(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも請求項1記載の式(1)で表されるシラン単位を含むポリシランであって、少なくとも一部の末端基が、シラノール基で形成されており、ポリシラン中のケイ素原子1モルに対するシラノール基濃度が、0.005〜0.1モルであるポリシラン。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のポリシラン中間体は、シラン単位から構成されており、少なくとも一部の末端基が所定の保護基で保護されている。
【0034】
(1)シラン単位
ポリシラン中間体は、屈折率を高めるとともに、ネットワーク構造を形成してシラノール基濃度を高めるため、少なくとも下記式(1)で表されるシラン単位(モノアリールシラン単位(1))を含む。なお、ネットワーク構造を有する重合体とは、ポリマー構造が網目状又は分岐鎖状(特に網目構造)である重合体を意味する。
【0036】
(式中、R
1は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
【0037】
上記式(1)において、R
1で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などのC
6−12アリール基が挙げられ、好ましくはC
6−10アリール基(例えば、C
6−8アリール基など)さらに好ましくはフェニル基である。アリール基は、置換基を有していてもよく、前記置換基としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基(好ましくはC
1−6アルキル基、特にC
1−4アルキル基など)など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC
5−8シクロアルキル基、特にC
5−6シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基などのC
6−10アリール基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−6アルキル基(例えば、C
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)など)]、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ基(好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルコキシ基、特に直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルコキシ基)など)、アミノ基、N−置換アミノ基(例えば、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基などで置換されたN−モノ又はジ置換アミノ基など)などの有機基などが挙げられる。置換基の個数は、特に限定されず、例えば、1又は複数(例えば、2〜4個)であってもよく、複数の場合は、置換基の種類が異なってもよい。このような置換基を有するアリール基としては、例えば、トリル、キシレニル、エチルフェニル、メチルナフチル基などのC
1−6アルキルC
6−10アリール基(例えば、モノ乃至トリC
1−4アルキルC
6−10アリール基、特にモノ又はジC
1−4アルキルフェニル基など)、メトキシフェニル、エトキシフェニル、メトキシナフチル基などのC
1−10アルコキシC
6−10アリール基(例えば、C
1−6アルコキシC
6−10アリール基、特にC
1−4アルコキシフェニル基など)などが挙げられる。
【0038】
モノアリールシラン単位(1)の具体例としては、例えば、モノC
6−12アリールシラン単位(例えば、ナフチルシラン単位(1−ナフチルシラン単位、2−ナフチルシラン単位)、フェニルシラン単位など)、好ましくはモノC
6−10アリールシラン単位、さらに好ましくはモノC
6−8アリールシラン単位、特にフェニルシラン単位である。
【0039】
ポリシラン中間体は、他のモノ置換シラン単位(=Si(R
a)−)、例えば、R
aが、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基であるシラン単位を含んでもよく、他のモノ置換シラン単位のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキル基、特にメチル基又はエチル基)であってもよい。
【0040】
ポリシラン中間体は、少なくともモノアリールシラン単位(1)を含んでいればよく、モノアリールシラン単位(1)単独のみならず、モノアリールシラン単位(1)と、他のシラン単位とで構成してもよい。他のシラン単位は、例えば、下記式(3)〜(5)で表されるシラン単位(シラン単位(3)〜(5))から選択された少なくとも1種であり、好ましくはシラン単位(3)及びシラン単位(4)、さらに好ましくはシラン単位(4)である。
【0042】
(式中、R
2〜R
6は、同一又は異なって、水素原子、有機基、又はシリル基若しくは置換シリル基を示す。)
【0043】
ポリシラン中間体は、シラン単位(3)を含むことにより、ネットワーク構造を形成するのに有利である。シラン単位全体に対するシラン単位(3)の割合は、例えば、0〜20モル%(例えば、0〜10モル%、好ましくは1〜5モル%)程度である。
【0044】
R
2〜R
6で表される有機基としては、前記式(1)におけるアリール基の置換基の項で例示した有機基が例示できる。R
