特許第6617074号(P6617074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6617074
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 9/00 20060101AFI20191125BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20191125BHJP
   B62K 17/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B62J9/00 H
   B62J99/00 K
   B62K17/00
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-98188(P2016-98188)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-206062(P2017-206062A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 勉
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 学
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−237334(JP,A)
【文献】 特開2014−234035(JP,A)
【文献】 特開2000−142551(JP,A)
【文献】 特開平10−284032(JP,A)
【文献】 特開2013−163399(JP,A)
【文献】 特開平11−3693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 9/00
B62J 99/00
B62K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、前記車体フレームに支持された車輪と、前記車輪を駆動する電動機と、前記電動機に電力を供給する電源ユニットとを具備した電動車両であって、
電源ユニットは、
前記車体フレームに取り付けられた後方開口の箱状のバッテリケースと、
前記バッテリケースに着脱可能に装着されるバッテリとを有し、
前記バッテリケースは当該バッテリケースに装着された前記バッテリの上方に後方から手を挿入可能な手挿入空間の上側を画定する壁部による車体持上用把持部及びケース側係止部を含み、
前記バッテリは前記バッテリケースに装着された状態において前記手挿入空間の下方に位置する上方開口の凹部を有するアウタシェルを含み、
前記アウタシェルは前記凹部内に位置するバッテリ運搬用把持部及び前記凹部内にあって前記ケース側係止部に係脱可能に係合して前記バッテリを前記バッテリケースに係止するバッテリ側係止部を含む電動車両。
【請求項2】
倒立振子制御に基づき駆動される車輪を含む走行ユニットと、前記走行ユニットに連結されて前記倒立振子制御に基づき前記走行ユニットから上方へ延在した状態に維持される車体フレームと、前記車体フレームに設けられた電動機を含み、前記車輪を駆動する駆動ユニットと、前記駆動ユニットに電力を供給する電源ユニットと、前記車体フレームの上方に設けられた座席とを具備した倒立振子型の電動車両であって、
電源ユニットは、
前記車体フレームに取り付けられた後方開口の箱状のバッテリケースと、
前記バッテリケースに着脱可能に装着されるバッテリとを有し、
前記バッテリケースは当該バッテリケースに装着された前記バッテリの上方に後方から手を挿入可能な手挿入空間を画定する壁部による車体持上用把持部及びケース側係止部を含み、
前記バッテリは前記バッテリケースに装着された状態において前記手挿入空間の下方に位置する上方開口の凹部を有するアウタシェルを含み、
前記アウタシェルは前記凹部内に位置するバッテリ運搬用把持部及び前記凹部内にあって前記ケース側係止部に係脱可能に係合して前記バッテリを前記バッテリケースに係止するバッテリ側係止部を含む電動車両。
【請求項3】
