特許第6616991号(P6616991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616991
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】孔加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 35/00 20060101AFI20191125BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20191125BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B23B35/00
   B23B51/00 T
   B23B51/00 K
   B23B51/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-190275(P2015-190275)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-64816(P2017-64816A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】大西 弘将
(72)【発明者】
【氏名】樫口 友明
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−096354(JP,A)
【文献】 実開昭53−147489(JP,U)
【文献】 特開2003−025130(JP,A)
【文献】 特開平11−202076(JP,A)
【文献】 実開平02−053316(JP,U)
【文献】 実開昭62−058110(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00
B23B 41/00
B23B 51/00
B23B 51/06
B23C 5/10
G21C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボディ及び前記第1ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第1ボディの第1中心軸から所定距離に配置される第1刃を有する第1工具と加工物とを相対的に回転して、前記所定距離に応じた直径を有するストレート部を含む孔を前記加工物に形成する孔形成工程と、
第2ボディ及び前記第2ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第2ボディの第2中心軸から前記所定距離に配置される第2刃を有する第2工具を前記孔に挿入して、前記第2工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記孔の底部を粗加工する粗加工工程と、
第3ボディ及び前記第3ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第3ボディの第3中心軸から前記所定距離に配置される第3刃を有する第3工具を前記孔に挿入して、前記第3工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記底部が球面状になるように仕上げ加工する仕上げ工程と、
を含み、
前記第2中心軸を含む断面において、前記第2刃は、複数の直線部を有する、
孔加工方法。
【請求項2】
第1ボディ及び前記第1ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第1ボディの第1中心軸から所定距離に配置される第1刃を有する第1工具と加工物とを相対的に回転して、前記所定距離に応じた直径を有するストレート部を含む孔を前記加工物に形成する孔形成工程と、
第2ボディ及び前記第2ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第2ボディの第2中心軸から前記所定距離に配置される第2刃を有する第2工具を前記孔に挿入して、前記第2工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記孔の底部を粗加工する粗加工工程と、
第3ボディ及び前記第3ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第3ボディの第3中心軸から前記所定距離に配置される第3刃を有する第3工具を前記孔に挿入して、前記第3工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記底部が球面状になるように仕上げ加工する仕上げ工程と、
を含み、
前記第3中心軸を含む断面において、前記第3刃は、円弧部及び直線部を有し、
前記第3刃の前記円弧部の少なくとも一部は、前記第3中心軸上に配置され、
前記第3刃の前記直線部は、径方向に関して前記第3中心軸から外側に向かって前記第3中心軸に対して傾斜するように設けられる、
孔加工方法。
【請求項3】
第1ボディ及び前記第1ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第1ボディの第1中心軸から所定距離に配置される第1刃を有する第1工具と加工物とを相対的に回転して、前記所定距離に応じた直径を有するストレート部を含む孔を前記加工物に形成する孔形成工程と、
第2ボディ及び前記第2ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第2ボディの第2中心軸から前記所定距離に配置される第2刃を有する第2工具を前記孔に挿入して、前記第2工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記孔の底部を粗加工する粗加工工程と、
第3ボディ及び前記第3ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第3ボディの第3中心軸から前記所定距離に配置される第3刃を有する第3工具を前記孔に挿入して、前記第3工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記底部が球面状になるように仕上げ加工する仕上げ工程と、
を含み、
前記第1工具は、径方向に関して前記第1中心軸から前記所定距離に配置された表面を有する第1パッド部材を含み、
前記孔形成工程の少なくとも一部において、前記第1パッド部材の表面と前記ストレート部の内面とが接触する、
孔加工方法。
【請求項4】
第1ボディ及び前記第1ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第1ボディの第1中心軸から所定距離に配置される第1刃を有する第1工具と加工物とを相対的に回転して、前記所定距離に応じた直径を有するストレート部を含む孔を前記加工物に形成する孔形成工程と、
第2ボディ及び前記第2ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第2ボディの第2中心軸から前記所定距離に配置される第2刃を有する第2工具を前記孔に挿入して、前記第2工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記孔の底部を粗加工する粗加工工程と、
第3ボディ及び前記第3ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第3ボディの第3中心軸から前記所定距離に配置される第3刃を有する第3工具を前記孔に挿入して、前記第3工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記底部が球面状になるように仕上げ加工する仕上げ工程と、
を含み、
前記第2工具は、径方向に関して前記第2中心軸から前記所定距離に配置された表面を有する第2パッド部材を含み、
前記粗加工工程において、前記第2パッド部材の表面と前記ストレート部の内面とを接触させた状態で、前記第2刃で前記底部を粗加工する、
孔加工方法。
【請求項5】
