特許第6616996号(P6616996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6616996
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の運搬管理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20191125BHJP
   G21F 9/34 20060101ALI20191125BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20191125BHJP
   G06Q 50/00 20120101ALI20191125BHJP
【FI】
   G21F9/28 A
   G21F9/34 C
   B65G61/00 542
   G06Q50/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-200402(P2015-200402)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2017-72513(P2017-72513A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】大塚 義一
(72)【発明者】
【氏名】森本 克秀
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一紀
【審査官】 小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−210445(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G61/00
G06F19/00
G06Q10/00−10/10
30/00−30/08
50/00−50/20
50/26−99/00
G08G1/00−99/00
G21F9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物を、複数の仮置き場から複数台の運搬車両により特定の1箇所の最終処分場に運搬して埋立て処理する放射性廃棄物の処理事業において用いられ、最終処分場における1日の処理能力に応じた所定台数の運搬車両が、所定の時間間隔毎に最終処分場に到着するように管理する、コンピュータによる運搬管理装置に組み込まれた混合整数計画法プログラムを用いた放射性廃棄物の運搬管理方法であって、
前記運搬管理装置は、記憶されたデータ及び入力されたデータに基づいて演算処理を行う演算部と、各種プログラムや演算された各種データを記憶する記憶部と、各種データを表示する表示部と、入力部とを備えて構成されており、
前記演算部は、基本計画作成ステップを実行する月次計画作成部と、運搬スケジュール作成ステップを実行する週次計画作成部とを備えており、
前記基本計画作成ステップは、所定の期間内に運搬すべき放射性廃棄物の設計運搬量に基づいて、選択設定ステップにおいて前記複数の仮置き場から選択された放射性廃棄物を運搬する1又は2以上の指定仮置き場、及び前記選択設定ステップにおいて設定された前記指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の種類及び重量から、前記月次計画作成部の運搬個数設定部が、選択された1又は2以上の指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量を、放射性廃棄物の種類毎に集計すると共に、放射性廃棄物の運搬個数を、運搬個体の種類毎に設定する運搬個数設定ステップと、前記月次計画作成部の運搬回数設定部が、該運搬個数設定ステップで運搬個体の種類毎に設定された放射性廃棄物の運搬個数、又は放射性廃棄物の種類毎に集計された重量から、運搬車両による運搬回数を設定する運搬回数設定ステップと、前記月次計画作成部の日別運搬回数設定部が、該運搬回数設定ステップで設定された運搬車両による運搬回数に、制約条件、運搬車両情報、及び運搬実績の情報を加えて、前記混合整数計画法プログラムにより日別運搬回数を設定すると共に、日別運搬車両台数を設定する日別運搬回数設定ステップとを含んで構成されており、
前記運搬スケジュール作成ステップは、前記週次計画作成部の運搬作業展開部が、前記基本計画作成ステップで設定された日別運搬回数の各々の運搬作業について、所定の運搬工程に展開する運搬作業展開ステップと、前記週次計画作成部の配車スケジュール部が、所定の運搬工程に展開された日別運搬回数の運搬作業に、運搬スケジュールの制約条件、運搬車両情報、仮置き場情報、及び最終処分場情報の情報を加えて、前記混合整数計画法プログラムにより営業日毎の運搬車両の配車の組み合わせを、前記所定台数の運搬車両が所定の時間間隔毎に最終処分場に到着するようにスケジューリングする配車スケジュールステップとを含んで構成されている放射性廃棄物の運搬管理方法。
【請求項2】
前記基本計画作成ステップは、運搬量調整ステップを含んでおり、該運搬量調整ステップは、前記月次計画作成部の運搬量調整部が、前記選択設定ステップで選択された1又は2以上の指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物を含む前記最終処分場に送られる放射性廃棄物の総重量又は運搬個数が、前記最終処分場において処理可能な放射性廃棄物の処理能力を超えている場合に、前記選択設定ステップによる前記指定仮置き場の選択及び前記指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の種類及び重量の設定が、繰り返し行なわれるように誘導する請求項1記載の放射性廃棄物の運搬管理方法。
【請求項3】
前記演算部は、運搬スケジュール修正ステップを実行する日次計画修正部を備えており、該運搬スケジュール修正ステップは、日次計画修正部が、前記運搬スケジュール作成ステップでスケジューリングされた営業日毎の運搬車両の配車の組み合わせのスケジュールが、天候不良、交通渋滞、通行止め等の動的事由によって、計画通りに実行されない場合に、これらの動的事由の情報を加えて、混合整数計画法プログラムにより運搬車両の配車の組み合わせを、前記所定台数の運搬車両が所定の時間間隔毎に最終処分場に到着するようにスケジューリングし直す請求項1又は2記載の放射性廃棄物の運搬管理方法。
【請求項4】
前記基本計画作成ステップは、廃棄物選別ステップを含んでおり、該廃棄物選別ステップは、前記月次計画作成部の廃棄物選別部が、前記選択設定ステップで設定された複数の種類の放射性廃棄物が、固型化施設において固型処理すべき放射性廃棄物であるか、最終処分場に直接運搬して埋立て処理すべきものかを判別する請求項1〜3のいずれか1項記載の放射性廃棄物の運搬管理方法。
【請求項5】
前記廃棄物選別ステップは、固型化対象廃棄物運搬量調整ステップを含んでおり、該固型化対象廃棄物運搬量調整ステップは、前記月次計画作成部の固型化対象廃棄物運搬量調整部が、前記選択設定ステップで選択された1又は2以上の指定仮置き場から運搬される固型化対象の放射性廃棄物の重量を集計して得られた集計重量が、固型化施設において処理可能な放射性廃棄物の重量を超えている場合に、前記選択設定ステップによる前記指定仮置き場の選択及び前記指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の種類及び重量の設定が、繰り返し行なわれるように誘導する請求項4記載の放射性廃棄物の運搬管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物の運搬管理方法に関し、特に、混合整数計画法プログラムを用いて所定台数の運搬車両が、所定の時間間隔毎に最終処分場に到着するように管理する放射性廃棄物の運搬管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災で損傷した福島第一原子力発電所から放出した放射能の影響で汚染された放射性廃棄物が、県内の各地に点在する多数の仮置き場に仮置きされたままの状態になっている。これらの仮置きされた膨大な量の放射性廃棄物は、今後、数年〜数十年の長期間に亘って、限られた数の特定の最終処分場(以下、単に「最終処分場」ともいう)まで、トラック等の運搬車両を用いて運搬して、安全な状態で埋立て処理する必要がある。