前記バッテリ側係止部は前記バッテリが前記バッテリケースに装着された状態において前記手挿入空間の下方に位置する操作部を有し、前記操作部が後方に向けて押圧されることにより、前記ケース側係止部との係合から離脱する請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記バッテリ運搬用把持部は、前記バッテリが前記バッテリケースに装着された状態において前記バッテリケース内に位置し、前記バッテリが前記バッテリケースから後方に引き出されることにより前記バッテリケース外に位置する前側に設けられている請求項1から3の何れか一項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記アウタシェルは左右両側壁の下部に各々左右外側に突出した突部を含み、前記バッテリケースは、左右両側部に、前記突部が左右方向に延在する軸線周りに回動可能に且つ係脱可能に係合することにより前記バッテリを支持するバッテリ支持部を含んでいる請求項1から4の何れか一項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に関し、更に詳細には、電動式倒立振子型車両等の電動車両の着脱可能なバッテリの搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式倒立振子型車両のバッテリの搭載構造として、車体フレームに取り付けられた上側及び後側が開放のバッテリケースと、バッテリケースの上部に回動可能に取り付けられてバッテリケースの上部を覆うリッドとを有し、バッテリケースの底部に設けられた係止凸部にバッテリの下底部に形成された係止凹部が係合し、且つリッドに形成されたラッチ爪がバッテリの上部に形成されたラッチ凹部に係合することにより、バッテリケースの底部とリッドとで挟むようにしてバッテリを車体フレームに搭載するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
電動自転車のバッテリ搭載構造として、バッテリの前後両面に軸状凸部及び係止凸部が形成され、車体フレームに2個のブラケットが前後方向に隔置され、ブラケットにはV形凹部及び係止凹部が形成され、バッテリの上部が使用者の手前側にくる傾斜姿勢で軸状凸部をV形凹部に係合させた状態でバッテリを起立させることにより係止凸部が係止凹部に係合し、バッテリが車体フレームに固定されるものが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−237334号公報
【特許文献2】特開2000−142551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の電動式倒立振子型車両のバッテリ搭載構造は、バッテリケースに回動可能に取り付けられたリッドが必要であり、その分、部品点数が増加すると共に、バッテリの着脱に際してリッドを開閉する操作が必要となる。
【0006】
電動自転車のバッテリ搭載構造は、バッテリの下部の支持構造として簡単であっても、走行振動に耐えるようにバッテリを車体フレームに取り付けるには、バッテリの上部を車体フレームに着脱可能に固定する何らかの取付構造が必要になる。
【0007】
電動式倒立振子型車両のような小型軽量の電動車両は片手で持ち運ぶことが行われることがあるが、従来の電動車両は、この持ち運びを無理なく簡便に行えるようにすることについての工夫がされておらず、持ち運びに関して不便なものであった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、バッテリが車体に取り付けられているバッテリケースに、簡便に着脱可能且つ確実に搭載され、併せてバッテリの搭載構造を利用して電動車両の持ち運びを無理なく簡便に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電動車両は、車体フレーム(12)と、前記車体フレーム(12)に支持された車輪(14)と、前記車輪(14)を駆動する電動機(60)と、前記電動機(60)に電力を供給する電源ユニット(26)とを具備した電動車両であって、電源ユニット(26)は、前記車体フレーム(12)に取り付けられた後方開口の箱状のバッテリケース(80)と、前記バッテリケース(80)に着脱可能に装着されるバッテリ(82)とを有し、前記バッテリケース(82)は当該バッテリケース(80)に装着された前記バッテリ(82)の上方に後方から手を挿入可能な手挿入空間(112)の上側を画定する壁部による車体持上用把持部(80G)及びケース側係止部(120)を含み、前記バッテリ(82)は前記バッテリケース(80)に装着された状態において前記手挿入空間(112)の下方に位置する上方開口の凹部(96)を有するアウタシェル(83)を含み、前記アウタシェル(83)は前記凹部(96)内に位置するバッテリ運搬用把持部(95)及び前記凹部(96)内にあって前記ケース側係止部(120)に係脱可能に係合して前記バッテリ(82)を前記バッテリケース(80)に係止するバッテリ側係止部(100)を含む。
【0010】
