特許第6617070号(P6617070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617070
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】スクロール型液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/02 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
   F04C2/02
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-84211(P2016-84211)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-193998(P2017-193998A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 隆志
(72)【発明者】
【氏名】松田 三起夫
(72)【発明者】
【氏名】大見 康光
(72)【発明者】
【氏名】義則 毅
(72)【発明者】
【氏名】三浦 功嗣
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−316636(JP,A)
【文献】 特開2001−003882(JP,A)
【文献】 特開昭62−126204(JP,A)
【文献】 特開昭54−007604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/02
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部から出力された回転駆動力によって回転する回転軸(5)と、
前記回転軸から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状の旋回側基板部(41)および前記旋回側基板部の一方の面から前記回転軸の軸方向へ突出する渦巻き状の旋回側歯部(42)を有する旋回スクロール(4)と、
平板状の固定側基板部(31)および前記固定側基板部から前記回転軸の軸方向へ突出して前記旋回側歯部と噛み合う渦巻き状の固定側歯部(32)を有する固定スクロール(3)と、
前記旋回スクロールを収容するハウジング(21)と
前記回転軸が回転する際に作用する遠心力の不均衡を抑制するバランサ(7)と、を備え、
前記旋回スクロールおよび前記固定スクロールを噛み合わせることによって形成される作動室(V)の容積を変化させて、液体を圧送するスクロール型液ポンプであって、
前記旋回側基板部の他方の面は、前記ハウジングに面接触しており、
前記旋回側基板部の他方の面および前記ハウジングの前記旋回側基板部に接触する面の少なくとも一方には、前記液体を流通させる液体導入溝(411〜415)が形成されており、
前記ハウジング内に形成されて前記バランサが収容される内側空間(21a)は、前記液体導入溝に連通しており、
前記バランサは、前記回転軸とともに回転した際に、前記内側空間内の液体を外周側に押し出す羽根形状に形成されているスクロール型液ポンプ。
【請求項2】
前記液体導入溝(411〜414)は、複数形成されており、
隣り合って配置された前記液体導入溝(411〜414)同士の距離が、前記旋回スクロールの公転直径以下になっている請求項1に記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項3】
前記旋回側基板部の他方の面は、円環状に形成されており、
前記液体導入溝(411、412、414)は、前記旋回側基板部の他方の面に、複数形成されており、
複数の前記液体導入溝(411、412、414)のうち少なくとも一部は、前記旋回側基板部の他方の面の内周側と外周側とを連通させる形状に形成されている請求項1または2に記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項4】
前記液体導入溝(415)は、前記回転軸の軸方向から見たときに、渦巻き状に形成されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項5】
前記ハウジングには、前記液体を吸入する吸入口(3a)が形成されており、
前記吸入口から前記作動室へ至る液体流入経路は、前記吸入口から吸入された前記液体を、前記内側空間(21a)を介して前記作動室へ導くように形成されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項6】
前記旋回側歯部および前記固定側歯部は、前記回転軸の軸方向から見たときに、中心軸周りに2巻き以上形成されており、
前記作動室は、複数形成されており、
前記固定側基板部には、前記複数の作動室から前記液体を流出させる複数の吐出穴(31a〜31m)が形成されており、
前記複数の吐出穴は、前記旋回スクロールが公転運動した際に、全ての前記作動室がいずれかの前記吐出穴に連通するように配置されており、
さらに、前記複数の吐出穴を開閉する複数の吐出弁(10e〜10m)を備え、
前記複数の吐出弁は、前記作動室内の液圧が予め定めた基準圧力以上となった際に前記吐出穴を開くものであり、
前記複数の吐出弁として、少なくとも前記旋回側歯部および前記固定側歯部のうち外周側の1巻き分の部位同士によって形成される外周側作動室に連通する前記吐出穴(31e〜31m)を開閉する外周側吐出弁(10e〜10m)が設けられている請求項1ないしのいずれか1つに記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項7】
駆動部から出力された回転駆動力によって回転する回転軸(5)と、
前記回転軸から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状の旋回側基板部(41)および前記旋回側基板部の一方の面から前記回転軸の軸方向へ突出する渦巻き状の旋回側歯部(42)を有する旋回スクロール(4)と、
平板状の固定側基板部(31)および前記固定側基板部から前記回転軸の軸方向へ突出して前記旋回側歯部と噛み合う渦巻き状の固定側歯部(32)を有する固定スクロール(3)と、
前記旋回スクロールを収容するハウジング(21)と、を備え、
前記旋回側歯部および前記固定側歯部は、前記回転軸の軸方向から見たときに、中心軸周りに2巻き以上形成されており、