第1ボディ及び前記第1ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第1ボディの第1中心軸から所定距離に配置される第1刃を有する第1工具と加工物とを相対的に回転して、前記所定距離に応じた直径を有するストレート部を含む孔を前記加工物に形成する孔形成工程と、
第2ボディ及び前記第2ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第2ボディの第2中心軸から前記所定距離に配置される第2刃を有する第2工具を前記孔に挿入して、前記第2工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記孔の底部を粗加工する粗加工工程と、
第3ボディ及び前記第3ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第3ボディの第3中心軸から前記所定距離に配置される第3刃を有する第3工具を前記孔に挿入して、前記第3工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記底部が球面状になるように仕上げ加工する仕上げ工程と、
を含み、
前記第3工具は、径方向に関して前記第3中心軸から前記所定距離に配置された表面を有する第3パッド部材を含み、
前記仕上げ工程において、前記第3パッド部材の表面と前記ストレート部の内面とを接触させた状態で、前記第3刃で前記底部を仕上げ加工する、
孔加工方法。
【請求項6】
前記孔は、前記ストレート部が500[mm]以上の深孔であり、
前記仕上げ加工が行われた前記加工物は、原子炉の駆動軸ハウジングに使用される、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の孔加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工物の加工においては、粗加工が行われた後、仕上げ加工が行われる場合が多い。粗加工工程と仕上げ工程とでは、異なる工具が使用される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−106470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異なる工具の使用により弊害が生じる可能性がある。例えば、ストレート部と球面状の底部とを有する孔を異なる工具を用いて形成する場合、工具の違いに起因して、ストレート部と底部との境界に段差が形成されてしまったり、孔の内面に凹凸が形成されてしまったりする可能性がある。
【0005】
本発明は、異なる複数の工具を使用する場合においても、加工精度の低下を抑制できる孔加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1ボディ及び前記第1ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第1ボディの第1中心軸から所定距離に配置される第1刃を有する第1工具と加工物とを相対的に回転して、前記所定距離に応じた直径を有するストレート部を含む孔を前記加工物に形成する孔形成工程と、第2ボディ及び前記第2ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第2ボディの第2中心軸から前記所定距離に配置される第2刃を有する第2工具を前記孔に挿入して、前記第2工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記孔の底部を粗加工する粗加工工程と、第3ボディ及び前記第3ボディに固定され少なくとも一部が径方向に関して前記第3ボディの第3中心軸から前記所定距離に配置される第3刃を有する第3工具を前記孔に挿入して、前記第3工具と前記加工物とを相対的に回転して、前記底部が球面状になるように仕上げ加工する仕上げ工程と、を含む孔加工方法を提供する。
【0007】
本発明によれば、第1工具の第1刃を使って孔のストレート部が形成され、第2工具の第2刃を使って孔の底部が粗加工され、第3工具の第3刃を使って孔の底部が仕上げ加工される。第1刃は第1ボディの第1中心軸から所定距離に配置され、第2刃は第2ボディの第2中心軸から所定距離に配置され、第3刃は第3ボディの第3中心軸から所定距離に配置される。すなわち、各工具において、中心軸からの距離は、第1刃と第2刃と第3刃とで等しい。したがって、ストレート部と底部との境界に段差が形成されることが抑制される。また、各工具において、中心軸からの第2刃の距離及び第3刃の距離が第1刃の距離と等しいので、粗加工工程及び仕上げ工程において第2ボディ及び第3ボディが撓んだり振れたりすることが抑制され、高い加工精度で孔の底部が形成される。また、段差の形成が抑制され、高い面精度で球面状の底部が形成されるので、孔の内面における応力集中が抑制される。そのため、高品質の加工物を提供することができる。
【0008】
本発明において、第1ボディの第1中心軸から第1刃までの距離とは、第1中心軸と、第1中心軸に対する放射方向において第1刃のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいう。第1刃が複数存在する場合、第1刃の最外径部は、複数の第1刃のうち第1中心軸に対する放射方向において最も外側の部分をいう。同様に、第2ボディの第2中心軸から第2刃までの距離とは、第2中心軸と、第2中心軸に対する放射方向において第2刃のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいい、第2刃が複数存在する場合、第2刃の最外径部は、複数の第2刃のうち第2中心軸に対する放射方向において最も外側の部分をいう。第3ボディの第3中心軸から第3刃までの距離とは、第3中心軸と、第3中心軸に対する放射方向において第3刃のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいい、第3刃が複数存在する場合、第3刃の最外径部は、複数の第3刃のうち第3中心軸に対する放射方向において最も外側の部分をいう。
【0009】
本発明において、前記第2中心軸を含む断面において、前記第2刃は、複数の直線部を有することが好ましい。第2刃が直線部で構成されることにより、自励振動(ビビリ)の発生が抑制され、粗加工を高速に実行することができる。
【0010】
本発明において、前記第3中心軸を含む断面において、前記第3刃は、円弧部及び直線部を有し、前記第3刃の前記円弧部の少なくとも一部は、前記第3中心軸上に配置され、前記第3刃の前記直線部は、径方向に関して前記第3中心軸から外側に向かって前記第3中心軸に対して傾斜するように設けられることが好ましい。第3刃が円弧部を有することにより、球面状の底部を形成することができる。また、底部のうち第3中心軸と交差する部分は、第3工具との相対回転速度が低く加工され難い部分であり、突起部が残留する可能性が高くなる。円弧部の少なくとも一部が第3中心軸上に配置されることにより、底部のうち第3中心軸と交差する部分は第3刃の円弧部によって加工される。そのため、突起部の残留が抑制され、底部を球面状に仕上げることができる。
【0011】
本発明において、前記第1工具は、径方向に関して前記第1中心軸から前記所定距離に配置された表面を有する第1パッド部材を含み、前記孔形成工程の少なくとも一部において、前記第1パッド部材の表面と前記ストレート部の内面とが接触することが好ましい。第1中心軸からの距離が第1刃の最外径部と等しい第1パッド部材がストレート部の孔の内面に接触することにより、第1刃による孔形成において、第1ボディが撓んだり振れたりすることが抑制される。したがって、高い加工精度で孔のストレート部が形成される。また、第1刃による孔形成が終了した後、孔から第1工具を引き抜くとき、第1中心軸からの距離が第1刃の最外径部と等しい第1パッド部材がストレート部の内面に接触するので、第1ボディの撓み又は振れを抑制しつつ、第1工具を引き抜くことができる。したがって、第1刃がストレート部の内面に食い込むことが抑制され、ストレート部の内面の損傷が抑制される。
【0012】