この構成によれば、バッテリ(82)が、車体フレーム(12)に取り付けられたバッテリケース(80)に、簡便に着脱可能且つ確実に搭載(装着)され、併せてバッテリ(82)の搭載構造を利用して電動車両(10)の持ち運びを無理なく簡便に行える。更には、電動車両(10)を手にて持ち上げて運搬する際には、手の甲が下側になる逆手で、後側から手挿入空間(112)に手を入れて車体持上用把持部(80G)の下面に逆手状態で指を付けて行うことになり、バッテリ(82)をバッテリケース(80)から取り外す際には、手の甲が上側に順手で、上方開口の凹部(96)に手を入れてバッテリ側係止部(100)をケース側係止部(120)との係合から離脱させる操作を行うことになるので、電動車両(10)の運搬操作部とバッテリ(82)の着脱操作部とが近接した部位にあっても、電動車両(10)の運搬時に誤ってバッテリ(82)の係止が解除されることがない。
【0011】
本発明による電動車両は、倒立振子制御に基づき駆動される車輪(14)を含む走行ユニット(16)と、前記走行ユニット(16)に連結されて前記倒立振子制御に基づき前記走行ユニット(16)から上方へ延在した状態に維持される車体フレーム(12)と、前記車体フレーム(12)に設けられた電動機(60)を含み、前記車輪(14)を駆動する駆動ユニット(22)と、前記駆動ユニット(22)に電力を供給する電源ユニット(26)と、前記車体フレーム(12)の上方に設けられた座席(32)とを具備した倒立振子型の電動車両であって、電源ユニット(26)は、前記車体フレーム(12)に取り付けられた後方開口の箱状のバッテリケース(80)と、前記バッテリケース(80)に着脱可能に装着されたバッテリ(82)とを有し、前記バッテリケース(82)は当該バッテリケース(80)に装着される前記バッテリ(82)の上方に後方から手を挿入可能な手挿入空間(112)の上側を画定する壁部による車体持上用把持部(80G)及びケース側係止部(120)を含み、前記バッテリ(82)は前記バッテリケース(80)に装着された状態において前記手挿入空間(112)の下方に位置する上方開口の凹部(96)を有するアウタシェル(83)を含み、前記アウタシェル(83)は前記凹部(96)内に位置するバッテリ運搬用把持部(95)及び前記凹部(96)内にあって前記ケース側係止部(120)に係脱可能に係合して前記バッテリ(82)を前記バッテリケース(80)に係止するバッテリ側係止部(100)を含む。
【0012】
この構成によれば、バッテリ(82)が、車体フレーム(12)に取り付けられたバッテリケース(80)に、簡便に着脱可能且つ確実に車体フレーム(12)に搭載(装着)され、併せてバッテリ(82)の搭載構造を利用して電動車両(10)の持ち運びを無理なく簡便に行える。更には、電動車両(10)を手にて持ち上げて運搬する際には、手の甲が下側になる逆手で、後側から手挿入空間(112)に手を入れて車体持上用把持部(80G)の下面に逆手状態で指を付けて行うことになり、バッテリ(82)をバッテリケース(80)から取り外す際には、手の甲が上側に順手で、上方開口の凹部(96)に手を入れてバッテリ側係止部(100)をケース側係止片(120)との係合から離脱させる操作を行うことになるので、電動車両(10)の運搬操作部とバッテリ(82)の着脱操作部とが近接した部位にあっても、電動車両(10)の運搬時に誤ってバッテリ(82)の係止が解除されることがない。
【0013】
本発明による電動車両は、好ましくは、前記バッテリ側係止部(100)は、前記バッテリ(82)が前記バッテリケース(80)に装着された状態において前記手挿入空間(112)の下方に位置する操作部(104)を有し、前記操作部(104)が後方に向けて押圧されることにより、前記ケース側係止部(120)との係合から離脱する。
【0014】
この構成によれば、操作部(104)の操作によってバッテリ(82)の係止を簡便に解除することと、電動車両(10)の運搬時に誤ってバッテリ(82)の係止が解除されることがないことが確実に両立する。
【0015】
本発明による電動車両は、好ましくは、前記バッテリ運搬用把持部(95)は、前記バッテリ(82)が前記バッテリケース(80)に装着された状態において前記バッテリケース(80)内に位置し、前記バッテリ(82)が前記バッテリケース(80)から後方に引き出されることにより前記バッテリケース(80)外に位置する前側に設けられている。
【0016】
この構成によれば、バッテリ(82)がバッテリケース(80)から後方に引き出されることにより、バッテリ運搬用把持部(95)がバッテリケース(80)外に位置するから、電動車両(10)の運搬時に誤ってバッテリ運搬用把持部(95)に触れる虞がない。つまり、電動車両(10)の運搬時に誤ってバッテリ運搬用把持部(95)を持ってしまうことにより、ケース側係止部(120)やバッテリ側係止部(100)、または、雄型コネクタ(110)や雌型コネクタ(90)に過大な応力が掛かる虞がない。