前記旋回スクロールおよび前記固定スクロールを噛み合わせることによって形成される複数の作動室(V)を容積変化させて、液体を圧送するスクロール型液ポンプであって、
前記固定側基板部には、前記複数の作動室から液体を流出させる複数の吐出穴(31a〜31m)が形成されており、
前記複数の吐出穴は、前記旋回スクロールが公転運動した際に、全ての前記作動室がいずれかの前記吐出穴に連通するように配置されており、
さらに、前記複数の吐出穴を開閉する複数の吐出弁(10e〜10m)を備え、
前記複数の吐出弁は、前記作動室内の液圧が予め定めた基準圧力以上となった際に前記吐出穴を開くものであり、
前記複数の吐出弁として、少なくとも前記旋回側歯部および前記固定側歯部のうち外周側の1巻き分の部位同士によって形成される外周側作動室に連通する前記吐出穴(31e〜31m)を開閉する外周側吐出弁(10e〜10m)が設けられているスクロール型液ポンプ。
【請求項8】
前記複数の外周側吐出弁は、共通する板状部材(10)に形成されたリード弁である請求項またはに記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項9】
前記複数の吐出穴のうち少なくとも一部は、前記旋回側歯部の先端部によって閉塞可能に形成されている請求項ないしのいずれか1つに記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項10】
前記回転軸の軸方向から見たときに、前記固定側歯部の外周側が描く曲線を外周側ラップ(OL)と定義し、前記固定側歯部の内周側が描く曲線を内周側ラップ(IL)と定義したときに、
少なくとも一部の前記吐出穴(31b〜31g)は、外周側ラップに沿って配置されており、
別の少なくとも一部の前記吐出穴(31h〜31m)は、内周側ラップに沿って配置されている請求項ないしのいずれか1つに記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項11】
前記吐出穴は、円形状に形成されており、
少なくとも一部の前記吐出穴(31b〜31g)の中心点は、前記外周側ラップ上に配置されており、
別の少なくとも一部の前記吐出穴(31h〜31m)の中心点は、前記内周側ラップ上に配置されている請求項10に記載のスクロール型液ポンプ。
【請求項12】
前記吐出穴は、長円形状あるいは楕円形状に形成されており、
少なくとも一部の前記吐出穴(31b〜31g)の長軸は、前記外周側ラップの接線上に配置されており、
別の少なくとも一部の前記吐出穴(31h〜31m)の長軸は、前記内周側ラップの接線上に配置されている請求項10に記載のスクロール型液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を圧送するスクロール型液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングに固定された固定スクロール、および固定スクロールに対して公転運動する旋回スクロールを備えるスクロール型圧縮機が知られている。
【0003】
この種のスクロール型圧縮機では、固定スクロールの渦巻き状の歯部と旋回スクロールの渦巻き状の歯部とを噛み合わせた状態で、旋回スクロールを固定スクロールに対して公転運動させる。これにより、双方の歯部の間に形成される作動室の容積を縮小させて、作動室に吸入された圧縮対象流体(気体)を圧縮している。さらに、スクロール型圧縮機については、その作動効率を向上させるための種々の手段が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、旋回スクロールの基板部の軸方向両端側に渦巻き状の歯部を形成し、旋回スクロールの軸方向両端側に固定スクロールを配置した2段昇圧式のスクロール型圧縮機が開示されている。
【0005】
この特許文献1の2段昇圧式のスクロール型圧縮機では、旋回スクロールの基板部の軸方向両端側に作動室を形成している。これにより、作動室内の気体の圧力が上昇しても、旋回スクロールが軸方向一方側へ押し付けられてしまうことを抑制している。そして、旋回スクロールが公転運動する際の摺動抵抗を低減させて、スクロール型圧縮機の作動効率を向上させようとしている。
【0006】
さらに、特許文献1のスクロール型圧縮機では、回転軸方向から見たときに、それぞれの歯部の巻き数を2巻き(720°)以上としている。このように、歯部の巻き数を2巻き以上とすることで、各作動室のシール性を向上させることができ、より一層、スクロール型圧縮機の作動効率の向上を狙うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−170592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如く、スクロール型圧縮機には、作動効率向上のための種々の手段が提案されている。そこで、これらの手段を同等の構成で液体を圧送するスクロール型液ポンプに適用し、スクロール型液ポンプの作動効率を向上させることが検討されている。
【0009】
しかし、特許文献1のスクロール型圧縮機のように、旋回スクロールの基板部の軸方向両端側に渦巻き状の歯部を形成すると、旋回スクロールを容易に製造することができなくなってしまう。さらに、旋回スクロールの基板部の軸方向両端側に作動室を形成すると、スクロール型液ポンプの部品点数が増加してしまうので、スクロール型液ポンプが複雑な構成になってしまう。
【0010】
また、スクロール型液ポンプでは、巻き数が2巻き以上の歯部を採用すると、作動室の容積変化量が大きくなり過ぎて過圧縮(いわゆる、液圧縮)の問題が生じる。その結果、スクロール型液ポンプの破損を招いてしまうおそれもある。
【0011】
上記点に鑑み、本発明では、簡素な構成で、スクロール型液ポンプの作動効率を向上させることを第1の目的とする。
【0012】