本発明において、前記第2工具は、径方向に関して前記第2中心軸から前記所定距離に配置された表面を有する第2パッド部材を含み、前記粗加工工程において、前記第2パッド部材の表面と前記ストレート部の内面とを接触させた状態で、前記第2刃で前記底部を粗加工することが好ましい。第2中心軸からの距離が第2刃の最外径部と等しい第2パッド部材がストレート部の孔の内面に接触することにより、第2刃による粗加工において、第2ボディが撓んだり振れたりすることが抑制される。したがって、孔の底部の粗加工が安定して行われる。また、第2刃による粗加工が終了した後、孔から第2工具を引き抜くとき、第2中心軸からの距離が第2刃の最外径部と等しい第2パッド部材がストレート部の内面に接触するので、第2ボディの撓み又は振れを抑制しつつ、第2工具を引き抜くことができる。したがって、第2刃がストレート部の内面に食い込むことが抑制され、ストレート部の内面の損傷が抑制される。
【0013】
本発明において、前記第3工具は、径方向に関して前記第3中心軸から前記所定距離に配置された表面を有する第3パッド部材を含み、前記仕上げ工程において、前記第3パッド部材の表面と前記ストレート部の内面とを接触させた状態で、前記第3刃で前記底部を仕上げ加工することが好ましい。第3中心軸からの距離が第3刃の最外径部と等しい第3パッド部材がストレート部の孔の内面に接触することにより、第3刃による仕上げ加工において、第3ボディが撓んだり振れたりすることが抑制される。したがって、高い加工精度で孔の底部の仕上げ加工が行われる。また、第3刃による仕上げ加工が終了した後、孔から第3工具を引き抜くとき、第3中心軸からの距離が第3刃の最外径部と等しい第3パッド部材がストレート部の内面に接触するので、第3ボディの撓み又は振れを抑制しつつ、第3工具を引き抜くことができる。したがって、第3刃がストレート部の内面に食い込むことが抑制され、ストレート部の内面の損傷が抑制される。
【0014】
本発明において、第1ボディの第1中心軸から第1パッド部材までの距離とは、第1中心軸と、第1中心軸に対する放射方向において第1パッド部材のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいう。第1パッド部材が複数存在する場合、第1パッド部材の最外径部は、複数の第1パッド部材のうち第1中心軸に対する放射方向において最も外側の部分をいう。同様に、第2ボディの第2中心軸から第2パッド部材までの距離とは、第2中心軸と、第2中心軸に対する放射方向において第2パッド部材のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいい、第2パッド部材が複数存在する場合、第2パッド部材の最外径部は、複数の第2パッド部材のうち第2中心軸に対する放射方向において最も外側の部分をいう。第3ボディの第3中心軸から第3パッド部材までの距離とは、第3中心軸と、第3中心軸に対する放射方向において第3パッド部材のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいい、第3パッド部材が複数存在する場合、第3パッド部材の最外径部は、複数の第3パッド部材のうち第3中心軸に対する放射方向において最も外側の部分をいう。
【0015】
本発明において、前記孔は、前記ストレート部が500[mm]よりも長い深孔であり、前記仕上げ加工が行われた前記加工物は、原子炉の駆動軸ハウジングに使用されることが好ましい。これにより、応力集中が緩和された高品質な駆動軸ハウジングが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、異なる複数の工具を使用する場合においても、加工精度の低下を抑制できる孔加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る孔加工装置を模式的に示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る孔加工方法を示すフローチャートである。
図3図3は、本実施形態に係る孔形成工程に使用される第1工具を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る孔形成工程が終了後の加工物を示す断面図である。
図5図5は、本実施形態に係る粗加工工程に使用される第2工具を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る粗加工工程が終了後の加工物を示す断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る仕上げ工程に使用される第3工具を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る第3工具の一部を拡大した図である。
図9図9は、本実施形態に係る仕上げ工程が終了後の加工物を示す断面図である。
図10図10は、駆動軸ハウジングを備える原子炉の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0019】
[孔加工装置]
図1は、本実施形態に係る孔加工装置1を模式的に示す図である。孔加工装置1は、BTA(Boring and Trepanning Association)方式で加工物Wに孔を形成する。BTA方式とは、加工物に形成された孔の内面とボーリングバーとの隙間を介して、ボーリングバーの先端部に設けられた工具(ボーリングヘッド)に切削油を供給し、切削により発生した加工物の切粉を切削油とともにボーリングバーを介して回収する加工方式をいう。BTA方式は、例えば500[mm]以上の深孔の形成に適している。
【0020】
孔加工装置1は、ベース部材2と、ベース部材2に設けられ、加工物Wを保持する保持装置3と、ベース部材2に設けられ、ボーリングバー4を支持する支持装置5と、ベース部材2に設けられ、加工物Wに形成された孔の内面とボーリングバー4との隙間に切削油を供給する供給台6と、供給台6に切削油を供給する供給装置7と、切削により発生した加工物Wの切粉を切削油とともにボーリングバーを介して回収する回収装置8とを備えている。
【0021】
保持装置3は、加工物Wを保持する保持機構3Aと、保持機構3Aを回転させるための動力を発生するアクチュエータ3Bとを有する。アクチュエータ3Bの作動により保持機構3Aが回転することにより、保持機構3Aに保持されている加工物Wは、回転軸AXを中心に回転する。
【0022】
ボーリングバー4の先端部に工具(ボーリングヘッド)が設けられる。ボーリングバー4は、工具を着脱可能に支持する。ボーリングバー4に対して工具は交換可能である。本実施形態においては、ボーリングバー4の先端部に、第1工具10、第2工具20、及び第3工具30のいずれか一つが設けられる。
【0023】
支持装置5は、回転軸AXと平行な方向にボーリングバー4を移動可能に支持する。ボーリングバー4の移動により、加工物Wの孔への工具の挿入及び加工物Wの孔からの工具の抜去が行われる。
【0024】
供給装置7は、切削油を収容するタンク7Aと、タンク7Aと供給台6とを接続するパイプ7Bと、タンク7Aの切削油を供給台6に送るための動力を発生するポンプ7Cとを有する。
【0025】
供給台6は、ボーリングバー4及び加工物Wを支持する。切削油は、供給台6を介して、加工物Wに形成された孔の内面とボーリングバー4との隙間に供給される。隙間に供給された切削油は、ボーリングバー4の先端部に設けられた工具に供給される。工具に切削油が供給された状態で、工具による加工が行われる。
【0026】
回収装置8は、切削により発生した加工物Wの切粉を切削油とともにボーリングバー4を介して回収する。ボーリングバー4は、中空のパイプ部材である。切粉及び切削油は、ボーリングバー4の内部流路を介して回収される。回収装置8は、ボーリングバー4の内部流路を流れてきた切削油から切粉を分離する分離装置8Aと、分離装置8Aを通過した切削油をタンク7Aに戻すための循環部材8Bと、潤滑油に残留する切粉を除去するマグネットフィルタ8Cとを有する。
【0027】
[孔加工方法]
次に、本実施形態に係る孔加工方法について説明する。図2は、本実施形態に係る孔加工方法を示すフローチャートである。図2に示すように、孔加工方法は、第1工具10と加工物Wとを相対的に回転して、ストレート部を含む孔を加工物Wに形成する孔形成工程(ステップSP1)と、孔に挿入された第2工具20と加工物Wとを相対的に回転して、孔の底部を粗加工する粗加工工程(ステップSP2)と、孔に挿入された第3工具30と加工物Wとを相対的に回転して、孔の底部が球面状になるように仕上げ加工する仕上げ工程(ステップSP3)と、を含む。