【0017】
本発明による電動車両は、好ましくは、前記アウタシェル(83)は左右両側壁(84B)の下部に各々左右外側に突出した突部(82)を含み、前記バッテリケース(80)は、左右両側部に、前記突部(82)が左右方向に延在する軸線周りに回動可能に且つ係脱可能に係合することにより前記バッテリ(82)を支持するバッテリ支持部(114)を含んでいる。
【0018】
この構成によれば、突部(92)とバッテリ支持部(114)との係合を回動中心としてバッテリ(82)を回動させながらバッテリケース(80)に対するバッテリ(82)の着脱を操作性よく行える。
【発明の効果】
【0019】
本発明による電動車両によれば、バッテリが簡便に着脱可能且つ確実にバッテリケースに搭載され、併せてバッテリの搭載構造を利用して電動車両の持ち運びを無理なく簡便に行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による電動車両を倒立振子型車両に適用した一つの実施形態を示す斜視図
図2】本実施形態による倒立振子型車両の倒立不倒制御状態の側面図
図3】本実施形態による倒立振子型車両の倒立不倒制御停止状態の側面図
図4】本実施形態による倒立振子型車両の要部の拡大側面図
図5】本実施形態による倒立振子型車両に用いられるバッテリの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明による電動車両の一つの実施形態を、図1図5を参照して説明する。
【0022】
本実施形態の電動車両は倒立振子型車両10であり、以下の説明では、倒立振子型車両10に着座した乗員を基準として各方向を定める。
【0023】
倒立振子型車両10は、図1図3に示されているように、車体フレーム12と、主輪(車輪)14を含む走行ユニット16と、尾輪(副輪)18を含む尾輪ユニット20と、走行ユニット16を駆動する駆動ユニット22と、駆動ユニット22及び尾輪ユニット20を制御する制御ユニット24と、駆動ユニット22、尾輪ユニット20及び制御ユニット24に電力を供給する電源ユニット26と、走行ユニット16の外側を覆うアウタカバー28とを有する。
【0024】
車体フレーム12は上下に延びる左右一対のサイドポスト30を有し、左右のサイドポスト30は左右(車幅方向)に延在するクロスビーム(不図示)によって互いに連結されている。サイドポスト30の上部には乗車用のサドル32が調整ねじ34によって上下位置を調整可能に取り付けられている。
【0025】
左右のサイドポスト30の各々の下部にはマウント部材36によって足載せ用のステップ38が取り付けられている。ステップ38の下底部にはスタンド40が折り畳み可能に取り付けられている。スタンド40は、停車時(駐車時)に、図3に示されているように、下方に繰り出されて着地し、倒立振子型車両10を前傾姿勢で支持する。
【0026】
走行ユニット16は左右のサイドポスト30間に配置されている。走行ユニット16は、左右のマウント部材36に取り付けられた支持軸50と、支持軸50に互いに独立して回転可能に取り付けられた左右の駆動ディスク52と、左右の駆動ディスク52の各々の外周に同心に取り付けられた円環形状のコグベルト用の左右の従動プーリ54とを有する。
【0027】
左右の駆動ディスク52の外周部は略円錐台形をなしており、この円錐台形部に周方向に等間隔をおいて複数の金属製の駆動ローラ(不図示)が回転可能に取り付けられている。駆動ディスク52は、左側の駆動ディスク52と右側の駆動ディスク52のものとで左右対称をなすように配置され、各駆動ローラの回転中心は駆動ディスク52の回転中心に対してねじれの関係となるように配置されている。これにより、左右の駆動ローラは、左右対称形をなし、はすば歯車の歯すじに似た傾斜配置となっている。
【0028】
主輪14は、金属製の円環部材56と、円環部材56の外周に回転可能に取り付けられたゴム製の複数の従動ローラ(フリーローラ)58とを含み、従動ローラ58の外周面をもって接地する。主輪14は左右の駆動ローラによって従動ローラ58を左右両側から挟まれることにより、左右の駆動ディスク52間に無軸状態で支持され、左右の駆動ディスク52と共に自身の中心周りに回転(公転)可能となっている。
【0029】
駆動ローラの配置、主輪14と左右の駆動ローラとの関係等について、より詳細な説明が必要ならば、特開2014−234035号公報を参照されたい。
【0030】