【0003】
また、最終処分場では、例えば運搬用のフレキシブルコンテナ(フレコン)等に詰め込まれた状態で運搬車両を用いて運搬されてきた放射性廃棄物を、荷下ろししたり、埋立て処分したりするのに相当の時間を要することから、1日あたりに受け入れられる運搬車両の台数は、限られたものとなる。
【0004】
さらに、放射性廃棄物は、放射線を出し続けているものであることから、周囲の環境への影響や、運搬車両の運転手の被爆量を軽減するために、各々の仮置き場から最終処分場に至るまで、予め定められた運搬ルートで、できるだけ安全に、かつ速やかに運搬されるようにすると共に、運搬車両が最終処分場に到着してから荷卸しされるまでの待機時間が、できるだけ短くなるように調整する必要がある。
【0005】
さらにまた、運搬車両が、予め定められた運搬ルートに沿って最終処分場に向けて走行していても、交通渋滞や交通事故、悪天候等の阻害要因による影響で、設定された時間通りに最終処分場に到着できないと予想される場合があるため、例えば放射性廃棄物が運搬される仮置き場を変更したり、運搬ルートを変更したりすることで、予め定められた時間間隔毎に運搬車両が最終処分場に順次効率良く到着するように調整する必要がある。
【0006】
一方、コンピュータを使用して、最終処分場に至るまでの廃棄物の運搬を管理する方法やシステムが、種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。これらの方法やシステムは、被回収物(廃棄物)に貼付した回収表に印字されたバーコードを読み取ったり、廃棄物が最終処業者に至るまでの適正な処理ルートを自動的に作成したりすることで、廃棄物のトレーサビリティを容易に行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−342028号公報
【特許文献2】特開2009−40593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のコンピュータを使用して最終処分場に至るまでの廃棄物の運搬を管理する方法やシステムによれば、いずれも、廃棄物として、放射線を出し続けている放射性廃棄物を、複数の仮置き場から特定の最終処分場(現状においては1箇所)に運搬するものではないことから、放射線を出し続けている放射性廃棄物を複数の仮置き場から特定の最終処分場に運搬する際の特性を考慮した、新たな運搬管理方法や運搬管理システムを構築することが望まれている。
【0009】
すなわち、放射性廃棄物を、複数の仮置き場から特定の最終処分場に運搬する場合、最終処分場では、廃棄物の処理能力の関係で1日あたりに受け入れ可能な運搬車両の台数は限られたものとなっているため、この限られた台数の中で、運搬車両によりできるだけ多くの放射性廃棄物を最終処分場まで運搬できるようにすること、最終処分場に到着した後の運搬車両の待機時間が短くなるように、運搬車両が所定の時間間隔毎に順次間欠的に最終処分場に到着できるようにすること、及び各々の仮置き場から最終処分場に至るまで、予め定められた運搬ルートで速やかに廃棄物を運搬できるようにすること等を考慮した、新たな運搬管理方法や運搬管理システムを構築することが望まれている。
【0010】
本発明は、最終処分場が受け入れ可能な限られた台数の中で、運搬車両によって複数の仮置き場から1箇所の最終処分場にできるだけ多くの放射性廃棄物を運搬することができると共に、最終処分場に到着した後の運搬車両の待機時間を短くすることができ、さらに、各々の仮置き場から最終処分場に至るまで、速やかに放射性廃棄物を運搬することのできる放射性廃棄物の運搬管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、放射性廃棄物を、複数の仮置き場から複数台の運搬車両により特定の1箇所の最終処分場に運搬して埋立て処理する放射性廃棄物の処理事業において用いられ、最終処分場における1日の処理能力に応じた所定台数の運搬車両が、所定の時間間隔毎に最終処分場に到着するように管理する、コンピュータによる運搬管理装置に組み込まれた混合整数計画法プログラムを用いた放射性廃棄物の運搬管理方法であって、前記運搬管理装置は、記憶されたデータ及び入力されたデータに基づいて演算処理を行う演算部と、各種プログラムや演算された各種データを記憶する記憶部と、各種データを表示する表示部と、入力部とを備えて構成されており、前記演算部は、基本計画作成ステップを実行する月次計画作成部と、運搬スケジュール作成ステップを実行する週次計画作成部とを備えており、前記基本計画作成ステップは、所定の期間内に運搬すべき放射性廃棄物の設計運搬量に基づいて、選択設定ステップにおいて前記複数の仮置き場から選択された放射性廃棄物を運搬する1又は2以上の指定仮置き場、及び前記選択設定ステップにおいて設定された前記指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の種類及び重量から、前記月次計画作成部の運搬個数設定部が、選択された1又は2以上の指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量を、放射性廃棄物の種類毎に集計すると共に、放射性廃棄物の運搬個数を、運搬個体の種類毎に設定する運搬個数設定ステップと、前記月次計画作成部の運搬回数設定部が、該運搬個数設定ステップで運搬個体の種類毎に設定された放射性廃棄物の運搬個数、又は放射性廃棄物の種類毎に集計された重量から、運搬車両による運搬回数を設定する運搬回数設定ステップと、前記月次計画作成部の日別運搬回数設定部が、該運搬回数設定ステップで設定された運搬車両による運搬回数に、制約条件、運搬車両情報、及び運搬実績の情報を加えて、前記混合整数計画法プログラムにより日別運搬回数を設定すると共に、日別運搬車両台数を設定する日別運搬回数設定ステップとを含んで構成されており、前記運搬スケジュール作成ステップは、前記週次計画作成部の運搬作業展開部が、前記基本計画作成ステップで設定された日別運搬回数の各々の運搬作業について、所定の運搬工程に展開する運搬作業展開ステップと、前記週次計画作成部の配車スケジュール部が、所定の運搬工程に展開された日別運搬回数の運搬作業に、運搬スケジュールの制約条件、運搬車両情報、仮置き場情報、及び最終処分場情報の情報を加えて、前記混合整数計画法プログラムにより営業日毎の運搬車両の配車の組み合わせを、前記所定台数の運搬車両が所定の時間間隔毎に最終処分場に到着するようにスケジューリングする配車スケジュールステップとを含んで構成されている放射性廃棄物の運搬管理方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
そして、本発明の放射性廃棄物の運搬管理方法は、前記基本計画作成ステップが、運搬量調整ステップを含んでおり、該運搬量調整ステップは、前記月次計画作成部の運搬量調整部が、前記選択設定ステップで選択された1又は2以上の指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物を含む前記最終処分場に送られる放射性廃棄物の総重量又は運搬個数が、前記最終処分場において処理可能な放射性廃棄物の処理能力を超えている場合に、前記選択設定ステップによる前記指定仮置き場の選択及び前記指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の種類及び重量の設定が、繰り返し行なわれるように誘導することが好ましい。
【0013】
また、本発明の放射性廃棄物の運搬管理方法は、前記演算部が、運搬スケジュール修正ステップを実行する日次計画修正部を備えており、該運搬スケジュール修正ステップは、日次計画修正部が、前記運搬スケジュール作成ステップでスケジューリングされた営業日毎の運搬車両の配車の組み合わせのスケジュールが、天候不良、交通渋滞、通行止め等の動的事由によって、計画通りに実行されない場合に、これらの動的事由の情報を加えて、混合整数計画法プログラムにより運搬車両の配車の組み合わせを、前記所定台数の運搬車両が所定の時間間隔毎に最終処分場に到着するようにスケジューリングし直すことが好ましい。