【0028】
(ステップSP1:孔形成工程)
孔形成工程について説明する。図3は、孔形成工程に使用される第1工具10を示す図である。第1工具10は、ボディ(第1ボディ)11と、ボディ11に固定された刃(第1刃)12と、ボディ11に固定されたパッド部材(第1パッド部材)13とを有する。
【0029】
ボディ11は、金属製である。ボディ11は、少なくとも一部が円筒状であり、中心軸(第1中心軸)J1の周囲に配置される。
【0030】
刃12は、ボティ11の先端部に複数設けられる。刃12の少なくとも一部は、ボディ11の径方向(中心軸J1に対する放射方向)に関して、ボディ11の中心軸J1から距離R12に配置される。距離R12に配置される刃12の一部分は、ボディ11の径方向に関してボティ11の外面から最も外側に突出する部分である。以下の説明においては、距離R12を適宜、刃12の最大半径R12と称する。
【0031】
最大半径R12とは、中心軸J1と、中心軸J1に対する放射方向に関して刃12のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいう。刃12が複数存在する場合、刃12の最外径部は、複数の刃12のうち中心軸J1に対する放射方向に関して最も外側の部分をいう。
【0032】
パッド部材13は、ボディ11の側面に複数設けられる。本実施形態において、パッド部材(第1パッド部材)13は、中心軸J1と平行な方向に関して異なる位置に配置されたパッド部材131,132,133,134を含む。第1工具10は、中心軸J1を囲むように配置される複数のパッド部材131からなるパッド部材13の第1グループG1と、刃12に対して第1グループG1よりも離れた位置において中心軸J1を囲むように配置される複数のパッド部材132からなるパッド部材13の第2グループG2と、刃12に対して第2グループG2よりも離れた位置において中心軸J1を囲むように配置される複数のパッド部材133からなるパッド部材13の第3グループG3と、刃12に対して第3グループG3よりも離れた位置において中心軸J1を囲むように配置される複数のパッド部材134からなるパッド部材13の第4グループG4と、を有する。
【0033】
第1グループG1、第2グループG2、第3グループG3、及び第4グループG4のうち、第1グループG1のパッド部材131がボティ11の最も先端部側に設けられ、第1グループG1に次いで第2グループG2のパッド部材132がボディ11の先端部側に設けられ、第2グループG2に次いで第3グループG3のパッド部材133がボディ11の先端部側に設けられ、第4グループG4のパッド部材134がボティ11の最も基端部側に設けられる。
【0034】
第1グループG1のパッド部材131は、ボディ11の側面に複数設けられる。パッド部材131は、中心軸J1の周囲において3つ配置される。3つのパッド部材131と1つの刃12とが、中心軸J1の周囲に配置される。
【0035】
同様に、第2グループG2のパッド部材132は、中心軸J1の周囲において3つ配置される。
【0036】
第3グループG3のパッド部材133は、中心軸J1の周囲において等間隔で4つ配置される。
【0037】
第4グループG4のパッド部材134も、中心軸J1の周囲において等間隔で4つ配置される。
【0038】
第1グループG1のパッド部材131及び第2グループG2のパッド部材132は、セラミックス製であり、第3グループG3のパッド部材133及び第4グループG4のパッド部材134よりも硬い。なお、第1グループG1のパッド部材131及び第2グループG2のパッド部材132は、超硬合金製でもよい。
【0039】
第1グループG1のパッド部材131は、ボディ11の径方向に関して外側を向く表面131Aを有する。パッド部材131は、ボディ11の径方向に関して、ボディ11の中心軸J1から表面131Aまでの距離が距離R131になるようにボディ11に設けられる。以下の説明においては、距離R131を適宜、パッド部材131の最大半径R131と称する。
【0040】
第2グループG2のパッド部材132は、ボディ11の径方向に関して外側を向く表面132Aを有する。パッド部材132は、ボディ11の径方向に関して、ボディ11の中心軸J1から表面132Aまでの距離が距離R132になるようにボディ11に設けられる。以下の説明においては、距離R132を適宜、パッド部材132の最大半径R132と称する。
【0041】
第3グループG3のパッド部材133及び第4グループG4のパッド部材134は、合成樹脂製であり、ボディ11及び刃12よりも軟らかい。
【0042】
第3グループG3のパッド部材133は、ボディ11の径方向に関して外側を向く表面133Aを有する。パッド部材133は、ボディ11の径方向に関して、ボディ11の中心軸J1から表面133Aまでの距離が距離R133になるようにボディ11に設けられる。以下の説明においては、距離R133を適宜、パッド部材133の最大半径R133と称する。なお、図3において、最大半径R133の図示は省略してある。
【0043】
第4グループG4のパッド部材134は、ボディ11の径方向に関して外側を向く表面134Aを有する。パッド部材134は、ボディ11の径方向に関して、ボディ11の中心軸J1から表面134Aまでの距離が距離R134になるようにボディ11に設けられる。以下の説明においては、距離R134を適宜、パッド部材134の最大半径R134と称する。
【0044】
なお、最大半径R131とは、中心軸J1と、中心軸J1に対する放射方向に関してパッド部材131のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいう。パッド部材131が複数存在する場合、パッド部材131の最外径部は、複数のパッド部材131のうち中心軸J1に対する放射方向に関して最も外側の部分をいう。最大半径R132,R133,R134についても同様である。
【0045】
刃12の最大半径R12と、パッド部材131,132の最大半径R131,R132とは等しい。本実施形態において、刃12の最大半径R12及びパッド部材131,132の最大半径R131,R132は、所定値(所定距離)Rに定められる。
【0046】
パッド部材133,134の最大半径R133,R134は、刃12の最大半径R12と等しい又は刃12の最大半径R12よりも大きいことが望ましい。本実施形態において、パッド部材133,134の最大半径R133,R134は、刃12の最大半径R12と同じか、又は、最大で0.01[mm](直径で最大0.02[mm])大きい。パッド部材133,134は、パッド部材131,132よりも軟らかく、後述するように、孔Hと接触することによって僅かに変形する。そのため、最大半径R133,R134を最大半径R12,R131,R132よりも僅かに大きくすることによって、パッド部材133,134と孔Hの内面とを十分に接触させることができる。
【0047】
孔形成工程を実行する場合、ボーリングバー4の先端部に第1工具10が設けられる。第1工具10の先端部と、保持機構3Aに保持された加工物Wの端面とが対向した状態で、アクチュエータ3Bの作動により加工物Wが回転軸AXを中心に回転する。第1工具10は、中心軸J1が回転軸AXと一致するように、ボーリングバー4に設けられる。支持装置5は、第1工具10が加工物Wに押し込まれるように、回転軸AXと平行な方向に、第1工具10を支持しているボーリングバー4を移動する。回転軸AXを中心に加工物Wが回転している状態で、回転軸AXと平行な方向に第1工具10が移動することによって、刃12により加工物Wに孔が形成される。
【0048】
孔加工装置1は、回転軸AXと平行な方向に第1工具10を移動して、加工物Wに所定量押し込んだ後、加工物Wに形成された孔から第1工具10を引き抜く。支持装置5は、第1工具10が加工物Wに形成された孔から引き抜かれるように、回転軸AXと平行な方向に、第1工具10を支持しているボーリングバー4を移動する。
【0049】