2〜R
6で表される置換シリル基としては、ジシラニル基、トリシラニル基などのSi
2−10シラニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基などで置換された置換シリル基(例えば、トリメチルシリル基など)が例示できる。
【0045】
シラン単位(4)において、好ましいR
2、R
3は、有機基、例えば、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)である。シラン単位(4)は、例えば、R
2及びR
3のうち、少なくとも一方がアリール基、例えば、R
2が、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよい直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、R
3が、置換基を有してもよいアリール基であるシラン単位(ジアリールシラン単位又はアルキルアリールシラン単位)であり、アルキルアリールシラン単位であることが好ましい。
【0046】
アルキルアリールシラン単位(4)の具体例としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキルC
6−12アリールシラン単位、好ましくはC
1−6アルキルC
6−10アリールシラン単位(例えば、C
1−4アルキルC
6−10アリールシラン単位)、さらに好ましくはC
1−2アルキルフェニルシラン単位(例えば、メチルフェニルシラン単位)である。
【0047】
モノアリールシラン単位(1)とアルキルアリールシラン単位(4)との組み合わせとしては、例えば、モノC
6−12アリールシラン単位(例えば、モノC
6−10アリールシラン単位、好ましくはフェニルシラン単位)と直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキルC
6−12アリールシラン単位(例えば、C
1−6アルキルC
6−10アリールシラン単位、好ましくはC
1−4アルキルフェニルシラン単位(例えば、C
1−2アルキルフェニルシラン単位、特にメチルフェニルシラン単位))との組み合わせが例示できる。
【0048】
シラン単位全体に対するシラン単位(4)の割合は、例えば、0〜70モル%、好ましくは5〜60モル%、さらに好ましくは10〜50モル%、特に20〜40モル%程度であってもよい。シラン単位(4)(例えば、アルキルアリールシラン単位(4))の割合を大きくすると、屈折率は徐々に低下するものの、有機溶媒に対する溶解性及び成膜性が向上する。
【0049】
シラン単位(5)において、好ましいR
4〜R
6は、有機基、例えば、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)であり、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキル基、特にメチル基又はエチル基)であってもよい。
【0050】
シラン単位全体に対するシラン単位(5)の割合は、例えば、0〜10モル%(例えば、0〜5モル%、好ましくは0〜2.5モル%)程度である。シラン単位(5)の割合を小さくすることが、シラノール基濃度が高いポリシランを形成するのに有利である。
【0051】
本発明のポリシラン中間体は、通常、モノアリールシラン単位(1)を主たる構成単位として含む。モノアリールシラン単位(1)と他のシラン単位(例えば、シラン単位(4))との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=30/70〜100/0(例えば、40/60〜99/1)、好ましくは50/50〜98/2(例えば、60/40〜97/3)、さらに好ましくは70/30〜95/5(例えば、75/25〜90/10)程度である。モノアリールシラン単位(1)の割合が大きくなると、高い屈折率が得られるため好ましい。
【0052】
(2)保護基
ポリシラン中間体は、少なくとも一部の末端基が、下記式(2)で表される保護基で保護されている。
【0054】
(式中、R
11及びR
12は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基、水素原子又はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)を示し、Z
1及びZ
2は、同一又は異なって、直接結合又は酸素原子を示し、R
11及びR
12が、水素原子又はハロゲン原子である場合は、隣接するZ
1又はZ
2は、直接結合であり、nは、1〜10を示し、nが2以上である場合は、R
12に隣接していないZ
2は、酸素原子を示す。)
【0055】
上記式(2)において、R
11及びR
12は、同一又は異なって、炭化水素基(例えば、前記式(1)におけるアリール基の置換基の項で例示したアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など)が挙げられ、炭化水素基は、前記式(1)におけるアリール基の置換基の項で例示した炭化水素基などの置換基を有していてもよい。R
11及びR
12で表される炭化水素基は、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、C
1−6アルキル基、好ましくはC
1−4アルキル基、特にC
1−2アルキル基、通常、メチル基)である。
【0056】