【0014】
また、本発明の放射性廃棄物の運搬管理方法は、前記基本計画作成ステップが、廃棄物選別ステップを含んでおり、該廃棄物選別ステップは、前記月次計画作成部の廃棄物選別部が、前記選択設定ステップで設定された複数の種類の放射性廃棄物が、固型化施設において固型処理すべき放射性廃棄物であるか、最終処分場に直接運搬して埋立て処理すべきものかを判別するようになっていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の放射性廃棄物の運搬管理方法は、前記廃棄物選別ステップが、固型化対象廃棄物運搬量調整ステップを含んでおり、該固型化対象廃棄物運搬量調整ステップは、前記月次計画作成部の固型化対象廃棄物運搬量調整部が、前記選択設定ステップで選択された1又は2以上の指定仮置き場から運搬される固型化対象の放射性廃棄物の重量を集計して得られた集計重量が、固型化施設において処理可能な放射性廃棄物の重量を超えている場合に、前記選択設定ステップによる前記指定仮置き場の選択及び前記指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の種類及び重量の設定が、繰り返し行なわれるように誘導することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の放射性廃棄物の運搬管理方法によれば、最終処分場が受け入れ可能な限られた台数の中で、運搬車両によって複数の仮置き場から1箇所の最終処分場にできるだけ多くの放射性廃棄物を運搬することができると共に、最終処分場に到着した後の運搬車両の待機時間を短くすることができ、さらに、各々の仮置き場から最終処分場に至るまで、速やかに放射性廃棄物を運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る放射性廃棄物の運搬管理方法を実施するための運搬管理システムの構成を例示する図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る放射性廃棄物の運搬管理方法における月次計画作成のフローチャートである。
図3】本発明の好ましい一実施形態に係る放射性廃棄物の運搬管理方法における週次計画作成のフローチャートである。
図4】(a)は、その月に放射性廃棄物を搬出する選択された仮置き場と重量の入力例を示す図であり、(b)は、(a)に示す入力例に基づいて放射性廃棄物の重量を個数に換算した図である。
図5】(a)は、図4(a)示す入力例に基づいて、放射性廃棄物の重量及び個数を運搬回数に換算した例を示す図であり、(b)は、(a)に示す運搬回数に基づいて、1日に必要なトラック台数を算出した図である。
図6】月別の運搬回数に基づいて、混合整数計画法プログラムを用いて日別運搬回数を最適化した図である。
図7図6に示す日別運搬回数に基づいた当初の配車スケジュールを例示する図である。
図8】配車スケジュールの運行が不可能となる発生事象等を例示する図である。
図9】(a)は運搬車両の台数を増やす配車スケジュールの変更を例示する図であり、(b)は放射性廃棄物を搬出する仮置き場を変更する配車スケジュールの変更を例示する図である。
図10】(a)は運搬車両の出発時間を変更する配車スケジュールの変更を例示する図であり、(b)は運搬車両のルートを変更する配車スケジュールの変更を例示する図である。
図11】運搬車両の時間調整を行わせる配車スケジュールの変更を例示する図である。
図12】放射性廃棄物が固型処理すべき放射性廃棄物である場合に、固型化施設への放射性廃棄物の運搬を管理するための月次計画作成のフローチャートである。
図13】放射性廃棄物が固型処理すべき放射性廃棄物である場合に、固型化施設への放射性廃棄物の運搬を管理するための週次計画作成のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい一実施形態に係る放射性廃棄物の運搬管理方法は、特定の1箇所の最終処分場(以下、単に「最終処分場」ともいう)での受入時間内における、1日の処理能力(例えば、500t)に応じた所定台数(例えば、10tトラック50台)の運搬車両が、複数の仮置き場又は固型化施設から、所定の時間間隔毎(不要な待ち時間が生じることなく、且つ荷下ろし開始まで余裕を持った待ち時間となるような時間間隔であり、例えば、当該車が到着する直前に到着した車が荷下ろしを完了する30分前)に最終処分場に到着するように、コンピュータに組み込まれた数理最適化混合整数計画法プログラム(以下、単に「混合整数計画法プログラム」ともいう)を用いて、運搬管理する運搬管理方法に関するものとして採用されたものである。本実施形態では、固型化施設を、固型処理された放射性廃棄物が運搬される仮置き場の一つと考えて、放射性廃棄物の運搬管理方法を実施することが可能である。
【0019】
そして、本実施形態の放射性廃棄物の運搬管理方法は、放射性廃棄物を、複数の仮置き場から複数台の運搬車両により特定の1箇所の最終処分場に運搬して埋立て処理する放射性廃棄物の処理事業において用いられ、最終処分場における1日の処理能力に応じた所定台数の運搬車両が、所定の時間間隔毎に最終処分場に到着するように管理する、混合整数計画法プログラムを用いた放射性廃棄物の運搬管理方法であって、基本計画作成ステップ(図2参照)と、運搬スケジュール作成ステップ(図3参照)とを含んでいる。
【0020】
基本計画作成ステップは、図2に示すように、所定の期間内に運搬すべき放射性廃棄物の設計運搬量に基づいて、複数の仮置き場から廃棄物を運搬する1又は2以上の指定仮置き場を選択すると共に、指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の種類及び重量を設定する選択設定ステップ(S1)と、選択設定ステップ(S1)で選択された1又は2以上の指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量を、放射性廃棄物の種類毎に集計して、重量−個数換算表に照らし合わせることで、放射性廃棄物の運搬個数を、運搬個体の種類毎に設定する運搬個数設定ステップ(S2)と、運搬個数設定ステップ(S2)で運搬個体の種類毎に設定された放射性廃棄物の運搬個数、又は放射性廃棄物の種類毎に集計された重量から、個数・重量−運搬回数換算表に基づいて、運搬車両による運搬回数を設定する運搬回数設定ステップ(S4)と、運搬回数設定ステップ(S4)で設定された運搬車両による運搬回数に、制約条件、トラック情報、及び運搬実績の情報を加えて、混合整数計画法プログラムにより日別運搬回数を設定すると共に、日別トラック台数を設定する日別運搬回数設定ステップ(S5)とを含んで構成されている。
【0021】
運搬スケジュール作成ステップは、図3に示すように、基本計画作成ステップで設定された日別運搬回数の各々の運搬作業について、所定の運搬工程に展開する運搬作業展開ステップ(S11)と、所定の運搬工程に展開された日別運搬回数の運搬作業に、運搬スケジュールの制約条件、トラック情報、仮置き場情報、及び処分場情報の情報を加えて、混合整数計画法プログラムにより営業日毎の運搬車両の配車の組み合わせをシミュレートしてスケジューリングする配車スケジュールステップ(S12)とを含んで構成されている。
【0022】
また、本実施形態の放射性廃棄物の運搬管理方法は、運搬スケジュール修正ステップを含んでおり(図7図11参照)、運搬スケジュール修正ステップは、運搬スケジュール作成ステップでスケジューリングされた営業日毎の運搬車両の配車の組み合わせのスケジュールが、天候不良、交通渋滞、通行止め等の動的要因によって、計画通りに実行されない場合に、これらの動的要因の情報を加えて、混合整数計画法プログラムにより運搬車両の配車の組み合わせをシミュレートしてスケジューリングし直すようになっている。
【0023】