駆動ユニット22は、2個の電動モータ60と、各電動モータ60によって回転駆動されるコグベルト用の駆動プーリ62とを含み、駆動プーリ6と従動プーリ54とに無端のコグベルト64が掛け渡されていることにより、左右の駆動ディスク52を電動モータ60によって個別に回転駆動する。
【0031】
尾輪ユニット20の尾輪18は、前端を支持軸50に回動可能に取り付けられた尾輪アーム70の後端に取り付けられている。尾輪18は、円盤形状のホイール72と、ホイール72に外周部に自転可能に取り付けられた複数のフリーローラ74とを有するオムニホイールによるものであり、自重によって接地し、尾輪アーム70に取り付けられた電動モータ76によってホイール72を回転駆動される。尾輪18はアウタカバー78(図1参照)によって覆われている。
【0032】
制御ユニット24は、主輪PDU(不図示)、尾輪PDU(不図示)、DC−DCコンバータ(不図示)、ジャイロセンサ(不図示)等を含み、車体フレーム12の傾斜角及びサドル32に着座した乗員の重心移動を考慮して電動モータ60及び76の駆動を制御し、倒立不倒制御(倒立振子制御)、主輪14による走行制御と及び尾輪18による旋回制御を行う。
【0033】
車体フレーム12は倒立振子制御によって走行ユニット16から上方へ延在した状態に維持される。これにより、倒立振子型車両10は、倒立不倒制御により、車体フレーム12が、図1及び図2に示されているように、接地面より略鉛直に起立した姿勢を維持した状態で停車及び走行する。
【0034】
電源ユニット26は、車体フレーム12の後部に取り付けられたバッテリケース80と、バッテリケース80に着脱可能に装着されるバッテリ(バッテリパック)82とを有する。
【0035】
バッテリ82は、図5に示されているように、概ね長方体形状をしたバッテリ内蔵部84及びバッテリ内蔵部84の上部に形成された上部枠状部94を含む樹脂成形品によるアウタシェル83を有する。バッテリ内蔵部84は二次電池による複数のバッテリセル(不図示)を内蔵している。バッテリ内蔵部84の前部には当該バッテリ内蔵部84の前壁84Aから前方に突出したコネクタ取付部86が一体成形されている。コネクタ取付部86は前方開口のコネクタ収容室88を画定している。コネクタ取付部86にはコネクタ収容室88に配置される電力出力用の雌型コネクタ90が前向きに取り付けられている。
【0036】
コネクタ取付部86の上壁86A及び下壁86Bは、後述する側部突起(突部)92の底面92Aの半円中心を中心とした円弧壁になっている。
【0037】
アウタシェル83の左右の側壁84Bの下部には、各々、側部突起92が一体成形されている。側部突起92は、後述するバッテリケース80のバッテリ支持部114に係脱可能に係合してバッテリケース80に対するバッテリ82の着脱時の回動軸となる上下方向に長い矩形の突起であり、半円面による底面92Aを有する。
【0038】
上部枠状部94は、側壁84Bに連続する左右の側壁94A及びアウタシェル83の後壁84C(図1参照)に連続する後壁94Bを含み、これらによって取り囲まれて前方及び上方が開口した凹部96を画定している。凹部96は、バッテリ82がバッテリケース80に装着された状態(図1及び図2参照)において、後述する手挿入空間112の真下に位置する。
【0039】
上部枠状部94の前側上部には左右の端部を側壁94Aに連結された運搬用ハンドルバー95が一体成形されている。運搬用ハンドルバー95は左右の側壁94A間に橋渡しされて凹部96の前側上部を左右方向に延在するバッテリ運搬用把持部をなす。運搬用ハンドルバー95は、バッテリ82がバッテリケース80に装着された状態(図2参照)において、手挿入空間112より前方に位置し、バッテリ82がバッテリケース80から後方に引き出されることによりバッテリケース80外に露呈する。
【0040】
上部枠状部94の後側上部には左右の端部を側壁94Aに連結されて左右方向に延在する支持軸98が取り付けられている。支持軸98にはバッテリ側係止部材100が回動可能に取り付けられている。バッテリ側係止部材100は、例えば、樹脂成形品であり、左右両側に設けられた逆止形状の上向きの係止爪(ラッチ爪)102Aを含む片状の左右の係止部102と、左右の係止部102間に設けられた扁平な片状の操作部104とを一体に有する。バッテリ側係止部材100と後壁94Bとの間には支持軸98を取り巻くように捩りコイルばね106が取り付けられている。捩りコイルばね106は、バッテリ側係止部材100を図4で見て時計廻り方向に付勢している。これにより、係止爪102Aは、後述するケース側係止部120に係合する方向に付勢され、操作部104が後方(手前)に向けて押圧されることによりケース側係止部120との係合から離脱する。
【0041】