上記式(2)において、nは、1〜10であり、例えば、1〜5、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1である。
【0057】
上記式(2)で表される好ましい保護基は、Z
1及びZ
2が、酸素原子であり、R
11及びR
12が、同一又は異なって、置換基を有してもよい直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、nが1であるジアルキルリン酸エステル基であってもよい。
【0058】
ジアルキルリン酸エステル基は、例えば、ジC
1−10アルキルリン酸エステル基、好ましくはジC
1−6アルキルリン酸エステル基、さらに好ましくはジC
1−4アルキルリン酸エステル基、特にジC
1−2アルキルリン酸エステル基(例えば、ジエチルリン酸エステル基又はジメチルリン酸エステル基、好ましくはジメチルリン酸エステル基など)である。
【0059】
なお、ポリシラン中間体は、種類の異なる複数の保護基を含んでもよい。
【0060】
ポリシラン中間体中のケイ素原子1モルに対する保護基の濃度(モル)は、例えば、0.005〜0.1モル程度であり、好ましくは0.01モル以上(例えば、0.02〜0.08モル程度)、さらに好ましくは0.025モル以上(例えば、0.025〜0.06モル程度)、通常、0.03モル以上(例えば、0.03〜0.04モル程度)である。前記保護基の濃度は、例えば、原子吸光分析などによる保護基由来のリンと、シラン単位由来のケイ素とのモル比(前者/後者)に基づいて算出できる。
【0061】
ポリシラン中間体の平均重合度は、特に限定されず、例えば、2〜500、好ましくは3〜300(例えば、4〜200)、さらに好ましくは5〜150、特に7〜100、通常、8〜50(例えば、9〜25、好ましくは10〜20)程度であってもよい。
【0062】
ポリシラン中間体の重量平均分子量(Mw)は、例えば、200〜50000、好ましくは500〜10000、さらに好ましくは1000〜5000(例えば、1200〜2500)程度である。
【0063】
ポリシラン中間体の分子量分布[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mn]は、例えば、1〜5程度であってもよい。通常、Mw/Mnは、分子量分布が狭く、例えば、1〜2、好ましくは1.1〜1.7、さらに好ましくは1.3〜1.5程度であってもよい。
【0064】
なお、Mw、Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、標準ポリスチレン換算の値であってもよい。
【0065】
本発明のポリシラン中間体は、ネットワーク構造を有するハロシラン重合体の少なくとも一部の末端基が前記式(2)で表される保護基で保護されているため、重合体同士の縮合反応が進行せず、シロキサン結合(−Si−O−Si−)の形成を抑制できる。このため、この保護基を脱保護すると、シラノール基(ヒドロキシル基)濃度が高く、反応性の大きなポリシランを得ることができる。
【0066】
本発明のポリシランは、前記ポリシラン中間体に対応するシラン単位を含んでおり、少なくとも一部の末端基がシラノール基で形成されている。
【0067】
ポリシラン中のケイ素原子1モルに対するシラノール基濃度は、例えば、0.005〜0.1モルであり、好ましくは0.01モル以上(例えば、0.02〜0.08モル)、さらに好ましくは0.025モル以上(例えば、0.025〜0.06モル)、通常、0.03モル以上(例えば、0.03〜0.04モル)である。前記シラノール基濃度は、例えば、
1H−NMRスペクトルに基づいて算出できる。
1H−NMRスペクトルに基づいて算出する場合は、例えば、ポリシランのシラン単位の炭化水素基のプロトン(例えば、R
1に対応するアリール基のプロトン)に帰属するピークの積分値に対する、シラノール基のプロトンに帰属するピークの積分値の割合を算出することによって、シラノール基濃度を算出してもよい。ポリシランにシラン単位(3)を含む場合、
29Si−NMRスペクトルに基づき、各シラン単位のSiの帰属に基づいて、ポリシラン中のシラン単位(4)の割合を算出し、
1H−NMRスペクトルに基づく分析結果とを組み合わせて前記シラノール基濃度を算出できる。
【0068】
ポリシランの平均重合度は、特に限定されず、前記ポリシラン中間体の平均重合度と同様であってもよく、高くてもよい。例えば、2〜5000、好ましくは3〜3000、さらに好ましくは5〜2000、特に7〜1000、通常、8〜500(例えば、9〜100、好ましくは10〜50)程度であってもよい。
【0069】
ポリシランの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、ポリシラン中間体の項に例示の範囲が挙げられる。
【0070】
ポリシランの屈折率(ポリシランで形成した厚み1μmの薄膜の波長589nm(25℃)に対する屈折率)は、1.63以上(例えば、1.635〜1.85)、好ましくは1.64以上、好ましくは1.65以上(例えば、1.66〜1.85)、さらに好ましくは1.67以上(例えば、1.68〜1.85)程度である。この屈折率は、例えば、反射分光膜厚計(大塚電子(株)製)装置を用いて測定できる。
【0071】
本発明のポリシランは、少なくともモノアリールシラン単位(1)で構成されており、シロキサン結合の形成が抑えられているため、ポリシランの屈折率をさらに向上できる。
【0072】