また、本発明では、巻き数が2巻き以上の歯部を採用するスクロール型液ポンプにおいて、作動効率の低下を招くことなく液体の過圧縮を抑制することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたもので、請求項1に記載の発明は、駆動部から出力された回転駆動力によって回転する回転軸(5)と、回転軸から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状の旋回側基板部(41)および旋回側基板部の一方の面から回転軸の軸方向へ突出する渦巻き状の旋回側歯部(42)を有する旋回スクロール(4)と、平板状の固定側基板部(31)および固定側基板部から回転軸の軸方向へ突出して旋回側歯部と噛み合う渦巻き状の固定側歯部(32)を有する固定スクロール(3)と、旋回スクロールを収容するハウジング(21)と、回転軸が回転する際に作用する遠心力の不均衡を抑制するバランサ(7)と、を備え、旋回スクロールおよび固定スクロールを噛み合わせることによって形成される作動室(V)の容積を変化させて、液体を圧送するスクロール型液ポンプであって、
旋回側基板部の他方の面は、ハウジングに面接触しており、旋回側基板部の他方の面およびハウジングの旋回側基板部に接触する面の少なくとも一方には、液体を流通させる液体導入溝(411〜415)が形成されており、ハウジング内に形成されてバランサが収容される内側空間(21a)は、液体導入溝に連通しており、バランサは、回転軸とともに回転した際に、内側空間内の液体を外周側に押し出す羽根形状に形成されているスクロール型液ポンプである。
【0014】
これによれば、液体導入溝(411〜415)が形成されているので、旋回側基板部(41)の摺動面とハウジング(21)の摺動面との間に液体を導入することができ、旋回側基板部(41)の摺動面とハウジング(21)の摺動面との潤滑性を向上させることができる。従って、旋回側基板部(41)とハウジング(21)との摺動抵抗を低減することができる。
【0015】
また、液体導入溝(411〜415)は、旋回側基板部(41)の他方の面あるいはハウジング(21)の旋回側基板部(41)に接触する面の少なくとも一方に形成すればよいので、容易に形成することができる。さらに、作動室(V)は、旋回側基板部(41)の軸方向一方側に形成されることになるので、スクロール型液ポンプ全体としての部品点数の増加を招いてしまうこともない。
【0016】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、簡素な構成で、旋回側基板部(41)とハウジング(21)との摺動抵抗を低減させることができ、スクロール型液ポンプの作動効率を向上させることができる。
【0017】
また、請求項9に記載の発明は、駆動部から出力された回転駆動力によって回転する回転軸(5)と、回転軸から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状の旋回側基板部(41)および旋回側基板部の一方の面から回転軸の軸方向へ突出する渦巻き状の旋回側歯部(42)を有する旋回スクロール(4)と、平板状の固定側基板部(31)および固定側基板部から回転軸の軸方向へ突出して旋回側歯部と噛み合う渦巻き状の固定側歯部(32)を有する固定スクロール(3)と、旋回スクロールを収容するハウジング(21)と、を備え、旋回側歯部および固定側歯部は、回転軸の軸方向から見たときに、中心軸周りに2巻き以上形成されており、旋回スクロールおよび固定スクロールを噛み合わせることによって形成される複数の作動室(V)を容積変化させて、液体を圧送するスクロール型液ポンプであって、
固定側基板部には、複数の作動室から液体を流出させる複数の吐出穴(31a〜31m)が形成されており、複数の吐出穴は、旋回スクロールが公転運動した際に、全ての作動室がいずれかの吐出穴に連通するように配置されており、
さらに、複数の吐出穴を開閉する複数の吐出弁(10e〜10m)を備え、複数の吐出弁は、作動室内の液圧が予め定めた基準圧力以上となった際に吐出穴を開くものであり、複数の吐出弁として、少なくとも旋回側歯部および固定側歯部のうち外周側の1巻き分の部位同士によって形成される外周側作動室に連通する吐出穴(31e〜31m)を開閉する外周側吐出弁(10e〜10m)が設けられているスクロール型液ポンプである。
【0018】
これによれば、旋回スクロール(4)が公転運動した際に、全ての作動室(V)がいずれかの吐出穴(31a〜31m)に連通するように、複数の吐出穴(31a〜31m)が配置されているので、旋回スクロール(4)がいずれの位置へ変位したとしても、作動室(V)内の液体をいずれかの吐出穴(31a〜31m)から流出させることができる。従って、液体の過圧縮を抑制することができる。
【0019】
さらに、吐出弁(10e〜10m)として、複数の外周側作動室に連通する吐出穴(31e〜31m)を開閉するものが設けられている。従って、比較的内部の圧力が低くなる外周側作動室に吐出穴(31e〜31m)を介して圧送された液体が逆流してしまうことを抑制することができる。これにより、スクロール型液ポンプの作動効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0020】
すなわち、請求項9に記載の発明によれば、巻き数が2巻き以上の歯部を採用するスクロール型液ポンプにおいて、作動効率の低下を招くことなく過圧縮を抑制することができる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の液ポンプの軸方向断面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3図1のIII−III断面における旋回スクロールの正面図である。
図4図1のIV−IV断面図である。
図5図1のV−V断面図である。
図6】第1実施形態の液ポンプの作動を説明するための説明図である。
図7】第1実施形態の液ポンプにおける回転角と作動室容積の関係を示すグラフである。
図8】第1実施形態の液ポンプにおける回転角と吐出穴の合計開口面積の関係を示すグラフである。
図9】第2実施形態の旋回スクロールの正面図である。
図10】第3実施形態の旋回スクロールの正面図である。
図11】第4実施形態の旋回スクロールの正面図である。
図12】第5実施形態の旋回スクロールの正面図である。
図13】第6実施形態の旋回スクロールの正面図である。
図14】第7実施形態の液ポンプの軸方向断面図である。
図15図14のXV−XV断面におけるバランサの正面図である。
図16図15のXVI−XVI断面図である。
図17】第8実施形態の液ポンプの軸方向断面図である。
図18】第9実施形態の液ポンプの軸方向断面図である。