バッテリケース80は、例えば、樹脂成形品であり、図1図4に示されているように、倒立不倒制御によって車体フレーム12が接地面より略鉛直に起立した姿勢にある時に、略水平をなしてアウタシェル83の底部前側を載せられる底壁80Aと、底壁80Aから後方に延出した下り勾配の仮置き用傾斜壁80Bと、底壁80A及び仮置き用傾斜壁80Bの左右の縁部より起立した左右の側壁80Cと、底壁80Aの前縁より起立して左右の側壁80C間に延在する前壁80Dと、前壁80Dの上縁から後方に延出して左右の側壁80C間に延在する上壁80Eとを一体に有して後方開口の角型箱状をなし、バッテリ収容室107を画定している。
【0042】
左右の側壁80Cは、アウタシェル83の側壁84B及び側壁94Aに小さい隙間をおいて対向し、バッテリ収容室107に収容されたバッテリ82の左右方向の移動を、後述する突起部92とバッテリ支持部114とによって規制する。前壁80Dはアウタシェル83の前壁84Aに対向して前壁84Aを受け止める壁部である。上壁80Eは、上部枠状部94の側壁94Aの前部及び上部前側に対向してバッテリ収容室107に収容されたバッテリ82の左右方向の移動を規制する。
【0043】
バッテリケース80は、図2に示されているように、更に、前壁80Dから前方に突出したコネクタ嵌合部108を一体に有する。コネクタ嵌合部108は、コネクタ取付部86の上壁86A及び下壁86Bと同じ曲率の円弧壁による上壁108A及び下壁108Bを有し、バッテリ収容室107の前側に連続し、コネクタ取付部86の補形をなすコネクタ挿入室109を画定している。コネクタ嵌合部108の前壁108Cには雌型コネクタ90と係脱可能に結合されてバッテリ82からの電力を入力する雄型コネクタ110が後向きに取り付けられている。
【0044】
バッテリケース80は、上壁80Eの後縁から上方に立ち上がった起立壁部80Fの後縁から略水平に延在する上部拡張壁部80Gを有する。上部拡張壁部80Gは、起立壁部80F及び左右両縁に上縁を接続された左右の側壁80Cにより、下側に、つまり、バッテリケース80に装着されたバッテリ82の上方に、後方から前側に手を挿入可能な後方開口の手挿入空間112の上側を画定し、車体持上用把持部をなしている。以降、上部拡張壁部80Gを車体持上用把持部80Gと呼ぶ。
【0045】
倒立振子型車両10を手にて持ち上げて運搬する際には、後側から手挿入空間112に手の甲が下側になる逆手で手を入れ、車体持上用把持部80Gの下面に逆手状態で指をつけることにより、倒立振子型車両10を容易に持ち上げることができる。
【0046】
上壁80Eには金属製のケース側係止部120がインサート成形によって設けられている。ケース側係止部120は、手挿入空間112の前側下方にあって、下向きの鉤形をしており、係止爪102Aが係脱可能に係合することにより、バッテリ82をバッテリケース80に係止(ロック)する。
【0047】
左右の側壁80Cの内側下部にはバッテリ支持部114が一体成形されている。バッテリ支持部114は後方から前方に向けて下り勾配の後方開口の案内溝部116を有する。バッテリ支持部114は、傾斜姿勢のバッテリ82の側部突起92の案内溝部116に対する進入を案内溝部116の下側の傾斜面116Aに沿って案内し、案内溝部116の半円面による底面116Bに側部突起92の底面92Aが当接することにより、バッテリ82を支持し、当接部を回動中心としてバッテリ82が回動されることにより、バッテリ82を傾斜姿勢からバッテリ収容室107に対する正規の収容状態を得る起立姿勢にすることを案内する。
【0048】
バッテリ82をバッテリケース80に取り付ける際には、図3に示されているように、倒立振子型車両10の倒立不倒制御を停止し、倒立振子型車両10を前倒状態にしてスタンド40を接地させて倒立振子型車両10を前倒姿勢にする。
【0049】
前倒姿勢では、仮置き用傾斜壁80Bが略水平になり、仮置き用傾斜壁80B上にバッテリ82を搭載する。そして、左右の側部突起92を案内溝部116に係合させ、側部突起92を案内溝部116の下側の傾斜面118Aに沿って滑らせることにより、側部突起92の底面92Aを案内溝部116の底面116Bに当接させ、この状態で、バッテリ82の上部を前側に押すことにより、底面92Aと底面116Bとの当接部を回動中心としてバッテリ82を前側に回動させる。この回動は雄型コネクタ90が雄型コネクタ110に嵌合するまで行われる。
【0050】
この回動によってバッテリ82はバッテリ収容室107に収容され、係止爪102Aがケース側係止部120に逆止係合する。これにより、バッテリ82はバッテリケース80に係止される。この時には、コネクタ取付部86がコネクタ収容室88に進入して雌型コネクタ90が雄型コネクタ110に結合され、バッテリ82と車体フレーム12側の電気機器とが電気的に接続される。