本実施形態の放射性廃棄物の運搬管理方法は、例えば図1に示すような、運搬管理システム100を用いて実施することができる。運搬管理システム100は、図1に示すように、複数の仮置き場の情報、固型化施設の情報、最終処分場の情報、運搬車両の情報及び放射性廃棄物の情報等が記憶されるクラウドサーバー1と、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に接続された運搬管理装置3とを含んで構成されている。なお、複数の仮置き場は、所定期間、放射性廃棄物を仮置きしておく場所であり、固型化施設は、埋立て処理するにあたって固型化が必要な放射性廃棄物を固型化処理する施設であり、最終処分場は、放射性廃棄物を埋立て処理する場所である。
【0024】
クラウドサーバー1には、通信ネットワーク2を介して各種情報端末が接続されており、各情報端末から出力された各種情報が記憶される。本実施形態においては、クラウドサーバー1には、複数の仮置き場情報を出力する複数の仮置き場情報端末4と、固型化施設の情報を出力する固型化施設情報端末5と、最終処分場の情報を出力する最終処分場情報端末6と、運搬車両の位置情報等を出力する運搬車両情報端末7と、運搬中の放射性廃棄物等の情報を出力するRFIDシステム(Radio Frequency Identification)等とが接続されている。
【0025】
例えば、複数の仮置き場情報端末4の場合、複数の仮置き場のそれぞれの管理者が、仮置き場の現状の放射性廃棄物の種類毎の運搬量を入力すると、仮置き場における放射性廃棄物の種類毎の総運搬量が仮置き場情報端末4から出力され、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に記憶される。また、固型化施設情報端末4の場合、固型化施設の管理者が固型化した放射性廃棄物の種類毎の運搬量を入力すると、固型化施設における放射性廃棄物の種類毎の総運搬量が固型化施設情報端末5から出力され、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に記憶される。最終処分場情報端末6の場合、最終処分場の管理者が、営業日毎の処理能力等を入力すると、最終処分場における営業日毎の処理能力等が最終処分場情報端末6から出力され、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー2に記憶される。
【0026】
運搬車両情報端末7は、運搬車両に取り付けられており、無線で通信ネットワーク2と接続可能になっている。また、運搬車両情報端末7は、GPS(Global Positioning System)アンテナを有しており、常時、運搬車両の位置情報が測位されるようになっている。測位された運搬車両の位置情報は、運搬車両情報端末7から無線で出力され、地図情報と共に、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に記憶される。また、運搬車両情報端末7からは、運搬車両の運行情報も出力されるようになっており、運行情報としては、例えば、走行速度、加速度、走行予定ルート、実走行ルート(軌跡を含む)、走行時間、走行距離等がある。これらの情報を、運搬管理装置3がクラウドサーバー1から入手することで、これらの情報に基づいて、交通渋滞、交通事故等を推測することができるようになる。例えば、運搬車両の走行速度が所定速度以下で連続走行していた場合には渋滞と推測し、運搬車両が所定時間以上停止している場合には交通事故と推測することができる。なお、運搬車両情報端末7は、運搬車両の運転手が携帯するスマートホン等のGPS機能付きの電子機器を利用する構成であっても良い。
【0027】
RFIDシステム8は、所定の情報が記録されるRFIDタグ81と、RFIDタグ81に記録された情報を非接触で読み取り可能なRFIDリーダー(RFIDアンテナ)82と、を含んで構成されている。
【0028】
RFIDタグ21には、フレキシブルコンテナ(以下、「フレコン」ともいう)等の放射性廃棄物に取り付けられる廃棄物用タグと、放射性廃棄物を運搬する運搬車両の運転手が所持する運転手用タグと、運搬車両に取り付けられる車両用タグとがあり、それぞれに、放射性廃棄物、運転手及び運搬車両に紐付けされた情報が記録される。例えば、廃棄物用タグには、計測記録情報及び詰め替え記録情報が記録されるようになっており、管理番号、収容された放射性廃棄物の内容物、線量、重量、荷姿等の情報が記録される。運転手用タグには、運転手情報が記録されるようになっており、管理番号、年齢、性別、健康状態(放射線量を含む)、放射性廃棄物の総運搬時間、日別の運転時間等の情報が記録される。また、車両用タグには、運搬車両情報が記録されるようになっており、管理番号、積載容量、放射性廃棄物の総積載量、走行距離等の情報が記録される。
【0029】
RFIDリーダー82は、例えば、仮置き場、固型化施設及び最終処分場に設けられたゲートに配設されており、RFIDタグ81がゲートを通過することで、RFIDタグ81に記録された所定の情報が読み取られるようになっている。読み取られた所定の情報は、通信ネットワーク2を介して、ゲートの通過情報(出発時間又は到着時間等)とともにクラウドサーバー1に入力される。また、固型化施設に到着した廃棄物用タグは、固型化施設での放射性廃棄物の処理内容に基づいて所定の情報が更新され、最終処分場に到着した廃棄物用タグは、上述した情報に加えて新たに埋立情報(埋立時間等)が記録され、好ましくは放射性廃棄物とともに最終処分場に埋立てられる。なお、廃棄物用タグに記録された埋立情報は、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に入力され、クラウドサーバー2を介して運搬管理装置1で管理される。
【0030】
運搬管理装置3は、例えばパーソナルコンピュータからなり、複数の仮置き場に仮置きされた大量の放射性廃棄物及び固型化施設から搬出される放射性廃棄物の最終処分場までの運搬を管理するためのものであり、クラウドサーバー1に記憶されたデータ及び後述する入力部34から入力されたデータに基づいて演算処理を行う演算部31と、各種プログラムや演算された各種データ等を記憶する記憶部32と、各種データを表示する表示部33と、管理者等がデータ等を入力する入力部34と、を備えて構成されている。
【0031】
演算部31は、例えば管理者によって入力部34から入力された、月内(例えば、最終処分場の営業日数22日)に最終処分場に運搬する、複数の仮置き場に仮置きされている大量の放射性廃棄物及び固型化施設で固型化処理された放射性廃棄物の月次計画(基本計画)を作成する月次計画作成部35と、月次計画作成部35で作成された月次計画に基づいて、運搬車両の週次計画(営業日毎の配車スケジュール)を作成する週次計画作成部36と、週次計画作成部36で作成された配車スケジュールを、個別の動的事由に係る情報に基づいて修正する日次計画修正部37と、を備えて構成されている。つまり、月次計画作成部35は後述する基本計画作成ステップを実行する手段であり、週次計画作成部36は後述する運搬スケジュール作成ステップを実行する手段であり、日次計画修正部37は後述する運搬スケジュール修正ステップを実行する手段である。
【0032】
なお、ここでは、複数の仮置き場に仮置きされた放射性廃棄物及び固型化施設5で固型化された放射性廃棄物の最終処理場への運搬管理方法について説明している。本実施形態の運搬管理方法は、放射性廃棄物が固型処理すべき放射性廃棄物である場合に、複数の仮置き場から固型化施設へ放射性廃棄物を運搬する際の管理方法としても用いることができる。複数の仮置き場から固型化施設に放射性廃棄物を運搬する際の管理方法については、後に説明する。
【0033】
月次計画作成部35は、放射性廃棄物を選別する廃棄物選別部35aと、放射性廃棄物の運搬個数を設定する運搬個数設定部35bと、放射性廃棄物の運搬量を調整する運搬量調整部35cと、放射性廃棄物の運搬回数を設定する運搬回数設定部35dと、放射性廃棄物の日別運搬回数を設定する日別運搬回数設定部35eと、を備えて構成されている。
【0034】