図19】第10実施形態の液ポンプの軸方向垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1図8を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のスクロール型液ポンプ1(以下、単に液ポンプ1と記載する。)は、車両用ブレーキ装置に適用されている。液ポンプ1は、車両用ブレーキ装置において、ブレーキフルード(液体)を圧送して、車輪のホイールに作用させるブレーキフルードの液圧を調整する機能を果たす。
【0024】
液ポンプ1は、図1に示すように、フロントハウジング21、リアハウジング22、固定スクロール3、旋回スクロール4、およびシャフト5等を備えている。フロントハウジング21およびリアハウジング22は、固定スクロール3とともに、液ポンプ1の外殻を形成している。
【0025】
フロントハウジング21およびリアハウジング22は、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金)の有底中空部材にて形成されている。フロントハウジング21およびリアハウジング22は、固定スクロール3に固定されることによって、内部に空間を区画形成している。より具体的には、フロントハウジング21の内部には内側空間21aが形成され、リアハウジング22の内部には吐出空間22aが形成される。
【0026】
固定スクロール3は、旋回スクロール4とともに、ブレーキフルードを圧送するための作動室Vを形成するものである。固定スクロール3は、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金)の柱状部材にて形成されている。
【0027】
フロントハウジング21、固定スクロール3、およびリアハウジング22は、ボルト締めによって、互いに固定されている。より具体的には、固定スクロール3は、フロントハウジング21とリアハウジング22との間に固定されている。換言すると、固定スクロール3の一端側にリアハウジング22が固定され、他端側にフロントハウジング21が固定されている。
【0028】
フロントハウジング21の内部に形成される内側空間21aには、主軸受61、シャフト5、旋回スクロール4等が収容されている。
【0029】
主軸受61は、シャフト5を回転可能の支持する転がり軸受である。シャフト5は、図示しない電動モータから出力される回転駆動力によって中心軸α周りに回転する回転軸である。従って、本実施形態の電動モータは、シャフト5の駆動部である。シャフト5は、金属製(本実施形態では、鉄あるいはステンレス)の円柱状部材で形成されている。
【0030】
シャフト5の一端側(固定スクロール側)には、中心軸αに対して中心軸βが偏心した偏心部5aが形成されている。偏心部5aは、旋回スクロール4に連結されて、旋回スクロールに対して回転駆動力を伝達する部位である。
【0031】
シャフト5の主軸受61に支持された部位と偏心部5aとの間には、バランサ7が取り付けられている。バランサ7は、シャフト5に固定されており、シャフト5が回転した際に作用する遠心力の不均衡を抑制する錘である。
【0032】
一方、シャフト5の他端部(固定スクロール3の反対側の端部)は、フロントハウジング21に形成された軸穴21bから、フロントハウジング21の外部に突出している。シャフト5の他端部には、上述の電動モータが連結される。
【0033】
シャフト5とフロントハウジング21の軸穴21bとの隙間には、軸封装置8が配置されている。これにより、シャフト5と軸穴21bとの隙間から内側空間21a内のブレーキフルードが外部に漏れ出てしまうことが抑制されている。
【0034】
旋回スクロール4は、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金)の円板状部材にて形成されている。旋回スクロール4は、平板状の旋回側基板部41、および旋回側基板部41の一方の面(固定スクロール3側の面)から固定スクロール3側へ向かってシャフト5の軸方向へ突出する渦巻き状の旋回側歯部42を有している。旋回側基板部41の板面は、シャフト5の軸方向に垂直に配置されている。
【0035】
さらに、本実施形態の旋回側歯部42は、図2に示すように、巻き数が2巻きとなっている。ここで、スクロール型液ポンプ1における「巻き数」とは、回転軸方向から見たときに、歯部のうち作動室を形成して液体の圧送に寄与する部分の範囲を示しており、巻き数が2巻きとは、歯部が中心軸周りに二周(720°)分形成されていることを意味している。
【0036】
また、旋回側基板部41の他方の面(シャフト5側の面)の中心部には、一方の面に貫通しない凹み穴41aが形成されている。凹み穴41aには、主軸受61と同様の構成の偏心部軸受62が嵌め込まれている。偏心部軸受62は、シャフト5の偏心部5aを回転可能に支持している。このため、シャフト5が回転すると、偏心部5aを介して、回転駆動力が旋回スクロール4に伝達される。
【0037】
固定スクロール3は、平板状の固定側基板部31、および固定側基板部31からシャフト5の軸方向へ突出して旋回側歯部42と噛み合う渦巻き状の固定側歯部32を有している。さらに、図2に示すように、固定側歯部32の巻き数も、旋回側歯部42と同様に、2巻きとなっている。旋回側基板部41の板面は、シャフト5の軸方向に垂直に配置されている。
【0038】
固定スクロール3および旋回スクロール4は、基板部31、41の板面同士が、互いに対向するように配置され、さらに、一方のスクロールの歯部の先端部が他方のスクロールの基板部に当接するように配置されている。これにより、それぞれの歯部32、42同士が複数箇所で接触し、それぞれの歯部32、42同士の間に、シャフト5の中心軸の軸方向から見たときに三日月形状に形成される作動室Vが複数個形成される。
【0039】
なお、図1図2等では、図示の明確化のため、複数個の作動室Vのうち最外周側に配置された作動室Vの一つにのみ符号を付しており、他の圧縮室については符号を省略している。
【0040】
さらに、図1に示すように、旋回側基板部41の他方の面(シャフト5側の面)は、フロントハウジング21に形成された支持用壁面21cに面接触している。この支持用壁面21cは、作動室V内の液圧が上昇した際に、旋回スクロール4が固定スクロール3から離れてしまうことを抑制するために設けられている。
【0041】
旋回側基板部41の他方の面と支持用壁面21cとの間には、旋回スクロール4が偏心部5a周りに自転してしまうことを防止するピン−ホール式の自転防止機構9が配置されている。なお、自転防止機構9は、ピン−ホール式のものに限定されず、他の形式(例えば、オルダムリング式)のものであってもよい。