【0051】
バッテリ82をバッテリケース80から取り外す際には、図3に示されているように、倒立振子型車両10の倒立不倒制御を停止し、倒立振子型車両10を前倒状態にしてスタンド40を接地させて倒立振子型車両10を前倒姿勢にする。
【0052】
そして、手の甲が上側に順手で、後側から手挿入空間112に手を入れ、指先で操作部104を後方に向けて押圧力することにより、係止爪102Aをケース側係止部120との係合から離脱させ、その状態のまま、バッテリ82を手前に引くことにより、バッテリ82は側部突起92の底面92Aと案内溝部116の底面116Bとの当接部を回動中心として後側に回動する。その後、左右の側部突起92を案内溝部116との係合より離脱させて、バッテリ82を仮置き用傾斜壁80B上に載せる。この状態では、運搬用ハンドルバー95がバッテリケース80外に位置し、バッテリ82は略垂直姿勢になるので、運搬用ハンドルバー95を掴んでバッテリ82を容易に真上に持ち上げることができる。
【0053】
倒立振子型車両10を手にて持ち上げて運搬する際には、前述したように、手の甲が下側になる逆手で、後側から手挿入空間112に手を入れて車体持上用把持部80Gの下面に逆手状態で指を付けて行うから、バッテリ82の取り外し時とでは手の勝手が逆なり、倒立振子型車両10の運搬時には指が操作部104に触れることができない。
【0054】
これにより、倒立振子型車両10の運搬操作部とバッテリ82の着脱操作部とが近接した部位にあっても、倒立振子型車両10の運搬時に誤って係止爪102Aによる係止が解除されることが回避される。つまり、操作部104の操作によってバッテリ82の係止を簡便に解除することと、倒立振子型車両10の運搬時に誤ってバッテリ82の係止が解除されることないことが確実に両立する。また、バッテリ82がバッテリケース80から後方に引き出されることにより、運搬用ハンドルバー95がバッテリケース80外に位置するから、倒立振子型車両10の運搬時に誤って運搬用ハンドルバー95に触れる虞がない。これにより、倒立振子型車両10の運搬時に誤って運搬用ハンドルバー95を持ってしまうことにより、ケース側係止部120やバッテリ側係止部100、または、雄型コネクタ110や雌型コネクタ90に過大な応力が掛かる虞がない。
【0055】
以上、説明したように、バッテリ82が、簡便に着脱可能且つ確実に、車体フレーム12に取り付けられているバッテリケース80に搭載され、併せてバッテリ82の搭載構造を利用して倒立振子型車両10の持ち運びを無理なく簡便に行える。
【0056】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明による電動車両は、倒立振子型車両10に限られることなく、電動自転車等にも同様に適用することができる。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 倒立振子型車両(電動車両)
12 車体フレーム
14 主輪
16 走行ユニット
18 尾輪
20 尾輪ユニット
22 駆動ユニット
24 制御ユニット
26 電源ユニット
28 アウタカバー
30 サイドポスト
32 サドル(座席)
34 調整ねじ
36 マウント部材
38 ステップ
40 スタンド
50 支持軸
52 駆動ディスク
54 従動プーリ
56 円環部材
58 従動ローラ
60 電動モータ
62 駆動プーリ
64 コグベルト
70 尾輪アーム
72 ホイール
74 フリーローラ
76 電動モータ
78 アウタカバー
80 バッテリケース
80A 底壁
80B 仮置き用傾斜壁
80C 側壁
80D 前壁
80E 上壁
80F 起立壁部
80G 車体持上用把持部(上部拡張壁部)
82 バッテリ
83 アウタシェル
84 バッテリ内蔵部
84A 前壁
84B 側壁
84C 後壁
86 コネクタ取付部
86A 上壁
86B 下壁
88 コネクタ収容室
90 雌型コネクタ
92 側部突起(突部)
92A 底面
94 上部枠状部
94A 側壁
94B 後壁
95 運搬用ハンドルバー(バッテリ運搬用把持部)
96 凹部
98 支持軸
100 バッテリ側係止部材(バッテリ側係止部)
102 係止部
102A 係止爪
104 操作部
106 捩りコイルばね
107 バッテリ収容室
108 コネクタ嵌合部
108A 上壁
108B 下壁
108C 前壁
109 コネクタ挿入室
110 雄型コネクタ
112 手挿入空間
114 バッテリ支持部
116 案内溝部
116A 傾斜面
116B 底面
120 ケース側係止部
図1
図2
図3
図4
図5