廃棄物選別部35aは、後述する基本計画作成ステップの廃棄物選別ステップにおいて、管理者によりその月に放射性廃棄物を搬出する仮置き場(以下、「指定仮置き場」ともいう)及び指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量と、固型化施設から搬出される放射性廃棄物の重量とが入力されると、これらの廃棄物のうち、指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物が、固型化施設において固型化処理すべき放射性廃棄物であるか、最終処分場に直接運搬して埋立て処理すべきものであるかを判断する。
【0035】
運搬個数設定部35bは、廃棄物選別ステップにおいて、指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物が最終処分場に直接運搬して埋立て処理する放射性廃棄物であると判断されると、後述する基本計画作成ステップの運搬個数設定ステップにおいて、指定仮置き場における最終処分場向けの放射性廃棄物の種類毎の重量と、固型化施設から運搬される固定処理後の放射性廃棄物の種類毎の重量と、を放射性廃棄物の種類毎の運搬個数に換算する。運搬個数設定部35bは、放射性廃棄物の種類毎の重量を放射性廃棄物の種類毎に集計して、重量−個数換算表に照らし合わせることで換算する。
【0036】
運搬量調整部35cは、運搬個数設定部35bにより放射性廃棄物の種類毎の運搬個数が換算されると、後述する基本計画作成ステップの運搬量調整ステップにおいて、換算された運搬個数が最終処理場における1日の処理能力を超えるものであるか否かを判断する。そして、最終処分場の1日の処理能力を超える個数である場合、指定仮置き場及び該指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量と、固型化施設から運搬される放射性廃棄物の重量とを管理者に再入力させる。運搬量調整部35cは、例えば、表示部33に警告等を表示して、各指定仮置き場における放射性廃棄物の種類毎の重量等を管理者に再入力させる。
【0037】
運搬回数設定部35dは、換算された運搬個数が最終処分場における1日の処理能力を超えていない場合に、後述する基本計画作成ステップの運搬回数設定ステップにおいて、指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物(収納容器)の個数及び固型化施設から運搬される放射性廃棄物(角型フレコン)の重量を運搬回数に換算する。運搬回数設定部35dは、運搬量調整部35cで換算された収納容器の運搬個数及び角型フレコンの重量を集計して、個数・重量−運搬回数換算表に照らし合わせることで運搬回数を換算する。
【0038】
日別運搬回数設定部35eは、後述する基本計画作成ステップの日別運搬回数設定ステップにおいて、上述の運搬回数設定部35dが設定した運搬回数に、日別運搬回数の制約条件、運搬車両情報、運搬実績及び運搬車両の車両基地から指定仮置き場までの距離制限等の情報を加えて、混合整数計画法プログラムを用いて、最適化された日別運搬回数及び最適化された日別運搬車両台数を設定する。日別運搬回数の制約条件としては、例えば、運搬時期、搬出の連続性及び受け入れ可能量等が挙げられ、運搬車両情報としては、例えば、稼働時間、運搬車両の台数の上限及び運搬車両毎の最大積載重量(例えば、10t、12t、14t等)等が挙げられる。運搬実績情報としては、荷積み・荷下ろし時間、運搬時間、余裕時間、運搬車両の稼働率及び運転手の必要休憩時間(例えば、4時間走行したら30分休憩する等)等が挙げられる。
【0039】
混合整数計画法プログラムは、混合整数計画法を行なわせる既成のプログラムを用いることができる。日別運搬回数設定部35eは、パラメータを日別運搬回数の制約条件、運搬車両情報及び運搬実績等として混合整数計画法プログラムを実行することで、最適化された日別運搬回数及び日別運搬車両台数を設定する。混合整数計画法プログラムは、現実の社会に現れる様々な問題に対して、問題のポイントを整理した数学モデルを作成し、モデルの特性を考慮した適当な方法(アルゴリズム)で解を求め、得られた解をもとに問題の解決策を実施する公知のプログラムである。混合整数計画法プログラムは、整数値をとる変数と実数値をとる変数とが混在する状況下において、いくつかの等式や不等式の制約のもとで、目的とする関数を最大化あるいは最小化するための計算を行う機能を備えるものである。
【0040】
混合整数計画法プログラムを用いて日別運搬回数及び日別運搬車両台数を設定することで、簡単かつ迅速に、最適な日別運搬回数及び日別運搬車両台数を設定することができる。また、運搬車両3の平準化及び最終処分場6への効率的な搬入などの相反する目的を、多くの制約条件の中で、可能な限り達成することができるように設定することができる。
【0041】
週次計画作成部36は、1台の運搬車両3が行う運搬作業を帯状に展開する運搬作業展開部36aと、営業日毎の配車スケジュールを作成する配車スケジュール部36bと、を備えて構成されている。
【0042】
運搬作業展開部36aは、月次計画作成部35の日別運搬回数設定部35eで最適化された日別運搬回数のそれぞれの運搬作業について、後述する運搬スケジュール作成ステップの運搬作業展開ステップにおいて、運搬工程に展開する(図7参照)。具体的には、運搬作業展開部36aは、運搬工程として、荷積み作業時間、運搬作業時間、荷下ろし作業時間及び予備時間(余裕時間)に展開する。なお、運搬作業時間は、選択された仮置き場や運搬ルートに応じて異なったものとなる。予備時間(余裕時間)は、運行によって生じる誤差を吸収させるためのものであり、初期設定時間を設定し、その後、実績に基づいて、収束させると良い。つまり、実績に基づいて変更すると良い。例えば、初期設定として30分に設定し、その後の実績に基づいて、10分、20分又は40分等に変更すると良い。また実績は、時期毎(月単位や季節ごと等)に変更して設定すると良い。予備時間(余裕時間)を設けることで、不要な待ち時間等を減らすことができる。
【0043】
配車スケジュール部36bは、後述する運搬スケジュール作成ステップの配車スケジュールステップにおいて、上述の運搬工程に展開された日別運搬回数の運搬作業に、配車スケジュールの制約条件、運搬車両情報、仮置き場情報、固型化施設情報及び最終処分場情報を加えて、混合整数計画法プログラムを用いて、営業日毎の運搬車両3の配車の組み合わせをシミュレートして最適化した配車スケジュールを作成する。このとき、なるべく同じ仮置き場から運搬車両が連続して出発するように配車スケジュールが作成される。
【0044】
混合整数計画法プログラムを用いて営業日毎の複数台の運搬車両3の配車スケジュールを作成することで、簡単かつ迅速に、最適な営業日毎の運搬車両3の配車スケジュールを設定することができる。最適な営業日毎の配車スケジュールとしては、例えば、最終処分場で運搬車両が荷下ろしするための待ち時間が最少となるスケジュール等がある。最終処分場での待ち時間を短くすることで、運転手や作業者等の被ばく量を少なくすることができる。また、混合整数計画法プログラムを用いて営業日毎の配車スケジュールを設定することで、例えば、従来の制約プログラムを用いた場合と比較して、上述の待ち時間を短くした配車スケジュールを、より短時間で作成することができる。
【0045】
日次計画修正部37は、後述する運搬スケジュール修正ステップにおいて、管理者がその日の動的事由(例えば、天候不良、交通渋滞、交通事故及び車両故障のような当初の配車スケジュールの運行が不可能になる事由)を入力した場合には、動的事由が反映された新たな最適な配車スケジュールを再作成する。つまり、日次計画修正部37は、週次計画作成部36を繰り返し実行させ、且つ管理者により動的事由が入力されている場合においては動的事由を反映させた週次計画を作成する。日次計画修正部37は、例えば、管理者による動的事由の入力とは関係なく、所定時間(例えば、10分)毎に週次計画作成部36を実行させるように構成しても良く、管理者による動的事由が入力された場合に週次計画作成部36を実行させるように構成しても良い。
【0046】
