPSの電池を測定する場合、ノイズの影響を受けて、測定するインピーダンス値にばらつくと、
図5(a)のようなものとなり、正確なコールコールプロット図が描けない可能性がある。
本発明でノイズの影響の小さい測定周波数を選んで電池のインピーダンスを測定できるので、測定できる周波数の数は少なくなるかもしれないがノイズの影響を小さくできるため、ノイズの影響の小さい測定インピーダンス値を用いることにより、
図5(b)のように滑らかなコールコールプロット図を描くことが可能である。
【0034】
上記の実施の形態は、定電流源11から試料に交流定電流を供給してインピーダンスを測定する例で説明したが、電圧によるインピーダンス測定も可能である。たとえば、電圧源から試料に交流定電圧を供給して同期検波によりインピーダンスを測定するものでもよい。測定対象が電池の場合には、定電流によりインピーダンス測定を行うことが好ましいが、例えば、電気回路に組み込まれてノイズが現れる可能性のあるコンデンサの場合には、
交流定電圧によるインピーダンス測定でもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 定電流源
11 試料(DUT)
12 電流検出用抵抗(Rs)
15、16 増幅器
17、17
1〜17
N バンドパスフィルタ(BPF)
19 位相調整器
20、21 同期検波器
22 ローパスフィルタ(LPF)
23 アナログデジタル変換器
SW1〜SW4 スイッチ