また、本発明のポリシランは、ネットワーク構造を有していても、シロキサン結合が抑制されているためか、溶媒に対する高い溶解性を付与できる。特にアルコール類、アルカリ水溶液などの通常のポリシランを溶解しない(又は溶解困難な)溶媒であっても、溶解可能である。そのため、本発明のポリシランは、幅広い用途において、塗布液(コーティング剤、又は塗布液の構成成分)として好適に利用できる。
【0073】
本発明のポリシランは、シラノール基濃度が高いためか、シラン単位全体に対するモノアリールシラン単位(1)の割合を大きくしても、溶媒に対する溶解性が高い。このため、高い屈折率と溶媒に対する高い溶解性とを両立することができる。
【0074】
本発明のポリシランは、シラノール基濃度が高いため、樹脂と組み合わせて樹脂組成物(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(感光性樹脂)など)として利用できる。前記樹脂組成物において、ポリシランは、樹脂成分として用いてもよく、添加剤(例えば、硬化剤若しくは硬化促進剤、又はシランカップリング剤など)として用いてもよい。特にシラノール基に対する反応性基を有する樹脂(例えば、エポキシ樹脂など)と組み合わせると、架橋性又は硬化性とともに、ポリシランの特性を前記樹脂に効率よく付与できる。このため、本発明のポリシランは、エポキシ樹脂の硬化剤(又は硬化促進剤又は硬化触媒)として好適に利用できる。
【0075】
[ポリシラン中間体及びポリシランの製造方法]
本発明では、非プロトン性溶媒中で、少なくとも金属マグネシウム成分の存在下、ハロシランを重合させ(重合工程)、この重合体の末端基を特定の有機リン化合物で保護させ(保護工程)、ポリシラン中間体を製造する。さらに前記ポリシラン中間体の保護基を脱保護してポリシランを製造できる。本発明の製造方法では、市販品から入手可能なハロシランを重合させ、生成した重合体を有機リン化合物と反応させればよく、原料からポリシラン中間体の製造に至る工程数が短縮されるため、簡便な方法でポリシラン中間体及びポリシランを製造できる。
【0076】
(1)重合工程
(ハロシラン)
前記ハロシランは、少なくとも下記式(1a)で表されるアリールトリハロシラン(アリールトリハロシラン(1a))を含む。
【0078】
(式中、X
1〜X
3は、同一又は異なって、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)を示す。R
1は、前記に同じ。)
【0079】
ハロシランは、他のトリハロシラン、例えば、前記モノ置換シラン単位に対応するトリハロシラン((X)
3−Si−R
a(式中、Xは、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)を示し、R
aは、前記に同じ。))を含んでもよい。
【0080】
前記ハロシランは、さらに他のハロシラン、例えば、前記(3)〜(5)のハロシランに対応する下記式(3a)〜(5a)で表されるハロシラン(テトラハロシラン(3a))、ジハロシラン(4a)、モノハロシラン(5a)から選択された少なくとも1種を含んでもよい。前記他のハロシランは、好ましくはテトラハロシラン(3a)及びジハロシラン(4a)から選択された少なくとも一種、さらに好ましくは少なくともジハロシラン(4a)を含む。
【0082】
(式中、X
4〜X
10は、同一又は異なって、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)を示す。R
2〜R
6は、前記に同じ。)
【0083】
ハロシラン重合体の具体例としては、例えば、前述した本発明のポリシラン中間体のモノアリールシラン単位(1)に対応する単独重合体、モノアリールシラン単位(1)と、他のシラン単位(3)〜(5)の少なくとも1つのシラン単位との組み合わせに対応する共重合体が例示できる。また、ハロシラン全体に対するハロシラン(3a)〜(5a)の各割合は、シラン単位全体に対するシラン単位(3)〜(5)の各割合に対応する。
【0084】
アリールトリハロシラン(1a)と他のハロシランとの使用割合は、例えば、前者/後者(モル比)=30/70〜100/0(例えば、40/60〜99/1)、好ましくは50/50〜98/2(例えば、60/40〜97/3)、さらに好ましくは70/30〜95/5(例えば、75/25〜90/10)程度である。
【0085】
反応液中のハロシラン全体の濃度(基質濃度)は、例えば、0.05〜20mol/L、好ましくは0.1〜15mol/L、さらに好ましくは0.2〜5mol/L程度であってもよい。
【0086】
(金属マグネシウム)
金属マグネシウム成分(マグネシウム成分)は、活性な金属マグネシウム(すなわち、マグネシウムイオンなどではないマグネシウム)の形態でマグネシウムを含む成分であればよく、金属マグネシウム(マグネシウム単体)、マグネシウム合金、これらの混合物などであってもよい。マグネシウム合金の種類は特に制限されず、慣用のマグネシウム合金、例えば、アルミニウム、亜鉛、希土類元素(スカンジウム、イットリウムなど)などの成分を含むマグネシウム合金が例示できる。これらの金属マグネシウム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0087】
マグネシウム成分の形状は、ハロシランの反応を損なわない限り特に限定されないが、粉粒状(粉体、粒状体など)、リボン状体、塊状体、棒状体、板状体(平板状など)などが例示され、特に粉体、粒状体、リボン状体などであるのが好ましい。マグネシウム金属成分(例えば、粉粒状のマグネシウム金属成分)の平均粒径は、例えば、1〜10000μm、好ましくは10〜7000μm、さらに好ましくは15〜5000μm(例えば、20〜3000μm)程度であってもよい。