図4は、孔形成工程が終了後の加工物Wを示す断面図である。第1工具10と加工物Wとの相対的な回転を含む孔形成工程により、図4に示すように、刃12の最大半径R12(所定距離R)に応じた直径Dを有するストレート部Hsを含む孔Hが加工物Wに形成される。
【0050】
上述のように、本実施形態においては、刃12の最大半径R12とパッド部材131,132の最大半径R131,R132とは等しい。そのため、加工物Wに第1工具10を押し込みながら刃12で孔Hを形成するとき、パッド部材131,132の表面131A,132Aと孔Hのストレート部Hsの内面とは接触する。中心軸J1からの距離が刃12と等しいパッド部材131,132がストレート部Hsの内面に接触することにより、ボディ11はパッド部材131,132を介してストレート部Hsの内面に支持されることとなる。また、パッド部材131,132よりも軟らかいパッド部材133,134の最大半径R133,R134は、最大半径R131,R132と同じか、又は、僅かに大きい。最大半径R133,R134が最大半径R131,R132よりも僅かに大きい場合、パッド部材133,134は、孔Hと接触することによって僅かに変形する。そのため、パッド部材131,132よりも軟らかい合成樹脂製のパッド部材133,134も、ストレート部Hsの内面に十分に接触する。そのため、刃12による孔形成において、ボディ11が撓んだり振れたりすることが抑制される。したがって、高い加工精度で孔Hのストレート部Hsが形成される。
【0051】
また、刃12による孔形成が終了した後、孔Hから第1工具10を引き抜くとき、中心軸J1からの距離が刃12の最外径部と等しいパッド部材131,132の表面131A,132Aがストレート部Hsの内面に接触している。また、パッド部材131,132よりも軟らかく、最大半径R133,R134が最大半径R131,R132と同じか、又は、僅かに大きい合成樹脂製のパッド部材133,134も、ストレート部Hsの内面に十分に接触する。そのため、ボディ11の撓み又は振れを抑制しつつ、第1工具10を引き抜くことができる。したがって、刃12がストレート部Hsの内面に食い込むことが抑制され、ストレート部Hsの内面の損傷が抑制される。
【0052】
(ステップSP2:粗加工工程)
次に、粗加工工程について説明する。粗加工工程は、孔形成工程の後に実行される。図5は、粗加工工程に使用される第2工具20を示す図である。第2工具20は、ボディ(第2ボディ)21と、ボディ21に固定された刃(第2刃)22と、ボディ21に固定されたパッド部材(第2パッド部材)23とを有する。
【0053】
ボディ21は、金属製である。ボディ21は、少なくとも一部が円筒状であり、中心軸(第2中心軸)J2の周囲に配置される。
【0054】
刃22は、ボティ21の先端部に複数設けられる。刃22の少なくとも一部は、ボディ21の径方向(中心軸J2に対する放射方向)に関して、ボディ21の中心軸J2から距離R22に配置される。距離R22に配置される刃22の一部分は、ボディ21の径方向に関してボティ21の外面から最も外側に突出する部分である。以下の説明においては、距離R22を適宜、刃22の最大半径R22と称する。
【0055】
最大半径R22とは、中心軸J2と、中心軸J2に対する放射方向に関して刃22のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいう。刃22が複数存在する場合、刃22の最外径部は、複数の刃22のうち中心軸J2に対する放射方向に関して最も外側の部分をいう。
【0056】
パッド部材23は、ボディ21の側面に複数設けられる。本実施形態において、パッド部材(第2パッド部材)23は、中心軸J2と平行な方向に関して異なる位置に配置されたパッド部材231,232,233を含む。第2工具20は、中心軸J2を囲むように配置される複数のパッド部材231からなるパッド部材23の第5グループG5と、刃22に対して第5グループG5よりも離れた位置において中心軸J2を囲むように配置される複数のパッド部材232からなるパッド部材23の第6グループG6と、刃22に対して第6グループG6よりも離れた位置において中心軸J2を囲むように配置される複数のパッド部材233からなるパッド部材23の第7グループG7と、を有する。
【0057】
第5グループG5、第6グループG6、及び第7グループG7のうち、第5グループG5のパッド部材231がボティ21の最も先端部側に設けられ、第5グループG5に次いで第6グループG6のパッド部材232がボディ21の先端部側に設けられ、第7グループG7のパッド部材233がボティ11の最も基端部側に設けられる。
【0058】
第5グループG5のパッド部材231は、ボディ21の側面に複数設けられる。パッド部材231は、中心軸J2の周囲において3つ配置される。3つのパッド部材231と1つの刃22とが、中心軸J2の周囲に配置される。
【0059】
同様に、第6グループG6のパッド部材232は、中心軸J2の周囲において3つ配置される。
【0060】
第7グループG7のパッド部材333は、中心軸J2の周囲において等間隔で4つ配置される。
【0061】
第5グループG5のパッド部材231及び第6グループG6のパッド部材232は、セラミックス製であり、第7グループG7のパッド部材233よりも硬い。なお、第5グループG5のパッド部材231及び第6グループG6のパッド部材232は、超硬合金製でもよい。
【0062】
第5グループG5のパッド部材231は、ボディ21の径方向に関して外側を向く表面231Aを有する。パッド部材231は、ボディ21の径方向に関して、ボディ21の中心軸J2から表面231Aまでの距離が距離R231になるようにボディ21に設けられる。以下の説明においては、距離R231を適宜、パッド部材231の最大半径R231と称する。
【0063】
第6グループG6のパッド部材232は、ボディ21の径方向に関して外側を向く表面232Aを有する。パッド部材232は、ボディ21の径方向に関して、ボディ21の中心軸J2から表面232Aまでの距離が距離R232になるようにボディ21に設けられる。以下の説明においては、距離R232を適宜、パッド部材232の最大半径R232と称する。
【0064】
第7グループG7のパッド部材233は、合成樹脂製であり、ボディ21及び刃22よりも軟らかい。
【0065】
第7グループG7のパッド部材233は、ボディ21の径方向に関して外側を向く表面233Aを有する。パッド部材233は、ボディ21の径方向に関して、ボディ21の中心軸J2から表面233Aまでの距離が距離R233になるようにボディ21に設けられる。以下の説明においては、距離R233を適宜、パッド部材233の最大半径R233と称する。
【0066】
なお、最大半径R231とは、中心軸J2と、中心軸J2に対する放射方向に関してパッド部材231のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいう。パッド部材231が複数存在する場合、パッド部材231の最外径部は、複数のパッド部材231のうち中心軸J2に対する放射方向に関して最も外側の部分をいう。最大半径R232,R233についても同様である。
【0067】
刃22の最大半径R22と、パッド部材231,232の最大半径R231,R232とは等しい。本実施形態において、刃22の最大半径R22及びパッド部材231,232の最大半径R231,R232は、所定値(所定距離)Rに定められる。
【0068】
すなわち、本実施形態において、第1工具10の刃12の最大半径R12と、第1工具10のパッド部材131,132の最大半径R131,R132と、第2工具20の刃22の最大半径R22と、第2工具20のパッド部材231,232の最大半径R231,R232とは、等しい。
【0069】
パッド部材233の最大半径R233は、刃22の最大半径R22と等しい又は刃22の最大半径R22よりも大きいことが望ましい。本実施形態において、パッド部材233の最大半径R233は、刃22の最大半径R22と同じか、又は、最大で0.01[mm](直径で最大0.02[mm])大きい。パッド部材233は、パッド部材231,232よりも軟らかく、後述するように、孔Hと接触することによって僅かに変形する。そのため、最大半径R233を最大半径R22,R231,R232よりも僅かに大きくすることによって、パッド部材233と孔Hの内面とを十分に接触させることができる。