【0042】
このため、シャフト5が回転した際に、旋回スクロール4は、偏心部5a周りに自転することなく、シャフト5の中心軸αを公転中心として公転運動する。そして、この公転運動により、作動室Vは、シャフト5の中心軸α周りに、外周側から中心側へ容積を縮小させながら変位する。
【0043】
また、本実施形態の旋回側基板部41の他方の面には、図3に示すように、ブレーキフルードを流通させる複数の液体導入溝411が形成されている。この複数の液体導入溝411は、旋回側基板部41の中心側から外周側へ放射状に形成されている。
【0044】
より詳細には、旋回側基板部41の他方の面には、凹み穴41aが形成されている。このため、旋回側基板部41の他方の面は円環状に形成されている。そして、それぞれの液体導入溝411は、旋回側基板部41の他方の面の内周側と外周側とを連通させるように形成されている。このため、液体導入溝411は、内側空間21aに連通している。
【0045】
さらに、複数の液体導入溝411のうち、隣り合って配置された液体導入溝411同士の距離は、旋回スクロール4の公転直径以下となっている。
【0046】
ここで、隣り合って配置された液体導入溝411同士の距離とは、所定の液体導入溝411の任意の箇所から隣り合って配置された液体導入溝411までの最短距離を意味する。また、旋回スクロール4の公転直径とは、シャフト5の中心軸αと偏心部5aの中心軸βとの距離(すなわち、公転半径)の2倍である。
【0047】
固定スクロール3の外周側面には、外周側に変位した作動室Vに連通して、ブレーキフルードを作動室V内へ流入させる吸入口3aが形成されている。また、固定スクロール3の固定側基板部31には、図2図4図5等に示すように、作動室Vから圧送されたブレーキフルードをリアハウジング22内の吐出空間22aへ導く複数(本実施形態では、13個)の吐出穴31a〜31mが形成されている。
【0048】
なお、これらの図面では、図示の明確化のため、31Lおよび10L等については、添え字を大文字のアルファベットで示している。
【0049】
複数の吐出穴31a〜31mは、固定側基板部31の表裏を貫通するように形成されている。複数の吐出穴31a〜31mとしては、固定側基板部31の中心部に形成された主吐出穴31aと、固定側歯部32に沿って形成された副吐出穴31b〜31mが設けられている。主吐出穴31aの開口面積は、他の副吐出穴31b〜31mの開口面積よりも大きい。
【0050】
これらの複数の吐出穴31a〜31mは、旋回スクロール4が公転運動した際に、全ての作動室Vがいずれかの吐出穴31a〜31mに連通するように配置されている。このような配置を実現するために、本実施形態では、副吐出穴31b〜31mを、以下のように配置している。
【0051】
すなわち、図4に示すように、回転軸の軸方向から見たときに、固定側歯部32の外周側が描く曲線(図4の破線)を外周側ラップOLと定義する。さらに、回転軸の軸方向から見たときに、固定側歯部32の内周側が描く曲線(図4の一点鎖線)を内周側ラップILと定義する。
【0052】
そして、副吐出穴31b〜31gを回転中心側から順に外周側ラップOLに沿って配置している。また、副吐出穴31h〜31mを回転中心側から順に内周側ラップILに沿って配置している。さらに、副吐出穴31b〜31mは、円形状に形成されており、副吐出穴31b〜31gの中心点は、外周側ラップOL上に配置されている。また、副吐出穴31h〜31mの中心点は、内周側ラップIL上に配置されている。
【0053】
これに加えて、副吐出穴31b〜31mの半径は、旋回スクロール4の旋回側歯部42の径方向厚み寸法より小さく形成されている。従って、副吐出穴31b〜31mは、固定スクロール3の固定側歯部32の根本部および旋回スクロール4の旋回側歯部42の先端部によって閉塞することができる。
【0054】
また、図5に示すように、旋回側歯部42および固定側歯部32のうち外周側の1巻き分の部位同士によって形成される作動室Vを外周側作動室と定義したときに、この外周側作動室に連通する副吐出穴31e、31f、31g、31k、31L、31mには、それぞれの吐出穴を開閉する複数の外周側吐出弁10e、10f、10g、10k、10L、10mが配置されている。
【0055】
複数の外周側吐出弁10e〜10mは、外周側作動室内のブレーキフルードの圧力(液圧)が予め定めた基準圧力以上となった際に、対応する副吐出穴31e〜31mを開くものである。複数の外周側吐出弁10e〜10mは、いずれも共通する一枚の金属製(本実施形態では、ステンレス製)の板状部材10にプレス加工を施すことによって形成されたリード弁である。
【0056】
また、図1に示すように、リアハウジング22には、各作動室Vから吐出空間22aへ圧送されたブレーキフルードを、吐出空間22aから外部へ流出させる吐出穴22bが設けられている。
【0057】
次に、図6図8を用いて、本実施形態の液ポンプ1の作動について説明する。図6では、液ポンプ1の作動状態を説明するために、旋回スクロール4の回転角θを変化させた際の作動室Vの変位および容積変化を連続的に示している。また、図6の各回転角θにおける断面図は、図2と同等の断面図である。
【0058】
さらに、図6では、最大容積となる作動室Vが形成される回転角θを0°としている。そして、回転角θ=0°となっている際に、最大容積となる作動室の一方にVという符号を付している。そして、回転角θが90°〜270°では、θ=0°における作動室Vと同一の作動室にVという符号を付し、回転角θが360°〜630°では、θ=0°における作動室Vと同一の作動室に(V)というカッコ付きの符号を付している。
【0059】
本実施形態の液ポンプ1では、電動モータから回転駆動力が伝達されてシャフト5が回転すると、旋回スクロール4がシャフト5の中心軸α周りに公転運動する。そして、シャフト5の回転に伴って、固定スクロール3に対する旋回スクロール4の回転角θが増加すると、図6に示すように、作動室Vが外周側から中心側へ、容積を縮小させながら移動していく。この際、作動室Vの容積は、図7に示すように縮小する。
【0060】
そして、図6に示すように、作動室Vの容積が変化することによって、最外周側の吸入口3aに連通する作動室Vには、吸入口3aを介してブレーキフルードが流入する。ブレーキフルードが流入した作動室Vは、シャフト5の回転に伴って、その容積を縮小させる。この容積縮小によって作動室V内のブレーキフルードは、作動室Vに連通する吐出穴31a〜31mから吐出空間22aへ圧送され、吐出穴22bから吐出される。