【0088】
なお、マグネシウム金属成分の保存状況などによっては、金属表面に被膜(酸化被膜など)が形成されることがある。この被膜は反応に悪影響を及ぼすことがあるので、必要に応じて、切削や溶出(塩酸洗浄などの酸洗)などの適当な方法によって除去してもよい。
【0089】
なお、金属マグネシウム成分は、特開2002−226586号公報に記載の方法などにより、活性金属マグネシウム成分として重合に使用してもよい。
【0090】
金属マグネシウム成分の使用量は、ハロシラン全体のハロゲン原子1モルに対して、マグネシウム換算で、例えば、0.3〜30モル、好ましくは0.5〜20モル、さらに好ましくは1〜15モル程度であり、通常1.2〜10モル程度であってもよい。
【0091】
また、金属マグネシウム成分の使用量は、ハロシラン全体の100重量部に対して、1〜500重量部、好ましくは3〜300重量部、さらに好ましくは5〜200重量部、特に10〜100重量部程度であってもよい。
【0092】
なお、金属マグネシウム成分は、ハロシランを還元して、ポリシランを形成させるとともに、マグネシウム自身は酸化されてハロゲン化物を形成する。そして、ハロシランの還元に供されない未反応の金属マグネシウム成分は、反応混合物に含まれる。
【0093】
反応は、少なくとも金属マグネシウム成分の存在下で行えばよいが、ハロシランの重合を促進するため、リチウム化合物及び多価金属ハロゲン化物から選択された少なくとも一種(促進剤又は触媒)の共存下で行ってもよく、リチウム化合物(特にハロゲン化リチウム)及び多価金属ハロゲン化物の共存下で行うのが好ましい。
【0094】
(リチウム化合物)
リチウム化合物としては、ハロゲン化リチウム(塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムなど)、無機酸塩(硝酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、塩酸リチウム、硫酸リチウム、過塩素酸リチウム、リン酸リチウムなど)などが使用できる。これらのリチウム化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいリチウム化合物は、ハロゲン化リチウム(特に塩化リチウム)である。
【0095】
リチウム化合物の割合は、ハロシラン全体の100重量部に対して、例えば、0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは5〜100重量部(例えば、5〜75重量部)程度であり、通常、10〜80重量部程度である。
【0096】
なお、溶媒(反応液)中のリチウム化合物の濃度は、通常、0.05〜5mol/L、好ましくは0.1〜4mol/L、特に0.15〜3mol/L程度であってもよい。
【0097】
(多価金属ハロゲン化物)
多価金属ハロゲン化物としては、例えば、遷移金属(例えば、サマリウムなどの周期表3A族元素、チタンなどの周期表4A族元素、バナジウムなどの周期表5A族元素、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの周期表8族元素、銅などの周期表1B族元素、亜鉛などの周期表2B族元素など)、周期表3B族金属(アルミニウムなど)、周期表4B族金属(スズなど)などの金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物又はヨウ化物など)が挙げられる。多価金属ハロゲン化物を構成する前記金属の価数は、特に制限されないが、好ましくは2〜4価、特に2又は3価である。これらの多価金属ハロゲン化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0098】
多価金属ハロゲン化物としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、コバルト、バナジウム、チタン、パラジウム、サマリウムなどから選択された少なくとも一種の金属の塩化物又は臭化物が好ましい。
【0099】
このような多価金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化物(FeCl
2、FeCl
3などの塩化鉄;AlCl
3、ZnCl
2、SnCl
2、CoCl
2、VCl
2、TiCl
4、PdCl
2、SmCl
2など)、臭化物(FeBr
2、FeBr
3などの臭化鉄など)、ヨウ化物(SmI
2など)などが例示できる。これらの多価金属ハロゲン化物のうち、塩化物(例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)などの塩化鉄、塩化亜鉛など)及び臭化物が好ましい。通常、塩化鉄及び/又は塩化亜鉛、特に塩化亜鉛などが使用される。
【0100】
多価金属ハロゲン化物の割合は、ハロシラン100重量部に対して、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度であってもよい。
【0101】
また、溶媒(反応液)中の多価金属ハロゲン化物の濃度は、通常、0.001〜6mol/L程度であり、好ましくは0.005〜4mol/L、さらに好ましくは0.01〜3mol/L程度であってもよい。
【0102】
(非プロトン性溶媒)
溶媒(反応溶媒)としての非プロトン性溶媒には、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの環状又は鎖状C