【0070】
また、本実施形態において、第1工具10のパッド部材133,134の最大半径R13,R134と、第2工具20のパッド部材233の最大半径R233とは、等しい。
【0071】
また、図5に示すように、中心軸J2を含む断面において、刃22は、複数の直線部を有する。刃22の直線部は、ボディ21の径方向に関して中心軸J2の一方側から他方側に向かって中心軸J2に対して傾斜する第1直線部22Aと、第1直線部22Aと隣接し、ボディ21の径方向に関して外側に向かってボディ21の後端部側に傾斜する第2直線部22B、第3直線部22C、及び第4直線部22Dとを含む。第1直線部22Aは、中心軸J2と交差するように設けられ、第2直線部22Bとは異なる方向に傾斜する。第1直線部22Aと第2直線部22Bとの境界の角部は、第2工具20の最も先端部側に配置される。第3直線部22Cは、ボディ21の径方向に関して第2直線部22Bよりも外側に配置される。第2直線部22Bと第3直線部22Cとの境界には段差部が設けられる。第4直線部22Dは、ボディ21の径方向に関して第3直線部22Cよりも外側に配置される。第3直線部22Cと第4直線部22Dとの境界には角部が設けられる。
【0072】
粗加工工程を実行する場合、ボーリングバー4の先端部に第2工具20が設けられる。第2工具20は、中心軸J2が加工物Wの回転軸AXと一致するように、ボーリングバー4に設けられる。支持装置5は、孔形成工程(ステップSP1)で加工物Wに形成された孔Hに第2工具20が挿入されるように、回転軸AXと平行な方向に、第2工具20を支持しているボーリングバー4を移動する。支持装置5は、第2工具20の刃22が孔Hの底部Hbに到達するまで、ボーリングバー4を移動する。第2工具20の刃22が孔Hの底部に配置された状態で、加工物Wが回転軸AXを中心に回転することによって、刃22により加工物Wの孔Hの底部Hbが粗加工される。
【0073】
孔加工装置1は、第2工具20の刃22で孔Hの底部Hbを粗加工した後、加工物Wの孔Hから第2工具20を引き抜く。支持装置5は、第2工具20が加工物Wの孔Hから引き抜かれるように、回転軸AXと平行な方向に、第2工具20を支持しているボーリングバー4を移動する。
【0074】
図6は、粗加工工程が終了後の加工物Wを示す断面図である。第2工具20と加工物Wとの相対的な回転を含む粗加工工程により、図6に示すように、刃22の形状に応じた底部Hbを有する孔Hが加工物Wに形成される。
【0075】
刃12の最大半径R12と刃22の最大半径R22とは等しい。粗加工工程(ステップSP2)においては、孔形成工程(ステップSP1)において形成されたストレート部Hsは加工されず、底部Hbだけが加工される。第1工具10及び第2工具20において、中心軸J1(回転軸AX)から刃12の最外径部までの距離と中心軸J2(回転軸AX)から刃22の最外径部までの距離とは等しいので、孔形成工程(ステップSP1)で形成されたストレート部Hsの内面と、粗加工工程(ステップSP2)において加工された底部Hbの内面との境界に段差が形成されることが抑制され、ストレート部Hsの内面と底部Hbの内面とは滑らかに接続される。また、回転軸AXから刃12の最外径部までの距離と回転軸AXから刃22の最外径部までの距離とは等しいので、粗加工工程において、刃22は孔Hの内面と接触し続けることができるので、ボディ22が撓んだり振れたりすることが抑制される。そのため、孔Hの底部Hbは安定して加工される。
【0076】
また、中心軸J2を含む断面において、刃22は複数の直線部22A、22B、22C、22Dを有する。刃22が複数の直線部で構成されることにより、自励振動(ビビリ)の発生が抑制され、粗加工を高速に実行することができる。
【0077】
また、本実施形態においては、刃22の最大半径R22とパッド部材231,232の最大半径R231,R232とは等しい。そのため、粗加工工程において、パッド部材231,232の表面231A,232Aと孔Hのストレート部Hsの内面とが接触した状態で、第2工具20の刃22で孔Hの底部22bが粗加工される。中心軸J2からの距離が刃22の最外径部と等しいパッド部材231,232の表面231A,232Aがストレート部Hsの内面に接触することにより、ボディ21はパッド部材231,232を介してストレート部Hsの内面に支持されることとなる。また、パッド部材231,232よりも軟らかいパッド部材233の最大半径R233は、最大半径R231,R232と同じか、又は、僅かに大きい。最大半径R233が最大半径R231,R232よりも僅かに大きい場合、パッド部材233は、孔Hと接触することによって僅かに変形する。そのため、パッド部材231,232よりも軟らかい合成樹脂製のパッド部材233も、ストレート部Hsの内面に十分に接触する。そのため、刃22による粗加工において、ボディ21が撓んだり振れたりすることが抑制される。したがって、孔Hの底部Hbの粗加工が安定して行われる。
【0078】
また、刃22による粗加工が終了した後、孔Hから第2工具20を引き抜くとき、中心軸J2からの距離が刃22の最外径部と等しいパッド部材233の表面233Aがストレート部Hsの内面に接触している。また、パッド部材231,232よりも軟らかく、最大半径R233が最大半径R231,R232と同じか、又は、僅かに大きい合成樹脂製のパッド部材233も、ストレート部Hsの内面に十分に接触する。そのため、ボディ21の撓み又は振れを抑制しつつ、第2工具20を引き抜くことができる。したがって、刃22がストレート部Hsの内面に食い込むことが抑制され、ストレート部Hsの内面の損傷が抑制される。
【0079】
(ステップSP3:仕上げ工程)
次に、仕上げ工程について説明する。仕上げ工程は、粗加工工程の後に実行される。図7は、仕上げ工程に使用される第3工具30を示す図である。第3工具30は、ボディ(第3ボディ)31と、ボディ31に固定された刃(第3刃)32と、ボディ31に固定されたパッド部材(第3パッド部材)33とを有する。
【0080】
ボディ31は、金属製である。ボディ31は、少なくとも一部が円筒状であり、中心軸(第3中心軸)J3の周囲に配置される。
【0081】
刃32は、ボティ31の先端部に設けられる。刃32の少なくとも一部は、ボディ31の径方向(中心軸J3に対する放射方向)に関して、ボディ31の中心軸J3から距離R32に配置される。距離R32に配置される刃32の一部分は、ボディ31の径方向に関してボティ31の外面から最も外側に突出する部分である。以下の説明においては、距離R32を適宜、刃32の最大半径R32と称する。
【0082】
最大半径R32とは、中心軸J3と、中心軸J3に対する放射方向に関して刃32のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいう。刃32が複数存在する場合、刃32の最外径部は、複数の刃32のうち中心軸J3に対する放射方向に関して最も外側の部分をいう。
【0083】
パッド部材33は、ボディ31の側面に複数設けられる。本実施形態において、パッド部材(第3パッド部材)33は、中心軸J3と平行な方向に関して異なる位置に配置されたパッド部材331,332を含む。第3工具30は、中心軸J3を囲むように配置される複数のパッド部材331からなるパッド部材33の第8グループG8と、刃32に対して第8グループG8よりも離れた位置において中心軸J3を囲むように配置される複数のパッド部材332からなるパッド部材33の第9グループG9と、を有する。
【0084】
第8グループG8及び第9グループG9のうち、第8グループG8のパッド部材331がボティ31の最も先端部側に設けられ、第9グループG9のパッド部材332がボティ31の最も基端部側に設けられる。
【0085】
第8グループG8のパッド部材331は、ボディ31の側面に複数設けられる。パッド部材331は、中心軸J3の周囲において3つ配置される。3つのパッド部材331と1つの刃32とが、中心軸J3の周囲に配置される。
【0086】
第9グループG9のパッド部材332は、中心軸J3の周囲において等間隔で4つ配置される。
【0087】