日次計画修正部37を設けることで、当初の配車スケジュールが実行不可能になるような事由が発生した場合においても、最適な配車スケジュールを再作成して実行させることができる。
【0047】
上述のような構成を有する運搬管理システム100を用いることで、例えば、最終処分場が1日に受け入れ可能な限られた台数の中で、運搬車両によって複数の指定仮置き場及び固型化施設から特定の1箇所の最終処分場に、できるだけ多くの放射性廃棄物を運搬することができると共に、最終処分場に到着した後の運搬車両の荷下ろしまでの待機時間を短くすることができる。また、各々の指定仮置き場及び固型化施設から最終処分場に至るまで、最適な運搬ルートで速やかに廃棄物を運搬することができる。
【0048】
例えば、放射性廃棄物の運搬においては、住民、運転手、作業員及び一般交通等の安全のため、放射性廃棄物(例えば、除去土壌等)の荷積みや荷下ろしや運搬時における、放射性廃棄物の飛散、流出及び漏れ出し(以下、「飛散等」という)を防止するとともに、運搬による沿線住民への追加被ばくや環境への影響の抑制、運転者や作業員等の被ばく線量の管理など、安全対策に万全を期す必要がある。そのため、渋滞、積雪、道路凍結、住宅地及び公園などの公共施設、スクールゾーン、周辺住民への被ばく量などを考慮した適切な運搬ルートの選定が必要となる。しかしながら、住宅地及び公園などの公共施設やスクールゾーンなどの静的事由については予め回避可能な運搬ルートを作成することができるが、渋滞、積雪及び道路凍結等の動的事由については、予測不能である。特に、複数の仮置き場から運搬される放射性廃棄物の運搬ルートは、多数存在することより、動的事由によって1箇所の運搬ルートに変更が生じても、全体の輸送ネットワークに及ぼす影響が甚大である。そのため、ある事象が生じても、最終処分場への運搬を速やかに最適化して運搬させる運搬管理が重要となる。そこで、本実施形態のように、混合整数計画法プログラムを用いて、最適化した配車スケジュールを適宜作成し直すことで、上述の動的事由が発生した場合においても、動的事由の影響を少なくすることができ、有効となる。
【0049】
次に、上述した運搬管理システム100を用いた本実施形態の放射性廃棄物の運搬管理方法について、図2図13を参照しながら説明する。なお、ここでは、上述のように、複数の指定仮置き場に仮置きされた放射性廃棄物及び固型化施設5で固型化された放射性廃棄物の最終処理場への運搬管理方法を用いて説明する。本実施形態の運搬管理方法は、放射性廃棄物が固型処理すべき放射性廃棄物である場合に、複数の仮置き場から固型化施設へ放射性廃棄物を運搬する際の管理方法として用いることもできる。複数の指定仮置き場から固型化施設に放射性廃棄物を運搬する際の管理方法については、後述する。
【0050】
本実施形態に係る放射性廃棄物の運搬管理方法は、月内(例えば、最終処分場の営業日数22日)に最終処分場に運搬する、複数の仮置き場に仮置きされている大量の放射性廃棄物及び固型化施設で固型化された放射性廃棄物の月次計画(基本計画)を作成する月次計画作成ステップ(基本計画作成ステップ)と、月次計画作成ステップで作成された月次計画に基づいて、運搬車両の週次計画(日別運搬スケジュール)を作成する週次計画作成ステップ(運搬スケジュール作成ステップ)と、週次計画作成ステップで作成された週次計画を、個別の動的事由に係る情報に基づいて修正する日次計画修正ステップ(運搬スケジュール修正ステップ)と、を含んで構成されている。
【0051】
図2に示すように、月次計画作成ステップでは、まず、管理者が、その月に放射性廃棄物を運搬する指定仮置き場及び指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量と、固型化施設から運搬される放射性廃棄物の重量とを入力する(選択設定ステップ、ステップS1)。選択設定ステップは、各指定仮置き場に仮置きされている放射性廃棄物及び固型化施設で固型化された放射性廃棄物の全量から、月内に最終処分場に運搬する放射性廃棄物の全体の運搬計画量(設計運搬量)を設定し、設定した運搬計画量に基づいて、複数の仮置き場及び固型化施設の中から、月内に放射性廃棄物を搬出する仮置き場を指定仮置き場として選択するとともに、指定仮置き場及び固型化施設から搬出される放射性廃棄物の重量を放射性廃棄物の種類毎に設定する。
【0052】
例えば、図4(a)に示すように、指定仮置き場として、仮置き場6、11、24、28、29、45、62、81、85、96及び固型化施設を選択し、それぞれの指定仮置き場6、11、24、28、29、45、62、81、85、96及び固型化施設からの運搬重量〔トン〕を、飛灰(1)、飛灰(2)、不燃物、主灰、混合灰(1)、混合灰(2)、浄水発生土(1)、浄水発生土(2)及び下水汚泥毎に設定する。
【0053】
本実施形態においては、選択設定ステップは、手入力により行われるようになっており、運搬管理システム100の管理者によって手入力される。なお、本実施形態においては、入力は管理者の手入力により行われるが、例えば、仮置き場情報及び固型化施設情報に基づいて、自動入力される構成であっても良い。
【0054】
ここで、図4(a)において、丸型フレコンは、仮置き場から固型化施設に運搬される固型化が必要な放射性廃棄物の荷姿を、角型フレコンは固型化施設から最終処分場に運搬される固型化された放射性廃棄物の荷姿を、収納容器は、仮置き場から最終処分場に運搬される固型化不要の放射性廃棄物の荷姿を、各々示している。
【0055】
指定仮置き場における放射性廃棄物の種類毎の重量と、固型化施設における放射性廃棄物の種類毎の重量と、が入力されると、次に、入力された指定仮置き場における複数種類の放射性廃棄物が、固型化施設において固型化すべき放射性廃棄物であるか、最終処分場に直接運搬して埋め立て処理すべき放射性廃棄物であるかを選別する(廃棄物選別ステップ)。廃棄物選別ステップは、上述の廃棄物選別部31aにより実行される。
【0056】
廃棄物が選別されると、次に、指定仮置き場から最終処分場に運搬される放射性廃棄物の種類毎の重量と、固型化施設から最終処分場に運搬される放射性廃棄物の種類毎の重量と、を放射性廃棄物の種類毎の運搬個数に換算する(運搬個数設定ステップ、ステップS2)。運搬個数設定ステップは、上述の運搬個数換算部35bにより実行され、選択設定ステップで設定された放射性廃棄物の種類毎の重量を、放射性廃棄物の種類毎に集計して、重量−個数換算表に照らし合わせることで運搬個数に換算される。例えば、図4(b)に示すように、各指定仮置き場及び固型化施設における放射性廃棄物の種類毎に、運搬個数を換算する。例えば、仮置き場6の不燃物の放射性廃棄物の場合、重量が211.2トンに対して収納容器の荷姿当たりの重量が0.5トンなので、運搬個数は、422.4個となる。また、仮置き場6の飛灰(2)の放射性廃棄物の場合、重量が76トンに対して角型フレコンの荷姿当たりの重量が0.6トンなので、運搬個数は126.7個となる。
【0057】
放射性廃棄物の種類毎の運搬個数が換算されると、次に、換算された運搬個数が最終処理場における1日の処理能力を超えるものであるか否かが判断される。最終処分場の1日の処理能力を超える個数である場合、選択設定ステップに戻って、指定仮置き場及び該指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量と、固型化施設から搬出される重量とを再入力させる(運搬量調整ステップ、ステップS3)。なお、ここでいう最終処分場における1日の処理能力とは、最終処分場の受入時間(就業時間)内での処理能力をいう。本実施形態においては、運搬量調整ステップは運搬量調整部35cにより実行され、選択設定ステップは管理者の手入力により実行される構成になっているため、この場合、運搬量調整ステップでは、管理者が指定仮置き場及び該指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量と、固型化施設から搬出される重量とを、再度、手入力するように、運搬量調整部35cが表示部33に警告等を出力して再入力するように誘導する。
【0058】