4−6エーテル)、カーボネート類(プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)などが含まれる。
【0103】
これらの非プロトン性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、少なくとも極性溶媒[例えば、エーテル類(例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状C
4―6エーテル(特にテトラヒドロフラン)、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ジメトキシエタンなどの鎖状C
4−6エーテルなど)]を使用するのが好ましい。極性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0104】
本発明の製造方法では、例えば、密閉可能な反応容器に、アリールトリハロシラン、任意のその他のハロシラン、並びに前記触媒又は触媒系を反応溶媒とともに収容し、必要により機械的又は磁気的に攪拌しつつ、反応を行ってもよい。出発原料のハロシラン化合物は、アリールトリハロシラン化合物と他のハロシランとを原料として用いる場合、予め、アリールトリハロシラン化合物と他のハロシランとの混合物として用いてもよく、それぞれのハロシラン化合物を別途反応系に添加してもよい。例えば、アリールトリハロシラン化合物と他のハロシランとを併行して反応系に添加してもよく、一方のハロシラン化合物を添加して、ある程度反応を進行させた後、他方のハロシラン化合物を添加してもよい。
【0105】
なお、ハロシランは、水と速やかに反応するため、使用する原料(すなわち、金属マグネシウム成分、リチウム化合物、多価金属ハロゲン化物、非プロトン性溶媒など)は、予め乾燥して使用するのが好ましい。
【0106】
反応温度は、通常、−20℃から使用する溶媒の沸点までの温度範囲内である場合が多く、例えば、0〜150℃、好ましくは5〜100℃、さらに好ましくは10〜80℃程度であってもよい。
【0107】
また、反応時間は、ハロシランの種類、金属ハロゲン化物及びマグネシウム金属成分の量などにより異なるが、通常、5分以上であってもよく、例えば、30分〜100時間、好ましくは1〜80時間、さらに好ましくは2〜60時間程度であってもよい。
【0108】
このような方法では、ハロシラン重合体を高収率で製造できる。また、このような方法では、これらのハロシランを市販品から入手可能であり、密閉可能な反応容器を用いて攪拌操作を行えばよいため、簡便にかつ効率よくハロシランを重合できる。
【0109】
このようにして生成した反応混合物には、生成したハロシラン重合体の他に、未反応の金属マグネシウム成分(又は残存する金属マグネシウム成分)が含まれる場合が多く、このような金属マグネシウム成分を濾過などの工程で分離してから、保護工程を行ってもよい。
【0110】
(2)保護工程
保護工程では、生成したハロシラン重合体と下記式(2a)で表される有機リン化合物とを反応させることにより、ハロシラン重合体の末端基を保護する。
【0112】
(式中、R
13は、置換基を有してもよい炭化水素基を示す。R
11、R
12、Z
1、Z
2及びnは、前記に同じ。)
【0113】
上記式(2a)において、R
13で表される炭化水素及びその置換基は、例えば、前記R
11及びR
12と同様であり、例えば、直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基、好ましくはC
1−6アルキル基、さらに好ましくはC
1−4アルキル基、特にC
1−2アルキル基、通常、メチル基である。
【0114】
上記式(2a)において、nは、例えば、1〜5、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1である。
【0115】
上記式(2a)で表される有機リン化合物は、Z
1及びZ
2が、酸素原子であり、R
11及びR
12が、同一又は異なって、置換基を有してもよい直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を示し、nが1であるリン酸エステル化合物であることが好ましい。
【0116】
リン酸エステル化合物としては、例えば、リン酸トリ直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル、好ましくはリン酸トリ直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキル、さらに好ましくはリン酸トリ直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキル、特にリン酸トリC
1−2アルキル(例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなど)、通常、リン酸トリメチルである。
【0117】
これらの有機リン化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の調製方法により調製してもよい。これらの有機リン化合物を、慣用の調製方法により調製する場合は、例えば、「横山正明、有機合成化学協会誌 第28巻第2号(1970)」第114〜第130頁などを参照できる。
【0118】