第8グループG8のパッド部材331は、セラミックス製であり、第9グループG9のパッド部材232よりも硬い。なお、第8グループG8のパッド部材331は、超硬合金製でもよい。
【0088】
第8グループG8のパッド部材331は、ボディ31の径方向に関して外側を向く表面331Aを有する。パッド部材331は、ボディ31の径方向に関して、ボディ31の中心軸J3から表面331Aまでの距離が距離R331になるようにボディ31に設けられる。以下の説明においては、距離R331を適宜、パッド部材331の最大半径R331と称する。
【0089】
第9グループG9のパッド部材332は、合成樹脂製であり、ボディ31及び刃32よりも軟らかい。
【0090】
第9グループG9のパッド部材332は、ボディ31の径方向に関して外側を向く表面332Aを有する。パッド部材332は、ボディ31の径方向に関して、ボディ31の中心軸J3から表面332Aまでの距離が距離R332になるようにボディ31に設けられる。以下の説明においては、距離R332を適宜、パッド部材332の最大半径R332と称する。
【0091】
なお、最大半径R331とは、中心軸J3と、中心軸J3に対する放射方向に関してパッド部材331のうち最も外側の部分(最外径部)との距離をいう。パッド部材331が複数存在する場合、パッド部材331の最外径部は、複数のパッド部材331のうち中心軸J3に対する放射方向に関して最も外側の部分をいう。最大半径R332についても同様である。
【0092】
刃32の最大半径R32と、パッド部材331の最大半径R331とは等しい。本実施形態において、刃32の最大半径R32及びパッド部材331の最大半径R331は、所定値(所定距離)Rに定められる。
【0093】
すなわち、本実施形態において、第1工具10の刃12の最大半径R12と、第1工具10のパッド部材131,132の最大半径R131,R132と、第2工具20の刃22の最大半径R22と、第2工具20のパッド部材231,232の最大半径R231,R232と、第3工具30の刃32の最大半径R32と、第3工具30のパッド部材331の最大半径R331とは、等しい。
【0094】
パッド部材332の最大半径R332は、刃32の最大半径R32と等しい又は刃32の最大半径R32よりも大きいことが望ましい。本実施形態において、パッド部材332の最大半径R332は、刃32の最大半径R32と同じか、又は、最大で0.01[mm](直径で最大0.02[mm])大きい。パッド部材332は、パッド部材331よりも軟らかく、後述するように、孔Hと接触することによって僅かに変形する。そのため、最大半径R332を最大半径R32,R331よりも僅かに大きくすることによって、パッド部材332と孔Hの内面とを十分に接触させることができる。
【0095】
また、本実施形態において、第1工具10のパッド部材133,134の最大半径R133,R134と、第2工具20のパッド部材233の最大半径R233と、第3工具30のパッド部材332の最大半径R332とは、等しい。
【0096】
また、図7に示すように、中心軸J3を含む断面において、刃32は、円弧部32A及び直線部32Bを有する。
【0097】
図8は、刃32の一部を拡大した図である。刃32の直線部32Bは、ボディ31の径方向に関して中心軸J3から外側に向かって中心軸J3に対して傾斜するように設けられる。直線部32Bは、中心軸J3に対する放射方向に関して外側に向かってボディ31の後端部側に傾斜する。直線部32Bは、点C1と、中心軸J3に対して点C1の外側に配置される点C2とを結ぶように設けられる。点C1は、中心軸J3上にある。刃32の円弧部32Aの少なくとも一部は、中心軸J3上に配置される。
【0098】
円弧部32Aの少なくとも一部は、中心軸J3上に配置される。円弧部32Aは、中心軸J3の外側で直線部32Bと接続される。なお、円弧部32Aと直線部32Bとの境界が中心軸J3に位置付けられてもよい。円弧部32Aに、最大半径R32となる部分が設けられる。
【0099】
仕上げ工程を実行する場合、ボーリングバー4の先端部に第3工具30が設けられる。第3工具30は、中心軸J3が加工物Wの回転軸AXと一致するように、ボーリングバー4に設けられる。支持装置5は、粗加工工程(ステップSP2)で加工された加工物Wの孔Hに第3工具30が挿入されるように、回転軸AXと平行な方向に、第3工具30を支持しているボーリングバー4を移動する。支持装置5は、第3工具30の刃32が孔Hの底部Hbに到達するまで、ボーリングバー4を移動する。第3工具30の刃32が孔Hの底部Hbに配置された状態で、加工物Wが回転軸AXを中心に回転することによって、刃32により、加工物Wの孔Hの底部Hbの内面が球面状になるように底部Hbが仕上げ加工される。
【0100】
孔加工装置1は、第3工具30の刃32で孔Hの底部Hbを仕上げ加工した後、加工物Wの孔Hから第3工具30を引き抜く。支持装置5は、第3工具30が加工物Wの孔Hから引き抜かれるように、回転軸AXと平行な方向に、第3工具30を支持しているボーリングバー4を移動する。
【0101】
図9は、仕上げ工程が終了後の加工物Wを示す断面図である。第3工具30と加工物Wとの相対的な回転を含む仕上げ工程により、図9に示すように、刃32の形状に応じた球面状の底部Hbを有する孔Hが加工物Wに形成される。
【0102】
刃12の最大半径R12と刃32の最大半径R32とは等しい。仕上げ工程(ステップSP3)においては、孔形成工程(ステップSP1)において形成されたストレート部Hsは加工されず、底部Hbだけが加工される。第1工具10及び第3工具30において、中心軸J1(回転軸AX)からの刃12の距離と中心軸J3(回転軸AX)からの刃32とは等しいので、孔形成工程(ステップSP1)で形成されたストレート部Hsの内面と、仕上げ工程(ステップSP3)において加工された底部Hbの内面との境界に段差が形成されることが抑制され、ストレート部Hsの内面と底部Hbの内面とは滑らかに接続される。また、回転軸AXから刃12までの距離と回転軸AXから刃32までの距離とは等しいので、仕上げ工程において、刃32は孔Hの内面と接触し続けることができるので、ボディ31が撓んだり振れたりすることが抑制される。そのため、高い加工精度で孔Hの底部Hbが形成される。
【0103】
また、中心軸J3を含む断面において、刃32は円弧部32Aを有する。円弧部32Aにより、球面状の内面を有する底部Hbが形成される。
【0104】
また、底部Hbのうち中心軸J3と交差する部分は、第3工具30との相対回転速度が低く、加工され難い部分である。そのため、底部Hbを加工したとき、底部Hbの内面に突起部が残留する可能性がある。本実施形態においては、円弧状の刃32である円弧部32Aの少なくとも一部が中心軸J3上に配置されるので、突起部の残留が抑制される。本実施形態においては、円弧部32A及び直線部(逃がし部)32Bの形状、寸法、及び角度等が最適化されているので、突起部の残留が抑制され、底部Hbの内面を球面状に仕上げることができる。
【0105】
また、本実施形態においては、刃32の最大半径R32とパッド部材331の最大半径R331とは等しい。そのため、仕上げ工程において、パッド部材331の表面331Aと孔Hのストレート部Hsの内面とが接触した状態で、第3工具30の刃32で孔Hの底部Hbが仕上げ加工される。刃32と同径のパッド部材331がストレート部Hsの内面に接触することにより、ボディ31はパッド部材331を介してストレート部Hsの内面に支持されることとなる。また、パッド部材331よりも軟らかいパッド部材332の最大半径R332は、最大半径R331と同じか、又は、僅かに大きい。最大半径R332が最大半径R331よりも僅かに大きい場合、パッド部材332は、孔Hと接触することによって僅かに変形する。そのため、パッド部材331よりも軟らかい合成樹脂製のパッド部材332も、ストレート部Hsの内面に十分に接触する。そのため、刃32による粗加工において、ボディ31が撓んだり振れたりすることが抑制される。したがって、高い加工精度で孔Hの底部Hbの仕上げ加工が行われる。
【0106】