一方、換算された運搬個数が最終処分場における1日の処理能力を超えていない場合、次に、指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物(収納容器)の個数及び固型化施設から運搬される放射性廃棄物(角型フレコン)の重量を運搬回数に換算する(運搬回数設定ステップ、ステップS4)。
【0059】
運搬回数設定ステップは、運搬回数設定部35dにより実行され、運搬量調整ステップで換算された収納容器の運搬個数及び角型フレコンの重量を集計して、個数・重量−運搬回数換算表に照らし合わせることで換算される。例えば、図5(a)に示すように、各指定仮置き場及び固型化施設における放射性廃棄物の種類毎に、運搬回数が換算される。例えば、仮置き場6の不燃物の放射性廃棄物の場合、運搬個数が422.4個に対して平均積載量が5.5個なので、運搬回数は76.8回となる。また、仮置き場6の飛灰(1)の放射性廃棄物の場合、運搬重量が126.7tonに対して、平均積載量が9.5tonなので、運搬回数は8回となる。なお、飛灰(1)等の荷姿である角型フレコンや丸型フレコンは重量があるため、運搬車両による運搬重量の制約から、運搬回数を重量で換算し、不燃物の放射性廃棄物等の荷姿である収容容器は、重量は軽いが容量があって嵩張るため、運搬車両の荷台面積の制約から、運搬回数を個数で換算している。
【0060】
運搬回数が換算されると、次に、運搬回数から1日に必要な運搬車両の台数を計算する。例えば、図5(b)に示すように、仮置き場6は、最終処分場までの往復時間が80分、荷積み及び荷降ろしの時間が各30分なので、1回の運搬時間は140分となる。仮置き場6からは最終処分場に84.8回行くので、仮置き場6から運搬する場合の1日の仕事量は、11872.0分となる。運搬回数を換算することで、1日の運搬車両台数が上限台数に達していないかを確認することができる。
【0061】
運搬回数から1日に必要な運搬車両の運搬台数を計算すると、次に、運搬回数設定ステップで設定した運搬回数に、制約条件、運搬車両条件及び運搬実績等の情報を加えて、混合整数計画法プログラムを用いて、最適化された日別運搬回数及び最適化された日別運搬車両台数を設定する(日別運搬回数設定ステップ、ステップS5)。日別運搬回数設定ステップは、上述の日別運搬回数設定部35eにより実行される。また、制約条件としては、例えば、一箇所の仮置き場から出来るだけ連続して搬出させること、仮置き場毎に搬出開始日時や搬出終了日時が決まっていること、仮置き場によっては搬出できる時間帯が制限されていること、冬季には最終処分場への搬入可能時間が短くなること、特定のルートで交通規制が発生すること等が挙げられる。運搬条件としては、例えば、台数の平準化の結果による使用台数の制限等が挙げられる。運搬実績等の情報としては、例えば、実績に応じて、設定速度を実態に合うように変更すること等が挙げられる。
【0062】
混合整数計画法プログラムは、混合整数計画法を行なわせる既成のプログラムを用いることができる。混合整数計画法プログラムは、パラメータを日別運搬回数の制約条件、運搬車両情報及び運搬実績等として実行し、最適化された日別運搬回数及び日別運搬車両台数を設定する。
【0063】
混合整数計画法プログラムを用いて日別運搬回数及び日別運搬車両台数を設定することで、簡単かつ迅速に、最適な日別運搬回数及び日別運搬車両台数を設定することができる。また、最終処分場の1日の受け入れ能力を超えない範囲で、1日に使用する運搬車両台数を平準化することができる。
【0064】
本実施形態では、週次計画作成ステップは、上述の日次計画修正部37において実行され、好ましくは2週間分の運搬スケジュールについて、1週間分を重複させると共に、若干の修正を加えながら、1週間ごとに作成する。
【0065】
図3に示すように、週次計画作成ステップでは、まず、来週の最初の営業日をi日と設定する(ステップS10)。この設定は、管理者により設定される構成であっても良く、月初めに近い日付から順次行われる構成であっても良い。本実施形態においては、管理者により設定される。次に、月次計画設定ステップで作成した日別運搬回数に基づいて、i日の日別運搬回数を運搬工程に展開する(運搬作業展開ステップ、ステップS11)。具体的には、運搬工程として、荷積み作業時間、運搬作業時間、荷下ろし作業時間及び予備時間(余裕時間)に展開する(図7参照)。展開した運搬作業の中に予備時間(余裕時間)を設けることで、最終処分場での不要な待ち時間等を減らすことができる。ここで、運搬作業時間は、選択された指定仮置き場や運搬ルートに応じて異なったものとなる。
【0066】
次に、上述の運搬工程に展開されたi日の運搬作業に、運搬スケジュールの制約条件、運搬車両情報、仮置き場情報、固型化施設情報及び最終処分場情報を加えて、混合整数計画法プログラムを用いて、i日の運搬車両の配車の組み合わせをシミュレートして最適化した配車スケジュールを作成する(配車スケジュールステップ)。例えば、図7に示すようなi日の運搬車両の最適な組み合わせのスケジュールが、当初計画として作成される。
【0067】
混合整数計画法プログラムを用いてi日の運搬車両の配車スケジュールを作成することで、例えば、図7に示すように、展開した運搬作業(荷積み、運搬、予備時間(余裕)、荷下ろし)の中の荷下ろしが、最終処分場において重ならず、且つ前車の荷下ろしが完了する前に余裕をもって各運搬車両が最終処分場に到着するように、容易に計画することが可能になるので、最終処分場で不要な待ち時間が生じることなく、放射性廃棄物の荷下ろしを行うことができる。特に、放射性廃棄物は放射線を放射し続けているので、展開した運搬作業の荷下ろしが、最終処分場において重ならないようにすることが有効となる。
【0068】
本実施形態では、混合整数計画法プログラムにより最適な運搬車両の配車スケジュールが、当初計画として作成された場合においても、図8に示すように、天候不良、交通通渋滞、交通事故及び車両故障のような動的事由により当初の配車スケジュールの運行が不可能になる場合がある。そのため、本実施形態では、日次計画修正ステップが、所定時間(例えば、10分)毎に実行され、例えば管理者によってその日の動的事由が入力された場合には、入力された動的事由が反映された新たな最適な配車スケジュールが、修正計画として作成し直される。つまり、日次計画修正ステップは、週次計画作成ステップを繰り返し実行させる機能、及び管理者により動的事由が入力されている場合においては、動的事由を反映させた週次計画作成ステップを実行させる機能を備えている。
【0069】
日次計画修正ステップとしては、管理者が、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に逐次記憶される運搬車両の位置情報を監視していて、例えば、図9(a)に示すように、運搬車両であるトラック3が交通事故にあって運行不能になったと判断した場合に、管理者は、トラック3の交通事故の場所とトラック3が運行不能となった旨を入力して、混合整数計画法プログラムを再実行させる。再実行させた混合整数計画法プログラムにより、例えば仮処分場Aの放射性廃棄物を運搬するトラック9が追加される新たな配車スケジュールが作成されることになる。これにより、結果として、最終処分場への一日の運搬量及び仮処分場Aからの一日の運搬量を維持することが可能になる。また、トラック9の展開した運搬時間を調整することで、図9(a)に示すように、仮処分場Aにおいて荷積みする際や最終処分場において荷下ろしをする際においても、不要な待ち時間が生じないため、例えば、運転手が放射線を浴びる時間を短くすることができる。
【0070】
また同様に、管理者が、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に逐次記憶される運搬車両の位置情報を監視していて、例えば、図9(b)に示すように、仮置き場Aから最終処分場までのルートの途中で交通渋滞が発生したと判断した場合に、管理者は、運搬車両の位置情報に基づいて渋滞個所を入力して、混合整数計画法プログラムを再実行させる。再実行させた混合整数計画法プログラムにより、例えば仮置き場Aからの運搬を中止し、仮置き場Dから積荷Dを運搬する新たな配車スケジュールが作成される。これにより、結果として、最終処分場への一日の運搬量を維持することが可能になる。このとき、好ましくは運搬時間の短い(最終処分場から近い)仮置き場Dが優先して選択されることで、最終処分場の受入時間内に運搬することが可能になる。