有機リン化合物と、式(1a)で表されるハロシランとの使用割合は、前者/後者(モル比)=1/99〜99/1の広い範囲から選択でき、例えば、5/95〜99/1(例えば、10/90〜95/5)、好ましくは12.5/87.5〜90/10(例えば、15/85〜85/15、好ましくは20/80〜80/20)、さらに好ましくは25/75〜75/25(例えば、30/70〜70/30、好ましくは40/60〜65/45)、特に50/50〜60/40程度である。
【0119】
保護工程において使用する溶媒(反応溶媒)、反応温度としては、重合工程の項で例示の非プロトン性溶媒が挙げられる。
【0120】
(3)脱保護及び分離精製工程
脱保護工程では、ポリシラン中間体の保護基を脱保護してポリシランを生成する。本発明では、前記ポリシラン中間体の保護基を脱保護させることにより、反応性に優れ、屈折率、溶媒可溶性(特にアルカリ水溶液に対する可溶性)などが改善したポリシランを製造できる。
【0121】
脱保護工程は、ポリシラン中間体の保護基をシラノール基(ヒドロキシル基)に変換できればよく、慣用の方法、例えば、処理剤(例えば、酸処理剤又は塩基処理剤など)による加水分解などが利用でき、酸処理剤による加水分解を利用することが好ましい。酸処理剤としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)、有機酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸など)が挙げられる。これらの酸処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの酸処理剤の中でも、無機酸(特に塩酸)が好ましい。塩基処理剤としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)が挙げられる。これらの塩基処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0122】
脱保護工程は、通常、水性溶媒中で行われる。脱保護工程において、加水分解効率を高めるために、シラノール基に対して不活性を示す親水性溶媒を添加してもよい。前記親水性有機溶媒としては、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなど)、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテルなど)などが挙げられる。これらの親水性有機溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0123】
保護基の脱保護反応は、加熱下(例えば、30〜100℃)又は室温(例えば、15〜25℃)で行うことができる。
【0124】
生成したポリシランは、反応混合物から慣用の分離精製手段を用いて容易に分離精製できる。分離精製手段としては、例えば、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段やこれらを組み合せた手段が挙げられる。特に疎水性有機溶媒を前記反応混合物に添加することにより、水相と、ポリシランを含む有機相(疎水性有機溶媒相)とに効率よく分液させることが好ましい。脱保護工程によって生成したポリシランは、シラノール基濃度が高いため、例えば、処理剤(例えば、塩酸などの酸処理剤など)などにより、シラノール基同士が縮合し、シロキサン結合が生成する虞がある。そのため、生成したポリシランを水相から、処理剤(例えば、酸処理剤など)を含まない疎水性有機溶媒相へ移動させることで、生成したポリシラン同士のシロキサン結合の生成を抑えることができる。疎水性有機溶媒は、処理剤の添加前、添加後若しくは処理剤の添加とともに添加してもよい。処理剤の添加前、あるいは処理剤の添加とともに疎水性有機溶媒を添加するのが、効率よくシロキサン結合の生成を抑制できるため有利である。
【0125】
疎水性有機溶媒としては、水相に対して分液可能な溶媒であればよく、炭化水素類[例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)など]、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル)、ケトン類(例えば、メチルエチルケトンなどのジアルキルケトンなど)、エステル類(例えば、酢酸エチルなどの酢酸エステルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、炭化水素類(例えば、芳香族炭化水素類など)を用いる場合が多い。なお、反応溶媒が、疎水性有機溶媒である場合には、必ずしも疎水性有機溶媒を添加する必要はない。
【0126】
疎水性有機溶媒の添加量は、特に限定されず、例えば、水1重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
【0127】
本発明の方法により製造されるポリシランは、屈折率を向上できるとともに、アルカリ水溶液に対する可溶性に対する溶解性を改善できる。このため、本発明には、前記式(1a)で表されるトリハロシランを含むハロシランを反応させて生成するハロシラン重合体の少なくとも一部の末端基に前記式(2a)で表される有機リン化合物を付加させて、ハロシラン重合体のアルカリ水溶液に対する可溶性及び/又は屈折率を改善する方法も含まれる。
【実施例】
【0128】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0129】
[分子量]
GPC(東ソー(株)製 HLC−8320GPC)を用い、以下の条件で測定した。