【0061】
この際、本実施形態では、作動室Vの変位に伴って、作動室Vに連通する副吐出穴31b〜31mの合計開口面積が図8に示すように変化する。すなわち、合計開口面積が、作動室Vからブレーキフルードを流出させる際に圧力損失の増大を招くことのないように決定された目標開口面積At以上となるように変化する。
【0062】
ここで、図6からも明らかなように、回転角θが450°程度に到達すると、作動室Vは開口面積の大きい主吐出穴31aに連通する。このため、回転角θが450°以上では、副吐出穴31b〜31mの合計開口面積が目標開口面積At以下になってしまっても、作動室Vからブレーキフルードを流出させる際の圧力損失の増大を招いてしまうことはない。
【0063】
以上の如く、本実施形態の液ポンプ1によれば、車両用ブレーキ装置において、ブレーキフルードを圧送してすることができる。さらに、本実施形態の液ポンプ1では、固定側歯部32および旋回側歯部42の巻き数を2巻きとしているので、作動室Vのシール性を向上させて、液ポンプ1の作動効率を向上させることができる。
【0064】
さらに、本実施形態の液ポンプ1では、液体導入溝411が形成されているので、旋回側基板部41の摺動面とフロントハウジング21の摺動面との間にブレーキフルード(液体)を導入することができ、旋回側基板部41の摺動面とフロントハウジング21との摺動面との潤滑性を向上させることができる。従って、旋回側基板部41とフロントハウジング21との摺動抵抗を低減することができる。
【0065】
これに加えて、液体導入溝411は、旋回側基板部41の他方の面、すなわち平面上に形成されているので、容易に形成することができる。さらに、作動室Vは、旋回側基板部41の一方の面側に形成されているので、液ポンプ1全体として部品点数の増加を招いてしまうこともない。
【0066】
すなわち、本実施形態の液ポンプ1によれば、簡素な構成で、旋回側基板部41とフロントハウジング21との摺動抵抗を低減することができ、作動効率を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態の液ポンプ1では、液体導入溝411が複数形成されており、隣り合って配置された液体導入溝411同士の距離が、旋回スクロール4の公転直径以下になっている。これによれば、旋回側基板部41とフロントハウジング21との摺動面の全域にブレーキフルードを行き届けることができる。従って、上述した摺動抵抗低減効果を、効果的に得ることができる。
【0068】
また、本実施形態の液ポンプ1では、旋回側基板部41の他方の面が、円環状に形成されており、液体導入溝411が、旋回側基板部41の内周側と外周側とを連通させている。これによれば、液体導入溝411を内側空間21aに連通させることができ、液体導入溝411へブレーキフルードを流入させやすくなる。従って、上述した摺動抵抗低減効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0069】
また、本実施形態の液ポンプ1では、内側空間21aにシャフト5とともに回転するバランサ7を配置している。これによれば、バランサ7が内側空間21a内のブレーキフルードを撹拌して、ブレーキフルードを液体導入溝411へ流入させやすくなる。従って、上述した摺動抵抗低減効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の液ポンプ1では、旋回スクロール4が公転運動した際に、全ての作動室Vがいずれかの吐出穴31a〜30mに連通するように、複数の吐出穴31a〜30mが配置されているので、旋回スクロール4がいずれの位置に変位しても、作動室V内のブレーキフルードをいずれかの吐出穴31a〜30mから流出させることができる。従って、ブレーキフルードの過圧縮を抑制することができる。
【0071】
さらに、複数の外周側作動室に連通する副吐出穴31e〜31mを開閉する複数の外周側吐出弁10e〜10mが設けられている。従って、比較的内部の圧力が低くなる外周側作動室へ、副吐出穴31e〜31mを介して、吐出空間22a側へ圧送されたブレーキフルードが逆流してしまうことを抑制することができる。これにより、液ポンプ1の作動効率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0072】
すなわち、本実施形態の液ポンプ1によれば、固定側歯部32および旋回側歯部42の巻き数が2巻き以上形成されていても、作動効率の低下を招くことなく過圧縮を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態の液ポンプ1では、主吐出穴31aを固定側基板部31の中心部に配置し、一部の副吐出穴31b〜31gを外周側ラップOLに沿って配置し、別の一部の副吐出穴31h〜31mを内周側ラップLに沿って配置している。従って、旋回スクロール4が公転運動した際に、作動室Vの変位によらず、全ての作動室Vがいずれかの吐出穴31a〜31mに連通可能な吐出穴31a〜31mの配置を実現することができる。
【0074】
また、本実施形態の液ポンプ1では、一部の副吐出穴31b〜31gの中心点を、外周側ラップ上に配置し、別の副吐出穴31h〜31mの中心点を、内周側ラップ上に配置している。そして、副吐出穴31b〜31mを旋回側歯部42の先端部によって閉塞可能としている。
【0075】
これによれば、作動室Vと副吐出穴31b〜31gを不必要に連通させて、吐出空間22a側へ圧送されたブレーキフルードが、作動室Vへ逆流してしまうことを抑制することができる。
【0076】
(第2〜第6実施形態)
第2〜第6実施形態では、第1実施形態に対して、図9図13に示すように、液体導入溝の形状および配置態様を変更した例を説明する。なお、図9図13は、第1実施形態で説明した図3に対応する図面である。また、図9以下の図面では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。
【0077】
第2実施形態では、図9に示すように、旋回側基板部41の他方の面に、互いに平行に配置された複数の液体導入溝412を設けている。このため、一部の液体導入溝412が、旋回側基板部41の他方の面の内周側と外周側とを連通させるように形成されている。また、別の一部の液体導入溝412が、旋回側基板部41の他方の面の外周側同士を連通させるように形成されている。本実施形態のように液体導入溝を形成しても、第1実施形態と同様の摺動抵抗低減効果を得ることができる。