また、刃32による仕上げ加工が終了した後、孔Hから第3工具30を引き抜くとき、中心軸J3からの距離が刃32の最外径部と等しいパッド部材331の表面331Aがストレート部Hsの内面に接触している。また、パッド部材331よりも軟らかく、最大半径R332が最大半径R331と同じか、又は、僅かに大きい合成樹脂製のパッド部材332も、ストレート部Hsの内面に十分に接触する。そのため、ボディ31の撓み又は振れを抑制しつつ、第3工具30を引き抜くことができる。したがって、刃32がストレート部Hsの内面に食い込むことが抑制され、ストレート部Hsの内面の損傷が抑制される。
【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、段差や突起部、凹凸部の形成が抑制された孔加工方法を提供することができる。また、複数の工具10,20,30を使用することにより、それぞれの工具10,20,30にかかる負担を低減でき、工具10,20,30の長寿命化を図ることができる。
【0108】
なお、本実施形態においては、工具10,20,30に対して加工物Wが回転することによって、孔Hが加工されることとした。工具10,20,30が回転してもよいし、工具10,20,30及び加工物Wの両方が回転してもよい。
【0109】
[加工物の適用例]
本実施形態に係る孔加工方法は、ストレート部Hsの長さTが500[mm]以上の深孔を加工するのに適している。仕上げ加工が行われ、ストレート部Hs及び球面状の底部Hbを含む孔Hが設けられた加工物Wは、例えば、原子炉の駆動軸ハウジングに使用することができる。以下、本実施形態に係る原子炉の一例について説明する。
【0110】
図10は、原子炉100の一例を示す概略図である。図1に示す原子炉100は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)となっている。本実施形態に係る原子炉100において、圧力容器として設けられる原子炉容器101は、原子炉容器本体102と、原子炉容器本体102の上部に装着されて原子炉容器本体102に対して開閉可能な原子炉容器蓋103とを備える。原子炉容器本体102は、一次冷却系で用いる冷却水である一次冷却水としての軽水を給排水する入口ノズル104及び出口ノズル105が形成されている。
【0111】
入口ノズル104及び出口ノズル105の下方には、ほぼ円筒形の形状で形成される炉心槽110が設けられている。炉心槽110は、その上部が上部炉心板111に連結されている。炉心槽110は、その下部が下部炉心板112に連結されている。
【0112】
炉心槽110の上方には、上部炉心支持板113が固定されている。上部炉心支持板113は、複数の炉心支持ロッド114が吊り下げて設けられ、この炉心支持ロッド114を介して上部炉心板111が吊り下げて支持されている。下部炉心板112は、原子炉容器本体102の内面に対して複数のラジアルキー115により位置決め保持されている。
【0113】
炉心120は、炉心槽110と上部炉心板111と下部炉心板112とにより構成される。炉心120は、多数の燃料集合体121が配置される。燃料集合体121は、制御棒122が挿入可能に構成されている。制御棒122は、複数の上端がまとめられて制御棒クラスタ123とされている。上部炉心板111は、上部炉心支持板113を貫通する多数の制御棒クラスタ案内管124に支持されている。制御棒クラスタ案内管124は、制御棒クラスタ123を案内する。制御棒駆動装置125から延出された制御棒駆動軸140が、制御棒クラスタ案内管124内を通って制御棒クラスタ123に繋がり、燃料集合体121まで延出されている。
【0114】
出口ノズル105に連通する部分は、上部プレナム130Aとして形成されている。下部炉心板112と、原子炉容器本体102の下部で球面状の閉塞されている部分の内面とで形成される半球状の空間は、下部プレナム130Bとして形成されている。入口ノズル104と下部プレナム130Bとに連通する部分は、ダウンカマー部130Cとして形成されている。
【0115】
核分裂性物質に対して核分裂反応させる場合には、原子炉容器蓋103に設けられた制御棒駆動装置125によって燃料集合体121への制御棒122の挿入量を調節する。これにより、炉心120内での核分裂反応を制御する。
【0116】
制御棒駆動装置125は、原子炉100に設けられる。制御棒駆動装置125は、制御棒駆動軸140を移動する。制御棒駆動装置125は、制御棒駆動軸140の中心軸と平行な方向(上下方向)に、制御棒駆動軸140を移動する。制御棒駆動軸140が上下方向に移動することにより、制御棒クラスタ123を介して制御棒駆動軸140に接続されている制御棒122が上下方向に移動する。
【0117】
制御棒駆動装置125は、駆動軸ハウジング160と、制御棒駆動軸140をガイドする駆動軸ガイド管161と、制御棒駆動軸140を間欠的に保持して移動可能なラッチ機構と、制御棒駆動軸140を上下方向に移動する駆動機構とを備えている。
【0118】
駆動軸ハウジング160は、駆動軸ガイド管161の外周の一部を囲むように配置され、ラッチ機構を収容するラッチハウジング162と、駆動軸ガイド管161の上端を閉塞するキャップ163と、を備えている。
【0119】
ラッチハウジング162の下端は、原子炉容器蓋103に貫通して溶接された円筒状の管台164に連結される。駆動軸ガイド管161は、ラッチハウジング162の上端から挿入されてラッチハウジング162に連結される。そして、制御棒駆動軸140が故障した場合を想定し、制御棒駆動軸140を取り出すため、管台164及びラッチハウジング162、ラッチハウジング162及び駆動軸ガイド管161、駆動軸ガイド管161及びキャップ163は、相互にネジ結合により分離自在に連結されている。
【0120】
本実施形態に係る孔加工方法で加工された加工物Wは、駆動軸ハウジング160に適用することができる。段差や凹凸部の形成が抑制され、高い面精度で球面状の底部Hbが形成されるので、孔Hの内面における応力集中が抑制される。そのため、高品質の加工物W(駆動軸ハウジング160)及び原子炉100を提供することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 孔加工装置
2 ベース部材
3 保持装置
3A 保持機構
3B アクチュエータ
4 ボーリングバー
5 支持装置
6 供給台
7 供給装置
7A タンク
7B パイプ
7C ポンプ
8 回収装置
8A 分離装置
8B 循環部材
8C マグネットフィルタ
10 第1工具
11 ボディ(第1ボディ)
12 刃(第1刃)
13 パッド部材(第1パッド部材)
20 第2工具
21 ボディ(第2ボディ)
22 刃(第2刃)
22A 第1直線部
22B 第2直線部
22C 第3直線部
22D 第4直線部
23 パッド部材(第2パッド部材)
30 第3工具
31 ボディ(第3ボディ)
32 刃(第3刃)
32A 円弧部
32B 直線部
33 パッド部材(第3パッド部材)
100 原子炉
101 原子炉容器
102 原子炉容器本体
103 原子炉容器蓋
104 入口ノズル
105 出口ノズル
110 炉心槽
111 上部炉心板
112 下部炉心板
113 上部炉心支持板
114 炉心支持ロッド
115 ラジアルキー
120 炉心
121 燃料集合体
122 制御棒
123 制御棒クラスタ
124 制御棒クラスタ案内管
125 制御棒駆動装置
130A 上部プレナム
130B 下部プレナム
130C ダウンカマー部
131 パッド部材(第1パッド部材)
132 パッド部材(第1パッド部材)
133 パッド部材(第1パッド部材)
134 パッド部材(第1パッド部材)
140 制御棒駆動軸
160 駆動軸ハウジング
161 駆動軸ガイド管
162 ラッチハウジング
163 キャップ
231 パッド部材(第2パッド部材)
232 パッド部材(第2パッド部材)
331 パッド部材(第3パッド部材)
332 パッド部材(第3パッド部材)
AX 回転軸
C1 点
C2 点
D 直径
G1 第1グループ
G2 第2グループ
H 孔
Hs ストレート部
Hb 底部
R12 最大半径
R13 最大半径
R22 最大半径
R23 最大半径
R32 最大半径
R33 最大半径
J1 中心軸(第1中心軸)
J2 中心軸(第2中心軸)
J3 中心軸(第3中心軸)
T 長さ
W 加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10