【0130】
流量:1mL/min、注入量:100μL、温度:40℃、溶媒:1級テトラヒドロフラン、検出器:RI(示差屈折)。
【0131】
(実施例1)
三方コックを装着した内容積300mlの三ツ口フラスコに粒状のマグネシウム4.33g(0.178mol)と塩化リチウム3.14g、塩化亜鉛2.02gとを仕込み、アルゴンガスを反応器内に導入し、脱水グレードのテトラヒドロフラン100mlを加え、室温で約30分間攪拌した。そして、反応器に、フェニルトリクロロシラン22g(0.104mol)を、滴下漏斗を用いて2時間以上かけて滴下し、約20時間攪拌して反応させた。反応終了後、リン酸トリメチル1g(0.007mol)を投入し、約20時間撹拌し、ポリシラン中間体を得た。さらに、トルエン160mL、35重量%塩酸21.95gを投入して、25℃にて0.5時間以上攪拌し、下相を廃棄して塩化マグネシウム及び水酸化マグネシウムを除去した。さらに、純水50mlによる洗浄を10回繰り返した後に、無水硫酸マグネシウム40gを加えて、1時間以上撹拌した後に、無水硫酸マグネシウムを敷き詰めたろ紙を通して乾燥させた後、65℃、1.3kPa(10torr)にて5時間乾燥させた。その結果、10.94gの淡黄色粉末のポリシランを得た。得られたポリシランを
31P−NMR、IRにて測定したところ、リン酸トリメチル由来のピークが消失しており、保護基が脱離されていることを確認した。ポリシランの分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は、1300であり、分子量分布Mw/Mnは、1.3であった。また、ポリシラン末端基に形成されたシラノール基濃度を
1H−NMRを用いて算出したところ、ポリシラン中のケイ素原子1モルに対し、0.0385モルであった。
【0132】
(実施例2)
リン酸トリメチル1g(0.007mol)を2.5g(0.018mol)に変更する以外は実施例1と同様にして反応を行い、9.9gの淡黄色粉末のポリシランを得た。得られたポリシランを
31P−NMR、IRにて測定したところ、リン酸トリメチル由来のピークが消失しており、保護基が脱離されていることを確認した。ポリシランの分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は、1300であり、分子量分布Mw/Mnは、1.3であった。また、ポリシラン末端基に形成されたシラノール基濃度を
1H−NMRを用いて算出したところ、ポリシラン中のケイ素原子1モルに対し、0.0262モルであった。
【0133】
(実施例3)
リン酸トリメチル1gを5g(0.035mol)に変更する以外は実施例1と同様にして反応を行い、12.1gの淡黄色粉末のポリシランを得た。得られたポリシランを
31P−NMR、IRにて測定したところ、リン酸メチル由来のピークが消失しており、保護基が脱離されていることを確認した。ポリシランの分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は、1800であり、分子量分布Mw/Mnは、1.5であった。また、ポリシラン末端基に形成されたシラノール基濃度を
1H−NMRを用いて算出したところ、ポリシラン中のケイ素原子1モルに対し、0.0074モルであった。
【0134】
(実施例4)
リン酸トリメチル1gを10g(0.071mol)に変更する以外は実施例1と同様にして反応を行い、10.77gの淡黄色粉末のポリシランを得た。得られたポリシランを
31P−NMR、IRにて測定したところ、リン酸メチル由来のピークが消失しており、保護基が脱離されていることを確認した。ポリシランの分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は、1300であり、分子量分布Mw/Mnは、1.3であった。また、ポリシラン末端基に形成されたシラノール基濃度を
1H−NMRを用いて算出したところ、ポリシラン中のケイ素原子1モルに対し、0.0312モルであった。
【0135】
(比較例1)
リン酸トリメチル1gを水10g(0.556mol)に変更する以外は実施例1と同様にして反応を行い、10.06gの淡黄色粉末のポリシランを得た。得られたポリシランの分子量をGPCにて測定した結果、重量平均分子量(Mw)は、1300であり、分子量分布Mw/Mnは、1.3であった。また、ポリシラン末端基に形成されたシラノール基濃度を
1H−NMRを用いて算出したところ、ポリシラン中のケイ素原子1モルに対し、0.0035モルであった。
【0136】
[物性評価]
(1)溶解性
実施例3及び比較例1で得られたポリシランを、それぞれ、20%水酸化カリウム水溶液(20重量%水溶液)に、5重量%の割合で混合することによりアルカリ水溶液に対するポリシランの溶解性を調べたところ、比較例1では、全く溶解せず、不溶物が見られたが、実施例3では、十分に溶解しており、比較例1と比べても溶解性が向上していた。
【0137】
(2)薄膜屈折率
実施例1〜4及び比較例1で得られたポリシランを、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)と混合し、10重量%混合液を調製した。この混合液を用いてスピンコート法により基材上に乾燥後の厚みが1μmとなるように塗膜を形成し、得られた薄膜につき、波長589.4nmの光に対する屈折率を、分析装置反射分光膜厚計(大塚電子(株)製 FE−3000)を用いて測定した。
【0138】
結果を表1に示す。
【0139】
【表1】