【0078】
第3実施形態では、図10に示すように、旋回側基板部41の他方の面に、第1実施形態と同様の放射状に配置された液体導入溝411、および円環状に形成された液体導入溝413を設けている。これによれば、第1実施形態に対して、それぞれの液体導入溝411、413同士を互いに連通させて潤滑範囲を拡大することができる。従って、第1実施形態と同様の摺動抵抗低減効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0079】
第4実施形態では、図11に示すように、旋回側基板部41の他方の面に、互いに平行に配置された複数の液体導入溝412および複数の液体導入溝414を設けている。さらに、液体導入溝412および液体導入溝414を、互いに直交するように配置している。これによれば、第2実施形態に対して、それぞれの液体導入溝412、414同士を互いに連通させて潤滑範囲を拡大することができる。従って、第1実施形態と同様の摺動抵抗低減効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0080】
第5実施形態では、図12に示すように、旋回側基板部41の他方の面に、シャフト5の軸方向から見た時ときに、渦巻き状に形成された液体導入溝415を設けている。液体導入溝415は、旋回側基板部41の他方の面の内周側と外周側とを連通させるように形成されている。従って、第1実施形態と同様の摺動抵抗低減効果を得ることができる。さらに、液体導入溝415は、一筆書きで描くことができる形状なので、より一層、容易に形成することができる。
【0081】
第6実施形態では、図13に示すように、旋回側基板部41の他方の面に、第1実施形態と同様の放射状に配置された液体導入溝411、および第5実施形態と同様の渦巻き状の液体導入溝415を設けている。これによれば、第5実施形態に対して、潤滑範囲を拡大することができる。従って、第1実施形態と同様の摺動抵抗低減効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0082】
(第7実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図14図16に示すように、バランサ7の形状を変更した例を説明する。
【0083】
ここで、一般的なバランサは、シャフト5が回転した際に作用する遠心力の不均衡を抑制する機能を果たすために、シャフト5の軸方向から見たときの形状が扇形状に形成されているとともに、軸方向の厚み寸法が一定に形成されている。これに対して、本実施形態のバランサ7は、シャフト5とともに回転した際に、内側空間21a内のブレーキフルードを外周側へ押し出す羽根形状に形成されている。
【0084】
より具体的には、本実施形態のバランサ7には、傾斜面7aが形成されている。このため、本実施形態のバランサ7は、図15図16に示すように、径方向外周側に向かって軸方向の厚み寸法が小さくなるとともに、回転方向に向かって軸方向の厚み寸法が小さくなる形状に形成されている。このような傾斜面7aが形成されていることで、バランサ7が回転すると、バランサ7によって内側空間21a内のブレーキフルードが外周側に押し出される。
【0085】
その他の液ポンプ1の構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の液ポンプ1によれば、第1実施形態と同様に、簡素な構成で、旋回側基板部41とフロントハウジング21との摺動抵抗を低減することができ、作動効率を向上させることができる。また、固定側歯部32および旋回側歯部42の巻き数が2巻きになっていても、作動効率の低下を招くことなく過圧縮を抑制することができる。
【0086】
さらに、本実施形態の液ポンプ1では、バランサ7の形状が羽根形状に形成されているので、バランサ7が内側空間21a内のブレーキフルードを効果的に撹拌し、より一層、液体導入溝411へブレーキフルードを流入させやすくなる。従って、第1実施形態と同様の摺動抵抗低減効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0087】
(第8実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図17に示すように、旋回スクロール4の旋回側基板部41に、作動室Vと液体導入溝411とを連通させる貫通穴41bを追加している。その他の液ポンプ1の構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の液ポンプ1によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
さらに、本実施形態の液ポンプ1では、貫通穴41bを介して、作動室V内のブレーキフルードを液体導入溝411側へ圧送することができる。従って、第1実施形態と同様の摺動抵抗低減効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0089】
ここで、この貫通穴41bを介して液体導入溝411側へ圧送されるブレーキフルードの量が必要以上に増加してしまうと、液ポンプ1の吐出流量が低下して、液ポンプ1の作動効率を低下させてしまうことが懸念される。
【0090】
これに対して、本実施形態では、貫通穴41bの径を、貫通穴41bを介して液体導入溝411内へ圧送されるブレーキフルードの量が不必要に増加してしまうことを抑制できる程度の径に設定している。さらに、貫通穴41bを、外周側に配置される作動室Vに連通させるように配置している。
【0091】
より詳細には、第1実施形態の図6で説明したように、最大容積となる作動室Vが形成される旋回スクロール4の回転角θを0°としたときに、貫通穴41bを、回転角θが予め定めた基準回転角θa以下となっている範囲で形成される外周側の作動室Vに連通させるように配置している。
【0092】
つまり、貫通穴41bを、0°≦θ≦θa°の範囲で形成される外周側の作動室Vに連通するように配置している。換言すると、貫通穴41bを、θa°<θ<720°の範囲で形成される作動室Vには連通できないように配置している。
【0093】