【0071】
同様に、管理者が、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に逐次記憶される運搬車両の位置情報を監視していて、例えば、図10(a)に示すように、仮置き場Aから最終処分場までのルートの途中で交通渋滞が発生したと判断した場合に、管理者は、運搬車両の位置情報に基づいて渋滞個所を入力し、混合整数計画法プログラムを再実行させる。トラック1〜3の最終処分場への到着時間の遅延が予想されることから、再実行させた混合整数計画法プログラムにより、例えば渋滞発生が確認された後に出発予定であったトラック4〜6の出発時間を早めることで、仮置き場Aから出発するトラック4〜6の出発を早める新たな配車スケジュールが作成される。このときトラック4〜6には、仮置き場Aから最終処分場へのルートの途中にある指定の休憩場所で休憩等して、時間調整を行うように通信ネットワーク2を介して情報がで伝達される。なお、運転手が休憩する指定の休憩場所は、安全管理がなされている予め定められた特定の場所となっている。
【0072】
さらに、管理者が、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に逐次記憶される運搬車両の位置情報を監視していて、例えば、図10(b)に示すように、仮置き場Aから最終処分場までのルートの途中で交通事故が発生してルートの一部が通行止めになったと判断した場合に、管理者は、運搬車両の位置情報に基づいて通行止めの箇所を入力し、混合整数計画法プログラムを再実行させる。再実行させた混合整数計画法プログラムにより、例えば通行止めが確認された後に出発する予定のトラック4〜6が迂回するルートを設定した、新たな配車スジジュールが作成される。これにより、結果として、最終処分場への一日の運搬量運搬量を維持することが可能になる。
【0073】
更にまた、管理者が、通信ネットワーク2を介してクラウドサーバー1に逐次記憶される運搬車両の位置情報を監視していて、例えば、図11に示すように、仮置き場Aから最終処分場までのルートの途中で交通渋滞が発生し、トラック3のみの到着時刻の遅延が予想されると判断した場合に、管理者は、運搬車両の位置情報に基づいて、渋滞個所と時間とを入力し、混合整数計画法プログラムを再実行させる。再実行させた混合整数計画法プログラムにより、トラック3の最終処分場における荷下ろし作業の時間を変更する、新たな配車スケジュールが作成される。
【0074】
このように、動的事由が発生した場合においても、適宜混合整数計画法プログラムを実行させることにより、最適な配車スケジュールを容易且つスムーズに作成し直すことができるようになっている。
【0075】
したがって、本実施形態の放射性廃棄物の運搬管理方法によれば、最終処分場が受け入れ可能な限られた台数の中で、運搬車両によって複数の仮置き場から1箇所の最終処分場に、できるだけ多くの放射性廃棄物を運搬することが可能になると共に、最終処分場に到着した後の運搬車両の待機時間を短くすることが可能になり、さらに、各々の仮置き場から最終処分場に至るまで、速やかに放射性廃棄物を運搬することが可能になる。
【0076】
また、本実施形態では、放射性廃棄物の運搬管理方法は、上述のように、放射性廃棄物が固型処理すべき放射性廃棄物である場合に、複数の仮置き場から固型化施設へ放射性廃棄物を運搬する際の管理方法として用いることもできる。すなわち、本実施形態では、複数の指定仮置き場から固型化施設に放射性廃棄物を運搬する際の管理方法として、図12及び13に示すように、上述と同様の月次計画作成ステップと、週次計画ステップと、日次計画修正ステップとを実行することで、最適な運搬管理が可能になる。
【0077】
この場合、廃棄物選別部は、管理者により指定仮置き場及び指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量が入力されると、指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物が固型化施設におい固型化処理すべき放射性廃棄物であるか、最終処分場で埋立処理すべき放射性廃棄物であるかを判断する機能を備える。また、廃棄物選別部は、固型化対象廃棄物運搬量調整部を有しており、固型化対象廃棄物運搬量調整部は、廃棄物が固型化施設におい固型化処理すべき放射性廃棄物であると判断されると、指定仮置き場から運搬される固型化対象の放射性廃棄物の重量を集計し、得られた集計重量が固型化施設の処理能力を超えている場合に、管理者に、指定仮置き場4及び該指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量を再入力させるように誘導する。
【0078】
同様に、月次計画作成ステップは、廃棄物選別ステップを有しており、廃棄物選別ステップは、選択設定ステップで設定された複数種類の放射性廃棄物が固型化施設で固型化処理すべき放射性廃棄物であるか、最終処分場で埋立処理すべき放射性廃棄物であるかを判断する。さらに、廃棄物選別ステップは、固型化対象廃棄物運搬量調整ステップを有しており、固型化対象廃棄物運搬量調整ステップは、廃棄物が固型化施設におい固型化処理すべき放射性廃棄物であると判断されると、指定仮置き場から運搬される固型化対象の放射性廃棄物の重量を集計し、得られた集計重量が固型化施設の1日の処理能力を超えている場合に、管理者に、指定仮置き場及び該指定仮置き場から運搬される放射性廃棄物の重量を再入力させるように誘導する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の放射性廃棄物の運搬管理方法によれば、最終処分場6が1日に受け入れ可能な限られた台数の中で、運搬車両によって複数の仮置き場及び固型化施設から1箇所の最終処分場にできるだけ多くの放射性廃棄物を運搬することができると共に、最終処分場に到着した後の運搬車両の荷下ろしまでの待機時間を短くすることができる。また、各々の仮置き場及び固型化施設から最終処分場に至るまで、最適な運搬ルートで速やかに廃棄物を運搬することができる。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本実施形態においては、選択設定ステップを管理者の手入力により行わせる構成を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。選択設定ステップは、例えば、演算により自動入力させる構成であっても良い。この場合、運搬管理装置1に、指定仮置き場4及び固型化施設5から搬出される放射性廃棄物の重量を放射性廃棄物の種類毎に設定させる選択設定部を設け、選択設定部に自動入力させる構成とすると良い。
【0081】
また、例えば、本実施形態においては、放射性廃棄物の種類毎の運搬個数を、重量−個数換算表を用いて換算する構成を用いて説明したが、放射性廃棄物の種類毎の運搬個数は、例えば、演算により自動換算させる構成であっても良い。この場合、運搬管理装置の運搬個数設定部に自動換算させる構成とすると良い。また、本実施形態においては、放射性廃棄物が収納された収納容器の運搬個数及び角型フレコンの重量等を個数・重量−運搬回数換算表に照らし合わせることで換算する構成を用いて説明したが、収納容器の運搬個数及び角型フレコン等の重量は、例えば、演算により自動換算させる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 運搬管理装置
2 RFIDタグ
3 運搬車両
4 通信ネットワーク
10 基本設定作成部
11 選択設定部
12 運搬個数設定部
13 運搬回数設定部
14 日別運搬回数設定部
20 運搬スケジュール作成部
21 運搬作業展開部
22 配車スケジュール部
30 運搬スケジュール修正部
100 運搬管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13