これによれば、貫通穴41bを、液圧が比較的低くなっている作動室Vに連通させることができる。従って、貫通穴41bを介して液体導入溝411内へ圧送されるブレーキフルードの量が不必要に増加してしまうことを抑制できる。さらに、本発明者らの試験検討によれば、θaを45°程度に設定すれば、液ポンプ1の作動効率の大幅な低下を招かないことが確認されている。
【0094】
(第9実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図18に示すように、吸入口3aの位置を変更した例を説明する。本実施形態の吸入口3aは、フロントハウジング21の外周側面に形成されて、内側空間21aに連通するように形成されている。このため、吸入口3aから作動室Vへ至る液体流入経路は、吸入口3aから吸入されたブレーキフルードを、内側空間21aを介して作動室Vへ導くように形成されている。
【0095】
その他の液ポンプ1の構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の液ポンプ1によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
さらに、本実施形態の液ポンプ1では、吸入口3aから吸入されたブレーキフルードを、内側空間21aを介して作動室Vへ導いているので、内側空間21a内のブレーキフルードの流動性が確保される。これにより、内側空間21a内のブレーキフルードを、液体導入溝411へ流入させやすくなる。従って、第1実施形態と同様の摺動抵抗低減効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0097】
(第10実施形態)
第1実施形態では、副吐出穴31b〜31mを円形状に形成した例を説明したが、本実施形態では、図19に示すように、楕円形状に形成した例を説明する。図19は、第1実施形態の図2に対応する軸方向垂直断面図である。さらに、一部の副吐出穴31b〜31gの長軸が外周側ラップOLの接線と一致するように配置され、別の副吐出穴31h〜31mの長軸が内周側ラップIL上の接線と一致するように配置されている。
【0098】
その他の液ポンプ1の構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の液ポンプ1によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
さらに、本実施形態の液ポンプ1では、一部の副吐出穴31b〜31gの長軸を、外周側ラップOLの接線上に配置し、別の副吐出穴31h〜31mの長軸を、内周側ラップILの接線上に配置している。
【0100】
これによれば、旋回側歯部42の径方向厚み寸法を薄く形成しても、副吐出穴31b〜31mを閉塞することができる。さらに、副吐出穴31b〜31mの開口面積を減少させてしまうことがないので、作動室Vからブレーキフルードを流出させる際の圧力損失の増大を招いてしまうこともない。
【0101】
なお、本実施形態では、副吐出穴31b〜31mの形状を楕円形状としたが、互いに平行に配置された線分の端部同士を円弧で結ぶことによって形成される長円形状としてもよい。
【0102】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0103】
(1)上述の実施形態では、液体導入溝411〜415を旋回側基板部41の他方の面に形成した例を説明したが、もちろんフロントハウジング21の支持用壁面21cに同様の形状の液体導入溝を形成してもよい。さらに、旋回側基板部41の他方の面および旋回側基板部41の他方の面の双方に液体導入溝を形成してもよい。
【0104】
この場合は、双方の面に形成された液体導入溝同士が、旋回側基板部41とフロントハウジング21との摺動抵抗を増加させてしまわない溝形状を採用することが望ましい。
【0105】
例えば、第3実施形態で説明した液体導入溝411および液体導入溝413と同様の形状の溝のいずれか一方を旋回側基板部41の他方の面に形成し、他方を支持用壁面21cに形成してもよい。第4実施形態で説明した液体導入溝412および液体導入溝414と同様の形状の溝のいずれか一方を旋回側基板部41の他方の面に形成し、他方を支持用壁面21cに形成してもよい。第6実施形態で説明した液体導入溝411および液体導入溝415と同様の形状の溝のいずれか一方を旋回側基板部41の他方の面に形成し、他方を支持用壁面21cに形成してもよい。
【0106】
(2)第7実施形態では、内側空間21a内のブレーキフルードを外周側へ押し出す羽根形状に形成されたバランサ7の一例を説明したが、バランサ7の形状はこれに限定されない。例えば、バランサ7として、シャフト5が回転する際に作用する遠心力の不均衡を抑制する機能を損なわない範囲で、シャフト5の軸方向から見たときの形状が、回転方向に向かって径方向寸法が小さくなる形状に形成されていてもよい。
【0107】
(3)上述の実施形態では、図5に示すように、吐出弁10e〜10mとして、外周側作動室に連通する6つの副吐出穴31e〜31mを開閉するように吐出弁を配置した例を説明したが、吐出弁の配置はこれに限定されない。他の吐出穴に対して同様の吐出弁を設けてもよい。
【0108】
(4)また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。例えば、第2〜第6実施家形態で説明した液体導入溝411〜415が形成された旋回スクロール4を、第7〜第10実施形態で説明した液ポンプ1に適用してもよい。
【0109】
(5)上述の実施形態では、シャフト5の駆動部として電動モータを採用した例を説明したが、駆動部はこれに限定されない。例えば、駆動部は、内燃機関(エンジン)であってもよい。
【0110】
(6)上述の実施形態では、本発明に係る液ポンプ1を車両用ブレーキ装置に適用した例を説明したが、液ポンプ1の適用はこれに限定されない。本発明の趣旨に合致するものであれば、車両用ブレーキ装置に限定されることなく、液体を圧送する手段として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 スクロール型液ポンプ
21 フロントハウジング(ハウジング)
3 固定スクロール
31 固定側基板部
32 固定側歯部
4 旋回スクロール
41 旋回側基板部
42 旋回側歯部
411〜415 液体導入溝
31a〜10m 吐出穴
10e〜10m 吐出弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19